弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
 被告が平成元年一二月一三日発した本判決添付の救済命令(以下、本件命令とい
う)を取消す。
第二 原告の主張
一 被告は平成元年一二月一三日本件命令を発し、同命令は同日原告に送達された
(当事者間に争いがない)。
二 原告と被告補助参加人間の紛争経過
1 原告は生コンクリートの製造、販売を行う。原告の従業員八名(何れも生コン
クリート車の運転手)中四名(A、B、C、D)が被告補助参加人(組合員一七〇
〇名。以下、組合という)に加入し、同組合大東洋生コン分会(以下、分会とい
う)を組織していた。
2 原告は、昭和六〇年一一月二六日、A、B、Cに対し、業務外の破廉恥行為を
理由として自宅待機を命じたが、全く反省の色を見せないため、同年一二月一二
日、同月四日付で懲戒解雇した。
3 組合及び分会は右解雇を不当とし、分会は翌年一月から再三ストを行い、支援
組合員及び分会員ら一五名ないし三〇名はピケを張って実力により、非分会員の出
荷を妨害し、また、原告の得意先に対して取引の停止を働き掛ける等して原告の営
業を妨害した。そこで、原告は組合と団体交渉(以下、団交という)を重ね、同月
二九日止むなくAら三名の解雇を撤回し、同人らは翌二月一日職場復帰した。
4(一) ところが、組合が同月三日原告に対し、Aら三名の右紛争期間中の賃金
の全額及び組合に対する解決金三〇〇万円の支払いを求めたことから紛争が再燃
し、組合及び分会は、同月一四日以降、前同様のスト及びピケを繰返したため、原
告は翌三月一五日Aら三名に右紛争期間中の賃金を支払ったが、組合のスト及びピ
ケは同月末まで続いた。
(二) また、Aら分会員は、同年二月二八日以降の就労の際には、生コンクリー
ト車の法定積載量以上の積載及び重量規則のある道路への無許可乗入れを拒否(以
下、過積載等拒否という)し、右はスト及びピケ終熄後も続けられた。
(三) 右紛争により原告の営業実績は激減した。また、分会員の稼働実績も非分
会員に比べ著しく劣った。
5 原告は同年四月二五日組合に対し、実力による出、入荷の妨害禁止等の仮処分
決定(大阪地方裁判所昭和六一年(ヨ)第八八一号)を得た。
6(一) 組合は同年七月一七日原告に対し、「協定遵守」「一九八六年度賃金引
上げ」「一九八六年度夏期一時金」「差別待遇」との四項目を掲げ団交要求してき
た。そこで、原告は組合と同年九月九日、一〇月二八日、一二月一〇日、同六二年
三月一八日団交を行った。
(二) しかし、原告の経営は組合の闘争のため極度に悪化し、賃上げ等の要求に
応じ得る情勢にはない一方、組合は分会員の現実の状況や意向を無視し、抽象的且
つ緊急性のない要求を続けたため、団交は妥結する由もなかった。
7 そして、組合は同年四月一五日本件救済申立をした。
三 本件命令の誤り
1 原告は本件命令が認定した不当労働行為を行っていない。
(一) 本件命令主文第一項について
 原告はDに対し、出荷業務以外の雑務に従事するよう命じたことはない。同人は
自らの希望により右雑務に従事した。
(二) 同第二項について
 原告は、組合の団交申入れは要求が抽象的且つ緊急性のない事項であったため、
その対応に苦慮しつつもこれを拒否せず誠実に対応した。原告のような個人企業に
も等しい小規模生コン業者にあって過積載等は常態であり、同六〇年六月二一日付
「残業、一時金基準等についての協定」も過積載等が業務の通常の態様であること
を前提にしている。生コン車運転手の賃金(但し、基本給及び固定諸手当を除く)
及び一時金が、その出荷量、即ち、過積載等の有無によって異なるのは止むを得な
いところであり、過積載等を行う非分会員の賃金等が過積載等を行わない分会員の
賃金等より多額になるのは当然である。分会員らの過積載等拒否は実質上は争議行
為であり、過積載等拒否により賃金等が減少したのは、争議行為に対する賃金カッ
トに相応する。それ故、原告が、非分会員と同様の待遇を要求する組合及び分会に
対し、過積載等拒否を止め通常の業務に就くよう求めることは非難されるべきでは
ない。
(三) 同第三項について
(1) 同項(1)について
 原告は過積載等拒否を理由とする差別を行っていない。
(2) 同項(2)について
 原告は、非分会員の稼働実績に応じて出荷協力金等を支払ったのであり、分会員
を殊更差別したものではない。分会員に対して基本給及び固定諸手当は支払ってい
る。
(3) 同項(3)について
 原告は団交申入れを拒否せず誠実に対応した。
(4) 同項(4)について
 原告の行為は感情的な嫌がらせに過ぎず、不当労働行為意思はない。
2 原告と組合の力関係は圧倒的に組合が優勢であり、且つ、右関係は、組合が独
善的な要求貫徹のため違法不当な闘争を行い、原告が経営維持のため、止むなくこ
れを受入れることによって更に助長されていることに照らすと、組合が不当労働行
為制度によって保護、救済されるべき理由はない。
3 よって、本件命令は取消されるべきである。
第三 当裁判所の判断
一 原告と組合及び分会間の紛争の経過
成立に争いのない乙第一ないし第一〇〇号証、検乙第一ないし第二八号証、証人E
の証言によると、標記紛争の経過は、次に付加する他、本件命令理由第1記載のと
おりであるから、これを引用する。
1 昭和六一年一月から同年四月まで組合及び分会の行ったストはスト当日に口頭
で通告され、これに伴うピケは支援組合員ら二〇名前後が非分会員による生コンの
出荷を実力によって阻止するものであった。そのため、原告は生コンの廃棄を余儀
なくされることもあった。また、組合は原告の取引先に対して取引の停止を求めた
りした。これらにより、原告の同期間における売上は激減した。
2 法定積載量以上の積載拒否は出荷量の減少を招き、また、生コンの運搬途上で
行われる重量規制のある道路への無許可乗入れ拒否は予備運転手の手配を要し、過
積載等拒否を続ける分会員の稼働実績は低下した。そこで、原告は分会員に対して
出荷割当を減らし残業も指示しなくなり、その結果、分会員の賃金は大幅に減少し
た(生コン車運転手の賃金は基本給及び固定諸手当の他、時間外手当が大きな比率
を占めている)。
3 同六一年七月から同六三年八月までの間、組合は原告に対し、分会員に対する
賃金及び一時金の差別の撤廃を要求事項の一として掲げ、再三、団交を申入たが、
原告は、右要求に関して、分会員と非分会員間に賃金及び一時金に差があるのは分
会員が過積載等を拒否し、出荷量に差があるからであり、原告において、殊更、差
別をしている訳ではないこと、それ故、組合の右要求実現のためには分会員が過積
載等拒否を止めることが先決であることを強く主張し、これを理由に団交に応じな
かったり、団交に応じても実質的な協議には至らなかった。
二 原告の主張について
1 一認定の事実によると、分会員の行った過積載等拒否は、Aら三名の復職に伴
う組合の要求を巡って原告との間で紛争が再燃、激化し、組合がスト及びピケを繰
返す中、組合の指示に基づく分会の統一行動として行われたのに端を発し、実質的
に争議行為と同様の効果をもたらしたため、原告は、その対抗手段として、分会員
に対し、過積載等拒否による出荷量の減少を理由に出荷割当を減らし残業指示もせ
ず、そのため分会員の出荷量は更に減少したこと、その結果、分会員の賃金(基本
給及び固定諸手当を除く)は大幅に減少したのみならず、原告は分会員に対して稼
働実績の低下を理由に同六一年年末出荷協力金(一時金と同視し得る)及び六二年
夏季一時金を支給しなかったこと、過積載等は元来違法であるが、生コン業界の常
態であり、分会員も労使関係が円満に推移している時は黙従しているところである
が、過積載等拒否はそれ自体適法であり、分会員の具体的行動は、生コンの運搬途
中重量規制のある道路へ乗入れを拒否する等、不相当な点もないではないが全体と
して許容限度を逸脱していないことが認められ、以上によると、原告は、組合及び
分会の過積載等拒否という戦術的行動に対抗するため、分会員に対し出荷割当を減
らし残業指示もせず、その結果、分会員の稼働実績が低下したことを理由に一時金
等を支給しなかったことに帰着し、組合が多数の勢力を背景になしたAら三名の復
職に伴う要求は全面的には是認され得ないことを考慮しても、原告が分会員に対
し、過積載等拒否を理由に出荷割当を減らし残業指示をしなかったことは、協定違
反の有無を論ずるまでもなく、労働組合法第七条一号、三号に該当するといわざる
を得ない。
2 本件命令主文第一項について
 Dは、過積載等拒否により原告から出荷割当及び残業指示を減らされ待機時間が
長くなったため、自発的に出荷業務以外の雑務に従事したものと認められるが(乙
第九五号証)、
本件命令主文第一項は過積載拒否を理由とする差別を禁ずる趣旨であり、同人が、
差別を受けた結果、原告の命令或いは自らの意思の何れにより雑務に就いたかは問
うところではない。したがって、原告の主張は理由がない。
3 同第二項について
 一認定の事実によると、原告は、同項記載の要求事項に係わる団交において、分
会員が過積載等拒否を中止することに固執し、そのため、組合との間で、実質的な
協議を持つに至らなかったと認められるから、原告の行為は同条第二号に該当す
る。原告の主張は理由がない。
4 同第三項について
(一) 一認定の事実及び前記説示によると、原告の同項(1)(2)(3)に関
する主張は何れも理由がない。
(二) 原告は、同項(4)記載の行為について不当労働行為意思はなかったと主
張するが、一認定の事実によると、原告の右行為は組合及び分会の戦術的行動に対
抗する一連の行為の一としてなされたと認めるのが相当であり、同条第一号、第二
号、第三号に該当するというべきである。
三 その他、本件命令を取消すべき事由は認められない。
 よって、原告の請求は理由がない。
(裁判官 蒲原範明 市村弘 岩佐真寿美)
別紙 命令書
大阪市<以下略>
申立人 全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部
代表者 執行委員長 F
大東市<以下略>
被申立人 有限会社 大東洋生コン
代表者 代表取締役 G
 上記当事間の昭和六二年(不)第三七号及び昭和六三年(不)第六八号併合事件
について、当委員会は、平成元年一一月二二日の公益委員会議において合議を行っ
た結果、次のとおり命令する。
       主   文
一 被申立人は、申立人組合大東洋生コン分会員Dに対して、過積載拒否を理由と
して、出荷業務以外の雑務に従事させる等の差別を行ってはならない。
二 被申立人は、申立人組合から昭和六二年四月一五日以降申入れのあった、申立
人組合大東洋生コン分会員の昭和六二年夏季、同年年末、及び同六三年夏季一時金
を議題とする団体交渉に、申立人組合が過積載に応じることを条件とすることな
く、誠意をもって応じなければならない。
三 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

 年 月 日
 全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部
執行委員長 F殿
有限会社 大東洋生コン
代表取締役 G
 当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第七条
第一号、第二号及び第三号に該当する不当労働行為であると認められましたので、
今後このような行為を繰り返さないようにいたします。

1 貴組合大東洋生コン分会員に対し、過積載等の拒否を理由として配車差別及び
残業差別等を行ったこと
2 貴組合大東洋生コン分会員に対し、昭和六一年年末一時金の支給に当たって差
別的な取扱いを行い、さらに同六二年夏季一時金を支給しなかったこと
3 貴組合との間に開催された昭和六一年九月九日、同年一〇月二八日、同年一二
月一〇日及び同六二年三月一八日の団体交渉において、分会員の出席を認めない等
の態度をとり誠実に対応しなかったこと、及び昭和六二年四月一五日以降申入れの
あった昭和六二年夏季、同年年末、及び同六三年夏季一時金を議題とする団体交渉
において、貴組合が過積載に応じることを条件として誠実に対応しなかったこと
4 貴組合大東洋生コン分会員に対し、昭和六一年二月二八日以降待機時間中、車
外に出ることや座席のシートを後ろに倒すこと等を禁じたりする嫌がらせを行った
こと
       理   由
第一 認定した事実
一 当事者等
1 被申立人有限会社大東洋生コン(以下「会社」という)は、肩書地において、
生コンクリートの製造販売を営んでおり、その従業員は本件審問終結時二名であ
る。
 なお、会社は昭和六〇年七月一二日、千原建設株式会社(以下「千原建設」とい
う)の生コン事業及び従業員を承継して設立されたものである。
2 申立人全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下「組合」とい
う)は、関西地域において主としてセメント、生コン産業等に従事する労働者で組
織された労働組合であり、その組合員は本件審問終結時約一、七〇〇名である。
 なお、会社には、組合の下部組織として、会社の従業員で組織されている大東洋
生コン分会(以下「分会」という)があり、その分会員は本件審問終結時一名であ
る。
二 分会結成後の労使関係の経緯について
1 昭和六〇年五月一八日、千原建設の従業員D(以下「D」という)、同C(以
下「C」という)、同A(以下「A」という)、同B(以下「B」という)の四名
は組合に加入し、分会を結成した旨千原建設に通知した。
2 昭和六〇年六月二一日、組合及び分会は、千原建設との間に残業、一時金基準
等についての協定(以下「協定」という)を締結した。
 協定には、①従業員の残業の平均化を行うこと、但し当月調整不可能な場合は翌
月調整を行うこと、②残業手当は最低補償を五〇時間とすること、③一時金につい
ては、夏季一時金は前年の九月二一日から当年の三月二〇日まで、年末一時金は当
年の三月二一日から九月二〇日まで在籍した者であって、所定労働日を勤務した者
に対して支給すること等が規定されていた。
3 昭和六〇年一一月二六日、会社は、分会員C、A、B(以下「Cら三名」とい
う)に対し、会社の前にある喫茶店の女店員に対して破廉恥な行為があったとの理
由で自宅待機を命じた。しかし、Cら三名はそのような事実はないとして、組合と
共に会社に来て抗議を行ったため、会社は反省が見られないとして、同年一二月一
二日、Cら三名を解雇した。これに対し組合は、解雇の撤回を求めて昭和六一年一
月二二日から、ストライキ等の争議行為を行った。
4 昭和六一年一月二九日、会社は、組合との団体交渉の席上、Cら三名の解雇を
撤回し、同年二月一日から原職に復帰させることを認めた。
5 昭和六一年二月三日、会社は組合に対し、三名について①自宅待機から原職復
帰に至るまでの間の賃金を支払う、②解決金は支払わない、③ストライキ中の賃金
をカットするとの解決案を示した。
6 昭和六一年二月五日、組合は会社に対し、解決金の支払いと謝罪文の要求を行
い、同月七日にはストライキ中の賃金補償をも要求した。組合は要求実現のため、
同月八日から会社施設への組合旗の設置、ステッカーの貼付、勤務中の腕章着用を
行い、同月一四日にはストライキ通告をし、以降ストライキやピケッティングを繰
り返した。さらに組合は、分会員三名の賃金の一括払いを求めたが、会社はこれら
の組合の要求に応じず、組合旗、ステッカーを無断で撤去し、腕章の着用を禁止し
た。
7 昭和六一年二月二八日、組合及び分会は上記の会社の行為に抗議し、会社に対
し、①生コンクリート車の法定積載量以上の積載(以下「過積載」という)はしな
い、②三トン規制のある道路には許可証がない限り入らない(以下「三トン規制道
路への進入拒否」という)、③昼休み中の就労をしない(以下①、②、③を総称し
て「過積載等の拒否」という)旨通告した。
 なお、会社のミキサー車は四トン車であるため、法定積載量は1.75m3まで
であるが、従来二・五m3積載の過積載が行われており、また三トン規制のある道
路でも、許可証の交付を受けないまま走行していた。
8 昭和六一年四月上旬、前記6の組合が要求していた解決金の支払いと謝罪文と
については組合と会社の間に決着がつかないまま、組合はストライキ等の争議行為
を解除したが、過積載等の拒否は撤回しなかった。
9 分会員四名のうち、Cは昭和六二年一月に組合を脱退、同年三月に会社を退職
した。また、Bは昭和六二年四月三〇日に、Aは同年五月一三日にそれぞれ退職
し、両名は共に組合を脱退したため、分会員はDのみとなった。
三 配車・残業割当ての変化等について
1 過積載等の拒否通告前
① 会社での従業員に対する配車割当ては、月初めに会社が作成する一カ月分の従
業員の出荷順を記載した出荷一覧表に従って行われていた。
② 午後五時以降の残業時間に食い込む出荷については、原則として帰社した車両
の順に、その都度会社の指示を受けて出荷に当たることとなっていた。但し、特定
の従業員に残業が偏る場合には、残業時間が平均化するよう調整が行われていた。
 また、残業時間が五〇時間を超えない場合には、五〇時間の残業補償手当が支給
されていた。
③ 昼休みは午後〇時から一時までとなっていたが、実際上出荷予定のある場合に
は、分会員は一五分から三〇分程度で昼食を済ませ、残りの時間は就労していた。
 なお、昼休みが一五分以内であったときには九〇分、三〇分以内であれば六〇分
が残業時間として計算されていた。
④ 作業指示が出されるまでの従業員の待機時間(以下「待機時間」という)にお
いて、従業員は自車の近くでキャッチボール等をして過ごしており、これに対して
会社から注意を受けるようなことはなかった。
2 過積載等の拒否通告後
① 会社は、出荷一覧表を無視して分会員に対する配車割当てをほとんど行わない
ようになったため、分会員の待機時間はきわめて長くなり、一カ月に数回午前八時
から午後五時まで待機状態が続くようなことがあった。
② 会社は、残業時間に食い込む出荷が予定されている場合に、分会員が先に帰社
して待機しているのにこれに出荷割当てせず、後に帰社した非組合員に出荷割当て
をするようになり、分会員は残業を指示されることがほとんどなくなった。また、
五〇時間の残業補償手当は支給されなくなり、この結果、分会員の給料は非組合員
に比べて約一〇万円ほど低くなることもあった。
③ 会社は分会員に対して、待機時間中車から降りて他の運転手と雑談しないこ
と、トイレに行くときは無線で確認をとり指示を仰いでから行くこと、座席のシー
トを後ろへ倒さないこと、車内でラジオを聞かないこと、新聞雑誌を読まないこと
等を指示するようになった。
3 昭和六二年四月頃から、Dは、長時間の待機に耐えかねて、待機時間中にミキ
サー車やプラントの修理等の雑用をするようになった。またこのころからDは、給
料の低下に耐えられず、三トン規制道路への進入と、休憩時間中の就労に応じるよ
うになった。この結果同人は、残業を昭和六一年二月二八日以前のように割り当て
られるようになり、五〇時間の残業補償手当も支給されるようになったが、なおも
一週間のうち二日間ほど会社の指示の下、上記のような雑用に従事している。
 なお、これらの雑用は、従来外注で処理されていたものである。
4 会社は昭和六三年七月二八日付け準備書面において、分会員に対して前記2③
記載の指示を今後行わないことを表明し、その後かかる行為は行われていない。
四 昭和六一年九月から同六二年三月の間の団体交渉について
1 昭和六一年七月一七日、組合は会社に対し、同年賃上げ、夏季一時金及び差別
待遇等を議題とする団体交渉を同月二二日に開催するよう文書で申し入れた。これ
に対し会社は、同月二三日、組合に対し、議題に対する回答を行うとともに、団体
交渉を八月一日に開開催するので、会社回答に対しての組合回答を七月二九日まで
に文書で行うようにとの旨の通知を行った。
2 昭和六一年八月一日、会社は組合が上記の文書回答を行わなかったとの理由で
団体交渉を拒否した。
3 昭和六一年八月七日、組合は会社の団体交渉拒否に抗議するとともに、同月一
二日に団体交渉を開催するよう求めたが、会社は、同日は都合が悪い旨分会員を通
じて組合に連絡した。
4 昭和六一年八月二〇日、会社は、組合の前記3の同年八月七日付け抗議並びに
申入書に対する回答書の中で、団体交渉を同月二七日に開催するが、同月二六日ま
でに会社回答に対する組合の文書回答のない場合は、団体交渉の意思なきものとみ
なすとの旨通知した。
5 昭和六一年八月二二日、組合は会社に対し、会社の同年八月二〇日付け回答書
に対する抗議並びに申入書を送付した。これに対し会社は、組合から八月二二日付
け抗議文が来たからとの理由で同月二七日の団体交渉を拒否した。
6 昭和六一年九月二日、組合が団体交渉を同月九日に開催するよう申し入れたと
ころ、会社はこれを受け入れ、同日、前記1の申し入れ内容を議題とする団体交渉
が開催された。
7 昭和六一年一〇月一五日、組合が同年賃上げ、一時金及び組合事務所の設置等
を議題とする団体交渉を同月二一日に開催するよう求めたところ、会社は同月二〇
日付けで組合要求に対して回答するとともに、団体交渉を同月二八日に開催する
が、会社回答に対して同月二五日までに組合が文書回答しなければ拒否したものと
みなす旨通知した。
8 昭和六一年一〇月二八日、団体交渉が開かれたが、交渉の冒頭、会社が出席組
合員に対し分会員からの委任状の提出を求めたため、委任状提出は必要でないとす
る組合との間で話合いは平行線をたどり、議題の交渉に入れないまま約一〇分で終
了した。
 なお、会社はこれまで組合に対し分会員の委任状の提出を求めたことはない。ま
た、昭和六一年一月以降組合は再三分会員の団体交渉への出席を要求したが、会社
はこれを認めていなかった。
9 昭和六一年一一月二九日、組合は会社に対し前記6及び8の団体交渉議事録確
認事項等を議題とする団体交渉を一二月八日に開催するよう申し入れた。会社はこ
れに対し、議題に対して同年一二月二日付けで回答するとともに、団体交渉を同月
一〇日に開催するが、八日までに組合の文書回答がないときは会社の回答を全て理
解したものとして対処する旨通知した。
10 昭和六一年一二月一〇日、団体交渉が開催されたが、会社は、要求に対して
は全て文書回答しているとおりであると述べるのみで、交渉は進展しないまま約八
分で終了した。
11 昭和六二年二月一四日、組合が就業規則、差別待遇等を議題とする団体交渉
を同月二六日に開催するよう申し入れたところ、会社は議題に対して同月一七日付
けで回答するとともに、団体交渉を三月五日に開催するが、二月二八日までに組合
から文書回答がなければ、会社回答に全て賛同したものとして団体交渉に臨むの
で、同団体交渉の席上組合は不服を申し入れないこと等の旨を通知した。
12 昭和六二年二月二〇日、組合は会社に対し、申入書において前記11の通知
に係る回答をするとともに、三月五日は都合が悪いので団体交渉を同月四日に開催
するよう求めた。これに対して会社は、二月二四日付け回答書を送付し、これにつ
いて三月二日までに文書回答がないときは、団体交渉拒否として処置する旨通知し
た。なお期日については、会社の二月一七日付け回答書のとおり三月五日に開催す
るとして変更しなかった。
13 昭和六二年三月二日、組合は、会社指定の三月五日は都合が悪いので三月一
〇日または一二日のいずれかに変更するよう申し入れたところ、会社は三月六日、
団体交渉を同月一八日に開催する旨通知した。
14 昭和六二年三月一八日、団体交渉が開かれたが、会社は、組合の要求事項に
ついてはいずれも以前に文書で回答していると述べるのみで、交渉は約一五分で終
了した。
15 その後、会社は昭和六三年一月二〇日組合に対して、団体交渉への分会員の
出席を認める旨の文書回答を行い、また、同年四月二三日付けの準備書面におい
て、団体交渉を行うにつき分会員からの委任状を要求したり、団体交渉への分会員
の出席を拒否したりする等の行為は違法であり、二度と行わないことを確約する旨
表明した。それ以降かかる行為は行われなくなり、また、団体交渉開催までの間に
会社と組合との間で再三行われていた文書のやり取りも行われなくなった。
五 一時金等の支給について
1 昭和六〇年度において、会社は、組合との交渉の結果、全従業員に対し一律に
夏季二五万円、年末二七万円の一時金を支給した。
2 昭和六一年夏季一時金については、会社は非組合員である従業員H(以下
「H」という)、I(以下「I」という)の二名に対して貸付けの名目で各二五万
円を支給したが、組合の一時金要求に対しては、支給できるような経営状態ではな
く、非組合員に対しても支給していないとの旨回答し、分会員には支給しなかっ
た。
3 昭和六一年年末一時金について、会社は組合の要求に対しては、経営状態が劣
悪で支給できないとしながら、同年一二月二日、組合及び分会に対して、「同年三
月二一日から同年九月二〇日までの間に一、〇〇〇m3以上出荷した者には、労務
提供に多大の協力ををし会社に貢献したことに対して、一、〇〇〇m3を超える量
について一m3当たり七二〇円の出荷協力金を支給する」旨通知した。
 なお、同年三月二一日から同年九月二〇日までの各人別の出荷数量は次のとおり
であった。
<03036-001>
<03036-002>
4 昭和六一年一二月二〇日、会社は、H及びIにそれぞれ二五〇、二〇〇円、二
三三、七一二円を出荷協力金として支給したが、分会員には支給しなかった。
 なお、組合の昭和六一年年末一時金の支給を求める本件昭和六二年(不)第三七
号事件申立ての後、昭和六三年四月一五日、会社はDに対して、同六一年年末一時
金として三〇万円を支給しようとしたが受領を拒否され、同月二六日これを供託し
た。
その後Dはこれを受領した。
5 昭和六二年四月一五日、組合は会社に対し、昭和六二年夏季一時金の要求を行
うとともに、団体交渉の申入れを行った。これに対して会社は、同月二一日、原資
がなく支給する意思がないとの旨の文書回答を行った。
6 昭和六三年一月一四日、組合は、昭和六二年夏季・年末一時金の支給を求め、
併せて団体交渉の申入れを行ったが、会社は、同月二〇日、一時金については支払
い能力がないとの文書回答を行った。
7 昭和六三年五月一四日、団体交渉において会社は、一・七五m3の積載では非
効率で利益が上がらないので、昭和六二年夏季・年末一時金は一切支払えない、非
組合員にも支払っていない旨主張した。
 なお、会社は昭和六二年七月末頃、I、Hの両名に対しては、同年夏季一時金と
して約二七万円から税金相当額を差し引いた金員を支給していた。
8 昭和六三年七月六日、団体交渉において会社は、いずれにしても一時金の支給
には過積載拒否の解除が先決であるとの旨主張した。
9 昭和六三年七月一四日、団体交渉において、組合が会社に対し、労使関係の正
常化を図る前提として昭和六三年夏季一時金の解決を求めたところ、会社は、同月
二〇日団体交渉において、積載量を二・五m3に戻せば年末一時金については検討
する旨回答した。
10 昭和六三年八月四日、団体交渉において、会社は同年夏季一時金を三万円と
するとの回答を行ったが、組合は、昭和六一年年末一時金を基準として支払うべき
であると主張し、話合いは平行線をたどったままであった。
11 昭和六三年八月二三日、団体交渉において会社は、同年夏季一時金について
は前回どおりの回答を繰り返し、積載量を二・五m3に戻せば同年年末一時金につ
いては検討するとの旨主張した。
第二 判断
一 過積載等の拒否を理由とする配車・残業差別について
1 当事者の主張要旨
ア 組合は次のとおり主張する。
① 会社は、分会員に対し、過積載等の拒否を理由として、配車差別、残業差別、
協定に基づく残業補償手当の支給を拒む等の差別を行った。
② 会社は、分会員が三トン規制道路への進入と昼休み中の就労を拒否しないよう
になってからも、過積載拒否を理由として、同人を過積載を要しない出荷業務があ
るにもかかわらず出荷業務以外の雑務に従事させるなどの差別を行っている。
 かかる会社の行為は不当労働行為である。
イ 会社は次のとおり主張する。
① 組合は過積載等を行うことを了承しており、協定はそれを前提として締結され
たものである。会社が協定に基づく残業補償手当の支給や残業の平均化を行わなか
ったのは、組合の協定違反のために、協定の適用ができなかったためである。ま
た、会社における正常な業務の遂行は、過積載等の行為を前提としており、分会員
の過積載等の拒否は労務提供拒否の一形態であるから、拒否をしない従業員との間
に就労上の差異が生ずるのは当然である。
② 過積載拒否そのことを理由としてDを雑務に従事させたことはない。
 よって、以下判断する。
2 不当労働行為の成否
ア 前記第一、一1、二2、3、4、5、6、7、三1①②及び2①②認定によれ
ば、①会社と組合及び分会との間に、残業補償手当の支給等を定めた協定が締結さ
れていること、②組合はCら三名の解雇問題に端を発した解決金の支払い及び謝罪
文についての要求実現のため、昭和六一年二月二八日以降分会員の過積載等を拒否
したこと、このため会社は、③過積載等の拒否の対象外の出荷についても分会員へ
の配車割当てを減らしたため、結果的に分会員には長時間の待機が続いたこと、④
分会員に対して残業を割り当てず、残業時間が五〇時間に満たない場合にも支給さ
れていた五〇時間の残業補償手当を支給しなかったこと、が認められる。
 そこで、会社の主張①について検討するに、分会員が昭和六一年二月二八日以前
に過積載等に応じていたことは事実であるが、協定が分会員が過積載等に応じるこ
とを前提に締結されたと認めるに足る事実の疎明はない。
 また、組合は要求実現に向けて過積載等の拒否を分会員に指示し、分会員はこの
方針に従って過積載等の拒否を行ったものであるが、そもそも過積載や三トン規制
道路への進入が法令により禁止されているものであることは明らかであり、昼休み
中の就労についても、特段の事由がない限り一般的に従業員はこれを拒否できるも
のである。したがって、分会員が過積載等を拒否したからと言って、過積載等の拒
否の対象外の出荷についてまで配車割当てを減少させたり、また、協定に基づく残
業補償手当を支給しない等の不利益な取扱いをなすことが認められるものではな
い。
 よって、会社の主張①は失当である。
イ 会社の主張②について検討するに、前記第一、三3認定によれば、①Dは経済
的理由から三トン規制道路への進入と昼休み中の就労を拒否しないようになったこ
と、②それ以降残業に関しては差別されなくなったが、なおも同人は、一週間に二
日間ほどは出荷割当てされず、しかも従来外注で処理されていた出荷業務以外の雑
務に従事させられていることが認められる。これらのことからすると、会社はDに
対して残業に関しての差別は解消させたものの、配車についてはなお過積載拒否を
理由として差別を継続させ、同人に配車せず出荷業務以外の雑務に従事させていた
と解するのが相当である。
 よって、会社の主張②は失当である。
ウ 以上会社の主張はいずれも失当であり、会社の分会員に対する配車・残業等の
差別は、分会員が会社の過積載等の要求に応じないことに対する報復として行われ
た不利益取扱いであり、もって組合の弱体化を企図したものと判断するのが相当で
ある。よって、かかる会社の行為は労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する
不当労働行為である。
二 一時金等の支給について
1 当事者の主張要旨
ア 組合は次のとおり主張する。
① 会社は、非組合員のみに出荷協力金と称する昭和六一年年末一時金相当額を支
給し、分会員には支給しなかった。
② 昭和六二年夏季・年末一時金については、非組合員に対してのみ秘密裡に支給
し、分会員には過積載拒否を理由として支給していない。
 かかる会社の行為は、分会員を非組合員より不利益に取り扱うものであり不当労
働行為である。
イ 会社は次のとおり主張する。
① 出荷協力金は正常な労務の提供に対して支払われるものであって、正常な労務
提供を拒否した分会員にはこれを支給することはできない。
② 従業員に対し、昭和六二年夏季・年末一時金を支給した事実はない。
 よって、以下判断する。
2 不当労働行為の成否
ア 会社の主張①について検討するに、過積載等の拒否については前記第二、一2
判断のとおりであり、分会員は違法行為を拒否したに過ぎず、したがってこれを理
由とした不利益な取扱いは許されるものではない。また、前記第一、五3認定によ
れば、分会員の出荷協力金支給対象期間中の出荷量は、会社の決定した支給基準を
大きく下回っていることが認められるが、前記第二、一2判断のとおり、分会員は
過積載等の拒否を理由として配車・残業差別を受けていたのであるから、分会員の
出荷量と非組合員のそれとの間に大きな格差が生じることは当然である。
 次に、出荷協力金の性格については、前記第一、二2、五1、3及び4認定のと
おり、①昭和六〇年夏季・年末には一時金として全従業員一律にそれぞれ二五万
円、二七万円の支給がされていること、②昭和六一年年末に支給された出荷協力金
の支対象期間は例年の年末一時金のそれと同じであること、③非組合員二名は例年
の年末一時金支給時とほぼ同じ時期に、それぞれ約二五万円、約二三万円の出荷協
力金の支給を受けたことが認められる。すなわち出荷協力金は、その支給対象期
間、支給時期及び支給額からして年末一時金と何ら変わるところがないものと考え
られる。
 これらのことからすると、会社は、非組合員に対してのみ例年と変わらない程度
の一時金を支給し、かつ分会員には支給しないで済ませるために、一〇〇〇m3を
超える部分一m3につき七二〇円という金額を支給額から逆算したものと言わざる
を得ず、会社の出荷協力金の支給は、分会員の過積載等の拒否を理由とした配車・
残業差別によって生じた非組合員との間の出荷量の格差を利用して分会員を不利益
に取り扱うことを意図して行われたものと判断するのが相当である。
 よって、会社の主張①は失当である。
イ 会社の主張②について検討するに、前記第一、五7認定のとおり、昭和六二年
夏季一時金については、会社は非組合員に対してのみ同一時金相当額を支給してい
たことが認められるので、会社の主張は事実に反する。
 よって、会社の主張②は失当である。
ウ 以上会社の主張はいずれも失当であり、非組合員には昭和六一年年末一時金相
当額を出荷協力金として、さらに昭和六二年夏季一時金相当額を支給しながら、分
会員に対してはこれらをいずれも支給しないのは、過積載等の拒否を理由として分
会員を不利益に取り扱い、もって組合の弱体化を企図したものであると言わざるを
得ず、かかる会社の行為は労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働
行為である。
 なお、昭和六二年年末一時金については、非組合員に対するその支給の有無は明
らかではないが、会社と組合との間においては、後述のとおり同年夏季一時金同様
未だ妥結に至っていないと認められるので、団体交渉によって解決されるべきもの
と考える。
三 一時金を議題とする団体交渉について
1 当事者の主張要旨
ア 組合は次のとおり主張する。
 会社は昭和六二年夏季・年末及び同六三年夏季の各一時金を議題とする団体交渉
において、分会員が過積載拒否を撤回すべきであるとの主張に固執し、誠意をもっ
て団体交渉に応じていない。
イ 会社は次のとおり主張する。
 会社は団体交渉に誠実に対応しており、組合の要求事項が認められなかったから
と言って、これをもって直ちに不当労働行為であると言うことはできない。
 よって、以下判断する。
2 不当労働行為の成否
 会社の主張について検討するに、前記第一、五7ないし11認定によれば、①会
社と組合との間で昭和六二年夏季・年末及び同六三年夏季の各一時金を議題とする
団体交渉が計六回開催されているが、会社は一貫して分会員が過積載拒否を撤回し
ない限り一時金は支給できないとしていること、②昭和六三年夏季一時金について
会社は三万円の金額提示を行ったが、これを不服とする組合との間で交渉は妥結に
至らなかったことが認められる。
 このように、昭和六二年以降の一時金交渉において、会社は一時金問題の解決は
分会員の過積載拒否撤回を前提としてしかあり得ないとの態度を固持しており、ま
た、昭和六三年夏季一時金についての会社回答は、前記第一、五2、4及び7認定
の昭和六一年夏季・年末及び同六二年夏季の各一時金相当額として非組合員が受け
取った金額、並びに昭和六一年年末一時金としてDが受領した供託金の額と比べて
きわめて低額である。
 会社が一時金支給の前提条件としていた過積載が前記第二、一2判断のとおり違
法行為を強いるものであることからすると、これに応じないことを理由に一時金を
全く支給しない、あるいはきわめて低額の回答しか示さない会社の対応は、誠実に
団体交渉に応じたものとは言えず、到底是認できるものではない。よって、かかる
会社の行為は労働組合法第七条第二号に該当する不当労働行為である。
四 昭和六一年九月から同六二年三月の間の団体交渉について
1 当事者の主張要旨
ア 組合は次のとおり主張する。
 会社が、昭和六一年九月九日から同六二年三月一八日までの間団体交渉の開催に
ついて、会社の回答に対し組合が文書回答しなければ団体交渉に応じない、また、
分会員の出席を認めない、さらには分会員の委任状を要求する等の態度をとったの
は、団体交渉の開催に不当な制限を加えるものであり、不当労働行為である。
イ 会社は次のとおり主張する。
① 組合の文書回答がないことを理由として団体交渉を拒否したことはない。
② 交渉権も決定権もない分会員が団体交渉に出席する必要はない。委任状につい
ても、組合が分会員の委任を受けて交渉を行うのであれば、その提出を求めるのは
当然である。
 よって、以下判断する。
2 不当労働行為の成否
ア 会社の主張①について検討するに、前記第一、四1、2、3、4、7、9、1
0、11、12、13及び14認定によれば、会社は、①団体交渉の開催に先立っ
て会社回答に対する組合の文書回答を求めたこと、②昭和六一年八月一日には組合
から文書回答が提出されていないとして団体交渉を拒否したこと、③それ以降も、
組合の文書回答がなければ団体交渉を拒否したものとみなす等の旨の通知を繰り返
していたことが認められる。
 これらのことからすると、組合から文書回答が提出されなかったという理由で団
体交渉を拒否したことはないとする会社の主張は事実に反しており、会社の主張①
は失当である。
イ 会社の主張②について検討するに、前記第一、四8認定によれば、会社は①昭
和六一年一月以降団体交渉への分会員の出席を認めなかったこと、②昭和六一年一
〇月二八日の団体交渉において、組合に委任状の提出を要求したため、実質的な団
体交渉が行われかったことが認められる。
 ところで、団体交渉に誰が出席するかは組合が独自に決定する問題であり、本件
組合の会社に対する団体交渉要求が、分会員の労働条件に関することであることか
らみても、会社が分会員の団体交渉への出席を拒むことは是認できない。また、委
任状に関しては、従来会社が組合に提出を求めたことがないことに照らしても、こ
の段階で委任状提出を求めたことは何ら根拠のあることとは考えられない。
 よって、会社の主張②は失当である。
ウ 以上会社の主張はいずれも失当であり、団体交渉に臨む会社の対応は誠実であ
ったとは言えず、かかる会社の行為は労働組合法第七条第二号に該当する不当労働
行為である。
五 待機時間中の指示について
1 当事者の主張要旨
ア 組合は次のとおり主張する。
 会社が分会員に対し、待機時間中車外に出ることや、新聞雑誌を読むこと、座席
のシートを後ろに倒すこと等を禁じたのは、組合を嫌悪して行った分会員に対する
嫌がらせであり、不当労働行為である。
イ 会社は次のとおり主張する。
 非組合員が就労している最中に、分会員が車外で雑談をしたりするのを許してい
ては、非組合員の勤労意欲を損なうので、このような行為を注意したまでであり、
嫌がらせではない。
 よって、以下判断する。
2 不当労働行為の成否
 前記第一、三1④及び2①、③認定によれば、①昭和六一年三月頃から、分会員
は過積載等を拒否したことを契機に待機時間が従来より長くなったこと、②会社は
従来、従業員の待機時間中の行動について特段規制していなかったことが認められ
る。ところで、分会員の待機時間中の行動については全く自由ということはできな
いにしても、配車等の業務指示に支障のない範囲において、従業員にはある程度の
自由が許されていたことからすれば、分会員が過積載等を拒否して以降行われるよ
うになった、前記第一、三2③認定の車外に出て雑談しないこと、車内でラジオを
聞いたり新聞雑誌を読んだりしないこと等の会社の指示は、非組合員の勤労意欲に
与える影響を考慮したとしてもその必要限度を著しく超えるものであり、分会員に
対する嫌がらせであると判断せざるを得ない。したがって、会社はこのような指示
を行うことによって、分会員に肉体的精神的苦痛を与え、ひいては組合の弱体化を
企図したものといわざるを得ず、かかる会社の行為は労働組合法第七条第一号及び
第三号に該当する不当労働行為である。
六 救済方法
1 組合は、三トン規制道路への進入、昼休み中の就労拒否を理由とした配車・残
業等の差別の禁止をも求めるが、前記第一、三3認定のとおり、分会員は昭和六二
年四月以降これらの行為を拒否しておらず、これを理由とした差別的取扱いを受け
ていないのであるから、この点については、主文三の救済をもって足るものと考え
る。
2 組合は、Dに対する昭和六二年夏季・年末一時金の支給を求めるが、同一時金
については、前記第二、二2判断のとおり支給額については団体交渉によって決せ
られるべきであると考えるので、主文二の救済が相当であると考える。
3 申立人は、陳謝文の掲示を求めるが、主文三の救済をもって足るものと考え
る。
 以上の事実認定及び判断に基づき、当委員会は、労働組合法第二七条及び労働委
員会規則第四三条により主文のとおり命令する。
平成元年一二月一三日
大阪府地方労働委員会
会長 J(印)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛