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平成27年3月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成24年(ワ)第31440号特許権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日平成27年1月21日
判決
アメリカ合衆国テキサス州<以下略>
原告アダプティックスインコーポレイテッド
同訴訟代理人弁護士飯田秀郷
同隈部泰正
同森山航洋
同訴訟代理人弁理士黒田博道
同北口智英
東京都中央区<以下略>
被告ZTEジャパン株式会社
同訴訟代理人弁護士城山康文
同訴訟復代理人弁護士後藤未来
同﨑地康文
同岡浩喜
同訴訟復代理人弁理士金山賢教
同補佐人弁理士市川英彦
同青木孝博
主文
1被告は,別紙1物件目録記載4のLTE用基地局施設を輸入し,譲渡し,貸
し渡し,又は,譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,別紙1物件目録記載1ないし4のLTE用基地局施設を輸入し,譲
渡し,貸し渡し,又は,譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
第2事案の概要
1本件は,「直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)セルラー・ネット
ワークの媒体アクセス制御」という名称の発明に関する特許権(特許第39
80478号。以下「本件特許権1」といい,同特許権に係る特許を「本件
特許1」という。)及び「適応クラスタ構成及び切替による多重キャリア通
信」という名称の発明に関する特許権(特許第4213466号。以下「本
件特許権2」といい,同特許権に係る特許を「本件特許2」という。)を有
する原告が,被告に対し,別紙物件目録記載1ないし4のLTE用基地局施
設(以下「被告基地局施設製品」という。)の輸入販売等は,①物の発明で
ある本件特許1の特許請求の範囲の請求項32の発明(以下「本件発明1-
32」という。)に係る本件特許権1の直接侵害であり,②ネットワークの
発明である本件特許1の特許請求の範囲の請求項1の発明(以下「本件発明
1-1」という。),方法の発明である,本件特許1の特許請求の範囲の請
求項7の発明(以下「本件発明1-7」といい,本件発明1-1,1-32
と併せて「本件発明1」という。),本件特許2の特許請求の範囲の請求項
1及び3の発明(以下,それぞれ「本件発明2-1」「本件発明2-3」と
いい,併せて「本件発明2」という。)に係る本件特許権1及び2のそれぞ
れ間接侵害であると主張して,被告基地局施設製品の輸入等の差止めを求め
る事案である。
2前提となる事実(当事者間に争いがない事実以外は,末尾に証拠等を掲記す
る。)
(1)当事者
ア原告は,アメリカ合衆国デラウェア州において設立され,同国テキサス
州に本店を有する米国法人である(弁論の全趣旨)。
イ被告は,中華人民共和国広東省深圳市に本社を置く中国法人ZTE
corporation(中興通訊股份有限公司)の子会社の日本法人である(乙A
11)。
(2)本件特許権1
ア原告は,以下の特許権(本件特許権1)を保有している。
特許登録番号第3980478号
出願日平成13年10月10日
公表日平成16年8月5日
登録日平成19年7月6日
優先日平成12年10月10日
優先権主張番号09/685,977
優先権主張国米国(US)
発明の名称直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)セ
ルラー・ネットワークの媒体アクセス制御
特許請求の範囲別紙2特許公報(甲A1)の【特許請求の範
囲】記載のとおり
イ本件発明1-1を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
1-1A直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を使用して,それ
ぞれが複数の基地局のうちの一つの基地局と通信する複数の加入者を含
んでおり,
1-1B前記基地局は,基地局と複数の加入者との間での多重アクセス
と情報交換とを調整するためのロジックを有し,
1-1C該ロジックは,複数の加入者から収集されたフィードバックO
FDMAチャネル情報及び少なくとも一つの他の基地局から収集された
OFDMAチャネル情報に基づいて,複数のOFDMAトラフィック
チャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択し,
1-1Dそして,前記少なくとも一つの他の基地局と協働して前記複数
の加入者のうちの複数に対して結合OFDMAチャネル割り当てを提供
する
1-1Eことを特徴とするセルラー・ネットワーク。
ウ本件発明1-7を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
1-7A複数の基地局から複数の加入者にサウンディング信号を送る段
階と,
1-7B各基地局において,少なくとも一つの加入者及び少なくとも一
つの他の基地局から,複数のOFDMAトラフィックチャネルに関する
チャネル状態情報を受け取る段階と,
1-7C少なくとも一つの加入者及び少なくとも一つの他の基地局から
受け取った前記OFDMAチャネル状態情報と,複数の加入者に関する
アップリンク信号及びダウンリンク信号の推定空間利得とに基づいて,
前記複数の加入者に対して前記複数のOFDMAトラフィックチャネル
からOFDMAトラフィックチャネルを割り当て,
1-7Dそして,前記少なくとも一つの他の基地局と協働して前記複数
の加入者のうちの複数に対して結合OFDMAチャネル割り当てを提供
する,OFDMAマルチユーザトラフィックチャネル割り当てを行う段
階と,
1-7Eを含むことを特徴とする方法。
エ本件発明1-32を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以
下,構成要件1-32E-1,1-32E-2,1-32E-3を併せ
て「構成要件1-32E」ということがある。)。
1-32A少なくとも一つの空間的に分離されたトランシーバと,
1-32B前記少なくとも一つの空間的に分離されたトランシーバに結
合された,アクセス信号検出器及び復調器と,
1-32C空間チャネル及び空間利得推定器と,
1-32Dアップリンク及びダウンリンク信号対干渉雑音計算器と,
1-32E
1-32E-1前記推定器に結合され,広帯域空間チャネル推定と,
加入者及び少なくとも二つの基地局からフィードバックされた測定さ
れたOFDMAチャネル情報及び雑音及び干渉情報とに基づいてOF
DMAチャネル割り当てを判定し,
1-32E-2複数の加入者に対して結合OFDMチャネル割り当て
を提供する,
1-32E-3マルチユーザトラフィックチャネル割り当て器と,
1-32F前記割り当て器に結合されたOFDMAモデムと,
1-32Gを備える装置。
(3)本件特許権2
ア原告は,以下の特許権(本件特許権2)を保有している。
特許登録番号第4213466号
出願日平成13年12月13日
公表日平成16年9月24日
登録日平成20年11月7日
優先日平成12年12月15日
優先権主張番号09/837,701
優先権主張国米国(US)
発明の名称適応クラスタ構成及び切替による多重キャリア
通信
特許請求の範囲別紙3特許公報(甲A3)の【特許請求の範
囲】記載のとおり
イ本件発明2-1を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
2-1AOFDMAシステム内でサブキャリアを割り当てる際に使用
する方法において,
2-1B少なくとも1つのサブキャリアのダイバーシティクラスタを第
1の加入者に割り当てる段階と,
2-1C少なくとも1つのコヒーレンスクラスタを第2の加入者に割り
当てる段階であって,前記少なくとも1つのダイバーシティクラスタと
前記少なくとも1つのコヒーレンスクラスタをそれぞれ同時に使用する
ことによって前記第1及び第2の加入者との通信が生じ得る前記段階
と,
2-1Dセル内の移動中の加入者と静止している加入者の人口が変化し
た時には,クラスタ分類を再構成する段階
2-1Eから成ることを特徴とする方法。
ウ本件発明2-3を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
2-3A前記1つのダイバーシティクラスタを使用する段階は,前記1
つのダイバーシティクラスタのサブキャリア全体に亘るチャネル符合化
ママ
段階を含んでいる
2-3Bことを特徴とする請求項1に記載の方法。
(4)被告製品
ア被告は,別紙1物件目録記載1の「BBUZXSDRシリーズ」に
含まれる同目録記載4の「B8300A」及び「BS8906」の輸入販
売を行っている。
イ被告は,別紙1物件目録記載2の「RRUZXSDRシリーズ」に
含まれる同目録記載4の「R8924DT」の輸入販売を行ったことがあ
る(以下,「B8300A」「BS8906」「R8924DT」を併
せて「被告製品」という。)。
ウ被告は,別紙1物件目録記載2の「RRUZXSDRシリーズ」に
含まれる同目録記載3の「ZXTRR8928D」を試験用に日本に持
ち込んで,WirelessCityPlanning株式会社(以下「WCP」とい
う。)に販売したことがある。
エソフトバンク株式会社は,被告製品を使用してLTE(LongTerm
Evolution)通信事業を行っている。
被告製品は,LTE通信用基地局施設に使用されている(以下,被告
製品を使用した,「LTEにおけるセル間干渉を考慮したスケジューリ
ング方法を備えるネットワーク」を「対象ネットワーク478」とい
い,被告製品を使用した,「マルチセルネットワークにおける空間領域
のスケジューリングを含む移動体通信法」を「対象方法478」,被告
製品を使用した,「ローカライズドRB及びディストリビューテッドR
Bの割り当てを含む移動体通信法」を「対象方法466」という。)。
すなわち,被告製品は,LTE規格に基づくLTE通信に供されている
LTEワイヤレス基地局施設であって,LTE規格上必須とされる構成を
全て備えている(弁論の全趣旨)。
(5)無効審判
ア被告は,本件特許1の特許請求の範囲の請求項1,7の発明〔本件発明
1-1,1-7〕に係る特許について無効審判を請求し(無効2013-
800082。乙B52。なお,複数の請求項を有する特許又は特許権に
ついては,請求項ごとに特許がされ,又は特許権があるものとみなされる
ことがあるが〔特許法185条〕,本件特許1の特許請求の範囲の請求
項1の発明〔本件発明1-1〕に係る特許についての無効審判請求を
「本件発明1-1についての無効審判請求」,無効理由を「本件発明1
-1の進歩性」「本件発明1-1の明確性」のようにいうことがあ
る。),特許庁は,平成26年8月22日,請求は成り立たない旨の審
決をした(乙A9)。
被告は,審決取消訴訟を提起し,本件口頭弁論終結時現在,知財高裁に
係属中である(知財高裁平成26年(行ケ)第10221号。乙A10・
42頁,弁論の全趣旨)。
イ華為技術有限公司は,本件発明1-1,1-7について無効審判を請求
し(無効2013-800141),特許庁は,平成26年8月25日,
請求は成り立たない旨の審決をした(乙B85)。
ウ被告は,本件発明1-32について無効審判を請求し(無効2013-
800235),特許庁は,平成26年11月6日,請求は成り立たない
旨の審決をし(甲C3),この審決は確定した(弁論の全趣旨)。
エ被告は,本件発明2-1,2-3について無効審判を請求し(無効20
13-800083),特許庁は,平成26年3月28日,請求は成り立
たない旨の審決をし(乙A6),この審決は確定した(弁論の全趣旨)。
3争点
(1)争点1(本件発明1の充足論)
争点1-1対象ネットワーク478の本件発明1-1の構成要件充足性
争点1-2対象方法478の本件発明1-7の構成要件充足性
争点1-3被告製品の本件発明1-32の構成要件充足性
(2)争点2(本件発明2の充足論)
争点2-1対象方法466の本件発明2-1の構成要件充足性
争点2-2対象方法466の本件発明2-3の構成要件充足性
(3)争点3(本件特許1の無効論)
争点3-1本件特許1の新規性・進歩性違反の有無1(乙B1を主引例と
するもの)
争点3-2本件特許1の新規性・進歩性違反の有無2(乙B16を主引例
とするもの)
争点3-3本件特許1の新規性・進歩性違反の有無3(乙B21を主引例
とするもの)
争点3-4本件特許1の明確性要件違反の有無
争点3-5本件特許1のサポート要件違反,簡潔性要件違反,実施可能要
件違反の有無
(4)争点4(本件特許2の無効論)
争点4-1本件特許2の新規性・進歩性違反1の有無(乙B17を主引例
とするもの)
争点4-2本件特許2の進歩性違反2の有無(乙B1を主引例とするも
の)
争点4-3本件特許2の明確性要件違反の有無
争点4-4本件特許2のサポート要件違反,実施可能要件違反の有無
(5)争点5(差止めの可否)
争点5-1間接侵害の成否
争点5-2差止めの必要性
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(本件発明1の充足論)
1-1争点1-1(対象ネットワーク478の本件発明1-1の構成要件
充足性)
(原告の主張)
(1)構成要件1-1A
構成要件1-1Aの「直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を使用
して……通信する」は,専らダウンリンクにおいてOFDMAを使用するも
のを含むと解されるところ,対象ネットワーク478は少なくともダウンリ
ンクでOFDMA(OrthogonalFrequencyDivisionMultipleAccess:直
交周波数分割多重アクセス)を使用しており,基地局と通信する複数のユー
ザ端末からなるから,構成要件1-1Aを充足する。もっとも,対象ネット
ワーク478がアップリンクで使用するSC-FDMA(SingleCarrier
FrequencyDivisionMultipleAccess:単一搬送波周波数分割多重アクセ
ス)も,OFDMAの一種である。
(2)構成要件1-1B
対象ネットワーク478は,複数のユーザ端末との間で多重アクセスと情
報交換を行う制御がなされており,この制御は,構成要件1-1Bのロジッ
クに相当するから,構成要件1-1Bを充足する。
(3)構成要件1-1C
対象ネットワーク478における基地局のダウンリンクに関するOFDM
Aのトラフィックチャネルの割り当て(RB〔ResourceBlock:リソース・
ブロック〕の選択によりチャネルが割り当てられる。)は,複数のユーザ端
末から受信したCQI(ChannelQualityIndicator:チャネル品質指標)
及び隣接基地局からLOADINFORMATION情報として受信した
OI(OverloadIndication:干渉過負荷表示),RNTP(Relative
NarrowbandTxPower:相対狭帯域送信電力)及びHII(High
InterferenceIndication:高干渉表示)に基づき,隣接基地局のダウンリ
ンクと干渉が生じないように調整することを含み,複数のRBの組合せの候
補からトラフィックチャネルを割り当てるものであるから,構成要件1-1
Cを充足する。
被告は,OI,RNTP及びHIIの交換についての自白を撤回している
が,自白の撤回には異議がある。
(4)構成要件1-1D
対象ネットワーク478は,隣接する基地局間のOI,RNTP及びHI
Iの交換によって,少なくともダウンリンクのOFDMAトラフィックチャ
ネルの割り当てを調整する。基地局がOFDMAトラフィックチャネルを単
独で割り当てるのではなく,他の基地局と協働して割り当てるOFDMAト
ラフィックチャネルは,他の基地局がそのセル内の他の複数のユーザ端末に
対してOFDMAチャネルを割り当てているという条件のもとに同時に自局
のセル内で複数のユーザ端末に対してOFDMAチャネルを割り当てるか
ら,その割り当ては,「結合OFDMAチャネルの割り当て」に相当する。
したがって,対象ネットワーク478は,構成要件1-1Dを充足する。
(5)構成要件1-1E
対象ネットワーク478は,構成要件1-1Eを充足する。
(被告の主張)
(1)構成要件1-1A
構成要件1-1Aの「直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を使用
して……通信する」とは,ダウンリンクのみならずアップリンクにもOFD
MAを使用する必要があるところ,対象ネットワーク478がアップリンク
で使用するSC-FDMAはOFDMAではないから,構成要件1-1Aを
充足しない。
(2)構成要件1-1B
「多重アクセスと情報交換とを調整するためのロジック」の意味が必ずし
も明瞭ではないが,さしあたり充足性を積極的には争わない。
(3)構成要件1-1C
ア基地局が,隣接の基地局との間で,X2インターフェースで通信し,O
I,RNTP及びHIIといった情報が送信されることは認めるが,対象
ネットワーク478では,アップリンク(OFDMAではない。)はもと
より,ダウンリンクにおいても,基地局によるRBの割り当てが,他の基
地局から送信されたOI,RNTP又はHIIに基づいてなされることは
ないから,構成要件1-1Cを充足しない。
イ被告製品の構成について再度調査を行ったところ,被告製品では,LO
ADINFORMATION(OI,HII及びRNTP)をRBの割
り当てのために使用しないばかりでなく,そもそも基地局間の交換も行っ
ていないことが判明したから,上記アの自白は撤回する。なお,上記アの
点は主要事実でないから,裁判上の自白に当たらない。仮に裁判上の自白
が成立したとしても,自白は真実に反し,錯誤に基づくものである。
(4)構成要件1-1D
「他の基地局と協働」とは,他の基地局から収集された情報に基づいて選
択すること(構成要件1-1C)を意味するものと解されるところ,対象
ネットワーク478においては,アップリンク(OFDMAではない。)は
もとより,ダウンリンクにおいても,基地局によるRBの割り当てが,他の
基地局から送信されたOI,RNTP又はHIIに基づいてなされることは
ないから,構成要件1-1Dを充足しない。
(5)構成要件1-1E
対象ネットワーク478が,セルラー・ネットワークであることは認め
る。
1-2争点1-2(対象方法478の本件発明1-7の構成要件充足性)
(原告の主張)
(1)構成要件1-7A
対象方法478で複数の基地局が発信する同期信号および基準信号は,サ
ウンディング信号に相当するから,構成要件1-7Aを充足する。
(2)構成要件1-7B
対象方法478で,各基地局は少なくとも1つのユーザ端末から複数のO
FDMAトラフィックチャネルに関するチャネル情報であるCQIを受信
し,隣接する基地局から複数のOFDMAトラフィックチャネルに関する
チャネル情報であるLOADINFORMATION(OI,RNTP及
びHII)を受信するから,構成要件1-7Bを充足する。
(3)構成要件1-7C
ア本件発明1-7は,「OFDMAトラフィックチャネル」,「OFDM
Aチャネル状態情報」という技術要素を規定しているにすぎず,少なくと
もダウンリンクにおいて「OFDMAトラフィックチャネル」「OFDM
Aチャネル状態情報」という技術要素を備えるOFDMAマルチユーザト
ラフィックチャネル割り当て方法であれば足りる。
イ対象方法478において,基地局は,他の基地局からOI,RNTP及
びHIIを受け取り,これに基づきOFDMAトラフィックチャネルを割
り当てている。
ウ「空間利得」とは,送信側の特定アンテナから受信側の特定アンテナに
至る伝送状態(振幅及び位相の変化)の集合(この集合の行列表現がチャ
ネル・マトリクスである。)を意味することは,この分野の技術常識であ
る。
LTE規格においては,基地局があるユーザ端末宛ての伝送に適するプ
リコーディングウェイト行列を選択するための情報として,ユーザ端末
は,望ましいレイヤ数を示すRI(RankIndication:ランク指示子)
と,そのレイヤ数において望ましいプリコーディングウェイト行列をあら
かじめ用意されたコードブックに基づき指標化したPMI(Precoding
MatrixIndicator:プリコーディング行列指標)及びCQIを,ダウンリ
ンクのチャネル状態推定値に基づいて報告する。基地局は,ユーザ端末か
らのCQI,RI及びPMIから空間利得を推定し,プリコーディング
ウェイト行列を決定する。
複数アンテナ技術を用いる際には,送信アンテナからの信号を受信する
受信アンテナで同相になるような制御が必要であるため,推定空間利得
(チャネル・マトリクス)が必須である。これはアップリンク信号及びダ
ウンリンク信号とも同様である。
エしたがって,対象方法478は,構成要件1-7Cを充足する。
(4)構成要件1-7D
対象方法478は,隣接する基地局間のOI,RNTP及びHIIの交換
によって,少なくともダウンリンクのOFDMAトラフィックチャネルの割
り当てを調整するから,構成要件1-7Dを充足する。
(5)構成要件1-7E
対象方法478は,構成要件1-7Eを充足する。
(被告の主張)
(1)構成要件1-7A
充足性については特に争わない。
(2)構成要件1-7B
対象方法478は,構成要件1-1Bを充足しない。
(3)構成要件1-7C
ア「アップリンク信号……の推定空間利得……とに基づいて……OFDM
Aトラフィックチャネルを割り当て」るのであるから,ダウンリンクのみ
ならずアップリンクにおいてもOFDMAを用いる必要があると解される
ところ,対象方法478がアップリンクで使用するSC-FDMAはOF
DMAではない。
イ対象方法478において,OI,RNTP及びHIIを参照してRBの
割り当てを行うことはないから,「他の基地局から受け取った前記OFD
MAチャネル状態情報……に基づいて……OFDMAトラフィックチャネ
ルを割り当て」ることはない。
ウ空間チャネル行列は「空間利得」を示すものではなく,空間チャネル行
列を得ることを空間利得の推定ということもない。
対象方法478では,「アップリンク信号及びダウンリンク信号の推定
空間利得」は存在しないし,これらに基づいた「割り当て」がなされるこ
とはない。
また,仮に「推定空間利得」がチャネル・マトリクスを意味するとして
も,対象方法478では,アップリンクにプリコーディングを用いないた
め,アップリンク信号に関しては,プリコーディングのために必要とされ
るチャネル・マトリクスが存在しない。それゆえ,「アップリンク信号の
推定空間利得」なるものは存在しないし,「アップリンク信号の推定空間
利得」に基づいた「割り当て」も存在しない。
加えて,チャネル・マトリクスは,RBの割り当てに際して考慮されな
いから,チャネル・マトリクスが「推定空間利得」に該当したとしても,
「推定空間利得」に基づく「割り当て」は存在しない。
エしたがって,対象方法478は構成要件1-7Cを充足しない。
(4)構成要件1-7D
「他の基地局と協働」とは,他の基地局から収集された情報に基づいて選
択すること(構成要件1-7C)を意味するものと解されるところ,対象方
法478においては,アップリンク(OFDMAではない。)はもとより,
ダウンリンクにおいても,基地局によるRBの割り当てが,他の基地局から
送信されたOI,RNTP又はHIIに基づいてなされることはないから,
構成要件1-7Dを充足しない。
(5)構成要件1-7E
充足性は特に争わない。
1-3争点1-3(被告製品の本件発明1-32の構成要件充足性)
(原告の主張)
(1)構成要件1-32A
LTE規格のMIMO伝送をする基地局は,物理的に異なる複数のアンテ
ナを備えるから,構成要件1-32Aを充足する。
(2)構成要件1-32B
この複数アンテナを用いたMIMO伝送をするため,基地局及びユーザ端
末はいずれも送受信する信号を検出する検出器及びこれを復調する復調器を
備えるから,構成要件1-32Bを充足する。
(3)構成要件1-32C
複数アンテナを用いて,ビームフォーミングを行い,又は,空間分割多重
などの空間処理を施して形成される通信経路を「空間チャネル」という。こ
の空間チャネルが備えるチャネル特性及び空間利得を「空間チャネル及び空
間利得」という。
測定された「空間チャネル及び空間利得」は,測定時のものであり,通信
は測定後に行われるから,その通信に用いるのは,測定された「空間チャネ
ル及び空間利得」そのものではなく,「空間チャネル及び空間利得推定」を
したものである。
ダウンリンクの空間チャネル及び空間利得は,フィードバック情報(CQ
I,PMI及びRI)としてユーザ端末から基地局に報告されるところ,基
地局がこれを受信して復調することによってユーザ端末に対するダウンリン
クの空間チャネル及び空間利得が分かる。このような復調機能を備えるもの
が構成要件1-32Cにいう「空間チャネル及び空間利得推定器」に相当
し,被告製品は,そのような機能を備えているから,構成要件1-32Cを
充足する。
(4)構成要件1-32D
構成要件1-32Dにいう「ダウンリンク信号対干渉雑音計算器」とは,
本件特許1の明細書(甲A1)の段落【0042】の「広帯域チャネル及び
雑音及び干渉推定器604」のように,復調されたフィードバック情報から
ダウンリンク信号干渉雑音を得る機能を備えるものをいう。
LTE規格において,基地局に報告されたCQIをリソース割り当てに用
いるためには,基地局においてOFDM変調されかつ符号化されたフィード
バック情報に基づき広帯域チャネル及び雑音及び干渉特性を推定して,復調
することを要することは明らかである。したがって,被告製品は「アップリ
ンク及びダウンリンク信号対干渉雑音計算器」を備えており,構成要件1-
32Dを充足する。
(5)構成要件1-32E
LTE規格の基地局は,複数のユーザ端末からそれぞれフィードバック情
報(CQI,PMI,RI)の報告を受け,これに基づき複数のユーザ端末
との間で各ユーザ・データの通信に用いるRBの少なくとも1つを決定して
トラフィックチャネルとしてそれぞれ割り当てる(スケジューリング及び多
元接続)。多元接続に要するサブキャリアの帯域は,当該基地局が保有する
広帯域にわたるから,複数ユーザ端末に対する空間チャネル(特性)の推定
は,広帯域空間チャネル(特性)の推定に相当する。
さらに基地局は,複数の隣接基地局からLOADINFORMATIO
N(OI,RNTP及びHII)を送受信し,各自局内(セル内)の基地局
境界に位置する自局のユーザ端末と隣接する他の基地局のユーザ端末との間
で,両基地局がそれぞれ割り当てるトラフィックチャネル(RBの選択に基
づく)間に干渉が生じないようにユーザ端末に対するトラフィックチャネル
の割り当てを調整する。
したがって,被告製品は,構成要件1-32Eを充足する。
(6)構成要件1-32F
被告製品は,構成要件1-32Fを充足する。
(7)構成要件1-32G
被告製品は,構成要件1-32Gを充足する。
(被告の主張)
(1)構成要件1-32A
認める。
(2)構成要件1-32B
構成要件1-32Bにいう「アクセス信号」の意味が不明であり,否認す
る。
(3)構成要件1-32C
ア被告製品は「空間利得」の推定を行わないため,空間利得推定を行う機
構は備えていない。また,被告製品は「空間チャネル(特性)」を推定せ
ず,そのような機構も備えていない。
イ仮に原告の主張するように,「推定空間利得」がチャネル・マトリクス
を意味するとしても,被告製品では,アップリンクにプリコーディングを
用いないから,「推定空間利得」なるものは存在しない。
ウ原告は,ユーザ端末がチャネル・マトリクスを推定すると主張している
から,基地局設備の一部である被告製品がチャネル・マトリクスの推定を
行うことはない。
エ「空間利得推定器」が,「割り当て器」に「結合」されていることか
ら,「割り当て」は「推定空間利得」に基づかなければならないと解され
るところ,チャネル・マトリクスは,RBの割り当ての際に考慮されない
から,チャネル・マトリクスが「推定空間利得」に該当したとしても,
「推定空間利得」に基づく「割り当て」は存在しない。
(4)構成要件1-32D
ア被告製品は,ダウンリンク信号対干渉雑音計算を行う機構は備えていな
い。LTE規格において,ダウンリンク信号対干渉雑音比率を測定するの
は,基地局でなくユーザ端末である。
イフィードバック情報を復調することが,ダウンリンク信号対干渉雑音の
計算であるというのは日本語の通常の用語法から離れすぎており,原告の
解釈は誤りである。
ウ仮に原告の解釈を前提としても,復調にはOFDM復調器があれば足
り,わざわざ雑音及び干渉特性を推定する必要はなく,原告の主張は単な
る憶測にすぎない。
エしたがって,被告製品は「ダウンリンク信号対干渉雑音計算器」を備え
ておらず,構成要件1-32Dを充足しない。
(5)構成要件1-32E
ア被告製品は空間チャネル及び空間利得推定を行う機構を備えていないか
ら「前記推定器に結合され」(構成要件1-32E-1)た機構を有さな
い。また,被告製品は,「広帯域空間チャネル推定」(構成要件1-32
E-1)を行わず,「広帯域空間チャネル推定」に基づいた決定も行わな
い。
イ被告製品がRI及びPMIを決定することは認めるが,「少なくとも二
つの基地局からフィードバックされた測定されたOFDMAチャネル情報
及び雑音及び干渉情報」(構成要件1-32E-1)を参照することはな
く,かつ,スケジューリングのための割り当てるべき「トラフィックチャ
ネル」を決定しない。
ウしたがって,被告製品は,構成要件1-32Eを充足しない
(6)構成要件1-32F
否認する。
(7)構成要件1-32G
否認する。
2争点2(本件発明2の充足論)
2-1争点2-1(対象方法466の本件発明2-1の構成要件充足性)
(原告の主張)
(1)構成要件2-1A
LTE規格におけるダウンリンクのOFDMA通信におけるOFDMAシ
ステムトラフィックチャネルの割り当ては,「OFDMAシステム内でサブ
キャリアを割り当てる」ことに相当し,対象方法466は構成要件2-1A
を充足する。
(2)構成要件2-1B
ア対象方法466は,ダウンリンクについて互いに周波数が離れたサブ
キャリアからなるRBをディストリビューテッドVRB(Distributed
VirtualResourceBlocks:ディストリビューテッド仮想リソース・ブ
ロック)とし,これをトラフィックチャネルとしてユーザ端末に割り当て
る。ディストリビューテッドVRBは「ダイバーシティクラスタ」に相当
するから,対象方法466は構成要件2-1Bを充足する。
イ被告は,ディストリビューテッドVRBの使用についての自白を撤回し
ているが,自白の撤回には異議がある。
(3)構成要件2-1C
対象方法466は,互いに周波数が連続するサブキャリアからなるRBを
ローカライズドVRB(LocalizedVirtualResourceBlocks:ローカライ
ズド仮想リソース・ブロック)とし,これをトラフィックチャネルとして他
のユーザ端末に割り当てる。ディストリビューテッドVRBはローカライズ
ドVRBに基づいて生成されるため,基地局からの送信信号中にローカライ
ズドVRBとディストリビューテッドVRBを同時に混在させて,複数の
ユーザ端末に対して同時に送信することができる。ローカライズドVRBは
「コヒーレンスクラスタ」に相当するから,対象方法466は構成要件2-
1Cを充足する。
(4)構成要件2-1D
ア構成要件2-1Dは,「セル中の移動中の加入者と静止している加入者
の人口が変化した時を検出」することは規定しておらず,変化を「検出」
する構成は不要である。
イ対象方法466において,ダウンリンクのスケジューリングは1ms
(ミリ秒)ごとに行われる。ディストリビューテッドVRBの割り当て
は,ユーザ端末からのCQI,PMIなどのフィードバック情報から,マ
ルチパスなどの障害が予想されるユーザ端末に対して,周波数ダイバシ
ティ効果を得るためになされる。このようなディストリビューテッドVR
Bを割り当てるべきユーザ端末が増加すれば,このダウンリンクのスケ
ジューリングの更新のたびにディストリビューテッドVRBの割り当てが
増加する。
ウしたがって,対象方法466は,構成要件2-1Dを充足する。
(5)構成要件2-1E
対象方法466は,構成要件2-1Eを充足する。
(被告の主張)
(1)構成要件2-1A
「OFDMAシステム」とは,ダウンリンクのみならずアップリンクもO
FDMAを用いた通信を行うシステムであると解釈されるところ,対象方法
466はアップリンクにはOFDMAを使用していないので,構成要件2-
1Aを充足しない。
(2)構成要件2-1B
ア対象方法466において,ディストリビューテッドVRBがユーザ端末
に割り当てられることがあることは認めるが,これは「仮想」のものにす
ぎず,構成要件2-1Bの「ダイバーシティクラスタ」ではない。
イ対象方法466において,ディストリビューテッドVRBがユーザ端末
に割り当てられることはない。上記アの主張は撤回する(上記アは,「割
り当てられることがあることを認める」としたものにすぎず,「割り当て
られることを認める」としたのではないから,自白には当たらない。仮に
裁判上の自白が成立したとしても,真実に反し,錯誤に基づくものである
から,撤回する。)。
ウ「ダイバーシティクラスタ」とは,「あらかじめ相互に関連づけられた
(同一のラベルが付された),少なくとも一部がスペクトル全体に遥か離
れて拡散している物理的サブキャリアのセット」であると解されるとこ
ろ,対象方法466に「ダイバーシティクラスタ」は存在しない。
エしたがって,対象方法466は,構成要件2-1Bを充足しない。
(3)構成要件2-1C
対象方法466において,ローカライズドVRBがユーザ端末に割り当て
られることがあることは認めるが,これは「仮想」のものにすぎず,構成要
件2-1Cの「コヒーレンスクラスタ」ではない。
「コヒーレンスクラスタ」とは,「あらかじめ相互に関連づけられた(同
一のラベルが付された),互いに接近している複数の物理的サブキャリアの
セット」であると解されるところ,対象方法466に「コヒーレンスクラス
タ」は存在しない。
(4)構成要件2-1D
ア構成要件2-1Dは,「セル中の移動中の加入者と静止している加入者
の人口が変化した時」を検出し,そのタイミングで「クラスタ分類を再構
成」するものと解釈されるところ,対象方法466では,ダウンリンクの
スケジューリングが1msごとに行われているのであって,「セル中の加
入者と静止している加入者の人口が変化した時」を検出し,そのタイミン
グで「クラスタ分類を再構成」することはない。
イ「クラスタ分類」の「再構成」とは,①物理的サブキャリアの関連づけ
(ラベリング又はマッピング)を変更することによって,②移動中の加入
者と静止中の加入者の割合に合わせるように,③ダイバーシティクラスタ
及びコヒーレンスクラスタの数を変更し,④新しい関連づけ(ラベリング
又はマッピング)を加入者に通知することをいうと解される。
原告は,「クラスタ分類」の「再構成」が対象方法466のうちのどの
ような構成に該当するのかさえ一切主張していない。
この点を措くとしても,そもそも対象方法466において「クラスタ分
類」の「再構成」が行われることはない。
ウしたがって,対象方法466は,構成要件2-1Dを充足しない。
(5)構成要件2-1E
充足性は特に争わない。
2-2争点2-2(対象方法466の本件発明2-3の構成要件充足性)
(原告の主張)
(1)構成要件2-3A
対象方法466において,ディストリビューテッドVRBは,全帯域にわ
たったものであるが,個々の変調シンボルに対しては周波数ダイバシティ効
果がないため,OFDM伝送のエラー率を向上させるために,チャネル符号
化を行う。これらの符号化されたビットが,変調シンボルによってOFDM
Aの伝送帯域の広い範囲にわたって配置されたディストリビューテッドVR
B(分散したサブキャリア)にマッピングされる。つまり,サブキャリア全
体にわたるチャネル符号化がなされているから,対象方法466は構成要件
2-3Aを充足する。
(2)構成要件2-3B
対象方法466は,構成要件2-3Bを充足する。
(被告の主張)
(1)構成要件2-3A
対象方法466は「ダイバーシティクラスタ」を用いないので,構成要件
2-3Aを充足しない。
(2)構成要件2-3B
対象方法466は,構成要件2-3Bを充足しない。
3争点3(本件特許1の無効論)
3-1争点3-1(本件特許1の新規性・進歩性違反の有無1:乙B1を
主引例とするもの)
(被告の主張)
(1)本件発明1-1は,乙B1に記載された発明と同一であるか,乙B1に
乙B21(及び乙B81~84の周知技術)を組み合わせるなどして容易
に発明することができたものである。
(2)本件発明1-7は,乙B1に乙B15,21(及び乙B2~14の周知
技術)を組み合わせるなどして容易に発明することができたものである。
(3)本件発明1-32は,乙B1に乙B15,56(及び乙B57~72の
周知技術)を組み合わせるなどして容易に発明することができたものであ
る。
(原告の主張)
(1)乙B1には,本件発明1-1の構成要件1-1A~Dが開示されておら
ず,乙B1から容易に発明することができたともいえない。
(2)乙B1には,本件発明1-7の構成要件1-7A~Dが開示されておら
ず,乙B2~15と組み合わせても容易に発明することができたとはいえ
ない。
(3)乙B1には,本件発明1-32の構成要件1-32A~Gが開示されて
おらず,乙B15,56と組み合わせても容易に発明することができたと
はいえない。
3-2争点3-2(本件特許1の新規性・進歩性違反の有無2:乙B16
を主引例とするもの)
(被告の主張)
(1)本件発明1-1は,乙B16に記載された発明と同一であるか,乙B1
6に乙B1及び乙B17~21の周知技術を組み合わせるなどして容易に
発明することができたものである。
(2)本件発明1-7は,乙B16に乙B15(及び乙B2~14の周知技
術)を組み合わせるなどして容易に発明することができたものである。
(原告の主張)
(1)乙B16には,本件発明1-1の構成要件1-1B~Dが開示されてお
らず,乙B16から容易に発明することができたともいえない。
(2)乙B16には,本件発明1-7の構成要件1-7A~Dが開示されてお
らず,乙B2~15と組み合わせても容易に発明することができたとはい
えない。
3-3争点3-3(本件特許1の新規性・進歩性違反の有無3:乙B21
を主引例とするもの)
(被告の主張)
(1)本件発明1-1は,乙B21に記載された発明と同一であるか,それに
基づいて容易に発明することができたものである。
(2)本件発明1-7は,乙B21に乙B15,56(及び乙B2~14の周
知技術)を組み合わせるなどして容易に発明することができたものであ
る。
(3)本件発明1-32は,乙B21に乙B15,56(及び乙B57~72
の周知技術)を組み合わせるなどして容易に発明することができたもので
ある。
(原告の主張)
(1)乙B21には,構成要件1-1A~Dが開示されておらず,乙B21か
ら容易に発明することができたともいえない。
(2)乙B21には,構成要件1-7A~Dが開示されておらず,乙B2~1
5と組み合わせても容易に発明することができたとはいえない。
(3)乙B21には,構成要件1-32A~Gが開示されておらず,乙B1
5,56と組み合わせても容易に発明することができたとはいえない。
3-4争点3-4(本件特許1の明確性要件違反の有無)
(被告の主張)
(1)本件発明1-1
ア本件発明1-1の「フィードバックOFDMAチャネル情報」,「OF
DMAチャネル情報」,「OFDMAトラフィックチャネル」及び「結合
OFDMAチャネル割り当て」の文言は不明確である。
イ「複数の加入者から収集されたフィードバックOFDMAチャネル情報
及び少なくとも一つの他の基地局から収集されたOFDMAチャネル情報
に基づいて」という文言は,「複数のOFDMAトラフィックチャネル候
補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択し」という文言のみ
を修飾しているのか,又は,「複数のOFDMAトラフィックチャネル候
補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択し」という文言及び
「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して前記複数の加入者のうちの
複数に対して結合OFDMAチャネル割り当てを提供する」という文言の
両方を修飾しているのか不明確である。
ウ「一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択」することと,「結合
OFDMAチャネル割り当てを提供する」こととが,互いに全く独立の動
作を規定したものであるのか,又は,互いに関係のある動作を規定したも
のであるのか不明確である。
(2)本件発明1-7
ア本件発明1-7の「OFDMAトラフィックチャネルに関するチャネル
状態情報」,「OFDMAチャネル状態情報」,「推定空間利得」,「O
FDMAトラフィックチャネル」,「結合OFDMAチャネル割り当て」
及び「OFDMAマルチユーザトラフィックチャネル割り当て」の文言は
不明確である。
イ「少なくとも一つの加入者及び少なくとも一つの他の基地局から受け
取った前記OFDMAチャネル状態情報と,複数の加入者に関するアップ
リンク信号及びダウンリンク信号の推定空間利得とに基づいて」という文
言は,「前記複数の加入者に対して前記複数のOFDMAトラフィック
チャネルからOFDMAトラフィックチャネルを割り当て」という文言の
みを修飾しているのか,又は,「前記複数の加入者に対して前記複数のO
FDMAトラフィックチャネルからOFDMAトラフィックチャネルを割
り当て」という文言及び「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して前
記複数の加入者のうちの複数に対して結合OFDMAチャネル割り当てを
提供する」という文言の両方を修飾しているのかが不明確である。
ウ「OFDMAトラフィックチャネルを割り当て」ることと,「結合OF
DMAチャネル割り当てを提供する」こととが,互いに全く独立の動作を
規定したものであるのか,又は,両者は互いに関係のある動作を規定した
ものであるのか,不明確である。
(3)本件発明1-32
ア「少なくとも一つの空間的に分離されたトランシーバ」という記載は,
空間的に分離されたトランシーバが1つである場合を含むものであるが,
1つのトランシーバが空間的に分離されているとはどのような構成を意味
するのか不明確である。
イ「アクセス信号検出器」の意義が不明確である。
ウ「空間チャネル及び空間利得推定器」の意義が不明確である。
エ「OFDMAチャネル情報」は,「雑音及び干渉情報」とどのように相
違するのか不明確である。
オ「OFDMAチャネル割り当てを判定」することと,複数の加入者に対
して結合OFDMチャネル割り当てを提供することとが同一の動作を規定
しているのか,又は,両者が相互に異なる動作を規定しているのか,不明
確である。
(原告の主張)
争う。それらの記載はいずれも明確である。
3-5争点3-5(本件特許1のサポート要件違反,簡潔性要件違反,実
施可能要件違反の有無)
(被告の主張)
(1)本件発明1-1
ア「複数の加入者から収集されたフィードバックOFDMAチャネル情報
及び少なくとも一つの他の基地局から収集されたOFDMAチャネル情報
に基づいて」「複数のOFDMAトラフィックチャネル候補から一組のO
FDMAトラフィックチャネルを選択」すること(構成要件1-1C)
は,本件特許1の明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。
イ本件特許1の明細書の段落【0052】は,構成要件1-1Dに対応す
る構成を開示するものであり,この段落が構成要件1-1C及び構成要件
1-1Dの両方の構成を開示するものであるとすると,構成要件1-1C
及び構成要件1-1Dは全体として冗長な記載を形成していることにな
り,本件特許1の請求項1の記載は特許法36条6項3号に規定する要件
(簡潔性要件)を満たさない。
ウ構成要件1-1Dは,「少なくとも一つの他の基地局と協働して……結
合OFDMAチャネル割り当てを提供する」と規定しており,「少なくと
も一つの他の基地局」という文言は「一つの基地局」又は「複数の基地
局」(下線部は強調のために裁判所で付した。以下同じ)を意味するとこ
ろ,「1つの他の基地局と協働」する構成は段落【0052】に開示され
ているとしても,「2つ以上の他の基地局と協働」する構成は本件特許1
の明細書の発明の詳細な説明に開示されておらず,また,当業者が実施可
能な程度に明確かつ十分に記載したものでもない。
(2)本件発明1-7
ア「少なくとも一つの加入者及び少なくとも一つの他の基地局から受け
取った前記OFDMAチャネル状態情報と,複数の加入者に関するアップ
リンク信号及びダウンリンク信号の推定空間利得とに基づいて」「前記複
数の加入者に対して前記複数のOFDMAトラフィックチャネルからOF
DMAトラフィックチャネルを割り当て」ること(構成要件1-7C)
は,本件特許1の明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。本件特
許1の明細書の段落【0050】や【0052】は,「少なくとも一つの
加入者及び少なくとも一つの他の基地局から受け取った前記OFDMA
チャネル状態情報」,及び,「複数の加入者に関するアップリンク信号及
びダウンリンク信号の推定空間利得」の両方に基づいて「前記複数のOF
DMAトラフィックチャネルからOFDMAトラフィックチャネルを割り
当て」るものではない。
イ本件特許1の明細書は,具体的にどのようにして,「複数の加入者に関
するアップリンク信号及びダウンリンク信号の推定空間利得」に基づいて
「前記複数の加入者に対して前記複数のOFDMAトラフィックチャネル
からOFDMAトラフィックチャネルを割り当て」るのかを全く記載して
いない。すなわち,本件特許1の明細書は「複数の加入者に関するアップ
リンク信号及びダウンリンク信号の推定空間利得」をどのようにして得る
のか,それをどのようにして「OFDMAトラフィックチャネルを割り当
て」るのに用いるのかを記載していない。
ウ構成要件1-7Dは,「少なくとも一つの他の基地局と協働して……結
合OFDMAチャネル割り当てを提供する」と規定しており,「少なくと
も一つの他の基地局」という文言は「一つの基地局」又は「複数の基地
局」を意味するところ,「1つの他の基地局と協働」する構成は段落【0
052】に開示されているとしても,「2つ以上の他の基地局と協働」す
る構成は本件特許1の明細書の【発明の詳細な説明】に開示されていな
い。
(3)本件発明1-32
ア構成要件1-32Dは「アップリンク及びダウンリンク信号対干渉雑音
計算器」を規定しているところ,本件特許1の明細書の段落【0045】
~【0049】は,ダウンリンク信号についてのSINR_iを計算する
構成しか開示されておらず,「アップリンク信号対干渉雑音計算器」に対
応する構成要素を開示していない。
イまた,「ダウンリンク信号対干渉雑音計算器」は,様々な具体的な計算
方法によってダウンリンク信号のSINRを計算する構成要素を含む記載
となっているにもかかわらず,明細書は,段落【0045】~【004
8】の計算方法を用いる構成要素しか開示していない。
したがって,「アップリンク及びダウンリンク信号対干渉雑音計算器」
は,発明の詳細な説明に記載されたものではなく,また,当業者が実施可
能な程度に明確かつ十分に記載されたものでもない。
ウ構成要件1-32Eの「前記推定器に結合され……マルチユーザトラ
フィックチャネル割り当て器」という記載は,「マルチユーザトラフィッ
クチャネル割り当て器」が「前記推定器」に結合されていることを特定し
ている。しかしながら,基地局の構成を示す【図6】を参照すると,「結
合トラフィックチャネル割り当て器605A」は,「広帯域チャネル推定
器雑音及び干渉推定器604」には結合されていない。よって,「前記
推定器に結合され……マルチユーザトラフィックチャネル割り当て器」
は,発明の詳細な説明に記載されたものではなく,また,当業者がその実
施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでもない。
エ構成要件1-32E-1の「広帯域空間チャネル推定」という記載は,
移動局から受信したアクセス信号以外の信号に基づいて推定された場合に
おける「広帯域空間チャネル推定」をも含むものであるが,明細書には,
アクセス信号以外の信号に基づいて推定される態様は開示されていない。
よって,「広帯域空間チャネル推定」という記載は,発明の詳細な説明に
記載されたものではなく,また,当業者がその実施をすることができる程
度に明確かつ十分に記載したものでもない。
オ構成要件1-32Fの「前記割り当て器に結合されたOFDMAモデ
ム」という記載は,「OFDMAモデム」が「前記割り当て器」に結合さ
れることを特定するものである。基地局の構成を示す【図6】を参照する
と,まず第1に,OFDM変調器607及びOFDM復調器603は記載
されているが,OFDMAモデムに対応する構成は何ら示されていない。
仮に,OFDM変調器607及びOFDM復調器603がOFDMAモデ
ムに相当するとしても,OFDM復調器603は「結合トラフィックチャ
ネル割り当て器605A」には結合されていない。よって,「前記割り当
て器に結合されたOFDMAモデム」という記載は,発明の詳細な説明に
記載されたものではなく,また,当業者がその実施をすることができる程
度に明確かつ十分に記載したものでもない。
(原告の主張)
争う。それらの文言は,いずれも発明の詳細な説明に開示されており,簡
潔であり,実施可能である。
4争点4(本件特許2の無効論)
4-1争点4-1(本件特許2の新規性・進歩性違反1の有無:乙B17
を主引例とするもの)
(被告の主張)
本件発明2-1,2-3は,乙B17に記載された発明と同一であるか,
乙B17に乙B8,22,23,49,54,55を組み合わせるなどして
容易に発明することができたものである。
(原告の主張)
乙B17には,本件発明2-1の構成要件2-1B~Dが開示されておら
ず,乙B8,22,23,49,54,55から容易に発明することができ
たともいえない。本件発明2-1が新規性,進歩性を有するから,それを引
用する本件発明2-3も当然新規性,進歩性を有する。
4-2争点4-2(本件特許2の進歩性違反2の有無:乙B1を主引例と
するもの)
(被告の主張)
本件発明2-1,2-3は,乙B1に乙B8,22,23,49,54,
55を組み合わせるなどして容易に発明することができたものである。
(原告の主張)
乙B1には,構成要件2-1A~Dが開示されておらず,乙B8,22,
23,49,54,55から容易に発明することができたともいえない。本
件発明2-1が進歩性を有するから,それを引用する本件発明2-3も当然
進歩性を有する。
4-3争点4-3(本件特許2の明確性要件違反の有無)
(被告の主張)
(1)本件発明2-1
ア「ダイバーシティクラスタ」及び「コヒーレンスクラスタ」という文言
は不明確である。
イ「クラスタ分類を再構成する」という文言は不明確である。
(2)本件発明2-3
ア「前記1つのダイバーシティクラスタを使用する段階」は,請求項3が
引用する請求項1において規定されたものではなく,不明確である。
イ「チャネル符合化」という文言は不明確である。
(原告の主張)
争う。それらの記載はいずれも明確である。
4-4争点4-4(本件特許2のサポート要件違反,実施可能要件違反の
有無)
(被告の主張)
(1)本件発明2-1
ア本件発明2-1は,「クラスタ分類の再構成」は,「セル内の移動中の
加入者と静止している加入者の人口が変化した時」,すなわち,セル内の
移動中の加入者及び静止している加入者の両方の人口が変化した時に実行
される,ということを規定していると解されるところ,本件特許2の明細
書の段落【0103】は,「システムの展開に伴い人数が変わると,コ
ヒーレンスクラスタとダイバーシティクラスタの割当は,新しいシステム
の必要性を受け入れるため構成し直される。」ということを開示している
のみであって,この「人数」が,「移動中の加入者」の数であるのか,
「静止している加入者」の数であるのか,又は,「移動中の加入者」及び
「静止している加入者」の両方の数であるのかについて,全く説明してい
ない。したがって,本件発明2-1は,発明の詳細な説明に記載したもの
ではなく,当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載し
たものでもない。
イ「セル内の移動中の加入者と静止している加入者の人口が変化した時」
という記載は,①移動中の加入者及び静止している加入者の両方の人数が
変化したものの,両者の比が変化しない場合,及び,②移動中の加入者及
び静止している加入者の両方の人数が変化し,かつ,両者の比が変化した
場合,という少なくとも2つの場合を含む記載と解されるところ,本件特
許2の明細書の段落【0103】は,「セル内の移動中の加入者と静止し
ている加入者の人口が変化した時」が,場合①を示すのか,場合②を示す
のか,又は,場合①及び場合②の両方を示すのかについて,全く言及して
いない。したがって,本件発明2-1は,発明の詳細な説明に記載したも
のではなく,当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載
したものでもない。
ウ本件特許2の明細書は,「セル内の移動中の加入者と静止している加入
者の人口が変化した時」を,基地局が具体的にどのような構成によってど
のように検出するのかについて,全く言及していない。したがって,本件
発明2-1は,発明の詳細な説明に記載したものではなく,当業者が実施
をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでもない。
(2)本件発明2-3
本件発明2-1がサポート要件,実施可能要件を欠くから,本件発明2-
3もまた,サポート要件,実施可能要件を欠く。
(原告の主張)
争う。それらの文言は,いずれも発明の詳細な説明に開示されており,実
施可能である。
5争点5(差止めの可否)
5-1争点5-1(間接侵害の成否)
(原告の主張)
(1)被告製品を含む被告基地局施設製品は,LTE規格に準拠した通信をす
るための専用機器であるから,本件発明1-1の技術的範囲に属する「対
象ネットワーク478」を生産するためにのみ用いられる物(特許法10
1条1号)であり,本件発明1-7の技術的範囲に属する「対象方法47
8」,本件発明2-1,2-3の技術的範囲に属する「対象方法466」
の使用にのみ用いる物(同条4号)である。
(2)仮に,LTE以外の通信方式に用いるという他の用途があるとしても,
被告基地局施設製品は本件発明1,2の課題解決に不可欠な構成を備えて
いるから,特許法101条2号(本件発明1-1)又は5号(本件発明1
-7,2-1,2-3)の間接侵害が成立する。
(被告の主張)
争う。
5-2争点5-2(差止めの必要性)
(原告の主張)
被告製品を含む被告基地局施設製品を輸入し,譲渡し,貸し渡し,又は,
譲渡若しくは貸渡しの申出をすることは,本件発明1-32に係る本件特許
権1の直接侵害であり,本件発明1-1,1-7,2-1,2-3に係る本
件特許権1,2の間接侵害を構成するから,原告は,被告に対し,被告基地
局施設製品の輸入等の差止めを求める。
(被告の主張)
争う。
第4当裁判所の判断
1争点1-1(対象ネットワーク478の本件発明1-1の構成要件充足性)
について
(1)構成要件1-1A
ア被告製品は,LTE規格に基づくLTE通信に供されているLTEワイ
ヤレス基地局施設であって,LTE規格上必須とされる構成を全て備えて
いるところ(前記前提となる事実(4)エ),LTE規格上,基地局から
ユーザ端末への通信(ダウンリンク)においてはOFDMAを,ユーザ端
末から基地局への通信(アップリンク)においてはSC-FDMAを,そ
れぞれ使用することはいずれも争いがない。
そうすると,被告製品を使用した対象ネットワーク478は,少なくと
もダウンリンクにおいてOFDMAを使用して,それぞれが複数の基地局
のうちの一つの基地局と通信する複数の加入者を含んでいるといえるか
ら,構成要件1-1Aを充足する。
イ被告は,構成要件1-1Aにいう「OFDMAを使用して……通信す
る」とは,ダウンリンクのみならずアップリンクにもOFDMAを使用す
る必要があり,対象ネットワーク478がアップリンクで使用するSC-
FDMAはOFDMAではないから,構成要件1-1Aを充足しないと主
張する。
しかし,構成要件1-1Aにいう「OFDMAを使用して……通信す
る」を,「ダウンリンク及びアップリンクの双方にOFDMAを使用して
……通信する」と限定解釈すべき根拠はない。
ウしたがって,対象ネットワーク478は構成要件1-1Aを充足する。
(2)構成要件1-1B
対象ネットワーク478が構成要件1-1Bを充足することは,被告も
明らかに争わない。
(3)構成要件1-1C
ア対象ネットワーク478が「少なくとも一つの他の基地局から収集され
たOFDMAチャネル情報」を有するかについて
(ア)被告は,「基地局が,隣接の基地局との間で,X2インターフェー
スで通信し,OI,RNTP及びHIIといった情報が送信されること
は認める。」(被告準備書面(1)7頁)としていたところ,その後こ
の自白を撤回し(被告準備書面(14)3頁),原告は自白の撤回に異
議を述べた(原告第12準備書面5頁)。
上記自白は,被告製品を用いた対象ネットワーク478の構成要件充
足性の基礎となる事実の一つとして主張されていたのであるから,主要
事実の自白に当たり,これを撤回するには自白が真実に反し,錯誤によ
るものであることを被告において立証する必要があると解される。
(イ)被告は,対象ネットワーク478はX2インターフェースは備えて
いるが,OI,HII及びRNTPのいずれの情報も基地局間で交換さ
れることはなく,OI,HII及びRNTP以外の情報を交換している
と主張し,その立証とし乙A11~13,15を提出する。
乙A13はICIC(Inter-CellInterferenceCoordination:セル
間干渉調整)の内容を説明する教科書であり,乙A11,15はそれぞ
れZTEcorporation及びWCPの担当者の陳述書にすぎないから,
反真実の立証として十分なものとはいえない。
乙A12は,ZTEcorporationがWCPに送付した被告製品の仕
様書とされる,原文全4頁の文書であり,乙A12自体からは作成日付
は明らかでないが,証拠説明書によれば平成24年1月に作成された文
書である。
乙A12の●(省略)●
しかし,被告が平成23年9月29日に自社ウェブサイトで発表した
ニュース(甲A6)には,被告がWCPに納入したB8300A,BS
8906,R8924DT(被告製品)は,「セル間の協調による干渉
調整機能(ICIC)……などの新しい機能を提供します。」と記載さ
れている。
ZTEcorporationの担当者は,●省略●指したものとは認め難
く,上記記載は,被告製品がRB割り当てのための情報を交換し,「セ
ル間の協調」を行う動的ICIC又は準静的ICIC(乙A13によれ
ば,LTEでは静的又は準静的ICICが想定されており,動的ICI
Cは範疇外であるというのであるから,おそらくは準静的ICIC)の
機能を備えていることを示すものと認めるのが相当である。
さらに,甲A6には,高度化XGP(AXGP:AdvancedeXtended
GlobalPlatform)で使用される被告製品が,「TD-LTEに適用さ
れる主要アンテナ技術に加え,セル間の協調による干渉調整機能(IC
IC)……などの新しい機能を提供します。」と記載されているのであ
るから,仮に,●省略●としても,AXGPで使用される被告製品につ
いても同様であるとはいえない。
そうすると,自白の反真実性の立証があったとは認められず,自白の
撤回は許されない。
(ウ)上記(イ)によれば,対象ネットワーク478が基地局間でOI,HI
I及びRNTPを交換していることは争いがない。
基地局が他の基地局から収集するOI,HII及びRNTPは,少な
くともダウンリンクでOFDMAを使用する対象ネットワーク478に
おいて基地局とユーザ端末とのダウンリンクのチャネル(OFDMA
チャネル)の状態を表す情報であるから,「少なくとも一つの他の基地
局から収集されたOFDMAチャネル情報」に当たる。
イ対象ネットワーク478が「複数の加入者から収集されたフィードバッ
クOFDMAチャネル情報」を有するかについて
対象ネットワーク478において,ユーザ端末から基地局にCQIが送
信されることは争いがない。
複数のユーザ端末から送信されたCQIは,少なくともダウンリンクで
OFDMAを使用する対象ネットワーク478において基地局とユーザ端
末とのダウンリンクのチャネル(OFDMAチャネル)の状態を表す情報
であって,ダウンリンクのRB割り当てのためにユーザ端末から基地局に
フィードバックされる情報であるから(甲A22),「複数の加入者から
収集されたフィードバックOFDMAチャネル情報」に当たる。
ウ対象ネットワーク478が「複数の加入者から収集されたフィードバッ
クOFDMAチャネル情報及び少なくとも一つの他の基地局から収集され
たOFDMAチャネル情報に基づいて,複数のOFDMAトラフィック
チャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択」してい
るかについて
(ア)複数のユーザ端末から収集されたCQIがRBの割り当てに使用さ
れることは,被告も争っていない(乙A10・12頁)。
(イ)OI(OverloadIndication:干渉過負荷表示。甲A12の2の訳文
では「ULオーバーロードの表示(theindicationofUL
Overload)」。甲A21の訳文では「UL干渉過負荷IE(UL
InterferenceOverloadIndicationIE)」。乙A13では「Overload
Indicator」。)は,ある閾値以上の干渉を受けているRBを示し,O
Iの通知を受けた隣接基地局は,干渉を与えている割り当てRBの送信
電力を低減するか,リソースの割り当てを他のRBに変更する(甲A2
1,乙A13)。
(ウ)HII(HighInterferenceIndication:高干渉表示。甲A12の
2の訳文では「UL高干渉表示(ULHighInterference
Indication)」。甲A21の訳文では「UL高干渉表示IE(ULHigh
InterferenceIndicationIE)」。乙A13では「HighInterference
Indicator」。)は,基地局が管轄する自セルのセル端ユーザに割り当
てるRBを示し,HIIの通知を受けた隣接基地局は,そのRBになる
べく(隣接基地局にとっての)自セルのRBを割り当てないように,少
なくとも自セルのセル端ユーザのRBを割り当てないようにする(甲A
21,乙A13)。
(エ)RNTP(RelativeNarrowbandTxPower:相対狭帯域送信電力。
甲A12の3の訳文では「相対狭帯域Txパワー(Relative
NarrowbandTxPower)」。甲A21の訳文では「相対ナローバンド送
信パワー(RNTP)IE(RelativeNarrowbandTxPower(RNTP)
IE)」。乙A13では「RNTPI:RelativeNarrowbandTXPower
Indicator」。)は,指定RBの送信電力を低減する(送信しないこと
を含む。)ことを示すものであり,RNTPの通知を受けた隣接基地局
は,そのRBに自セルのユーザ端末を割り当てることができる(甲A2
1,乙A13)。
(オ)被告は,対象ネットワーク478におけるRBの割り当てが,他の
基地局から送信されたOI,HII及びRNTPに基づいてなされるこ
とはないと主張する。
しかし,これら基地局間で交換される情報は,RBの割り当てによる
セル間干渉調整のために交換されるものであるから,これらの情報をR
Bの割り当てに使用しなければ意味がないものである。
被告から,これらの情報を使用せずにセル間干渉を調整する具体的な
技術の主張はなく(●省略●主張が甲A6と矛盾し信用できないことは
上記のとおりである。),これらの情報をRBの割り当てに使用しない
にもかかわらずOI,HII及びRNTPを交換する積極的な意味も主
張されていない。
したがって,対象ネットワーク478におけるRBの割り当ては,複
数のユーザ端末から収集されたCQI及び少なくとも一つの他の基地局
から収集されたOI,HII及びRNTPに基づいてなされるものと認
められる。
もっとも,乙A13によれば,OI,HIIに基づくRB割り当ては
アップリンクで,RNTPに基づくRB割り当てはダウンリンクで行わ
れるものとされているから,対象ネットワーク478においてOFDM
Aを使用していることが明らかなダウンリンクにおけるRBの割り当て
は,複数のユーザ端末から収集されたCQI及び少なくとも一つの他の
基地局から収集されたRNTPに基づいてなされるものと認められる。
(カ)OFDMA通信において,ユーザ端末に対するRBの割り当ては,
複数の割り当て可能なRBの中から,複数のRBからなる組を選択して
割り当てるものと認められるから(甲A23・307頁,乙B73・7
9~80頁),対象ネットワーク478におけるRBの割り当ては「複
数のOFDMAトラフィックチャネル候補から一組のOFDMAトラ
フィックチャネルを選択」することに当たる。
エ小括
以上によれば,対象ネットワーク478は,複数のユーザ端末から収集
されたCQI及び少なくとも一つの他の基地局から収集されたRNTPに
基づいて,複数のRBの候補から一組のRBを選択しているのであるか
ら,「複数の加入者から収集されたフィードバックOFDMAチャネル情
報及び少なくとも一つの他の基地局から収集されたOFDMAチャネル情
報に基づいて,複数のOFDMAトラフィックチャネル候補から一組のO
FDMAトラフィックチャネルを選択」しているといえ,構成要件1-1
Cを充足する。
(4)構成要件1-1D
ア対象ネットワーク478のダウンリンクにおいて,基地局は,少なくと
も他の一つの基地局からRNTPを収集し,これらの情報に基づいて,隣
接基地局が割り当てるRBとの間で干渉が生じないように調整して,ユー
ザ端末にRBを割り当てるのであるから,「前記少なくとも一つの他の基
地局と協働して」RBの割り当てを提供しているといえる。
イこの点,特許庁の審決の一つ(乙A9)は,本件発明1-1の構成要件
1-1Dにいう「少なくとも一つの他の基地局と協働して」とは,「1つ
の基地局において割り当てが行われるだけでなく,複数の基地局が割り当
てを同時に行うものと解される。」と解釈している(乙A9・34頁)。
被告は,上記特許庁の解釈には直ちに承服しかねるとしながら,仮にそ
のような極めて限定的な解釈がなされた場合には,原告は複数の基地局が
割り当てを同時に行うことを何ら主張・立証していないし,実際,対象
ネットワーク478では同時に割り当てはなされないから,対象ネット
ワーク478は構成要件1-1Dを充足しない,と主張している。
そこで,本件発明1-1における「少なくとも一つの他の基地局と協働
して」の意義について検討するに,本件特許1の明細書の【特許請求の範
囲】の記載には,上記「少なくとも一つの他の基地局と協働して」につい
て,複数の基地局が割り当てを同時に行うことに限定するような記載はな
く,【発明の詳細な説明】にも,そのように限定的に解釈すべき根拠はな
い。
したがって,本件発明1-1における「少なくとも一つの他の基地局と
協働して」は,「協働」しての割り当てを「複数の基地局が同時に」行う
構成に限定されない(基地局Aが既に割り当てたOFDMAチャネルの情
報に基づいて,基地局Bが,その後に,前記OFDMAチャネル情報に基
づく結合OFDMAチャネル割り当てを提供する構成を除外するものでは
ない。)。
乙A9に示された特許庁の解釈は,上述したとおり,本件特許1の明細
書に基づくものとはいえず,当裁判所の採用するところではない。
ウOFDMA通信において,「協働して」,すなわち他の基地局から収集
したRNTPを使用してのRB割り当ては,基地局にCQIを送信した
ユーザ端末のうち,セル端(特に前記RNTPを送信した他の基地局との
境界付近)に存在するユーザ端末に提供するものと認められ(乙A1
3),そのようなセル端ユーザ端末は複数存在することが想定されるか
ら,対象ネットワーク478におけるRBの割り当ては,「前記複数の加
入者のうちの複数に対して……チャネル割り当てを提供する」ものといえ
る。
エOFDMA通信において,ユーザ端末に対するRBの割り当ては,複数
の割り当て可能なRBの中から,複数のRBからなる組,すなわち複数の
サブキャリアからなるチャネルの組を選択して割り当てるものと認められ
るから(甲A23・307頁),対象ネットワーク478におけるRBの
割り当ては「結合OFDMAチャネル割り当て」を提供するものといえ
る。
オ以上によれば,対象ネットワーク478は,少なくとも一つの他の基地
局から収集されたRNTPに基づいて,CQIを送信した複数のユーザ端
末のうちのセル端に存在する複数のユーザ端末に一組のRBを割り当てて
いるのであるから,「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して前記複
数の加入者のうちの複数に対して結合OFDMAチャネル割り当てを提供
する」といえ,構成要件1-1Dを充足する。
(5)構成要件1-1E
対象ネットワーク478が構成要件1-1Eを充足することは,被告も
明らかに争わない。
(6)以上によれば,対象ネットワーク478は構成要件1-1A~1-1E
を充足し,本件発明1-1の技術的範囲に属する。
2争点1-2(対象方法478の本件発明1-7の構成要件充足性)について
(1)構成要件1-7C
構成要件1-7Cは,「複数の加入者に関するアップリンク信号及びダ
ウンリンク信号の推定空間利得とに基づいて……OFDMAトラフィック
チャネルを割り当て」ることを規定しているから,「アップリンク信号の
推定空間利得」と「ダウンリンク信号の推定空間利得」の双方を推定する
ことが必要である。
原告は,対象方法478において,基地局は,ユーザ端末からフィード
バックされたCQI,RI及びPMIに基づき,空間チャネル行列及び適
用すべきプリコーディングウェイト行列を決定し,空間分割多重に用いる
サブキャリアのセットを決定するところ,これが「推定空間利得に基づい
て……OFDMAトラフィックチャネルを割り当て」ることに当たる,と
主張している(原告第8準備書面2~10頁)。
しかし,対象方法478において,ダウンリンクの空間チャネル行列及
びプリコーディングウェイト行列が推定されているとしても,アップリン
クの空間チャネル行列及びプリコーディングウェイト行列が推定されてい
ると認めるに足りる証拠はない(弁論の全趣旨〔被告準備書面(10)1
3頁,被告準備書面(17)7頁〕)。
原告は,複数アンテナ技術を用いる際にチャネル・マトリクスが必須で
あることはアップリンク信号及びダウンリンク信号とも同様であると主張
する(原告第6準備書面63頁)が,証拠により裏付けられているとはい
えない。
以上によれば,対象方法478において,アップリンクの空間チャネル
行列及びプリコーディングウェイト行列が推定されているとはいえないか
ら,空間チャネル行列及びプリコーディングウェイト行列が「推定空間利
得」に当たるか否かにつき検討するまでもなく,対象方法478が「アッ
プリンク信号……の推定空間利得とに基づいて……OFDMAトラフィッ
クチャネルを割り当て」ているとは認められず,対象方法478は構成要
件1-7Cを充足しない。
(2)以上によれば,対象方法478は,構成要件1-7Cを充足しないか
ら,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-7の技術的範
囲に属しない。
3争点1-3(被告製品の本件発明1-32の構成要件充足性)について
(1)構成要件1-32C
原告は,基地局施設に用いられる被告製品が,「空間チャネル及び空間
利得推定器」(構成要件1-32C)「を備える装置」(構成要件1-3
2G)であると主張しているのであるから,基地局が「空間チャネル及び
空間利得」を推定するものでなければならない。
原告は,ダウンリンクの空間チャネル及び空間利得は,フィードバック
情報(CQI,PMI及びRI)としてユーザ端末から基地局に報告される
ところ,基地局がこれを受信して復調することによってユーザ端末に対す
るダウンリンクの空間チャネル及び空間利得が分かり,被告製品はそのよ
うな復調機能を備えているから,「空間チャネル及び空間利得推定器」を
備えている,と主張する(原告第9準備書面9頁)。
しかし,ダウンリンクの空間チャネル及びその伝送状態のチャネル・マ
トリクス(原告のいう「空間利得」)は,ユーザ端末が過去の測定値から
推定するとされ(原告第6準備書面62頁),基地局がそのような推定を
行っていると認めるに足りる証拠はない(弁論の全趣旨〔被告準備書面
(10)15頁〕)。
ユーザ端末が推定した値を復調しているだけでは,空間チャネル及び空
間利得の推定を行っているとはいえないから,そのような復調機能を備え
るだけで,自ら推定を行わない装置は,「空間チャネル及び空間利得推定
器」とはいえない。
したがって,チャネル・マトリクスが「空間利得」に当たるか否かにつ
き検討するまでもなく,基地局施設の一部である被告製品が「空間チャネ
ル及び空間利得推定器」を備えているとはいえず,被告製品は構成要件1
-32Cを充足しない。
(2)以上によれば,被告製品は構成要件1-32Cを充足しないから,その
余の点について判断するまでもなく,本件発明1-32の技術的範囲に属
しない。
4争点2-1(対象方法466の本件発明2-1の構成要件充足性)について
(1)構成要件2-1A
対象方法466が,ダウンリンクでOFDMAを用いる通信方法である
ことは争いがない。
被告は,「OFDMAシステム」と呼ぶのであればダウンリンクのみな
らずアップリンクもOFDMAを用いた通信を行うシステムであると解釈
するのが自然であり,対象方法466はアップリンクではOFDMAを使
用していないので「OFDMAシステム」に該当しない,と主張する。
しかし,ダウンリンクでOFDMAを使用するシステムであれば「OF
DMAシステム」といってよく,そのようなシステムを除外するように
「OFDMAシステム」を限定解釈すべき根拠はない。
対象方法466は,少なくともダウンリンクでOFDMAを用いる「O
FDMAシステム」内でサブキャリアを割り当てる際に使用する方法であ
るから,構成要件2-1Aを充足する。
(2)構成要件2-1B
ア被告は,「ディストリビューテッド仮想RBがユーザ端末に割り当てら
れることがあることは認め」ていたが(被告準備書面(1)11頁),そ
の後この自白を撤回し(被告準備書面(4)12頁),原告は自白の撤回
に異議を述べた(原告第6準備書面5頁)。
上記自白は,被告製品を用いた対象方法466の構成要件充足性の基礎
となる事実の一つとして主張されていたのであるから,主要事実の自白に
当たり,これを撤回するには自白が真実に反し,錯誤によるものであるこ
とを被告において立証する必要があると解される。
イ被告は,対象方法466ではディストリビューテッドVRBは使用され
ないと主張し,その立証として乙A8を提出する。
乙A7は,甲A15の反証として提出されたもので,それ自体として自
白の反真実性を裏付ける内容のものではない。
乙A8は,ZTEcorporationの担当者の陳述書であり,ZTE
corporationがWCPから受領したという仕様リストが添付されている。
当該仕様リストは,全6頁のもので,右上には「RANFeatureList」と
記載され,左下には「ⓒ2011ZTECorporation.Allrightsreserved.」
との記載があることから平成23年に作成されたものと推認され,項目名
の1段目及びリスト上部の記号の凡例は日本語で,リスト中の項目名は英
語で記載されており,「LocalizedVRB(ローカライズドVRB)」の欄
には「WCP要求事項」欄に「◎」(必須),「ZTE」欄に「対応可
能」を示すチェックが記載されているのに対し,「DistributedVRB
(ディストリビューテッドVRB)」の欄には「WCP要求事項」,「Z
TE」の欄とも空欄となっている。
しかし,上記仕様リストをもっても,これが最終的な被告製品の仕様を
示すものかは必ずしも明らかでなく,このような仕様リストのマスキング
済みの写しが添付された乙A8だけでは,自白が真実に反していたとは認
められない。
そうすると,原告の申し立てていた平成26年5月16日付け文書提出
命令に係る文書を検討するまでもなく,自白の反真実性の立証があったと
は認められず,自白の撤回は許されない。
ウ上記イによれば,対象方法466においてディストリビューテッドVR
Bがユーザ端末に割り当てられることは争いがない。
ディストリビューテッドVRBは「ダイバーシティクラスタ」に相当
し,対象方法466は少なくとも1つのディストリビューテッドVRBを
ユーザ端末に割り当てるから,対象方法466は構成要件2-1Bを充足
する。
(3)構成要件2-1C
ア対象方法466において,ローカライズドVRBがユーザ端末に割り当
てられることは争いがない。
イローカライズドVRBは,「コヒーレンスクラスタ」に相当する。
対象方法466は,少なくとも1つのローカライズドVRBを,上記
ディストリビューテッドVRBを割り当てられたのとは別のユーザ端末に
割り当て,少なくとも1つのディストリビューテッドVRBと少なくとも
1つのローカライズドVRBとをそれぞれ同時に使用することによって,
基地局と複数のユーザ端末との通信が生じ得るものであるから,構成要件
2-1Cを充足する。
(4)構成要件2-1D
ア「セル内の移動中の加入者と静止している加入者の人口が変化した時に
は」とは,セル内の移動中の加入者と静止している加入者の人口が変化し
た場合,その後(OFDMA通信の作用効果を損なわない程度に速やか
に)「クラスタ分類を再構成」すれば足り,「人口が変化した時」を検出
して再構成する必要があると解すべき根拠はない。
対象方法466においては,1msごとに「ダウンリンクのスケジュー
リング」を行っているというのであるから(被告準備書面(1)12
頁),その「ダウンリンクのスケジューリング」が「クラスタ分類の再構
成」を伴うものであれば,人口の変化を検出する構成を備えていないとし
ても,「人口が変化した時には……クラスタ分類を再構成」するものとい
える。
イそこで,対象方法466における「ダウンリンクのスケジューリング」
が「クラスタ分類の再構成」を伴うものといえるか,検討する。
構成要件2-1Dでいう「クラスタ分類」の「再構成」とは,各サブ
キャリアが「コヒーレンスクラスタ」であるか「ダイバーシティクラス
タ」であるかという「クラスタ分類」が異なるようになることを意味する
と解される(弁論の全趣旨〔原告第12準備書面21頁〕)。
対象方法466において又はLTE規格において,「ダウンリンクのス
ケジューリング」が,割り当てるべきRBを具体的にいかなる判断や処理
によって決定する行為であるか,認めるに足りる的確な証拠はない。
原告は,「ディストリビューテッドVRBの割当は,ユーザ端末(加入
者)からのCQI,PMIなどのフィードバック情報から,マルチパスな
どの障害が予想されるユーザ端末に対して,周波数ダイバシティ効果を得
るためになされる。」と主張し(訴状20頁,原告第1準備書面30
頁),原告第12準備書面19頁においては,より具体的に,「静止加入
者に対してローカライズドVRB(あるいは,リソース配置タイプ0また
は1による連続した物理リソース・ブロック:いずれも,本件発明2にお
けるコヒーレンスクラスタに相当する)を,移動加入者に対してディスト
リビューテッドVRB(本件発明2のダイバーシティクラスタに相当す
る)を同時に割り当てる。」と主張する。
「ダウンリンクのスケジューリング」において,「移動中の加入者」に
は必ずディストリビューテッドVRBを割り当て,「静止している加入
者」には必ずローカライズドVRBを割り当てるのであれば,その人口が
変化した時には,ディストリビューテッドVRBとローカライズドVRB
の構成を変化させなければならないから,「セル内の移動中の加入者と静
止している加入者の人口が変化した時」には必ず「クラスタ分類」を「再
構成」することになる。
しかし,原告は,「移動中の加入者には必ずディストリビューテッドV
RBを割り当て,静止している加入者には必ずローカライズドVRBを割
り当てる」という構成を対象方法466が採用していること又はLTE規
格上の要請であることを証拠によって立証していない。
甲A9の4には,「ダウンリンクにおいては,E-UTRAN[判決
注:EvolvedUniversalTerrestrialRadioAccessNetwork:進化型ユニ
バーサル地上波無線アクセスネットワーク]はUE[判決注:User
Equipment:ユーザ端末]に対してリソース(PRB[判決注:Physical
ResourceBlock:物理リソース・ブロック]及びMCS[判決注:
ModulationandCodingScheme:変調及び符号化方式])を,単数又は複
数のPDCCH[判決注:PhysicalDownlinkControlCHannel:物理下
り制御チャネル]上のC-RNTI[判決注:CellRadioNetwork
TemporaryIdentifier:セル無線ネットワーク一時識別子]を介した各T
TI[判決注:TransmissionTimeInterval:送信時間間隔]において,
動的に割り当てることが出来る。UEは,自らのダウンリンク受信が可能
な時に可能な割り当てを見出すために単数又は複数のPDCCHを常にモ
ニターする(設定されている場合にはDRX[判決注:Discontinuous
Reception:間欠受信]によって能動的に管理される。)。」との記載が
ある。
甲A9の12には,「PS[判決注:PacketScheduling:パケット・
スケジューリング]は,ラジオ・ベアラに関連したQoS[判決注:
QualityofService:サービス品質]要求,UEに対するチャネル・クオ
リティ・インフォメーション,バッファ状態,干渉状況等を通常考慮に入
れる。DRA[判決注:DynamicResourceAllocation:ダイナミック・
リソース・アロケーション,動的リソース割り当て]は,セル間干渉共同
作用を考慮することで,利用できるリソース・ブロック又はリソース・ブ
ロック・セットのいくつかについての制限又は優先順位をも考慮すること
が出来る。」との記載がある。
甲A11の1には,LTE規格上,ローカライズドVRBを割り当てた
か,ディストリビューテッドVRBを割り当てたかは「PDCCHDC
Iフォーマット」1A,1B,1D又は1Cの数値で管理されることが記
載されている。
甲A16・323頁には,「下りリンクスケジューラは,チャネル品質
を考慮したスケジューリングを決定し,異なる移動端末への下りリンク送
信のためのリソースを割り振ることができる。」との記載がある。
甲A23・307頁には,各ユーザ端末からのCQIに基づき,スケ
ジューラがサブフレーム周期で,ユーザごとにチャネル状況の良いRBを
割り当てることが記載され,305頁には,LTEでは,物理チャネルご
とにディストリビューテッド送信とローカライズド送信を使い分けること
によって,より効率の良いシステムを実現していることが記載されてい
る。
しかし,これらの記載によっても,「移動中の加入者には必ずディスト
リビューテッドVRBを割り当て,静止している加入者には必ずローカラ
イズドVRBを割り当てる」とまでは読み取れない。
例えば,ディストリビューテッドVRBの数に余裕を持たせてディスト
リビューテッドVRBとローカライズドVRBを構成しておけば,移動中
の加入者が多少増加したとしても,割り当てに使用していなかったディス
トリビューテッドVRBを新たに割り当てれば足り,クラスタ分類を再構
成する必要はないことになる。
ウさらに,1msごとに行われる「ダウンリンクのスケジューリング」に
おいて,移動中の加入者と静止している加入者の人口に応じてディストリ
ビューテッドVRBとローカライズドVRBとを割り当てるとすれば,
ユーザ端末からのCQI等のフィードバック情報を1msごとに送信させ
て,移動中の加入者かどうかを判定する必要があると考えられるところ
(甲A23),LTE規格上,CQIレポートには非周期的レポートと周
期的レポートが必須とされているが(甲A18の3・4),その周期的レ
ポートの周期が1msごとであることは証拠によって立証されていない。
したがって,仮に,「移動中の加入者には必ずディストリビューテッド
VRBを割り当て,静止している加入者には必ずローカライズドVRBを
割り当てる」という原則が対象方法466で又はLTE規格で採用されて
いたとしても,それが1msごとに行われる「ダウンリンクのスケジュー
リング」に必ず反映されることまで立証されたとはいえない。
エ以上によれば,対象方法466において,「セル内の移動中の加入者と
静止している加入者の人口が変化した時」に「クラスタ分類を再構成」し
ているとはいえず,対象方法466は,構成要件2-1Dを充足しない。
(5)小括
以上によれば,対象方法466は,構成要件2-1Dを充足しないか
ら,本件発明2-1の技術的範囲に属しない。
5争点2-2(対象方法466の本件発明2-3の構成要件充足性)について
対象方法466は構成要件2-1Dを充足しないから,請求項1(本件発
明2-1)を引用する構成要件2-3Bを充足せず,その余の点について判
断するまでもなく,本件発明2-3の技術的範囲に属しない。
6争点3-1(本件特許1の新規性・進歩性違反の有無1:乙B1を主引例と
するもの)について
(1)乙B1発明
本件特許1の優先日(平成12年10月10日)の前である平成10年
(1998年)6月4日に頒布された刊行物である国際公開第98/24
258号公報(乙B1)には,以下の発明(以下「乙B1発明」とい
う。)が開示されている(乙A9・29~30頁)。
周波数分割,時分割多元接続(frequency-division,time-division
multipleaccess;FD/TDMA)を使用して,複数の移動局(M1~M
10)の各々が,複数の基地局(B1~B10)の1つ以上及び移動局交
換センタ(MSC)を通して電話呼び出しを発信し又は受信する能力を有
する多スロット・セルラ電気通信システムにおいて,
移動局基地局対間に通信リンクを設立することがシステムに必要である
とき,そのリンクに利用可能なNのチャネル群の各々上の干渉(I)を測
定し,干渉(I)測定結果がシステムへ送信されるもので,移動局から,
干渉(I)測定結果は基地局へ伝送され,次いで,移動局交換センタ(M
SC)へ転送され,
干渉(I)測定の結果がACA(適応チャネル分配)プロセッサによっ
て受信され,ACAプロセッサは,Nのチャネル上で行われた干渉(I)
測定の結果からMの最少干渉未使用チャネルを決定し,リンク上の最少干
渉Mのチャネルの部分集合を割り当てるチャネル割り当てメッセージが移
動局及び基地局の両方へ送信されるものであり,もし最少干渉Mのチャネ
ルのうちの1つが近隣セル内で使用されたならば,そのチャネルは使用さ
れないことになる,
多スロット・セルラ電気通信システム。
(2)本件発明1-1と乙B1発明の対比
本件発明1-1と乙B1発明は,以下の点で一致し,以下の点で相違す
る(乙A9・31頁)。
(一致点)多重アクセスを使用して,それぞれが複数の基地局のうちの一つ
の基地局と通信する複数の加入者を含んでおり,基地局と複数の加入者と
の間での多重アクセスと情報交換とを調整するためのロジックを有し,該
ロジックは,複数の加入者から収集されたフィードバックチャネル情報に
基づいて,複数のトラフィックチャネル候補から一組のトラフィックチャ
ネルを選択し,そして,前記複数の加入者のうちの複数に対してチャネル
割り当てを提供することを特徴とするセルラー・ネットワークである点。
(相違点1)多重アクセスが,本件発明1-1では直交周波数分割多重アク
セス(OFDMA)であり,それに伴いチャネル情報,トラフィックチャ
ネル,及びチャネル割り当てが,それぞれOFDMAチャネル情報,OF
DMAトラフィックチャネル,及び結合OFDMAチャネル割り当てであ
るのに対して,乙B1発明では,周波数分割,時分割多元接続(FD/T
DMA)である点。
(相違点2)本件発明1-1は「基地局と複数の加入者との間での多重アク
セスと情報交換とを調整するためのロジック」を基地局が有し,複数の加
入者から収集されたフィードバックチャネル情報だけでなく,そのフィー
ドバックチャネル情報及び「少なくとも一つの他の基地局から収集された
OFDMAチャネル情報」に基づいて,トラフィックチャネルを選択し,
「そして,前記少なくとも一つの他の基地局と協働して前記複数の加入者
のうちの複数に対して結合OFDMAチャネル割り当てを提供する」とす
るのに対して,乙B1発明はそのような構成を有していない点。
(3)相違点1について
OFDMA(OrthogonalFrequencyDivisionMultipleAccess:直交周
波数分割多重アクセス)は,変調方式であるOFDM(Orthogonal
FrequencyDivisionMultiplexing:直交周波数分割多重)を基本とし,多
重アクセスを可能としたものであり(甲A1・段落【0003】【000
4】),異なるクラスタ(サブキャリアのセットからなる。)が異なる加
入者(ユーザ端末)に同時に割り当てられる点で,単一の加入者(ユーザ
端末)に複数のサブキャリアが割り当てられ,時分割によって複数の加入
者(ユーザ端末)を切り換えるOFDM/TDMAと異なるものである
(弁論の全趣旨〔原告第7準備書面54頁〕)。
本件特許1の優先日前に頒布された特表平11-508417号公報
(乙B21)は,OFDMシステムにおいて,M個の副搬送波のセット
が,異なる移動局(ユーザ端末)202,204に同時に割り当てられる
構成を開示しているから,OFDMA技術を開示しているといえる(乙B
21,乙B85・30~31頁)。
そもそも,「最近,直交周波数分割多重化(OFDM)をベースにした
直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)無線ネットワークに対する関
心が高まっている」こと(甲A1・段落【0003】),1993年5
月,1998年11月,1999年10月の「参考文献によれば,マルチ
ユーザ通信に関する問題が存在し,OFDMA状況における全範囲にわた
る集中的な資源割り当てによって,無線ネットワークの容量を実質的に増
大させることができること」(甲A1・段落【0004】)は,本件特許
1の明細書(甲A1)に記載されていることであって,優先日時点でOF
DMA技術が公知であったことは,本件特許1の明細書自体からも明らか
である。
当業者は,乙B1発明に,公知のOFDMA技術を組み合わせて,相違
点1を克服する構成を容易に想到することができると認めるのが相当であ
る。
(4)相違点2について
ア乙B1の開示内容について
乙B1発明において,移動局がリンク受信機であるとき,移動局が「そ
のリンクに利用可能なNのチャネル群の各々上の干渉(I)」を測定し,
測定結果は基地局に伝送され,次いで,MSCへ転送される。基地局がリ
ンク受信機であるとき,I測定結果はMSCに伝送される。
I測定の結果がACAプロセッサによって受信され,ACAプロセッサ
は,Nのチャネル上で行われたI測定の結果からMの最少干渉未使用チャ
ネルを決定する。次いで,リンク上の最少干渉Mのチャネルの部分集合を
割り当てるチャネル割り当てメッセージがリンク受信機及びリンク送信機
の両方へ送信される。
例えば,チャネルは,それらの使用が近隣セル内の伝送にいかに影響す
るかを基礎として割り当てることもできる。もし最少干渉Mのチャネルの
うちの1つが近隣セル内で使用されたならば,そのチャネルは使用されな
いことになろう(以上につき,乙B1・訳文13頁18~43行)。
以上の説明において,移動局がリンク受信機であるときの移動局からの
I測定結果及び基地局がリンク受信機であるときの基地局からのI測定結
果は,いずれもMSCに伝送され,ACAプロセッサはそのI測定結果に
基づいてチャネル割り当てを決定するのであるから,上記の説明は,AC
Aプロセッサが,基地局と別個のMSCに設けられる前提での説明である
と考えられる。
イMSCがACAプロセッサを有する構成と本件発明1-1の対比
乙B1発明は,「移動局と基地局との間の各アップリンク/ダウンリン
クごとに,システムは,或る数(N)のチャネルの集合から或る数(M)
のチャネルの部分集合を選択する」というACA(適応的チャネル割り当
て)を有しており,これは本件発明1-1Bにいう「基地局と複数の加入
者との間での多重アクセスと情報交換とを調整するためのロジック」に相
当する。
MSCに設けられたACAプロセッサがチャネル割り当てを決定するに
は,複数の移動局(M1~M10)のI測定結果及び少なくとも1つの基
地局(基地局B1~B10のうち,少なくとも当該移動局を管轄する基地
局B1)からのI測定結果に基づくと考えられるから,乙B1発明のAC
Aプロセスは,複数の移動局から収集されたI測定結果及び少なくとも一
つの他の基地局から収集されたI測定結果に基づいて,複数のチャネル候
補から「最少干渉Mのチャネルの部分集合」を選択するロジックであり,
乙B1発明が相違点1を克服してOFDMAを使用した場合には,構成要
件1-1Cにいう「該ロジックは,複数の加入者から収集されたフィード
バックOFDMAチャネル情報及び少なくとも一つの他の基地局から収集
されたOFDMAチャネル情報に基づいて,複数のOFDMAトラフィッ
クチャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択」する
ことに相当する。
しかし,本件発明1-1の構成要件1-1Bは,「前記基地局は……ロ
ジックを有し」と規定しているところ,上記認定のロジックはMSC内の
ACAプロセッサが有しており,基地局が有しているものではない。
被告は,移動局に対するチャネル割り当てを行うのは,MSCの制御を
受けたBSC(基地局コントローラ)である,とも主張するが(被告準備
書面(18)10頁),そうだとしても,ACAプロセッサを有しない基
地局が「ロジック」を有していることになるものではない。
また,「協働」とは,「協力して働くこと」をいうから(乙B77「広
辞苑[第5版]」),「他の基地局と協働して……チャネル割り当てを提
供する」場合,当該「他の基地局」も,自セルの加入者にチャネル割り当
てを提供していることを要すると解するべきである(基地局が,加入者か
らのフィードバック情報に基づいてチャネルを割り当てる場合であって
も,基地局が「加入者と協働して」チャネルを割り当てる,とは言わない
のであるから,基地局が,他の基地局からのチャネル情報に基づいてチャ
ネル割り当てを提供しているだけでは,「他の基地局と協働して」チャネ
ル割り当てを提供するものとはいえない。)。
MSCがACAプロセッサを有する構成において,MSCは,単独で
チャネル割り当てを決定し,基地局B1~B10に指令するにすぎないか
ら,当該ロジックが「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して……
チャネル割り当てを提供する」(構成要件1-1D)ものともいえない。
ウ基地局のうちの一つがACAプロセッサを有する構成と本件発明1-1
の対比
(ア)乙B1・英文図8では,ACAプロセッサ928は,チャネル評価
器914及びチャネル分配器916を含むように示されている。この図
8では,「基地局852と単一移動端末854が通信リンク815を経
由して結合されて示されて」(乙B1・訳文18頁)いる図であるか
ら,通信リンク815の左側は基地局852であり,すなわち,ACA
プロセッサ928は基地局852の中に存在している。
したがって,乙B1・英文図8の実施形態では,基地局852がAC
Aプロセッサ928を有し,基地局が「ロジック」を有する構成が開示
されている。
基地局がACAプロセッサを有する構成としては,①基地局B1のみ
がACAプロセッサを有し,他の基地局B2~B10はACAプロセッ
サを有しない構成と,②基地局B1~B10がそれぞれACAプロセッ
サを有する構成,の2種類が考えられる。
(イ)基地局B1のみがACAプロセッサを有し,他の基地局B2~B1
0はACAプロセッサを有しない場合,基地局B1が隣接する他の基地
局B2~B7のI測定結果やチャネル割り当て結果の情報を入手するの
か否か,入手する場合どのようにして入手するのか,乙B1には何ら記
載がないが,強いていえば,基地局B1は,MSCを通じて隣接基地局
B2~B7のI測定結果を収集し,ACAプロセッサにより自セルC1
及び隣接セルC2~C7内の移動局のチャネル割り当てを決定し,自セ
ルC1内の移動局にチャネル割り当てを行い,MSCを通じて隣接基地
局B2~B7に隣接セルC2~C7内の移動局へのチャネル割り当てを
指令するとも考えられる。
この場合,隣接基地局B2~B7のI測定結果は,いったんMSCに
伝送され,そこから基地局B1内のACAプロセッサに転送されるもの
と考えられる。
そのように考えた場合,ACAプロセッサを有する基地局B1は,
「少なくとも一つの他の基地局(B2~B7)から(MSCを通じて)
収集されたOFDMAチャネル情報に基づいて……チャネル割り当てを
選択」(構成要件1-1C)するかもしれないが,基地局B2~B7
は,ACAプロセッサを有する基地局B1の指令に従っているだけであ
るから,基地局B1が「前記少なくとも一つの他の基地局(B2~B
7)と協働して……チャネル割り当てを提供する」(構成要件1-1
D)ものとはいえない。
エ基地局がそれぞれACAプロセッサを有する構成と本件発明1-1の対

(ア)基地局B1~B10がそれぞれACAプロセッサを有する構成(乙
B1には,特定の基地局が特別な地位を有する旨の記載や示唆はないか
ら,このように考える方が自然である。)の場合,基地局B1は,自ら
の管轄するセルC1内の移動局M3,M4,M6,M7のI測定結果と
基地局B1自身のI測定結果に基づいて自セルC1内の移動局にチャネ
ルを割り当てるが,隣接する他の基地局B2~B7のI測定結果やチャ
ネル割り当て結果の情報は入手せず,隣接セルC2~C7との間での
チャネル割り当て調整は行わないものと考えられる。
なぜなら,このような場合に,ACAプロセッサを有する基地局B1
が,他の基地局B2~B7からI測定結果やチャネル割り当て結果の情
報を収集するという技術思想も,その手段も,乙B1には何らの記載も
示唆もないからである。
(イ)ACAプロセッサがMSCに設けられる場合には,MSCは基地局
B1~B10全体のチャネル割り当て結果を把握することができ,基地
局B1と基地局B2の管轄するセル(セルC1とセルC2)間でのチャ
ネル割り当ての調整を行うことができる。
しかし,MSCが,その管轄する基地局B1~B10以外の他のMS
Cの管轄する基地局のチャネル割り当て結果の情報を入手するという技
術思想も,その手段も,乙B1には何らの記載も示唆もないから,MS
Cは,自らの管轄するセルC1~C10内のチャネル割り当てについて
は,近隣セル(C1にとってのC2~C7)のチャネル割り当て結果を
考慮してチャネル割り当てを調整することができるが,他のMSCの管
轄する近隣セルとの調整は行わないと考えられる。
したがって,ACAプロセッサが基地局ごとに設けられる場合,AC
AプロセッサがMSCに設けられる場合におけるMSCの役割を各基地
局が果たしたとしても,各基地局は,他の基地局が管轄する近隣セルと
の調整は行わないと考えられる。
(ウ)被告は,乙B1発明において,基地局は,近隣セルとの干渉を考慮
することが開示されているのであるから,基地局が,他の基地局により
使用されているチャネルに関する情報を,他のエンティティ(例えば,
MSCなど,各基地局の上位に配置されその基地局を制御するエンティ
ティ等)を介してにせよ,当該他の基地局から収集することが開示され
ている,と主張する(被告準備書面(2)24~25頁,被告準備書面
(6)8頁,被告準備書面(18)12~14頁)。
しかし,乙B1には,ACAプロセッサを基地局に設けた場合に,そ
の基地局が他の基地局から当該他の基地局のチャネル割り当て結果その
他の情報を収集する手段について何らの記載もないから,乙B1におけ
るセル間調整に関する記載は,MSCが基地局B1~B10を制御する
場合についての記載と考えられ,基地局がそれぞれACAプロセッサを
有する場合には適用がないものと認めるのが相当である。
(エ)そうすると,乙B1発明においてACAプロセッサを基地局B1~
B10にそれぞれ設けた場合,基地局は「少なくとも一つの他の基地局
から収集されたOFDMAチャネル情報に基づいて……チャネル割り当
てを選択」(構成要件1-1C)するものではなく,「前記少なくとも
一つの他の基地局と協働して……チャネル割り当てを提供する」(構成
要件1-1D)こともない。
オ相違点2に係る構成が他の公知文献に記載されていないこと
(ア)以上のとおり,乙B1に開示された発明のうち,①MSCがACA
プロセッサを有する構成,②基地局B1のみがACAプロセッサを有す
る構成,③基地局B1~B10がそれぞれACAプロセッサを有する構
成,のいずれについても,「前記少なくとも一つの他の基地局と協働し
て……チャネル割り当てを提供する」(構成要件1-1D)構成が開示
されているとはいえない。
そこで,かかる構成が副引例に開示されているか,開示されていると
した場合に当業者が組合せを容易に想到できるか,検討する。
(イ)乙B16には,自身のものではない基地局からチャネル(チャネル
9)を借用しようとする基地局(借用局)が隣接基地局に「チャネル
9がアイドルであるか?」を尋ね,隣接基地局全ての返事が肯定である
場合は,チャネル9を借用して自局の移動機に割り当てるという技術が
開示されている。
しかし,乙B16に「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して…
…チャネル割り当てを提供する」(構成要件1-1D)構成が明示的に
開示されているものではなく,開示されているに等しいとも認められな
い。
したがって,乙B16に,相違点2に係る構成が記載されているとは
いえない。
(ウ)乙B21は,乙B1と同一の出願人による,乙B1より前の出願に
係る公開特許公報であり,乙B1と同様のロジックを有する「ACA処
理部」を有するが,「図示する実施例では,ACA処理部はMSC内に
配置されている。ACA処理部はシステムの基地局内に配置することも
できる。」との記載があり(乙B21・21頁1~3行),「例えば,
副搬送波は,それらの使用が近隣セルの送信にどのような影響を及ぼす
かに基づいて割り当てることができた。最小干渉M副搬送波の一つが近
隣セルで使用される場合には,副搬送波は使用されないことがある。」
とのセル間調整に関する記載がある(乙B21・23頁3~6行)。
しかし,乙B21に記載された発明のうち,①MSCがACA処理部
を有する構成,②基地局B1のみがACA処理部を有する構成,③基地
局B1~B10がそれぞれACA処理部を有する構成,のいずれについ
ても,「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して……チャネル割り
当てを提供する」(構成要件1-1D)構成が開示されているといえな
いことは,乙B1について判断したのと同様である。
したがって,乙B21にも,基地局が「少なくとも一つの他の基地局
と協働して……チャネル割り当てを提供する」(構成要件1-1D)技
術は開示されていないから,乙B1発明に乙B21の技術を組み合わせ
ても,本件発明1-1の構成に到達することはない。
(エ)乙B79~84には,基地局ないし基地局コントローラ(BSC)
がチャネルの割り当てを行う技術が開示されているが,基地局が「少な
くとも一つの他の基地局と協働して……チャネル割り当てを提供する」
(構成要件1-1D)技術は開示されていない。
したがって,乙B1発明にこれらの公知文献の技術を組み合わせて
も,本件発明1-1の構成に到達することはない。
カ以上によれば,相違点2に係る構成は,当業者が容易に想到できるもの
ではない。
(5)小括
以上によれば,①本件発明1-1と乙B1発明には上記の相違点1・2
が存在するから,本件発明1-1が乙B1発明から新規性を欠くとはいえ
ず,②本件発明1-1と乙B1発明との相違点2に係る構成は容易想到と
はいえないから,本件発明1-1は,乙B1発明から進歩性を欠くともい
えない。
7争点3-2(本件特許1の新規性・進歩性違反の有無2:乙B16を主引例
とするもの)について
(1)乙B16発明
特開2000-78651号公報(乙B16)には,以下の発明(以下
「乙B16発明」という。)が開示されている(乙A9・43頁)。
直交周波数分割多重(OFDM)も含まれる時分割多元アクセス(TD
MA)を採用するセルラ電話システムである無線通信網において,
チャネルを複数の基地局に,互いに干渉する基地局によって同一のチャ
ネルが同時に用いられるのを禁止するような規則に従って割り当てるス
テップと,
複数のチャネルを前記複数の基地局の少なくとも一つの基地局に,前記
規則に従って再割り当てするステップを含み,前記再割り当てするステッ
プが,少なくとも一つの隣接基地局が前記基地局にメッセージを発行する
ことで,再割り当てのために空いているチャネルを識別し,空いているも
のとして識別されたチャネルから,一つあるいは複数のチャネルを再割り
当てのために選択し,少なくとも一つのチャネルを前記基地局に前記隣接
基地局から借用して再割り当てするステップを含み,
前記割り当てられたチャネルが,前記基地局自身のセットの各移動機に
割り当てられることで,前記基地局から前記移動機への下りリンクチャネ
ルを構成する,又は前記移動機から前記基地局への上りチャネルを構成す
る,セルラ電話システムである無線通信網。
(2)本件発明1-1と乙B16発明の対比
本件発明1-1と乙B16発明は,以下の点で一致し,以下の点で相違
する(乙A9・44~45頁)。
(一致点)直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を使用して,それぞ
れが複数の基地局のうちの一つの基地局と通信する複数の加入者を含んで
おり,前記基地局は,基地局と複数の加入者との間での多重アクセスと
情報交換とを調整するためのロジックを有し,該ロジックは,複数のOF
DMAトラフィックチャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャ
ネルを選択し,そして,前記複数の加入者のうちの複数に対して結合OF
DMAチャネル割り当てを提供することを特徴とするセルラー・ネット
ワーク。
(相違点)本件発明1-1は,「複数の加入者から収集されたフィードバッ
クOFDMAチャネル情報及び少なくとも一つの他の基地局から収集され
たOFDMAチャネル情報に基づいて,複数のOFDMAトラフィック
チャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択し,そし
て,前記少なくとも一つの他の基地局と協働して前記複数の加入者のうち
の複数に対して結合OFDMAチャネル割り当てを提供すること」とする
ものであるのに対して,乙B16発明はそのような構成を有しない点。
(3)相違点について
乙B16に「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して……チャネル
割り当てを提供する」(構成要件1-1D)構成が開示されておらず,本
件訴訟で提出された他の公知文献にもそのような構成が開示されていない
ことは,上記6で判断したとおりである。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,相違点に係る構
成は,当業者が容易に想到できるものではない。
(4)小括
以上によれば,①本件発明1-1と乙B16発明には上記相違点が存在
するから,本件発明1-1が乙B16発明から新規性を欠くとはいえず,
②本件発明1-1と乙B16発明との相違点に係る構成は容易想到とはい
えないから,本件発明1-1は,乙B16発明から進歩性を欠くともいえ
ない。
8争点3-3(本件特許1の新規性・進歩性違反の有無2:乙B21を主引例
とするもの)について
(1)乙B21発明
特表平11-508417号公報(乙B21)には,以下の発明(以下
「乙B21発明」という。)が開示されている(乙B85・28~33
頁)。
直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を使用して,移動局交換局
(MSC)及びそれぞれが複数の基地局のうちの一つの基地局と通信する
複数の移動局を含んでおり,
前記MSCは,基地局と複数の移動局との間での多重アクセスと情報交
換とを調整するためのACA処理部を有し,
該ACA処理部は,複数の移動局から収集されたフィードバックOFD
MA副搬送波I測定結果及び少なくとも一つの他の基地局から収集された
OFDMA副搬送波I測定結果に基づいて,N個の副搬送波候補から一組
のM個の副搬送波を選択し,
そして,複数の移動局のうちの複数に対して,近隣セルで使用されない
OFDMA副搬送波を用いるようにして,基地局と通信する複数の加入者
に対してチャネル組をそれぞれ割り当てるようにして,かつ,基地局と通
信する加入者のアップリンク及びダウンリンクに対して異なるチャネルの
組を割り当てるようにして,OFDMA副搬送波サブセット割り当てを提
供する
ことを特徴とするセルラー・ネットワーク。
(2)本件発明1-1と乙B21発明の対比
本件発明1-1と乙B21発明は,以下の点で一致し,以下の点で相違
する。
(一致点)直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)を使用して,それぞれ
が複数の基地局のうちの一つの基地局と通信する複数の加入者を含んでお
り,基地局と複数の加入者との間での多重アクセスと情報交換とを調整す
るためのロジックを有し,該ロジックは,複数の加入者から収集された
フィードバックOFDMAチャネル情報及び少なくとも一つの他の基地局
から収集されたOFDMAチャネル情報に基づいて,複数のOFDMAト
ラフィックチャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選
択し,そして,前記複数の加入者のうちの複数に対して結合OFDMA
チャネル割り当てを提供することを特徴とするセルラー・ネットワークで
ある点。
(相違点)本件発明1-1は「基地局と複数の加入者との間での多重アクセ
スと情報交換とを調整するためのロジック」を基地局が有し,複数の加入
者から収集されたフィードバックOFDMAチャネル情報だけでなく,そ
のOFDMAフィードバックチャネル情報及び「少なくとも一つの他の基
地局から収集されたOFDMAチャネル情報」に基づいて,トラフィック
チャネルを選択し,「そして,前記少なくとも一つの他の基地局と協働し
て前記複数の加入者のうちの複数に対して結合OFDMAチャネル割り当
てを提供する」とするのに対して,乙B21発明はそのような構成を有し
ない点。
(3)相違点について
乙B21に「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して……チャネル
割り当てを提供する」(構成要件1-1D)構成が開示されておらず,本
件訴訟で提出された他の公知文献にもそのような構成が開示されていない
ことは,上記6で判断したとおりである。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,相違点に係る構
成は,当業者が容易に想到できるものではない。
(4)小括
以上によれば,①本件発明1-1と乙B21発明には上記相違点が存在
するから,本件発明1-1が乙B21発明から新規性を欠くとはいえず,
②本件発明1-1と乙B21発明との相違点に係る構成は容易想到とはい
えないから,本件発明1-1は,乙B21発明から進歩性を欠くともいえ
ない。
9争点3-4(本件特許1の明確性違反の有無)について
(1)被告は,本件発明1-1の「フィードバックOFDMAチャネル情
報」,「OFDMAチャネル情報」,「OFDMAトラフィックチャネ
ル」及び「結合OFDMAチャネル割り当て」の文言が不明確であると主
張する。
しかし,「フィードバックOFDMAチャネル情報」は,加入者から基
地局にフィードバックされる「OFDMAチャネル情報」であり,「OF
DMAチャネル情報」は,OFDMA通信において使用されるチャネル
(伝送路)の状態を表す情報であり,「OFDMAトラフィックチャネ
ル」とは,OFDMA通信において使用されるトラフィックチャネルであ
り,「結合OFDMAチャネル割り当て」とは,OFDMA通信において
複数のサブキャリアからなるチャネルの組を割り当てることであること
は,当業者が技術常識に基づいて理解できるものと認められる。
したがって,これらの文言が不明確であるとはいえない。
(2)被告は,「複数の加入者から収集されたフィードバックOFDMAチャ
ネル情報及び少なくとも一つの他の基地局から収集されたOFDMAチャ
ネル情報に基づいて」という文言は,「複数のOFDMAトラフィック
チャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択し」とい
う文言のみを修飾しているのか,又は,「複数のOFDMAトラフィック
チャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択し」とい
う文言及び「前記少なくとも一つの他の基地局と協働して前記複数の加入
者のうちの複数に対して結合OFDMAチャネル割り当てを提供する」と
いう文言の両方を修飾しているのかが不明確である,と主張する。
しかし,「複数の加入者から収集されたフィードバックOFDMAチャ
ネル情報及び少なくとも一つの他の基地局から収集されたOFDMAチャ
ネル情報に基づいて」という文言が,直後の「複数のOFDMAトラ
フィックチャネル候補から一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択
し」という文言のみを修飾し,「そして」という接続詞を挟んだ「……提
供する」の文言を修飾しないことは,当業者が技術常識に基づいて理解で
きるものと認められる。
したがって,上記文言が不明確であるとはいえない。
(3)被告は,「一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択」すること
と,「結合OFDMAチャネル割り当てを提供する」こととが,互いに全
く独立の動作を規定したものであるのか,又は,互いに関係のある動作を
規定したものであるのか不明確である,と主張する。
そもそも,本件発明1-1の構成要件充足性の判断に当たって,「一組
のOFDMAトラフィックチャネルを選択」することと,「結合OFDM
Aチャネル割り当てを提供する」こととの関係が不明確であったとして
も,発明の外延が不明確となるものではない。
なお,チャネルを割り当てるためには,割り当てるチャネルをあらかじ
め選択し,その選択されたチャネルを使用可能とする(提供する)必要が
あることは技術常識であるから(乙A9・8頁),構成要件1-1Dで
「提供」する「結合OFDMAチャネル割り当て」が,構成要件1-1C
で「一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択」した結果に基づくも
のであることは,当業者が技術常識に基づいて理解できるものと認められ
る。
したがって,いずれにせよ,上記文言が不明確であるとはいえない。
10争点3-5(本件特許1のサポート要件違反,簡潔性要件違反,実施可能
要件違反の有無)について
(1)被告は,「複数の加入者から収集されたフィードバックOFDMAチャ
ネル情報及び少なくとも一つの他の基地局から収集されたOFDMAチャ
ネル情報に基づいて」「複数のOFDMAトラフィックチャネル候補から
一組のOFDMAトラフィックチャネルを選択」すること(構成要件1-
1C)は,本件特許1の明細書の発明の詳細な説明に記載されていない,
と主張する。
しかし,本件特許1の明細書の【発明の詳細な説明】には,基地局が複
数の加入者からフィードバックOFDMAチャネル情報を収集すること
(段落【0017】【0019】【0020】【0033】【0042】
【0050】)が記載されているほか,基地局が他の基地局とOFDMA
チャネル情報を交換することが記載されており(段落【0026】【00
52】),段落【0052】には,「結合マルチセルトラフィックチャネ
ル割り当てを可能にするために,各セル内の基地局は,プロトコル及び上
述の方式を利用して,アップリンク及びダウンリンクのトラフィックチャ
ネル推定を行う。更に,図9に示すように,隣接する基地局は,基地局制
御装置又は基地局間の専用リンクを介して,このような情報を交換する。
トラフィックチャネル状態,割り当て表,並びに隣接するセルのアクセス
中の全加入者のQoS要件は,トラフィックチャネル割り当てを行う際に
明らかにされることができる。例えば,2つの基地局が,異なるセル内で
互いに近い2人の加入者に,チャネル1から10まで(これらの加入者に
対して高い利得を有するチャネルがある)のいずれかを割り当てることが
できると分かっている場合,一方の基地局は,チャネル1から5までを加
入者に割り当てることができ,他方の基地局は,チャネル6から10まで
を加入者に割り当てることができる。」と記載されている。
これらの記載に接した当業者は,基地局が,「上述の方式」すなわち加
入者からのフィードバックOFDMAチャネル情報に基づいて推定した自
セルの加入者の「トラフィックチャネル推定」と,隣接する基地局から交
換された隣接セルの加入者の「トラフィックチャネル推定」とに基づい
て,一方の基地局は,チャネル1から5までを選択してこれを提供するこ
とにより,チャネル1から5までを自セルの加入者に割り当てることが記
載されていると理解することができる。
被告は,段落【0052】は構成要件1-1Dに対応する構成を開示す
るものであり,この段落が構成要件1-1C及び構成要件1-1Dの両方
の構成を開示するものであるとすると,構成要件1-1C及び構成要件1
-1Dは全体として冗長な記載を形成していることになり,本件特許1の
請求項1の記載は特許法36条6項3号に規定する要件を満たさない,と
主張する。
しかし,チャネルの割り当てが,チャネルの選択と選択されたチャネル
の提供の双方の処理を必要とすることは技術常識であり(乙A9・12
頁),構成要件1-1Cが前者について,構成要件1-1Dが後者につい
て規定し,【発明の詳細な説明】の段落【0052】が両者についてまと
めて記載しているとしても,冗長な記載であるとはいえず,サポート要件
(特許法36条6項1号)及び簡潔性要件(同条3号)を満たさないとも
いえない。
そうすると,構成要件1-1Cは,本件特許1の明細書の【発明の詳細
な説明】に記載されており,本件発明1-1がサポート要件及び簡潔性要
件を欠くとはいえない。
(2)被告は,構成要件1-1Dは,「少なくとも一つの他の基地局と協働し
て……結合OFDMAチャネル割り当てを提供する」と規定しており,
「少なくとも一つの他の基地局」という文言は「一つの基地局」又は「複
数の基地局」を意味するところ,「1つの他の基地局と協働」する構成は
段落【0052】に開示されているとしても,「2つ以上の他の基地局と
協働」する構成は本件特許1の明細書の【発明の詳細な説明】に開示され
ておらず,当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものでもな
い,と主張する。
しかし,本件特許1の明細書の段落【0052】には,2つの基地局
が,異なるセル内で互いに近い2人の加入者にチャネル1から10までの
いずれかを割り当てる場合に,2つの基地局が協働して,第1の基地局は
チャネル1から5までを,第2の基地局はチャネル6から10までを,そ
れぞれ加入者に割り当てる構成を開示している。
このような記載に接した当業者は,3つの基地局が,異なるセル内で互
いに近い3人の加入者にチャネル1から10までのいずれかを割り当てる
場合に,3つの基地局が協働して(例えば,本件特許1の図面【図9】で
いう基地局BS1が,他の2つの基地局BS2,BS4と協働して),第
1の基地局(BS1)はチャネル1から3までを,第2の基地局(BS
2)はチャネル4から6までを,第3の基地局(BS4)はチャネル7か
ら10までを,それぞれ加入者に割り当てることができることを,段落
【0052】の記載から容易に理解することができる。
そうすると,本件特許1の明細書の【発明の詳細な説明】には,2つ以
上の基地局と協働する構成が明示的には記載されていないとしても,明細
書に記載された他の1つの基地局と協働する構成の課題解決原理は,他の
2つ以上の基地局と協働する構成にも拡張可能であることが当業者に明ら
かであるから,本件発明1-1がサポート要件及び実施可能要件を欠くと
はいえない。
11争点5-1(間接侵害の成否)について
(1)以上によれば,被告製品を使用した対象ネットワーク478は本件発明
1-1の技術的範囲に属し,本件発明1-1についての特許に被告主張の
無効理由があるともいえない。
(2)原告は,被告製品は,LTE規格に準拠した通信をするための専用機器
であるから,対象ネットワーク478を生産するためにのみ用いられる物
である,と主張する(訴状23頁,原告第1準備書面34頁,原告第2準
備書面42頁)。
しかし,本件発明1-1の構成要件充足性の基礎とした事実のうち,基
地局がRNTPを交換すること,RNTPをRB割り当てに使用すること
は,LTE規格上,考慮することができる(may)オプションであって,使
用しなければならない(should)必須の要請ではない(甲A17の1・
2,甲A21,乙A13・171頁,弁論の全趣旨〔原告第9準備書面5
頁,被告準備書面(14)4~6頁〕)。
そうすると,被告製品を使用した対象ネットワーク478は現に基地局
間でRNTPを交換し,RBの割り当てに使用していると認められるとし
ても,被告製品を,基地局間でRNTPを交換しないネットワークのため
の非侵害用途に使用することが,経済的,商業的,実用的な用途としてあ
り得ないとまではいえない。
そうすると,被告製品が,対象ネットワーク478(RNTPを交換
し,RB割り当てに使用するネットワーク)の生産にのみ用いられる物で
あるとまでは認められない。
(3)原告は,被告製品は,本件発明1の課題解決に不可欠なものであると主
張する(原告第1準備書面34頁,原告第2準備書面42頁)。
被告製品は,対象ネットワーク478の生産に用いる物であって,「日
本国内において広く流通しているもの」に当たらない。
被告製品は,対象ネットワーク478に不可欠な基地局施設においてL
TE通信に用いられるものであり,対象ネットワーク478が本件発明1
-1の課題を解決するのに不可欠なものと認められる。
被告は,遅くとも本件訴状が送達された平成24年11月22日以降,
本件発明1-1が特許発明であること,被告製品がその発明の実施に用い
られることを知ったものと認められる。
したがって,被告が,訴状送達日である平成24年11月22日以降,
被告製品の生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為は,特
許法101条2号の間接侵害に当たる。
(4)原告は,別紙1物件目録記載4の「B8300A」「BS8906」
「R8924DT」(被告製品)のほか,同目録記載1ないし3の製品に
ついても本件発明1-1の間接侵害を主張している。
同目録記載1の製品は,被告製品のうち「B8300A」及び「BS8
906」を含む「BBUZXSDRシリーズ」であるが,同シリーズ
の製品全てが「B8300A」及び「BS9906」と同じ構成を有して
いると認めるに足りる証拠はない。被告は,「BBUZXSDRシ
リーズ」には,GSMやUMTSといった(LTE規格とは別個の)通信
規格に準拠した製品も含まれる旨主張している(答弁書2頁)。
同目録記載2の製品は,被告製品のうち「R8924DT」を含む「R
RUZXSDRシリーズ」であるが,同シリーズの製品全てが「R8
924DT」と同じ構成を有していると認めるに足りる証拠はない。
同目録記載3の製品は,「RRUZXSDRシリーズ」に含まれる
「ZXTRR8928D」とするLTEワイヤレス基地局施設である。
ZTECorporationのウェブサイト(甲A5)によれば,「ZXTR
R8928D」は「TD-LTE」の製品として記載されている。
被告のウェブサイト(甲A6)には,被告製品は高度化XGP(AXG
P)で使用される基地局であり,「TD-LTEに適用される主要アンテ
ナ技術に加え,セル間の協調による干渉調整機能(ICIC)……などの
新しい機能を提供します。」と記載されていることからすれば,「TD-
LTE」の製品である「ZXTRR8928D」が,被告製品と同様に
ICIC機能を有し,RNTPを交換しているとは認められない。
以上によれば,別紙1物件目録記載1ないし3の製品は,本件発明1-
1の技術的範囲に属する対象ネットワーク478に使用されるものとは認
められず,これらの譲渡等が本件発明1-1の間接侵害を構成するとは認
められない。
12争点5-2(差止めの必要性)について
以上によれば,被告が,訴状送達日である平成24年11月22日以降,
被告製品の生産,譲渡等(譲渡及び貸渡しをいう。特許法2条3項1号)若
しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為は,特許法101条2号の間接侵害
に当たる。
被告が,被告製品のうち「B8300A」及び「BS8906」の輸入販
売を行っていること,「R8924DT」の輸入販売を行ったことがあるこ
とは争いがないから,原告は,被告に対し,特許法100条1項,101条
2号に基づき,被告製品を輸入し,譲渡し,貸し渡し,又は,譲渡若しくは
貸渡しの申出をすることを差し止める必要性があると認められる。
13結論
以上によれば,原告の請求は,別紙1物件目録記載4の被告製品について
輸入等の差止めを求める限度で理由があるから認容し,別紙1物件目録記載
1ないし3の製品について輸入等の差止めを求める部分は理由がないから棄
却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条ただし書を適用し
て,主文のとおり判決する(仮執行宣言の申立てはない。)。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
嶋末和秀
裁判官
西村康夫
裁判官
本井修平
別紙1
物件目録
1BBUZXSDRシリーズとするLTEワイヤレス基地局施設
2RRUZXSDRシリーズとするLTEワイヤレス基地局施設
3ZXTRR8928DとするLTEワイヤレス基地局施設
4B8300A,BS8906,R8924DTとするLTEワイヤレス基地
局施設

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