弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人永田誠の上告理由第一点について
 一 所論は、日本国籍を有する被上告人からドイツ連邦共和国の国籍を有する上
告人に対する本件離婚請求につき我が国の国際裁判管轄を肯定した原審の判断の遵
法をいうものであるところ、記録によって認められる事実関係の概要は、次のとお
りである。
 1 被上告人と上告人とは、昭和五七年五月一五日、ドイツ民主共和国(当時)
において、同国の方式により婚姻し、同五九年五月二三日には長女が生まれた。
 2 被上告人ら一家は、昭和六三年からドイツ連邦共和国ベルリン市に居住して
いたが、上告人は、平成元年一月以降、被上告人との同居を拒絶した。
 被上告人は、同年四月、旅行の名目で長女を連れて来日した後、上告人に対して
ドイツ連邦共和国に戻る意志のないことを告げ、以後、長女と共に日本に居住して
いる。
 3 上告人は、平成元年七月八日、自己の住所地を管轄するベルリン市のシャル
ロッテンブルク家庭裁判所に離婚請求訴訟を提起した。右訴訟の訴状、呼出状等の
被上告人に対する送達は、公示送達によって行われ、被上告人が応訴することなく
訴訟手続が進められ、上告人の離婚請求を認容し、長女の親権者を上告人と定める
旨の判決が同二年五月八日に確定した。
 4 被上告人は、平成元年七月二六日、本件訴訟を提起した(訴状が上告人に送
達されたのは、同二年九月二〇日である。)。
 二 離婚請求訴訟においても、被告の住所は国際裁判管轄の有無を決定するに当
たって考慮すべき重要な要素であり、被告が我が国に住所を有する場合に我が国の
管轄が認められることは、当然というべきである。しかし、被告が我が国に住所を
有しない場合であっても、原告の住所その他の要素から離婚請求と我が国との関連
性が認められ、我が国の管轄を肯定すべき場合のあることは、否定し得ないところ
であり、どのような場合に我が国の管轄を肯定すべきかについては、国際裁判管轄
に関する法律の定めがなく、国際的慣習法の成熟も十分とは言い難いため、当事者
間の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である。
そして、管轄の有無の判断に当たっては、応訴を余儀なくされることによる被告の
不利益に配慮すべきことはもちろんであるが、他方、原告が被告の住所地国に離婚
請求訴訟を提起することにつき法律上又は事実上の障害があるかどうか及びその程
度をも考慮し、離婚を求める原告の権利の保護に欠けることのないよう留意しなけ
ればならない。
 これを本件についてみると、前記事実関係によれば、ドイツ連邦共和国において
は、前記一3記載の判決の確定により離婚の効力が生じ、被上告人と上告人との婚
姻は既に終了したとされている(記録によれば、上告人は、離婚により旧姓に復し
ている事実が認められる。)が、我が国においては、右判決は民訴法二〇〇条二号
の要件を欠くためその効力を認めることができず、婚姻はいまだ終了していないと
いわざるを得ない。このような状況の下では、仮に被上告人がドイツ連邦共和国に
離婚請求訴訟を提起しても、既に婚姻が終了していることを理由として訴えが不適
法とされる可能性が高く、被上告人にとっては、我が国に離婚請求訴訟を提起する
以外に方法はないと考えられるのであり、右の事情を考慮すると、本件離婚請求訴
訟につき我が国の国際裁判管轄を肯定することは条理にかなうというべきである。こ
の点に関する原審の判断は、結論において是認することができる。所論引用の判例
(最高裁昭和三七年(オ)第四四九号同三九年三月二五日大法廷判決・民集一八巻
三号四八六頁、最高裁昭和三六年(オ)第九五七号同三九年四月九日第一小法廷判
決・裁判集民事七三号五一頁)は、事案を異にし本件に適切ではない。論旨は、採
用することができない。
 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属す
る証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論
難するものにすぎず、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    福   田       博

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛