弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人横川紀良の上告理由第一点、第二点について
 処分禁止の仮処分命令は、右命令に違反してなされた処分行為による第三者の権
利取得をもつて仮処分債権者の被保全権利に対抗することをえないものとする効果
を生ずるにとどまり、右第三者の権利取得が仮処分債権者に対する関係において全
面的に否定されるべきものとなるわけでないことは、当裁判所判例(昭和四一年(
オ)第三六一号同四五年九月八日第三小法廷判決・民集二四巻一〇号一頁)の示す
とおりである。
 原審の適法に確定したところによると、(一)上告人は、被上告人B1の被相続人
Dから、同女所有の本件土地を、同女がその地上に所有する本件建物を収去して更
地として明渡す約定のもとに、賃借し、右賃貸借契約に基づく建物収去土地明渡請
求権の執行を保全するため、同女を債務者として本件土地建物につき処分禁止の仮
処分命令を得、昭和三七年四月一二日右仮処分命令の登記簿への記入を経てその執
行を了した、(二)ところが、被上告人株式会社B2商店(以下「被上告人会社」と
いう。)は、昭和四一年四月ころDから本件土地建物を買い受け、本件土地につき
同年五月一七日に、本件建物につき同年八月一七日に、それぞれ所有権移転登記を
経由した、というのであるから、被上告人会社は、仮処分債権者である上告人に対
する関係において、本件土地建物の所有権の取得を全面的に否定されるものではな
く、ただ、その所有権取得を理由として本件仮処分の被保全権利である上告人の賃
貸借契約上の権利の実現を妨げることが許されないものであるにすぎない、と解す
るのが相当である。これと同旨の見解のもとに、被上告人会社の上告人に対する所
有権確認請求を認容した原審の判断は、正当であり、また、この判断によつて、原
判決中上告人の被上告人B1に対する建物収去土地明渡請求を認容した部分が執行
不能に陥るわけのものではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、
原判決を正解しないか、独自の見解に立つて原判決を論難するものにすぎず、採用
することができない。
 同第三点、第四点について
 本件記録によると、上告人は原審口頭弁論期日において所論の主張をしていない
ことが明らかであり、また、本件訴訟の経過にかんがみると、原審が所論の点につ
いて釈明をしなかつたとしても違法とはいえない。原判決に所論の違法はなく、論
旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    本   林       讓

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