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平成27年4月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成26年(行ケ)第10154号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成27年3月12日
判決
原告株式会社フジ医療器
訴訟代理人弁護士辻本希世士
同辻本良知
同松田さとみ
訴訟代理人弁理士辻本一義
同丸山英之
同松田裕史
同金澤美奈子
被告ファミリーイナダ株式会社
訴訟代理人弁理士古川安航
同山田久就
同高田聰
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2013-800091号事件について平成26年5月27日
にした審決を取り消す。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
(1)被告は,発明の名称を「マッサージ機」とする特許第5209091号
(平成14年6月3日にされた特許出願(特願2002-161896号。
以下「原出願」という。)の分割出願である特許出願(特願2008-21
138号)の一部を分割して,平成23年7月19日,新たな特許出願(特
願2011-157490号)としたもの。平成25年3月1日設定登録。
請求項の数4。以下「本件特許」という。)の特許権者である(甲45)。
(2)原告は,平成25年5月24日,特許庁に対し,本件特許の請求項1ない
し4に係る発明を無効にすることを求めて審判請求(無効2013-800
091号)をし,被告は,平成26年2月13日に訂正請求書(甲42)を
提出し,特許庁は,審理の上,同年5月27日,「請求のとおり訂正を認め
る。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」とい
い,本件審決により認められた訂正を「本件訂正」という。)をし,その謄
本は,同年6月5日,原告に送達された。
(3)原告は,平成26年6月26日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提
起した。
2特許請求の範囲
本件訂正後の請求項1ないし4の記載は,次のとおりである(甲42。訂正
箇所に下線を引いた。)。以下,本件訂正後の本件特許に係る発明を請求項の
番号に従って「本件発明1」などといい,本件発明1ないし4を併せて「本件
発明」という。また,本件訂正後の明細書(甲45)を,図面を含め,「本件
明細書」という。
【請求項1】
座部と,
マッサージ機能を有する複数の脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り,最
先端の脚保持部材には足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部と,
前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に付与する抵
抗付与手段と,を備え,
前記脚載せ部は,前記座部の前部に対して回動自在であり,
前記最先端の脚保持部材は
前記押し当て面と,
足の側部に対向させる足側面と,
左右方向における中央部に区画壁と,
前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエアセ
ルと,
前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルと,を有し,
他の脚保持部材は,
脚の側部に対向させる脚側面と,
前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルと,を有し,
前記脚載せ部は,前記最先端の脚保持部材及び前記他の脚保持部材のそれぞ
れが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能,かつ,前記最先端の脚
保持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記他の脚保持部材の前記
脚側面に設けられた前記エアセルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に
伸縮可能であり,
前記抵抗付与手段は,前記脚の力に抗する方向に前記最先端の脚保持部材を
付勢する付勢手段であることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
座部と,
マッサージ機能を有する少なくとも3つの脚保持部材を脚の長さ方向に並べ
て成り,最先端の脚保持部材には足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部
と,
前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に付与する抵
抗付与手段と,を備え,
前記脚載せ部は,前記座部の前部に対して回動自在であり,
隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能で
あり,
前記最先端の脚保持部材は
前記押し当て面と,
足の側部に対向させる足側面と,
左右方向における中央部に区画壁と,
前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエアセ
ルと,
前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルと,を有し,
他の脚保持部材は,それぞれ
脚の側部に対向させる脚側面と,
前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルと,を有し,
前記脚載せ部は,前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前記エ
アセルと前記他の脚保持部材の前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距離
が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であり,
前記抵抗付与手段は,前記脚の力に抗する方向に前記最先端の脚保持部材を
付勢する付勢手段であることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
前記脚載せ部の脚先側下端には,下向き状態にある前記脚載せ部が伸長する
と床に接地する車輪が設けられ,
前記脚載せ部は,伸長しながら上方へ回動可能であることを特徴とする請求
項1又は2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記他の脚保持部材は,左右方向における中央部に区画壁を有することを特
徴とする請求項2に記載のマッサージ機。
3本件審決の理由の要旨
(1)本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,
①本件発明1は,原出願の出願日前に頒布された刊行物である下記刊行物1
に記載された発明及び周知技術に基づいて,又は下記刊行物2に記載された
発明,下記刊行物3に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容
易に発明をすることができたものではなく,②本件発明2は,下記刊行物2
に記載された発明,下記刊行物3に記載された発明及び周知技術に基づいて,
当業者が容易に発明をすることができたものではなく,③本件発明3及び4
は,本件発明1又は2の発明特定事項をすべて含み,さらに,他の発明特定
事項を付加したものに相当する発明であって,本件発明1及び2と同様の理
由により,刊行物1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて,当
業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件発明は,特許
法29条2項の規定に違反して特許されたものではなく,その特許は同法1
23条1項2号に該当しないから,無効とすべきものではない,というもの
である。

ア刊行物1:特開平11-290409号公報(甲1)
イ刊行物2:国際公開第2001/78646号(国際公開日平成13年
10月25日。なお,同刊行物の内容は,再公表特許2001/0786
46号公報(甲2)と同一であるから,以下,刊行物2の内容について検
討するについては,刊行物2の記載の摘記に代えて甲2の記載を摘記する
ものとする。)
ウ刊行物3:特開2002-65785号公報(甲6。平成14年3月5
日公開)
エ周知例
(ア)甲3:実公昭35-585号公報
(イ)甲5:特開2000-197676号公報
(ウ)甲13:特開平8-89540号公報
(エ)甲14:特開平11-128291号公報
(オ)甲15:特開平11-342167号公報
(カ)甲16:特開2002-35067号公報
(キ)甲17:特開2001-61920号公報
(2)本件審決が認定した刊行物1に記載された発明(以下「甲1発明」とい
う。),刊行物2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)及び刊行
物3に記載された発明の各内容,並びに,本件発明1と甲1発明,本件発明
1と甲2発明,本件発明2と甲2発明の各一致点及び相違点は,以下のとお
りである。
ア甲1発明の内容
「座面部3と,
マッサージ機能を有し,足裏を支持可能なステップ45が設けられてい
るフットレスト2と,を備え,
前記フットレスト2は,前記座面部3の前部に対して回動自在であり,
前記フットレスト2は,
前記ステップ45と,
足の側部に対向させる足側面と,
左右方向における中央部に区画壁と,
前記ステップ45に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエ
アセルと,を有し,
フットレスト2は,使用者の脚における適正なツボ位置等にマッサージ
を行えるように,マッサージする前に前後動されて適宜位置調節され,マ
ッサージを行うときには該調節された位置に固定されるマッサージ機。」
イ甲2発明の内容
「座部2と,
マッサージ機能を有するふくらはぎ保持部4とマッサージ機能を有する
足置き部5とを脚の長さ方向に並べて成り,足置き部5には足裏の押し当
て面が設けられている脚載せ部分を備え,
前記脚載せ部分は,前記座部2の前部に対して回動自在であり,
前記足置き部5は,
前記押し当て面と,
前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエ
アマッサージ機構と,を有し,
ふくらはぎ保持部4は,ふくらはぎ保持部4に接する被施療者のふくら
はぎに押圧マッサージを施すエアマッサージ機構を有し,
ふくらはぎ保持部4と足置き部5との間には,足置き部5を上方へ付勢
する定荷重バネ19が装着してあり,ふくらはぎ保持部4に取り付けられ
たストッパ17と足置き部5のブラケット15に設けられた係止凹部16
との係止を解除することにより,マッサージする前に足置き部5を上下動
させて足置き部5の高さを使用者の脚の長さに合わせて変更し,マッサー
ジする時には,ストッパ17と係止凹部16とを係止することにより,足
置き部5を使用者の脚の長さに合わせて変更した高さに固定するマッサー
ジ機。」
ウ刊行物3に記載された発明の内容
「座部と,マッサージ機能を有する3つの枠体4を脚の長さ方向に並べ
て成る脚載せ部を備え,前記脚載せ部は,最先端の枠体4及び他の枠体4
のそれぞれが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能,かつ,前
記最先端の枠体4に設けられマッサージを施す空気袋1と前記他の枠体4
に設けられマッサージを施す空気袋1との距離が変化するように,脚の長
さ方向に伸縮可能であるマッサージ機」(以下「甲6-1発明」とい
う。)
「座部と,マッサージ機能を有する3つの枠体4を脚の長さ方向に並べて
成る脚載せ部を備え,
前記枠体4は,隣り合う前記枠体4の各離隔距離を脚の長さ方向にそれ
ぞれ変更可能であり,
前記脚載せ部は,最先端の枠体4に設けられマッサージを施す空気袋1
と前記他の枠体4に設けられマッサージを施す空気袋1との距離が変化す
るように,脚の長さ方向に伸縮可能であるマッサージ機。」(以下「甲6
-2発明」という。また,甲6-1発明と甲6-2発明とを併せて「甲6
発明」という。)
エ本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点
(一致点)
「座部と,
マッサージ機能を有し,足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部と,
を備え,
前記脚載せ部は,前記座部の前部に対して回動自在であり,
前記脚載せ部は,
前記押し当て面と,
足の側部に対向させる足側面と,
左右方向における中央部に区画壁と,
前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエ
アセルと,を有するマッサージ機。」
(相違点1-1)
本件発明1では,「脚載せ部」が,「マッサージ機能を有する複数の脚
保持部材を脚の長さ方向に並べて成り」,「最先端の脚保持部材」が,
「足裏の押し当て面と,足の側部に対向させる足側面と,左右方向におけ
る中央部に区画壁と,前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マ
ッサージを施すエアセルと,前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に
押圧マッサージを施すエアセルと,を有し」,「他の脚保持部材」が,
「脚の側部に対向させる脚側面と,前記脚側面に設けられ被施療者の脚の
側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有し」,さらに,「前記脚載
せ部は,前記最先端の脚保持部材及び前記他の脚保持部材のそれぞれが前
記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能,かつ,前記最先端の脚保
持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記他の脚保持部材の前
記脚側面に設けられた前記エアセルとの距離が変化するように,脚の長さ
方向に伸縮可能であり」,
加えて,「マッサージ機」が,「前記押し当て面に付与される脚の力に
抗する力を前記脚載せ部に付与」するとともに「前記脚の力に抗する方向
に前記最先端の脚保持部材を付勢する付勢手段である」「抵抗付与手段」
を備えているのに対して,
甲1発明では,フットレスト2(脚載せ部材)はマッサージ機能を有す
る1つの脚保持部材から成り,「マッサージ機能を有する複数の脚保持部
材を脚の長さ方向に並べて成」るものではなく,「最先端の脚保持部材」
と「他の脚保持部材」とから構成されているものでもなく,マッサージ機
が「抵抗付与手段」を備えておらず,甲1発明は,相違点1-1に係る本
件発明1の発明特定事項を有していない点。
オ本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点
(一致点)
「座部と,
マッサージ機能を有する複数の脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り,
最先端の脚保持部材には足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部と,
前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に付与す
る抵抗付与手段と,を備え,
前記脚載せ部は,前記座部の前部に対して回動自在であり,
前記最先端の脚保持部材は
前記押し当て面と,
前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエ
アセルと,を有し,
他の脚保持部材は,
脚に対向させる面と,
前記脚に対向させる面に設けられ被施療者の脚に押圧マッサージを施
すエアセルを有し,
前記脚載せ部は,前記最先端の脚保持部材が前記座部の前部に対して脚
の長さ方向に移動可能,かつ,前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設
けられた前記エアセルと前記他の脚保持部材に設けられた前記エアセルと
の距離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であり,
前記抵抗付与手段は,前記脚の力に抗する方向に前記最先端の脚保持部
材を付勢する付勢手段であるマッサージ機。」
(相違点1-2-1)
本件発明1では,「最先端の脚保持部材」が,「足の側部に対向させる
足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記足側面に設けられ被
施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有し」ているの
に対して,
甲2発明では,「足置き部5」(最先端の脚保持部材)が,「足の側部
に対向させる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記足側面
に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有
し」ておらず,甲2発明は,相違点1-2-1に係る本件発明1の発明特
定事項を有していない点。
(相違点1-2-2)
本件発明1では,「他の脚保持部材」が,「脚の側部に対向させる脚側
面と,前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施す
エアセルと,を有し」ているのに対して,
甲2発明では,「ふくらはぎ保持部4」(他の脚保持部材)は,「被施
療者のふくらはぎ保持部4に接するふくらはぎに押圧マッサージを施すエ
アマッサージ機構」(エアセル)を有しているものの,「脚の側部に対向
させる脚側面」を有しておらず,該「エアマッサージ機構」(エアセル)
は「前記脚側面に設けられ」たものではなく,甲2発明は,相違点1-2
-2に係る本件発明1の発明特定事項を有していない点。
(相違点1-2-3)
本件発明1では,「前記脚載せ部は,前記最先端の脚保持部材及び前記
他の脚保持部材のそれぞれが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動
可能,かつ,前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前記エア
セルと前記他の脚保持部材の前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距
離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であ」るのに対して,
甲2発明では,「足置き部5を上下動させて足置き部5の高さを使用者
の脚の長さに合わせて変更」するものの,「ふくらはぎ保持部4」(他の
脚保持部材)は移動可能ではなく,甲2発明は,相違点1-2-3に係る
本件発明1の発明特定事項を有していない点。
カ本件発明2と甲2発明との一致点及び相違点
(一致点)
「座部と,
マッサージ機能を有する複数の脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り,
最先端の脚保持部材には足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部と,
前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に付与す
る抵抗付与手段と,を備え,
前記脚載せ部は,前記座部の前部に対して回動自在であり,
隣合う前記脚保持部材の離隔距離を脚の長さ方向に変更可能であり,
前記最先端の脚保持部材は
前記押し当て面と,
前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエ
アセルと,を有し,
他の脚保持部材は,
脚に対向させる面と,
前記脚に対向させる面に設けられ被施療者の脚に押圧マッサージを施
すエアセルを有し,
前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記
他の脚保持部材に設けられた前記エアセルとの距離が変化するように,脚
の長さ方向に伸縮可能であり,
前記抵抗付与手段は,前記脚の力に抗する方向に前記最先端の脚保持部
材を付勢する付勢手段であるマッサージ機。」
(相違点2-1)
本件発明2では,「マッサージ機能を有する少なくとも3つの脚保持部
材を脚の長さ方向に並べて成」る「前記脚載せ部」が,「隣り合う前記脚
保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能であ」るのに対
して,
甲2発明では,「脚載せ部材」を構成する「脚の長さ方向に並べて成」
る「マッサージ機能を有する脚保持部材」が,2つ(ふくらはぎ保持部4,
足置き部5)であって,1つの「隣り合う前記脚保持部材の離隔距離」が
「脚の長さ方向に変更可能であ」り,「足置き部5を上下動させて足置き
部5の高さを使用者の脚の長さに合わせて変更」するものの,「ふくらは
ぎ保持部4」(他の脚保持部材)は移動可能ではなく,甲2発明は,相違
点2-1に係る本件発明2の発明特定事項を有していない点。
(相違点2-2)
本件発明2では,「最先端の脚保持部材」が,「足の側部に対向させる
足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記足側面に設けられ被
施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有し」,「他の
脚保持部材」が,「それぞれ脚の側部に対向させる脚側面と,前記脚側面
に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有
し」,「脚載せ部」が,「前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けら
れた前記エアセルと前記他の脚保持部材の前記脚側面に設けられた前記エ
アセルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であ」るのに
対して,
甲2発明では,「足置き部5」(最先端の脚保持部材)が,「足の側部
に対向させる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記足側面
に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有
し」ておらず,「ふくらはぎ保持部4」(他の脚保持部材)は,「被施療
者のふくらはぎ保持部4に接するふくらはぎに押圧マッサージを施すエア
マッサージ機構」(エアセル)を有しているものの,「ふくらはぎ保持部
4」(他の脚保持部材)が,「脚の側部に対向させる脚側面」を有してお
らず,該「エアマッサージ機構」(エアセル)は「前記脚側面に設けら
れ」たものではなく,甲2発明は,相違点2-2に係る本件発明2の発明
特定事項を有していない点。
第3当事者の主張
1原告の主張
(1)取消事由1(本件発明1の進歩性判断の誤り)
ア本件審決における本件発明1に係る進歩性判断の内容
本件審決は,甲2発明を主引例とする本件発明1の進歩性欠如の無効理
由に関し,次のとおり判断した。
(ア)相違点1-2-1について,
a刊行物2(甲2)には,甲2発明において,足置き部5(最先端の
脚保持部材)に,足の側部に対向させる足側面や,左右方向における
中央部に区画壁や,前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧
マッサージを施すエアセルを設けることは,記載も示唆もされていな
い。また,マッサージ機の技術分野において,脚保持部材に,足の側
部に対向させる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記
足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルとを設けることが,原出願の出願日前に周知であったとしても,各
周知例(甲13~15,甲17)には,座部と,マッサージ機能を有
する脚保持部材とを備えたマッサージ機であって,足裏押し当て面が
設けられるとともに脚の力に抗する方向に付勢され,座部の前部に対
して脚の長さ方向に移動可能な脚保持部材を有するマッサージ機につ
いて,該脚保持部材に,足の側部に対向させる足側面と,左右方向に
おける中央部に区画壁と,前記足側面に設けられ被施療者の足の側部
に押圧マッサージを施すエアセルとを設けることについての開示はな
い。したがって,刊行物2(甲2)と上記各周知例(甲13~15,
17)には,座部と,マッサージ機能を有する複数の脚保持部材とを
備えたマッサージ機であって,足裏押し当て面が設けられるとともに
脚の力に抗する方向に付勢され,座部の前部に対して脚の長さ方向に
移動可能な最先端の脚保持部材を有するマッサージ機である甲2発明
に上記周知の構成を適用することは,記載も示唆もされていないから,
相違点1-2-1に係る本件発明1の発明特定事項は,甲2発明及び
上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたもので
はない。
b甲16の図面(図1,図3)に示されているのはフレーム2と空気
袋3にすぎず,甲16には,脚載せ台E2(最先端の脚保持部材)に,
足の側部に対向させる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,
前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエ
アセルとを設けることは,記載も示唆もされていない。しかも,甲1
6の図3(a)の第2の脚載せ台E2は,脚の力に抗する方向に付勢
され座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能なものでもない。刊
行物2(甲2)及び甲16には,座部と,マッサージ機能を有する複
数の脚保持部材とを備えたマッサージ機であって,足裏押し当て面が
設けられるとともに脚の力に抗する方向に付勢され,座部の前部に対
して脚の長さ方向に移動可能な最先端の脚保持部材を有するマッサー
ジ機である甲2発明に,甲16の図3(a)の第2の脚載せ台E2
(最先端の脚保持部材)に係る構成を適用することは,記載も示唆も
されていないから,相違点1-2-1に係る本件発明1の発明特定事
項は,甲2発明及び甲16に記載された発明に基づいて当業者が容易
に想到することができたものでもない。
(イ)相違点1-2-3について
刊行物2(甲2)には,甲2発明において,ふくらはぎ保持部4(他
の脚保持部材)を座部2の前部に対して脚の長さ方向に移動可能とする
ことは,記載も示唆もされていない。また,甲6-1発明の最先端の枠
体4(脚保持部材)は,足裏押し当て面が設けられるとともに脚の力に
抗する方向に付勢されたものではなく,そして,刊行物2(甲2)及び
刊行物3(甲6)には,座部と,マッサージ機能を有する複数の脚保持
部材とを備えたマッサージ機であって,足裏押し当て面が設けられると
ともに脚の力に抗する方向に付勢され,座部の前部に対して脚の長さ方
向に移動可能な最先端の脚保持部材を有するマッサージ機である甲2発
明に,甲6-1発明を適用することは,記載も示唆もされていないから,
相違点1-2-3に係る本件発明1の発明特定事項は,甲2発明及び甲
6-1発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものではな
い。
(ウ)小括
したがって,相違点1-2-2について検討するまでもなく,本件発
明1は,刊行物2に記載された発明(甲2発明),刊行物3に記載され
た発明(甲6-1発明)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明を
することができたものではない。
イしかしながら,以下のとおり,本件審決における相違点1-2-1及び
相違点1-2-3に係る容易想到性の判断は誤りであり,甲2発明におい
て,相違点1-2-2に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは
当業者が容易に想到し得たものである。
(ア)相違点1-2-1に係る構成の容易想到性
a相違点1-2-1に係る本件発明1の構成は,「最先端の脚保持部
材」が,「足の側部に対向させる足側面と,左右方向における中央部
に区画壁と,前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサ
ージを施すエアセルと,を有し」ているという構成である。
上記構成は,本件審決においても「マッサージ機の技術分野におい
て,脚保持部材に,足の側部に対向させる足側面と,左右方向におけ
る中央部に区画壁と,前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押
圧マッサージを施すエアセルとを設けることが,原出願の出願日前に
周知であった」旨認定されているように(本件審決46頁),マッサ
ージ機の技術分野において,技術常識というべきものである(例えば,
甲13の段落【0027】,【図1】,【図2】,甲14の段落【0
039】,【図5】,甲15の段落【0022】,【図4】,甲16
の段落【0013】,【0015】,【図3】,【図5】,甲17の
段落【0014】,【0019】,【0020】,【図1】,【図
3】等)。
b本件明細書には,【発明が解決しようとする課題】として「従来の
脚マッサージ装置では,脚の長さに合わせてねじ104の調節を行う
必要があり,使用者が代わると,脚の長さも変わるので,その都度調
節が必要となり,面倒である。」(段落【0004】),「上記のよ
うな従来の問題点に鑑み,本発明は,脚の長さに合わせた装置側の長
さ調節が簡単なマッサージ機を提供することを目的とする。」(段落
【0005】)との記載がある。
刊行物2(甲2)には,その課題として,「使用者の足の長さに拘
わりなく太腿と足裏とを同時にマッサージ可能なマッサージ機を得る
ことを課題とするものである。」(3頁18行~20行),「上記構
成により,使用者は足置き部5の高さを自由に変更することができる。
したがって,脚の短い使用者は足置き部5を上昇させて使用し,足の
長い使用者は足置き部5を下降させて使用することにより,使用者の
足の長さに拘わらず,太腿を座部2に沿わせ,ふくらはぎをふくらは
ぎ保持部4に沿わせつつ,足を足置き部5に置くことができる。」
(6頁25行~29行)との記載がある。
以上によれば,本件発明1と甲2発明とは,いずれもマッサージ機
に載った使用者の脚の長さに合わせて,装置側の長さ調節を簡単に行
うことを課題としており,両発明の課題は互いに共通しているといえ
る。
cところで,本件発明1は,相違点1-2-1に係る構成を有するこ
とにより,使用者の脚の長さに合わせて,足側面にエアセルを位置さ
せることができるものであるが,甲2発明はかかる構成を有しないた
め,エアセルの具体的な当接位置が本件発明1とは若干相違する。
しかしながら,エアセルの具体的な当接位置に関する相違は,本件
発明1では「足側面にエアセルを位置させることができる」のに対し,
甲2発明では「足裏面にエアセルを位置させることができる」という
にすぎない。
本件発明1と甲2発明は,いずれもマッサージ機に載った使用者の
脚の長さに合わせて,装置側の長さ調節を簡単に行うことを課題とす
るものであり,その結果,使用者の脚の長さに合わせてエアセルを好
適な位置に配置させることができるという効果を奏するものであるか
ら,甲2発明において「足側面」に対応する位置にエアセルを配置さ
せる構成とすることは,上記課題を考慮すれば,マッサージ機の技術
分野における当業者が,上記a記載の技術常識を適宜選択し,創意工
夫や試行錯誤を要さずに適宜行う,設計事項にすぎない。
d本件審決は,足裏押し当て面が設けられるとともに脚の力に抗する
方向に付勢され,座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能な最先
端の脚保持部材を有するマッサージ機である甲2発明に上記周知技術
を適用することは,刊行物2(甲2)や周知例等(甲13~17)に
は記載も示唆もされていないとするが,「最先端の脚保持部材(足置
き部)に設けられた足裏の押し当て面に係る構成」及び「抵抗付与手
段に係る構成」は本件発明1と甲2発明の一致点に係る構成であって,
相違点に係る構成には含まれないから,本件発明1の容易想到性を判
断するにあたり,副引用発明,周知技術,技術常識などが上記一致点
に係る構成を備えている必要はない。
e以上によれば,甲2発明において,相違点1-2-1に係る本件発
明1の構成を備えるようにすることは当業者が容易に想到することが
できたものである。
(イ)相違点1-2-2に係る構成の容易想到性
a相違点1-2-2に係る本件発明1の構成は,「他の脚保持部材」
が,「脚の側部に対向させる脚側面と,前記脚側面に設けられ被施療
者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有し」ていると
いう構成である。
上記構成は,マッサージ機の技術分野において,技術常識というべ
きものである(例えば,甲1の段落【0013】,【0030】,
【図13】,【図14】,【図15】,甲4の段落【0020】,
【図2】,【図3】,甲5の段落【0027】,【図1】,【図1
1】,【図12】,甲6の段落【0009】,【図1】,【図2】,
【図3】,甲13の段落【0039】,【0040】,【図3】,
【図4】,甲14の段落【0006】,【図2】,【図4】,甲15
の段落【0006】,【0016】,【図1】,【図3】,甲16の
段落【0005】,【図1】,【図3】,【図4】,甲17の段落
【0011】等)。
bところで,本件発明1は,相違点1-2-2に係る構成を有するこ
とにより,使用者の脚の長さに合わせて,脚側面にエアセルを位置さ
せることができるものであるが,甲2発明はかかる構成を有しないた
め,エアセルの具体的な当接位置が本件発明1とは若干相違する。
しかしながら,エアセルの具体的な当接位置に関する相違は,本件
発明1では「脚側面にエアセルを位置させることができる」のに対し,
甲2発明では「脚裏面にエアセルを位置させることができる」という
にすぎない。
本件発明1と甲2発明は,いずれもマッサージ機に載った使用者の
脚の長さに合わせて,装置側の長さ調節を簡単に行うことを課題とす
るものであり,その結果,使用者の脚の長さに合わせてエアセルを好
適な位置に配置させることができるという効果を奏するものであるか
ら,甲2発明において「脚側面」に対応する位置にエアセルを配置さ
せる構成とすることは,上記課題を考慮すれば,マッサージ機の技術
分野における当業者が,上記a記載の技術常識を適宜選択し,創意工
夫や試行錯誤を要さずに適宜行う,設計事項にすぎない。
c以上によれば,甲2発明において,相違点1-2-2に係る本件発
明1の構成を備えるようにすることは当業者が容易に想到することが
できたものである。
(ウ)相違点1-2-3に係る構成の容易想到性
a相違点1-2-3に係る本件発明1の構成は,「前記脚載せ部は,
前記最先端の脚保持部材及び前記他の脚保持部材のそれぞれが前記座
部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能,かつ,前記最先端の脚保
持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記他の脚保持部材
の前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距離が変化するように,
脚の長さ方向に伸縮可能であ」るという構成である。
甲2発明では,「足置き部5を上下動させて足置き部5の高さを使
用者の脚の長さに合わせて変更」するものの,「ふくらはぎ保持部
4」(他の脚保持部材)は移動可能ではない。
したがって,甲2発明と相違する本件発明1の構成は,「他の脚保
持部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能,かつ,最先端
の脚保持部材の足側面に設けられたエアセルと他の脚保持部材の脚側
面に設けられたエアセルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に
伸縮可能であ」る構成である。
さらに,相違点1-2-1及び相違点1-2-2に係る構成を考慮
すれば,相違点1-2-3に係る本件発明1の構成は,「他の脚保持
部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能」である構成に帰
着するといえる。
「他の脚保持部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能」
である構成は,マッサージ機の技術分野において技術常識というべき
ものである(本件審決の認定する甲6-1発明のほか,例えば,刊行
物1(甲1)の段落【0007】,【図1】,甲4の段落【002
0】,【図2】,甲5の段落【0033】,【図12】,甲16の段
落【0006】等)。
b「他の脚保持部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能」
である構成が技術常識であることを考慮すれば,甲2発明において,
「他の脚保持部材」に相当する「ふくらはぎ保持部」を座部の前部に
対して脚の長さ方向に移動可能にすることは,マッサージ機の技術分
野における当業者が,上記a記載の技術常識を適宜選択し,創意工夫
や試行錯誤を要さずに行う通常の創作能力の発揮にすぎない。
また,刊行物2(甲2)には,「前記足置き部を座部に対して接離
可能とするための構造に制約はない。例えば,足置き部をふくらはぎ
保持部と一体構造とし,ふくらはぎ保持部を伸縮可能かつ回転可能な
アームの先端に取り付ける構造,足置き部をふくらはぎ保持部に沿っ
て上下移動可能に取りつける構造,足置き部をフレームに取りつけた
伸縮可能なアームに支持させる構造などが考えられる。」(4頁12
行~16行)と記載されていることからすれば,甲2発明において,
「ふくらはぎ保持部」を座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能
にすることは設計事項であるともいえる。
c本件審決は,足裏押し当て面が設けられるとともに脚の力に抗する
方向に付勢され,座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能な最先
端の脚保持部材を有するマッサージ機である甲2発明に甲6-1発明
を適用することは,刊行物2(甲2)や刊行物3(甲6)には記載も
示唆もされていないとする。
しかしながら,「最先端の脚保持部材(足置き部)に設けられた足
裏の押し当て面に係る構成」及び「抵抗付与手段に係る構成」は本件
発明1と甲2発明の一致点に係る構成であって,相違点に係る構成に
は含まれないから,本件発明1の容易想到性を判断するにあたり,副
引用発明,周知技術,技術常識などが上記一致点に係る構成を備えて
いる必要はない。
また,被告は,原告が指摘する文献の記載(甲1,甲4~6,甲1
6)は,いずれも,本件発明1における「他の脚保持部材」(複数あ
る脚保持部材のうち,足裏の押し当て面を有する最先端の脚保持部材
以外の(他の)脚保持部材)に該当しない部材に関するものであり,
相違点1-2-3に係る本件発明1の構成は,いずれの文献にも開示
されていない旨主張する。
しかしながら,甲2発明は「複数の脚保持部材」も「足裏の押し当
て面を有する最先端の脚保持部材」も備えているのであり,これらは,
本件発明1と甲2発明の一致点に係る構成であって,相違点に係る構
成には含まれないから,本件発明1の容易想到性を判断するにあたり,
副引用発明,周知技術,技術常識などが上記一致点に係る構成を備え
ている必要はない。
d以上によれば,甲2発明において,相違点1-2-3に係る本件発
明1の構成を備えるようにすることは当業者が容易に想到することが
できたものである。
ウ小括
以上のとおり,本件発明1と甲2発明との相違点に係る構成は,甲2発
明等に基づいて,当業者が容易に想到することができたものである。
したがって,本件審決が,本件発明1は,刊行物2に記載された発明
(甲2発明),刊行物3に記載された発明(甲6-1発明)及び周知技術
に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨判断し
たのは誤りである。
(2)取消事由2(本件発明2の進歩性判断の誤り)
ア本件審決における本件発明2に係る進歩性判断の内容
本件審決は,甲2発明を主引例とする本件発明2の進歩性欠如の無効理
由に関し,次のとおり判断した。
(ア)相違点2-1について,
刊行物2(甲2)には,甲2発明において,ふくらはぎ保持部4(他
の脚保持部材)を複数の脚保持部材から構成することや,隣合う脚保持
部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能とすることは,記
載も示唆もされていない。また,甲6-2発明の最先端の枠体4(脚
保持部材)は,足裏押し当て面が設けられるとともに脚の力に抗する方
向に付勢されたものではなく,刊行物2(甲2)及び刊行物3(甲6)
には,座部と,マッサージ機能を有する複数の脚保持部材とを備えたマ
ッサージ機であって,足裏押し当て面が設けられるとともに脚の力に抗
する方向に付勢され,座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能な最
先端の脚保持部材を有するマッサージ機である甲2発明に,甲6-2発
明を適用することは,記載も示唆もされていないから,相違点2-1に
係る本件発明2の発明特定事項は,甲2発明及び甲6-2発明に基づい
て当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
(イ)相違点2-2について,
相違点2-2に係る本件発明2の発明特定事項は,相違点1-2-1
に係る本件発明1の発明特定事項である「最先端の脚保持部材」が,
「足の側部に対向させる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,
前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエア
セルと,を有し」ていることを含むものであるが,相違点1-2-1に
係る本件発明1の発明特定事項は,甲2発明及び周知技術等に基づいて
当業者が容易に想到することができたものではないから,相違点2-2
に係る本件発明2の発明特定事項も,本件発明1について検討したのと
同様の理由で,甲2発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に想到
することができたものではない。
(ウ)小括
したがって,本件発明2は,刊行物2に記載された発明(甲2発明),
刊行物3に記載された発明(甲6-2発明)及び周知技術に基づいて当
業者が容易に発明をすることができたものではない。
イしかしながら,以下のとおり,本件審決における相違点2-1及び相違
点2-2に係る容易想到性の判断は誤りである。
(ア)相違点2-1に係る構成の容易想到性
a相違点2-1に係る本件発明2の構成は,「前記脚載せ部」が,
「マッサージ機能を有する少なくとも3つの脚保持部材を脚の長さ方
向に並べて成」るものであって,他の脚保持部材が移動可能な構成で
あるといえる。
b甲2発明の課題は,前記(1)イ(ア)b記載のとおり,マッサージ機に
載った使用者の脚の長さに合わせて,装置側の長さ調節を簡単に行う
ことである。
刊行物3(甲6)には,【発明が解決しようとする課題】として
「ふくらはぎの長さや凝っている場所に応じてどのポイントにも空気
袋を移動して効果的にふくらはぎのマッサージができるマッサージ機
を提供することを課題とするものである。」(段落【0004】),
【発明の効果】として「ふくらはぎ圧迫部が複数の空気袋と各空気袋
を固定する複数の枠体からなり,空気袋を固定した枠体が接離自在に
それぞれ個々に独立して移動可能であるので,ふくらはぎ部の長さや
ふくらはぎ部の凝っている場所に応じて空気袋を固定した枠体を個々
に独立して移動させて対応させることができ,使用者のふくらはぎ部
の長さが凝っている場所の状態に応じて簡単にふくらはぎのマッサー
ジしたいポイントを効果的にマッサージできるものである。」(段落
【0018】)と記載されていることから,甲6-2発明の課題は,
マッサージ機に載った使用者の脚の長さに合わせて,装置側の長さ調
節を行うというものである。
以上のように,甲2発明と甲6-2発明の課題は互いに共通し,使
用者の脚の長さに合わせてエアセルを好適な位置に配置させることが
できるという効果も共通である。
c刊行物3(甲6)には,3つの脚保持部材(枠体4)を有する構成
が開示されており(段落【0009】,【図1】),甲6-2発明は,
「空気袋1を固定した枠体4を個々に独立して任意に移動し,これに
より複数の空気袋1を使用者のふくらはぎのマッサージしたい最適の
ポイントにそれぞれ位置させ,給排気手段2により空気袋1に給排気
を行ってふくらはぎ部Fのマッサージしたいポイントを各空気袋1
(1a,1b,1c)により圧迫したり,圧迫を解除したりしてマッ
サージする」(段落【0014】)ことができるものである。
そして,前記(1)イ(ウ)a記載のとおり,ふくらはぎ保持部について,
「他の脚保持部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能」で
ある構成が技術常識であることを考慮すれば,甲2発明において,
「他の脚保持部材」に相当する「ふくらはぎ保持部」を座部の前部に
対して脚の長さ方向に移動可能にすることは,マッサージ機の技術分
野における当業者が,上記技術常識を適宜選択し,創意工夫や試行錯
誤を要さずに行う通常の創作能力の発揮にすぎない。
d本件審決は,足裏押し当て面が設けられるとともに脚の力に抗する
方向に付勢され,座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能な最先
端の脚保持部材を有するマッサージ機である甲2発明に甲6-2発明
を適用することは,刊行物2(甲2)や刊行物3(甲6)には記載も
示唆もされていないとする。
しかしながら,「最先端の脚保持部材(足置き部)に設けられた足
裏の押し当て面に係る構成」及び「抵抗付与手段に係る構成」は本件
発明2と甲2発明の一致点に係る構成であって,相違点に係る構成に
は含まれないから,本件発明2の容易想到性を判断するにあたり,副
引用発明,周知技術,技術常識などが上記一致点に係る構成を備えて
いる必要はない。
e以上によれば,甲2発明において,相違点2-1に係る本件発明2
の構成を備えるようにすることは当業者が容易に想到することができ
たものである。
(イ)相違点2-2に係る構成の容易想到性
a甲2発明において,相違点2-2に係る本件発明2の構成のうち
「最先端の脚保持部材」が,「足の側部に対向させる足側面と,左右
方向における中央部に区画壁と,前記足側面に設けられ被施療者の足
の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有し」ている構成及び
「他の脚保持部材」が,「それぞれ脚の側部に対向させる脚側面と,
前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエ
アセルと,を有し」ている構成を備えるようにすることは,前記(1)イ
(ア)及び(イ)記載のとおり,当業者が容易に想到することができたも
のである。
b相違点2-2に係る本件発明2の構成のうち「脚載せ部」が,「前
記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記
他の脚保持部材の前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距離が変
化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であ」る構成は,甲2発明に
おいて,当業者が技術常識を適宜選択することにより容易に想到し得
るものである。
すなわち,本件発明2及び甲2発明は,マッサージ機に載った使用
者の脚の長さに合わせて装置側の長さ調節を簡単に行うことを課題と
する点で共通し,使用者の脚の長さに合わせてエアセルを好適な位置
に配置させるという効果を奏する点で一致する。
「足側面及び脚側面」に対応する位置にエアセルを配置させること
が,マッサージ機の技術分野における当業者にとって設計事項にすぎ
ないものであることは,前記(1)イ(ア)c及び(イ)b記載のとおりであ
る。さらに,前記(1)イ(ウ)a記載のとおり,脚載せ部を座部の前部に
対して脚の長さ方向に移動可能にすることが技術常識であることを考
慮すれば,「他の脚保持部材」に相当する「ふくらはぎ保持部」を座
部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能にすることは,当業者の通
常の創作能力の発揮にすぎない。
以上のとおり,各構成が技術常識であることを前提にして,マッサ
ージ機に載った使用者の脚の長さに合わせて装置側の長さ調節を簡単
に行うという課題を考慮すれば,当業者において,甲2発明にこれら
の技術常識を適宜選択し,最先端の脚保持部材(足置き部)の足側面
に設けられたエアセルと他の脚保持部材(ふくらはぎ保持部)の脚側
面に設けられたエアセルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に
伸縮可能とする構成を容易に想到し得る。
ウ小括
以上のとおり,本件発明2と甲2発明との相違点に係る構成は,甲2発
明等に基づいて,当業者が容易に想到することができたものである。
したがって,本件審決が,本件発明2は,刊行物2に記載された発明
(甲2発明),刊行物3に記載された発明(甲6-2発明)及び周知技術
に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨判断し
たのは誤りである。
(3)取消事由3(本件発明3及び4の進歩性判断の誤り)
ア本件発明3は,本件発明1又は2の請求項の記載を引用する発明であり,
本件発明4は,本件発明2の請求項の記載を引用する発明である。
本件発明1及び2に進歩性がないことは,前記(1)及び(2)記載のとおり
である。
イ本件発明3の発明特定事項に係る構成,すなわち,伸長しながら上方へ
回動可能である脚載せ部の脚先側下端に車輪を設けることは,技術常識に
すぎない(甲7~11)から,甲2発明において,かかる構成を備えるよ
うにすることは当業者が容易に想到し得たものである。
ウ本件発明4の発明特定事項に係る構成,すなわち,他の脚保持部材の左
右方向における中央部に区画壁を設けることは,技術常識にすぎない(甲
1,甲4~6,甲16)から,甲2発明において,かかる構成を備えるよ
うにすることは当業者が容易に想到し得たものである。
エ小括
以上のとおり,本件発明3及び4は,甲2発明等に基づいて,当業者が
容易に想到することができたものである。
したがって,本件審決が,本件発明3及び4は,刊行物1~3に記載さ
れた発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた
ものではない旨判断したのは誤りである。
(4)まとめ
以上によれば,本件発明は,特許法29条2項の規定に違反して特許され
たものであり,その特許は同法123条1項2号に該当するから無効とされ
るべきものであり,これと異なる本件審決の判断は誤りであるから,取り消
されるべきである。
2被告の主張
(1)取消事由1(本件発明1の進歩性判断の誤り)について
ア相違点1-2-1に係る構成の容易想到性について
(ア)甲2発明の課題について
本件発明の課題は,最先端の脚保持部材に足裏押し当て面が設けられ
た構成を前提として,最先端の脚保持部材を脚の長さに合わせて移動さ
せた場合にエアセルを好適な位置に配置することである。
これに対し,刊行物2(甲2)には「使用者の足の長さに拘わりなく
太腿と足裏とを同時にマッサージ可能なマッサージ機を得ることを課題
とするものである。」(3頁18行~20行),「したがって,脚の短
い使用者は足置き部5を上昇させて使用し,足の長い使用者は足置き部
5を下降させて使用することにより,使用者の足の長さに拘わらず,太
腿を座部2に沿わせ,ふくらはぎをふくらはぎ保持部4に沿わせつつ,
足を足置き部5に置くことができる。」(6頁26行~29行)と記載
されているように,甲2発明の課題は,「太腿と足裏とを同時にマッサ
ージすること」であって,「エアセルを好適な位置に配置させる」こと
ではない。
すなわち,甲2発明は,太腿と足裏とを同時にマッサージすることが
できれば,マッサージする部位の位置が適切であるか否かを問わない。
(イ)刊行物2(甲2)は,単純に脚の長さに応じて足置き部5の高さを
変更することで,太腿及びふくらはぎの各部位が対応するエアセル位置
から(脚の長さ方向に垂直な方向へ)離間しないようにする構成を開示
しているにすぎない。すなわち,刊行物2には,座部2とふくらはぎ保
持部4との距離が変化しない構成の開示及びふくらはぎ保持部4と足置
き部5との距離が変化しない構成の示唆しかなく,いずれの構成におい
ても,ふくらはぎ保持部4に設けられるエアセルの位置が脚の長さに応
じて使用者のふくらはぎ位置とは脚の長さ方向にずれてしまうのであり,
刊行物2には,太腿の位置及びふくらはぎの位置が脚の長さに応じて変
化するという事実及び当該事実を解決するための構成は開示も示唆もさ
れていない。
また,甲13~17にも,使用者の脚の長さに合わせてエアセルを好
適な位置に配置させるという課題及びその解決手段は開示も示唆もされ
ていない。
したがって,刊行物2(甲2)には開示も示唆されていない「使用者
の脚の長さに合わせてエアセルを好適な位置に配置する」という課題を
解決するために,甲2発明に,相違点1-2-1に係る本件発明1の構
成,すなわち,最先端の脚保持部材に,足の側部に対向させる足側面と,
左右方向における中央部に区画壁と,前記足側面に設けられ被施療者の
足の側部に押圧マッサージを施すエアセルとを設ける構成とする動機付
けは存しない。
(ウ)原告の主張について
a原告は,あらゆるマッサージ機のあらゆる態様の脚保持部材に足側
面,区画壁,及び足側面のエアセルが設けられる構成が周知であると
主張するが,各文献の具体的な記載から離れて,抽象化ないし一般化
するものであり,失当である。
すなわち,甲13~17は,甲16を除き,単に床置き状態で足部
または脚部をマッサージするためのマッサージ機において,足側面,
区画壁,及び足側面のエアセルが設けられることが開示されているに
すぎず,甲16においても,足側面,区画壁,及び足側面のエアセル
が設けられる態様(【図3】)では,足側面,区画壁,及び足側面の
エアセルが設けられる箇所が座部に対して脚の長さ方向に移動しない
構成が開示されているにすぎない。
なお,本件審決は,「マッサージ機の技術分野において,脚保持部
材に,足の側部に対向させる足側面と,左右方向における中央部に区
画壁と,前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージ
を施すエアセルとを設けることが,原出願の出願日前に周知であった
としても,」と記載していることから明らかなように,かかる構成が
周知であったと認定したものではない。
b原告は,甲2発明において,相違点1-2-1に係る本件発明1の
構成を備えるようにすることは設計事項にすぎない旨主張する。
しかしながら,本件発明1は,足側面をマッサージするエアセルが
最先端の脚保持部材に設けられていることが,脚の長さに合わせてエ
アセルを好適な位置に配置させるために必須な構成の1つである。こ
れに対し,甲2発明において「脚裏面」に配置されるエアセルは脚の
後側(ふくらはぎ)をマッサージするエアセルであるが,「足裏面」
に配置されるエアセルは,足の下方(いわゆる足裏)をマッサージす
るエアセルであるから,「足裏面」における「裏面」と,「脚裏面」
における「裏面」とは,その面を示す方向が異なり,刊行物2(甲
2)には足の後側(例えば踵)をマッサージする構成については開示
も示唆もされておらず,「裏面」が「後側」を意味するとした場合に,
「足裏面」に対応する位置にエアセルを配置させる構成は開示も示唆
もされていない。
すなわち,本件発明1においては,最先端の脚保持部材の足側面に
対応する位置にエアセルを配置させるのに対し,甲2発明においては,
脚の長さに応じて適切な位置が変化し得るふくらはぎ(脚)にエアセ
ルを配置するものである。
したがって,本件発明1では,足側面の適切な位置にエアセルを配
置できることにより脚の長さ変化に応じて適切な位置をマッサージで
きるが,甲2発明では,脚裏面にエアセルを沿わせることはできるが,
適切な位置にエアセルを配置できることについての示唆がないので,
脚の長さ変化に応じて適切な位置をマッサージすることはできないか
ら,本件発明1と甲2発明との間には,単にマッサージする箇所が裏
面(後側)か側面かの相違ではなく,脚の長さ変化に応じて適切な位
置をマッサージすることができるか否かの相違がある。
以上のように,相違点1-2-1に係る本件発明1の構成は,その
課題の解決に不可欠な構成であり,単なる設計事項にすぎないものな
どではない。
また,仮に,使用者の脚の長さに合わせてエアセルを好適な位置に
配置するという課題がマッサージ機の技術分野において周知であった
としても,この課題を解決するために,足裏の押し当て面を有する最
先端の脚保持部材に,足側面,区画壁,およびエアセルを備える構成
を採用することは周知どころかいずれの文献にも開示も示唆もされて
いない。
c原告は,最先端の脚保持部材(足置き部)に設けられた足裏の押し
当て面に係る構成及び抵抗付与手段に係る構成は,本件発明1と甲2
発明との一致点に係る構成として認定されているから,本件発明1の
容易想到性を判断するにあたり,副引用発明,周知技術,技術常識な
どが上記一致点に係る構成を備えている必要はない旨主張する。
確かに,容易想到性の判断に際し,副引用発明において上記一致点
に係る構成を備えていなくてもよい場合もあるが,その場合であって
も,引用発明または副引用発明を主引例と組み合わせることについて
の示唆が必要である。このような示唆がなければ,互いを組み合わせ
る動機付けがなく容易想到とはいえない。
甲6,甲13~15,甲17には,最先端の脚保持部材が足裏の押
し当て面を有し,脚の力に抗する方向に付勢されるような構成に適用
可能であることについての何らの示唆もないから,上記文献に開示さ
れた技術を最先端の脚保持部材が足裏の押し当て面を有し,脚の力に
抗する方向に付勢される構成を有する甲2発明に組み合わせることが,
当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。
(エ)以上によれば,甲2発明において,相違点1-2-1に係る構成を
備えるようにすることが,当業者において容易に想到し得たものである
とはいえない。
イ相違点1-2-2に係る容易想到性について
前記アで述べたところと同様に,甲2発明において,相違点1-2-2
に係る本件発明1の構成,すなわち,他の脚保持部材が脚の側部に対向さ
せる脚側面と,前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサー
ジを施すエアセルと,を有するようにすることが,当業者において容易に
想到し得たものであるとはいえない。
ウ相違点1-2-3に係る容易想到性について
(ア)前記アで述べたところと同様に,甲2発明において,相違点1-2
-3に係る本件発明1の構成,すなわち,脚載せ部は,最先端の脚保持
部材及び他の脚保持部材のそれぞれが座部の前部に対して脚の長さ方向
に移動可能,かつ,最先端の脚保持部材の足側面に設けられたエアセル
と他の脚保持部材の脚側面に設けられたエアセルとの距離が変化するよ
うに,脚の長さ方向に伸縮可能であるようにすることが,当業者におい
て容易に想到し得たものであるとはいえない。
(イ)原告の主張について
a原告は,「他の脚保持部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移
動可能」である構成は,マッサージ機の技術分野において技術常識と
いうべきものである旨主張する。
しかしながら,原告の指摘する文献の記載(甲1,甲4~6,甲1
6)は,いずれも,本件発明1における「他の脚保持部材」(複数あ
る脚保持部材のうち,足裏の押し当て面を有する最先端の脚保持部材
以外の(他の)脚保持部材)に該当しない部材に関するものである。
すなわち,甲1の段落【0007】,【図1】の構成,甲4の段落
【0020】,【図2】の構成は,脚保持部材が1つしかなく,足裏
の押し当て面を有する最先端の脚保持部材を有していない。また,甲
5の段落【0033】,【図12】の構成,甲6-1発明,甲16の
段落【0006】の構成は,脚の長さ方向に並べられた複数の脚保持
部材が存在するが,最先端の脚保持部材において足裏の押し当て面が
設けられていない。
したがって,相違点1-2-3に係る本件発明1の構成は,いずれ
の文献にも開示されておらず,原告の上記主張は失当である。
b原告は,刊行物2(甲2)の記載(4頁12行~16行)からすれ
ば,甲2発明において,「ふくらはぎ保持部」を座部の前部に対して
脚の長さ方向に移動可能にすることは設計事項である旨主張する。
しかしながら,甲2発明は,ふくらはぎ保持部が座部に対して移動
可能ではなく,刊行物2には,ふくらはぎ保持部が足置き部とは別体
として座部に対して移動可能な態様は開示も示唆もされていない。原
告の指摘する刊行物2の記載は,ふくらはぎ保持部が足置き部ととも
に座部に対して移動可能な態様を示唆するものにすぎず,ふくらはぎ
保持部が足置き部とは別体として座部に対して移動可能な態様を示唆
するものではない。
したがって,ふくらはぎ保持部を座部の前部に対して脚の長さ方向
に移動可能にすることは,刊行物2から当業者が容易に想到できるも
のではなく,設計事項などではない。
エ以上のとおり,本件審決における本件発明1の進歩性判断に誤りはない。
(2)取消事由2(本件発明2の進歩性判断の誤り)について
ア甲2発明は,最先端の脚保持部材に足裏押し当て面(足置き部5)が設
けられた構成を有するが,その課題は「太腿と足裏とを同時にマッサージ
すること」であって,「エアセルを好適な位置に配置させる」ことではな
い。
これに対し,甲6-2発明は,最先端の脚保持部材といえる枠体4に足
裏押し当て面が設けられた構成ではないから,最先端の脚保持部材に足裏
押し当て面が設けられた構成を前提として,最先端の脚保持部材を脚の長
さに合わせて移動させた場合にエアセルを好適な位置に配置することを課
題として想起し得るものではない。
したがって,甲2発明に甲6-2発明に係る構成を適用する動機付けは
存しない。
イその他,前記(1)で述べたところと同様に,甲2発明において,相違点2
-1及び2-2に係る本件発明2の構成,すなわち,マッサージ機能を有
する少なくとも3つの脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成る脚載せ部が,
隣り合う脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能であ
る構成及び最先端の脚保持部材が,足の側部に対向させる足側面と,左右
方向における中央部に区画壁と,足側面に設けられ被施療者の足の側部に
押圧マッサージを施すエアセルと,を有し,他の脚保持部材が,それぞれ
脚の側部に対向させる脚側面と,脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に
押圧マッサージを施すエアセルと,を有し,脚載せ部が,最先端の脚保持
部材の足側面に設けられたエアセルと他の脚保持部材の脚側面に設けられ
たエアセルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能である構
成を有するようにすることが,当業者において容易に想到し得たものであ
るとはいえない。
ウ以上のとおり,本件審決における本件発明2の進歩性判断に誤りはない。
(3)取消事由3(本件発明3及び4の進歩性判断の誤り)について
本件発明3は,本件発明1又は2の請求項の記載を引用する発明であり,
本件発明4は,本件発明2の請求項の記載を引用する発明であるが,前記(1)
及び(2)記載のとおり,本件発明1及び2は,刊行物2に記載された発明等か
ら当業者が容易に想到し得たものではないから,本件発明3及び4も,刊行
物2に記載された発明等から当業者が容易に想到し得たものではない。
以上のとおり,本件審決における本件発明3及び4の進歩性判断に誤りは
ない。
(4)まとめ
以上によれば,本件発明は,特許法29条2項の規定に違反して特許され
たものではなく,その特許は同法123条1項2号に該当しないから,無効
とすべきものではない,との本件審決の判断に誤りはなく,原告の請求は棄
却されるべきである。
第4当裁判所の判断
1本件発明について
(1)本件明細書の記載等
本件発明1ないし4の特許請求の範囲(請求項1ないし4)の記載は,前
記第2の2に記載のとおりであるところ,本件明細書(甲45)の「発明の
詳細な説明」には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面につ
いては,別紙1の本件明細書図面目録を参照。)。
ア技術分野
「本発明は,マッサージ機に関する。」(段落【0001】)
イ背景技術
「図10は,特許文献1(判決注・特開2001-95867号公報)
に記載された従来の脚マッサージ装置を示す斜視図である。これは,椅子
型マッサージ機の座部前端に取り付けられる装置である。当該脚マッサー
ジ装置は,脹ら脛を入れる溝101aを有する第1のケース101と,足
首を伸ばした状態で足を載せる溝102aを有する第2のケース102と
を備えている。第2のケース102は,第1のケース101に差し込まれ
た摺動軸103を有し,この部分での摺動により,軸方向に位置調節が可
能である。使用者は,ねじ104を回すことにより摺動軸103を移動さ
せて,溝102aを足に合わせることができる。このようにして,自分の
脚の長さに合わせて装置側の長さを調節する。」(段落【0002】)
ウ発明が解決しようとする課題
「上記のような従来の脚マッサージ装置では,脚の長さに合わせてねじ
104の調節を行う必要があり,使用者が代わると,脚の長さも変わるの
で,その都度調節が必要となり,面倒である。」(段落【0004】)
「上記のような従来の問題点に鑑み,本発明は,脚の長さに合わせた装
置側の長さ調節が簡単なマッサージ機を提供することを目的とする。」
(段落【0005】)
エ課題を解決するための手段
「本発明のマッサージ機は,座部と,マッサージ機能を有し,足裏の押
し当て面が設けられている脚載せ部と,前記押し当て面に付与される脚の
力に抗する力を前記脚載せ部に付与する抵抗付与手段と,を備え,前記脚
載せ部は,前記座部の前部に対して回動自在,且つ,脚の長さ方向に伸縮
可能であり,前記脚載せ部は,前記押し当て面と,足の側部に対向させる
足側面と,その脚先側であって左右方向における中央部に区画壁と,前記
押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエアセルと,
前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルと,を有し,前記抵抗付与手段は,前記脚の力に抗する方向に前記脚載
せ部を付勢する付勢手段であることを特徴とする。
上記のように構成されたマッサージ機では,押し当て面に足裏を押し当
てることにより,抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させ
れば,当該脚載せ部は脚の長さに対応した位置に達する。また,脚載せ部
から脚を降ろすことにより自動的に,当該脚保持部材が元の位置に復帰す
る。」(段落【0006】)
「また,本発明のマッサージ機は,座部と,マッサージ機能を有する少
なくとも3つの脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り,最先端の脚保持
部材には足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部と,前記押し当て面
に付与される脚の力に抗する力を前記最先端の脚保持部材に付与する抵抗
付与手段と,を備え,前記脚載せ部は,前記座部の前部に対して回動自在
であり,隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ
変更可能であり,前記最先端の脚保持部材は,前記押し当て面と,足の側
部に対向させる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記押し
当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエアセルと,前
記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセル
と,を有し,他の脚保持部材は,それぞれ被施療者の脚に押圧マッサージ
を施すエアセルを有し,前記抵抗付与手段は,前記脚の力に抗する方向に
前記最先端の脚保持部材を付勢する付勢手段であることを特徴とする。
上記のように構成されたマッサージ機では,押し当て面に足裏を押し当
てることにより,抵抗付与手段の付与する力に抗して最先端の脚保持部材
を移動させれば,当該脚保持部材は脚の長さに対応した位置に達する。ま
た,脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に,最先端の脚保持部材が
元の位置に復帰する。」(段落【0007】)
「また,上記マッサージ機において,前記脚載せ部の脚先側下端には,
下向き状態にある前記脚載せ部が伸長すると床に接地する車輪が設けられ,
前記脚載せ部は,伸長しながら上方へ回動可能であることが好ましい。」
(段落【0008】)
「この場合,脚載せ部を伸長させるとき車輪が床についても,車輪の転
動によって脚載せ部が円滑に伸長する。」(段落【0009】)
「また,前記他の脚保持部材は,被施療者の脚の側部に対向させる脚側
面と,左右方向における中央部に区画壁と,を有することが好ましい。」
(段落【0010】)
オ発明の効果
「以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1のマッサージ機によれば,押し当て面に足裏を押し当てること
により,抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば,当
該脚載せ部は脚の長さに対応した位置に達する。従って,脚の長さに合わ
せた装置側の長さ調節が簡単である。また,脚載せ部から脚を降ろすこと
により自動的に,脚保持部材が元の位置に復帰するので便利である。」
(段落【0011】)
「請求項2のマッサージ機によれば,押し当て面に足裏を押し当てるこ
とにより,抵抗付与手段の付与する力に抗して最先端の脚保持部材を移動
させれば,当該脚保持部材は脚の長さに対応した位置に達する。従って,
脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡単である。また,脚載せ部から
脚を降ろすことにより自動的に,最先端の脚保持部材が元の位置に復帰す
るので便利である。」(段落【0012】)
「請求項1及び2のマッサージ機によれば,被施療者の足の側部に対し
てマッサージを施すことができる。また,左足と右足をそれぞれ,左の足
側面と区画壁の間,右の足側面と区画壁の間に分離して位置させることが
できる。」(段落【0013】)
「請求項3のマッサージ機によれば,脚載せ部を伸長させるとき車輪が
床についても,車輪の転動によって円滑な動作が行われ,脚載せ部の伸長
が妨げられることはない。」(段落【0014】)
「請求項4のマッサージ機によれば,左脚と右脚をそれぞれ,左の脚側
面と区画壁の間,右の脚側面と区画壁の間に分離して位置させることがで
きる。」(段落【0015】)
カ発明を実施するための形態
「図1は,脚マッサージ装置を有するマッサージ機1を示す斜視図であ
り,図2及び図3は,その側面図である。図1及び図2において,このマ
ッサージ機1は,椅子型のマッサージ機本体2を有している。マッサージ
機本体2は,座部3と,座部3の後側に配置された背もたれ部4と,座部
3の両側に配置された肘掛け部(アームレスト)7と,座部3から下方に
延びる支持脚部8とを備えている。また,マッサージ機本体2と一体に接
続された「脚マッサージ装置」として,座部3の前方に配置された脚載せ
部(フットレスト)5と,脚載せ部5を支持する支持装置6とを備えてい
る。」(段落【0017】)
「上記背もたれ部4と脚載せ部5とは座部3に対して可動である。すな
わち,背もたれ部4は,図1の状態から後方に倒れることができるように
構成されている。また,脚載せ部5は,座部3の前部に対して水平方向の
軸まわりに回動自在に連結されて座部3に対する位置(角度)を変更可能
とされており,図1及び図2の状態(下向き状態)から上方に回動して図
3の状態(上昇状態)になることができる。」(段落【0018】)
「脚載せ部5は,マッサージ機能を有する3つの脚保持部材(第1脚保
持部材51,第2脚保持部材52,第3脚保持部材53)を,脚の長さ方
向に並べて,全体として両脚を囲むような形態を成している。各脚保持部
材51~53の両側部及び中央部にはそれぞれマッサージ用のエアセル1
5a,15b及び16a,16bが配置されている。また,第3脚保持部
材53は足裏の押し当て面53aを有しており,ここにもエアセル17a,
17bが配置されている。これらのエアセル(15a,15b,16a,
16b,17a,17b)は,エアの給排によって膨脹・収縮し被施療者
の脚に押圧マッサージを施すものである。なお,中央部のエアセル16a,
16bは,特殊な形状に膨出するようになっており,これにより,左右の
エアセル15a,15bとの間に脚を挟み込むようにして,押圧マッサー
ジを施すことができる。」(段落【0020】)
「次に,脚載せ部5及び支持装置6の構造について詳細に説明する。な
お,エアセル等については以下の説明では省略する(図示も省略する。)。
図4の(a)は,図1におけるマッサージ機1の向かって左側面側から
見た脚載せ部5及び支持装置6を,水平な状態にして表した側面図である。
(b)は(a)に示す各部を上から見た図である(但し,脚保持部材51
~53より下部の構造を見た図としている。)。図において,脚載せ部5
を支持する支持装置6は,座部3(図1)の前端に軸着される回動基部6
1aを左端部に備えた第1ガイドレール61と,この第1ガイドレール6
1に対してスライド可能な状態に取り付けられている第2ガイドレール6
2とを備えている。なお,第3脚保持部材53の内側底面53bは,第1
脚保持部材51及び第2脚保持部材52の内側底面51b,52bより低
くなっており,かかと及びその周辺の形状によく合致している。これによ
り,かかとが入れやすい構造となり,容易に足を載せることができる。ま
た,低くなった所にかかとが入ることで,かかとが安定して保持される効
果もある。」(段落【0023】)
「図4の(c)は,上記第1ガイドレール61及び第2ガイドレール6
2を(b)の右方から見た略図である。これらは共に「コ」の字状に両側
部が折り曲げた金属板からなり,相互に(a)又は(b)の左右方向にス
ライド可能に重ねられている。
図5は,図4の(a)を拡大して支持装置6の詳細を示す図である。図
において,前後に車輪63を有する可動体64は,車輪63が第1ガイド
レール61の中(両側部)を転動することによって,第1ガイドレール6
1に対してスライド可能である。同様に,前後に車輪65を有する可動体
66は,第1ガイドレール61に対してスライド可能である。」(段落
【0024】)
「第1脚保持部材51及び第2脚保持部材52はそれぞれ,可動体64
及び66に取り付けられており,これによって,第1ガイドレール61の
案内方向すなわち,人の脚の長さ方向にスライド可能である。なお,可動
体64,66の前後に車輪63,65が設けられていることによって,第
1脚保持部材51及び第2脚保持部材52を第1ガイドレール61に対し
て垂直に支持することができる。一方,第3脚保持部材53は第2ガイド
レール62に直接取り付けられており,第2ガイドレール62が第1ガイ
ドレール61に対してスライド可能であることによって,第3脚保持部材
53も第1ガイドレール61に対してスライド可能である。こうして,支
持装置6は,各脚保持部材51~53を,脚の長さ方向にそれぞれ移動可
能に支持している。なお,図示の状態では,3つの脚保持部材51~53
が互いに最も接近して,脚載せ部5及び支持装置6は最も短い状態であ
る。」(段落【0025】)
「一方,3つの脚保持部材51~53は,リンク機構23によって互い
に接続されている。このリンク機構23は,上から見た形態が図4の
(b)に示すように,8本のアーム231(2本),232(2本),2
33(2本),234(2本)を用いて,4点接続の四角形リンクを3段
に接続したものであり,各四角形リンクを脚の長さ方向に屈伸させること
により伸縮するものである。一対のアーム232は,直線状ではなく折れ
曲がっており,四角形リンクとしての開き角において,第1段(θ1)よ
り第2段(θ2)の方が小さくなるように構成されている。また,一対の
アーム233も,直線状ではなく折れ曲がっており,四角形リンクとして
の開き角において,第2段(θ2)より第3段(θ3)の方が大きくなる
ように構成されている。」(段落【0026】)
「上記リンク機構23は,原点P0が支持装置6に固定され,第1節点
P1が脚保持部材51に,第2節点P2が脚保持部材52に,第3節点P
3が脚保持部材53に,それぞれ接続されている。従って,リンク装置2
3は,その伸縮動作により,脚保持部材51~53を,脚の長さ方向に所
定の関係で相互に連動させる「連動装置」としての機能を有している。ま
た,原点P0と第3節点P3との間には,ばね24が装着されており,こ
れによって,リンク装置23は,収縮方向に常に付勢されている。ばね2
4の力は,人の足の力によって容易に伸ばすことができる程度に設定され
ている。」(段落【0027】)
「マッサージ機本体1(図1)に被施療者が着座して脚を脚載せ部5に
入れ,押し当て面53aに足裏を載せて,ばね24に抗して脚を伸ばすと,
第3脚保持部材53が図4の(a)及び(b)における右方に駆動される。
これにより,リンク装置23は伸長動作し,第1~第3節点P1~P3が
右方へ移動する。従って,支持装置6によってスライド可能に保持されて
いる脚保持部材51~53は,それぞれ右方(すなわち脚の長さ方向)へ
移動する。図6は,支持装置6及び脚載せ部5が最も伸長した状態を示す
図である。」(段落【0028】)
「図7は,リンク装置23の伸縮動作を原理的に示す図である。図示の
ように,伸縮に伴う第1節点P1,第2節点P2及び第3節点P3の位置
変化を見ると,一定の勾配が形成されており,原点P0から各節点までの
距離L1,L2,L3は,L1:L2:L3が概ね一定比となるように比
例的に伸縮する。従って,原点P0から脚の長さ方向における脚保持部材
51~53までの各距離も比例的に伸縮する。このように比例的に伸縮す
る構成を採用しているのは,脚の部位は脚の長短によりその絶対位置は異
なるが,相対的な位置関係はほぼ同じであり,原点P0から見た脚の施療
部位までの距離は,脚の長さに応じて比例的に変化するという経験的事実
に基づいている。」(段落【0029】)
「なお,厳密に「一定比」ではなく「概ね一定比」となる理由は,前述
のようにアーム232,233が直線ではなく,そのために,各段のリン
クの開き角θ1,θ2,θ3が同一ではないからである。このような構成
を採用することにより,脚の長短に応じて微妙にずれる施療要所の位置に
対して,単なる比例伸縮よりも正確に脚保持部材の位置を合致させること
ができる。」(段落【0030】)
「図8の(a)は,本マッサージ機1の使用対象の身長範囲から想定し
て最も脚の短い人が脚載せ部5に脚を入れ,足裏が第3脚保持部材53の
底面に当接した状態である。この場合の施療箇所は,例えば,ふくらはぎ,
くるぶしの周辺,その中間の3箇所であり,各脚保持部材は,それぞれが
施療要所(例えば「つぼ」)を押圧できるように配置されている。一方,
(b)は,想定される最も脚の長い人が脚載せ部5に脚を入れ,足裏で第
3脚保持部材53の底面を押して脚載せ部5及び支持装置6を伸長させた
状態である。このとき,前述のように,各脚保持部材51~53は,原点
P0を基準として比例的にその位置を移動させるので,各脚保持部材51
~53は,(a)の場合と同様に,施療要所を押圧する。なお,(a)と
(b)との間の任意の伸長状態でも同様に,施療要所を押圧することがで
きることはいうまでもない。すなわち,このような脚マッサージ装置を使
用することにより,脚の長さに関わらず,脚を脚載せ部5に入れて第3脚
保持部材53を押すだけで,他の脚保持部材51,52の位置調節を行う
ことなく,極めて簡単に施療要所にマッサージを行うことができる。」
(段落【0031】)
「なお,脚載せ部5に脚を入れ,これを伸長させると,その途中で車輪
20が床に着く場合があるが,この場合でも,車輪20の転動によって支
持装置6及び脚載せ部5が円滑に伸長することができる。
施療後,被施療者がマッサージ機1から降りることにより,脚載せ部5
及び支持装置6は,ばね24(図4の(b))の力により元の収縮状態に
戻る。従って,伸長した脚載せ部5及び支持装置6を元に戻す操作も一切
不要である。
また,上記車輪20が床に着いている状態から元の収縮状態に戻る際に
は,車輪20が床を転がりつつ,脚載せ部5及び支持装置6が収縮動作す
る場合もある。この場合でも,車輪20の存在によって,床面を傷つける
等の恐れがない。」(段落【0032】)
「なお,上記実施形態では図1に示すような脚載せ部5としたが,図9
に示すように,中央部に区画壁51c,52c,53cを設けた脚保持部
材51,52,53の場合でも,同様な伸縮構造の脚マッサージ装置とす
ることができる。
また,上記実施形態では脚載せ部5が3つの脚保持部材51~53を備
えた構造としたが,脚保持部材の数は3に限定されるものではなく,2つ
又は4つ等であってもよい。
また,上記実施形態では脚保持部材51~53が外見上分離しているが,
伸縮自在なカバー等を被せることで,外見上は分離していない構成とする
こともできる。」(段落【0033】)
「また,上記実施形態では,ばね24を用いて脚載せ部5及び支持装置
6が自動的に収縮する構成としたが,ばね24に代えて,何らかの抵抗付
与手段を設けて適度の抵抗負荷を伴って伸縮するように構成することもで
きる。この場合には,抵抗に対して足で最下段の脚保持部材を押し下げる
ことにより,同様に,脚の長さに合わせて脚載せ部5及び支持装置6を伸
長させることができる。但し,元の収縮状態に戻すにあたっては,手で押
し戻す等の操作が必要になる。さらに,この場合には,連動装置としての
リンク装置23を省略して,第1脚保持部材51及び第2脚保持部材52
に関しては手動で位置調節を行うようにしてもよい。
また,ばね24と併せてラチェットで戻りロックし,ロック解除操作で
元に戻すように構成してもよい。
なお,連動装置としてのリンク装置23を省略する場合には,移動する
脚保持部材は足裏の押し当て面を有する脚保持部材(第3脚保持部材5
3)のみとして,他の脚保持部材は固定するか若しくは設けない構成も可
能である。」(段落【0034】)
「また,上記実施形態では脚載せ部5にマッサージ用のエアセルを設け
ているが,電動等の他のマッサージ構造の場合でも,上記のような複数の
脚保持部材51~53と支持装置6とによる伸縮構造を適用することがで
きる。
また,上記実施形態における脚マッサージ装置は,椅子型のマッサージ
機本体2(図1)のみならず,普通の椅子や,ベッド等の端部にも取り付
けることができる。すなわち,身体を支持(主として腰掛けた状態での支
持)する種々の器具に取り付けて使用することができる。また,脚マッサ
ージ装置を単独で使用することも可能である。」(段落【0035】)
(2)本件発明の構成及び特徴
前記(1)によれば,本件発明の構成及びその特徴は以下のとおりであると認
められる。
ア本件発明は,マッサージ機に関する。
従来の脚マッサージ装置は,ふくらはぎを入れる溝を有する第1のケー
スと足を載せる溝を有する第2のケースを有し,第1のケースに第2のケ
ースが有する摺動軸が差し込まれ,この部分での摺動により,軸方向に位
置調節が可能であるが,使用者は,ねじを回して摺動軸を移動させ,自分
の脚の長さに合わせて装置側の長さ,すなわち足を載せる溝を有する第2
のケースの位置を調節する必要があった。
上記のような従来の脚マッサージ装置では,脚の長さに合わせてねじの
調節を行う必要があり,使用者が代わると,脚の長さも変わるので,その
都度調節が必要となり,面倒であるという問題があった。
イ本件発明は,従来の脚マッサージ装置の有する前記アの問題点に鑑み,
脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡単なマッサージ機を提供するこ
とを目的とし,特許請求の範囲の請求項1ないし4記載の構成を採用した。
ウ(ア)請求項1記載のマッサージ機(本件発明1)によれば,押し当て面
に足裏を押し当てることにより,抵抗付与手段の付与する力に抗して脚
載せ部を伸長させれば当該脚載せ部は脚の長さに対応した位置に達する
ので,脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡単であり,脚載せ部か
ら脚を降ろすことにより自動的に,脚保持部材が元の位置に復帰するの
で便利であるという効果を奏する。
また,被施療者の足の側部に対してマッサージを施すことができ,さ
らに,左足と右足をそれぞれ,左の足側面と区画壁の間,右の足側面と
区画壁の間に分離して位置させることができるという効果を奏する。
(イ)請求項2記載のマッサージ機(本件発明2)によれば,押し当て面
に足裏を押し当てることにより,抵抗付与手段の付与する力に抗して最
先端の脚保持部材を移動させれば当該脚保持部材は脚の長さに対応した
位置に達するので,脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡単であり,
脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に,最先端の脚保持部材が元
の位置に復帰するので便利であるという効果を奏する。
また,被施療者の足の側部に対してマッサージを施すことができ,さ
らに,左足と右足をそれぞれ,左の足側面と区画壁の間,右の足側面と
区画壁の間に分離して位置させることができるという効果を奏する。
(ウ)請求項3記載のマッサージ機(本件発明3)によれば,上記請求項
1又は2に記載のマッサージ機の奏する効果に加え,脚載せ部を伸長さ
せるとき車輪が床についても,車輪の転動によって円滑な動作が行われ,
脚載せ部の伸長が妨げられることはないという効果を奏する。
(エ)請求項4記載のマッサージ機(本件発明4)によれば,上記請求項
2に記載のマッサージ機の奏する効果に加え,左脚と右脚をそれぞれ,
左の脚側面と区画壁の間,右の脚側面と区画壁の間に分離して位置させ
ることができるという効果を奏する。
2甲2発明について
(1)刊行物2(甲2)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図
面については,別紙2の刊行物2図面目録を参照。)。
ア特許請求の範囲
「【請求項1】フレームに,座部び足置き部を取り付け,前記座部及び
足載せ台に押圧手段を備えたマッサージ機において,
前記足置き部は前記座部の先端に対して離接可能とし,
使用者の足の長さにかかわらず,使用者の太腿が座部に接触しつつ足裏
が足置き部に接触するようにした,
マッサージ機」
「【請求項2】座部の前方に,使用者のふくらはぎを保持するふくらは
ぎ保持部が配設された,
請求項1記載のマッサージ機」
「【請求項3】ふくらはぎ保持部には,ふくらはぎ上面を被覆する押圧
シートが付設された,
請求項2記載のマッサージ機」
「【請求項4】足置き部とふくらはぎ保持部とは一体に構成された,
請求項2記載のマッサージ機」
「【請求項5】足置き部の押圧手段は,前後方向に移動可能とした,
請求項1ないし4のいずれかに記載のマッサージ機」
イ技術分野
「この発明は椅子型のマッサージ機に関するものである。」(3頁3
行)
ウ背景技術
「近年,足裏をマッサージすることによる血行の促進や内臓疾患の回復
などの効果が広く認知されてきている。そして,マッサージ機においても
肩,背中,太腿,ふくらはぎに加えて足裏のマッサージが可能なものが求
められている。
従来,足裏のマッサージを可能としたマッサージ機としては,特開平9
-271501号や特許第2967023号などが提案されている。
前者の発明は足置き部を移動可能に取り付けたものであるが,足置き部
を座部よりも高い位置に位置させることを目的としたもので,使用時に使
用者の太股は座部から浮き上がるようになっている。したがって,前者の
発明においては太股と足裏とを同時にマッサージすることはできない。
また後者の発明は本体をマット上に構成し,足を挿入する袋体を設け,
この袋体に足を挿入してマッサージするようにしたものである。この発明
においては足を袋体に挿入したとき,立て膝状態となるので,足裏と太股
とを同時にマッサージできないことは前者の発明と同様である。
この発明は,足置き部を座部などと一体的にフレームに取り付けつつ,
使用者の足の長さに拘わりなく太腿と足裏とを同時にマッサージ可能なマ
ッサージ機を得ることを課題とするものである。」(3頁5行~20行)
エ発明の開示
「成人の身長は150センチないし195センチ程度であって,足の長
さにおいても25センチ程度の差異がある。このように体型の異なる使用
者が,体型の如何に拘わりなく太股と足裏とを同時にマッサージできるよ
うにするためには,太股を座部に沿わせた状態で足裏を足置き部に載せる
ことができるようにすることが必要である。
そこで,この発明のマッサージ機は,フレームに使用者の腰及び太腿を
支持する座部及び足置き部を取り付け,前記座部及び足置き部に押圧手段
を備えたマッサージ機において,前記足置き部は前記座部の先端に対して
離接可能として,使用者の足の長さにかかわらず,使用者の太腿が座部に
接触しつつ足裏が足置き部に接触するように構成してある。
前記座部の前方に,使用者のふくらはぎを保持するふくらはぎ保持部を
配設することが好ましく(請求項2),ふくらはぎ保持部には,ふくらは
ぎ上面を被覆する押圧シートを付設することが好ましい(請求項3)。
前記座部はフレームに直接取り付けられるものであるが,その他の部分
は直接フレームに取りつけられることは要求されない。例えば,フレーム
に座部を取りつけ,座部の後部に背もたれ部を取り付け,座部の全部にふ
くらはぎ保持部を取りつけ,ふくらはぎ保持部の下部に足置き部を取りつ
ける構成としてもよく,このような構成も,各部位は座部を介してフレー
ムに取りつけられているので,請求項1の構成を満たすものである。
前記足置き部を座部に対して離接可能とするための構造に制約はない。
例えば,足置き部をふくらはぎ保持部と一体構造とし,ふくらはぎ保持部
を伸縮可能かつ回転可能なアームの先端に取り付ける構造,足置き部をふ
くらはぎ保持部に沿って上下移動可能に取りつける構造,足置き部をフレ
ームに取りつけた伸縮可能なアームに支持させる構造などが考えられる。
前記足置き部の押圧手段は前後方向に移動可能とすると足の位置を変え
ずに好みのツボをマッサージすることができる(請求項5)。
前記座部の後方に,使用者の背中を保持する押圧手段を備えた背もたれ
部を配設することが好ましい。背もたれ部は,座部の前後方向に移動可能
とすると,使用者の足の長さにかかわらず,背中を背もたれ部に沿わせる
ことができる。
なお,背もたれ部は固定として座部を前後移動可能としたり,座部から
補助座部が引き出せるようにしても,同様の効果を得ることができる。
さらに,背もたれ部の上部に首及び肩をマッサージする押圧手段を有す
る頭部支持部材を配設し,この頭部支持部材を上下移動可能とすれば,使
用者の座高にかかわりなく,背中を背もたれ部に密着させつつ肩や首を正
確にマッサージすることが可能となる。そして,前記各部の移動と相俟っ
て,首から足裏までの全身を完全にマッサージ機に沿わせることが可能と
なり,全身を効果的にマッサージすることができる。」(3頁22行~4
頁29行)
オ発明を実施するための最良の形態
「(全体構成)
図1において,フレーム1,座部2,背もたれ部3,ふくらはぎ保持部
4,足置き部5でこの発明のマッサージ機が構成してある。前記座部2,
背もたれ部3,ふくらはぎ保持部4はいずれもクッション性のある詰め物
を生地で被覆して構成してあり,足置き部5は合成樹脂又は金属製の板状
として,足置き位置を足型の凹部としてある。
前記座部2はフレーム1の上部に固定してある。
前記フレーム1の両側下部にはそれぞれ前後方向にレール6,6が配設
してあり,このレール6,6に肘掛け兼用の背もたれ取り付け座7が装着
してあり,この取り付け座7に背もたれ部3の下部が公知のリクライニン
グ機構を備えた取付具7aを介して起伏可能に取り付けてある。
前記レール6の側方にストッパ凸部8が複数設けてあり,前記取付座7
の下部に取り付けたストッパ受け9がストッパ凸部8に嵌合して,取付座
7の位置が固定されるようにしてある。
前記ストッパ受け9は,前記レールに平行な軸に回動可能に取り付けて
あり,レバー10の操作によって回動し,前記ストッパ凸部8に係脱する
ようにしてある。
前記取付座7を前方へ移動させると背もたれ部3も前方へ移動し,座部
2の奥行き寸法が短くなる。したがって,足の短い使用者であっても膝を
座部2の前端に位置させた状態で背中を背もたれ部に沿わせることができ
る。逆に取付座7を後方へ移動させると背もたれ部も後方へ移動し,座部
の奥行き寸法が長くなる。したがって,足の長い使用者であっても膝を座
部2の前端に位置させ太腿を座部に沿わせた状態で,背中を背もたれに沿
わせることができる。
前記ふくらはぎ保持部4は,基部を前記座部2に回動可能に取り付けて
あり,先端部に足置き部5を取り付けた構造であって,ふくらはぎ保持部
4と足置き部5とは側面L字状をなした一体構造としてある。ふくらはぎ
保持部4の両側に2本のバー13aと13bをストッパ付の連結具13c
で連結して構成したアーム13の先端部が回転可能に取り付けてある。前
記伸縮アーム13の基端部は前記フレーム1に回転可能に取り付けてあり,
レバー部13dが突出している。したがって,ふくらはぎ保持部4及び足
置き部5は,レバー部13dを押し下げて伸縮アーム13を伸ばすとふく
らはぎ保持部4は上向きに回動し,逆にレバー部13dを押し上げると伸
縮アーム13が屈曲してふくらはぎ保持部4は下方へ回動する(図2)。
したがって,伸縮アーム13を操作することによりふくらはぎ保持部4
及び足置き部5が回動し,好みのふくらはぎの高さにセットしてマッサー
ジを受けることができる。
前記足置き部5はふくらはぎ保持部4に上下動可能に取り付けてある
(図3ないし図5)。
前記ふくらはぎ保持部4の下部両側に,足置き部5取付用のレール14
が取り付けてある。一方,足置き部5の基部両側にブラケット15が上向
きに設けてあり,このブラケット15が前記レール14に装着されている。
このブラケット14の側縁には係止凹部16が多数上下方向に並設してあ
り,前記ふくらはぎ保持部4には前記係止凹部16に係止するストッパ1
7が取り付けてある。このストッパ17は,レバー18によって係止凹部
16に係脱し得るようにしてある。
前記ふくらはぎ保持部4と足置き部5との間には定荷重バネ19が装着
してある。このバネ19は前記足置き部5を上方へ付勢するものであり,
前記ストッパ17の計装部16との係止を解除し,使用者が脚に加重をか
けなければ足置き部5が自動的に上昇するようにしてある。
上記構成により,使用者は足置き部5の高さを自由に変更することがで
きる。したがって,脚の短い使用者は足置き部5を上昇させて使用し,足
の長い使用者は足置き部5を下降させて使用することにより,使用者の足
の長さに拘わらず,太腿を座部2に沿わせ,ふくらはぎをふくらはぎ保持
部4に沿わせつつ,足を足置き部5に置くことができる。」(5頁6行~
6頁29行)
「(マッサージ機構)
この実施例において,座部2,背もたれ部3,ふくらはぎ保持部4,足
置き部5にはエアマッサージ機構が装着してある。
座部2,背もたれ部3及びふくらはぎ保持部4のエアマッサージ機構は,
空気袋20と空気袋20の膨張収縮によって上下移動する押圧用突起21
とで構成してある。そして,空気袋20は座部2の太腿対応部,背もたれ
部3の背中対応部及び腰対応部,ふくらはぎ保持部4のふくらはぎ対応部
の内部にそれぞれ内蔵してあり,押圧用突起21は各部の表面生地22の
表面に取り付けてある。
従来の装置のように押圧用突起を空気袋に取り付けて各部に内蔵すると,
空気袋の歪などによって内部で押圧用突起の角度が変わることがあり所定
の位置を押圧できないことがあったが,押圧用突起21を生地22に取り
付けると空気袋20の歪の影響を受けることがなく,押圧用突起21が常
に所定の位置に保持される。」(7頁1行~13行)
「足置き部5のマッサージ機構は,足裏マッサージ体32が前後方向に
移動可能としてある(図9)。なお,分かりやすくするために片足に対応
する構造を示すが,実施においては各足毎に以下の機構を設けることにな
る。
前記足置き部5の内部に横軸ボールネジ33が横方向に設けてあり,こ
の横軸ボールネジ33に縦軸ボールネジ34の取付体35が噛み合ってい
る。この取付体35に取り付けられた縦軸ボールネジ34に前記足裏マッ
サージ体32が噛み合っており,足裏マッサージ体32は回転が規制され
ており縦軸ボールネジ33が回転すると前後方向に移動するようにしてあ
る。
図9中符号36は横軸ボールネジを回転させるモータ,37は縦軸ボー
ルネジを回転させるモータである。
前記足裏マッサージ体32は,空気袋保持体38に空気袋20を取り付
け,空気袋20に対応する位置の生地21に押圧用突起39を取り付けて
構成してある(図10)。
このように足置き部5において押圧用突起15を移動可能とすることに
より,使用者がその足裏の所望の部位をマッサージすることができる。な
お,足置き部5の足型の凹部には,足裏のマッサージ位置と効能を示す図
柄を表示しておくと使用者はより効率的に効果を得ることができる。
なお,前記足裏マッサージ体32を移動させるモータ37,37は,肘
掛け部に設けたスイッチによって制御できるようにしておく。そして,使
用者の指示によって適宜の距離移動させる制御と,自動的に足裏の全体を
移動する制御の双方が可能なようにしておくことが好ましい。
前記各空気袋20は,給排気装置に接続してある。そして,足置き部5
の空気袋への給排気回路とそれ以外の空気袋20の給排気回路は,別個の
回路としてある。
すなわち,足置き部5の空気袋20へは常時空気が給排気され,その他
の部位の空気袋へはいずれか一箇所にのみ給排気され,同時には作動しな
いようにしてある。好ましい作動順序は,首,肩,背中,腰,太腿,ふく
らはぎの順での繰り返しである。
前記ふくらはぎ保持部4にはふくらはぎの上側を覆うシート40を2枚
設けてある。このシート40は,一側をふくらはぎ保持部4に固定して,
他方をベルクロファスナーなどの係止部材によってふくらはぎ保持部4に
固定できるようにしてある。そして,このシート40には空気袋を装着し
ておき,ふくらはぎ保持部4内の空気袋と同期して給排気されるようにし
てある。
このシート40を用いることによりふくらはぎ部分のマッサージ効果が
向上する。また,このようなシートは足置き部5や座部2にも設けると効
果的である。」(7頁26行~9頁2行)
「(変形例)
この発明にける各部の具体的な構造については,上記実施例に限定され
るものではない。
例えば,足置き部を座部の先端に離接させる構造に関し,上記実施例と
同様にふくらはぎ保持部に沿って上下移動させる場合においては,実施例
のように係止手段を利用するほか,足置き部をプランジャーで支持し,プ
ランジャーの作動によって足置き部を上下移動させる手段,ふくらはぎ保
持部と足置き部にラックとピニオンを設け,ピニオンをモータ又は手動で
回転させることによって足置き部を上下移動させる手段などが考えられる。
更に,足置き部をふくらはぎ保持部と独立させ,フレームに取り付けた
プランジャーその他の伸縮するアームを使用して移動させることも考えら
れる。」(9頁3行~13行)
カ産業上の利用可能性
「この発明によれば,フレームに座部,背もたれ部及び足置き部を取り
付けたマッサージ機において足置き部を前記座部の先端に対して離接可能
としてあるので,足の短い使用者は足置き部を座部に近づけて使用し,足
の長い使用者は足置き部を座部から遠ざけて使用することができる。した
がって,脚の長さに関わりなく,太股を座部に接した状態で足を足置き部
に載せることができ,太股と足裏とを効果的にマッサージすることができ
る。
そして,マッサージ機能を備えた背もたれを付加し,この背もたれを座
部の前後方向に移動可能とすれば,使用者の体型に合わせて背もたれ部を
移動させることにより,使用者の膝を座部の先端に位置させた状態で,足
を足置き部に載せ太股を座部に沿わせつつ背中を背もたれ部に沿わせるこ
とができる。
更に,マッサージ機構を備えたふくらはぎ保持部を付加すると,足裏,
太股,腰,背中をマッサージ機に沿わせることができ,背もたれ部に頸・
肩マッサージ具を上下移動可能に取り付けると,頸から足裏までの全身を
マッサージ機に沿わせることができ,最適な状態で全身のマッサージを行
うことができる。」(9頁25行~10頁9行)
(2)刊行物2に前記第2の3(2)イ記載の発明(甲2発明)が記載されている
ことは,当事者間に争いがなく,前記(1)の記載によれば,甲2発明の特徴は
以下のとおりであると認められる。
ア「この発明」は,椅子型のマッサージ機に関する。
マッサージ機においても,肩,背中,太腿,ふくらはぎに加えて足裏の
マッサージが可能なものが求めらており,従来から足裏のマッサージを可
能としたマッサージ機が提案されている。
しかしながら,従来の足裏のマッサージ機は,足置き部を座部よりも高
い位置とするため,使用時に使用者の太股が座部から浮き上がるようにな
るものや,本体をマット上に構成して足を挿入する袋体を設け,この袋体
に足を挿入してマッサージするようにしたものであるため,足を袋体に挿
入したとき,立て膝状態となるものであり,いずれも太股と足裏とを同時
にマッサージすることはできないという問題があった。
イ「この発明」は,足置き部を座部などと一体的にフレームに取り付けつ
つ,使用者の足の長さにかかわりなく太腿と足裏とを同時にマッサージ可
能なマッサージ機を得ることを課題とするものであるが,体型の異なる使
用者が,体型の如何に拘わりなく太股と足裏とを同時にマッサージできる
ようにするためには,太股を座部に沿わせた状態で足裏を足置き部に載せ
ることができるようにすることが必要であることから,フレームに使用者
の腰及び太腿を支持する座部及び足置き部を取り付け,前記座部及び足置
き部に押圧手段を備えたマッサージ機において,前記足置き部は前記座部
の先端に対して離接可能として,使用者の足の長さにかかわらず,使用者
の太腿が座部に接触しつつ足裏が足置き部に接触するように構成し(請求
項1),さらに,好ましくは,前記座部の前方に,使用者のふくらはぎを
保持するふくらはぎ保持部を配設する構成(請求項2)を採用した。
上記発明の実施例として,甲2発明の構成が開示されている。
ウ「この発明」によれば,フレームに座部及び足置き部を取り付けたマッ
サージ機において,足置き部を前記座部の先端に対して離接可能としてあ
るので,足の短い使用者は足置き部を座部に近づけて使用し,足の長い使
用者は足置き部を座部から遠ざけて使用することができるため,脚の長さ
に関わりなく,太股を座部に接した状態で足を足置き部に載せることがで
き,太股と足裏とを効果的にマッサージすることができるという効果を奏
する。
3取消事由1(本件発明1の進歩性判断の誤り)について
(1)原告は,本件発明1は甲2発明等に基づいて,当業者が容易に発明をする
ことができたものであり,本件審決における本件発明1の進歩性判断は誤り
である旨主張するので,以下において判断する。
(2)相違点1-2-1について
ア相違点1-2-1に係る構成の容易想到性について
(ア)相違点1-2-1に係る本件発明1の構成は,足置き部5(本件発
明1における「最先端の脚保持部材」に相当)が,「足の側部に対向さ
せる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記足側面に設け
られ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有し」
ているというものである。
(イ)甲2発明は,前記2(2)記載のとおり,椅子型のマッサージ機におい
て用いられる従来の足裏のマッサージ機では,太股と足裏とを同時にマ
ッサージすることはできないという問題があったことから,使用者の脚
の長さにかかわりなく太腿と足裏とを同時にマッサージ可能なマッサー
ジ機を得ることを課題とし,上記課題の解決のため,足置き部は座部の
先端に対して離接可能として,使用者の脚の長さにかかわらず,太腿が
座部に接触しつつ足裏が足置き部に接触するように構成したものである
が,刊行物2(甲2)の「前記ふくらはぎ保持部4にはふくらはぎの上
側を覆うシート40を2枚設けてある。このシート40は,一側をふく
らはぎ保持部4に固定して,他方をベルクロファスナーなどの係止部材
によってふくらはぎ保持部4に固定できるようにしてある。そして,こ
のシート40には空気袋を装着しておき,ふくらはぎ保持部4内の空気
袋と同期して給排気されるようにしてある。このシート40を用いるこ
とによりふくらはぎ部分のマッサージ効果が向上する。また,このよう
なシートは足置き部5や座部2にも設けると効果的である。」(8頁2
5行~9頁2行)との記載によれば,刊行物2には,足置き部5におい
て被施療者の足裏のみならず,足の側部についても押圧マッサージを施
すことが記載又は示唆されているといえる(刊行物2の上記記載によれ
ば,足置き部5に足の上側を覆うシート40を2枚設け,このシート4
0の一側を足置き部5に固定して,他方を係止部材によって足置き部5
に固定できるようにし,シート40に空気袋を装着しておき,足置き部
5内の空気袋と同期して給排気されるようにすることにより,足置き部
5に置かれた被施療者の足裏のみならず,足の側部や足の甲部にも押圧
マッサージを施し得ることになる。)。
(ウ)ところで,甲13ないし17には,以下のとおりの記載がある(下
記記載中に引用する図面については,別紙4の周知例図面目録を参
照。)。
a甲13
甲13には,以下のような記載がある。
「特に,図2に示されるように足Fをセットして空気袋12を膨脹
・収縮させて既述のマッサージ動作を行なった場合,相対向する一対
の空気袋12の膨脹力が足Fの甲に作用するから,それに伴い足Fを
施療突起17に押し付けることができる。それにより,足踏み等の格
別な努力を要することなく施療突起17による足裏などの刺激作用を
高めてマッサージをすることができる。」(段落【0027】)
b甲14
甲14には,以下のような記載がある。
「図2に示したような本発明の携帯用空圧マッサージ機を使用して,
図5に示したように,使用者が椅子等に着座した状態で,本体1両側
の各施療部嵌用溝11・11の底部に両足裏部分を嵌入載置するだけ
で,コンプレッサー4から各給排気管51・52を介して圧空が各施
療部材2の各空気袋22と底部の押圧部材3の空気袋32に給排され,
両足のくるぶし部分を挟持圧迫して揉みマッサージすることができる
と共に,土踏まず部分を底部から指圧施療することができるのであ
る。」(段落【0039】)
c甲15
甲15には,以下のような記載がある。
「また,図4に示したように,使用者が椅子等に着座した状態で,
本体1両側の各施療部嵌用溝11・11の底部に両足裏部分を嵌入載
置するだけで,流体供給手段3から各連通管31・31・31を介し
て,流体が揉み部材5及び押圧部材6の各空気袋2・2・2に給排さ
れ,両足のくるぶし部分を挟持圧迫して揉みマッサージすると共に,
土踏まず部分を底部から指圧施療して指圧マッサージを行わせること
ができるのである。」(段落【0022】)
d甲16
甲16には,以下のような記載がある。
「従来の椅子式のマッサージ機としては図7に示すものがある。椅
子は背もたれ部Aと座部BとアームレストCと脚部Dを有し,座部B
の前方には出し入れ自在に脚載せ台Eを設けてある。椅子の背もたれ
部A等には人体の上半身のマッサージを行うマッサージ装置が内蔵さ
れている。脚載せ台Eには一対の凹溝部1を設けてあり,座部Bに座
った使用者の両脚を凹溝部1に入れて脚を支持できるようになってい
る。脚載せ台Eには空気袋aを配置してあり,空気袋aに空気の給排
気をすることで空気袋aを膨張収縮させて脚のふくらはぎのマッサー
ジを行うことができるようになっている。また座部Bにも空気袋a′
を配置してあり,空気袋a′に空気の給排気を行うことでマッサージ
を行うようになっている。」(段落【0002】)
「しかし,上記の椅子式のマッサージ機の脚載せ台Eでは空気袋a
が人体の脚のふくらはぎに対応する部分にしか配置されておらず,人
体の脚の足(足首から指まで亙る部分)までマッサージすることがで
きなかった。またブーツ型で足先まで覆い,内面をポンプの給排気で
膨張収縮させて足を圧迫するものもあるが,足全体を覆わなければな
らなく,また上半身のマッサージを行う椅子と組み合わせることがで
きなかった。」(段落【0003】)
「本発明は叙述の点に鑑みてなされたものであって,人体の脚の足
までマッサシージを行うことができるマッサージ機を提供することを
課題とする。」(段落【0004】)
「本発明の脚載せ台Eはフレーム2と空気袋3とで構成され,図2
に示すように脚載せ台Eの凹溝部1に脚8を収め,空気袋3を膨張収
縮させることにより脚8のマッサージができるようになっている。図
2の例の場合,図1のように前後に分割されていないが,前後方向の
中央の位置より少し前の位置で角度をつけてあり,空気袋3に角度が
ついている。つまり,フレーム2が前後方向の中央の位置より少し前
の位置の屈曲部9で曲がっており,空気袋3も曲がっている。これに
より脚載せ台Eの凹溝部1に脚8を収めたとき脚8のふくらはぎ8a
も脚8の足8bの足首から踵までの部分も空気袋3に沿わせることが
でき,空気袋3を膨張収縮させることにより脚8のふくらはぎ8aか
ら足8bの一部までマッサージすることができ,椅子式のマッサージ
機の脚載せ台Eとした場合,足8bまでの全身のマッサージができ
る。」(段落【0012】)
「また上記図1の例のように脚載せ台Eを第1脚載せ台部E1と第
2脚載せ台部E2とに分割してあると,第1脚載せ台部E1に対して
第2脚載せ台部E2を図3(a)に示す矢印bのように移動させるこ
とができるとともに第1足載せ台部E1に対して第2足載せ台部E2
が略直角になるように角度をつけることができ,第1脚載せ台部E1
の第1空気袋3aに脚8のふくらはぎ8aを沿わせるとともに第2脚
載せ台部E2の第2空気袋3bに脚8の足8bに沿わせることができ
る。このため第1,第2空気袋3a,3bを膨張収縮させることによ
り脚8のふくらはぎ8aや足8bのマッサージができる。また図3
(b)の矢印cのように第2脚載せ台部E2を回転できるようにする
と,第2脚載せ台部E2の角度を変えることできて脚8の足8bに合
わせてマッサージすることができる。」(段落【0013】)
「また図4の例では,脚載せ台Eを第1脚載せ台部E1と第2脚載
せ台部E2とに分割してあり,第1脚載せ台部E1と第2脚載せ台部
E2とを連結部材6で連結してあるが,第1脚載せ台部E1に対して
第2脚載せ台部E2が矢印dに示すように反転自在にしてある。図4
(a)のように第1脚載せ台部E1と第2脚載せ台部E2とを同じ向
きに向けた場合,第1脚載せ台部E1の第1空気袋3a及び第2脚載
せ台部E2の第2空気袋3bが脚8のふくらはぎ8aに沿い,第1,
第2空気袋3a,3bを膨張収縮させることにより矢印eの方向に力
を加えてマッサージできる。また図4(b)のように第1脚載せ台部
E1に対して第2脚載せ台部E2の向きを上下に反転して向きを変え
た場合,第1脚載せ台部E1の第1空気袋3aがふくらはぎ8bに沿
うとともに第2脚載せ台部E2の第2空気袋3bがふくらはぎ8bと
反対側に沿い,第1,第2空気袋3a,3bを膨張収縮させることに
より矢印e,fの方向に力を加えてふくらはぎ8bを上下から挟むよ
うにマッサージできる。」(段落【0014】)
「また図5の例では脚載せ台Eのフレーム2が分割されていないが,
空気袋3が分割されている。第1空気袋3aがフレーム2の前後に亙
るように設けてあるが,第2空気袋3bが第1空気袋3aに重なるよ
うに収納されたりフレーム2の前端から突出したりするように前後に
出入り自在にしてある。このようにしてあると,図5(a)のように
第2空気袋3bを収納した状態で脚8のふくらはぎ8aのマッサージ
をしたり,図5(b)のように第2空気袋3bを突出させた状態で脚
8のふくらはぎ8a及び足8bのマッサージをしたりできるようにな
っている。」(段落【0015】)
e甲17
甲17には,以下のような記載がある。
「しかして,空気吹出し口部材4に施療布地6を被せて空気吹出し
口部材4のスリット5から供給される加圧空気をエアー導入口8を経
てエアー袋7内に導入して,例えば,3箇所においてエアー袋7を膨
出させ,これら膨出部2,2,2によって,例えば,足乗せ面9に足
を乗せた際のふくらはぎ部分の側部,足の甲を含めた足部全体をマッ
サージするのである。この場合,隣接する膨出部2,2間にふくらは
ぎ部分を挿入して主としてふくらはぎ部分をマッサージするようにし
てもよく,足部マッサージ機1の使用形態は種々変更することができ
るものである。」(段落【0014】)
「図3は更に他の実施の形態を示す分解斜視図であり,但し,本実
施の形態の基本構成は上記実施の形態と共通であり,共通する部分に
は同一の符号を付して説明は省略する。」(段落【0019】)
「本実施の形態においては,足乗せシート12に通孔14を形成し
て膨出部2を通過させるようにするとともに,スリッパ形状の足先保
持部13を形成したものである。しかして,足先保持部13に足先を
固定することができ,足側面,足の甲等の正確なマッサージをおこな
えるものである。この場合,足先保持部13の側部には通孔14が存
在して,膨出部2の膨出の妨げにならないようになっている。」(段
落【0020】)
(エ)甲13ないし17の記載によれば,マッサージ機の技術分野におい
て,足部にマッサージを施す脚保持部材において,足の側部に対向させ
る足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記足側面に設けら
れ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルとを設けること
は,原出願の出願日前に周知であったものと認められる。
(オ)以上によれば,刊行物2(甲2)に接した当業者において,足置き
部5に置かれた被施療者の足裏のみならず足の側部にも押圧マッサージ
を施すために,前記(エ)の周知技術を適用し,甲2発明において,「足
置き部5」が,「足の側部に対向させる足側面と,左右方向における中
央部に区画壁と,前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッ
サージを施すエアセルと,を有し」ている構成とすることは,当業者が
容易に想到し得たものであると認められる。
なお,甲2発明は,足置き部を座部の先端に対して離接させる構造に
関し,「ふくらはぎ保持部4と足置き部5との間には,足置き部5を上
方へ付勢する定荷重バネ19が装着してあり,ふくらはぎ保持部4に取
り付けられたストッパ17と足置き部5のブラケット15に設けられた
係止凹部16との係止を解除することにより,マッサージする前に足置
き部5を上下動させて足置き部5の高さを使用者の脚の長さに合わせて
変更し,マッサージする時には,ストッパ17と係止凹部16とを係止
することにより,足置き部5を使用者の脚の長さに合わせて変更した高
さに固定する」との構成を有するが,かかる構成が甲2発明において,
前記(エ)の周知技術を適用することを阻害するものとは認められない。
イ被告の主張について
被告は,刊行物2(甲2)には,太腿の位置及びふくらはぎの位置が脚
の長さに応じて変化するという事実並びに当該事実を解決するための構成
は開示も示唆もされておらず,刊行物2には開示も示唆もされていない
「使用者の脚の長さに合わせてエアセルを好適な位置に配置する」という
課題を解決するために,甲2発明に,相違点1-2-1に係る本件発明1
の構成を設ける動機付けは存しない旨主張する。
しかしながら,刊行物2には,足置き部5において被施療者の足裏のみ
ならず,足の側部についても押圧マッサージを施すことが記載又は示唆さ
れているといえるから,刊行物2に接した当業者において,足置き部5に
置かれた被施療者の足裏のみならず足の側部にも押圧マッサージを施すた
めに,周知技術を適用し,甲2発明において,相違点1-2-1に係る本
件発明1の構成を設けるようにすることは,当業者が容易に想到し得たも
のであると認められることは,前記ア記載のとおりである。
被告は,相違点1-2-1に係る本件発明1の構成は「使用者の脚の長
さに合わせてエアセルを好適な位置に配置する」という課題がなければ採
用されない構成であるかのように主張するが,上記構成は,本件明細書に
あるように(段落【0013】),被施療者の足の側部に対してマッサー
ジを施すことができ,また,左足と右足をそれぞれ,左の足側面と区画壁
の間,右の足側面と区画壁の間に分離して位置させることができるという
効果を奏するのであるから,かかる効果を得るため,すなわち,足置き部
5に置かれた被施療者の足裏のみならず足の側部にも押圧マッサージを施
すために,上記の構成を採用することは容易に想到し得ることであるとい
うべきである。
以上によれば,被告の上記主張は理由がない。
(3)相違点1-2-2について
ア相違点1-2-2に係る本件発明1の構成は,ふくらはぎ保持部4(本
件発明1における「他の脚保持部材」に相当)が,「脚の側部に対向させ
る脚側面と,前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージ
を施すエアセルと,を有し」ているというものである。
イ刊行物2(甲2)の「前記ふくらはぎ保持部4にはふくらはぎの上側を
覆うシート40を2枚設けてある。このシート40は,一側をふくらはぎ
保持部4に固定して,他方をベルクロファスナーなどの係止部材によって
ふくらはぎ保持部4に固定できるようにしてある。そして,このシート4
0には空気袋を装着しておき,ふくらはぎ保持部4内の空気袋と同期して
給排気されるようにしてある。このシート40を用いることによりふくら
はぎ部分のマッサージ効果が向上する。」(8頁25行~9頁2行)との
記載によれば,刊行物2には,ふくらはぎ保持部4において被施療者のふ
くらはぎ保持部に接するふくらはぎのみならず,脚の側部についても押圧
マッサージを施すことが記載又は示唆されているといえる。
ウところで,マッサージ機の技術分野において,ふくらはぎにマッサージ
を施す脚保持部材に,脚の側部に対向させる脚側面と,前記脚側面に設け
られ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセルとを設けること
は,原出願の出願日前に周知であったものと認められる(後記(4)ア及びイ
の甲1,甲5,甲6等)。
エ以上によれば,刊行物2(甲2)に接した当業者において,ふくらはぎ
保持部4と接する被施療者のふくらはぎ面のみならず,脚の側部にも押圧
マッサージを施すために,前記ウの周知技術を適用し,甲2発明において,
ふくらはぎ保持部4が,「脚の側部に対向させる脚側面と,前記脚側面に
設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有
し」ている構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものであると認
められる。
(4)相違点1-2-3について
原告は,相違点1-2-3に係る本件発明1の構成は,甲2発明に甲6-
1発明のほか,甲1,甲4,甲5,甲16に記載された周知技術を適用して
容易に想到することができたと主張する。
ア刊行物3(甲6)について
(ア)刊行物3(甲6)には,次のような記載がある(下記記載中に引用
する図面については,別紙3の刊行物3図面目録を参照。)。
a特許請求の範囲
「【請求項1】人体のふくらはぎ部を圧迫するための空気袋と,空
気袋を膨張・収縮させる給排気手段とを備えたマッサージ機において,
ふくらはぎ圧迫部が複数の空気袋と各空気袋を固定する複数の枠体か
らなり,空気袋を固定した枠体が接離自在にそれぞれ個々に独立して
移動可能であることを特徴とするマッサージ機。」
b発明の属する技術分野
「本発明は,空気袋の膨張収縮により,人体のマッサージをおこな
うマッサージ機に関するものである。」(段落【0001】)
c従来の技術
「従来から空気袋の膨張収縮により,人体のマッサージをおこなう
マッサージ機として図7に示すようなマッサージ機が提供されている。
この図7に示されるマッサージ機は椅子20の背もたれ部21,座部
22,足載せ台23にそれぞれ空気袋1’を配設し,給排気手段によ
り空気袋1’の膨張収縮を行って人体を圧迫してマッサージするよう
になっている。」(段落【0002】)
「しかしながら,図7に示す従来例にあっては,マッサージ機の足
載せ台23に配置される空気袋1’は常に一定間隔で位置が変わらな
いように固定されており,ふくらはぎの長さ,ふくらはぎの凝ってい
る場所に関係なく常に一定の場所のみに刺激を与えることしかできな
いものであり,人によって種々異なるふくらはぎの長さや凝っている
場所に対応した効果的なマッサージができないという問題があっ
た。」(段落【0003】)
d発明が解決しようとする課題
「本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり,ふくらはぎの長
さや凝っている場所に応じてどのポイントにも空気袋を移動して効果
的にふくらはぎのマッサージができるマッサージ機を提供することを
課題とするものである。」(段落【0004】)
e課題を解決するための手段
「上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は,人体の
ふくらはぎ部Fを圧迫するための空気袋1と,空気袋1を膨張・収縮
させる給排気手段2とを備えたマッサージ機において,ふくらはぎ圧
迫部3が複数の空気袋1と各空気袋1を固定する複数の枠体4からな
り,空気袋1を固定した枠体4が接離自在にそれぞれ個々に独立して
移動可能であることを特徴とするものである。このような構成とする
ことで,ふくらはぎ部Fの長さやふくらはぎ部Fの凝っている場所に
応じて空気袋1を固定した枠体4を個々に独立して移動させて対応さ
せることができるものである。」(段落【0005】)
f発明の実施の形態
「図1にはふくらはぎ圧迫部3(判決注・図1の「2」は「3」の
誤り)の一実施形態を示しており,このふくらはぎ圧迫部3は複数の
空気袋1と各空気袋1を固定する複数の枠体4からなり,枠体4はパ
イプフレーム本体4aの両端部及び中央部からそれぞれ上方に支持部
4bを突設して構成してあり,空気袋1は左右両側及び中央部を上記
枠体4の左右両側及び中央部の支持部4bに固定されることで隣接す
る支持部4b間に断面U字状をなす状態で吊り下げされている。この
ように空気袋1を固定した枠体4を複数(図1に示す実施形態では3
個)直列に並べ,各空気袋1を固定した枠体4はその左右を支えるレ
ール7に複数の枠体4の並設方向に移動自在に取付けてあって,空気
袋1を固定した枠体4が互いに近づいたり,遠ざかったりというよう
に接離自在となっており,上記各枠体4の移動はそれぞれ個々に独立
してレール7に対して移動可能となっている。」(段落【000
9】)
「上記ふくらはぎ圧迫部3は例えば,椅子式のマッサージ機の足載
せ台に設けられるものであり,レール7も足載せ台に設けられる。」
(段落【0010】)
「添付図面に示す実施形態においては各枠体4にそれぞれローラ8
を設け,該ローラ8がレール7に対して転動することで枠体4をレー
ル7に沿って移動自在としている。」(段落【0011】)
「また,各空気袋1はチューブ10により給排気手段2に接続して
あり,給排気手段2により各空気袋1に給気したり,あるいは空気袋
1から排気したりすることで,各空気袋1を膨張・収縮するようにな
っている。」(段落【0012】)
「しかして,ふくらはぎ圧迫部3の各空気袋1の断面U字状をなす
状態で吊り下げされた部分にそれぞれ左右の足のふくらはぎ部Fを入
れ,給排気手段2から各空気袋1に給気したり排気したりして膨張・
収縮させることでふくらはぎ部Fを各空気袋1で圧迫したり,圧迫を
解除したりしてマッサージを行うものである。」(段落【001
3】)
「ここで,本発明においては,人体のふくらはぎ部Fの長さやふく
らはぎ部Fの凝っている場所に応じて図2(a)(b),図3(a)
(b),図4(a)(b)等に示すように,空気袋1を固定した枠体
4を個々に独立して任意に移動し,これにより複数の空気袋1を使用
者のふくらはぎのマッサージしたい最適のポイントにそれぞれ位置さ
せ,給排気手段2により空気袋1に給排気を行ってふくらはぎ部Fの
マッサージしたいポイントを各空気袋1(1a,1b,1c)により
圧迫したり,圧迫を解除したりしてマッサージするものである。」
(段落【0014】)
g発明の効果
「上記のように本発明の請求項1記載の発明にあっては,人体のふ
くらはぎ部を圧迫するための空気袋と,空気袋を膨張・収縮させる給
排気手段とを備えたマッサージ機において,ふくらはぎ圧迫部が複数
の空気袋と各空気袋を固定する複数の枠体からなり,空気袋を固定し
た枠体が接離自在にそれぞれ個々に独立して移動可能であるので,ふ
くらはぎ部の長さやふくらはぎ部の凝っている場所に応じて空気袋を
固定した枠体を個々に独立して移動させて対応させることができ,使
用者のふくらはぎ部の長さが凝っている場所の状態に応じて簡単にふ
くらはぎのマッサージしたいポイントを効果的にマッサージできるも
のである。」(段落【0018】)
(イ)刊行物3に前記第2の3(2)ウ記載の発明(甲6-1発明及び甲6-
2発明)が記載されていることは,当事者間に争いがなく,前記(ア)の
記載によれば,甲6発明の特徴は以下のとおりであると認められる。
a「本発明」は,空気袋の膨張収縮により,人体のマッサージをおこ
なうマッサージ機に関する。
従来のマッサージ機の足載せ台に配置される空気袋は常に一定間隔
で位置が変わらないように固定されており,ふくらはぎの長さ,ふく
らはぎの凝っている場所に関係なく常に一定の場所のみに刺激を与え
ることしかできないものであり,人によって種々異なるふくらはぎの
長さや凝っている場所に対応した効果的なマッサージができないとい
う問題があった。
b「本発明」は,前記aの問題に鑑み,ふくらはぎの長さや凝ってい
る場所に応じて,どのポイントにも空気袋を移動して効果的にふくら
はぎのマッサージができるマッサージ機を提供することを課題とする
ものであり,その解決手段として,人体のふくらはぎ部を圧迫するた
めの空気袋と,空気袋を膨張・収縮させる給排気手段とを備えたマッ
サージ機において,ふくらはぎ圧迫部が複数の空気袋と各空気袋を固
定する複数の枠体からなり,空気袋を固定した枠体が接離自在にそれ
ぞれ個々に独立して移動可能であるという構成(請求項1)を採用し
た。
上記発明の実施例として,甲6発明の構成が開示されている。
c「本発明」によれば,ふくらはぎ圧迫部が複数の空気袋と各空気袋
を固定する複数の枠体からなり,空気袋を固定した枠体が接離自在に
それぞれ個々に独立して移動可能であるので,ふくらはぎ部の長さや
ふくらはぎ部の凝っている場所に応じて空気袋を固定した枠体を個々
に独立して移動させて対応させることができ,使用者のふくらはぎ部
の長さや凝っている場所の状態に応じて簡単にふくらはぎのマッサー
ジしたいポイントを効果的にマッサージすることができるという効果
を奏する。
イ周知例の記載(下記記載中に引用する図面については,別紙4の周知例
図面目録を参照。)
(ア)刊行物1(甲1)
刊行物1(甲1)には,次のような記載がある。
a従来の技術
「従来,椅子型のマッサージ機に使用可能なフットレストとして,
特開平8-89540号公報記載のものが知られている。このフット
レストは,断面U字状に形成された脚入れ用の凹部が左右に二つ並べ
られたかたちの本体部を有したもので,個々の凹部には,左右で対向
する二側内面と凹部内底面との各3か所に空気袋が設けられてい
る。」(段落【0002】)
「これら空気袋は,別箇所に設置されるエア給排装置によって空気
が交互に給排されて膨らんだりしぼんだりを繰り返し,これによって
脚等をマッサージするようになっている。上記フットレストは,椅子
型マッサージ機の座面部に対して枢軸を介して連結されており,この
座面部に対して前後方向へ揺動可能になっている。そして,この枢軸
まわりには,揺動角度を調節可能にすると共に適宜角度で停止保持さ
せるためのラチェット機構や,椅子型マッサージ機側でのリクライニ
ング動作に合わせてフットレストの揺動を連動させるための連動機構
等が設けられている。」(段落【0003】)
b発明が解決しようとする課題
「この種,椅子型マッサージ機を使用するに際して,使用者の身長
差は,座面部を中心として脚側及び背側への当接位置のズレとして生
じる。そのため,フットレストに設けられる空気袋の位置が,使用者
における脚のツボ位置等に対して適正に対応しなくなる場合があり,
この場合には当然に,期待するマッサージ効果が得られないことにな
る。」(段落【0004】)
「本発明は,上記事情に鑑みてなされたものであって,使用者の身
長差に影響されることなく,フットレストにおいて脚の適正なツボ位
置等に対してマッサージを行えるようにした椅子型マッサージ機を提
供することを目的とする。」(段落【0005】)
c課題を解決するための手段
「本発明では,上記目的を達成するために,次の技術的手段を講じ
た。即ち,本発明に係る椅子型マッサージ機は,座面部の前部でフッ
トレストが前後揺動可能に設けられたもので,このフットレストは,
脚載せ部を有する本体部と,この本体部に設けられたマッサージ駆動
部とを有している。」(段落【0006】)
「そして,このフットレストは,少なくとも上方へ跳ね上げた使用
状態で,座面部に対して前後動可能に設けられている。このような構
成であると,使用者の身長に応じて,フットレストのマッサージ駆動
部(エアセル)を適宜位置調節できるため,使用者の脚における適正
なツボ位置等に対してマッサージを行えることになる。」(段落【0
007】)
「フットレストの前後動を,揺動角度や前後位置とは無関係に動作
及び停止できるようにしておくと,所望される任意の位置付けでのマ
ッサージを受けられることになるため,それだけ満足した快楽感が得
られる。」(段落【0009】)
d発明の実施の形態
「図1に示すように,座面部3には,お尻や太もも等へそれらの下
から突き上げるような指圧を繰り返すことによって,マッサージ動作
を行う座部マッサージ駆動部8が設けられている。図4に示すように,
フットレスト2は,盤体状の本体部10を具備したもので,この本体
部10には,使用者の左右の脚を互いに所定間隔をおいて振り分け状
に支持可能なように,2本の溝型をした脚載せ部12が設けられてい
る。そして,これら各脚載せ部12に対応して,左右の脚の足首やふ
くらはぎ等にマッサージ動作を行う脚部マッサージ駆動部13が設け
られている。」(段落【0012】)
「すなわち,脚載せ部12は,溝底面15と,左右両側で対向する
側部内面16と,幅方向中央部で膨出した分離丘17において左右両
側へ向く中央外面18とを有したものとなっており,これに対して上
記脚部マッサージ駆動部13は,側部内面16と中央外面18との対
向二面から各足首を掴みモミする第1指圧部26と,溝底面15から
ふくらはぎを突き上げるように指圧する第2指圧部27とを有してい
る。」(段落【0013】)
「第1指圧部26は,片脚あたり2個(全部で4個)のエアセル2
9を有し,また第2指圧部27は,片脚あたり1個(全部で2個)の
エアセル35を有している。これらエアセル29,35は,いずれも
酢酸ビニル等の可撓性及び弾力性に優れた樹脂により,外周面を蛇腹
構造とした円筒形に形成されたもので,内部へ空気を給排させること
によって軸方向の伸縮動作を行うようになっている。」(段落【00
14】)
「また,図13に示すように第1指圧部26において,各エアセル
29の突端面側に,例えば半球状等をした指圧片40を設けて,指圧
時の面圧を高め,その指圧効果を高めるようにすることも可能である。
図14及び図15は,本発明に係る椅子型マッサージ機1において,
フットレスト2の脚載せ部12に脚11の足裏を支持可能なステップ
45を設けて,このステップ45の裏底側に機械収納部25を形成さ
せた第5実施形態を示している。」(段落【0039】)
「従って,この第5実施形態では,機械収納部25内に,脚部マッ
サージ駆動部13の配管機器や配線機器等(図示略)を収納したり,
マッサージ駆動部13として,ステップ45に,足裏に対するマッサ
ージ動作を行う第4指圧部46を設けたりすることができるものとな
っている。図16は,本発明に係る椅子型マッサージ機1において,
フットレスト2のマッサージ駆動部13として,第2指圧部27によ
りふくらはぎへそれらの下から突き上げるような指圧を繰り返すこと
によって,マッサージ動作を行う構成とした第6実施形態を示してい
る。」(段落【0040】)
「すなわち,この第6実施形態では,指圧片36が,枢軸50を中
心として起き上がり方向に揺動自在に保持されており,この指圧片3
6の下部にエアセル35が設けられた構造になっている。言うまでも
なく,これら第5及び第6実施形態でも,フットレスト2が座面部3
に対して前後動可能になっている点及びその構造等については,第1
乃至第3実施形態と同じであるものとする。」(段落【0041】)
e発明の効果
「以上の説明から明らかなように,本発明に係る椅子型マッサージ
機では,座面部の前部で前後揺動可能に設けられたフットレストが,
少なくとも上方へ跳ね上げた使用状態で前後動可能に設けられている
ので,このフットレストに設けられるマッサージ駆動部(エアセル)
の位置付けを,脚の適正なツボ位置等へ正確に位置付けることができ
る。従って,身長差を有する様々な使用者が使用する場合でも,各使
用者にとってそれぞれ満足したマッサージ効果が得られるようにな
る。」(段落【0043】)
(イ)甲4
甲4には,以下のような記載がある。
「オットマン10は,図3および図4に示すように,座部2の前端部
に回動可能に設けたフレーム15と,フレーム15のアーム部16,16
に進退可能に装着したガイドレール17,17と,このガイドレール17,
17に固定された足受部20と,この足受部20の挟持溝21,21に設
けらた空気袋13,13等とを備えている。足受部20はガイドレール1
7,17とともにフレーム15のアーム部16,16に沿って左右方向
(図2において)に移動可能となっており,フレーム15は,図2に示
す位置に固定できるとともに座部2の下側まで回動できるようになって
いる。」(段落【0020】)
(ウ)甲5
甲5には,以下のような記載がある。
「以下,本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図
2は,本発明に係る椅子型マッサージ機1の全体構成を示している。図
1及び図2において,椅子型マッサージ機1は,脚体2により支持され
た座部3と,座部3の後部に設けられた背凭れ部4と,座部3の前部下
方に設けられたフットレスト5と,座部3の左右両側に設けられたひじ
掛け部6とを具備している。背凭れ部4は,リクライニング装置7によ
り座部3後端部側を支点としてリクライニング可能に構成されてい
る。」(段落【0016】)
「図1及び図2において,前記座部3には,後ろ寄りに2個の空気式
のマッサージ具45が設けられ,前寄りに2個の空気式のマッサージ具
46が設けられている。後ろ寄りの各マッサージ具45は,エアセル4
7と椀状の施療子48とを備え,エアセル47に空気を供排することに
よりエアセル47は空気圧によって伸縮動作し,施療子48を介して使
用者の尻を押圧するように構成されている。前寄りの各マッサージ具4
6はエアセル49と施療子50とを備え,エアセル49に空気を供排す
ることによりエアセル49は空気圧によって伸縮動作し,施療子50を
介して使用者の太ももを押圧するようになっている。」(段落【002
6】)
「前記フットレスト5には,左右の足を別々に挟持することができる
溝形の足保持部51,51が設けられており,各足保持部51,51の
座部5寄りの底壁52に,空気式のマッサージ具53がそれぞれ設けら
れ,各マッサージ具53はエアセル54と施療子55とを備えている。
各足保持部51,51の先端側の対向側壁57に空気式のマッサージ具
58がぞれぞれ対向して2個ずつ,計4個設けられ,各マッサージ具5
8はエアセル59と施療子60とを夫々備えている。各マッサージ具5
3,58のエアセル54,59は膨張・伸縮により脚を押圧するための
ものであり,特に,座部寄りのエアセル54は施療子55を介してふく
らはぎ裏を押圧し,先端側のエアセル59は足首を挟持状に押圧す
る。」(段落【0027】)
「この場合,前記図6に示す実施の形態の場合と同様に,座部3に対
してフットレスト5を取り付けた状態でマッサージ具53,58で脚の
ふくらはぎ等をマッサージできると共に,フットレスト5を座部3から
取り外して床等に載置することにより,フットレスト5の足保持部51
に足を載せてフットレスト5のマッサージ具53,58で足の裏や足の
側部等を効果的にマッサージすることができる。図9は他の実施の形態
を示し,座部3の前部の左右両側に取付ステー78が突設され,この取
付ステー78にボルト等の締結具79により,前記フットレスト5が着
脱自在に取り付けられるようにしたものである。その他の点は前記実施
の形態の場合と同様な構成であり,図示省略しているが,背凭れ部4に
機械式のマッサージ具8が設けられ,座部3に空気式のマッサージ具4
5,46が設けられている。また,フットレスト5に,脚をマッサージ
するための空気式のマッサージ具53,58が設けられている。」(段
落【0030】)
「この場合も,前記図6に示す実施の形態の場合と同様に,座部3に
対してフットレスト5を取り付けた状態でマッサージ具53,58で脚
のふくらはぎ等をマッサージできると共に,フットレスト5を座部3か
ら取り外して床等に載置することにより,フットレスト5の足保持部5
1に足を載せてフットレスト5のマッサージ具53,58で足の裏や足
の側部等を効果的にマッサージすることができる。図10は他の実施の
形態を示し,座部3の前部に連結板81が垂下状に取り付けられ,この
連結板81は,幅方向中途部でヒンジ82を介して後方に屈曲自在に構
成され,連結板81の下端に,フットレスト5の前端部が連結されてお
り,連結板81の屈曲と伸長とにより,フットレスト5が,座部3の前
端部から垂下する垂下状態と,座部3の前方の床等に載置される載置状
態とに姿勢変更可能に構成されている。その他の点は前記実施の形態の
場合と同様な構成であり,図示省略しているが,背凭れ部4に機械式の
マッサージ具8が設けられ,座部3に空気式のマッサージ具45,46
が設けられている。また,フットレスト5に,脚をマッサージするため
の空気式のマッサージ具53,58が設けられている。」(段落【00
31】)
「この場合,連結板81を下方に伸長させることによって,座部3の
前方の床等にフットレスト5を載置することができ,このように載置し
たフットレスト5の足保持部51に足を載せることによって,フットレ
スト5のマッサージ具53,58で足の裏や足の側部等を効果的にマッ
サージすることができる。また,連結板81をヒンジ82を介して後方
に屈曲させて,フットレスト5を座部3の前端部に図示省略の係合具等
を介して係合させて垂下状に連結することによって,フットレスト5の
マッサージ具53,58で脚のふくらはぎをマッサージすることができ
る。」(段落【0032】)
「図11~図13は他の実施の形態を示し,前記フットレスト5が,
脚の上側をマッサージする第一フットレスト部85と脚の下側をマッサ
ージする第二フットレスト部86とに分割され,第一フットレスト部8
5と第二フットレスト部86とが座部3の前部に,支持フレーム87を
介して前後方向にスライド調整自在に取付られている。支持フレーム8
7は,図13に示すように,固定フレーム90と第一スライドフレーム
91と第二スライドフレーム92とを備える。固定フレーム90は,左
右一対の縦部材93と複数本の横部材94と左右一対の内レール95と
を有し,左右一対の取付片96を介して座部3の前端下部に上下揺動自
在に連結されるようになっている。」(段落【0033】)
「第一スライドフレーム91は,左右一対の外レール99と前後一対
の連結部材100と左右一対の内レール101とを備え,外レール99
は,固定フレーム90の内レール95対して前後摺動自在に外嵌保持さ
れ,前後一対の連結部材100は,左右一対の外レール99に連結固定
され,左右一対の内レール101は,前後一対の連結部材100間に固
着されている。第二スライドフレーム92は,左右一対の外レール10
5と前後一対の連結部材106とを備え,左右一対の外レール105は,
第一スライドフレーム91の内レール101対してそれぞれ前後摺動自
在に外嵌保持され,前後一対の連結部材106は左右一対の外レール1
05にそれぞれ連結固定されている。」(段落【0034】)
「そして,第一スライドフレーム91の前後一対の連結部材100に,
フットレスト5の第一フットレスト部85が固着され,第二スライドフ
レーム92の前後一対の連結部材106に,フットレスト5の第二フッ
トレスト部86が固着されている。また,第一スライドフレーム91の
左右一対の外レール99は,図示省略の係止手段によって,固定フレー
ム90の内レール95対して任意の前後摺動位置で係合固定できるよう
に構成され,第二スライドフレーム92の左右一対の外レール108は,
図示省略の係止手段によって,第一スライドフレーム91の内レール1
01対して任意の前後摺動位置で係合固定できるように構成されてい
る。」(段落【0035】)
「従って,第一スライドフレーム91は,固定フレーム90に対して
前後に移動調整自在であり,また第二スライドフレーム92は,第一ス
ライドフレーム91に対して前後に移動調整自在であり,第一フットレ
スト部85と第二フットレスト部86とが前後に二段にスライド調整で
きるように構成されている。その結果,第一スライドフレーム91を固
定フレーム90に対して前後に移動調整することにより,フットレスト
5全体が,座部3に対して前後に接離調整可能であり,また第二スライ
ドフレーム92を第一スライドフレーム91に対して前後に移動調整す
ることにより,第二フットレスト部86を座部3及び第一フットレスト
部85に対して前後に接離調整可能である。」(段落【0036】)
「その他の点は前記実施の形態の場合と同様な構成であり,図示省略
しているが,背凭れ部4に機械式のマッサージ具8が設けられ,座部3
に空気式のマッサージ具45,46が設けられている。また,フットレ
スト5の第一フットレスト部に,脚をマッサージするための空気式のマ
ッサージ具53が設けられ,フットレスト5の第二フットレスト部に脚
をマッサージするための空気式のマッサージ具58が設けられている。
従って,この場合,第一フットレスト部85と第二フットレスト部86
とを,座部3に対して前後に接離調整することによって,使用者の脚の
長さ等に合わせて使用者の脚の希望する部分を,フットレスト5のマッ
サージ具53,58で良好にマッサージすることが可能になる。」(段
落【0037】)
ウ相違点1-2-3に係る構成の容易想到性について
(ア)相違点1-2-3に係る本件発明1の構成は,「前記脚載せ部は,
前記最先端の脚保持部材及び前記他の脚保持部材のそれぞれが前記座部
の前部に対して脚の長さ方向に移動可能,かつ,前記最先端の脚保持部
材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記他の脚保持部材の前記
脚側面に設けられた前記エアセルとの距離が変化するように,脚の長さ
方向に伸縮可能であ」るというものである。
甲2発明では,ふくらはぎ保持部4(本件発明1の「他の脚保持部
材」に相当する。)は,座部2に固定されており移動可能ではなく,上
記構成を有していない。
(イ)甲2発明は,前記2(2)記載のとおり,椅子型のマッサージ機におい
て用いられる従来の足裏のマッサージ機では,太股と足裏とを同時にマ
ッサージすることはできないという問題があったことから,使用者の脚
の長さにかかわりなく太腿と足裏とを同時にマッサージ可能なマッサー
ジ機を得ることを課題とし,上記課題の解決のため,足置き部は座部の
先端に対して離接可能として,使用者の脚の長さにかかわらず,太腿が
座部に接触しつつ足裏が足置き部に接触するように構成したものであり,
かかる構成により,足の短い使用者は足置き部を座部に近づけて使用し,
足の長い使用者は足置き部を座部から遠ざけて使用することができるた
め,脚の長さに関わりなく,太股を座部に接した状態で足を足置き部に
載せることができ,太股と足裏とを効果的にマッサージすることができ
るという効果を奏するとするものである。
(ウ)これに対し,甲6発明は,前記ア(イ)記載のとおり,ふくらはぎの
長さや凝っている場所に応じて,どのポイントにも空気袋を移動して効
果的にふくらはぎのマッサージができるマッサージ機を提供することを
課題とするものであり,その解決手段として,人体のふくらはぎ部を圧
迫するための空気袋と,空気袋を膨張・収縮させる給排気手段とを備え
たマッサージ機において,ふくらはぎ圧迫部が複数の空気袋と各空気袋
を固定する複数の枠体からなり,空気袋を固定した枠体が接離自在にそ
れぞれ個々に独立して移動可能であるように構成したものである。
(エ)本件発明1における「脚載せ部」は,複数の脚保持部材,すなわち
最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成るも
のであって,座部の前部に対して回動自在であり,かつ,脚の力に抗す
る方向に最先端の脚保持部材を付勢する付勢手段である抵抗付与手段に
より,脚載せ部のうち最先端の脚保持部材に設けられている足裏の押し
当て面に付与される脚の力に抗する力が付与されているものである。
そして,本件発明1においては,脚載せ部がかかる構成を有すること
を前提として,相違点1-2-3に係る構成,すなわち,最先端の脚保
持部材及び他の脚保持部材を,そのそれぞれが座部の前部に対して脚の
長さ方向に移動可能であり,かつ,最先端の脚保持部材の足側面に設け
られたエアセルと他の脚保持部材の脚側面に設けられたエアセルとの距
離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であるようにする構成を
採用することにより,押し当て面に足裏を押し当てて,抵抗付与手段の
付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば,当該脚載せ部は脚の長さ
に対応した位置に達するので,脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が
簡単であり,脚載せ部から脚を降ろすことにより,自動的に脚保持部材
が元の位置に復帰するので便利であるという効果とともに,使用者の脚
の長さに合わせてエアセルを好適な位置に配置させることができるとい
う作用効果を奏するものであると認められる。
すなわち,本件発明1は,脚の力に抗する方向に最先端の脚保持部材
を付勢する付勢手段である抵抗付与手段を用いることにより,固定端で
ある座部の前部に対して,最先端の脚保持部材における足側面及び他の
脚保持部材における脚側面という2点が移動端となって移動可能及び復
帰可能とすることにより,使用者の脚の長さに合わせてエアセルを好適
な位置に配置させることができ,かつ,脚載せ部から脚を降ろすことに
より自動的に,脚保持部材が元の位置に復帰するという作用効果を奏す
るものである。
これに対し,前記(イ)によれば,甲2発明は,使用者の足の長さにか
かわりなく太腿と足裏とを同時にマッサージ可能なマッサージ機を得る
ことを課題とするものであるから,使用者の脚の長さにかかわらず,太
腿が座部に接触しつつ足裏が足置き部に接触するように構成されている
必要があるが,それ以上にふくらはぎと足裏との位置関係を問題とする
必要はない。
加えて,刊行物2(甲2)には,前記2(1)記載のとおり,「前記足置
き部を座部に対して離接可能とするための構造に制約はない。例えば,
足置き部をふくらはぎ保持部と一体構造とし,ふくらはぎ保持部を伸縮
可能かつ回転可能なアームの先端に取り付ける構造,足置き部をふくら
はぎ保持部に沿って上下移動可能に取りつける構造,足置き部をフレー
ムに取りつけた伸縮可能なアームに支持させる構造などが考えられ
る。」(4頁12行~16行)との記載はあるが,ふくらはぎ保持部4
と足置き部5のそれぞれが,座部2の前部に対して脚の長さ方向に移動
可能であり,かつ,足置き部5に設けられたエアセルとふくらはぎ保持
部4に設けられたエアセルとの距離が変化するように脚の長さ方向に伸
縮可能である構成についての開示はなく,そもそも,ふくらはぎ保持部
4と足置き部5のそれぞれが,座部2の前部に対して脚の長さ方向に移
動可能である構成に係る記載や示唆もない。
したがって,刊行物2(甲2)に接した当業者が,甲2発明において,
さらに,ふくらはぎの長さや凝っている場所に応じてどのポイントにも
空気袋を移動してふくらはぎのマッサージをすることができるようにす
るという課題を想起し得るとはいえない。
(オ)また,仮に,ふくらはぎの長さや凝っている場所に応じてどのポイ
ントにも空気袋を移動してふくらはぎのマッサージをすることができる
ようにするという課題を想起し,甲2発明に甲6-1発明を適用するこ
とを試みたとしても,当業者において,その課題の解決手段として,相
違点1-2-3に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たとは認めら
れない。
すなわち,甲2発明は,座部2に固定された部材であるふくらはぎ保
持部4と移動部材である足置き部5との間に定荷重バネ19が付勢され
て配置され,このバネに抗して足置き部5を移動させるとともにバネに
より復帰させるようにしたものである。
これに対し,刊行物3(甲6)には,「添付図面に示す実施形態にお
いては各枠体4にそれぞれローラ8を設け,該ローラ8がレール7に対
して転動することで枠体4をレール7に沿って移動自在としている。」
(段落【0011】),「ここで,本発明においては,人体のふくらは
ぎ部Fの長さやふくらはぎ部Fの凝っている場所に応じて図2(a)
(b),図3(a)(b),図4(a)(b)等に示すように,空気袋
1を固定した枠体4を個々に独立して任意に移動し,これにより複数の
空気袋1を使用者のふくらはぎのマッサージしたい最適のポイントにそ
れぞれ位置させ,給排気手段2により空気袋1に給排気を行ってふくら
はぎ部Fのマッサージしたいポイントを各空気袋1(1a,1b,1
c)により圧迫したり,圧迫を解除したりしてマッサージするものであ
る。」(段落【0014】)と記載されていることから,甲6-1発明
は,マッサージ機能を有する空気袋1が枠体4に固定され,複数の枠体
4に固定されたローラ8がレール7に沿って移動可能とすることで,空
気袋1間の距離を変化させられるようにしたものであると認められる。
甲2発明において,空気袋1(脚保持部材)間の距離を変化させられ
るようにするという甲6-1発明の技術事項を適用しようとした場合,
甲6-1発明の構成は,当該技術事項につき抵抗付与手段であるバネを
用いるものではなく,レールを用いるものであるため,甲2発明のふく
らはぎ保持部4(他の脚保持部材)と足置き部5(最先端の脚保持部
材)との間に設けられた定荷重バネ19による付勢手段(抵抗付与手
段)を生かしつつ,バネ等の付勢手段を有しない甲6-1発明における
レール7及び複数の枠体4(ローラ8)による移動手段を適用しようと
しても,複数の枠体4(ローラ8),バネ等の付勢手段,レール7を具
体的にどのように配置構成して,前記(エ)記載のとおり,2点の移動端
を有する本件発明1に係る構成とすればよいのか不明であり,せいぜい
定加重バネ19がレール7を介して2つの枠体4(ローラ8)に連結さ
れる構成が把握されるのみであって,これらのことから,「脚の力に抗
する方向に最先端の脚保持部材を付勢する付勢手段である抵抗付与手段
を用いることにより,最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材を有する
脚載せ部において,最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材を,そのそ
れぞれが座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能であり,かつ,最
先端の脚保持部材の足側面に設けられたエアセルと他の脚保持部材の脚
側面に設けられたエアセルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に
伸縮可能である」ようにする構成を容易に想起することができると認め
ることはできない。
(カ)なお,原告は,相違点1-2-3に係る本件発明1の構成は,「他
の脚保持部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能」である構
成に帰着するとした上で,かかる構成は,マッサージ機の技術分野にお
いて技術常識というべきものであるとして,刊行物3(甲6)のほかに,
刊行物1(甲1),甲4,甲5,甲16を挙げる。
しかしながら,相違点1-2-3に係る本件発明1の構成は,前記
(ア)記載のとおりであり,甲2発明において,相違点1-2-1及び相
違点1-2-2に係る本件発明1の構成を備えることが容易に想到し得
るものであるとしても,さらに,本件発明1は,「押し当て面に付与さ
れる脚の力に抗する力を最先端の脚保持部材に付与する抵抗付与手段を
備え」たマッサージ機において,「最先端の脚保持部材及び他の脚保持
部材のそれぞれが座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能であり,
かつ,最先端の脚保持部材に設けられたエアセルと他の脚保持部材に設
けられたエアセルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能
である構成」を備えることが必要であるから,これを単に「他の脚保持
部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能」である構成と技術
的に等しいものであるとする原告の上記主張はその前提において誤りで
あるといわざるを得ない。
また,甲5の段落【0033】ないし【0037】,【図12】及び
【図13】の記載によれば,甲5には,「座部と,マッサージ機能を有
する2つの脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成る脚載せ部を備え,前
記脚載せ部は,最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材のそれぞれが前
記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能,かつ,前記最先端の脚
保持部材に設けられマッサージを施すエアセルと前記他の脚保持部材に
設けられマッサージを施すエアセルとの距離が変化するように,脚の長
さ方向に伸縮可能であるマッサージ機」が開示されているものと認めら
れるが,かかる構成は,マッサージ機能を有するエアセルが脚保持部材
に固定され,複数の脚保持部材がレールに沿って移動可能とすることで,
脚保持部材間の距離を変化させられるようにしたものであって,甲6-
1発明について前記(オ)で検討したところと同様に,甲2発明に甲5に
記載された上記発明を適用することを試みたとしても,当業者において,
相違点1-2-3に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たとは認め
られない。
刊行物1(甲1),甲4,甲16についても,当業者において,甲2
発明にこれらの文献に記載された発明を適用することを試みたとしても,
相違点1-2-3に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たとは認め
られないことは,刊行物3(甲6)及び甲5について検討したところと
同様である。
(キ)以上によれば,甲2発明において,相違点1-2-3に係る本件発
明1の構成を備えるようにすることは,当業者において容易に想到し得
たものであるとは認められない。
(5)まとめ
以上のとおり,甲2発明において,相違点1-2-1及び相違点1-2-
2に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは,当業者において容易
に想到し得たことであると認められるが,相違点1-2-3に係る本件発明
1の構成を備えるようにすることは,当業者において容易に想到し得たもの
とは認められないから,本件発明1は甲2発明,甲6-1発明及び周知技術
に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認めら
れない。
したがって,本件審決における相違点1-2-3に係る容易想到性の判断
に誤りはないから,本件発明1の進歩性に係る本件審決の判断には,その結
論に影響を及ぼすべき違法はなく,取消事由1に係る原告の主張は理由がな
い。
4取消事由2(本件発明2の進歩性判断の誤り)について
(1)原告は,本件発明2は,甲2発明等に基づいて,当業者が容易に発明をす
ることができたものであり,本件審決における本件発明2の進歩性判断は誤
りである旨主張するので,以下において判断する。
(2)相違点2-1に係る本件発明2の構成は,脚載せ部が,マッサージ機能を
有する少なくとも3つの脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り,隣り合う
前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能であるとい
うものである。
また,相違点2-2に係る本件発明2の構成は,最先端の脚保持部材が,
足の側部に対向させる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記
足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,
を有し,他の脚保持部材が,それぞれ脚の側部に対向させる脚側面と,前記
脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,
を有し,脚載せ部が,前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前
記エアセルと前記他の脚保持部材の前記脚側面に設けられた前記エアセルと
の距離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であるという構成である。
ところで,本件発明2における「脚載せ部」は,少なくとも3つの脚保持
部材を脚の長さ方向に並べて成るものであって,座部の前部に対して回動自
在であり,かつ,脚の力に抗する方向に最先端の脚保持部材を付勢する付勢
手段である抵抗付与手段により,脚載せ部のうち最先端の脚保持部材に設け
られている足裏の押し当て面に付与される脚の力に抗する力が付与されてい
るものである。
そして,本件発明2においては,脚載せ部がかかる構成を有することを前
提として,隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ
変更可能であり(相違点2-1に係る構成),かつ,最先端の脚保持部材の
足側面に設けられたエアセルと他の脚保持部材の脚側面に設けられたエアセ
ルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であるようにする構
成(相違点2-2に係る構成)を採用することにより,押し当て面に足裏を
押し当てて,抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば,
当該脚載せ部は脚の長さに対応した位置に達するので,脚の長さに合わせた
装置側の長さ調節が簡単であり,脚載せ部から脚を降ろすことにより,自動
的に脚保持部材が元の位置に復帰するので便利であるという効果とともに,
使用者の脚の長さに合わせてエアセルを好適な位置に配置させることができ
るという作用効果を奏するものであると認められる。
すなわち,本件発明2は,脚の力に抗する方向に最先端の脚保持部材を付
勢する付勢手段である抵抗付与手段を用いることにより,固定端である座部
の前部に対して,最先端の脚保持部材における足側面及び少なくとも2つの
他の脚保持部材における脚側面という少なくとも3点が移動端となって移動
可能及び復帰可能とすることにより,使用者の脚の長さに合わせてエアセル
を好適な位置に配置させることができ,かつ,脚載せ部から脚を降ろすこと
により自動的に,脚保持部材が元の位置に復帰するという作用効果を奏する
ものである。
以上によれば,隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそ
れぞれ変更可能であるという構成(相違点2-1に係る構成)及び最先端の
脚保持部材の足側面に設けられたエアセルと他の脚保持部材の脚側面に設け
られたエアセルとの距離が変化するように,脚の長さ方向に伸縮可能である
ようにする構成(相違点2-2に係る構成)とは,本件発明2の上記作用効
果の観点から,相互に関連する構成であるというべきであるから,これらの
構成の相互の関係を考慮し,以下においては,相違点2-1及び相違点2-
2を併せて本件発明2の容易想到性を検討することとする。
(3)甲2発明では,脚保持部材は,ふくらはぎ保持部4と足置き部5の2つで
あり,ふくらはぎ保持部4と,これと隣り合う足置き部5の離隔距離は脚の
長さ方向に変更可能であるが,ふくらはぎ保持部4は座部2に固定されてお
り,移動可能ではない。
したがって,甲2発明において,相違点2-1及び相違点2-2に係る構
成を備えるようにするには,脚載せ部を,ふくらはぎ保持部4,足置き部5
に加えて,更にその中間に少なくとも1つの脚保持部材を脚の長さ方向に並
べるようにして設け,最先端の脚保持部材である足置き部5が,足の側部に
対向させる足側面と,左右方向における中央部に区画壁と,前記足側面に設
けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと,を有し,ふ
くらはぎ保持部4を含む他の脚保持部材が,それぞれ脚の側部に対向させる
脚側面と,前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施
すエアセルと,を有するように構成した上で,隣り合う脚保持部材の各離隔
距離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能であり,かつ,最先端の脚保持部材
に設けられたエアセルと他の脚保持部材に設けられたエアセルとの距離が変
化するように,脚の長さ方向に伸縮可能であるように構成しなければならな
い。
(4)そして,甲2発明において,脚載せ部を,隣り合う脚保持部材の各離隔距
離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能であり,かつ,最先端の脚保持部材に
設けられたエアセルと他の脚保持部材に設けられたエアセルとの距離が変化
するように,脚の長さ方向に伸縮可能であるように構成することが,当業者
において容易に想到し得たとは認められないことは,前記3(4)記載のとおり
である。
(5)まとめ
以上のとおり,甲2発明において,相違点2-1及び相違点2-2に係る
本件発明2の構成を備えるようにすることは,当業者において容易に想到し
得たものとは認められないから,本件発明2は甲2発明,甲6-2発明及び
周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると
は認められない。
したがって,本件発明2の進歩性に係る本件審決の判断に誤りはなく,取
消事由2に係る原告の主張は理由がない。
5取消事由3(本件発明3及び4の進歩性判断の誤り)について
本件発明3は,本件発明1又は2の請求項の記載を引用する発明であり,本
件発明4は,本件発明2の請求項の記載を引用する発明である。
原告は,本件発明1及び2には進歩性は認められないから,本件審決におけ
る本件発明1及び2の進歩性の判断は誤りであり,本件審決における本件発明
3及び4の進歩性の判断も誤りである旨主張する。
しかしながら,本件審決における本件発明1及び2の進歩性の判断に誤りが
ないことは,前記3及び4記載のとおりであり,原告の取消事由3に係る主張
は理由がない。
6結論
以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求
を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官富田善範
裁判官大鷹一郎
裁判官柵木澄子
(別紙1)
本件明細書図面目録
【図1】【図2】
【図3】【図4】
【図5】【図6】
【図7】【図8】
【図9】【図10】
(別紙2)
刊行物2図面目録
【図1】【図2】
【図3】【図4】
【図5】【図9】
【図10】
(別紙3)
刊行物3図面目録
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
(別紙4)
周知例図面目録
1刊行物1(甲1)
【図1】【図2】
【図3】【図4】
【図13】
【図14】【図15】
【図16】
2甲4
【図2】【図3】
【図4】
3甲5
【図1】【図2】
【図6】【図9】
【図10】【図11】
【図12】【図13】
4甲13
【図2】
5甲14
【図2】【図5】
6甲15
【図4】
7甲16
【図1】【図2】
【図3】【図4】
【図5】【図7】
8甲17
【図1】【図3】

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