弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
被告と原告との間に原告を従業員とする雇傭契約関係が存在することを確認する。
訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
第一 申立
1 請求の趣旨(原告の申立)
主文第一、二項と同旨の判決。
2 被告の申立
一、原告の請求を棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
との判決。
第二 主張と答弁
1 請求の原因(原告の主張)
一、被告は、肩書地に本店事務所を置き、大阪、京都、淡路、埼玉県戸田橋など全
国各地に工場五〇、営業所九などを設け、主として牛乳、乳製品の製造販売を目的
とする株式会社であり、原告は昭和三二年三月高校卒業後直ちに被告会社戸田橋工
場に臨時工として雇傭され、ついで同三三年一〇月本工に採用され、右戸田橋工場
製造課製造係試験室に勤務していた従業員であるが、その傍ら被告会社の従業員を
もつて組織する明治乳業労働組合に加入し、同三五年同組合戸田橋支部教宣部員と
なり、同三六年より引き続き右支部執行委員に選出され、その地位にあつたもので
ある。
二、被告は、昭和三八年八月一〇日原告に対し、原告が同年七月二四日午後三時三
〇分頃その勤務場所である試験室で同僚数名の面前において右二四日付および翌二
五日付の試験室所属従業員に対する勤務命令簿を同所に備えつけてあつたアルコー
ルランプの火焔で焼却したことなどを理由として、右事実は就業規則第五九条第一
号の「会社の諸規定或は労働協約に違反したとき。」、同条第三号の「正当な理由
なくして上司の命令に従わないとき」、同第一七号の「その他懲戒をする必要を認
めたとき」にそれぞれ該当するので、同規則第六〇条第六号を適用して、原告を懲
戒解雇に処する旨の意思表示をした。
三、しかしながら、被告のした前記懲戒解雇の意思表示は以下の理由によつて無効
である。
(1) 原告が前記のごとく勤務命令簿を焼却したことは、被告主張にかかる就業
規則所定の懲戒事由のいずれにも該当しないものである。
(2) 仮に、原告の右勤務命令簿焼却の事実が被告主張にかかる就業規則所定の
懲戒事由に該当するとしても、その当時被告と原告ら個々の従業員との間にはまだ
残業に関する個別的な契約が成立していなかつたため、従業員には右命令簿で指示
する残業命令に従う義務がなかつたこと、被告が勤務命令簿など一連の新制度を一
方的に実施しようとする挑発的行為に出たこと、勤務命令簿制度が実施されて以
来、同命令簿がしばしば紛失、汚損、破棄されており、ひとり原告だけがこれを焼
却毀損したのではないこと、被告が突如として本件懲戒解雇の処分をしたことなど
諸般の事情に照らすと、被告の主張する懲戒事由たる原告の行為は違法性が少な
く、これに対して懲戒解雇の処分をしたことは重きに失するから、懲戒権の濫用で
ある。
(3) 仮に懲戒権の濫用でないとしても、原告は、明治乳業労働組合の組合員お
よび役員として職場で正当な組合活動に専念し、とくにその役員として被告会社と
の団体交渉に臨んだ際には積極的な発言をすることが多かつたため、被告はつとに
原告の言動に注目し、これを嫌悪していたところ、たまたま前記勤務命令簿焼却の
事実があつたことを奇貨とし、原告を被告会社の職場から排除するため、本件懲戒
解雇をしたものであるから、該解雇はいわゆる不当労働行為である。
四、右にのべたごとく本件懲戒解雇はいずれにしても無効であり、原告と被告との
間には引き続き雇傭契約関係が存在するにもかかわらず、被告はこれを争つてい
る。
 よつて、原告は被告との間に原告を従業員とする雇傭契約関係が存在することの
確認を求めるため本訴に及んだ。
2 請求の原因に対する答弁
一、請求の原因第一、二項の事実は認める。
二、同第三項の事実は否認する。
三、同第四項は争う。
3 抗弁(被告の主張)
一、従来、被告会社戸田橋工場における従業員の勤務形態は、出勤日、公休日、代
休日、夜勤日についてはあらかじめ前月中に各職場ごとに作成公表された一か月分
の「公休表」にもとづいて行われ、早出、残業については公休表にはあらかじめ記
載されず、早出は前日に残業は当日午後二時頃までにそれぞれ口頭で指示され、そ
の結果を「勤務日報」に記載する方法によつてされていた。もつとも、同工場製造
課工務係の冷凍機、ボイラー、工作の三班および同製造係の試験、受乳、ヨーグル
ト(培養)の三班(以下これらを「試験等六班」という)では早出、残業について
も一か月分を事前に「公休表」に記載してする方法によつてされていた。
 しかるに、戸田橋工場では昭和三八年七月六日から、(イ)従前の「公休表」に
製造課工務係の三班および同課製造係の前記三班におけると同じく他の職場でも従
業員に対する早出、残業命令を事前に書面に記載することにしたが、早出、残業に
ついては一か月分の計画を立てることが困難なところから、一〇日分をそれぞれ二
日前に記載して指示することとし、文書の表題も「勤務割表」と改めた。また
(ロ)従業員が右による勤務日および勤務時の変更を希望するときは、前日の正午
までに「勤務変更願」を上司に提出して許可を受けるものとした。さらに、(ハ)
前記「勤務日報」の表題を「勤務命令簿」と改め、右勤務割表と勤務変更願にもと
づいて勤務命令簿を作成し、前日午後二時頃までに掲示することにより、翌日の早
出、残業およびその職場などを各従業員に指示するように改め、これを実施するこ
ととした。すなわち、新しい制度によれば、勤務割表によつて残業を告知し、これ
を勤務変更願によつて修正したところによつて勤務命令簿を作成し、それによつて
各従業員の具体的勤務形態が最終的に決められることになるのである。しかして、
戸田橋工場では右のようにして変更した新制度を実施するにあたり、その前後数回
にわたつてその趣旨、目的、内容などを掲示したほか、工場長、製造課長などが職
場ごとに同様な説明を行い、全従業員にその趣旨を周知徹底させるように努めた。
二、(イ)被告会社戸田橋工場が従業員の勤務形態を右のごとく文書伝達方式に改
めたのは、被告会社本店管理部が昭和三七年一〇月戸田橋工場につき実施した業務
監査の結果、同工場の時間外勤務の管理が不備であるためこれを改善するよう指摘
されたりなどしたためであり、併せて業務管理の適正化と従業員の私生活の尊重お
よび時間外勤務負担を均等化することによつて、正確にして円滑な作業の遂行と秩
序ある就業体制を実現しようとする趣旨に出たものである。また勤務命令簿はその
記載によつて賃金計算、時間外労働の時間計算など会社の労務管理上必要な書類で
ある。(ロ)しかるに、新制度の実施後、勤務割表および勤務命令簿の滅失、隠
匿、毀損などの行為が少なくなかつたため、戸田橋工場では再三にわたつてこれが
厳重な制止、警告を発したのであつた。
三、(イ)原告はかねてより戸田橋工場と組合戸田橋支部との間に時間外協定が成
立していても、会社の指示する時間外勤務命令に従うかどうかは従業員の自由であ
り、これに応ずる必要はないという態度を示しており、また勤務命令簿などの新制
度が実施された後も、この態度を変えず、昭和三八年七月九日および同年同月一二
日の両日、残業を命ぜられたにもかかわらずこれを無視して従わず、勤務しない理
由を説明せず、あまつさえ勤務変更願もその必要なしとして提出しないで退社し
た。(ロ)ついで原告は昭和三八年七月二四日勤務時間中の午後三時三〇分頃その
勤務場所である試験室において同僚数名の面前で右二四日付および翌二五日付の試
験室所属従業員に対する勤務命令簿を「こんなものは必要ないものだ、毎日燃やし
てしまえ」などと述べながら、同所に備えつけてあつたアルコールランプの火焔で
焼却した。しかして原告の右焼却の所為は就業規則第五九条第一号、第三号および
第一七号に所定の懲戒事由にそれぞれ該当する。(ハ)前記(ロ)の事実を知つた
原告の上司であるA主任が翌二五日原告に対しその事実と理由を質すとともに反省
を促したところ、「必要ないものだからやつた」、「見解の違いは立場の相違だ」
などと反駁的な言辞を繰り返すのみで反省の色がまつたく見られず、(ニ)さらに
原告は右二五日の残業をその前日にA主任より命ぜられたにもかかわらず、前同様
勤務変更願を提出しないのはもとよりその理由を説明せず、上司の制止に応じない
で無断で退社してしまつた。
四、原告の前項(ロ)の勤務命令簿焼却行為は、前示のとおり勤務割表および勤務
命令簿の滅失、隠匿、毀損などの行為に対する再三の厳重な制止、警告の直後にあ
えて行われたものであり、その態様は煽動的であつて、行為自体模倣性、伝染性を
有する極めて悪質なものであり、職場規律を乱すことはもとより、上司の命令に対
する公然かつ積極的な反抗行為にほかならず、これをそのまま放任するときは会社
全体の職場秩序の崩壊をきたし、ひいては会社業務の運営に重大な支障をきたすこ
とにもなる。しかも原告は前項(イ)および(ニ)で述べたとおり、残業の指示を
受けたのに所定の勤務変更願を提出せず勤務を拒否して退社し、その勤務態度が不
良であるうえ、前記焼却行為に出た後原告には反省改悛の情もなく、将来改善の余
地があるとも認められない。そこで以上に述べた各段の事情を総合勘案するとき
は、原告をこのまま企業に存置しては企業の経営秩序を乱し、生産性を阻害するこ
とが明白であると判断したので、就業規則第六〇条第六号を適用して原告を懲戒解
雇の処分に付したのである。
4 抗弁に対する答弁
一、抗弁第一項のうち、戸田橋工場の従業員が従来早出は前日に残業は当日午后二
時頃までにそれぞれ口頭で指示されていたとの点を除き、その余の事実は認める。
戸田橋工場では従前、残業などは当日早朝より退出時までに職場において各従業員
が現場長と自発的に相互に協議して、各従業員の勤務場所、勤務時などを自主的に
協定し、現場長よりその旨を上司に報告し、右協定にしたがつて実施した結果を勤
務終了後退出時にそれぞれ勤務日報に記載していた。また、工務係、製造係の各班
では公休表に便宜上事前に自発的に残業などを記載しただけであつて、被告会社の
指示命令にしたがつてしたものではなく、そのため公休表ばかりでなく時にはカレ
ンダーなどに記入することによりこれに代えていたこともある。
二、同第二項のうち、(イ)の事実は不知。(ロ)の事実は認める。被告会社は戸
田橋工場における従業員の勤務形態を、従来からの職場慣行、各従業員および組合
戸田橋支部の意向を無視し、まつたく一方的に勤務命令簿などの新制度を導入し、
これを強行しようと図つた。そのため組合戸田橋支部は被告会社に対し、右措置を
とることに強く反対し、従前の慣行を維持するよう強く申入れるとともに、これが
解決のため被告会社との間に連日のように交渉をもち努力を重ねてきた。しかるに
被告会社はこのような組合支部の努力を無視し、また労働基準法に定める団体交渉
義務をも省みず、一挙に新制度をとり入れ、原告ら従業員を職制の圧力をもつて拘
束し、これに服従させようとした。そのため、原告の所属する試験室ではもとよ
り、その他の各職場では各従業員が勤務命令簿などの導入に反対してこれに服そう
とせず、依然として従来どおりの慣行を守り、各従業員と現場長との間の職場にお
ける協議の結果で割当を決め、残業を実施していた。そのため被告会社が折角勤務
命令簿を設けたにもかかわらず、現実には何の役にも立たず、有名無実の存在であ
つた。したがつて、原告がこれを無用のものとして焼却したとしても、これがため
会社業務には何らの支障をも来たしたわけではない。そして時間外勤務その他業務
の遂行はその後も従来の慣行にしたがつて行われ、組合支部も依然として勤務命令
簿制度に反対の態度をとつている。
三、同第三項のうち、(イ)の原告が昭和三八年七月九日および同年同月一二日の
両日の残業勤務をしなかつたことは認めるが、その余の事実は否認する。(ロ)の
事実は認める。(ハ)は争う。(ニ)原告が上司のA主任から被告主張のごとき内
容の質問をされたことは認めるが、それは単に通りがかりに声をかけられただけの
ことである。原告が昭和三八年七月二五日残業勤務をしなかつたことは認めるが、
その際には上司のB副主任に理由を述べて退社した。その他の事実は否認する。
四、同第四項は争う。
第三 証拠関係(省略)
       理   由
一、被告が肩書地に本店事務所を置き、大阪、京都、淡路、埼玉県戸田橋など全国
各地に工場五〇、営業所九などを設け、主として牛乳、乳製品の製造販売を目的と
する株式会社であり、原告が昭和三二年三月高校卒業後直ちに被告会社戸田橋工場
に臨時工として雇傭され、ついで同三三年一〇月本工に採用され、右戸田橋工場製
造課製造係試験室に勤務していた従業員であつて、その傍ら被告会社の従業員をも
つて組織する明治乳業労働組合に加入し、同三五年同組合戸田橋支部教宣部員とな
り、同三六年より引き続き右支部執行委員に選出されその地位にあつたこと、被告
会社が昭和三八年八月一〇日原告に対し、原告が同年七月二四日午後三時三〇分頃
その勤務場所である試験室で同僚数名の面前において右二四日付および翌二五日付
の試験室所属従業員に対する勤務命令簿を同所に備えつけてあつたアルコールラン
プの火焔で焼却したことなどを理由として、右の事実は就業規則第五九条第一号の
「会社の諸規定或は労働協約に違反したとき」、同条第三号の「正当な理由なくし
て上司の命令に従わないとき」、同第一七号の「その他懲戒をする必要を認めたと
き」にそれぞれ該当するので、同規則第六〇条第六号を適用して、原告を懲戒解雇
に処する旨の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。
二、原告は被告のした前記懲戒解雇の意思表示はその前提となる懲戒事由を欠く無
効なものであると主張するところ、被告は該意思表示は原告において前記就業規則
第五九条第一号、第三号および第一七号に該当する行為があつたためにしたもので
あると抗争するので、まずこれについて判断する。
1 従来、被告会社戸田橋工場における従業員の勤務形態は、出勤日、公休日、代
休日、夜勤日については予かじめ前月中に各職場ごとに作成公表された一か月分の
「公休表」にもとづいて行われ、早出、残業についてはその結果を「勤務日報」に
記載する方法によつて行われていたが、同工場製造課の試験等六班では早出、残業
についても一か月分を事前に「公休表」に記載する方法によつてされていたことは
当事者間に争いがない。
 証人Cの証言によつて成立を認めうる甲第一三号証の一ないし二六、証人Dの証
言によつて成立を認めうる甲第一四号証の一ないし九、証人Eの証言によつて成立
を認めうる甲第一五号証の一ないし二四、アンダーライン部分を除くその余の部分
の成立に争いのない甲第一六号証の一ないし五、成立に争いのない乙第一二号証、
第一三号証の一、二、第一四、第一五号証、証人F(第一回)の証言によつて成立
を認めうる乙第二一号証の一ないし六、第二二号証の一、二および証人G、H、
D、C、E、I、J、K、L、M、N、Oの各証言ならびに証人P、Q、F(第
一、二回)、Rの各証言の一部を総合すると、次に認定する事実が認められ、該認
定に反する証人P、Q、F(第一、二回)、Rの各証言部分はいずれも措信でき
ず、他にこれを覆すに足る証拠はない。
 被告会社戸田橋工場における牛乳、乳製品などの製造計画の基本的大綱は本店生
産部より毎期および毎月戸田橋工場に示達され、同工場では製造課の幹部が中心と
なつて右示達にしたがつて更に詳細な製造計画を立て、その実施に必要とする人員
の確保、夜勤、早出、残業の計画を立て、他方同工場長と組合戸田橋支部長との間
で前月末頃までに翌月分の組合員たる従業員の時間外勤務協定の折衝を進め、その
締結をまつたうえで製造作業を遂行してきた。かようにして各月の作業所要人員な
どの計画が確定すると、製造課長より順次同課製造係長、主任、副主任、班長(以
上の者が不在の時はその代理者、以下これに同じ)の職制に下達され、他方現場事
務所において各職場ごとに所属従業員の氏名とその公休日、年休日、代休日、夜勤
日を記載作成した一か月分の「公休表」(職場によつてはこれを「勤務表」と称し
たこともある。)が班長のもとに届けられてきた。また各勤務日における早出、残
業などについては、その必要人員、勤務場所、勤務時間があらかじめ職制を通じて
各職場の班長に口頭で下達されていた。もつとも前記試験等六班については、早
出、残業が恒常的に行われていたため、前記争いのない事実のとおり公休表には右
記載事項のほか早出残業の記載がなされていたが、右記載はおおよその予定であつ
て、各勤務日の早出、残業の具体的な決定は、班長において現実に作業に従事する
従業員との間で協議し、早出については遅くとも前日の勤務終了時までに、残業に
ついては当日の勤務開始時より終了時までの間に、早出、残業などの作業に従事す
る者を確定し、あるいはいつたん確定した者を同じく協議によつて他の者に変更す
るなどして調整し、その結果を班長より上司に報告し、右の定めにしたがつて作業
に従事した結果を勤務終了後退出時にそれぞれ「勤務日報」に記載し、これを上司
に提出し、それが賃金計算の基礎資料にもなるものとされた。そして右のようにし
て班長から早出、残業にあたる者が確定した旨の報告を受けた副主任以上の職制が
その内容を変更したり、調整をしたりなどすることはほとんどなく、そのため右協
議により実質的に早出、残業などの作業に従事する者が決定し、かつこれによつて
作業の遂行に著しい支障を生ずることもなかつた。以上のごとき状況は被告会社戸
田橋工場製造課の試験等六班およびその他の各班でも同様であつたのみならず、他
の課係でもほぼ同様に行われていた。
 右に認定したところによると、被告会社戸田橋工場の一般的基本的な製造計画は
本店生産部および右戸田橋工場関係の首脳部が立てこれを職制を通じて各職場に下
達されるのであるが、作業現場においては最末端の職制たる班長と各従業員との間
の協議にもとづいて現実に早出、残業などに従事する者が確定し、それによつて作
業が行われており、それが長期間にわたり職場の慣行となつていたということがで
きる。
2 しかるところ、被告会社戸田橋工場では昭和三八年七月六日から、(イ)従前
の「公休表」の表題を「勤務割表」と改め、公休日、年休日、代休日、夜勤日のほ
か早出、残業命令を事前に右書面に記載することにしたが、早出、残業については
一か月分の計画を立てることが困難なところから、一〇日分をそれぞれ二日前に記
載しこれを各職場に配付して従業員に対してそれぞれの勤務日および勤務時間を指
示することに改めたこと、また(ロ)従業員が右による勤務日および勤務時の変更
を希望するときは、前日の正午までに「勤務変更願」を上司に提出し許可を受ける
べきものとしたこと、さらに(ハ)従前の「勤務日報」の表題を「勤務命令簿」と
改め、右勤務割表と勤務変更願にもとづいて勤務命令簿を作成し、前日午後二時ま
でに掲示することにより、翌日の早出、残業およびその職場などを各従業員に指示
するように改め、これを実施することにしたこと、すなわち新しい制度によれば、
勤務割表によつて残業を告知し、これを勤務変更願によつて修正したところによつ
て勤務命令簿を作成し、それによつて各従業員の具体的勤務形態が最終的に決めら
れるものとなつたこと、被告会社戸田橋工場では右のようにして変更した新制度を
実施するにあたり、その前後数日にわたつてその趣旨、目的、内容などを掲示した
ほか、工場長、製造課長などが職場ごとに同様な説明を行い、全従業員にその趣旨
を周知徹底させるように努めたことは、いずれも当事者間に争いがない。
 前掲甲第一六号証の一ないし五、証人S(第一回)の証言によつて成立を認めう
る甲第一号証、成立に争いのない甲第六号証の一、アンダーライン部分を除くその
余の部分の成立に争いのない甲第六号証の二、前掲乙第一二号証、第一三号証の
一、二、第二一号証の一ないし六、第二二号証の一、二および証人F(第一、二
回)、T、S(第一、二回)、A(第一、二回)、U、H、D、J、L、Q、Vの
各証言を総合すると、次の事実が認められ、これを左右するに足る証拠はない。
 被告会社戸田橋工場における早出、残業に関する右制度改正前の従業員の勤務形
態および実情は前示のとおりであり、それによつて作業の進行に格別の支障を生ず
ることもなかつたが、被告会社本店営業部が昭和三七年一〇月戸田橋工場につき実
施した業務監査の結果、同工場の時間外勤務の管理が不備であるためこれを改善す
るよう指摘され、ついで同三八年一月の全国工場長会議の席上およびその後の社長
通達によつても同様な指示がなされた。他方昭和三八年に入つてから間もない頃か
ら組合においてとくに時間外勤務時間短縮の方針を強化したため、被告会社戸田橋
工場でも同年三月の時間外勤務協定の折衝にあたり組合支部では一か月一人最高限
四五時間の案を出したが、被告会社では右四五時間をもつて業務を支障なく運営す
るには各従業員の時間外勤務を均等化する必要があり、そのため右協定締結の条件
として、従業員は各人時間外勤務についての会社の割当に従う義務がある旨を主張
した。これに対して、組合支部においてはたとえ工場と支部との間に右時間外勤務
協定が成立しても、従業員が現実に時間外勤務を行うか否かは各自の自由意思に委
ねられているとの立場をとつていたので、被告会社の右主張に反撥し時間外勤務協
定の締結が著るしく困難となり、被告会社は余儀なく組合支部と一日一日の時間外
勤務協定を締結した時期もあつた。さらに組合支部は時間外勤務に関する右の考え
方に立つて、所属組合員をそのように指導したため、組合所属の従業員の多数はこ
れに従い、残業要員として予定していた者が私用その他により上司に断り、または
何らの届出もしないままに退社してしまつたりなどする事例がしばしば生じ、その
ため時に作業計画を円滑に実施できなくなり、工場では急遽アルバイト学生などを
集め急場をしのぐといつたような事態までも生じた。昭和三八年初頭戸田橋工場に
工場長として着任したSは以上のような戸田橋工場における時間外勤務の実態をみ
て、かつ労働基準法(以下「労基法」という)に定めるいわゆる三六協定があり就
業規則にもその旨の定めがある場合には、右協定に定める時間の限度内において会
社は従業員に時間外勤務を命ずる権限があり、また従業員はこれに従う義務がある
との見解に立つて、右の実態を急速に改善する必要があるものと考え、業務管理の
適正化と従業員の私生活の尊重および時間外勤務負担を均等化することによつて、
正確にして円滑な作業の遂行と秩序ある職場体制の実現を図るため、従業員の作業
実態などを調査し、さらに本店人事部とも連絡をとつたうえ、前示のとおり従業員
の勤務形態を主として文書をもつてする方式に変更する新制度を採用することにし
た。
3 証人Wの証言によつて成立を認めうる甲第二号証、アンダーライン部分を除く
その余の部分の成立に争いのない甲第七、第八号証、証人Eの証言によつて成立を
認めうる甲第一五号証の二五ないし三一、証人Qの証言によつて成立を認めうる甲
第一七号証の一、二、前掲乙第一四、第一五号証および証人G、H、D、E、P、
W、K、L、Q、V、M、X、F(第一、二回)、S(第一、二回)、N、Oの各
証言ならびに原告本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められ、これを覆す
に足る証拠はない。
 被告会社戸田橋工場では前述のごとき動機および趣旨のもとに同工場に勤務する
従業員の勤務形態に関して前記の新制度を昭和三八年七月六日から実施することに
なつたが、工場側では右新制度は従前の労働条件に何らの変更をきたすものではな
く、たんに業務管理上の技術的改善にすぎないものであるため、組合支部との協議
ないしその同意を必要とするものでないとの立場をとり、組合支部に対してはこれ
が実施直前の同年六月三〇日頃労使双方の代表者をもつて構成する工場協議会が開
催された際に初めて書面を中心とする新制度を導入する旨を口頭で発表し、ついで
翌七月一日に同趣旨の掲示をした。これに対して、組合支部は三六協定が成立して
いても各従業員が時間外勤務をするかしないかはその自由意思によるべきものであ
るとの前示見解を堅持し、かつ、工場側の態度は従前からの職場慣行、従業員およ
び組合支部の意向をまつたく無視する不当なものであるとして強く反対し、また現
場の従業員も事務部門など極く一部を除き、大部分の者は、従来の勤務形態とくに
早出、残業などは班長と従業員との間の協議によつて実質上決定されていたにもか
かわらず、新制度では早出、残業勤務を命ずる勤務命令簿によつて命令されるもの
とされたことなどに強い抵抗を感じ、あるいは文書を中心とする新制度とりわけ早
出、残業勤務を変更する場合には勤務変更願を前日正午までに提出し、かつ代替者
を定めたうえ上司の許可を受けなければならないものとする点に甚だしい煩雑さを
感じ新制度の導入に反対の態度をとつた。このような状況下で組合支部は工場側に
対し新制度導入に反対し、従前どおりの取扱を維持するよう申し入れたが、工場側
は先の態度を維持してこれに取りあわず、新制度は会社所定の手続であり、問題が
あれば組合本部を通じ被告会社本店と折衝してほしいという態度をとり、昭和三八
年七月六日から新制度実施に踏み切つた。しかしながら、右のごとく職場における
大部分の従業員が新制度に反対であつたため、末端の職場では容易に新制度による
方式を実行しようとせず、旧制度のままの取り扱いを続けたのみならず、同年七月
中は新たに工場が配布した勤務命令簿などを隠匿、汚損、紛失する事例が続出し、
勤務命令簿を提出すべき班長がこれに代るメモを作成して上司に差し出したりなど
したこともあつた。
 なお、かように新制度の実施後、勤務命令簿などの滅失、隠匿、汚損などの事例
が少なからずみられたため、戸田橋工場では再三にわたつてこれを厳重に制止し警
告を発したことは当事者間に争いがない。
4 原告が昭和三八年七月二四日勤務時間中の午後三時三〇分頃その勤務場所であ
る試験室において同僚数名の面前で右二四日および翌二五日付の試験室所属従業員
に対する勤務命令簿を、「こんなものは必要ないものだ、毎日焼やしてしまえ」な
どと述べながら、同所に備えつけてあつたアルコールランプの火焔で焼却したこと
は当事者間に争いがない。
5 被告会社は、原告の前示勤務命令簿焼却行為は就業規則第五九条第一号、第三
号および第一七号に該当すると主張する。
(1) そこでまずその前提として右勤務命令簿の法的性格について検討してみる
ことにする。
 右勤務命令簿は、被告会社戸田橋工場が組合支部との間に三六協定を締結し所定
の手続を経由した後、同支部所属の組合員その他の従業員に対し早出、残業などの
時間外勤務を命令する場合に、その日時および場所などを記載した被告会社の文書
であることは前示のとおりである。そこで被告会社がその従業員に対し、果たして
右のごとき時間外勤務を命ずる権限を有するか否かを考えてみる必要がある。使用
者が労働者に対し時間外勤務を命ずるためには三六協定を締結し所定の手続をとら
ねばならぬことは労基法によつて明らかであるが、右の手続を履践することは単に
使用者が労働者に基準労働時間を超過する労働をさせても労基法違反にならないと
いう公法上の効果を生ずるにとどまるため、使用者が労働者に時間外勤務を命令
し、労働者がこれに従うべき私法上の効果(労働義務)を生ずるためには、他の要
件を必要とする。しかして、他の要件として、労働契約、就業規則で労働者が時間
外勤務を行う義務のあることが明確にされている場合あるいは時間外勤務の協定が
労働協約の形式で取りきめられている場合があげられ、これを積極に解する立場も
ある。しかしながら、労基法に定める基準労働時間を超えて時間外勤務を行う義務
を認める労働契約、就業規則は、三六協定のもつ前示公法上の効果を超えて個々の
労働者に時間外勤務に関する具体的義務を定めるものであるならばその限度におい
て労基法に違反して無効であり、また労基法所定の最低労働条件以下の労働条件を
労働協約に定めることは、協約の本質に背反するばかりでなく、前示の限度におい
て労基法違反として無効であるといわねばならない。けだし、労働者は、労基法に
定めるところに従つて従属労働から解放される自由を享受する利益を保障されなけ
ればならないからである。このように時間外勤務に関して三六協定、労働契約、就
業規則、労働協約などいかなる形式をもつて取り決めをしてみても労働者にその義
務を生ずることがないが、ただ三六協定成立後、使用者から具体的な日時、場所な
どを指定して時間外勤務に服して貰いたいとの申込みがあつた場合に、個々の労働
者が自由な意思によつて個別的に明示もしくは黙示の合意をしたときは、それによ
つて労働者の利益が害されることがないから、その場合に限り、私法上の労働義務
を生ずるものと解するのが相当である。
 本件についてこれをみるに、被告会社が戸田橋工場の従業員に対し時間外勤務を
命令しうるためには、組合支部との間に三六協定を締結し所定の手続をした後、従
業員に対し前示のごとき申込をなし合意を得ることを要するのであるから、右の手
続を充足しないままに従業員に対し時間外勤務を命ずることは許されず、したがつ
て、その手続を充足しないで被告会社の作成した勤務命令簿は法的には被告会社か
ら当該従業員に対する時間外勤務に関する申込とみる以外には格別の意味をもつも
のではなく、従業員は同命令簿の記載内容にしたがう時間外勤務をなすべき義務を
課せられることはないものというべきである。
(2) よつて進んで原告の勤務命令簿焼却行為が被告主張にかかる就業規則の関
係条項に該当するか否かについて考察する。
(イ) 就業規則第五九条第一号は、「会社の諸規定或は労働協約に違反したと
き」を懲戒事由として規定するが、勤務命令簿の法的性格が上述のとおりであり、
また原告が当該勤務命令簿に記載された時間外勤務に服すべき旨の合意をしていな
いことは弁論の全趣旨に照らし明らかである。そうすると、原告が右命令簿を焼却
した物理的行為に対する評価はしばらく措き(後掲(ハ)参照)、原告は右命令簿
によつて被告会社に対し時間外勤務命令に服すべき義務を有しないのであるから、
原告には会社の諸規定あるいは労働協約に違反するいわれがなく、右就業規則の規
定に該当するものではない。
(ロ) 就業規則第五九条第三号は、「正当な理由なくして上司の命令に従わない
とき」を懲戒事由として規定しているが、前段で述べたとおり原告には勤務命令簿
に記載の被告会社よりの命令に従うべき義務を有しないのであるから、原告の前示
所為は同じく右規定に該当することがない。
(ハ) 就業規則第五九条第一七号は、「その他懲戒する必要を認めたとき」を懲
戒事由として規定しているが、右は同じく懲戒事由を規定する就業規則第五九条第
一号ないし第一六号に列挙する事項に直接該当しないとしても、これに準ずる程度
の行為を懲戒の対象とする趣旨のものと解される。ところで被告会社の従業員が勤
務命令簿その他会社の物品を焼却することをもつて直接懲戒の対象とする旨の規定
は見当らないが、前示乙第一号証によると、就業規則第九条第九号では「無断で会
社の物品を持出したり、会社内で私物を作つたりしないこと」が要請され、これに
対応して同第五九条第四号が「会社の金品を私したり、会社内において私物を作つ
たとき」を懲戒事由としていることが認められる。右就業規則第九条第九号、第五
九条第四号は要するに、会社の所有に属する物品その他の財産に対する侵害を禁止
し、これに反する行為が懲戒事由になるものとする趣旨にほかならないが、原告の
前示勤務命令簿焼却行為は会社の文書を滅失毀損するものにはほかならず、会社所
有物件に対する侵害という点において会社の物品を持ち出す行為と同等に評価する
のが相当であり、その意味において右行為は就業規則第五九条第一七号に該当する
といわねばならない。
6 右に説示したとおり、原告の前示勤務命令簿焼却行為は被告主張の就業規則第
五九条第一号、第三号には該当しないが、同条第一七号に所定の懲戒事由に該当す
るから、この点に関する被告の抗弁は理由がある。
三、次に原告は、前示勤務命令簿焼却行為が懲戒事由に該当するとしても、該所為
を理由として原告を懲戒解雇の処分にしたことは重きに失し、懲戒権の濫用である
と主張するので、これを審究する。
1 前示乙第一号証によると、就業規則第六〇条は被告会社の行う懲戒処分として
は、戒告、譴責、出勤停止、賠償、懲戒解雇およびその他必要な処分の七種があ
り、その二つ以上を併科しうるものと定めていることが認められる。かように数個
の懲戒処分が段階的に規定されている場合に、そのいずれを選択するかは懲戒権者
たる使用者の完全な自由裁量に委ねられているのではなく、懲戒原因となる行為の
動機、態様その他諸般の事情を勘案し、懲戒事由と懲戒処分との間に社会観念上相
当とみられる均衡の存在することを必要とし、とりわけ懲戒解雇は労働者を企業よ
り一方的に排除する極刑ともいうべき処分であるからこれが許されるためには、当
該労働者をそれ以下の懲戒処分に付する余地がない場合であることを要し、使用者
がその裁量を誤り均衡を失する懲戒処分をしたときは、権利の濫用として無効であ
ると解するのが相当である。
 これを本件についてみるに、原告が前記認定のごとき態様のもとに会社の文書た
る勤務命令簿を焼却したことは甚だ軽率にして穏当を欠く所為であつたといわざる
を得ない。しかしながら、他面、(a)勤務命令簿の法的性格が前叙のごときもの
であつて、同命令簿の記載内容はこれに合意しない従業員に対しては何らの労働義
務を課するものではない。(b)しかも被告会社戸田橋工場が勤務命令簿その他の
新制度を導入するにあたつては、該制度は従前の労働条件に何らの変更を与えるも
のではなく、たんに業務管理上の技術的改善にすぎないため、組合との協議ないし
同意を必要としないとする立場をとり、組合支部に対しては実施直前の昭和三八年
六月三〇日頃開催の工場協議会の席上で初めてこれを発表し、翌七月一日には同趣
旨の掲示を出し同月六日から実施したが、その実施の前後を通じ組合支部が反対の
意思を表明したけれども、工場側は右の立場を堅持してこれに取りあわなかつたこ
とは前に認定したとおりである。ところで、成立に争いのない乙第二号証、存在な
らびに成立ともに争いのない甲第一二号証によると、被告会社と明治乳業労働組合
との間で昭和三七年三月に締結された労働協約第二八条には「組合員の労働条件に
関する協議事項」、「その他会社組合双方が必要と認めた事項」などを経営協議会
の付議事項とするものと定め、また同年同月一三日右当事者間に締結した覚書には
右の規定を受け、「組合員の労働条件に著るしい影響を及ぼすと予測される施策に
関する協議も含まれる」旨を確認していることが認められる。してみれば、被告会
社戸田橋工場において従来長期間にわたつて職場慣行として行われてきた従業員の
勤務形態に大幅な変更を生ずる勤務命令簿などの新制度を導入することは、組合員
の労働条件に著るしい影響を及ぼすと予測される施策にあたるものとみるのが相当
であるから、これが導入に際しては、まず被告会社戸田橋工場における労使折衝の
場である工場協議会に提案し、組合支部との間で十分な協議をつくしたうえで実施
すべきものであつたというべきである。しかるに、被告会社戸田橋工場が右の手続
をとらず、急速に新制度の導入を実施したことは前示労働協約に違反し、労使間の
信義則に反する不当な措置というべく、組合支部が右のごとき被告会社戸田橋工場
の態度に強く反撥し、新制度撤回、旧制度維持の協議を申し入れ、かつ所属組合員
に対しそのような指導をしたのは極めて当然なことであつたといわねばならない。
 以上のごとき事情のもとにおいて、勤務命令簿その他の新制度の実施に強く反対
する組合支部の執行委員たる地位にある原告が、勤務命令簿無視の態度をとり、こ
れを焼却したことには会社側の不当な措置に大半の責任があるのであるから、前示
勤務命令簿焼却の事実を原因として、被告会社が原告を懲戒解雇にしたことは、社
会観念上相当とみられる均衡を失するものというべきである。
2 被告は、右焼却行為のほかに、原告が残業命令に従わず、かつ所定の勤務変更
願を提出することなく無断で退社し、その勤務態度が不良であつたことを、原告に
つき懲戒解雇の処分を選択した補強的事実として指摘するので、これを審案する。
 原告が勤務命令簿などの新制度が実施された後の昭和三八年七月九日、同一二日
および同二五日につきそれぞれ残業勤務を命ぜられたにもかかわらず、これを拒否
したことは当事者間に争いがなく、また原告が右三日の残業勤務に服さなかつた
際、勤務変更願を提出しなかつたことは本件弁論の全趣旨によつて明らかである。
しかしながら、被告会社戸田橋工場が従業員たる原告に対し残業勤務を命ずるため
には、会社側の申込に対し原告が自由な意思によつて個別的に明示または黙示の合
意をした場合に限るところ、全証拠を精査してみても原告が前示残業勤務をするに
つき右のごとき合意をしたことを認めうる資料がないから、被告会社戸田橋工場は
原告に対し前示のごとき残業勤務を命ずる権限がなく、原告がこれを拒否したのは
当然であり、かつそれについての勤務変更願もこれを提出する必要がなかつたので
ある。そうだとすると、原告に前示のごとき所為があつたからといつて、その勤務
態度が甚だしく不良であるとすることはできないから、右の事実をもつて、被告会
社が原告に対し懲戒解雇の処分を選択したことの不均衡を是正することはできな
い。
3 してみれば、被告会社が原告の前示懲戒事由に対して懲戒解雇の処分を選択し
たことは、その裁量を誤り社会観念上相当とみられる均衡を失しているため、右懲
戒権の行使は権利の濫用として無効であり、その効力を生ずるに由ないものといわ
ねばならない。
 したがつて、原告は依然として被告会社の従業員たる地位を有するにもかかわら
ず、被告会社がこれを争つていることは明らかであるから、原告は被告との間に原
告を従業員とする雇傭契約関係が存在することの確認を求める利益を有する。
四、よつて、原告の本訴請求はその余の点につき判断するまでもなく理由があるの
でこれを認容し、訴訟費用は敗訴当事者たる被告に負担させることとし、主文のと
おり判決する。
(裁判官 西山要 岡垣学 瀬戸正義)

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