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平成20年11月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(ワ)第8049号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成20年10月2日
判決
三重県桑名市<以下略>
原告ドーエイ外装有限会社
同訴訟代理人弁護士大津卓滋
同原田活也
同黒崎祥
同中野大仁
東京都北区<以下略>
被告株式会社イデアテック
同訴訟代理人弁護士山本哲男
同千田適
同釜田佳孝
同徳村初美
同奥村太朗
同櫛田和代
同藤澤泰子
同補佐人弁理士玉田修三
主文
1被告は,原告に対し,金6万5364円及びこれに対する平成20年
4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は,これを50分し,その49を原告の負担とし,その余を
被告の負担とする。
4この判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,金300万円及びこれに対する平成20年4月11日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,原告が被告に対し,被告が病院の増床工事の現場で設置した床用目
地装置が原告の有する特許権を侵害すると主張して,不法行為に基づき損害賠
償金300万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成20年4月11
日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅
延損害金の支払を求める事案である。
1前提となる事実
(1)当事者
原告は,「1.建築工事2.建築材料の製造及び販売3.建築技術の
提供.施工及びその保証4.建築金物の特許権等の取得及びその実施5.
不動産賃貸業6.前各号に付帯する一切の業務」を目的とする有限会社で
ある。(弁論の全趣旨)
被告は,「1.建築金物の設計、製作、施工、販売事業2.ビル用及住
宅用サッシの設計、製作、施工、販売事業3.防水工事の設計、施工事業
4.前各号に附帯する一切の業務」を目的とする株式会社である。(弁論
の全趣旨)
(2)原告の特許権
原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲請
求項1の発明を「本件発明」という。)を有している。(争いのない事実,
甲1,2)
特許第3445218号
出願番号特願2000−106119
出願日平成12年4月7日
公開番号特開2001−288825
公開日平成13年10月19日
登録日平成15年6月27日
発明の名称床用目地装置
特許請求の範囲
【請求項1】
「目地部を介して建てられた左右の建物の目地部側の床面に形成され
た該目地部に開口する左右の凹部と、両端部が前記左右の凹部のほぼ
中央部に位置する、該左右の凹部内をスライド移動する可動目地プレ
ートと、この可動目地プレートの中央部を前記目地部の中央部に常時
位置させる、前記左右の建物の目地部側の躯体に両端部が取付けられ
た中央維持機構と、前記左右の凹部を覆うように前記左右の建物の床
面を形成する躯体に取付けられた先端部が前記可動目地プレートに支
持される左右のカバープレートと、この左右のカバープレート間の隙
間を覆う該左右のカバープレートの上面とほぼ同じ上面となるように
前記可動目地プレートに上下移動可能に支持された中央カバープレー
トと、地震等によって前記目地部が狭くなると前記中央カバープレー
トを前記左右のカバープレートの押し圧によって自動的に上昇させる
中央カバープレート押し上げ機構とからなることを特徴とする床用目
地装置。」
(3)構成要件の分説
本件特許権は,次のとおり分説される。(争いのない事実)
A目地部を介して建てられた左右の建物の目地部側の床面に形成され
た該目地部に開口する左右の凹部と,
B両端部が前記左右の凹部のほぼ中央部に位置する,該左右の凹部内
をスライド移動する可動目地プレートと,
Cこの可動目地プレートの中央部を前記目地部の中央部に常時位置さ
せる,前記左右の建物の目地部側の躯体に両端部が取付けられた中央
維持機構と,
D前記左右の凹部を覆うように前記左右の建物の床面を形成する躯体
に取付けられた先端部が前記可動目地プレートに支持される左右のカ
バープレートと,
Eこの左右のカバープレート間の隙間を覆う該左右のカバープレート
の上面とほぼ同じ上面となるように前記可動目地プレートに上下移動
可能に支持された中央カバープレートと,
F地震等によって前記目地部が狭くなると前記中央カバープレートを
前記左右のカバープレートの押し圧によって自動的に上昇させる中央
カバープレート押し上げ機構
Gとからなることを特徴とする床用目地装置。
(4)被告の行為
被告は,平成19年11月5日から平成20年2月7日までの間,さいた
ま市大宮区<以下略>所在の自治医科大学附属さいたま医療センター病床増
築等工事の現場において,受注した金物一式工事(以下「本件金物工事」と
いう。)を施工し,床エキスパンションジョイント(なお,エキスパンショ
ンジョイントを,以下「EXPジョイント」という。)工事(以下「本件E
XPジョイント工事」という。)として,別紙被告装置目録記載の装置(以
下「被告装置」という。)を設置した。(争いのない事実,乙3)
(5)被告装置の構造及び本件発明との対比
被告装置の構造は,別紙被告装置目録記載の構造aないしf及び別紙装置
図面のとおりであり,被告装置は,床用目地装置として,本件発明のすべて
の構成要件を充足する。(争いのない事実,弁論の全趣旨)
2争点
原告の被った損害の額
第3争点に関する当事者の主張
〔原告の主張〕
1被告は,本件金物工事を受注して被告装置を設置し(本件EXPジョイント
工事),原告の有する本件特許権を侵害した。
被告が本件EXPジョイント工事で受けた利益は300万円を下らないから,
被告の不法行為によって原告の被った損害の額も300万円を下らないものと
推定される(特許法102条2項)。
2EXPジョイントの工事は,一般的には「金物工事」の名称で,床,天井,
壁等のEXPジョイントの工事,これに関連する工事等とともに,必ず一括し
て発注されている。すると,ある工事がたとえ1個であったとしても,特許製
品たるEXPジョイントを設置しなければその目的を達し得ないときには,当
該工事を発注しようとする者は,特許権者か特許権者から実施権を付与された
者でなければならないから,1個のEXPジョイントにつき特許権侵害が認め
られるのであれば,当該工事業者は,本来的に金物工事を受注し得なかったに
もかかわらず,これを受注して,特許権者に対する関係で違法不当に利益を獲
得したことになる。
このように,EXPジョイント工事の実態は,いわば関連工事の不可分一体
性があるから,特許法102条2項の侵害の行為により受けた利益は,特許権
侵害が問題となっている本件EXPジョイント工事の単価のみを基礎に算定す
べきものではなく,本件金物工事全体の価格を基礎に算定すべきである。
3仮に,特許法102条2項がそのように解釈できないとしても,結局のとこ
ろ,特許権者は特許権侵害と相当因果関係にある損害につき賠償請求をし得る
のであるから,上記のEXPジョイント工事の実態(関連工事の不可分一体
性)を考慮すると,特許権者に当該工事全体に施工能力があると認められるな
ど相当因果関係を基礎付ける事情が認められる限り,特許権者は,特許権侵害
者が受けた利益について,これを本来得られるはずであったのに失った損害と
して請求し得る。
したがって,本件EXPジョイント工事の代金217万8800円の3パー
セントが損害であるとする被告の主張はその前提において誤っている。
〔被告の主張〕
1被告が請け負った本件金物工事は,注文書(乙1,2)のとおり,代金総額
が2050万円(別途消費税102万5000円)であり,このうち,本件E
XPジョイント工事の代金は217万8800円(消費税別)にすぎない。
したがって,本件金物工事における本件EXPジョイント工事の代金額から
して,原告の主張するような300万円などという利益はあり得ない。
そして,本件特許権につき第三者に対して実施許諾がされる場合,実施料率
は3パーセントが相当であるから,損害額は6万5364円が相当である。
2ビル等の建設工事に際して,床,天井,壁等のEXPジョイント工事がされ
るとして,それぞれのEXPジョイントには,床,天井,壁ごとに別々の工法
や特許が存在する。
したがって,原告の本件特許権を利用しなければ,本件EXPジョイント工
事217万8800円分の仕事ができなかったとしても,他の天井や壁のEX
Pジョイントに係る工事には何らの影響を与えないものであり,特許法102
条2項の利益の算定にあたっては,本件EXPジョイント工事部分についての
利益をもって判断されるべきである。
また,被告において,本件EXPジョイント工事につき他の工法で工事をす
ることは可能であったから,本件特許権の侵害なくして工事の受注ができなか
ったという関係にはない。
3なお,被告の本件金物工事による利益は,工事台帳(乙3)に記載のとおり
であり,これを説明すれば,次のとおりである。
工事総額2124万0000円
材料代金
日本アルミ製品1041万3144円
その他材料(国内)131万8390円
中国・諸経費545万7199円
計1718万8733円
諸経費
取付費323万8890円
設計費73万9000円
計397万7890円
利益(率)7万3377円(0.3%)
第4当裁判所の判断
1前記第2の1前提となる事実に,証拠(乙1∼6)及び弁論の全趣旨を総合
すれば,次の事実が認められる。
(1)被告は,東急建設株式会社と清水建設株式会社の共同企業体から,平成1
9年3月23日付けで,本件金物工事につき代金2050万円(別途消費税
102万5000円)で発注を受け(乙1,2),同日付けで,この注文を
請け負った(乙4,5)。
本件金物工事のうち,本件EXPジョイント工事(床EXPジョイント・
「渡廊下内部EXP・J金物」「SUS304既製品耐火1時間
床−床クリアランス700」)部分の代金は,217万8800円である。
なお,これに相当する壁EXPジョイント(「渡廊下内部EXP・J金
物」「SUS304既製品耐火1時間壁−壁クリアランス70
0」)と天井EXPジョイント(「渡廊下内部EXP・J金物」「SU
S304既製品耐火1時間天井−天井クリアランス700」)の各
工事部分の代金は,それぞれ,173万4480円と87万1520円であ
る。(乙1,4)
(2)本件金物工事は,取付工程として平成19年11月5日から平成20年2
月7日までかかり,代金額は,138万5000円の減額と94万円の増額,
68万5000円の増額及び50万円の増額とを経て,合計2124万円と
なった。(乙3)
そして,収支は,材料について,本体として1041万3144円,役物
・曲物として131万8390円,中国・諸経費として545万7199円
(材料費計1718万8733円)であり,諸経費について,取付費として
323万8890円,設計費として73万9000円(諸経費計397万7
890円)であって,総合計2116万6623円となり,利益額は7万3
377円,利益率は0.3パーセントである。(乙3)
(3)被告において,ゼネコンからの注文や受注の取引は,書面ではなく,すべ
て電子情報化されて,オンラインで行われており,乙第1及び第2号証の注
文書,乙第4及び第5号証の注文請書は,オンラインのデジタルベースでさ
れている。また,乙第3号証の工事台帳も,デジタルベースで管理されてい
る。(乙6)
2検討
原告は,被告が本件EXPジョイント工事で受けた利益は300万円を下ら
ないから,被告の不法行為によって原告の被った損害の額も300万円を下ら
ないものと推定される(特許法102条2項)と主張する。
しかしながら,本件EXPジョイント工事による被告の利益が300万円を
下らないことを証する証拠はなく,前記1(2)のとおり,本件金物工事全体
の利益額でも7万3377円にとどまるものと認められる。
また,原告は,床,天井,壁等のEXPジョイントの工事が「金物工事」と
して一括して発注される関係にあり,床に特許製品であるEXPジョイントを
使用しなければ目的を達することができず,金物工事を一括して受注すること
ができなかったから,本件特許権の侵害が問題となっている本件EXPジョイ
ント(床EXPジョイント)工事の単価ではなく,本件金物工事全体の価格を
基礎に算定すべきであると主張する。
しかしながら,床に特許製品であるEXPジョイントを使用しなければ目的
を達することができないというためには,床のEXPジョイント工事を実施す
るには必ず特許製品を用いなければならず,他に方法がないといえなければな
らない。本件において,このような事実を認めるに足る主張立証はないから,
本件特許権に係る製品を使用しなければ,本件金物工事を一括して受注するこ
とができなかったということはできず,本件金物工事全体の価格を算定の基礎
とする根拠はないというべきである。
なお,このことは,特許法102条2項の推定としてではなく,相当因果関
係の問題としてとらえても,同様であり,損害額の算定の基礎を本件金物工事
全体の価格にまで広げるべき相当性はないものというほかない。
そうすると,原告の損害については,被告の主張するとおり,本件EXPジ
ョイント工事部分の代金額を基礎として,特許法102条3項に基づき算定す
るのが相当である。そして,弁論の全趣旨によれば,本件特許権につき第三者
に対して実施許諾がされる場合,その実施料率を3パーセントとみるのが相当
であると認められる。
したがって,原告の損害は,本件EXPジョイント工事部分の代金217万
8800円に3パーセントを乗じた6万5364円であるものと認めるのが相
当である。
3結論
以上によれば,原告の請求は,上記の限度で理由があるから認容し,その余
の請求は,理由がないので,棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官阿部正幸
裁判官平田直人
裁判官柵木澄子
被告装置目録
下記aないしfの構造を有する別紙装置図面記載のとおりの床用目地装置。

a目地部1を介して建てられた左右の建物2の目地部1側の床面に形成され
た該目地部1に開口する左右の凹部3がある。
b両端部が左右の凹部3のほぼ中央部に位置する,左右の凹部3内をスライ
ド移動する可動目地プレート4が取り付けられている。
c可動目地プレート4の中央部を目地部1の中央部に常時位置させる,左右
の建物2の目地部1側の躯体に両端部が取り付けられた中央維持機構5が取
り付けられている。
d左右の凹部3を覆うように左右の建物2の床面を形成する躯体に取り付け
られた先端部が可動目地プレート4に支持される左右のカバープレート6が
取り付けられている。
e左右のカバープレート6間の隙間を覆う左右のカバープレート6の上面と
ほぼ同じ上面となるように可動目地プレート4に上下移動可能に支持された
中央カバープレート7が取り付けられている。
f地震等によって目地部1が狭くなると中央カバープレート7を左右のカバ
ープレート6の押し圧によって自動的に上昇させる中央カバープレート押し
上げ機構8が取り付けられている。
装置図面

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