弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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     主    文
     原判決中上告人A1の仏壇購入費用および墓碑建設費用の損害賠償請求
に関する部分を破棄し、右部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
     上告人A1のその余の上告を棄却する。
     上告人A2の上告を棄却する。
     上告費用中、上告人A1の第二項記載部分の上告に関する費用は同上告
人の負担とし、上告人A2の上告によつて生じた費用は同上告人の負担とする。
     理    由
 上告代理人奥村孝の上告理由第一点について。
 人が死亡した場合にその遺族が墓碑、仏壇等をもつてその霊をまつることは、わ
が国の習俗において通常必要とされることであるから、家族のため祭祀を主宰すべ
き立場にある者が、不法行為によつて死亡した家族のため墓碑を建設し、仏壇を購
入したときは、そのために支出した費用は、不法行為によつて生じた損害でないと
はいえない。死が何人も早晩免れえない運命であり、死者の霊をまつることが当然
にその遺族の責務とされることではあつても、不法行為のさいに当該遺族がその費
用の支出を余儀なくされることは、ひとえに不法行為によつて生じた事態であつて、
この理は、墓碑建設、仏壇購入の費用とその他の葬儀費用とにおいて何ら区別する
いわれがないものというべきである(大審院大正一三年(オ)第七一八号同年一二
月二日判決、民集三巻五二二頁参照)。したがつて、前記の立場にある遺族が、墓
碑建設、仏壇購入のため費用を支出した場合には、その支出が社会通念上相当と認
められる限度において、不法行為により通常生ずべき損害として、その賠償を加害
者に対して請求することができるものと解するのが相当である。
 もつとも、その墓碑または仏壇が、当該死者のためばかりでなく、将来にわたり
その家族ないし子孫の霊をもまつるために使用されるものである場合には、その建
設ないし購入によつて他面では利益が将来に残存することとなるのであるから、そ
のために支出した費用の全額を不法行為によつて生じた損害と認めることはできな
い。しかし、そうだからといつて右の支出が不法行為と相当因果関係にないものと
いうべきではなく、死者の年令、境遇、家族構成、社会的地位、職業等諸般の事情
を斟酌して、社会の習俗上その霊をとむらうのに必要かつ相当と認められる費用の
額が確定されるならば、その限度では損害の発生を否定することはできず、かつそ
の確定は必ずしも不可能ではないと解されるのであるから、すべからく鑑定その他
の方法を用いて右の額を確定し、その範囲で損害賠償の請求を認容すべきである。
 ところが、原判決は、本件不法行為による訴外D(当時三才)の死にさいして、
その父である上告人A1が二五万円余を費して墓碑を建設しかつ代金一万〇五五〇
円をもつて仏壇を購入した旨の事実を認定しながら、これらが将来その一家ないし
子孫の全員の霊をもまつるためのものであることのみを理由に、右の支出をもつて
不法行為と相当因果関係に立つ損害とはいえないとして、たやすくこれに関する損
害賠償請求の全部を排斥しているのであつて、帰するところ、右のような因果関係
に関する民法の規定の解釈適用を誤り、審理を尽さなかつた違法があるものといわ
なくてはならず、この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。し
たがつて、論旨は理由があつて、原判決は、上告人A1の請求中仏壇購入費用およ
び墓碑建設費用の損害の賠償を求める部分に関する同上告人の控訴を棄却した部分
について破棄を免れず、なお相当と認められる損害の範囲につきさらに審理をさせ
るため、右部分を原審に差し戻すことを相当とする。
 しかし、上告人A1の上告中その余の請求に関する部分は理由がない。
 同第二点について。
 民法七二二条二項にいう被害者の過失とは、ひろく被害者側の過失を包含するも
のであつて、他人の不法行為によつて死亡した幼児の父母が、これによつて自ら受
けた精神上の苦痛に対する慰藉料を請求する場合に、父母の一方に事故の発生につ
いての監督上の過失があるときには、その双方の請求について右過失を斟酌するこ
とができるものと解すべきであり(最高裁判所昭和三三年(オ)第八六六号同三四
年一一月二六日第一小法廷判決、民集一三巻一二号一五七三頁参照)、したがつて、
原審が上告人A2に支払われるべき慰藉料の額を定めるにあたつて上告人A1の過
失を斟酌した措置には、何ら所論の違法はない。論旨は採用することができず、上
告人A2の上告理由がない。
 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に
従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 裁判官奥野健一は退官につき評議に関与しない。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    石   田   和   外
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦

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