弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告は,原告Aに対し,7178万2020円及びこれに対する平成
9年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告B及び原告Cに対し,各70万円及びこれらに対する平
成9年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用はこれを10分し,その3を原告らの負担とし,その余を被
告の負担とする。
5この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告Aに対し,1億1000万円及びこれに対する平成9年5月6
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告B及び原告Cに対し,各550万円及びこれらに対する平成9
年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,被告運転の普通乗用自動車が原告A運転の自転車に衝突して原告A
が負傷した事故につき,原告A並びにその父母である原告B及び原告Cが,被
告に対し,民法709条及び自賠法3条に基づき,損害賠償を請求した事案で
ある。
1争いのない事実等
(1)事故の発生(争いがない)

下記の事故(以下「本件事故」という)が発生した。


日時平成9年5月6日午後5時40分ころ
(「」。

場所岡山県倉敷市gh番地i先市道上以下本件事故現場という
甲車両普通乗用自動車(登録番号・省略「被告車両」という)

運転者被告
乙車両自転車(登録番号・省略,以下「原告A車両」という)

運転者原告A
事故態様本件事故現場において被告車両が原告A車両に衝突した。
(2)原告Aの治療経過(争いがない)

,,,,
原告Aは本件事故により脳挫傷びまん性軸索損傷等の傷害を負い
平成9年5月6日から同年8月15日までの間,川崎医科大学附属病院に
入院し,その後も,通院治療を受けたが,平成10年1月28日から同年
2月4日までの間再び上記病院に入院しその後通院治療を受けた入
,,,(
院日数102日,実通院日数17日。

(3)原告Aの症状固定等(争いがない)

原告Aは,平成10年6月23日ころに症状固定し,その後,自動車保
険料率算定会調査事務所において自賠責保険に用いられる後遺障害等級表
5級に該当する旨の認定を受けた。
(4)被告の責任原因(争いがない)

被告は,被告車両を運転し,本件事故現場の交差点を東から西へ直進す
るに当たり,前方を注視すべき義務があるのにこれを怠り,そのまま進行
した結果,同交差点を南から北へ直進中の原告車両に自車を衝突させた。
被告は,被告車両の保有者である。
(5)損害の填補(保険会社からの支払分につき乙1ないし9〈書証について
は枝番を含む。以下同じ,その余について弁論の全趣旨)

〉。
,,,,
原告Aは本件事故に関し被告の保険会社から199万9680円
被告から,70万円の合計269万9680円の支払を受けた。
2争点
(1)原告Aの後遺障害の程度
(原告らの主張)
後遺障害等級事前認定票(甲3)等によれば,原告Aは,自算会調査事務
所において自賠責保険に用いられる後遺障害等級表5級に該当する旨の認定
を受けているところ,この等級は,神経系統の機能又は精神に著しい障害を
,,
残し特に軽易な労務以外の労務に服することができないものをいうとされ
これは,神経系統の機能障害による身体能力の低下又は精神機能の低下のた
め,独力では一般人の4分の1程度の労働能力しか残されていない場合と解
されている。
しかし,原告Aは,びまん性軸索損傷等の傷害を負い,運動機能障害,高
次脳機能障害,記憶障害を有し,外傷性のてんかんを発症している。
,,,
また原告Aにはパニック障害をいつ惹起するかとの不安がつきまとい
単独行動での社会生活は危険と不安があり,このような症状からすれば,現
,,,
実問題として企業が原告Aを雇用することは考え難く内職等についても
常時付添いがなければ適切な作業ができないばかりか,器物を破損すること
も考えられるところである。このように,原告Aは,周囲の協力に支えられ
て何とか生活を維持している状態であり,就労については具体的かつ重大な
不安を呈する精神的異常が継続しており,しかも,それは今後の憎悪が危惧
されるものである。
したがって,原告Aの状態にかんがみれば,常時付添がなければおよそ労
働は不可能であり,後遺障害等級3級に該当するものというべきである。
(被告の主張)
自動車事故による後遺障害等級の認定は,自算会の認定によってなされ,
過去ないし現在にわたってこれにより運営されているところであるが,この
,,
認定は厚生労働省労働基準局長通達の障害等級認定基準に準拠して行われ
これまでその認定を通じて法的安定性に寄与してきたところでもある。そし
て,自動車保険料率算定会の等級認定は,自賠責保険後遺障害等級5級2号
に該当するとされている。
原告Aの身体的症状は比較的軽微であり,しかも,その症状の改善は明ら
かであることからしても,自算会の等級認定は妥当なものである。
したがって,原告Aの症状にかんがみれば,後遺障害等級5級に該当する
ものというべきである。
(2)原告らの損害額
(原告らの主張)
ア原告Aの損害額
(ア)入院雑費15万3000円
(計算式)
1,500×102=153,000
(イ)入院中の付添費102万0000円
(計算式)
10,000×102=1,020,000
(ウ)通院通学中の付添費108万0000円
(計算式)
6,000×180=1,080,000
(エ)通院費3万4000円
(計算式)
2,000×17=34,000
(オ)家庭教師代30万5520円
(カ)学費等218万6115円
(キ)諸雑費46万6230円
(ク)症状固定後の治療費25万5000円
(ケ)治療中の慰謝料350万0000円
(コ)後遺障害慰謝料3000万0000円
(サ)後遺障害による逸失利益9652万4000円
原告Aは,本件事故当時,15歳の男子中学生であり,本件事故に遭
,。
わなければ18歳から67歳までの49年間は稼働することができた
将来,賃金センサス531万2700円の収入を得る可能性があったの
であるから,これを基礎として,後遺障害等級第3級の労働能力喪失率
を100パーセントとし,中間利息の控除につきライプニッツ係数方式
を用いて原告Aの逸失利益の現価額を算定すれば,9652万4000
円(1000円未満切捨て)となる。
(計算式)
5,312,700×100/100×18.1687=96,524,852
(シ)将来の介護料4133万7000円
1日当たりの介護料を6000円,平均余命を59年とし,中間利息
の控除につきライプニッツ係数方式を用いて原告Aの将来の介護料の現
価額を算定すれば,4133万7000円(1000円未満切捨て)と
なる。
(計算式)
6,000×365×18.8757=41,33,7783
(ス)弁護士費用1000万0000円
よって,原告Aは,被告に対し,上記(ア)ないし(シ)の損害額小計1
億7686万0865円のうち1億円及び(ス)の弁護士費用1000万
円の合計1億1000万円並びにこれに対する本件事故日である平成9
年5月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を求める。
イ原告B及び原告Cの損害額
(ア)慰謝料各500万0000円
(イ)弁護士費用各50万0000円
よって,原告B及び原告Cは,被告に対し,各550万円及びこれら
に対する本件事故日である平成9年5月6日から支払済みまで民法所定
の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張)
ア原告Aの損害額について
(ア)原告ら主張の損害のうち,(ア)ないし(ケ)については,必要性の有
無ないし金額の多寡を争う。
(イ)(コ)については,後遺障害等級第5級を前提に算定されるべきであ
る。
(ウ)(サ)についても,同等級を前提に算定されるべきである。
また,原告Aは,症状固定時15歳であったから,15歳から67
歳までの52年間の労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数で
ある18.418から,15歳から18歳までの3年間の就学期間に
相当するライプニッツ係数である2.723を差し引いた15.69
5を基礎とすべきである。
さらに,18歳未満の未就労者の死亡事故における逸失利益計算に
関する最高裁判例の趣旨に照らし,就労開始時期を後遺障害の症状固
定日に置き換えた上,事故日から症状固定日までの期間分を割り戻し
て,事故時点における現価を認容額とすべきである。
イ原告B及び原告Cの損害額について
原告らの主張は争う。
(3)過失相殺の当否及び程度
(被告の主張)
被告は,時速60キロメートルの制限速度以下で,前方を注意しながら走
行していたところ,原告晃正が突然自転車で走行してきたものであり,衝突
の回避は不可能であった。
本件事故現場は,車両優先道路であって,被告には徐行義務がなく,しか
も交通量が多いのであるから,原告晃正の方で自動車の走行に注意するのが
基本である。
また,原告Aは,約192メートル先に信号機による交通整理の行われて
いる交差点があるにもかかわらず,これを利用せず,さらに,ヘルメットを
着用していなかった。
以上によれば,6割の過失相殺がなされるべきである。
(原告らの主張)
被告は,スリップ痕の長さ,普通乗用自動車の破損の程度からして,かな
りの速度で走行していたと推測されるところ,本件交差点の見通しが悪いに
もかかわらず,本件交差点から前方192メートル先の交差点の信号機に気
をとられた結果,速度を落とさず,しかも前方を注視せず,漫然と進行した
ものである。
このように,本件事故は,被告の前方不注視・安全確認義務違反の重大な
過失により生じたものであり,過失相殺はなされるべきではない。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(原告Aの後遺障害の程度)について
ア上記争いのない事実等に,証拠(甲8ないし12,18,43,44,5
6ないし59,61,90,乙1ないし105,原告本人B,同C,鑑定の
結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
(ア)原告Aの臨床経過
原告Aは,平成9年5月6日,本件事故により,川崎医科大学附属病院
に入院したが,意識レベルは,グラスゴー・コーマ・スケールで7点であ
り,右片麻痺及び左動眼神経麻痺を伴っており,び慢性軸索損傷と診断さ
れた。
原告Aは,入院後,過高熱を併発していたが,本件事故から約2週間後
に,ようやく自発的な開眼がみられ,約5週間後に,簡単な命令に従える
ようになったものの,失禁状態が続き,摂取障害があり,経口摂取も水分
の摂取程度にとどまっていた。
約6週間後に,リハビリテーションが開始されたが,この時点では,軽
度ないし中等度の右痙性片麻痺のほか,知能の低下,理解力・注意持続力
の低下,発動性の欠如及び衝動性性格等が認められた。
その後,リハビリテーションにより諸機能が徐々に回復していったもの
,,,,
のその程度は十分でなく同年8月15日の退院時には右不全片麻痺
,,,,
右半身知覚障害言語障害のほか知能障害理解力・注意持続力の低下
発動性の欠如,衝動性性格が残存した。
原告Aは,退院後,リハビリテーションの目的で通院しながら,家庭生
活への順応を図っていたところ,平成10年1月28日から,急に会話の
つじつまが合わなくなり,多弁となり,興奮性が高まり,怒り易くなり,
異常行動がみられ,不穏状態となり,粗暴化等の症状が出現したため,川
崎医科大学附属病院に再び入院し,施薬加療により症状が軽減した結果,
同年2月4日に退院した。
(イ)原告Aの現状
a神経学的身体障害
原告Aは,軽度右不全片麻痺により,右手を使う微細な行動が拙劣で
あり,歩行・走行・バランスを伴う行動では障害が残るなど,行動や動
作は全体的に敏捷性を欠き緩慢である。
また,原告Aは,右半身知覚障害により,とりわけ温度への順応障害
がみられるほか,言語障害として,構音障害による不明瞭で緩慢な発語
,,,,
が認められ輻輳障害として注視運動殊に近位凝視の障害がみられ
不定愁訴的症状として,頭痛,めまい,体調不良を訴えることが多い。
b高次脳機能及び精神的機能の各障害
原告Aは,知能低下・記憶力の低下・近時記憶障害・見当識障害,判
断力・認識力の低下,集中力・持続力の低下,環境認識力・環境変化へ
の対応力の低下,ストレス負荷時の対応力の低下,易興奮性・易怒性・
暴力的行動の増加等の人格変化,情緒不安定,被害妄想的言動,自発性
の低下,自己中心的及び着衣失行等の状態がみられる。
(ウ)原告Aに対する検査結果
a高次脳機能検査
平成12年6月22日及び同月26日に施行された高次脳機能検査で
は,まず,WAIS−Rにおいて,知能指数は79で,境界線ないし平
均より下のレベルに相当し,簡単な作業は比較的良好な成績を修めるこ
とができるが,問題が複雑化するに従って成績は低下する傾向にある。
また,ウエクスラー記憶テスト改訂版・WMS−Rにおいては,一般
的記憶は著明に低下し,論理的記憶は全くできない状況にある。
さらに,ミネソタ他面人格目録・MMPIにおいては,衝動統制の悪
,,,
さ不安・緊張感の高揚及び落ち着きの欠如身体に対する懸念をもち
時として妄想や思考混乱の傾向,融通がきかないとか,社会的適応の悪
さが認められる。
b脳機能検査
平成10年2月3日の脳波検査において,基礎波のα波は徐波化し,
間歇的に大きな徐波が混入するなど,全般的に徐波の混入が認められ,
平成12年6月8日の脳波検査では,両側前頭葉に振幅の低下,連続性
の低下,軽度の徐波傾向等の変化が特に過呼吸後にみられる。
また,同月13日のMRスペクトロスコピーでは,両側の海馬領域に
おいて,Nアセチルアスパラテート(NAA)の低下がみられ,殊に右
海馬領域では,正常値に比べて著明な低値が示された。
c脳画像診断学的検査
(a)CT
平成9年5月6日のCTでは,後頭蓋窩くも膜下腔と脳幹周囲脳槽
の外傷性くも膜下出血が認められ,両側前頭葉内には小出血巣が複数
存在していた。
同月9日のCTでは,後頭蓋窩くも膜下腔と脳幹周囲脳槽の外傷性
くも膜下出血は消退傾向にあったが,両側側脳室内にニボー形成がみ
られた。また,両側前頭葉内の小出血巣は複数存在したままであり,
左後頭葉内に淡い小出血巣が認められた。
同月16日のCTでは,後頭蓋窩くも膜下腔と脳幹周囲脳槽の外傷
性くも膜下出血は更に消退傾向にあり,両側側脳室内のニボー形成も
消失し,両側前頭葉内の小出血巣は低吸収域となり,左後頭葉内の淡
い小出血巣も消失していた。
同月26日のCTでは,外傷性くも膜下出血は消失したが,両側前
頭葉内の低吸収域は残存していた。
同月27日のCTでは,両側前頭葉内の低吸収域は減退傾向を示し
ていたが,脳の側脳室や脳溝の拡大傾向がみられ,脳の萎縮傾向が認
められた。
同年8月6日のCTでは,脳の萎縮傾向は更に増強し,左前頭葉内
の低吸収域が残存していた。
平成10年8月6日のCTでは,側脳室や脳溝の拡大傾向が更に強
まり,脳の萎縮傾向が一層進行しているのが認められた。
(b)MRI
平成9年5月12日のMRIでは,後頭蓋窩くも膜下腔と脳幹周囲
脳槽の外傷性くも膜下出血が認められ,両側前頭葉内には小出血巣が
複数存在していたほか,橋左側に小出血巣がみられた。
同月30日のMRIでは,両側前頭葉内の小出血巣が複数残存し,
橋左側の小出血巣も認められたほか,両側脳室間の出血巣と右後頭部
の硬膜下血腫が出現していた。更に,側脳室や脳溝の拡大傾向がみら
れ,脳の萎縮傾向が認められた。
同年6月30日のMRIでは,右後頭部の硬膜下血腫は縮小傾向に
あったが,右前葉部に硬膜下血腫がみられたほか,脳の萎縮傾向は若
干進行していた。両側前頭葉内と橋左側の小出血巣の所見は前回とほ
ぼ同様であった。
同年8月2日のMRIでは,右後頭部と右前葉部の硬膜下血腫はほ
ぼ消失したが,脳の萎縮傾向は引き続き認められた。
同年11月15日のMRIは,前回とほぼ同様の所見であった。
平成12年6月13日のMRIでは,脳萎縮は大脳・脳幹・小脳を
含み,その程度は脳深部組織に強いが,脳表も萎縮しており,脳全体
にわたり年齢不相応な顕著な脳萎縮が認められた。
イ原告らは,原告Aの後遺障害は,自賠責保険に用いられる後遺障害等級表
,,。
第3級に該当すると主張し被告は同等級表第5級に該当すると主張する
これについて,鑑定人Eは,原告Aの臨床経過,原告Aの神経学的身体障
害並びに高次脳機能及び精神的機能の各障害の現状,原告Aに対する各検査
結果等を総合的に評価した結果,原告Aの後遺障害は,自賠責保険に用いら
れる後遺障害等級表第3級に該当するとの鑑定意見を提出している以下E
(「
鑑定」という。


ウすなわち,E鑑定は「急性期ないし亜急性期のCT及びMRIの各所見

は,頭蓋内に広範に強度の外傷が加わったことをうかがわせることに加え,
,,
原告Aの臨床経過の所見は受傷直後から長期にわたって意識障害が持続し
自律神経症状が発現したことを示している。また,原告Aに対する脳波検査
によれば,前頭葉の機能低下がみられ,MRスペクトロスコピーでは,両側
の海馬領域のNAAが低下していることが認められる上,亜急性期ないし慢
,,,,
性期のMRI所見によれば脳萎縮は大脳だけでなく脳幹と小脳に及び
,。
脳全体にわたっているがとりわけ大脳前頭葉と大脳深部組織に顕著である
これらの事実を総合考慮すると,原告Aの頭部外傷は,いわゆるび慢性軸索
損傷と診断される。このことは,原告Aの神経学的身体障害として,軽度右
不全片麻痺,右半身知覚障害及び輻輳障害が認められることや,高次脳機能
及び精神的機能の各障害として,知能低下・記憶力の低下・近時記憶障害・
見当識障害,判断力・認識力の低下,集中力・持続力の低下,環境認識力・
環境変化への対応力の低下,ストレス負荷時の対応力の低下,易興奮性・易
怒性・暴力的行動の増加等の人格変化,情緒不安定,被害妄想的言動,自発
性の低下,自己中心的及び着衣失行等の状態がみられることからも首肯でき
るものである。そして,原告Aの神経学的身体障害並びに高次脳機能及び精
神的機能の各障害の現状が就学ないし就労に及ぼす影響を検討するに,神経
学的身体障害については,日常生活に多大な影響を及ぼすには至っていない
が,行動の程度と範囲を広げるには相当程度の制限を強いられるほか,高次
脳機能及び精神的機能の各障害のうち,知能低下・記憶力の低下・近時記憶
障害・見当識障害,判断力・認識力の低下,集中力・持続力の低下,自己中
心的等の状態は,日常生活で多大な支障をきたすことは容易に想像でき,環
境認識力・環境変化への対応力の低下,ストレス負荷時の対応力の低下,易
興奮性・易怒性・暴力的行動の増加等の人格変化,情緒不安定,被害妄想的
言動等の状態は,集団での行動や社会生活への適応等の面で問題があり,社
会の中で独立した生活を営むことは困難と考えられるところ,特に人格変化
につながる精神障害が重要であり,易興奮性・易怒性・暴力的行動の増加等
の人格変化が家族や社会の負担になり,家族適応や社会適応を困難にするも
のと思われる。これらに加えて,原告Aについては,上記のとおり,脳萎縮
の程度が年齢不相応に非常に高度であり,かつ,現在も脳萎縮の進行性が示
唆されていることを併せ考えると,原告Aの現状は,今後回復の可能性は非
常に少なく,更に進行する可能性が高いと危ぐされる。したがって,原告A
の後遺障害の程度を判断するに当たっては,現状と今後の症状の推移を含め
。,
た長期的展望によることが必要である以上の諸事情を総合的に考慮すれば
原告Aの後遺障害は後遺障害等級表第3級に該当すると判断される」とい

うものである。
この点について,被告は,①E鑑定は,原告Aの回復過程について何ら
考察しておらず,かえって,OT報告書(乙31,34,112,原告本

人Cに対する尋問結果,原告Aの祖父F作成の経過表(甲11,ビデオテ

ープ(乙106,108)等に照らし,原告Aの症状の改善は明らかである
,,,(,
からE鑑定は信用できないむしろ②医師G作成の意見書乙109
114,以下「G意見」という)は,原告Aと同様の症例を比較した上,

原告Aの後遺障害の程度を後遺障害等級表第5級と判定しており,これによ
るべきである,などと主張する。
しかしながら,上記①の点については,被告が原告Aの回復過程として指
摘するOT報告書は,それぞれ平成9年8月15日,平成10年1月20日
及び同年6月20日に実施され,原告本人Cに対する尋問は,平成11年6
月10日の本件第4回口頭弁論期日に実施され,F作成の経過表は,平成1
0年4月ころまでの原告Aの症状等が記載されたものである。他方,E鑑定
人は,平成12年2月16日の本件第8回口頭弁論期日において,鑑定人と
して指定され,同年3月23日,宣誓書を提出した上,同年6月ころ,原告
Aを診断し,各種検査を実施するなどして,同年8月25日,鑑定書を提出
しており,上記各資料が収集された後に,改めて原告Aを実際に診断し,又
は,原告Aに対する各種検査を施行し,これらを踏まえた上で,原告Aの後
遺障害の程度を判断しているものであって,E鑑定が原告Aの回復過程を何
ら考察していないとの指摘は当たらないというべきである。また,被告提出
のビデオテープは,原告Aが単独で高等学校に通学している様子等がうかが
,,,,
われるけれどもこのことはE鑑定が原告Aの神経学的身体障害として
軽度右不全片麻痺,右半身知覚障害及び輻輳障害が認められるとすることと
必ずしも矛盾するものではなく,また,証拠(甲68,70ないし82)を
総合すると,高次脳機能障害は,事故等で脳に損傷を受けることにより,記
憶障害や集中力の欠如等の症状を起こすものの,外見からは症状が分かりに
くく,見た目では障害が分からない場合が多いことが認められ,これらの事
実に照らして考えると,原告Aの登校時の様子等のみをもって,直ちにE鑑
定の基礎となる原告Aの臨床経過,原告Aの神経学的身体障害並びに高次脳
機能及び精神的機能の各障害の現状,原告Aに対する各検査結果等の前部又
は一部を排斥することは困難であるといわなければならない。さらに,上記
②の点については,G意見は,原告Aと同様の症例を比較しているが,G医
師自身は,原告Aを実際に診断したわけではなく,上記同様の症例というの
も,問題となっている後遺障害等級は相当程度異なっており,具体的事実に
基づいて両者を逐一比較したわけでもないのであるから,これを安易に採用
することはできないというべきである。
したがって,被告の上記主張は採用できない。
エ以上の検討によれば,E鑑定の結果を排斥するに足りる程度の事実及び資
料等も認められないから,これを採用するのが相当であり,以上の事実を前
,,
提に判断すべきものと思料するが本件がいわゆる高次脳機能障害と疑われ
その後遺障害の認定を判断すべき事案に該当するものと思われるので,本件
の特殊性にかんがみ,更に詳細にこの点について検討を加えることとする。
すなわち,自賠法施行令2条別表第2によれば,後遺障害等級第3級第3
号は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服するこ

とができないもの」をいい,同第5級第2号は「神経系統の機能又は精神

に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないも
の」をいうとされ,具体的な適用に当たっては,たとえば,四肢の麻痺,感
覚異常,錐体外路症状及び失語・失認・失行等のいわゆる大脳巣症状,人格
変化(感情鈍麻及び意欲減退等)若しくは記憶障害等の高度なもの,又は,
麻痺の症状が軽度で身体的には能力が維持されていても,精神の障害のため
に常時付き添って指示を与えなければ,全く労務の遂行ができないような人
格変化が認められた場合には,同第3級第3号に該当し,他方,神経系統の
機能の障害による身体的能力の低下,又は精神機能の低下等のため,独力で
は一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていない場合には,同第
5級第2号に該当するものとされている。
従来,脳機能障害については,後遺障害の認定のためには,基本的に,局
在損傷と呼ばれる器質的脳損傷が残存すると認められることが必要であり,
CTやMRIといった画像所見で脳の損傷箇所が特定でき,医学的な側面か
らも,脳の器質的損傷の結果として脳機能障害が発現することが十分に証明
できるため,その認定にはそれほどの問題が生じなかったといえる。
しかし,本件のように,必ずしも脳に明確な局在的損傷のあることが認め
難いとしても,意識の回復過程ないしその後において事故後の被害者の認知
能力や性格人格が事故前と比較して著しく変化し,通常の社会生活に適応で
きない障害を残す場合には,従来の後遺障害の認定では十分に対応できない
という不都合を生じることもないではない。
そこで,交通事故等によって脳に対する強い外力が加わり,その結果,画
像で脳の萎縮や脳室の拡大が認められるなど,頭部外傷によることが明らか
で,受傷後の意識障害が一定期間継続し,意識回復後の認知障害と人格変化
が顕著であって,これらの原因が脳外傷以外の他の疾患からは説明できない
ような,脳外傷による高次脳機能障害の等級に当たっては,従来の認定基準
に加えて,補足的に,たとえば,自宅周辺を一人で外出できるなど,日常の
生活範囲は自宅に限定されておらず,また,声掛けや介助がなくても日常の
動作を行うことができるが,記憶や注意力,新しいことを学習する能力,障
害の自己認識,円滑な対人関係維持能力等に著しい障害があって,一般就労
が全くできないか,あるいは困難なものについては,後遺障害等級第3級第
,,,,
3号に他方単純繰り返し作業等に限定すれば一般就労も可能であるが
新しい作業を学習できなかったり,環境が変わると作業を維持できなくなる
,,
などの問題があるため一般人と比較して作業能力が著しく制限されており
就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないものについては,
同第5級第2号に該当するものと考えるのが相当である。
本件においては,既に上記アで認定説示したとおり,原告Aは,受傷直後
の意識レベルは,グラスゴー・コーマ・スケールで7点であったこと,本件
事故から約2週間後に,ようやく自発的な開眼がみられたこと,び慢性軸索
損傷と診断されたこと,様々な神経学的身体障害並びに高次脳機能及び精神
的機能の各障害が残存すること,原告Aに対する脳波検査によれば,前頭葉
の機能低下がみられ,MRスペクトロスコピーでは,両側の海馬領域のNA
Aが低下していることが認められる上,亜急性期ないし慢性期のMRI所見
によれば,脳萎縮は,大脳だけでなく,脳幹と小脳に及び,脳全体にわたっ
ているが,とりわけ大脳前頭葉と大脳深部組織に顕著であることなどが認め
られ,これらの事実を総合考慮すると,原告Aの症状は脳外傷による高次脳
機能障害に当たるものというべきである。そして,証拠(甲8ないし12,
18,43,44,56ないし59,61,90,乙1ないし105,鑑定
),,,
の結果によれば原告Aは本件事故から約2年が経過した後においても
自分が言った内容や行った動作をすぐに忘れたり,日時や場所が分からなく
なったりすること,初めての物の使用方法等の理解力は極めて低いこと,単
純な作業でも長時間の持続が困難で,複雑な行動や複数の行動の同時遂行は
不可能であること,授業中に理由もなく急に外へ出たりするなど,環境の中
における自己の存在を十分に認識できず,新しい環境の中に入った時や環境
が変化した時にこれらに対応することができないこと,家庭や学校での日常
生活でストレスが負荷されると,すぐに怒ったりすること,会話中に自分の
考えと異なった展開になった時や,通常の会話中に,すぐに興奮し,怒り,
これが発展して相手を殴ったり,壁を叩いたりすること,自分が物を忘れて
も,他人が盗んだり隠したりしたというように絶えず被害妄想的な発想を行
うこと,思考・行動でストレスが負荷されると,それ以上は行おうとせず,
消極的思考や態度をとること,自己中心的で,自己の主張以外のものを認め
ようとしないこと,高等学校在学中の学業能力について,一般の高校3年生
の4分の1のレベルに達していないと評価されていたこと,以上の事実が認
められる。これらの事実にかんがみると,原告Aは,少なくとも知的産業へ
の就労はまず不可能であり,また,軽微な非知的産業への就労は全く不可能
ではないけれども,記憶や注意力,新しいことを学習する能力,障害の自己
認識,円滑な対人関係維持能力等に著しい障害があって,日常の学校生活や
家庭生活ですら注意の目が離せない状況にあり,社会生活への不適応性や集
団生活での監視の必要性等に照らし,終身にわたって継続的かつ安定して就
労することは困難といわざるを得ない。これに加えて,脳萎縮の現状と今後
の見通しを併せ考えると,原告Aについては,記憶や注意力,新しいことを
学習する能力,障害の自己認識,円滑な対人関係維持能力等に著しい障害が
あって,一般就労が困難な部類に属するものと考えられる。
したがって,原告Aの後遺障害は,後遺障害等級表第3級3号に該当する
ものと解するのが相当である。
2争点(2)(原告らの損害額)について
ア原告Aの損害額
(ア)入院雑費13万2600円
1日につき1300円とし,102日間を認める。
(計算式)
1,300×102=132,600
(イ)入院中の付添費61万2000円
証拠(甲11,原告本人B,同C)によれば,医師による書面の指示が
あったわけではないけれども,医師から口頭で近親者の付添いを示唆され
たこと,原告Aは,当初,意識不明の重体に陥り,その後も,著明な知能低
下等により重篤な後遺症を残し,日常生活動作の相当程度に介護を必要とし
たことが認められ,これらの事実にかんがみ,1日につき6000円とし,
102日間を認める。
(計算式)
6,000×102=612,000
(ウ)通院通学中の付添費54万0000円
証拠(甲11,原告本人B,同C)によれば,原告Aは,著明な知能低
,,,
下等により単独で通院通学するのが著しく困難であったことそのため
原告C及び原告Aの祖父らが平成9年9月から平成10年3月までは中学
校へ,同年4月から同年7月までは高等学校への通学に付き添っていたこ
とが認められ,これらの事実にかんがみ,1日につき3000円とし,1
80日間を認める。
(計算式)
3,000×180=540,000
(エ)通院費0円
本件全証拠によっても,原告Aの1日当たりの通院費の額を確定するこ
とができない。
(オ)家庭教師代30万5520円
証拠(甲24,26,原告本人C)によれば,原告Aは,著明な知能低
,,,
下等により家庭教師による補習を受けなければ高等学校の進級に際し
留年の可能性も相当程度あること,家庭教師代として30万5520円の
支出がなされたことが認められる。
(カ)学費等100万0000円
証拠(甲20ないし23,45,46,50,原告本人B,同C)によ
れば,原告Aは,本件事故により,本来,高等学校への進学が困難であっ
たところ,知人の紹介で現在の学校へ入学することができたこと,学費等
として218万6115円の支出がなされたことが認められるけれども,
他方,一般の高等学校への進学にも,相当程度の支出が見込まれることに
かんがみ,100万円の限度で認める。
(キ)諸雑費213万5910円
証拠(甲30,31,36,40,47,48,51,原告本人B,同
C)によれば,原告Aは,本件事故により,付添人の駐車料金として3万
,,,
円付添人の付添交通費として4万4350円電話代として5800円
治療費の立替分として5万6080円のほか,治療費として被告が自認す
る199万9680円の合計213万5910円の損害が発生したことが
認められる。
なお,整体の費用30万円は,医師が療養上必要と認めた場合ではない
ので,これを認めない。また,自転車の破損3万円は,本件全証拠によっ
てもその額を確定することができない。
(ク)症状固定後の治療費0円
本件全証拠によっても,医師が療養上必要と認めたことや,治療しなけ
ればより悪化する場合でその支出が相当なときに該当することを認めるに
足りない。
(ケ)治療中の慰謝料200万0000円
原告Aの入院日数は102日であり,症状固定日までの通院期間は31
2日(実通院日数17日)であること,原告Aは,本件事故直後,意識不
明の重体にあったことなどにかんがみ,原告Aの入通院慰謝料として20
0万円を認めるのが相当である。
(コ)後遺障害慰謝料1800万0000円
,,,,
原告Aの後遺障害の程度とりわけ原告Aは本件事故により脳挫傷
,,
びまん性軸索損傷の後遺症を負い小学校高学年程度の知能になったこと
その他諸般の事情を勘案し,原告Aの後遺症慰謝料として1800万円を
認めるのが相当である。
(サ)後遺障害による逸失利益8941万0136円
(,,),
証拠甲8ないし12原告本人B同C及び弁論の全趣旨によれば
原告Aは,本件事故当時,15歳の健康な男性で,中学3年生であり,平
成10年6月23日の症状固定時,16歳であったことが認められる。
したがって,原告Aの後遺症による逸失利益については,基礎収入を平
,,
成10年の男子の全年齢平均賃金である569万6800円としこれに
労働能力喪失率の100%,及び,15歳ないし67歳の52年の労働能
力喪失期間に対応するライプニッツ係数である18.4180から15歳
ないし18歳の3年の就学期間に対応するライプニッツ係数である2.7
232を差し引いた15.6948を乗じて算定する。
(計算式)
5,696,800×1.00×15.6948≒89,410,136
(シ)将来の介護料0円
証拠(乙106,108,原告本人C)及び弁論の全趣旨によれば,原
告Aは,本件事故後から症状固定日の前後にかけて,通院通学に近親者の
付添いを必要としていたが,徐々に,その必要性がなくなり,高等学校在
学中には,一応,一人で通学等をすることが可能な状態になっていること
が認められ,これらの症状の程度にかんがみ,医師の指示も特段うかがわ
れないので,将来の介護料は,これを認めないこととする。
イ原告B及び原告Cの損害額
慰謝料各100万0000円
原告B及び原告Cは,これまで原告Aを養育し,その成長を楽しみにして
いたが,本件事故により,原告Aは,脳挫傷,びまん性軸索損傷の後遺症を
負い,知能低下等が著明な状態になったため,原告Aの将来に不安を抱くこ
となどを総合考慮し,原告B及び原告Cの慰謝料として各100万円を認め
るのが相当である。
3争点(3)(過失相殺の当否及び程度)について
ア上記争いのない事実等に,証拠(甲1,4,被告本人)及び弁論の全趣旨
を総合すれば,次の事実が認められる。
(ア)本件事故現場は,岡山県倉敷市gh番地i先市道上(以下「本件交差
点」という)であり,その付近の概況は別紙図面のとおりである。

本件交差点は,概ね東西方向に走る片側一車線の直線道路と南北方向に
走る直線道路が交わり,信号機による交通整理は行われていない。
,,,
東西方向の道路は中央分離帯はないが中央線が波線で引かれており
本件交差点の中まで中央線が設けられ,歩車道の区別がある。片側車線
の幅員は車道が約3.2メートル,路側帯が約0.8メートルの合計約
,。
4メートルであり制限速度は時速60キロメートルに規制されている
他方,南北方向の道路は,歩車道及び車線の区別がなく,幅員が約4.
2メートルである。
本件交差点の西方約192メートル先には,信号機による交通整理の行
われている交差点がある。
本件事故当時の天候は晴れで,路面は乾燥していた。
東西方向の道路を東から走行してきた場合,道路の南側には縁石で仕切
られた歩道があるところ,この歩道の車道寄りに幅約1メートル,高さ
約0.8メートルの植え込みがあり,この植え込みの中に高さ約2メー
トル以上の植木が等間隔に植えられているため,本件交差点付近におけ
る左方の見通しはやや悪い。また,南北方向の道路を南から走行してき
た場合,本件交差点付近における右方の見通しもやや悪い。
(イ)被告は,平成9年5月6日午後5時40分ころ,被告車両を運転し,
概ね東西方向に走る片側一車線の道路を東から西へ向かって,時速約5
0キロメートルないし55キロメートルで走行し,別紙図面①地点にお
いて,本件交差点の西方約192メートル先にある信号機による交通整
理の行われている交差点を数秒眺め,②地点において,その信号機を数
秒望見し,本件交差点に差し掛かったところ,③地点において,南北方
向に走る道路を南から北へ向かって本件交差点に進入してきた<A>地点
の原告A車両に気づき,急ブレーキをかけたが間に合わず,④地点に来
,,,,
た時<×>地点において<B>地点の原告A車両と衝突し被告車両は
停地点で停止した。
なお,原告A車両が,本件交差点に進入するに先立ち,右方の安全確認
を十分にしたことを認めるに足りる証拠はない。
イ上記認定の事実によれば,本件事故は,信号機により交通整理の行われて
いない交差点において,被告車両が優先道路を直進し,原告A車両が交差道
路を直進してきた結果,出会い頭に衝突したものであるが,被告は,道路交
通法42条1号により,徐行義務はないものの,同法36条4項に基づく注
意義務は要求されていることなどにかんがみると,本件交差点を通行する車
両等に特に注意し,かつ,できる限り安全な速度と方法で進行すべき注意義
務があったにもかかわらず,これを怠り,日中に,見通しの良い直線道路に
おいて,約200メートル前方の交差点を数秒にわたり望見し,漫然と被告
車両を運転したものであり,著しい前方不注視が認められること,しかし,
他方,原告Aも,優先道路を横断するに際し,右方の安全確認を十分にすべ
き注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件交差点に進入
したものであることなどにかんがみると,原告らに生じた損害のすべてを被
告の負担とするのは公平に失するといわざるを得ない。
よって,本件においては,上記認定に係る一切の事情を斟酌し,4割の過
失相殺を行うのが相当である。
4損害額(過失相殺後)
以上掲げた原告Aの損害額の合計は,1億1413万6166円であり,原
告B及び原告Cの損害額の合計は,各100万円であるところ,前示の次第で
その4割を控除すると(なお,原告B及び原告Cについては,被害者側の過失
として各斟酌する,それぞれ6848万1700円,各60万円となる。


5損益相殺
原告Aは,本件事故に関し,被告の保険会社から,199万9680円,被
告から,70万円の合計269万9680円の支払を受けたので,これを原告
Aの損害額から控除すると,6578万2020円となる。
6弁護士費用
本件事故の態様,本件の審理経過,認容額等に照らし,被告に負担させるべ
き弁護士費用は,原告Aにつき600万円を,原告B及び原告Cについて各1
0万円を認めるのが相当である。
7まとめ
よって,原告Aの損害賠償請求権の元本金額は,7178万2020円とな
り,原告B及び原告Cの元本金額は,各70万円となる。
8結論
以上によれば,原告らの本件請求は,原告Aにつき7178万2020円,
原告B及び原告Cについて各70万円並びにこれらに対する本件事故日である
平成9年5月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を求める限度で理由があるので,主文のとおり判決する。
岡山地方裁判所倉敷支部
裁判官中川博文
(別紙図面添付省略)

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