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平成12年(行ケ)第459号 特許取消決定取消請求事件(平成14年1月16
日口頭弁論終結)
          判         決
       原      告   株式会社平和
       訴訟代理人弁理士   萼       経   夫
       同          宮   崎   嘉   夫
       同          小 野 塚       薫
       被      告   特許庁長官 及 川 耕 造
       指定代理人      村   山       隆
       同          藤   井   靖   子
       同          山   口   由   木
       同          宮   川   久   成
          主         文
      特許庁が異議2000-70448号事件について平成12年10月
13日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   主文と同旨
 2 被告
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
  (1) 原告は、名称を「パチンコ機」とする特許第2929223号発明(平成
2年8月24日出願、平成11年5月21日設定登録)の特許権者である。
    その後、本件特許につき特許異議の申立てがされ、同申立ては、異議20
00-70448号事件として特許庁に係属した。特許庁は、上記事件につき審理
した結果、平成12年10月13日、「特許第2929223号の請求項1乃至3
に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本
は、同年11月8日、原告に送達された。
  (2) 原告は、平成12年12月6日、本件決定の取消しを求める本件訴えを提
起した後、平成13年10月16日、本件特許出願の願書に添付された明細書(以
下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載の訂正
(以下「本件訂正」という。)をする訂正審判の請求をし、特許庁は、同請求を訂
正2001-39182号事件として審理した結果、同年12月11日、本件訂正
を認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし、その謄本は、同月21日、
原告に送達された。
 2 本件明細書の特許請求の範囲の記載
  (1) 本件訂正前のもの
   【請求項1】複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置と、
    遊技球の入賞によって、前記可変表示装置を変動表示させた後、停止表示
させる始動領域と、
    遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な第2状態とに変化
可能であって、前記停止表示が予め定められた特定識別情報となることに基づい
て、第1状態から第2状態に移行する可変入賞球装置と、
    を遊技盤面に具備するパチンコ機において、
    前記始動領域は、遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な
第2状態とに変化可能であって、前記可変入賞球装置とは異なる一の普通入賞球装
置であることを特徴とするパチンコ機。
   【請求項2】複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置と、
    遊技球の入賞によって、前記可変表示装置を変動表示させた後、停止表示
させる始動領域と、
    遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な第2状態とに変化
可能であって、前記停止表示が予め定められた特定識別情報となることに基づい
て、第1状態から第2状態に移行する可変入賞球装置と、
    を遊技盤面に具備するパチンコ機において、
    前記始動領域は、遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な
第2状態とに変化可能であって、前記可変入賞球装置とは異なる一の普通入賞球装
置であり、
    遊技球の入賞又は通過によって、前記普通入賞球装置を第1状態から第2
状態に移行させる特定始動領域を遊技盤面に設けたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項3】複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置と、
    遊技球の入賞によって、前記可変表示装置を変動表示させた後、停止表示
させる始動領域と、
    遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な第2状態とに変化
可能であって、前記停止表示が予め定められた特定識別情報となることに基づい
て、第1状態から第2状態に移行する可変入賞球装置と、
    前記始動領域とは異なる特定始動領域と、
    該特定始動領域を遊技球が入賞又は通過することによって、複数種類の識
別情報を変動表示させた後、停止表示させる普通図柄表示装置と、
    を遊技盤面に具備するパチンコ機において、
    前記始動領域は、遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な
第2状態とに変化可能であって、前記可変入賞球装置とは異なる一の普通入賞球装
置であり、
    前記普通図柄表示装置に表示された停止表示が予め定められた特定識別情
報となることに基づいて、前記普通入賞球装置は第1状態から第2状態に移行する
ことを特徴とするパチンコ機。
  (2) 本件訂正に係るもの(訂正部分には下線を付す。本件訂正前の【請求項
1】は、本件訂正により削除された。)
   【請求項1】複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置と、
    遊技球の入賞によって、前記可変表示装置を変動表示させた後、停止表示
させる始動領域と、
    遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な第2状態とに変化
可能であって、前記停止表示が予め定められた特定識別情報となることに基づい
て、第1状態から第2状態に移行する可変入賞球装置と、
    を遊技盤面に具備するパチンコ機において、
    前記始動領域は、前記可変表示装置及び可変入賞球装置の直下に配置され
、遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な第2状態とに変化可能で
あって、前記可変入賞球装置とは異なる一の普通入賞球装置のみであり、
    遊技球の入賞又は通過によって、前記普通入賞球装置を第1状態から第2
状態に移行させる特定始動領域を遊技盤面に設けたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置と、
    遊技球の入賞によって、前記可変表示装置を変動表示させた後、停止表示
させる始動領域と、
    遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な第2状態とに変化
可能であって、前記停止表示が予め定められた特定識別情報となることに基づい
て、第1状態から第2状態に移行する可変入賞球装置と、
    前記始動領域とは異なる特定始動領域と、
    該特定始動領域を遊技球が入賞又は通過することによって、複数種類の識
別情報を変動表示させた後、停止表示させる普通図柄表示装置と、
    を遊技盤面に具備するパチンコ機において、
    前記始動領域は、前記可変表示装置及び可変入賞球装置の直下に配置され
、遊技者にとって不利な第1状態と遊技者にとって有利な第2状態とに変化可能で
あって、前記可変入賞球装置とは異なる一の普通入賞球装置のみであり、
    前記普通図柄表示装置に表示された停止表示が予め定められた特定識別情
報となることに基づいて、前記普通入賞球装置は第1状態から第2状態に移行する
ことを特徴とするパチンコ機。
 3 本件決定の理由の要旨
   本件決定は、本件明細書の特許請求の範囲【請求項1】~【請求項3】の発
明(以下「本件発明」という。)の要旨を、本件訂正前の本件明細書の特許請求の
範囲記載のとおりと認定した上、本件発明は、その出願日前の出願であってその出
願後に出願公開された特願平2-35835号(特開平3-237989号)の願
書に最初に添付した明細書に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同一
であると認められ、かつ、本件発明の発明者が先願発明の発明者と同一であると
も、本件特許出願の時にその出願人と先願発明に係る特許出願の出願人とが同一で
あるとも認められないとして、本件発明は特許法29条の2第1項の規定により特
許を受けることができないものであるから、その特許は拒絶の査定をしなければな
らない特許出願に対してされたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成
6年法律第116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律
の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条1項及び2項
の規定により取り消されるべきものであるとした。
第3 原告主張の決定取消事由
   本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の本件明細書の特許請求の範囲記
載のとおりと認定した点は、訂正審決の確定により特許請求の範囲が上記のとおり
訂正されたため、誤りに帰したことになる。本件決定は本件発明の要旨の認定を誤
った違法があり、取り消されなければならない。
第4 被告の主張
   訂正審決により本件明細書の特許請求の範囲が上記のとおり訂正されたこと
は認める。
第5 当裁判所の判断
   訂正審決により本件明細書の特許請求の範囲が上記のとおり訂正されたこと
は当事者間に争いがなく、本件訂正によって、本件明細書の特許請求の範囲は減縮
されたことが明らかである。
   そうすると、本件決定が本件発明の要旨を本件訂正前の本件明細書の特許請
求の範囲記載のとおりと認定したことは、結果的に本件発明の要旨の認定を誤った
こととなり、この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、
本件決定は取消しを免れない。
   よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用は、原告の申
立て等本件訴訟の経過にかんがみ、原告に負担させることとして、主文のとおり判
決する。
     東京高等裁判所第13民事部
            裁判長裁判官   篠  原  勝  美
               裁判官   石  原  直  樹
               裁判官   長  沢  幸  男

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