弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由第一点および第三点について。
 記録によれば、原審の昭和四二年七月五日の口頭弁論期日の呼出状は適法に上告
人に送達されていることが明らかであり、右期日に上告人不出頭のまま口頭弁論を
終結した原審の措置に何ら違法不当の事由を認めることはできない。論旨は採用す
ることができない。
 同第二点について。
 民訴法五八条、五七条は、法人の代表者の代表権が消滅した場合にも、相手方に
その旨の通知がされなければその効果を生じない旨を規定するところ、その趣旨は、
代表者の交替等があつても当然には訴訟手続が中断しないこととし、通知の有無に
よる画一的処理をはかつて、訴訟手続の安定と明確とを期することにあると解され
る。そして、同法八五条により、訴訟代理人がある場合にはその代理権は法人の代
表者の権限が消滅しても存続するのであるから、旧代表者から訴訟委任を受けてい
た訴訟代理人は、代表者の交替後は、その通知がなされる前でも、実質上、新たな
代表者の委任に基づき訴訟を追行するものということができないものではなく、し
たがつて、このような場合には判決にも新たな代表者を表示することが許されるも
のと解するのが相当である。
 記録によれば、本件訴訟の第一審においては、当初、被上告人代表理事Dから委
任を受けた訴訟代理人が訴訟に関与していたところ、中途において右Dが退任し、
Eが新たに代表理事に就任してその旨の登記を経、口頭弁論終結後に右の代表理事
交替の事実の上申が裁判所あてになされたが、そのころまでその事実が上告人に通
知された形跡がないことは所論のとおりであること、しかし、第一審判決には被上
告人代表者として右Eの名が記載され、その送達を受けた上告人も控訴状にEを被
上告人代表者として表示して控訴を提起し、第一審における被上告人訴訟代理人は、
上訴に応訴する権限を与えられてはいなかつたが、あらためて、Eから訴訟委任を
受けて原審口頭弁論期日に出頭し、弁論をしたものであること、原判決にも被上告
人代表者としてEの名が表示されていることが認められる。
 右の経緯に照らせば、第一審判決がEを被上告人代表者として表示したことは違
法とするに足りず、さらに、その送達によつて代表理事交替の事実が上告人に通知
され、かつ、原審においてEが訴訟手続を受継したものと解することができないわ
けではなく、また、Eを新代表者と認めてこれを相手に異議なく訴訟手続を進めた
上告人において、いまさらその代表権を否定し、訴訟手続の違法を主張してこれを
覆滅することには、何らの利益もないものと認められるところである。
 したがつて、Eが被上告人を代表して関与した原審の訴訟手続およびこれを代表
者と表示した原判決には、所論の違法があるということはできず、論旨は採用する
ことができない。
 同第四点について。
 原審の事実認定は原判決の、引用する第一審判決の挙示する証拠に照らして是認
することができ、論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断および右事実認定を
非難するものであつて、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    飯   村   義   美

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