弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 被告が昭和四〇年三月八日なした別紙命令書記載の命令中、P1、P2、P3およ
びP4が昭和三六年一一月二四日した組合休暇の請求に対する不承認、同年一二月八
日服務表についての原告支部の団体交渉の申入に対する拒否がいずれも不当労働行
為を構成しないとして、これらの点に関する原告の救済申立を棄却した部分を取り
消す。
2 原告その余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを三分し、その二を原告、その余を被告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求める裁判
一 原告
「被告が昭和四〇年三月八日なした別紙命令書記載の命令中原告の救済申立を棄却
した部分を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決
二 被告
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」
との判決
第二 原告の請求原因
一 原告の救済申立と被告の命令
 原告は昭和三七年五月一四日訴外宮崎県都城郵便局長P5を相手方として被告に対
し不当労働行為救済申立をした。
 被告は昭和四〇年三月八日右申立について別紙のとおり原告の申立を一部棄却す
る旨の命令をし、その命令書は同月九日原告に交付された。
二 被告の命令の違法性
 しかしながら、右命令のうち原告の救済申立を棄却した部分は、次のとおり事実
の認定および法律上の判断において誤りがあり、違法である。
 すなわち、右命令は(イ)原告組合員P1らが昭和三六年一一月二四日、同月二七
日開催予定の原告支部委員会に出席するため休暇を求めたところ宮崎県都城郵便局
長らの管理者(以下、同局を都城局といい、その管理者を当局ともいう。)がこれ
を拒否したため、結局右委員会を開催することができなかつたのであるが、かかる
当局側の行為が不当労働行為にならないとし、更に(ロ)原告が昭和三六年一〇月
二五日から同年一二月一四日までの間一〇回にわたつて当局に団体交渉(以下、団
交という。)を申し入れたが拒絶された事実について、原告の団交申入の事実を一
部否定した外、当局の右の拒否を不当労働行為を構成しないとしているが、右はい
ずれも誤りであつて、右の限度で右命令は取り消さるべきものである。
三 本件不当労働行為の背景
 まず当局の以上の行為が不当労働行為を構成する事情として右休暇の請求、団交
申入当時の労使の状況を理解する必要がある。
1 全逓信労働組合(以下、全逓という。)はその昭和三六年六月開催の第一三回
全国大会において郵便物の慢性的遅配の原因は定員不足と施設の狭隘にあることを
明らかにし、これを解消するため同年夏からその年末にかけて郵政省当局に対し大
幅増員の要求をした。
 これに対し郵政省当局は郵便物遅配の原因が定員不足にあることを認めながら、
その主たる原因は全逓の闘争と組合員のサボ行為にあるものと宣伝し、集配業務の
管理体制を強化するため特別考査班を郵便滞貨の著しい局に派遣し、職場における
組合活動を破壊しようとした。
 特別考査班は実態調査と称して強制労働、監視労働を行い、また全逓各支部が各
所属長と締結していた労働条件等に関する労働協約等を一方的に破棄させ、その結
果所属長が一方的に労働条件を変更するにいたつた。
2 ところで原告支部は宮崎地区における中枢的組合であつて組合活動は極めて活
発であり、特に労働条件の向上に努力を重ねてきた結果、都城局の職場の労働条件
に関し多くの労働協約、確認事項、了解事項その他の労働慣行が築き上げられて来
た。
 熊本郵政監察局は昭和三六年九月一一日から翌三七年一月七日にかけ郵政監察官
らから構成される特別考査班を都城局に派遣し、その結果同局における郵便物遅配
の原因の一として、同局における労使慣行等が管理権を侵害していること、職場規
律が乱れていることをあげ、その改善に適切な処置をとる必要があると称して都城
局長をして労働協約、確認事項その他多くの労働慣行を一方的に破棄させ、かつ、
原告支部との団交を拒否させる一方、監視労働、服務表の改正等一方的な労働条件
の切り下げを強行させ、これに対する原告支部の抵抗を抑圧するため、職場集会を
禁止し、上級機関の組合事務所への立入禁止等の行為を行わせて、原告支部を弱体
化しようとした。
 本件休暇の不承認、団体交渉の拒否もこのような組合弱体化の一環として行なわ
れたものである。
3 なお、右以外の命令書三頁2当時の労使関係の概況(1)の事実は認める。た
だし右の最後の熊本郵政監察局の労働関係担当の職員が都城局において業務の指導
に当つたとあるが、これはむしろ前述の組合弱体化の指導に当つたというべきであ
る。
 右概況(2)の事実は否認する。
 命令書は当時全逓本部が年末闘争を組み、この指令に基き原告支部が活発に職場
闘争を行つたと認定しているが、右全逓本部が昭和三六年の年末闘争の指令第一〇
号を発出したのは同年一一月一五日であり、原告支部は同年一〇月二三日以前は何
らの闘争を行つていなかつた。
 都城局長が同年一〇月二三日労働慣行を破棄したのち、原告支部は不当な業務命
令に対する抗議、平常能率の維持など若干の対抗措置をとつたが、特別考査班の厳
重な労働監視、組合の上部機関の役員の入局阻止等のため抗議は途中で中止するの
止むなきに至り十分な対抗措置をとることができなかつた。指令第一〇号以後の年
末闘争に際しても原告支部において職場闘争を活発に行い得る状況にはなかつた。
四 組合休暇の不承認について
 被告は別紙命令書第一3(2)ハ(五頁)において昭和三六年一一月二四日にお
ける郵政省就業規則第二八条以下の規定による組合休暇(以上、組休という。)の
請求者をP1、P2、P3およびP4の四名と認定している。
1 しかし、右四名の外P6、P7およびP8が昭和三六年一一月二七日開催予定の原
告支部委員会に出席するため同月二四日か二五日頃前記就業規則の規定に基きそれ
ぞれ口頭で所属課長に組休の請求をしたところ、いずれも闘争期間中であることを
理由に拒否されたものである。右の休暇不承認により前記支部委員会は開催が不可
能となり、延期の止むなきに至つた。
 被告が右命令においてP6外二名の組休不承認の事実を肯定しなかつたのは事実認
定の誤りである。
 なお、別紙命令書四頁3支配介入について、(1)(2)イ、ロ、ハ、ホの事実
は争わない。
2 いわゆる組休は専従役員以外の組合員が組合業務に従事する場合に、その請求
により与えられるものとして就業規則に定められているものである。郵政省就業規
則第二八条によると、組合の大会その他の会議に出席する場合に所属長の許可を受
けて休暇をとるものであるが、郵政省官房人事部長の通達により、右規則について
は、組合員が支部委員会に構成員として出席する場合には業務の運営に支障がない
限り所属長は許可すべきものと定められているのである。
 都城局においては以前には組休が不許可となつたことは一度もなく、一種の既得
権的な労働慣行として運用されて来たものである。
 被告は、当時の労使関係の下では組休を不許可にしたことをもつて介入行為とす
るわけにはいかないと判断しているが、右判断は当局の不当労働行為意思を無視す
る不当なものといわなければならない。
 当局側は昭和三六年一一月二七日開催予定の原告支部委員会が闘争を激化させる
ものとして右委員会出席のための年次有給休暇(以下、年休という。)や組休の請
求をすべて一律に不許可としたものであるが、当時原告支部は若干の職場闘争を行
つていたが、それは決して違法なものではなかつた。
 右委員会は支部規約第一三条によつて招集された定例のものであり、年末闘争と
はかかわりなく過去半年間の活動を総括し、今後半年間の活動方針を決定する組合
にとつて非常に重要な意義があり、当局が主張しているような闘争委員会ではなか
つた。また原告支部は当時わずかに時間外労働の拒否、平常能率の維持、時間外集
団交渉などの対抗措置をとつていただけであり、闘争を激化させ得る状況にはなか
つた。
 その上どのような闘争手段をとるかは原告支部が自主的にきめることで、当局が
干渉できる筋合ではない。
 当局が前記郵政省就業規則や通達に反して前記組休を不許可にしたのは、原告支
部を弱体化しようとしたからに外ならない。
 従つて、組休制度が便宜供与であるとしても、当局が前記原告支部委員会の開催
を阻止する意図の下に従来問題なく許可して来た右委員会出席のための組休の請求
を不許可にしたことは、組合運営に対する介入行為といわなければならない。
五 団体交渉の拒否について
1 郵政省当局はいわゆる管理運営事項、権限外事項、苦情処理事項については一
切団交には応じない方針をとつてはいたが、都城局においては従前からこれらの問
題についても団交を行つて来た。
 しかるに前述の特別考査班が同局に来局するや、その指導の下に局長(当時P9)
は一切の事項について団交に応じない方針をとり、これにより原告支部の弱体化を
図つたものである。
 原告支部は都城局における前述の労働慣行等の破棄及び特別考査班によつて惹起
された種々の問題について各事項ごとに団交によつて解決する方針を立て後記のよ
うに団交を申し入れたのであるが、前述の当時の労使関係からして緊急にこれらの
事項について団交を行う必要があつたのである。
2 以下原告が昭和三六年一〇月二五日以降申入れた団交に対する当局の拒否が不
当労働行為を構成する所以を各団交申入別に述べる。
(一) 昭和三六年一〇月二五日申入の件
 被告は別紙命令書六頁4(1)、同一二頁2第三文前段のように右申入に関する
事実認定と判断をしている。
 しかし、当局(具体的には都城局P10庶務会計課長)は上局の指示により労働協
約等の破棄通告を行つたものであることを唯一の理由として右団交申入を拒否した
ものである。当局が話し合いには応じてもよいが、今特別考査中で混雑しているの
で、同年一〇月二七日以降に話し合いたいと答えた事実はない(この点について、
当初この事実を認めたがこれは真実に反し錯誤に出でたものである。)。
 その余の右4(1)の認定事実は争わない。
 仮に右のような回答があつたとしても、団交と話し合いは本質的に異るものであ
り、当局に話し合いの意向があるからといつて団交を不当に拒否したものといえな
いという判断は誤りである。
 仮に両者を同一視できるとしても、前記破棄通告が上局の指示によるとか、特別
考査中で混雑しているとかいうことをもつて団交を拒否する正当な理由とすること
はできない。
 すなわち破棄通告が上局の指示によるものとしても、都城局長の権限で行つたも
のであり、かつ、この破棄により従前の労働条件が大幅に変更されたものであり、
更に一〇月二五日の申入は、最初の申入であるから少くとも局長としては組合の主
張に耳をかたむけ、できる限りの説明を行うべきであつた。
 また特別考査中であつても、直ちに団交を行う時間的、精神的な余裕が全くなか
つたとはいえない筈である。
 なお、原告が同月三〇日、三一日、同年一二月八日同一事項について団交を申し
入れたのに当局がいずれもこれを拒否したことから見ると、一〇月二七日以降なら
話し合うとの回答は単なる口実に過ぎなかつたことは明らかである。
(二) 昭和三六年一〇月三〇日および三一日申入の件
(1) 一〇月三〇日申入の点に関する命令書七頁4(2)の事実は次の事実を除
いて認める。すなわちP2原告支部書記長は一〇月三〇日当局に対し交渉事項につい
て監視労働のことであると説明したところ、当局側はそういうことはしていないか
らと団交を断つたので、P2は監視労働の一例としてP11に対する超勤命令の件を挙
げたところ、当局側はその問題はすんでいるといつて団交拒否の態度を変えなかつ
たのである。
 当時特別考査班は都城局において組合員の登庁時から退庁時までの間八ミリカメ
ラによる撮影、組合活動家に対する多数による監視、郵便課外務員の尾行、病欠者
の自宅訪問等の監視労働を行つたが、このことは特に組合役員の多い郵便課を対象
に行われた。
 当時まで都城局には担務の変更を行うには事前に分会長および本人の了承を得な
ければならないとの慣行があつたが、これが同年一〇月二三日に破棄され一方的に
担務の変更が行われるに至り全組合員にとつて重大な問題となつたが、特にP12は
同月二四日から同月三〇日にかけて三回も担務の変更を受けた。
 原告支部はこのような急激な労働条件の変更に対処してこれを団交によつて解決
する方針を定め、同月三〇日「郵便課外勤組合員の労働条件について」と題する団
交を当局に申し入れ、その申入事項の内容を具体的に説明するための一例としてP
11に対する超過勤務命令の件を挙げたところ、当局は監視労働のようなことはして
いないとして団交を拒否したのである。
 しかしながら前掲団交申入事項の文言と前述の郵便課員に対する査察の実状から
しても、右の交渉事項が単なる一組合員の問題ではなく、都城局郵便課外勤組合員
の労働条件に重大な変更が押しつけられたことに対するものであることは極めて明
白である。
 従つて、被告の命令(一三頁)が原告支部側が右交渉申入事項の内容を説明する
ための一例として挙げたに過ぎないP11の件について苦情処理手続により解決した
いと回答したからということだけで不当な団交拒否に当らないとするのは正当では
ない。
 しかも苦情処理に関する協約では団体交渉事項は苦情処理手続の対象とならない
ことを明らかにしているが、一方団交の方式及び手続に関する協約では交渉事項に
ついて何らの限定を加えていないから、苦情処理手続の対象事項が団体交渉の対象
となし得ないとする何らの根拠がないのである。
 従つて原告支部が問題解決の方策として苦情処理手続を選択せずに団交を申し入
れることは自由であつて、当局はこの団交の申入を苦情処理手続がある故をもつて
拒否し得ないものである。
(2) 昭和三六年一〇月三一日申入に関する別紙命令書七頁4(3)の認定事実
は認める。
 右申入のうち「郵便外勤P12君の労働条件について」の件については、苦情処理
事項であることを理由とする団交の拒否が正当な理由にならないことは前述のとお
りである。
 なお、当局が話し合いには応ずる旨を付言したからと言つて団交の拒否が正当と
なる理由がない。当局側の話し合いの提案は原告側の意見、要望について双方都城
局職員三名以内で三〇分以内に話し合うに過ぎなかつたのであるから、結局組合側
に意見、希望を述べる機会を与えるに過ぎないものである。かような話し合いは団
交とは無縁のものである。
 次に右申入のうち「強制労働排除について」の件については被告公労委の命令に
は何らの判断もなく、判断遺漏の違法がある。
 原告支部は特別考査班の監視の下での労働を強制労働と評価したから「強制労働
の排除について」団交を申し入れたのである。これに対し当局側が法令に違反する
強制労働の事実はないと考えるという回答だけで団交を拒否できるならば、およそ
使用者は交渉事項にかかる事実はないとか、正当な処置と考えるという一片の回答
だけで不当労働行為の非難を受けることなしに団交を拒否できることとなるが、か
ような判断が許されないことは明らかである。
(三) 昭和三六年一一月三〇日、一二月六日、同月八日(ただし、解雇関係に限
る。)申入の件
都城局の臨時職員P13、同P14、同P15および同P16は相当長期にわたつて雇用さ
れ(P13は二年一ケ月、P14は二年、P8は九月、P16は七月)いずれも臨時職員の
中心として熱心に組合活動を行つて来たところ、同年一一月解雇された。当局は組
合活動に積極的な臨時職員は解雇する態度を示すことにより、臨時職員が組合活動
に対し消極的になることを期待したものである。
 原告支部は当局のこの意図を見抜き、一一月三〇日、一二月六日、同月八日の三
回にわたつて右の解雇について団交を申し入れた。
 被告の命令は右一一月三〇日には、原告支部が団交の申入をしたことは認められ
ないとしているが、原告支部の書記長P2は同日午後二時頃都城局P10庶務会計課長
に対し組合員である非常勤職員二名の不当解雇問題について団交の申入をし、同課
長は解雇問題は人事権に関する事項であるから団交には応じられないと拒否してい
るのである。
 同年一二月六日、同月八日(但し解雇関係に限る。)の申入に関する命令書八頁
以下の4(5)(6)の事実は認める。
 当局は後の二回の団交申入についても、解雇関係は人事権に関する事項であるこ
とのみを理由として団交を拒否したものである。
 命令書一三頁は当局が解雇問題についての団交申入について、これを苦情処理手
続による処理に反対していなかつたという事実を認定し、だから不当な団交拒否に
ならないとの判断をしている。しかし右の事実認定にそう何らの証拠はなく、かか
る認定は独断である。仮に右認定のとおりとしても、前記のとおり苦情処理手続は
団交を排除するものではないし、特に解雇が不当労働行為であるとして団交の申入
がなされている以上、単なる個人の苦情の問題ではないのであるから、かかる場合
はそもそも苦情処理手続に適さないのである。
 なお、当局は人事権の問題は管理運営事項であることの故をもつて団交を拒否し
たが、同事項であつても、労働者の労働条件その他労働者の待遇と経済的地位の向
上に関連するものは団交の対象となるべきものである。
 郵政省当局と全逓信労働組合との間に昭和三五年四月三〇日明らかに管理運営事
項であるものについては別として、団交事項であるかどうか疑わしい事項について
も、直ちに団交を拒否することなく、一応交渉に入つた上で交渉事項か否かを明ら
かにする旨の合意が成立しているのであるから、当局の前記団交拒否が不当である
ことは明白である。
(四) 同年一二月八日(ただし、命令書九頁④から⑦までの事項に限る。)、一
二日、一四日の申入の件
 右各団交申入に関する当局の態度についての命令の事実認定(命令書九、一〇
頁)には、これにそう証拠は何もない。単に被告の審理において当局側が被告認定
のとおり主張しただけである。
 右の申入に対し、当局はいずれも管理運営事項であるとして団交を拒否したので
あるが、その違法なこと前述のとおりである。
 一二月八日申し入れた命令書九頁④支部団体交渉の件については、原告支部申入
の団交が拒否されていることについて団交を求めたのであるから、団交の手続に関
する協約の趣旨からも当然右申入に基く団交を拒否できないものである。
 同⑤ないし⑦の申入事項も労働条件に関するものであるから、管理運営事項であ
るといつて団交を拒否できないし、一二月一二日、同月一四日の申入事項も労働条
件に密接な関係がある事項であるから団交拒否はできないものである。
 被告は、右三日間の団交申入について、集団交渉になりかねなかつたのであるか
ら、不当な団交拒否ではないとしている(命令書一二頁)。
 しかし、原告支部は右各団交を集団交渉をもつて行うことは予定していなかつ
た。全逓中央本部の昭和三六年指令第一二号も「時間外に間断なく集団交渉を行う
こと」を指令したもので勤務時間中に集団交渉をせよと指令したものではない。し
かも原告支部は勤務時間中の交渉を求めていたのであるから集団交渉となる虞はな
かつたし、また特別考査班の監視の下であつたのでかかる可能性は全然なかつたも
のである。
(五) 同年一二月八日の服務表についての申入の件
 被告はこの点について、勤務時間及び週休等に関する協約付属覚書により服務表
は所属長が定めることになつているので、当局が団交を拒否したのは不当といえな
いと判断している(命令書一三頁)。
 しかし、右覚書は休息時間の実質的削減という労働条件の改悪を所属長が自由に
なし得ることまで定めたものではない。
 仮に右覚書によつて服務表を定めるのは所属長の権限であるとしても、そのこと
が所属長において服務表をどのように定めても自由であることにはならないし、ま
た、組合が求めるこれらに関する一切の団交を排除することになるものでもない。
 本件の場合従来休息時間が確実にとれるように服務表が定められていたのを、当
局は手空き時間を利用してとるように改め、更に休息がとれなくても、後日に繰り
越すことを許さないように改めたものである。このような労働条件の改悪を内容と
するものであるから、団交の対象となることは当然である。
 しかも都城局においては従来これらの問題についても団交が行なわれていたにも
かかわらず、当局は原告支部の弱体化を狙つてこの点に関する団交を拒否したもの
である。
(六) 同年一二月八日(命令書八頁②に限る。)、一二月一一日、一二月一三日
の申入の件
 命令書における右一二月八日、一一日の申入に対する当局の回答の認定(同九頁
(6)後段、(7))は誤りである。また右認定にそう証拠は何もない。
 真実は当局において右申入事項は管理運営事項であるとして団交を拒否したもの
である。
 なお一二月一三日の申入に関する命令の事実認定(同一〇頁(9))は争わな
い。
 仮に当局側が命令認定のような回答をしたとしても、右回答は原告支部の要求を
認めて直ちに実施するという回答ではないのであるから、命令書認定の回答をした
だけで団交に応ずる義務がなくなるわけではない。まして一二月一三日の申入に対
する回答は団交事項とは思えないという回答であつたのであるから、かかる回答で
団交に応ずる義務がなくならないことは当然である。
(七) 被告は、原告支部が同一事項について再度団交申入をしたことはないと認
定している(命令書一四頁)が、労働条件および解雇については各三回団交を申し
入れており、一二月八日にはそれまですべての団交申入が拒否されたことについて
「支部団体交渉について」ということで団交を申し入れている。
 また当局が団交事項でないという理由で団交を拒否した場合などは、再度の申入
をすることは無意味なことであるから、それをしなかつたからといつて、不当労働
行為の判定の上で特別の意味を有すべき筋合ではない。
六 むすび
 以上のとおり、被告の別紙命令中原告の救済申立を棄却した部分は違法であるか
ら、その取消を求める。
第三 被告の答弁
一 原告の請求原因第一項の事実は認める。
二 被告の別紙命令中原告の救済申立を棄却した部分については、別紙命令のとお
りの事実があり、右命令のとおり判断すべきものであるから、被告の命令は適法で
ある。
三 原告の請求原因第三項のうち、全逓が大幅増員による労働軽減と郵便遅配解消
を中心目標としていわゆる昭和三六年年末闘争を行つたこと、郵政省が郵便物の滞
留が甚しい郵便局に業務状況監察のため特別考査班を派遣したこと、その業務監察
の結果、その指示により都城局長が原告との確認事項等を権限外事項、管理運営事
項に関するものであるとして破棄したことは認めるが、その余は知らない。
四 組合休暇の不承認について
1 原告の請求原因第四項1掲記のP6外二名が組休を請求したことは争う。なお郵
政省就業規則第二八条によると組休の請求はあらかじめ組休付与願いを提出してす
ることとなつており、口頭による請求は認められていない。
2 同第四項2のうち、組休の制度が一種の既得権的な労働慣行であり都城局にお
いては組休が不許可となつたことは一度もなかつたことは知らない。
 原告は組休の拒否が不当労働行為であるという。
 しかし郵政省の組休は労働基準法に定める休憩権の行使としての年次有給休暇制
度と異り、単に就業規則のみに基づき使用者の許可によつて与えられるもので、い
わゆる組合に対する便宜供与の一種である。本来労働組合は使用者に対して独立の
立場に立つもので、その存在や運営について使用者の便宜供与に依存することは決
して好ましいものではない。
 本件の場合の事情について見ると、当時全逓はいわゆる昭和三六年年末闘争を組
み、諸休暇、休憩、休息の完全消化、平常能率の徹底、休憩時間外の職場大会の開
催、時間外労働の拒否等を指令し、この指令を受けた原告支部は遵法闘争等を活溌
に行つて昭和三六年年末闘争を有利に進展させようと当局側に対していわゆる圧力
をかけていたときである。
 このような時に当局側の許可によつて与えることとされており、組合用務のため
に使用される組休を当局側が許可しなければならないと解するのは適当ではない。
 以上これを要するに本件組休付与の拒否は、組休が就業規則に定められている便
宜供与にすぎないこと、組休は当局側の許可によつて与えられ組合用務のために使
用されるものであること、更に当時の原告の活溌な職場闘争の状況を合せ考えると
不当労働行為とすることはできないというべきである。
五 団交の拒否について
1 原告の請求原因第五項1のうち郵政省当局が管理運営事項、権限外事項につい
て団交に応じない態度をとつていたことは認める。
 苦情処理事項については、郵政省当局は苦情処理手続又は話し合いによつて処理
する方針をとつていたのである。
 都城局においては、従来から団交を行い各種の了解事項、文書確認などを行つて
来たことは認める。
 特別考査班が都城局に来局して以来、当局が一切の事項について団交に応じない
方針をとつたこと、またそのことによつて原告支部の弱体化を図つたことはいずれ
も争う。
2 昭和三六年一〇月二五日申入の件
 右申入に対してP10庶務会計課長は当時上局の特別考査中で混雑した状態なの
で、「この交渉は二七日以降にして貰えないか。」「すぐには一寸応じかねま
す。」と答えたのである。原告主張のように団交と話合いとを峻別して団交は拒否
すると答えたものではない。
 なお、業務の繁忙なとき団交申入に対して数日の延期を求めることはやむを得な
いことであつて、これをもつて団交を拒否したものということはできない。
3 昭和三六年一〇月三〇日、三一日申入の件
 原告の請求原因第五項2(二)のうち、特別考査班が原告主張の監視労働を行つ
たことおよび都城局郵便課に組合役員が多かつたことは知らない。
 原告が同項において主張する都城局の労働慣行が昭和三六年一〇月二三日破棄さ
れたことは認めるが原告支部がこの問題を団交によつて解決する方針を定めたこと
は知らない。
 公労法第一二条は、職員の苦情を適当に解決するため労使間で苦情処理共同調査
会議を設けるべきことを定めており、郵政省と全逓との間には「苦情処理に関する
協約」が締結されている。この協約によつて郵便局には支部苦情処理委員会が設け
られ、職員の日常の労働条件に関する苦情等を処理することとなつている。この郵
便局の段階で解決しなかつた苦情は地方郵政局に設けられている地方苦情処理委員
会に、更に本省に設けられている苦情処理共同調整会議に移されてその解決がはか
られることとなつている。
 苦情処理制度は職員の苦情を簡易迅速に解決するために設けられたものであつ
て、個々の苦情をいちいち正規の団交で処理することが不適当、かつ、非能率であ
るとの立場に立脚するものである。
 職員の苦情は右の手続が存する以上、第一次的には右手続によつて解決がはから
るべきである。従つて都城局長がP12の担務変更が問題ならまず苦情処理手続によ
るべきものとしたことをもつて団交拒否の不当労働行為とすることはできない。
 また同局長が強制労働排除の件については、かような事実はないから団交には応
じられないが、話し合いには応ずると答えているのでこれをもつて不当労働行為と
することはできない。
 なお、原告は右申入の件について別紙命令書には判断が遺脱しているというが、
右命令書七頁第一4(3)において右申入に関する事実の認定をし、同書一三頁最
後の段落において右申入に対する団交の拒否が不当とはいえないと判断しているか
ら、原告主張のような判断の遺漏はない。
4 昭和三六年一一月三〇日、一二月六日および同月八日(ただし、解雇関係に限
る。)申入の件
 原告の請求原因第五項2(三)の事実中原告主張の臨時職員の雇傭期間、同人ら
が臨時職員の中心として熱心に組合活動を行なつて来たことは知らない。原告支部
が同年一一月三〇日非常勤職員の解雇について団交を申し入れたことは争う。
 郵政省当局と全逓との間に昭和三五年四月三〇日原告主張の内容の議事録確認が
なされたことは認める。
 別紙命令書九頁(6)の後段は、乙第六六号証、乙第六八号証と弁論の全趣旨に
より認定されたもので、原告がこれにそう証拠がないというのは誤りである。
 原告は解雇が不当労働行為であると主張されている場合の紛争は苦情処理手続に
よる解決には適しないというが、前記苦情処理に関する協約はそのような限定をし
ておらず、解雇に対する不満の理由がいずれにあるかを問わず、苦情処理手続によ
ることができるわけである。
 なお、解雇に関する条件は労働条件であつて、団交事項には当るが、苦情処理の
手続が認められている場合には、具体的な解雇の当否は、まず苦情処理手続による
解決にゆだねるのが制度の趣旨であると解すべきである。
5 昭和三六年一二月八日(ただし別紙命令書九頁④から⑦までの事項に限
る。)、一二日、一四日申入の件
 当時の都城局における労使の状況は次のようなものであつた。
 すなわち、昭和三六年一一月一五日には全逓本部から指令第一〇号が出され、四
万名増員、組合案による仲裁々定の実施、年末手当二、五月分の支給等を目標とし
て同年一一月一八日には全国一斉に職場総けつ起大会を開催すること、一一月一九
日以降労働基準法第三六条に定める協定締結の拒否戦術に入ること、平常能率の徹
底、各種業務取扱い規定の遵守、休憩、休息、休暇の完全消化などの行動を確実に
実施することなどが指令された。
 全逓本部は同年一二月一〇日指令第一二号をもつて、右指令第一〇号の実施を一
層強化すること、時間外集団交渉等をもつて要求解決促進を所属長に要求すること
を指令した。
 都城局においては、同年一一月から同年一二月一五日にかけて、毎朝の朝礼の際
組合員から職場要求が提出され、長いときは三〇分にもわたつて職員が仕事につか
ない状況があつたり管理者が組合員の担務変更を行なうと組合員が集団で勤務時間
中に押し寄せてくるというような状況であつて、その労使関係は異常に緊迫してい
た。
 このような状況の中で当局が闘争期間中を避けて当時年末闘争の終結が予想され
ていた同年一二月一五日以降に話し合いを延期したいと答えたことをもつて、正当
な理由なく団交を拒否したものとはいえない。
 なお、別紙命令書九頁(8)、同一〇頁(10)の事実は乙第六六号証と弁論の
全趣旨によつて認定されたもので、原告の主張するようにこれにそう証拠がないと
するのは誤りである。
6 昭和三六年一二月八日の服務表に関する申入の件
 原告は服務表を定めることが所属長の権限であるとしても、この点に関する団交
が排除されるものではないと主張する。
 しかし「勤務時間および週休日等に関する協約」附属覚書には所属長は服務表を
定めこれを関係職員に周知し、かつ、服務表を変更する場合その実施予定日の一週
間前までにこれを関係職員に周知すると定められている。これは服務表を当局が作
成変更できることを組合が認めたものであり、かつ、具体的に服務表の変更につい
て苦情があるときは、苦情処理手続によつて解決するというのが右協約の趣旨であ
ると解すべきである。
7 昭和三六年一二月八日(命令書八頁②に限る。)、同月一一日および一三日の
申入の件
 原告は右申入に関する事実認定には、これにそう証拠はないというが、被告は乙
第六六号証と弁論の全趣旨によつてこれらの事実を認定したものである。
 原告はなお右申入に対して命令認定の程度の回答がなされたからといつて、当局
に団交に応ずる義務がなくなるわけではないというが、右申入の内容はいずれも職
場要求的なもので、当局はその場で回答をしているのであるから、たとえその回答
が原告に満足を与えなかつたとしても、そのことをもつて団交を拒否したものとい
うことはできない。
8 むすび
 以上のとおり、原告の各個の団交申入に対する当局の態度がいずれも不当労働行
為を構成しないのであるから、この点に関する被告の命令は適法である。なお、被
告の命令は同一事項について再度団交を申し入れたことがないことをもつて、それ
ぞれの団交の申入に対する当局の態度が不当労働行為であることを否定する論拠と
するものではない。
第四 参加人(国)の主張
一 請求原因事実の認否
 原告の請求原因第一項の事実、同第三項のうち、全逓が大幅増員等を要求してい
わゆる昭和三六年年末闘争を行つたこと、郵政省が郵便滞貨の著しい局に特別考査
班を派遣したこと、原告主張の期間都城局に郵政監察官らによる特別考査班が派遣
されたこと、その指示に基き都城局長が原告との間の確認書等を権限外事項又は管
理運営事項に関するものであるとして破棄したことは認める。
 右考査班が職場の組合活動を破壊しようとしたこと、実態調査と称して強制労
働、監視労働を行つたこと、当局が原告支部の弱体化をはかつたことはいずれも否
認する。
 なお、原告が当初昭和三六年一〇月二五日団交申入の件について、当局が同年一
〇月二七日以降に話し合いたいと回答したことを認めながら、後にこの回答の事実
を否定したのは、自白の取消に該当し、参加人は右取消には異議がある。
二 本件の背景
本件については、次の事情があることを考慮すべきである。
1 全逓が昭和三三年七月から昭和三四年末にかけて実施したいわゆる団体交渉再
開闘争以来郵便物の遅配は慢性化の状態となり、昭和三六年に至つても解消せず重
大な社会問題となつた。
 郵政省は諸施設の改善、非常勤職員の雇傭など鋭意郵便物の遅配の解消に努力し
て来たが、一部の局においては成果があがらなかつたので、その原因を調査するた
め、特に全国で郵便業務の運行不良局である局について郵便業務運行特別考査を実
施した。都城局もその対象局の一つであつた。
2 原告支部は昭和三四年頃から主として超過勤務拒否、極端な規制闘争、滞留郵
便物の棚上(その日滞留した郵便物を順次排送処理をしないで、そのまま残して処
理をしない。)、業務命令拒否、集団交渉、管理者のつるし上げ、非常勤職員に対
する業務指導の拒否などをして郵便物の滞留をおこし、職場規律を乱し管理体制を
麻痺させる手段をとつて来た。
 このような事情のため、当局は当該局の組合とは約束できない権限外の事項や管
理運営事項に関する組合の確認要求に対し、これを拒否し続けると当時の状況とし
て業務がますます混乱すると考え、何とか事態を収拾しようとして昭和三四年頃か
ら原告支部と右のような事項についても約束、確認をするに至つた。
 原告支部はこれらの約束、確認事項を楯にして当局の行う業務の正常運行を図る
ための措置に協力しなかつたため、必要な労務指揮権の発動が困難となり、業務の
正常な運行が阻害され、ますます郵便物の滞留が増加し、昭和三六年八月頃の滞留
は管轄区域内の当時の人口九万余人の都城局において一日平均約一二、〇〇〇通、
最高一五、〇〇〇通(市内配達約三、四日、市外配達約四、五日の遅れ)で、この
状況は熊本郵政局管内において特に著しいものであつた。
3 そこで熊本郵政監察局は昭和三六年九月一一日から同月一四日まで都城局の郵
便業務運行特別考査を行つた。
 その結果同局の郵便物遅配の主な原因は原告支部との前記事項に関する約束、確
認などが多数存在し、職場規律が乱れ、同局郵便課員の作業能率が低く郵便物を配
達するための道順組立に長時間を要し、そのために配達の出発が著しく遅れていた
こと、また同課員に突発的欠勤が多いなどの事情が判明した。
4 そのため都城局長は熊本郵政監察局長の指示に基き同年一〇月一七日、一九日
は口頭で、同月二三日は文書をもつて、原告支部に対し前記約束、確認はいずれも
権限外の事項、管理運営事項に関するものであり、本来無効のものであることを宣
言する意味で破棄を通告すると共に、要員を適正に配置するため服務表を改正し
て、これを職員に周知させた上同年一一月三日からこれを実施し、また的確な業務
命令を発して業務の正常な運行に努め、一方団交についても、それまではとかく対
象事項の性格を十分検討することなく安易に団交の形式による話し合いに応じてい
た態度を改めるように努力したのである。
 これに対し原告支部は強く反対し、業務命令に反抗するばかりでなく、勤務時間
中集団抗議を行つたり、毎朝ことさらに即答できないような職場要求を出して管理
者をつるし上げて作業着手時間を遅らせたり、管理者に脅迫めいた悪口雑言を吐く
といつた状態で同局管理者の労務指揮権の行使を集団的に拒否する状態となるに至
つた。
 更に原告支部は同年一一月一九日以降は全逓の指令第一〇号に便乗して郵便課職
員において出勤時に始業開始合図のベルが鳴ると一列にならび各人が故意に出勤簿
への押印を遅くして作業着手時間を遅らせたり、年次有給休暇は前日午前中に請求
することに定められているのにかかわらず、当日朝突発的にこれを請求して業務運
行計画にそごを来たさせたり、勤務時間中に当局側に対して集団交渉、つるし上げ
を行ない、同局長の使用許可を得ることなく同局会議室を使用して職場集会を開催
したりした。
 以上の違法な業務命令拒否、怠業、集団抗議を行つた同局職員に対し免職一名、
停職三名の懲戒処分がなされたことからしても、当時の都城局における職場闘争が
いかに常軌を逸したものであるかが推察されるであろう。
三 郵政省における組休の取扱い
 郵政省において組休が認められた趣旨は、労働組合の生成のために必須不可欠な
限度において正当な組合活動に対して業務の運行に支障のないかぎり使用者の組合
に対する便宜供与として認めていこうとするにある。
 従つて、組休は正常な労使関係を前提として正当な組合活動が行われる場合にの
み付与されるものであり、違法な闘争指令が発出されている場合や職場において集
団的に労務指揮権の行使が阻害されているような違法な職場闘争が行われている場
合など正当な組合活動が期待できないような労使関係にあるとき組休が付与さるべ
きでないことは当然である。
 組休の制度が原告主張のような一種の既得的な労働慣行であり、都城局において
は当時まで組休が一度も不許可になつたことはなかつたとの原告の主張事実はいず
れも否認する。
四 別紙命令書中の事実認定について
 被告の別紙命令書第一3(2)ホ(六頁)の「支部委員会が予定どおり開催する
ことが困難となつた」ことは不知。同頁中4(1)中当局が「破棄通告は上局の指
示により行なつたものであること」を回答したことは否認する。昭和三六年一〇月
二五日の団交申入事項は「都城局の労働条件並びに労働慣行について」というので
あつて、具体的な内容は明らかでなく、その上特別考査中で混雑しているので、P
10庶務会計課長が「申入項目も漠然としているが、現在は上局の特別考査中で混雑
した状態なので、一〇月二七日以降に話し合いたい。」旨答えたのである。
 同4(3)(七頁)中一〇月三一日の申入事項の説明(「この申入は」から「関
するものであつた。」まで)は正確ではない。
 当日の原告支部の団交申込内容は(イ)P12に何ら相談なく連続担務を変更した
こと、(ロ)郵政監察官並びに郵政局係官の業務運行状況調査、指導、応援に関す
ることであつた。
 その余の別紙命令書第一の認定事実については争わない。
第五 証拠関係(省略)
       理   由
一 原告の救済申立と被告の命令
原告の請求原因第一項の事実は当事者間に争いがない。
二 組休の不許可について
1 P6外二名の組休請求について
 原告はP6、P7およびP8が昭和三六年一一月二四日か二五日頃口頭で所属長に組
休の請求をしたと主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
 成立に争いがない乙第六七号証中の証人P1(97、98、注参照)、同乙第六八
号証中証人P2(89、90)の各供述記載中にはこれに副う部分もあるが、いずれ
も間接的証言であつて、これと反対趣旨の証拠、すなわち成立に争いない乙第七一
号証中の証人P17の供述記載(14)もある上、前者の各供述記載を裏付ける有力
な証拠もないので、結局前者の供述記載を採用して右の原告主張事実を肯定するに
は証拠が不十分というべきである。
 その上前者の供述記載によると、右P6外二名は口頭で組休の請求をしたというの
であるが、成立に争いがない乙第二九号証(特に郵政省就業規則第二八条)によれ
ば、同規則は組休の請求は書面によつてなされることを要求していることが認めら
れるから、前掲各供述による「口頭の請求」も実際は組休が与えられるかどうかの
瀬ぶみに過ぎないのではないかとも思われるが、仮に前記三名から口頭による組休
の請求があつたとしても、右就業規則第二八条に照すと、当局がこれを承認しなか
つたことには正当の理由があり、右不承認が組合活動の故による差別扱いとか組合
活動に対する介入行為と見ることはできない。
注 以下、証拠の標目の下に記載した数字は、被告の審問調書又は当裁判所の証人
尋問速記録の上部に記載された数字を示すものである。
 なお、証拠によつては、頁数を示していることがあるが、この場合は数字の下に
頁の字を加えてある。
 これらの数字を記載したのは、当該証拠中事実認定の資料となつた部分等を検出
する一つの手がかりにするためであつて、当該数字部分のみが証拠となる趣旨では
ない。
2 組休に関する争いない事実と支部委員会の開催不能
 以下の事実は、当事者間に争いがない。
 (イ)原告支部が昭和三六年一一月二〇日付で同年一一月二七日午前八時半から
年末闘争方針案等を議題とする(その余の議題は、参議院議員補欠選挙に関する件
と労働金庫の預金の件であつた。成立に争いがない乙第一四号証の一と同乙第六七
号証中証人P1の供述記載(58)による。)第二四回支部委員会を開催することを
告示したこと、(ロ)原告支部委員会は二四名の委員で構成され、大会に次ぐ決議
機関であつて年二回定期的に開催されるものであること(前記一一月二七日の支部
委員会は定期委員会である。前掲P1の供述記載(57)による。)(ハ)当時の都
城局長P9は同年一一月二四日同局各課長に対し、この支部委員会は闘争を激化させ
るためのものであるから、職員がこれに出席するため年休又は組休を請求した場合
これを承認しないように指示したこと、(ニ)同日原告支部委員会の委員P18およ
びP19が同月二七日の年休の請求書を提出したところ、所属長は右支部委員会のた
めであることを確めて年休を承認しなかつたこと、(ホ)翌二五日同委員P20、同
P21および組合員P22が同月二七日の年休請求書を提出したところ、それぞれの所
属長は後日支部委員会に出席したことが判明したときは年休を取り消す旨を述べて
これを承認したこと、(ヘ)同月二四日原告支部長P1、書記長P2、青年部長P3お
よび執行委員P4が同月二七日の組休の付与願を提出したところ、それぞれの所属長
は闘争期間中は承認できない旨を右付与願に記載してこれを承認しなかつたこと、
以上の事実は当事者間に争いがない。
 成立に争いがない乙第一四号証の一、二、同乙第六七号証中証人P1の供述記載
(69、100)によれば、前記不承認により同年一一月二七日の原告支部委員会
は開催困難となり同年一二月五日に変更されたことが認められ(右変更自体は当事
者間に争いがない。)、右認定を左右するに足りる証拠はない。
3 組休に関する規制
 成立に争いがない乙第二九号証、乙第五〇号証、乙第七〇号証中証人P23の供述
記載(21、29)によると、昭和三六年頃は同年二月二〇日郵政省公達第一六号
の就業規則の適用があり、同規則第二八条ないし第三〇条によると、同省職員は原
則として(イ)組合の大会、会議に出席する場合、(ロ)その他組合の業務を行う
場合、あらかじめ組合休暇付与願を提出して所属長の許可を受けたときは勤務時間
中であつても、組合活動を行うことができるものと定められ、その期日は一時間又
は一日を単位として引続き三〇日以内と定められ、その間は給与は支給されないも
のと定められていること、(ハ)右規則の運用について郵政省官房人事部長が同年
五月二九日通達をもつて許可の具体的基準を示し、その許可すべき場合の一例示と
して「中央本部、地方本部、地区本部、支部等の組合規約で定められている組合の
議決機関(大会、中央委員会、委員会等で定期、臨時を問わない。)の構成員とし
て出席する場合」を挙げていることが認められる。
4 当局側の組休不承認の理由
 成立に争いがない乙第一六号証の一ないし四、乙第六三号証、乙第六六号証中証
人P10の供述記載(1822ー32、36ー39、79、110)、乙第七一号証
中証人P17の供述記載(11以下)を綜合すると、都城局においては組休を承認す
る権限を有するものは同局長であつたが、同局長は熊本郵政局人事部管理課から昭
和三六年一一月二一日付で闘争委員会や闘争活動のための各種会議の構成員として
出席する場合組休も年休も承認しないようにとの指示があつたので、昭和三六年一
一月二四日同局各課長を集めて会議の結果、当時の同局における原告支部組合員の
言動、態度等から同月二七日の原告支部委員会は闘争委員会であつて、当時同支部
が同局において行つている行動はいわゆる職場闘争であり、右委員会はこれを激化
させるための会と判断し、各課長に対し同委員会に出席のための年休、組休の請求
を承認しないように指示し、その結果前記当事者間争ない年休、組休の不承認とな
つたものと認められる。
 前掲P10の供述記載中(22、37)に組休を承認しなかつたのは同局の業務の
都合もあるとの部分もあるが、右記載は成立に争いのない乙第一六号証の一ないし
四と対比してみると、たやすく採用することができない。
5 右不承認に対する被告の判断
 右の当局側の年休の不承認は、不当労働行為を構成するが、組休の不承認は然ら
ずとする被告の判断は別紙命令書第2の1(一〇頁から一二頁六行目まで)のとお
りである。
6 右の被告の判断の当否
(1) 被告の判断は、まず基本的には組休の制度は、年休と違つて単に就業規則
のみに基づき使用者の許可によつて与えられるもので組合に対する便宜供与の一種
であること、元来労働組合の存在や運営が使用者の便宜供与に依存することは決し
て好ましいものではないことを出発点とする。
 このことは原理的には勿論正当な考え方には違いないが、同時に(イ)前記組休
の制度は労働組合法第七条第三号但書、公共企業体等労働関係法第七条、人事院規
則一七ー二(特に昭和四三年一一月六日改正後の第六条)の精神から見て特に非難
さるべき程度の便宜供与とはいえないこと、むしろいわゆる組休制度がないと原則
として職員で組織されている職員団体(当時は、旧公労法第四条第三項の適用があ
つたときである。)の運営は実際問題として困難となり、職員に団結権を保障して
いる法の趣旨から見て必ずしも適当とはいえない状態に至ることと、(ロ)かかる
便宜供与を与えた以上その取扱いも公正に行わるべきものであること、むしろ便宜
供与であればある程かかる便宜供与の運用を通じての支配介入の生ずる可能性があ
ることを考慮すべきものと考える。
(2) なお被告は年休は労働基準法に基くものであるが、組休は単に就業規則に
基くものに過ぎないことを強調している。
 しかし成立に争いがない乙第七〇号証中証人P23の供述記載(8)によれば、郵
政省においては、年次有給休暇に関する協約により、毎年四月一日在籍者にはその
者の労働基準法上の有給休暇の存否にかかわらず二〇日間の年休が与えられている
ことが認められるので、P18外四名の年休についての被告の判断にあるとおり(命
令書一一頁)、「年休は法が労働者に認めた権利であつて」といい切れるかどうか
はむしろ問題なのである(右五名の労働基準法上の年休請求権の有無については証
拠調がなされていない。)。
 仮に右五名の年休の請求が労働基準法に基くものでなく、前記協約に基くもので
あつたとしても、被告の判断が決定的に異つて来るものとは考えられない。蓋し労
働基準法による年休の制度も前記労働協約によるそれも、休暇となつた日時を労働
者がどのように使うかについて原則として考慮していない(前掲P23の供述記載1
1参照)点に被告の判断の基礎があると思われるからである(命令書一一頁参
照)。
 年休は労働基準法か協約かに基くものであるが、組休は就業規則に基くという両
者の差異は、両者の不承認が不当労働行為を構成するかどうかの判断に当つては、
特に決定的な差異をもたらすものではない。
 年休又は組休の制度が法令、人事院規則、協約、就業規則の何れに規定されよう
とも、これらはいずれも個個の労働契約の内容を律することにより、その内容を限
定する機能を果すことに変りはないからである。問題はその承認、不承認の運用が
公正であるかどうかにかかつているのである。
(3) 次に被告は「当時の労使関係のもとでは、当局が組休の許可を与えなかつ
たことをもつて不当労働行為としてその責任を問うことは適当ではない。」と判断
する(命令書一二頁)。
 そこで当時の都城局における労使関係を見る。
 この点に関する別紙命令書第一、2、(1)(同三頁以下)の事実は、最後の熊
本郵政局労働関係担当の職員の都城局における任務の点を除いて当事者間に争いが
ない。
 成立に争いがない乙第五四号証、第五五号証、乙第四七号証、乙第六一号証の各
二、三、四、五、乙第七一号証中証人P17の供述記載(27、34)によると、全
逓中央執行委員会は昭和三六年七月二九日指令第四号を発し、同年八月一日以降諸
休暇、休憩、休息の完全消化、平常能率による業務遂行、安全衛生規則違反摘発、
各種業務取扱い規定の遵守を指令したところ、都城局においては同年一〇月三一日
郵便課員全員が現業室に掲げられてある作業手順どおりに仕事をしなかつたため、
これを命ずる業務命令が発せられ、また同年一一月一三日同課員において担務表に
ついて十分理解できない点があると主張し、ために全員に対し就業命令が出たりし
たことがあつたこと、更に全逓中央委員会は昭和三六年一一月一五日指令第一〇号
と「年末闘争における戦術の具体化について」と題する指導文書を発し、いわゆる
昭和三六年々末闘争の中心目標を(イ)大幅増員による労働軽減と郵便物遅配解
消、(ロ)組合案による仲裁々定の実施、(ハ)一方的職場指揮権の排除等とし
て、組合の各級機関に対し諸休暇、休憩、休息の完全消化、平常能率の徹底、休憩
時間中の職場大会の開催、時間外労働の拒否を指令したことが認められる。
 成立に争いがない乙第五六ないし第五八号証、乙第六六号証中証人P10の供述記
載(22)、乙第七一号証中証人P17の供述記載(33)、証人P24の証言(6
1、72)によると、都城局においては昭和三六年一一月一九日労働基準法第三六
条による協定も期間満了により終了した状態となり、同日P17郵便課長が勤務時間
中の組合活動は許されないからと注意したところ、P7が寝言はいわないなどと弥次
つたり、同月二二日には職員が始業ベルの鳴るまで出勤簿に判を押さずに待機し、
ベルと同時に一列に並んで逐次判を押して仕事に就くのを遅らせたりしたので、同
課長はベルが鳴つたらすぐ作業にかかれるよう指示したところ、P7が課長のいうこ
とは寝言ですから聞かなくともよいと大声でいつたり、P25がとぼけるな、馬鹿野
郎と怒鳴つたり、同月二四日午後五時一二分頃会議室で職場大会を開き、都城局長
の右会議室の使用を認めないから解散するようにとの指示に従わない状態が生じた
ことが認められる。
 以上の事実によれば、「当時原告支部は遵法闘争などいわゆる職場闘争を活発に
行つた。」といつて差支えない。
(4) 以上の事実関係の下で当局が組休を不承認としたことを検討すると、次の
点が注目される。
(イ) 全逓中央委員会の昭和三六年一一月一五日指令第一〇号は、それ自体とし
てはいわゆる遵法闘争を指令したもので、本件記録上はたやすく違法とまではいい
えないものであること(証人P26の証言(58)によると、同証人は平常能率の徹
底の指示はすなわち怠業の指示と理解しているようであるが、全逓本部がそこまで
指示したと認めるに足りる十分な証拠はない。もし右指令がこの種の委員会出席の
ための組休を不承認にすべき程度に違法なものであれば、他の局においても組休を
不承認とすべきものであろうが、かかる事実を肯定できる証拠はない。なお後記
(ニ)参照)。
(ロ) 前記中央委員会の指令は代議員制度を通じて組合員の多数の承認を得て発
出されたものと推認されること、更に成立に争いのない乙第六八号証中証人P27の
供述記載(42から44)によれば、全逓においては、組合の各級機関は中央の指
令を逸脱しないよう活動する規約となつていることが認められ、従つて原告支部委
員会も当然この指令の枠内でどの程度の活動をするかを決議するものと見るのが通
常であつて、原告支部委員会のみが中央本部の統制をはずれて独走的に違法な決議
をするものと予想すべき特段の事情は認められないこと(前述の活発な職場闘争と
して認定した諸事例もあるが、かかる事例があつたからといつて、組合民主々義の
原則から見て原告支部委員会が山猫的活動をするものと推認することは相当ではな
い。)。
(ハ) 成立に争いがない乙第一五号証、乙第六七号証中証人P1の供述記載(69
以下)によると、原告支部は都城市と北諸県郡内の職場に勤務する郵政省職員で組
織され、その機関は大会、委員会、執行委員会の三種であつて、委員会は都城局選
出の委員と同局以外の北諸県郡内の郵政省の各職場選出の委員合計二四名で構成さ
れ、年二回支部長がこれを招集するものと定められていることが認められること。
(ニ) 昭和三六年一一月二七日の原告支部委員会が定期大会であることは前認定
のとおりであつて、成立に争いがない乙第六七号証中証人P1の供述記載(69)に
よつて認められるように、都城局以外の職場から選出された委員はすべて右委員会
のための休暇を与えられたこと。
(ホ) 当局から右委員会のため組休を拒否されたものは原告支部長、同書記長、
青年部長、執行委員であること(この事実は当事者間に争いがない。)。
(ヘ) 成立に争いがない乙第六九号証中証人P28の供述記載(8ー10)による
と、当時九州地方における郵政省の各職場で定期の委員会出席のための組休が不承
認となつた例がないことが認められ、成立に争いのない乙第六八号証中証人P27の
供述記載(54)中には、全国的に見ても、組合の決議機関に出席する組合員につ
いて組休を認めなかつたことは本件をもつて嚆矢とする旨の記載があり、成立に争
いがない乙第七〇号証中証人P23の供述記載中(129)には、明確ではないが東
京郵政局管内でかかる事例があつたような記憶がある旨の記載があつて、これらの
記載と弁論の全趣旨を綜合すると、組合の決議機関に出席する組合員について組休
が拒否された例は全国的にもそう沢山はないものと認められること。
 以上の事実が注目される。
(5) このような諸点を考慮すると、「年休の不承認は不当労働行為を構成する
が、組休の不承認は然らずとする」被告の判断は十分な説得力をもつものとはいい
がたい。
 当局は年休も組休も一律に同一理由で不承認にしたのであるから、むしろ組休の
不承認も、前述の事態においては当局側において原告支部が当局側の好ましくない
と考える組合活動を行うものと予想して、これに対する牽制手段としてなされたも
の、すなわち組合の運営に対する支配介入行為と見るのが相当である。
(6) 前記組休の不承認を不当労働行為と見る以上、これに対し将来の保証のた
め適当な何らかの救済が与えらるべきが通常であつて、救済を与えることが「適当
でない」とする特段の事情は認められない。
三 団交の拒否について
1 当時の労使関係の概況
 この点に関する別紙命令書第一、2、(1)(三、四頁)の事実は、最後の熊本
郵政局の労働関係担当の職員の都城局における任務を除く外当事者間に争いがな
い。
 原告支部の昭和三六年一〇月から同年一一月二四日までの活動状況は前認定の
二、6、(3)のとおりである。
2 昭和三六年一〇月二五日申入の件
 成立に争いのない乙第六六号証中証人P10の供述記載(54以下)、同第六八号
証中証人P2の供述記載(66、67)と弁論の全趣旨を綜合すると、原告支部は昭
和三六年一〇月二五日「都城局の労働条件並びに労働慣行について」と題し、当局
の同年一〇月二三日の労働協約、確認書の破棄(命令書第四頁参照)について団交
の申入をしたこと、これに対し都城局庶務会計課長P10は原告支部P2書記長に対
し、前述の破棄通告は上局の指示により行つたものであること及び現在は上局の特
別考査中で混雑した状態であるので、この交渉は一〇月二七日以降にして貰えない
か、すぐには一寸応じかねる旨答えたが、原告支部はこれを了承せず、もの別れと
なつたことが認められる(参加代理人はこの点自白の取消について主張するところ
があるが、団交申入に対する回答がどのようなものであつたかは、団交拒否が不当
労働行為を構成するかどうかの点について間接事実となるものと考えるので、その
自白の取消については特別の拘束力はないものと考える。)。
 前掲P10の供述記載(54)によると、当時都城局には上局の指導員や熊本郵政
監察局の監察官など一四、五人が来局し、種々業務上の指導をしていたときでもあ
り、また郵便物も相当停滞していたときでもあつたことが認められるので、P10課
長が右のように回答したことは正当な理由がなく団交を拒否したことには該当しな
い。
 なお、原告は「団交と話し合いとは本質的に異るものであるから、話し合いの意
向があるからといつて、団交を不当に拒否したものとはいえない」と判断するのは
誤りであると主張する。
 しかし前記のP10課長の回答は、団交には応じないが、話し合いなら応ずるとい
つたわけではなく、今忙しいから、この交渉は二日後の二七日以降にしてほしいと
いう趣旨を述べただけのことであるから、右の非難は当らない。
 更に原告は右の申入はその主張の破棄通告により労働条件が変更された後の最初
の団交申入であつたのであるから特別考査中であつても、当局は直ちに団交に応ず
べきであつたというが、当局側にも前認定の都合があつたのであるから、当局が右
団交申入に即座に命じなければ不当であると称し得ないのが通常であつて、原告主
張の事情も当局が二日後にしてほしいといつたことを不当労働行為と認定するに足
りる特別の事情と評価することはできない。
 その他当局の右の回答が単なる逃げ口上であつたと認めるに足りる証拠はない。
 原告は同月三〇日以降の団交申入を当局が拒否したことをもつてその証左である
というが、右の申入に対する当局の拒否のすべてが必ずしも不当と称し得ないこと
は後記のとおりである。
3 昭和三六年一〇月三〇日申入の件
 原告支部が昭和三六年一〇月三〇日午前九時頃当局に対し郵便課外勤組合員の労
働条件について、当日午前一〇時から団交を行ないたい旨申し入れたことは当事者
間に争いがない。
 成立に争いのない乙第六六号証中証人P10の供述記載(60ー63)、同乙第六
八号証中証人P2の供述記載(67)、同乙第六七号証中証人P1の供述記載(14
5ー149)、証人P2(20)、同P24(82ー85)の各証言と弁論の全趣旨を
綜合すると、昭和三六年一〇月二九日の都城局郵便課外勤の職員であるP11は上司
から一時間の超過勤務を命ぜられたが、同人が気分が悪いといつて断つたところ、
三〇分でもという話しとなり、結局P11はこれを了承して三〇分の超過勤務をして
いたところ、矢張具合が悪く、病院へ行つた結果急性腎炎と判明し、同人はその翌
日より欠勤をしたが、原告支部側は、当局がP11に対し無理に超過勤務を強いたも
のとしたこと、同月三〇日朝九時頃原告支部のP2書記長がP10庶務会計課長に対し
前記の団交申入をしたので、同課長は右申入がP11に対する超勤命令のことであれ
ば、苦情処理手続で処理すべき事項と思うが、しかし早急に解決したい意向であれ
ば、今日中にでも職員の代表三名くらいと話し合いする旨回答したことが認められ
る。右認定に反する証人P2の供述又は供述記載は採用しない。
 原告はこの点について右交渉事項の表現から見て右の交渉事項が単に一組合員の
問題でないことは明白であるというが、前記団交申入のような抽象的な表現では、
誰でも具体的にはどういうことか釈明するのが当然と思われることと、前記P10の
供述記載によると、申入を受けたP10はP11の件に関連しての交渉申入としか理解
しなかつたところから見ると、P2の右申入に関する説明もそのような理解を与える
程度のものであつたと認めるのが相当である。
 右P10の回答は、P11の件は苦情処理事項であるから、必ずしも直ちに団交をし
なくてもよいという考えを前提とするものと考えられる。
 原告は、組合が紛争解決の方策として苦情処理手続を選択せずに団交を申入れる
ことも自由であり、当局は苦情処理手続がある故をもつて団交を拒否することは許
されないと主張する。
 成立に争いがない乙第一一号証の一四、一五と同乙第四八号証を対比して見る
と、原告主張のとおり、郵政省と全逓中央本部との苦情処理に関する協約では団交
事項は苦情処理手続の対象とならないことを明らかにしているが、両者間の団交の
方式及び手続に関する協約では交渉事項について特別の限定を加えていないことが
認められる。
 しかしながら、郵政省の現業の職場における団体交渉事項を抽象的に規定するこ
とは至難の業なのであるから、右のような両協約の対比から直ちに苦情処理手続の
対象事項が団体交渉の対象となし得ないとする何らの根拠がないので組合がいずれ
を選ぶかはその自由であると形式的に結論づけることはできない。
 前掲乙第四八号証によると、郵政省における苦情処理の手続は、(イ)労働協
約、就業規則の適用、(ロ)日常の労働条件に関係のある法令の適用、(ハ)日常
の労働条件に影響のある規程、通達等の適用、(ニ)労働協約、就業規則、規程、
通達等に規定されていない日常の労働条件に関する主として個人的な苦情を対象と
するものであることが認められる。
 この手続で最終的に解決されない事項は結局は団交で解決せらるべきものと考え
られるから、苦情処理事項は団体交渉事項ではないとはいえないが、公共企業体等
労働関係法第一二条の立法趣旨と事の軽重の面から見て、前記P11に対する超過勤
務命令がその時の事情から見て妥当であつたかどうかというような主として個人的
な苦情はまず苦情処理手続によつて解決したいというP10課長の回答は不相当とは
いえないものと考える。
 しかもその上同課長は当日中にでも話し合つてよいというのであるから、ますま
す右回答が不相当とはいえないものと考えられる。
 以上の事情においては、当局の態度をもつて、団交を不当に拒否したものと評価
することは相当ではない。
4 昭和三六年一〇月三一日申入の件
 成立に争いのない乙第一八号証、同乙第六六号証中証人P10の供述記載(6
3)、同乙第六八号証中証人P2の供述記載(67ー70)によれば、原告支部は昭
和三六年一〇月三一日当局に対し「郵便外勤P12君の労働条件について」、「強制
労働排除について」と題して団交を申し入れたこと、前者は都城局郵便課外勤のP
12が病弱なため従前から話し合いで平坦地の多い地区を担務していたが、特別考査
班が来局してからは坂道の多い市外の地区に一方的に担務替されたとして、後者は
特別考査班が局員の仕事を監視したり又は欠勤中の者の自宅を訪問して明日は出勤
できるかなどと調査したりしたことを組合は労働を強制したものとして、これらに
関して団交を申し入れたものと認められる。
 その余の命令書七、八頁4、(3)の事実は当事者間に争いがない。
 右の申入事項は二つ共結局は個々の労働者の労働条件や労働の環境に関する具体
的な苦情といつてよいから、当局が団交には応じられないが話し合いには応ずると
回答したのは不当とはいいがたい。蓋し、右の如き個々の具体的苦情はまず苦情処
理手続で処理されるべきものと解するのが相当であることは前説明のとおりである
から、右交渉事項は何よりも先に団交によつて解決すべき事項とはいい得ないから
である。また前述のとおり当局が右交渉事項について話し合いをすることは承諾し
たのであるから、右申入に対する当局の態度を不当と評価することは相当ではな
い。
 原告は当局が双方三名以下で三〇分以内で話し合うことを提案したに過ぎないと
いうが、成立に争いのない乙第三〇号証によれば、当局は昭和三六年一〇月三一日
午後三時から三〇分以内で双方三名以下で話し合いたいと回答したことは認められ
るが、その日以後は話し合わない旨回答した証拠はない。
 原告は被告の命令書には強制労働に関する団交拒否についての判断がないという
が、被告は命令書一三頁において一〇月三一日申入の団交事項を一括して個々の労
働者の労働条件に関する具体的な苦情であると判断して、これに関する団交拒否は
不当とはいえないと判断しているのであるから、原告主張のような判断遺脱はな
い。
 原告は、当局が「強制労働の排除について」の団交申入れに対し「当局としては
かような事実はないと考える」とだけ回答したことを前提として、被告の判断を非
難するが、当局は右回答につけ加えて「しかし話し合いには応ずる」という回答を
したのであるから、原告が当局において前段の回答だけをしたことを前提として被
告の判断を非難するのは当らない。
5 昭和三六年一一月三〇日、一二月六日、同月八日(ただし、解雇関係に限
る。)申入の件
(1) 原告は昭和三六年一一月三〇日当局に対し非常勤職員の解雇について団交
を申入れたと主張するが、この点に関する成立に争いのない乙第六八号証中証人P
2の供述記載(72、73)、同乙第六七号証中証人P1の供述記載(155)およ
び証人P2の証言(82、83)は、同乙第六六号証中証人P10の供述記載(67)
と対比して見ると真偽不明の感を免れず、他に前者を裏付けるに足りる的確な証拠
もないので結局原告の右主張事実を肯定できる十分な証拠がないという外はない。
(2) 昭和三六年一二月六日申入に関する命令書八頁(5)の事実と同月八日申
入に関する同書八頁(6)の(3)の申入の事実および右申入に対する当局の回答
のうち人事権に関する事項であるので団交には応じられないとの趣旨があつたこと
は当事者間に争いがない。
 被告は右両申入に対する当局の回答は右申入事項を苦情処理手続によつて処理す
ることに反対する趣旨ではなかつたものと認定し、これらについて当局の責任を追
求するのは妥当ではないと判断する(命令書一三頁)。
 原告は被告の右認定にはこれに副う証拠がないと主張する。
 成立に争いがない同乙第六六号証中証人P10の供述記載(51、68~73)お
よび同乙第七〇号証中証人P23の供述記載(42以下)によると、郵政省において
は、郵便局の段階における団交の対象事項は労働基準法第二四条、第三六条の協定
および団交の方式および手続に関する労働協約に基く交渉の手続に関する協定程度
と考え、かかる団交事項以外の問題については苦情処理制度や事実上の「会見」、
「話し合い」という方法で処理していくことを指導していたことが認められるか
ら、当時当局が団交は拒否するが、苦情処理手続にかけることには反対していなか
つたものと認定することも相当である。
 原告支部申入の前記交渉事項は共に臨時職員の解雇に関するものであることは当
事者間に争いがない(もつとも前掲P10の供述記載(73)によると、当局は期間
を定めて雇傭した職員の期間が満了したことにより雇傭関係が終了したという見解
をもつていたことが認められる。)。
 成立に争いがない乙第四四号証及び乙第六八号証中証人P2の供述記載(73)に
よると、原告支部は右申入に先だち同年一一月三〇日右の解雇の理由を問いただし
たことは認められるが、原告支部がこれ以上の要求例えば臨時職員の解雇基準の設
定の要求などをしたかどうかを明確にできる証拠もないし、都城郵便局長がこれら
の関係について交渉をし、協約を締結できる権限を付与されていることを肯定でき
る証拠もない。
 従つて前記申入は抽象的には労働条件に関するか又は少くとも労働組合法第六条
にいう「その他の事項」に該当するものであつても、具体的に当時の都城局長に協
約締結を目標に交渉するのを拒否することが不当であると認めるに足りる事情が十
分には出ていないという外はない。
 その上、臨時職員の解雇の問題、又は少くとも雇傭期間が満了したかどうかの問
題は被解雇者個人の問題でもあるから、当局がまず苦情処理手続が先行すべきもの
という態度をとつていたことが不当といえるかどうか問題であり、従つて「当局に
対し不当労働行為の責任を追求することは妥当ではない」との被告の判断(命令書
一三頁が違法とまではいい切れないものと考える。
 原告は解雇が不当労働行為と主張されている場合は苦情処理手続に適しないとい
うが、郵政省における苦情処理手続に右のような限定があることを認めるに足りる
証拠はない。
6 昭和三六年一二月八日申入の件(ただし命令書九頁④から⑦までの事項に限
る。)
 原告支部が昭和三六年一二月八日当局に対し別紙命令書八、九頁(6)の④から
⑦までの事項について団交を申し入れたことは当事者間に争いがない。
 証人P2の証言(120)により真正に成立したものと認める甲第三号証と右証言
(145)によると、④の「支部団体交渉について」という交渉事項は、全逓の支
部はいかなる事項について団交ができるかを明確にする目的のため申し入れたもの
と認められる。
 成立に争いのない乙第二三号証、同乙第五二号証の三、同乙第六〇号証、同乙第
六六号証中証人P10の供述記載(67ー75)、同乙第六八号証中証人P2の供述記
載(120)、証人P26の証言(197)および証人P2の証言(145、151ー
169)を綜合すれば、(イ)右の④から⑦までの申入を受けたP10は、これらの
事項について頭から話し合いを拒否する態度はとらなかつたが、前認定の二の6の
(3)の事情もある外、原告支部が昭和三六年一一月二九日午後四時三七分頃から
午後五時一六分頃にかけて当局の不許可にかかわらず郵便外勤休憩室において職場
集会を開いたり、また同日午後五時二五分頃原告支部員約三〇名が局長室に押しか
け、数回退去命令が出たのち退去した事実があつたのと同年一二月一一日頃になつ
て全逓中央本部発出の時間外集団交渉をもつて要求解決を促進すべき旨の指令第一
二号を見て、当時の都城局における労使関係の実状からして、話し合いが集団交渉
になりかねないから、あとで平和時になつたら話し合いをしようと回答したこと、
(ロ)更に一二月八日申入の⑤から⑦までの事項(命令書九頁参照)は従前から原
告支部と当局が交渉中のものであつて、昭和三七年以後両者が交渉を続けた結果、
当局が原告支部の要求に従つて賃金を支払つたことがそれぞれ認められる。
 以上の事情のもとでは、一二月八日の前掲申入に対して、当局が折衝が集団交渉
になりかねないと判断し、交渉の延期を求めたことは不相当とはいえないものと考
えられるから、右申入に対する当局の態度をもつて不当に団交を拒否したものと評
価することはできない。
 また、前記⑤から⑦までの事項は当局との話し合いで解決ずみのことでもある。
7 昭和三六年一二月八日服務表についての申入の件
(1) 原告支部が同年一二月八日当局に対し服務表についてと題し団交を申入れ
たことは当事者間に争いがない。
 証人P2の証言(88、120)により真正に成立したものと認められる甲第二号
証の一と甲第三号証および右証言(108~136)を綜合すれば、右申入は都城
局における郵便課(内勤)職員の服務表(昭和三六年一〇月二三日改正、同年一一
月三日適用のもの)が同課員の勤務の実体に合わないこと、従前の服務表に比して
休息時間が不明確となり、場合によつては休息できない虞があること、休息がとれ
なかつた場合の繰越しが認められなくなつたということで原告支部が申し入れたも
のと認められる。
(2) 成立に争いがない乙第五二号証の二同乙第六五号証によると、郵政省の当
局と全逓中央本部は昭和三三年四月一五日勤務時間及び週休日等に関する協約の付
属覚書において、所属長は、(イ)勤務の種類、始業時刻、終業時刻、(ロ)休憩
時間、休息時間を設ける各方法などについて服務表を定め、これを関係職員に実施
の一週間前に周知することを協定し、郵政省は同年五月二四日郵政省公達第四九号
郵政事業職員勤務時間、休憩、休日および休暇規定の二五条において、所属長が始
業、終業の各時刻、休憩、休息の各時間を設ける方法などについて服務表を定め、
これをその実施の一週間前までに関係職員に周知させるべきことを定めたことが認
められる。
 また成立に争いのない乙第八号証の一(66頁)と乙第二三号証(5頁)を綜合
してみると、郵政省当局は全逓本部に対し、所属長が右の関係職員に対する周知の
措置をとる二、三日前に当該局所の組合の組織に右服務表を内示するよう指導する
旨回答したことが認められる。
(3) 次に成立に争いのない乙第六六号証中証人P10の供述記載(68、12
6)によると、都城局は前記一一月三日適用の服務表について原告支部と話し合つ
てこれを施行したこと、昭和三六年一二月八日の前記団交申入に対しP10庶務会計
課長は団交事項ではないが話し合いはすると答えたことが認められる。
(4) しかし一般的にいえば、郵便局における職員の休憩、休息の時間、週休日
に関する事項が団交事項であることは公共企業体等労働関係法第八条第一号に徴し
明白であり、またこれらの事項について郵政省と全逓中央本部が昭和三三年四月一
五日労働協約を締結した事実から見ても当然のように思われる。
 そして右が団交事項であり、かつ、前掲服務表の改正は都城局の郵便課(内勤)
職員の共通の労働条件に関するものであつて、「主として個人的な苦情」というこ
とはできないから、右申入事項は苦情処理手続によるのが相当な事項とは称し得な
い(郵政省と全逓との間の苦情処理に関する協約(乙第四八号証)第九条は団交事
項は苦情処理事項でないことを前提とし、同第一条第二項は右協約にいう苦情は主
として個人を主体とするものをいうとしている。)。
(5) 前掲昭和三三年四月一五日の労働協約付属覚書において全逓中央本部が服
務表は所属長が定めることを承認したことは、所属長がどのような内容の服務表を
作成しても組合はこれに対して団交を申し入れないと約したことを意味するもので
ないと解するのが通常であつて、むしろ郵政省当局が全逓中央本部に対し服務表の
周知措置をとる二、三日前に服務表を当該局所の組合組織に内示することを回答し
たのは、当該組織に服務表について折衝をする機会を与える趣旨と解せられる。
 参加人は乙第二六号証(被告の審問手続における最終準備書面)において、前掲
協約覚書によつて、服務表の作成は所属長の専決事項とされたものと主張するが、
全逓中央本部又は原告支部が服務表の作成について団体交渉をする権能を放棄した
と認めるに足りる証拠はない。
(6) 服務表の作成は所属長の権限であるから、前記服務表に関する交渉には所
属長又はその交渉委員が当ることが最も適当と考えられる。更に休息や休憩時間の
問題は、法令、郵政省内の各種規程等の範囲内で、これらの者がその職場に最も適
当な条件を案出できるものと推認される。
 参加人は被告の審問手続における準備書面(乙第二三号証2頁)において国家行
政組織法上協約締結権は郵政大臣に専属し、郵政大臣はかかる事項についての協約
締結を他に委任していないというが、事の軽重の面から見て、郵政大臣は各郵便局
の職員の服務特に休憩時間の如き事項について事実行為としての団交のようなこと
はそれぞれの機関に委ねているものと見るのが通常である。
 郵政省と全逓との団体交渉の方式および手続に関する協約(成立に争いがない乙
第一一号証の一四)第一条によると、郵便局においては、その管理者と全逓支部と
の間に団交を持つことに定められ、前掲昭和三三年四月一五日の労働協約付属覚書
では服務表の作成は所属長(郵便局長)の権限とすることに定められいるから服務
表についての団交も所属長に委ねられているものと見るのが筋合である。
 成立に争いがない乙第六六号証中証人P10の供述記載(51)によると前記団体
交渉の方式及び手続に関する協約に基く団交は所属長の権限内の事項であれば可能
とし、同乙第六七号証中証人P1の供述記載(107)によると、都城局の当局側の
交渉委員は局長P9、P10、P17両課長外四名であつたことが認められる。
 次に成立に争いがない乙第七〇号証中証人P23の供述記載(85、94、16
4)によると、郵政省においては行政組織上の職務権限、交渉権限、協約締結権限
の三つを峻別しており、当時郵便局長には、労働基準法第二四条、第三六条に関す
る協定と団交手続以外の事項について協約締結権限を与えられていないものとされ
ている。
 右の交渉委員に協約締結権限がないとしても、交渉権限はある以上、交渉の上合
意した事項は協約締結権者に対して協約することを求める意思で団交に応じなけれ
ば、不当労働行為と認めるべきは後述のとおりである。
(7) 前認定のとおり、郵政省の各職場において当局と組合との間に労働条件に
ついて「会見」、「話し合い」が現実に行われていることは、郵政省職員の労働条
件の大部分は法令その他によつて全国的に統一されているが、矢張りそれぞれの職
場のもつ具体的状況に応じて労働条件を肌理こまかく決定して行くことが必要なこ
とを示しているものという以外はない。
 郵政省の各職場の当局は話し合いに応じて合意した事項は実施できる権限を有し
ているか又は少くともその実施についてある程度目安の立つ限度で話し合いに応じ
ているものと理解される。
 このように法令その他の枠内で郵政省の各職場の当局が対応する労働組合の組織
と話し合いの上合意した事項が労働協約となつては、国家的見地から望ましくない
とする特別の事情は見当らないのである。
(8) 前掲P10庶務会計課長の回答は団交には応じないが話し合いには応ずると
いうのである。当局が話し合いに応ずるという以上もとよりその話し合いで定まつ
た事項を遵守する意思であつたと推認すべきではあるが、団交はこれを拒否すると
いう以上、右の合意について書面を作成して労働協約とする意思がなかつたものと
いうべきは当然である。
(9) 当時都城局当局において服務表について、話し合いの上合意した場合に協
約とすることを求める意思がなく話し合いに臨むことを正当とするような特段の事
情は認められないので、右の当局の態度が正当であるとはいえないものと考えられ
る。すなわち話し合いは紛争解決の一手段ではあるが、単に話し合いである以上、
その相手方は何も労働組合でなければならないことはないし、その間にまとまつた
合意は単に話し合いの相手方に対し道義的に守る義務があるだけであつて結局は使
用者が労働条件を一方的に決定して行くに際しその反省の縁となる機能をはたすに
過ぎないが、団交は労働組合の団結を背景に使用者の労働条件の一方的決定に対し
労使双方の合意により労働協約の持つ直律強行性を通じて個々の組合員の契約内容
を規律して行くことを目的とするものである。従つて団交事項について話し合いの
意向はあるが、協約を締結する意思がないというのは右の意味において団結権の軽
視につながるものであつて、妥当な態度ということはできない。
 なお、都城局の交渉委員に協約締結権がないとしても、交渉権限がある以上合意
した場合はこれを協約とする努力をなすべきことは当然であつて、かかる努力をす
ることを始めから放棄して団交には応じないというのは前説明と同じ理由で不当と
いわなければならない。
 この点についての被告の判断は命令書一三頁以下にあるとおり「服務表は勤務時
間及び週休日等に関する協約付属覚書により所属長が定めることとされているか
ら、これについて当局が交渉には応じられないが話し合いには応ずると答えたのも
不当とはいえない」というのである。
 この判断は、協約で所属長の権限と定められていることが何故に団交拒否の正当
理由となるのかという点についての説明が十分でないので、これを支持することが
できない。
(10) 以上のとおり昭和三六年一二月八日服務表に関して原告支部が申し入れ
た団交を当局が拒否したことについては、正当の理由がないというべきであるか
ら、当局の右態度は不当労働行為というべきである。
8 昭和三六年一二月八日バレーコートに関する申入の件
 原告支部が当局に対し右に記載のとおり団交を申し入れたことは当事者間に争い
がない。
 前掲甲第二号証の一と証人P2の証言(137)によると、当時都城局の裏側に平
常バレーコートとして使用できるように施設がしてあつたところ、当局は同年末に
右施設を撤去して局舎を造るということであつたので、原告支部はレクリエーシヨ
ン施設に関するものとして右のとおり団交を申し入れたものと認められる。
 成立に争いがない乙第六六号証中証人P10の供述記載(67~74)によると、
当局は右団交申入に対して話し合いには応ずる態度であつたと認められる。
 本件に現われた全証拠によつても認定できるのは以上の事実に尽きるのであつ
て、局舎の建設という問題は、通常は当局の管理運営に関する事項であるから、単
に以上の事実だけからでは、当局の態度が不当労働行為を構成するかどうか判断が
つかない。
 従つて右申入に対する当局の態度が不当労働行為を構成しないという被告の判断
が違法とはいい得ない。
9 昭和三六年一二月一一日申入の件
 原告支部が昭和三六年一二月一一日都城局食堂の暖房について団交を申し入れた
ことは当事者間に争いがない。
 証人P2の証言(88)により真正に成立したものと認める甲第二号証の四と右証
言(170ー175、184ー186)、成立に争いがない乙第六六号証中証人P
10の供述記載(67ー74)によれば、都城局の施設である給食所に例年なら一二
月に入ると暖房を入れるのが通例であるのに昭和三六年は一二月になつても入れな
かつたところから、原告支部が当局に右の団交を申し入れたところ、当局はこれに
ついて話し合いはする意向であつたこと、右申入後給食所に暖房が入つたことが認
められる。
 本件に現われた全証拠によつて認められる事実は以上に尽きるのであつて、単に
以上の事実だけからでは、当局の右団交申入に対する態度が不当といえるかどうか
判断がつかない。
10 昭和三六年一二月一二日申入の件
 原告支部が昭和三六年一二月一二日当局に対して①暖房清掃について及び②厚生
施設について団交を申し入れたことは当事者間に争いがない。
 証人P2の証言(88)により真正に成立したものと認められる甲第二号証の五、
前記甲第三号証と右証言(176)、成立に争いがない乙第六八号証中証人P2の供
述記載(73、129)、乙第六六号証中証人P10の供述記載(67~75、11
4)によると、①は都城局郵便課外勤職員の出勤時間は午前八時半であつたとこ
ろ、昭和三六年一一月三日から午前八時出勤と変更になつた関係上、同職員のため
の暖房をよくして貰いたいことと、また午前八時半出勤のときは職員に同時刻から
清掃させていたのを、それを止めて小使(原告支部組合員)にさせていたことに関
するものであり、②は同局会議室にピンポン台があつたのを当局が組合に相談なし
に撤去したことに関するものであつたこと、右のうち暖房については当局が実施し
たこと、当局は右の申入に対して話し合うはするつもりであつた(特にピンポン台
の件については五分程度なら話し合つてよいという返事をした。)が、昭和三六年
一二月一一日頃知つた前認定の指令第一二号の内容と当時の都城局における労使関
係の実情とから見て集団交渉になりかねないから、あとで話し合いたい意向であつ
たと認められる。
 当局が当時集団交渉になりかねないと判断したことが必ずしも不相当とはいえな
いことは前判断のとおりである。
 以上の事情から見ると、被告の「その当時の状況と当該交渉申入事項の性質を合
わせ考えれば、当局の行為をもつて正当な理由のない団交拒否であるということは
できない」との判断(命令書一三頁)が違法とはいえないものと考えられる。
11 昭和三六年一二月一三日申入の件
 この点に関する命令書一〇頁(9)の事実は当事者間に争いがない。
 証人P2の証言(88)により真正に成立したものと認める甲第二号証の六と右証
言(190以下)を綜合すれば都城局郵便課外勤職員の給料から毎月茶代が差し引
かれていたところ、当時右の職員に朝や昼に茶が給せられなかつたとして、原告支
部が郵便外務員の茶代についてと題して右の団交申入をしたものと認められる。
 成立に争いのない乙第六六号証中証人P10の供述記載(69以下、121以下)
によると、P10課長は右申入に対し都城局の郵便課員は一人月一〇円程度出し合つ
て茶を飲んでいるが、一人一人金を集めるのも面倒ということで局の方で便宜茶代
を給料から差し引いているだけのことと考えて、団交事項とは思えないがという程
度の返事をしたが、さりとて団交を明確に拒否するという程の態度も示さず、その
ままとなつたことが認められる。
 証人P2の証言中(195)前記団交申入の趣旨は、茶を給しないのなら茶代を返
還せよという趣旨であつたという点はたやすく採用することができない。
 郵便局の当局が職員の給料から茶代として差し引いた金をその目的のために使用
することを拒否するなどということは一寸考えにくいことであるから、P10課長の
ように茶を出すか出さないか、出すとして何時出すかという問題は、茶代を出し合
つた人々の決定すべきことで、労使間の団交で決定すべき事項でないと考える方が
自然である。
 勿論茶代があるのに当局側の手違いのため茶が買えなかつたような事態が起り得
るかも知れないが、当時このような事態であつたのかどうか不明である。
 結局前記申入の趣旨が不明確であり、従つてまたこれに対する当局の態度が不当
なのかどうか判然しないという外はない。
12 昭和三六年一二月一四日申入の件
 原告支部が昭和三六年一二月一四日当局に対し都城局郵便課外勤職員の市外休息
所について団交を申し入れたことは当事者間に争いがない。
 証人P2の証言(88)により真正に成立したものと認める甲第二号証の七と右証
言(196)、成立に争いのない乙第六八号証中証人P2の供述記載(74)による
と、同局郵便課外勤職員の出勤時間が昭和三六年一一月三日から午前八時とこれま
でより三〇分繰り上げられた結果、市外に配達に出る集配員の昼食を取る場所とし
て設営されていた休息所が配達の途順上適当でなくなつたとして右の申入をしたも
のと認められる。
 成立に争いがない乙第六六号証中証人P10の供述記載(66~75)と前認定の
6、10の各事実を綜合すると、当局はこの申入について交渉をもつても集団交渉
となりかねないし、同月一五日頃年末闘争も終る情勢であつた(このことは、成立
に争いのない乙第七一号証中証人P17の供述記載(21以下49)により認め
る。)ので、交渉は後日にしてほしいという程度の回答をしたものと認められる。
 当局が当時集団交渉となりかねないと判断したことは前説明のとおり不相当とは
いえないから、当局の右の態度をもつて不当ということはできない。
四 むすび
 以上のとおり、被告の別紙命令中、被告が(イ)当局が原告支部長P1外三名の組
休の請求を承認しなかつたことと(ロ)当局が昭和三六年一二月八日服務表につい
ての団交申入に対し団交を拒否したことは不当労働行為を構成しないとして、この
点に関する原告の救済申立を棄却した部分は違法であるから、これを取消すべきで
あるが、その余の被告の右命令は違法とはいえないから、この点に関する原告の請
求を棄却すべきものである。
 よつて訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条第九二条を適用し主文のと
おり判決する。
(裁判官 大塚正夫 沖野威 大前和俊)
命令書
公労委昭和三七年(不)第一号
昭和四〇年三月八日命令
申立人 全逓信労働組合都城市北諸県郡支部
被申立人 都城郵便局長
       主   文
一 被申立人は、本命令交付の日から七日以内に、下記内容の文書を申立人に交付
しなければならない。

 都城郵便局長は、貴組合の組合員が第二四回支部委員会に出席するため年次有給
休暇を請求したのにこれを認めず、もつて貴組合の運営に介入したことについて、
ここに、遺憾の意を表わすとともに、今後このような行為を繰り返さないことを約
する。
昭和 年 月 日
全逓信労働組合都城市北諸県郡支部
支部長 P29殿
都城郵便局長 P5
二 申立人のその余の申立ては、棄却する。
       理   由
第一 当委員会の認定した事実
1 申立事実
 申立組合は、その組合員が、昭和三六年一一月二七日開催予定の第二四回支部委
員会に出席するため被申立人に対して、年次有給休暇(以下「年休」という。)及
び組合休暇(以下「組休」という。)を請求したところ、被申立人が、これを承認
しなかつたこと並びに申立組合が、同年一〇月二五日から一二月一四日までの間一
一回にわたつて団体交渉を申し入れたのに対し、被申立人がこれを拒否したこと
は、労働組合法第七条第三号及び第二号の規定に該当する不当労働行為であると主
張して本件申立てを行ない、これに対し、被申立人は申立てを棄却すべきことを求
めた。
2 当時の労使関係の概況
(1) 昭和三六年、郵便物の滞留遅配の状況が全国的にみられたので、郵政省は
その原因を調査するため郵便業務の運行が不良と認められる郵便局を全国で四一局
を選び、郵便業務運行特別考査を実施した。九州では都城郵便局を含む五局が特別
考査実施の対象局とされ同局においては、同年九月一一日から一四日までの間、熊
本郵政監察局監察官による特別考査が行なわれた。その結果、熊本郵政監察局監察
官は、都城郵便局における郵便遅配の原因の一部は同局の労使慣行等が管理権を侵
害していること及び職場規律がみだれていることにあることを指摘し、被申立人に
対してこれを改善するよう勧告した。この勧告をうけた被申立人は、一〇月二三日
文書をもつて時間外労働及び休日労働に関する協定に関する了解事項等四〇数項目
の覚書、確認書等を破棄する旨申立組合に通告した。熊本郵政局は都城郵便局の業
務を指導するため、同年一〇月下旬から翌年一月上旬までの間、同郵政局の労働関
係担当の職員を都城郵便局に派遺して業務の指導にあたらせた。
(2) 当時、全逓信労働組合は、大巾増員による労働軽減と郵便遅配解消、組合
案による仲裁裁定の実施等を中心目標としていわゆる昭和三六年年末闘争を組み、
諸休暇・休憩・休息の完全消化、平常能率の徹底、休憩時間中の職場大会の開催、
時間外労働拒否等を指令していた。これらの指令をうけて申立組合は、順法闘争等
いわゆる職場闘争を活溌に行なつた。
3 支配介入について
(1) 申立組合は、昭和三六年一一月二〇日付で一一月二七日午前八時半から第
二四回支部委員会を開催すること、その議題は年末闘争方針案等であることを告示
した。支部委員会は、二四名の委員で構成され、大会に次ぐ決議機関であつて毎年
二回定期的に開催されるものである。
 都城郵便局長P9は、一一月二四日、この支部委員会は、闘争を激化させるための
ものであるから、職員がこれに出席するために年休又は組休を請求した場合には、
各課長はこれを認めないよう指示した。
(2)イ 一一月二四日午後支部委員会の委員P18及びP19の両名は、一一月二七
日の年休の請求書を提出したところ、所属課長は、支部委員会出席のためのもので
あることを確めて、年休を承認しなかつた。
ロ 翌二五日支部委員会の委員P20及びP21並びに組合員P22が、一一月二七日の
年休の請求書を提出したところ、それぞれ所属課長は、後日支部委員会に出席した
ことが判明したときは年休を取り消す旨を述べて、これを承認した。
ハ 一一月二四日申立組合支部長P1、書記長P2、青年部長P3及び執行委員P4が
一一月二七日の組休の付与願を提出したところ、それぞれ所属課長は、闘争期間中
は承認できない旨を組休付与願に記載してこれを承認しなかつた。
 組休は、郵政省就業規則第二八条以下の規定により、職員が組合の業務を行なう
場合、所属長の許可を受けたときに与えられる休暇であり、その間、職員は俸給及
び暫定勤務手当を支給されないものである。
ニ 申立組合は、以上の外、数名の者が年休又は組休をそれぞれ所属課長に請求し
たところ承認されなかつたと主張しているが、そのような事実は明らかでない。
ホ このようにして、支部委員会を予定どおり開催することが困難となり、申立組
合は、これを延期して一二月五日の午後五時から委員会を開催することとした。
4 団体交渉拒否について
(1) 被申立人は、昭和三六年一〇月二三日に覚書、確認書等の破棄通告を行な
つたことは先に認定したとおりであるが、これに対し、申立組合は、一〇月二五
日、被申立人に対して、団体交渉を申し入れた。被申立人は、破棄通告は上局の指
示により行なつたものであること及び現在は上局の特別考査中で混雑した状態であ
るので一〇月二七日以降に話し合いたい旨答えたが、申立組合は、これを了承せず
もの別れとなつた。
(2) 申立組合は、一〇月三〇日午前九時ごろ被申立人に対して、郵便課外勤組
合員の労働条件について、当日午前一〇時から団体交渉を行ないたい旨申し入れた
ところ、被申立人は、交渉申入れが郵便外務臨時雇P11に対する超勤命令のことで
あれば苦情処理として処理すべきものと考えること並びに早急に解決したい意向で
あれば職員の代表三名以内との話し合いなら今日でも行なつてよい旨答えたが、申
立組合は、団体交渉を要求した。
(3) 申立組合は、一〇月三一日被申立人に対して、①郵便外勤P12の労働条件
について及び②強制労働排除について団体交渉を申し入れた。この申入れは、郵便
課P12が病弱なため、前から話し合いで平坦地の多いところに勤務していたが一方
的に市外地の坂の多いところに担務替えになつたこと、また、被申立人が一〇月二
三日以来、病気休暇中の者を自宅に訪問し、病状の調査を行なつて強制労働を強い
たということに関するものであつた。これに対して被申立人は、①については担務
変更は所属長の権限で行なうものであつて団体交渉事項とは認められないので交渉
には応じがたい旨、②については具体的事実が示されていないが当方においては、
法令に違反する強制労働の事実はないと考えるので団体交渉には応じがたい旨答え
たが、同時にいずれも話し合いには応じる旨付言した。
(4) 申立組合は、一一月三〇日被申立人に対して非常勤職員の解雇にいて団体
交渉を申し入れたと主張するが、申立組合が同日付で解雇された二名の非常勤職員
についてその解雇理由を被申立人に質した事実は認められるが、団体交渉の申し入
れが行なわれたものとは認められない。
(5) 申立組合は、一二月六日被申立人に対して組合員の不当解雇について団体
交渉を申し入れたところ被申立人は、交渉申入れ事項は人事権に関することであ
り、交渉には応じられない旨答えた。
(6) 申立組合は、一二月八日被申立人に対して、①服務表について、②バレー
コートについて、③昭和三六年一一月三〇日及び昭和三六年一二月一日付け臨時雇
郵便課勤務外務員P13、P14、P8、P16の四名の解雇について、④支部団体交渉に
ついて、⑤山之口局賃金未払について、⑥志和池局賃金未払について及び⑦山之口
局非常勤者賃金について団体交渉を申し入れた。
 被申立人は、①については、服務表に関する事項は団体交渉事項ではないが意見
は聞く旨、②については、来年一月中に仮設事務室を撤去する旨、③については、
人事権に属するものであるので団体交渉には応じられない旨答えた。④から⑦まで
については検討して返事する旨答えたが、その後一二月一一日に組合の掲示板に掲
示されていた指令第一二号をみて、このような状態では交渉に応じられないので平
和になるまで待つてもらいたい旨回答した。
(7) 申立組合は、一二月一一日被申立人に対して食堂の暖房について団体交渉
を申し入れたところ、被申立人は、これを火鉢をふやすことでよくはないかと答え
た。
(8) 申立組合は、一二月一二日被申立人に対して①暖房清掃について及び②厚
生施設について団体交渉を申し入れたところ、被申立人は、闘争期間中であるし集
団交渉になりかねないので一二月一五日以降に話し合いに応ずる旨答えた。
(9) 申立組合は、一二月一三日被申立人に対して郵便外務者の茶代について団
体交渉を申し入れたところ、被申立人は、これは交渉事項とは思えないし、職員同
志が茶代を出し合つて飲んでいるということではないかと答えた。
(10) 申立組合は、一二月一四日被申立人に対して郵便外勤の市外休息所につ
いて団体交渉を申し入れたところ、被申立人は話合いは闘争が終つてからにしたい
旨答えた。
第二 当委員会の判断
1 被申立人は、昭和三六年一一月二七日の支部委員会のための年休及び組休の請
求に対し、不承認又は条件付承認の措置をとつたのは、申立組合が違法な職場闘争
を行なつていたので、このような状況下において開催される支部委員会はこの闘争
をさらに激化させるためのものであると判断したためであると主張する。
 しかしながら、年休は、法が労働者に認めた権利であつて、被申立人としては、
労働者が年休をとつて出席する支部委員会で違法な職場闘争を審議するであろうか
らとか、あるいはその当時当該組合が違法な職場闘争を行なつているというような
ことを理由として、法の定める年休を拒みうる筋合のものではない。
 被申立人は、当該年休の請求が支部委員会出席のためであることを確かめてそれ
を理由として承認を拒否し、あるいは支部委員会に出席したならば取り消す旨の条
件をつけて承認して実質的にはこれを拒否したものであつて、これら不承認の措置
は、いづれも一一月二七日の業務の都合を理由とするものではない。
 結局、被申立人が申立組合の組合員の年休請求について、それが支部委員会出席
のためであることを理由に、その承認を拒否し、支部委員会出席を困難ならしめた
ものであり、労働組合法第七条第三号の規定に該当する不当労働行為である。
 つぎに、被申立人が組休の許可を与えなかつた理由は年休の場合と同じである。
しかしながら、この就業規則に基づいて使用者の許可によつて与えられる組休の制
度は、もともと申立組合の組合活動に対して特別の便宜を図るものである点におい
て、年休の制度とはその趣旨を異にするから、前記のような事実関係のもとにおい
て被申立人が組休の許可を与えなかつたことをもつて、不当労働行為としてその責
任を問うことは適当でない。
2 申立組合は、昭和三六年一〇月二五日、三〇日及び三一日並びに一二月六日、
八日、一一日、一二日、一三日及び一四日の九日間に一七の事項について被申立人
に団体交渉を申し入れた。
 当時の都城郵便局の状況は、第一、2、(1)及び(2)で認定したとおりであ
るが、このような状況も考慮しつつ、これら申立組合の団体交渉申入れに対する被
申立人の行為が不当労働行為となるかどうかについて判断する。
 一〇月二五日の団体交渉申入れに対して、被申立人が二日後の二七日以降に話し
合いたいと答えたのはさして不当とは思われない。また、一二月八日の④から⑦ま
でに関する申入れ並びに同月一二日及び一四日の申入れに対して、被申立人が集団
交渉になりかねないので闘争状態が終るまで待つてもらいたい旨答えたのも、その
当時の状況と当該交渉申入れ事項の性質をあわせ考えれば被申立人の行為をもつ
て、正当な理由のない団体交渉拒否であるということはできない。
 つぎに、一〇月三〇日の申入れに対して、被申立人が苦情処理手続により解決し
たい旨回答しているのは、苦情処理に関する協約の内容に照らし、もつともである
と考えられる。また一二月六日の申入れ及び一二月八日の③に関する申入れに対し
ては被申立人は、当該申入れ事項が人事権に関するものであるから交渉には応じら
れないと答えているが、その趣旨は、苦情処理手続による処理には反対していなか
つたものと認められるので、これらについて被申立人の責任を追及することは妥当
でない。
 一〇月三一日の申入れ事項は、個々の労働者の労働条件に関する具体的な苦情に
関するものであつて、これについて被申立人が団体交渉には応じられないが話し合
いには応じると答えたのは、不当とはいえない。一二月八日の申入れについては、
服務表は勤務時間及び週休等に関する協約付属覚書により所属長が定めることとさ
れているものであるから、これについて被申立人が交渉には応じられないが話し合
いには応じると答えたのも不当とはいえない。
 最後に一二月八日の②に関する申入れ、一二月一一日の申入れ及び一二月一三日
の申入れに対する被申立人の答えは、いわゆる職場要求に対してその場で回答した
ものであつて団体交渉を拒否したというにあたらないと考える。
 しかも、申立組合は、以上のような一七の項目について、つぎつぎに被申立人に
団体交渉を申し入れておきながら、それらに対する被申立人の回答に対してその場
ではこれに反対し抗議する姿勢を示しているが、その後さらに同一事項について再
度団体交渉を申し入れたという事実も認められない。
 以上要するに被申立人の上記の行為は、労働組合法第七条第二号に規定する不当
労働行為に該当しないというべきである。
3 申立組合は、陳謝文の交付のほか、その指定する新聞に謝罪広告を行なうこと
を求めているが、本件については主文のとおりの命令をもつて足るものと認める。
 よつて当委員会は、公共企業体等労働関係法第二五条の五第一項及び第二項並び
に公共企業体等労働委員会規則第三四条を適用して、主文のとおり命令する。

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