弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴に基づき,第1審判決中上告審による差戻しに係る部分を次のとお
り変更する。
(1)被控訴人が平成元年10月12日付けで控訴人に対してした静岡県公文書
の開示に関する条例に基づく開示の請求に係る文書の一部を非開示とした処
分のうち,別表A項の番号111の支出に係る前渡資金出納簿の摘要欄のう
ち支出項目及び行為者が記載された部分以外の部分を非開示とした部分,別
表B項の番号2,98ないし100,154,161,193,216,2
24,244,264,291,298,309,321,323,326,
336,361,364,372,389,429,442ないし444,
481,490,514,519,520,551,552の支出に係る前
渡資金支払計算書添付の支出証拠書を非開示とした部分,別表C項の番号8
5,102,123,147,179,187,230,299,307,
391,550の支出に係る前渡資金支払計算書添付の支出証拠書を非開示
とした部分をいずれも取り消す。
(2)控訴人のその余の請求を棄却する。
2訴訟の総費用は,これを3分し,その2を控訴人の負担とし,その余を被控
訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴の趣旨
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人は,控訴人に対し,別表A項の各番号の支出に係る前渡資金出納
簿の摘要欄を非開示とした部分,別表B項及びC項の各支出に係る前渡資金
支払計算書添付の支出証拠書を非開示とした部分をいずれも取り消す。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2控訴の趣旨に対する答弁
(1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,静岡県(以下「県」という。)内に住所を有する控訴人が,静岡県
公文書の開示に関する条例(平成元年静岡県条例第15号。以下「本件条例」
という。)に基づき,被控訴人に対し,昭和63年度の静岡県知事,同副知事
及び出納長(以下,3者を併せて「知事等」という。)の交際費に関する公文
書(領収書を含む。)の開示を請求したところ,被控訴人から,本件条例9条
2号(個人に関する情報),3号(事業者の事業に関する情報)又は8号(渉
外の実施機関が行う事務事業に関する情報)所定の非開示情報が記録されてい
ることを理由として,対象となる公文書の一部である前渡資金出納簿の摘要欄
のうち支出項目及び行為者が記載された部分以外の部分及び前渡資金支払計算
書添付の支出証拠書各557件を非開示とする決定(以下「本件決定」とい
う。)を受けたため,その取消しを求めている事案である。
2第1審は,本件決定で非開示とされた前渡資金出納簿の摘要欄及び支出証拠
書各557件のうち,(1)開示をすることにより知事等の交際の相手方が識別
され得る前渡資金出納簿の摘要欄及び支出証拠書各540件については,いず
れも本件条例9条8号に該当するとして請求を棄却し,(2)その余の交際の相
手方が識別され得る記載が存しない前渡資金出納簿の摘要欄及び支出証拠書各
17件については,本件条例9条8号に該当しないところ,このうち,ア更
に本件条例9条2号,3号に該当すると主張されていない前渡資金出納簿の摘
要欄2件及び支出証拠書1件についての非開示決定を取り消して請求を認容し,
イ本件条例9条3号に該当すると主張される贈答品等の購入先等の事業者の
名称,購入品名,単価,取引銀行口座等が記録された前渡資金出納簿の摘要欄
15件及び支出証拠書16件のうち前渡資金出納簿の摘要欄15件及び支出証
拠書11件は,この記録を開示してもその競争上又は事業運営上の地位が損な
われるとまでは認められないから同号に該当しないし,更に本件条例9条2号
に該当すると主張される購入事業者の発行取扱者である個人の氏名,捺印が記
録された支出証拠書5件は,この記録から直ちにその者と当該購入事業者との
雇用その他の事実上又は法律上の関係が具体的に明らかになるものとはいえな
いから本件条例9条2号に該当しないとして,請求を棄却した。
これに対し,当事者双方が敗訴部分について不服申立てをした。第1次控訴
審は,(1)開示をすることにより知事等の交際の相手方が識別され得る前渡資
金出納簿の摘要欄及び支出証拠書を各524件とした上,これらは,いずれも
本件条例9条8号に該当するとし,同審で控訴人が追加主張した本件条例10
条に基づき交際の相手方を識別し得る記載を除いて一部開示すべきであるとの
主張に対しては,相手方を識別し得る記載のみをそれ以外の部分と容易に分離
することができないから一部開示の要件に該当しないとして,上記各524件
に係る控訴人(第1審原告)の控訴を棄却し,(2)その余の交際の相手方が識
別され得る記載が存しない前渡資金出納簿の摘要欄及び支出証拠書各33件に
ついては,このうち,ア相手方が識別され得る記載があるものに誤って分類
されていた各16件は控訴人による非開示事由該当の主張がないとして,第1
審判決を取り消して請求を認容したが,イその余の支出事由に贈呈又は懇談
の目的,理由等がある程度具体的に記載された各17件を公開することは知事
等の交際の公正,円滑な執行に支障が生ずるおそれがあり本件条例9条8号に
該当するとして第1審判決を取り消して請求を棄却した。
これに対し,控訴人(第1審原告)が敗訴部分について上告受理の申立てを
した。上告審は,申立ての理由中一部開示に関する本件条例10条の解釈適用
の誤りをいう点を排除し,その余の点を受理した上,(1)交際の相手方が識別
され得る記載が存しない支出項目が「贈呈品」,「その他」,「贈答品」及び
「その他贈呈品」と記載される前渡資金出納簿の摘要欄17件及び支出証拠書
16件並びに前同様の支出項目が「御見舞」と記載される支出証拠書1件につ
いては,本件条例9条8号に該当しない,(2)開示をすることにより知事等の
交際の相手方が識別され得る前渡資金出納簿の摘要欄及び支出証拠書各524
件について,ア支出項目が「生花」に分類される支出に係る情報は,交際の
相手方及びその内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に係るから,
本件条例9条8号に該当しない,イ支出項目が「供物生花」,「御供物」,
「御祝生花」,「接待経費」及び「懇談経費」に分類される支出については,
これらの支出がどのような機会にされたものであるのかにつき事実を確定しな
ければ,これらの支出に係る情報が本件条例9条8号に該当するかどうかを判
断することはできない,ウその余の支出項目の支出に係る情報は本件条例9
条8号に該当する,(3)支出項目が「生花」に分類される支出に係る情報は,
交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するも
のであるから本件条例9条2号に該当しない,(4)前渡資金出納簿の非開示部
分に記載されている債権者の名称等の記載事項はこれが明らかになったからと
いって当該債権者の競争上又は事業運営上の地位等が損なわれる事情は認定さ
れていないから本件条例9条3号に該当するとはいえないが,被控訴人(第1
審被告)が支出証拠書に債権者が識別され得ると主張する事業者の預金口座
(取引銀行,口座番号等)関係の記載事項は,原審(第1次控訴審)が確定し
た事実のみでは,本件条例9条3号に該当するかどうか判断できず,更に審理
を尽くす必要があるとした上,(5)結論として,ア支出項目が「生花」と記
載される前渡資金出納簿の摘要欄及び支出証拠書各54件のうち更に本件条例
9条2号,3号所定の非開示情報が記録されているか否かの審理を尽くす必要
がない前渡資金出納簿の摘要欄54件及び支出証拠書2件については,第1審
判決中請求を棄却した部分を取り消して,当該部分の請求を認容し,イ「贈
呈品」,「その他」,「贈答品」及び「その他贈呈品」と記載される前渡資金
出納簿の摘要欄17件及び「御見舞」と記載される支出証拠書1件については,
第1審判決中請求を認容した部分に対する被控訴人の控訴を棄却し,ウ支出
項目に,(ア)「供物生花」,「御供物」,「御祝生花」,「接待経費」及び
「懇談経費」と記載される前渡資金出納簿の摘要欄及び支出証拠書各18件,
(イ)「生花」と記載される前記各54件のうち更に本件条例9条2号,3号
所定の非開示情報が記録されているか否かの審理を尽くす必要がある支出証拠
書52件,(ウ)「贈呈品」,「その他」,「贈答品」及び「その他贈呈品」
と記載される支出証拠書16件については,本件条例9条2号,3号又は8号
所定の非開示情報が記録されているかどうか更に審理を尽くさせるため控訴審
に差し戻し,エその余の本件条例9条8号所定の非開示情報が記録されてい
る前渡資金出納簿の摘要欄及び支出証拠書各452件についての上告を棄却し
た(最高裁平成12年(行ヒ)第53号同16年4月16日判決。以下「本件
上告審判決」という。)。
したがって,第2次控訴審である当審の審理の対象は,上記差戻に係る部分
である別表A項ないしC項の文書(なお,別表の番号は第1審判決別表第二の
番号に対応する。また,別表A項の前渡資金出納簿は本件上告審判決添付の文
書目録1の1(1)に,別表A項の支出証拠書は本件上告審判決添付の文書目録1
の1(2)アの文書に,別表B項は本件上告審判決添付の文書目録1の1(2)イの
文書に,別表C項は本件上告審判決添付の文書目録1の(2)ウの文書に,それぞ
れ対応する。)である。
3本件条例の内容
本件条例の各条項のうち,本件に関係する部分は次のとおりである。
第1条(目的)
この条例は,県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに,
公文書の開示に関し必要な事項を定めることにより,県政の公正な執行と県
民の信頼の確保を図り,もって県民参加による開かれた県政を推進すること
を目的とする。
第3条(運用方針)
実施機関は,この条例の運用に当たっては,県民の公文書の開示を求める
権利を十分に尊重するととともに,個人に関する情報がみだりに公にされる
ことのないよう最大限の配慮をしなければならない。
第5条(公文書の開示を請求できるもの)
次にかかげるものは,実施機関に対し,公文書の開示を請求することがで
きる。
1号県に住所を有する者
2号県内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体
3号県内に存する事務所又は事業所に勤務する者
4号県内に存する学校に在学する者
第6条(公文書の開示の請求方法)
前条の規定により公文書の開示を請求しようとするものは,次に掲げる事
項を記載した請求書を実施機関に提出しなければならない。
3号開示を請求しようとする公文書を特定するために必要な事項
第7条(公文書の開示の決定等)
1項実施機関は,前条の請求書を受理したときは,当該請求書を受理した
日から起算して15日以内に,請求に係る公文書の開示をするかどうか
の決定をしなければならない。
3項実施機関は,第1項の決定をしたときは,速やかに,当該決定の内容
を請求者に書面により通知しなければならない。
4項前項の場合において,実施機関は,公文書の開示をしない旨の決定
(第10条の規定による公文書の開示の決定を含む。)をしたときは,
その理由を同項の書面に記載しなければならない。この場合において,
当該決定の日から起算して1年以内に当該公文書の全部又は一部を開示
することができるようになることが明らかであるときは,その旨を付記
するものとする。
第9条(開示をしないことができる公文書)
実施機関は,開示の請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情
報が記載されている場合は,当該公文書の開示をしないことができる。
2号個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除
く。)であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。ただ
し,次に掲げる情報を除く。
ア法令又は条例(以下「法令等」という。)の定めるところにより,
何人でも閲覧することのできる情報
イ公表を目的として実施機関が作成し,又は取得した情報
ウ法令等の規定に基づく許可,免許,届出等の際に実施機関が作成し,
又は取得した情報で,開示することが公法上必要であると認められる
もの
3号法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」とい
う。)に関する情報又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位
その他社会的な地位が損なわれるものと認められるもの。ただし,次に
掲げる情報を除く。
ア人の生命,身体又は健康を事業活動によって生ずる危険から保護す
るため,開示することが必要であると認められる情報
イ人の生活を違法又は不当な事業活動によって生ずる支障から保護す
るため,開示することが必要であると認められる情報
ウア又はイに掲げる情報に準ずる情報であって,開示することが公益
上必要であると認められるもの
8号監査,検査,取締り,徴税等の計画及び実施要領,渉外,争訟,交渉
の方針,契約の予定価格,試験の問題及び採点基準,職員の身分取扱い,
用地買収計画その他の実施機関が行う事務事業に関する情報であって,
開示することにより,当該事務事業の目的が損なわれるおそれがあるも
の,特定のものに不当な利益若しくは不利益が生ずるおそれがあるもの,
関係当事者間の信頼関係が損なわれると認められるもの,当該事務事業
若しくは将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生ず
るおそれがあるもの又は県の行政の公正若しくは円滑な運営に著しい支
障が生ずることが明らかなもの
第10条(文書の一部開示)
実施機関は,開示の請求に係る公文書に前条各号のいずれかに該当する情
報が記録されている部分(以下「非開示部分」という。)がある場合におい
て,非開示部分とそれ以外の部分とを容易に,かつ,開示の請求の趣旨が損
なわれない程度に分離することができるときは,同条の規定にかかわらず,
当該非開示部分を除いて,公文書の開示をするものとする。
第12条(不服申立てがあった場合の手続)
実施機関は,第7条1項の決定について行政不服審査法(昭和37年法律
第160号)の規定に基づく不服申立てがあった場合は,当該不服申立てが
不適法であるときを除き,静岡県公文書開示審査会に諮問して,当該不服申
立てについての決定又は裁決をしなければならない。
第13条(静岡県公文書開示審査会)
1項県に,前条の諮問に応じて審議を行わせるため,静岡県公文書開示審
査会(以下「審査会」という。)を置く。
2項審査会は,知事が任命する委員5人以内で組織する。
4項審査会は,第1項の審議のため必要があると認めるときは,不服申立
人,実施機関の職員その他の関係者の出席を求めて意見若しくは説明を
聴き,又は必要な調査をすることができる。
4争いのない事実等(末尾に証拠の掲記のない事実は争いがない。)
(1)知事等の交際費の経理方法等
ア知事等の交際費(予算上の区分は,(款)企画調整費,(項)企画調整
費,(目)秘書費,(節)交際費に当たる。以下,単に「交際費」とい
う。)の予算の執行は,その性格上即時現金払いの必要があるため,地方
自治法232条の5第2項,同法施行令161条1項14号,静岡県財務
規則110条4号に基づき,資金前渡の方法によって行われ,その予算執
行の過程で,①支出負担行為伺書(資金前渡伺書を含む。),②支出負担
行為票,③支出票(前渡資金請求書を含む。),④預金通帳,⑤前渡資金
出納簿,⑥前渡資金支払計算書(支出証拠書〔請求書及び領収書並びに領
収書を徴せない場合に担当職員が作成する支払証明書〕を含む。),⑦前
渡資金精算(返納)書の各公文書が作成される。
すなわち,交際費予算の執行については,企画調整部秘書課が所掌する
ところ,会計年度の開始前に,支出負担行為伺書,資金前渡伺書及び支出
負担行為票が作成された上,当該年度内においては,毎月,資金前渡者で
ある秘書課長が,支出票及び前渡資金請求書により必要と判断する額の前
渡資金の前渡しを出納長から受け,これを普通預金口座に入金して保管し,
必要な都度引き出して支払に充てるとともに,前渡資金額,預金預入額,
預金引出額,個別の支払の額及び当該支払に関する事項を前渡資金出納簿
に記録し,各月の終了後には,当該月分の前渡資金額,合計支払額及び残
額を記載した前渡資金支払計算書を作成し,支出証拠書を添付して出納長
に提出し,さらに,会計年度終了後,当該年度分の前渡資金額,支払額及
び返納額を記載した前渡資金精算(返納)書を作成し,残額及び返納する
という経理方法が採られている。
(乙10ないし16,18,証人P1の証言,弁論の全趣旨)
イ交際費の支出項目
県の秘書課においては,内部的な会計処理の便宜上,交際費に係る個別
の支払を儀礼的経費,贈呈品,接待,賛助,その他に区分して整理してい
る。これらの区分に係る具体的な支出項目等は,次のとおりである。
(ア)儀礼的経費
儀礼的経費に区分される交際費のうち,慶賀の目的でされる支出は
「御祝」,「御祝儀」及び「御祝生花」の各支出項目に,弔意の目的で
される支出は「生花」,「供物生花」,「御供物」,「玉串料」,「御
香料」及び「会費(不祝儀)」の各支出項目に,せん別の目的でされる
支出は「御餞別」及び「御餞別(退職者)」の各支出項目に,見舞いの
目的でされる支出は「御見舞」,「御見舞生花」及び「御見舞果物」の
各支出項目に分類されている。
(イ)贈呈品
贈呈品に区分される交際費は,上京時や来訪者への土産,死亡叙勲者
への供物,外国からの賓客への記念品等の購入のための支出であり,
「贈呈品」,「その他贈呈品」,「贈答品」及び「その他贈答品」の各
支出項目に分類されている。
(ウ)接待
接待に区分される交際費は,各種団体の行う行事に対する賛助,知事
賞の贈呈のための支出であり,「賛助」及び「知事賞」の各支出項目に
分類されている。交際費が支出される知事賞は,県政に関連する団体が
内輪の催しをする際に提供されるものである。
(エ)その他
その他に区分される交際費は,「その他」及び「その他(負担金)」
の各支出項目に分類されている。
(乙14,証人P1の証言,弁論の全趣旨)
(2)本件決定及び不服申立て
ア控訴人は,平成元年10月2日,被控訴人に対し,本件条例6条に基づ
き,昭和63年度の県知事等の交際費に関する公文書(領収書を含む。)
の開示を請求した(以下「本件開示請求」という。)。
イ被控訴人は,本件開示請求に対し,平成元年10月12日付けで,昭和
63年度の交際費に係る前記(1)のアの①ないし⑦記載の各公文書(以下,
これを総称して「本件公文書」という。)のうち,支出負担行為票,支出
票(前渡資金請求書を含む。),預金通帳,前渡資金精算(返納)書の全
部と,前渡資金出納簿のうち年月日欄,金額(受高,払高,残高)欄,備
考欄並びに摘要欄のうち支出項目(前記(1)のイの各支出項目の別)及び支
出行為者(知事,副知事及び出納長の別)の記録部分,前渡資金支払計算
書のうち添付の支出証拠書を除く部分(前渡資金支払計算書の本体の部
分)を開示し,前渡資金出納簿(以下「本件前渡資金出納簿」という。)
の摘要欄のうち支出項目及び行為者が記載された部分以外の部分(以下
「本件摘要欄非開示部分」という。)並びに上記交際費に関する前渡資金
支払計算書添付の支出証拠書(以下「本件支出証拠書」といい,本件摘要
欄非開示部分と併せて「本件非開示文書等」という。)とを非開示とする
旨の決定(以下「本件決定」という。)をし,同月14日ころ,控訴人に
通知した。
なお,本件決定には,次の非開示理由が付記されていた。
(ア)条例9条2号に該当
知事,副知事,出納帳の公務上の交際の相手方である個人の職業,地
位等が識別され得る情報であるため。
(イ)条例9条3号に該当
事業者の取引内容,営業上の情報,収入等を明らかにする情報であり,
同業者間での競争上の地位その他の正当な利益を害するため。
(ウ)条例9条8号に該当
開示することにより,関係者との信頼関係を損ない,また,当該事務
事業若しくは将来の同種の事務事業の公正・円滑な執行に支障を生じ,
目的が達成できないおそれがあるため。
ウ控訴人は,本件決定に対し,平成元年10月19日に行政不服審査法に
基づき,被控訴人に対し異議申立てをしたところ,被控訴人は,本件条例
12条に基づき,静岡県公文書開示審査会に諮問し,本件決定を取り消す
必要はない旨の答申を得た上で,平成2年4月18日付けで異議申立てを
棄却する旨の決定をし,同月21日,その旨を控訴人に通知した。
なお,静岡県公文書開示審査会は,上記諮問に対する審議を行うに当た
り,本件条例13条4項に基づき,実施機関の職員(秘書課職員)及び控
訴人の双方から書面及び口頭で理由の説明又は意見を聴取したほか,調査
の方法として,非開示部分を含む本件公文書全部を閲読した。
(静岡県公文書開示審査会に対する諮問,その答申,同審査会の説明及び
意見の聴取並びに調査の方法につき,乙8,証人P1,弁論の全趣旨)
(3)開示部分及び非開示部分の内容等
ア本件決定においてその全部を開示することとした昭和63年度の交際費
に関する支出負担行為伺書及び資金前渡伺書(乙10)には,件名,執行
理由,執行の時期等,債主,契約方法,予算額,今回執行額,資金前渡額
等が,支出負担行為票(乙11)には,債主,支出負担行為額,目的,執
行内容,執行の時期等が,支出票及び前渡資金請求書(乙12)には,債
主名,支出額,目的,摘要,命令年月日,科目等が,預金通帳(乙13)
には,名宛人,銀行名,入出金の日及び金額等が,前渡資金精算(返納)
書(乙16)には,期間,科目,前渡資金額,支払額,返納額等がそれぞ
れ記載されている。また,一部を開示することとした前渡資金出納簿の開
示部分(乙14)には,月日と摘要欄中の支出項目及び支出行為者,受高,
払高,残高(なお,そのうちの月日と摘要欄中の支出項目及び支出行為者
の記録は,第1審判決別表第二の「月日」欄,「支出項目」欄及び「行為
者」欄記載のとおり)が,添付の支出証拠書を除く本体部分を開示するこ
ととした前渡資金支払計算書(乙15)には,期間,科目,前渡資金額,
支払額,支払を証明する文言と証明者である秘書課長の氏名,押印がそれ
ぞれ記載されるなどしている。
さらに,被控訴人は,本件上告審判決を受けて,平成16年4月30日,
本件決定の一部を取り消して,かつて非開示とした前渡資金出納簿の摘要
欄中の摘要欄のうち支出項目及び行為者が記載された部分以外の部分及び
支出証拠書の各一部を開示したが,前者の開示部分(甲62)には,交際
の相手方,交際費の支出事由,贈呈品の購入先等の債権者の名称などが記
載されており,後者の支出証拠書(甲63の1ないし22)は,支出証明
書ないし随行経費精算書であって,支出証明書には交際の相手方,交際費
の支出事由,金額,支払を証明する文言と証明者である県の担当者の押印
などが記載されるなどし,随行経費精算書には,随行経費受入額,支出額,
随行者による内容に相違ないことを証明する文言,その氏名と押印が記載
されるなどしている。
イ本件前渡資金出納簿は,知事等の交際費に関する前渡資金の出納状況に
ついて,年月日,摘要,現金及び預金の受払とその残高とに分けて記録さ
れている文書である。そのうち摘要欄には,各交際費の支出ごとに支出項
目及び行為者が記載されているほか,本件摘要欄非開示部分には,支出項
目の別に応じ,交際の相手方(御香料につき被弔意者の氏名,懇談経費に
つき懇談者の氏名,賛助につき賛助金を支給した相手方名等。なお,相手
方が個人である場合においても,その氏名にその者の所属する法人名が肩
書として付されている場合もある。),交際費の支出事由(懇談経費につ
き懇談を行った目的,贈呈品につき贈呈の理由等),贈呈品の購入先等の
債権者の名称などが記載されている。
(乙14,証人P1,弁論の全趣旨)
ウ本件支出証拠書は,各交際費の支出につき,その支出先の作成した請求
書,領収書又は支出の性質上これらを徴することができない場合に県の担
当職員が作成した支払証明書からなり,それぞれ,請求,領収又は支出の
年月日及び金額が記載されている。そのほか,支出項目,行為者,債権者
の名称,購入品名,単価,債権者の取引銀行口座の記載や債権者の取扱者
の押印又はサインがあるものがあり,また,余白に交際の相手方,交際費
の支出事由等がメモ書きされているものもある。
(乙21,証人P1,弁論の全趣旨)
5当審における争点
被控訴人は,本件摘要欄非開示部分のうち当審で審理の対象となる部分につ
き,これを個別の支出ごとに区分した上で,それぞれの支出の記載部分につき
本件条例9条2号,3号又は8号に該当する事由がある旨主張し(被控訴人の
主張する該当号は,別表の「前渡資金出納簿・9号該当号」欄に○印を付した
号である。),また,本件支出証拠書のうち当審で審理の対象となる部分につ
いても,個別の支出に係る支出証拠書ごとに本件条例9条2号,3号又は8号
に該当する事由がある旨主張する(被控訴人の主張する該当号は,別表の「支
出証拠書・9号該当号」欄に○印を付した号である。)。
本件の主な争点は,被控訴人の主張の当否,すなわち,本件非開示文書等に,
被控訴人の主張する本件条例9条2号,3号又は8号に該当する事由があるか
否かである。
6当審における争点に関する当事者の主張の要旨は,次に付加するほかは,第
1審判決の「事実及び理由」欄の第二の五の2(二)の(2)(3),3ないし5,六
の3及び4(第1審判決29頁3行目冒頭から同46頁7行目末尾まで及び同
57頁1行目冒頭から同63頁11行目末尾まで。ただし,第1審判決42頁
10行目の「前渡資金出納簿の」の次に「非開示部分の」を加える。なお,別
表の文書に関する部分に限り,次項以下の当事者の当審における付加主張に反
する部分は,当審における付加主張による。)記載のとおりであるから,これ
を引用する。
(被控訴人の当審における付加主張)
(1)別表A項のうちの前渡資金出納簿について
ア別表A項のうちの前渡資金出納簿は,昭和63年度の静岡県知事,同副
知事及び同出納長の交際費に関する前渡資金出納簿の摘要欄のうち支出項
目及び行為者が記載された部分以外の部分のうち,①「供物生花」(20
0)及び「御供物」(143),②「御祝生花」(111),③「接待経
費」及び「懇談経費」(28,53,63,90,106,180,21
7,253,303,327,337,390,392,485,49
4)の支出に係る部分であるが,これらの本件条例の非開示事由該当性に
ついては,以下のとおりである。
イ本件条例9条8号該当性
(ア)「供物生花」(200)及び「御供物」(143)について
「供物生花」(200)に係る支出については,故人である県政関係
者の七回忌である法事に際して遺族に生花を贈ったものであり,また,
「御供物」(143)に係る支出については,故人である県政関係者の
2回目の盆に遺族に供物を贈ったものである。いずれも親族等の限られ
た者のみが関係するものであって,「法事に生花や供物を贈ったことが,
交際の相手方及びその内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際
に該当する」ものではない。
なお,上記各法事については案内状は出されておらず,仮に案内状
が出されていても,案内状が出されていること自体,限られた者が参
加することを示しているものであって,不特定の者が参加し得るもの
ではない。
したがって,別表A項のうち,「供物生花」(200)及び「御供
物」(143)の支出に係る部分が本件条例9条8号所定の非開示情
報に該当する。
(イ)「接待経費」及び「懇談経費」(28,53,63,90,106,
180,217,253,303,327,337,390,392,
485,494)について
a「接待経費」及び「懇談経費」に分類される支出に係る情報につい
て,その具体的な類型を示すと次のとおりである。
①28(懇談経費)
県政関係者との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が主で
ある飲食店で行われたものである。
②53(接待経費)
国関係者が主催する内輪の親睦的レクリエーションの際に開催さ
れた懇談に係るものであり,当該レクリエーションの場で行われた
ものである。
③63(懇談経費)
経済界関係者との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が主
である飲食店で行われたものである。
④90(懇談経費)
マスコミ関係者との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が
主である飲食店で行われたものである。
⑤106(接待経費)
国関係者が主催する内輪の親睦的レクリエーションの際に開催さ
れた懇談に係るものであり,当該レクリエーションの場で行われた
ものである。
⑥180(接待経費)
県政関係者が主催する内輪の親睦的レクリエーションの際に開催
された懇談に係るものであり,当該レクリエーションの場で行われ
たものである。
⑦217(懇談経費)
県政関係者との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が主で
ある飲食店で行われたものである。
⑧253(接待経費)
国関係者が主催する内輪の親睦的レクリエーションの際に開催さ
れた懇談に係るものであり,当該レクリエーションの場で行われた
ものである。
⑨303(接待経費)
県政関係者が主催する内輪の親睦的レクリエーションの際に開催
された懇談に係るものであり,当該レクリエーションの場で行われ
たものである。
⑩327(懇談経費)
国関係者との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が主であ
る飲食店で行われたものである。
⑪337(懇談経費)
県政関係者との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が主で
ある飲食店で行われたものである。
⑫390(懇談経費)
マスコミ関係者との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が
主である飲食店で行われたものである。
⑬392(懇談経費)
県政関係者との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が主で
ある飲食店で行われたものである。
⑭485(接待経費)
国会議員等との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が主で
ある飲食店で行われたものである。
⑮494(接待経費)
国会議員等との内輪の懇談に係るものであり,私的な利用が主で
ある飲食店で行われたものである。
b上記aのとおり,「接待経費」及び「懇談経費」に分類される支出
は,いずれも知事等が他の地方公共団体の長等との間で公式に開催す
る定例の会合,県政に対して功労のあった者等を知事が公に表彰する
に際して行う祝宴等公式に開催されたものではなく(そもそも,県で
は,公式の祝宴等は県庁外の相応の会場で行われ,その経費もそれぞ
れの事業費から支出され,交際費から支出されることはない。),内
輪の懇談に係るものであって,その性質上,支出の要否や金額等が県
と相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に決定されるものであ
り,支出金額等,交際の内容が不特定の者に知られ得る状態でされた
ものでは全くないものである。
なお,懇談が部外者からも見ることができる場で行われ,部外者が
懇談の状況を見ることができたとしても,それが知事等による県の交
際事務として行われているのか,また,それに公費(交際費)が支出
されているのかを知ることなどできるわけではないから,秘密の懇談
でないということはできない。
したがって,別表A項のうちの前渡資金出納簿のうち,「接待経
費」及び「懇談経費」(28,53,63,90,106,180,
217,253,303,327,337,390,392,485,
494)の支出に係る部分が本件条例9条8号所定の非開示情報に該
当する。
ウ本件条例9条2号及び同3号該当性
上記イで主張したとおり,「供物生花」,「御供物」,「接待経費」及
び「懇談経費」に係るものは,いずれも知事等の交際に関する情報で交際
の相手方が識別され得るものであって,相手方の氏名等が外部に公表,披
露されることがもともと予定されているものではない,すなわち,交際の
相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するもの
ではない。
したがって,これらの支出項目に関する情報のうち,別表A項の「前渡
資金出納簿・交際の相手方・個人名」欄に「識別」又は「識別可能」と記
載されているもの(28,53,63,106,143,200,253,
337,392,485,494)は本件条例9条2号に,また,同「法
人名」欄に「識別」と記載されているもの(90,180,217,30
3,327,390,485,494)は本件条例9条3号に該当するも
のである。
エ結論
以上のとおり,別表A項の前渡資金出納簿の摘要欄のうち支出項目及び
行為者が記載された部分以外の部分のうち,28,53,63,90,1
06,143,180,200,217,253,303,327,33
7,390,392,485,494の支出に係る部分は,本件条例9条
8号及び同条2号又は3号に該当するものであり,これらを非開示とした
処分は適法である。
(2)別表A項のうちの支出証拠書について
ア別表A項のうちの支出証拠書は,昭和63年度の静岡県知事,同副知事
及び同出納長の交際費に関する前渡資金支払計算書添付の支出証拠書のう
ち,①「供物生花」(200)及び「御供物」(143),②「御祝生
花」(111),③「接待経費」及び「懇談経費」(28,53,63,
90,106,180,217,253,303,327,337,39
0,392,485,494)の支出に係る文書であるが,これらの本件
条例の非開示事由該当性については,以下のとおりである。
イ交際の相手方,支出事由等に係る記載について
(ア)別表A項のうちの支出証拠書の本件条例9条8号該当性
別表A項のうちの支出証拠書には,別表A項の前渡資金出納簿の部分
と同一の情報が記載されており,したがって,(1)で主張したのと同様の
理由により,「供物生花」(200),「御供物」(143),「接待
経費」及び「懇談経費」(28,53,63,90,106,180,
217,253,303,327,337,390,392,485,
494)の支出に係る文書については,いずれも知事等の交際に関する
情報で交際の相手方が識別され得るものであって,相手方の氏名等が外
部に公表,披露されることがもともと予定されているものではない,す
なわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる
交際に関するものではないので,本件条例9条8号に該当するものであ
る。
(イ)本件条例9条2号及び3号該当性
上記(ア)で主張したとおり,「供物生花」,「御供物」,「接待経
費」及び「懇談経費」に係るものは,いずれも知事等の交際に関する情
報で交際の相手方が識別され得るものであって,相手方の氏名等が外部
に公表,披露されることがもともと予定されているものではない,すな
わち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交
際に関するものではない。
したがって,これらの支出項目に関する情報のうち,別表A項の「支
出証拠書・交際の相手方・個人名」欄に「識別」又は「識別可能」と記
載されているもの(28,53,63,106,143,200,25
3,337,392,485,494)は本件条例9条2号に,また,
同「法人名」欄に「識別」又は「識別可能」と記載されているもの(9
0,180,217,303,327,390,485,494)は本
件条例9条3号に該当するものである。
ウその余の情報について
(ア)事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサイン
別表A項の支出証拠書のうち,53,63,217,253,303,
485(いずれも「接待経費」,「懇談経費」に係るもの)に係る文書
には,事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサインが記載されて
いる(乙40)。
したがって,上記部分が開示されれば,上記取扱者である個人(事業
者に勤務する職員個人)が当該支出証拠書を発行した事業者に勤務し,
支出証拠書発行の事務を担当しているという,個人の職業に関する情報
が明らかにされるものである。
特定個人を示す個人印又はサインが記載されている以上,これにより
特定の個人が識別され得るのは明らかであり,しかも,これらの氏名等
の表示されている文書が特定の事業者の発行した支出証拠書であること
を合わせ考慮すれば,特定の事業者に勤務する特定の個人であることが
明らかとなるのであって,個人の識別性の程度は一層強度のものとなっ
ているのである。
また,上記の捺印又はサインの記載は支出証拠書の発行取扱者を示す
ものとしてなされているものであり,これにより,そこに表示されてい
る個人が支出証拠書を発行した当該事業者に勤務している職員であるこ
と(雇用関係の存在)はもとより,当該個人が当該事業者において支出
証拠書発行事務を担当しているという担当職務の具体的内容まで明らか
になるものであって,個人の職業に関する情報に該当するものというべ
きである。
したがって,別表A項の支出証拠書のうち,53,63,217,2
53,303,485の文書は,この点においても,本件条例9条2号
に該当するものである。
(イ)事業者の口座関係情報
別表A項の支出証拠書のうち,28,53,63,90,106,1
80,217,253,327,337,390,392,485,4
94(いずれも「接待経費」,「懇談経費」に係るもの),111
(「御祝生花」に係るもの)に係る文書には,事業者の預金口座名(取
引銀行,口座番号等)が記載されている(乙40)。
これらの情報は,営業に関する情報ないし経理に関する内部管理情報
として,取引上必要な限度で取引先に示すだけであって,それ以外は第
三者による悪用を防止するため秘密にするのが一般である。
これを開示することは事業者の側からすれば,その意思によらずに一
般的には秘密にしている営業に関する情報ないし経理に関する内部管理
情報を明らかにされる結果となる。取引銀行,口座番号等の情報が悪用
された例もあることからすれば,これら情報が,「法人その他の団体に
関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報」であって,開
示することにより,「当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は
事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められる情報」
であり,本件条例9条3号に該当するものである。
また,仮に,一般的な飲食業者等が,口座番号等を請求書等に印刷し,
顧客に交付する等,不特定多数の者が新規にその顧客となり得,通常,
自らの口座番号等が多くの顧客に知られることを容認し,当該顧客を介
してこれがさらに広く知られ得る状態に置いているような事情が存在す
る場合には,例外的に開示されるべきである(最高裁平成14年9月1
2日判決・判例時報1804号21頁参照)としても,上記文書のうち,
53,180,327,494の文書については,支払手続に必要な限
りで事業者から提供されたものを聞き取り,手書きしたものであり(乙
40),単に県に口座関係情報を提供する際に秘密の要請をしなかった
からといって,請求書等に口座番号等を印刷していない以上,不特定多
数の者に口座関係情報が知られることを積極的に容認しているものでは
ないから,上記のような例外的な場合には該当しないものである。
したがって,別表A項の支出証拠書のうち,少なくとも,53,18
0,327,494の文書は,この点においても,本件条例9条3号に
該当するものである。
エ結論
以上のとおり,別表A項の支出証拠書のうち,28,53,63,9
0,106,111,143,180,200,217,253,30
3,327,337,390,392,485,494の支出に係る文
書には,いずれにも,本件条例9条2号又は3号に該当する情報が含ま
れており,一体的な情報として全体として非開示となるものであり(最
高裁平成13年3月27日判決・判例時報1749号25頁),これら
を非開示とした処分は適法である。
(3)別表B項の支出証拠書について
ア別表B項の支出証拠書は,昭和63年度の静岡県知事,同副知事及び同
出納長の交際費に関する前渡資金支払計算書添付の支出証拠書のうち,い
ずれも「生花」(2,11,42,61,84,92,98,99,10
0,110,115,122,144,154,161,193,207,
216,224,244,251,260,264,291,298,3
09,321,323,326,336,339,360,361,36
4,372,375,388,389,429,442,443,444,
445,452,481,490,512,514,519,520,5
51,552)の支出に係る文書であるが,これらの本件条例の非開示事
由該当性については,以下のとおりである。
イ本件条例9条2号該当性
上記アの文書のうち,11,42,61,84,92,110,115,
122,144,207,251,260,339,360,375,3
88,445,452,512に係る文書には,事業者の支出証拠書発行
取扱者の個人印又はサインが記載されている(乙40)。
上記(2)ア(ア)で主張したとおり,これが開示されれば,取扱者である個
人(事業者に勤務する職員個人)が当該支出証拠書を発行した事業者に勤
務し,支出証拠書発行の事務を担当しているという,個人の職業に関する
情報が明らかにされるものであり,本件条例9条2号に該当する。
したがって,別表B項の支出証拠書のうち,11,42,61,84,
92,110,115,122,144,207,251,260,33
9,360,375,388,445,452,512に係る文書は,本
件条例9条2号に該当するものである。
ウ本件条例9条3号該当性
上記アの文書のうち,11,98,99,100,154,216,2
44,251,298,309,321,323,326,361,38
8,442,443,444,481,514,519,520,551
に係る文書には,事業者の預金口座名(取引銀行,口座番号等)が記載さ
れている(乙40)。
上記(2)ウ(イ)で主張したとおり,これらの情報は,「法人その他の団体
に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報」であって,開
示することにより,「当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事
業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められる情報」であ
り,本件条例9条3号に該当するものである。
また,仮に,一般的な飲食業者等が,口座番号等を請求書等に印刷し,
顧客に交付する等,不特定多数の者が新規にその顧客となり得,通常,自
らの口座番号等が多くの顧客に知られることを容認し,当該顧客を介して
これがさらに広く知られ得る状態に置いているような事情が存在する場合
には,例外的に開示されるべきである(最高裁平成14年9月12日判決
・判例時報1804号21頁参照)としても,上記文書のうち,98,9
9,100,154,216,251,321,361,442,443,
444,514,519,551の文書については,支払手続に必要な限
りで事業者から提供されたものを聞き取り,手書きしたものであり(乙4
0),上記のような例外的な場合には該当しないものである。
したがって,別表B項の支出証拠書のうち,少なくとも,98,99,
100,154,216,251,321,361,442,443,4
44,514,519,551の文書は,本件条例9条3号に該当するも
のである。
エ結論
以上のとおり,別表B項の支出証拠書のうち,11,42,61,84,
92,98,99,100,110,115,122,144,154,
207,216,244,251,260,298,309,321,3
23,326,339,360,361,375,388,442,44
3,444,445,452,481,512,514,519,520,
551の支出に係る文書には,本件条例9条2号又は3号に該当する情報
が含まれており,一体的な情報として全体として非開示となるものであり
(最高裁平成13年3月27日判決・判例時報1749号25頁),これ
らを非開示とした処分は適法である。
(4)別表C項の支出証拠書について
ア別表C項の支出証拠書は,昭和63年度の静岡県知事,同副知事及び同
出納長の交際費に関する前渡資金支払計算書添付の支出証拠書のうち,い
ずれも交際の相手方が識別されないもの(62,85,102,118,
123,147,179,187,202,230,299,307,3
91,550,553,554)の支出に係る文書であるが,これらの本
件条例の非開示事由該当性については,以下のとおりである。
イ本件条例9条2号該当性
上記アのうち,62,118,202,553,554に係る文書には,
事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサインが記載されている(乙
40)。
上記(2)ウ(ア)で主張したとおり,これが開示されれば,取扱者である個
人(事業者に勤務する職員個人)が当該支出証拠書を発行した事業者に勤
務し,支出証拠書発行の事務を担当しているという,個人の職業に関する
情報が明らかにされるものであり,本件条例9条2号に該当する。
したがって,別表C項の支出証拠書のうち,62,118,202,5
53,554に係る文書は,本件条例9条2号に該当するものである。
ウ本件条例9条3号該当性
上記アの文書のうち,102,147,179,307,553に係る
文書には,事業者の預金口座名(取引銀行,口座番号等)が記載されてい
る(乙40)。
上記(2)ウ(ア)で主張したとおり,これらの情報は,「法人その他の団体
に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報」であって,開
示することにより,「当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事
業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められる情報」であ
り,本件条例9条3号に該当するものである。
また,仮に,一般的な飲食業者等が,口座番号等を請求書等に印刷し,
顧客に交付する等,不特定多数の者が新規にその顧客となり得,通常,自
らの口座番号等が多くの顧客に知られることを容認し,当該顧客を介して
これがさらに広く知られ得る状態に置いているような事情が存在する場合
には,例外的に開示されるべきである(最高裁平成14年9月12日判決
・判例時報1804号21頁参照)としても,上記文書のうち,102,
147,179,307の文書については,支払手続に必要な限りで事業
者から提供されたものを聞き取り,手書きしたものであり(乙40),上
記のような例外的な場合には該当しないものである。
したがって,別表C項の支出証拠書のうち,少なくとも,102,14
7,179,307の文書は,本件条例9条3号に該当するものである。
エ結論
以上のとおり,別表C項の支出証拠書のうち,62,102,118,
147,179,202,307,553,554の支出に係る文書には,
本件条例9条2号又は3号に該当する情報が含まれており,一体的な情報
として全体として非開示となるものであり(最高裁平成13年3月27日
判決・判例時報1749号25頁),これらを非開示とした処分は適法で
ある。
(5)一部開示について
控訴人の一部開示についての主張は争う。
(控訴人の当審における付加主張)
(1)別表A項のうちの前渡資金出納簿について
ア別表A項のうちの前渡資金出納簿は,昭和63年度の静岡県知事,同副
知事及び同出納長の交際費に関する前渡資金出納簿の摘要欄のうち支出項
目及び行為者が記載された部分以外の部分のうち,①「供物生花」(20
0)及び「御供物」(143),②「御祝生花」(111),③「接待経
費」及び「懇談経費」(28,53,63,90,106,180,21
7,253,303,327,337,390,392,485,49
4)の支出に係る部分であるが,これらが本件条例の非開示事由に該当し
ない理由は,以下のとおりである。
イ本件条例9条8号該当性
(ア)「供物生花」(200)及び「御供物」(143)について
「供物生花」(200)に係る支出については,故人である県政関係
者の法事に際して遺族に生花を贈ったものであっても,当該法事は,印
刷による法事の案内状が県庁の秘書課に届いたと考えられ,それなりに
広範囲にわたって案内状が出されたものと考えられる。したがって,当
該法事は親族等の限られた者のみが関係するものということはできず,
交際の相手方及びその内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際
といえ,本件条例9条8号所定の非開示情報に該当しない。
また,「御供物」(143)に係る支出については,故人である県政
関係者の遺族に御供物を贈ったものであるとしても,当該法事は,印刷
による法事の案内状が県庁の秘書課に届いたと考えられ,それなりに広
範囲にわたって案内状が出されたものと考えられる。また,当該支出は,
副知事が訪問してなされているが,訪問に際しては,家族だけでやるか
ら来ていただきたくないという話はなかった。さらに,当該県政担当者
の没後2年目の盆であるから,訪問者は親族に限られるわけではなく,
副知事のみならず,その他の関係者も広く遺族方の訪問をすることが可
能であるとも推察することができる。したがって,当該法事は親族等の
限られた者のみが関係するものということはできず,交際の相手方及び
その内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際といえ,本件条例
9条8号所定の非開示情報に該当しない。
(イ)「接待経費」及び「懇談経費」(28,53,63,90,106,
180,217,253,303,327,337,390,392,
485,494)について
a「接待経費」及び「懇談経費」に分類される支出に係る交際の具体
的な類型は次のとおりである。
①28(懇談経費)
他の一般客の出入りがあり副知事の入店が分かる飲食店における
元公務員との食事代であり,内密の協議を目的とする懇談ではなく,
単なる儀礼的な交際にすぎない。
②53(接待経費)
国の職員が県に来た際の,県の関係者が主催するゴルフコンペ後
の,ゴルフ場内にある一般客の利用可能な会場におけるパーティー
であり,プレー後の親睦をはかる目的にすぎない懇談であって,内
密の協議を目的とする懇談ではない。
③63(懇談経費)
経済界関係者との特別秘密ではない場所での懇談であり,内密の
協議を目的とするとは考えられない懇談である。
④90(懇談経費)
県庁記者クラブ所属の記者などのマスコミ関係者との,秘密でな
い内容の懇談であり,当然に報道が予定されている内容のものであ
って,内密の協議を目的とする懇談ではない。
⑤106(接待経費)
53番と同内容で,単なる儀礼的な交際にすぎず,プレー後の親
睦をはかる目的にすぎない懇談であって,内密の協議を目的とする
懇談ではない。
⑥180(接待経費)
県議会議員等の公職者による,53番と同種のゴルフ後の,ゴル
フ場内にある一般客の利用可能な会場でのパーティーであり,プレ
ー後の親睦をはかる目的にすぎない懇談であって,内密の協議を目
的とする懇談ではない。
⑦217(懇談経費)
県の現職の公務員による,一般客の出入りのある飲食店における,
親睦の目的もある,秘密でない内容の懇談であり,内密の協議を目
的とする懇談ではない。
⑧253(接待経費)
53番,106番と同じ内容で,知事の主催により繰り返し行わ
れるゴルフのコンペであって,内密の協議を目的とする懇談ではな
い。
⑨303(接待経費)
180番と同じ内容で,ゴルフプレー後の親睦をはかる目的にす
ぎない懇談であって,内密の協議を目的とする懇談ではない。
⑩327(懇談経費)
知事の泊まった一般人も出入り可能なホテルの中の飲食店で,国
の関係者と懇談したものであって,内密の協議を目的とする懇談で
はない。
⑪337(懇談経費)
元公務員との親睦の会の費用であって,28番と同様,単なる儀
礼的な交際にすぎず,内密の協議を目的とする懇談ではない。
⑫390(懇談経費)
90番と同じ内容で,県内のマスコミ関係者との情報交換のため
の懇談であり,内密の協議を目的とする懇談ではない。
⑬392(懇談経費)
217番と同様,現職の公務員の儀礼的な親睦会の費用であって,
内密の協議を目的とする懇談ではない。
⑭485(接待経費)
国会議員が事前連絡の上で静岡に来た際,宿泊したホテル内の飲
食店において,知事が当該議員の公にされた予定を知った上で表敬
訪問して懇談したものであって,内密の協議を目的とする懇談では
ない。
⑮494(接待経費)
485番と同じ内容で,内密の協議を目的とする懇談ではない。
b上記aのとおり,「接待経費」及び「懇談経費」に分類される支出
は,いずれも内密の協議を目的とする懇談ではなく,一般人の目に触
れるような場所において,親睦的な内容の話をしているといえる。そ
うすると,これに関する交際費の支出は,前渡資金出納簿等の先例を
踏まえて,社会通念上の儀礼の範囲内における金額としてされたもの
であり,本件条例9条8号所定の非開示情報に該当しない。
ウ本件条例9条2号及び同3号該当性
上記イで主張したとおり,「供物生花」(200)及び「御供物」(1
43)は,それなりの広範囲にわたって案内状が出された法事に供された
ものであり,参加者が身内等の狭い範囲に限定された法事とはいえないか
ら,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際と
いえる。また,「接待経費」及び「懇談経費」(28,53,63,10
6,253,337,392,485,494)に係るものは,いずれも
内密の協議を目的とする懇談ではなく,一般人の目に触れるような場所に
おいて,親睦的な内容の話をしたものであるから,交際の相手方及び内容
が不特定の者に知られ得る状態でされた交際といえる。
よって,これらの支出項目に関する情報のうち,別表A項の「前渡資金
出納簿・交際の相手方・個人名」欄に「識別」又は「識別可能」と記載さ
れているもの(28,53,63,106,143,200,253,3
37,392,485,494)は本件9条2号ただし書に該当し,非開
示事由とはならない。
また,上記のとおり,「接待経費」及び「懇談経費」(90,180,
217,303,327,390,485,494)に係るものは,いず
れも内密の協議を目的とする懇談ではなく,一般人の目に触れるような場
所において,親睦的な内容の話をしたものであるから,交際の相手方及び
内容が不特定の者に知られ得る状態でされた交際といえる。また,開示に
より,当該法人等の競争上又は事業運営上の地位が損なわれるといった事
情はない。
よって,これらの支出項目に関する情報のうち,同「法人名」欄に「識
別」と記載されているもの(90,180,217,303,327,3
90,485,494)は本件条例9条3号に該当しない。
(2)別表A項のうちの支出証拠書について
ア別表A項のうちの支出証拠書は,昭和63年度の静岡県知事,同副知事
及び同出納長の交際費に関する前渡資金支払計算書添付の支出証拠書のう
ち,①「供物生花」(200)及び「御供物」(143),②「御祝生
花」(111),③「接待経費」及び「懇談経費」(28,53,63,
90,106,180,217,253,303,327,337,39
0,392,485,494)の支出に係る文書であるが,これらが本件
条例の非開示事由に該当しない理由は,以下のとおりである。
イ交際の相手方,支出事由等に係る記載について
別表A項のうちの支出証拠書には,別表A項の前渡資金出納簿の部分と
同一の情報が記載されており,アで主張したのと同様の理由により,「供
物生花」(200),「御供物」(143),「接待経費」及び「懇談経
費」(28,53,63,90,106,180,217,253,30
3,327,337,390,392,485,494)の支出に係る文
書は,本件条例9条8号に該当しない。また,本件条例9条2号にも該当
せず,該当しても同号ただし書イ及びウに該当する。さらに,本件条例9
条3号にも該当しない。
ウその余の情報について
(ア)事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサイン
支出証拠書は公的な支出についての証拠となるものであるから,必要
に応じて公表されることが予定されている。そして,支出証拠書の個人
印又はサインは,当該支出証拠書を発行した事業者の担当者が誰である
か,事務連絡上の便宜や取扱責任者を広く取引の相手方に知らせること
を予定して記載されたものであり,特別秘密扱いにする必要がないもの
である。そうすると,別表A項の支出証拠書のうち,53,63,21
7,253,303,485(いずれも「接待経費」,「懇談経費」に
係るもの)に係る文書に事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサ
インが記載されているとしても,個人印又はサインを個人の情報として
保護する必要性は全くなく,本件条例9条2号ただし書イに該当すると
いうべきであり,非開示事由とはならない。
(イ)事業者の口座関係情報
事業者の預金口座(取引銀行,口座番号等)情報は,開示が原則であ
って非開示事由に当たるのは特段の事情がある極めて例外的な場合であ
る。
別表A項の支出証拠書のうち,28,53,63,90,106,1
80,217,253,327,337,390,392,485,4
94(いずれも「接待経費」,「懇談経費」に係るもの),111
(「御祝生花」に係るもの)の文書に,事業者の預金口座名(取引銀行,
口座番号等)が記載されているとしても,本件においては,当該事業者
が県に対し口座情報を秘密にして欲しいという依頼はなく,上記の特段
の事情は認められない。このことは,53,180,327,494に
係る文書に支払手続に必要な限りで当該事業者から提供されたものを聞
き取り,手書きしたものについても同様である。そうすると,別表A項
の支出証拠書のうち,28,53,63,90,106,111,14
3,180,200,217,253,303,327,337,39
0,392,485,494の支出に係る文書は本件条例9条3号に該
当しない。
(3)別表B項の支出証拠書について
別表B項の支出証拠書は,昭和63年度の静岡県知事,同副知事及び同出
納長の交際費に関する前渡資金支払計算書添付の支出証拠書のうち,いずれ
も「生花」の支出に係る文書であるが,このうち,11,42,61,84,
92,110,115,122,144,207,251,260,339,
360,375,388,445,452,512に係る文書に事業者の支
出証拠書発行取扱者の個人印又はサインが記載されているとしても,前記(2)
ウ(ア)記載のとおり,これを個人の情報として保護する必要性は全くなく,
本件条例9条2号ただし書イに該当するというべきであり,非開示事由とは
ならない。
また,上記「生花」の支出に係る文書のうち,11,42,61,84,
92,110,115,122,144,207,251,260,339,
360,375,388,445,452,512に係る文書に事業者の支
出証拠書発行取扱者の個人印又はサインが記載されているとしても,前記(2)
ウ(イ)記載のとおり,本件条例9条3号に該当しない。
(4)別表C項の支出証拠書について
別表C項の支出証拠書は,昭和63年度の静岡県知事,同副知事及び同出
納長の交際費に関する前渡資金支払計算書添付の支出証拠書のうち,いずれ
も交際の相手方が識別されないものの支出に係る文書であるが,このうち,
62,118,202,553,554に係る文書に事業者の支出証拠書発
行取扱者の個人印又はサインが記載されているとしても,前記(2)ウ(ア)記載
のとおり,これを個人の情報として保護する必要性は全くなく,本件条例9
条2号ただし書イに該当するというべきであり,非開示事由とはならない。
また,上記交際の相手方が識別されないものの支出に係る文書のうち,1
02,147,179,307,553に係る文書に事業者の支出証拠書発
行取扱者の個人印又はサインが記載されているとしても,前記(2)ウ(イ)記載
のとおり,本件条例9条3号に該当しない。
(5)一部開示について
別表A項のうちの支出証拠書,別表B項の支出証拠書のうち,11,42,
61,84,92,98ないし100,110,115,122,144,
154,207,216,244,251,260,298,309,32
1,323,326,339,360,361,375,388,442な
いし445,452,481,512,514,519,520,551の
支出に係る文書,別表C項の支出証拠書のうち,62,102,118,1
47,179,202,307,553,554の支出に係る文書には,前
記のとおり,事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサインが記載され
たり,事業者の口座関係情報が記載されたりしているため,本件条例9条2
号又は3号に該当する場合であったとしても,その部分はなくても公開を受
けようとする趣旨は損なわれないから,本件条例10条に基づき,非公開情
報に係る部分を除いて一部開示をすべきであり,それをせずに全部非開示と
するのは違法である。
第3当裁判所の判断
1本件条例9条各号該当主張のない文書について
本件非開示文書等のうち当審で審理の対象となる部分のうち,別表A項の1
11の前渡資金出納簿,別表B項の2,161,193,224,264,2
91,336,364,372,389,429,490及び552の各支出
証拠書並びに別表C項の85,123,187,230,299,391及び
550の各支出証拠書については,被控訴人は,本件条例9条各号に該当する
ことを主張していない。
そうすると,本件決定中,上記各文書を非開示とした部分は違法であるから,
取り消すべきである。
2本件条例9条8号該当性の有無について
(1)本件非開示文書等のうち当審で審理の対象となる部分につき被控訴人が本
件条例9条8号に該当すると主張するものは,別表A項の「前渡資金出納簿
・9条該当号」欄及び「支出証拠書・9条該当号」欄の各「8号」に○印を
付した支出に係るものであって,別表A項の前渡資金出納簿及び支出証拠書
の「御祝生花」(111)を除く全部である。
(2)ア本件条例9条8号は,実施機関が行う各種の事務事業の公正又は円滑な
執行等を確保する観点から定められたものと解されるが,その内容は,開
示しないことができる公文書の範囲を,これに記録された情報が関係する
事務事業の種類(監査,検査,取締り,徴税等の計画及び実施要領,渉外,
争訟,交渉の方針,契約の予定価格,試験の問題及び採点基準,職員の身
分取扱い,用地買収計画その他の実施機関が行う事務事業)によって限定
した上,さらに,開示により生ずる支障の態様(①当該事務事業の目的が
損なわれるおそれがあるもの,②特定のものに不当な利益若しくは不利益
が生ずるおそれがあるもの,③関係当事者間の信頼関係が損なわれると認
められるもの,④当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正若し
くは円滑な執行に支障が生ずるおそれがあるもの,⑤県の行政の公正若し
くは円滑な運営に著しい支障が生ずることが明らかなもの)によって,こ
れを更に限定するものである。
イ本件前渡資金出納簿は,知事等の交際費に関する前渡資金の出納状況に
ついて,年月日,摘要,現金及び預金の受払とその残高とに分けて記録さ
れている文書であるが,そのうち摘要欄には,各交際費の支出ごとに支出
項目及び行為者が記載されているほか,本件摘要欄非開示部分には,支出
項目の別に応じ,交際の相手方,交際費の支出事由,贈呈品の購入先等の
債権者の名称などが記載されていること,本件支出証拠書は,各交際費の
支出につき,その支出先の作成した請求書,領収書又は支出の性質上これ
らを徴することができない場合に県の担当職員が作成した支払証明書から
なり,それぞれ,請求,領収又は支出の年月日及び金額が記載されている
が,そのほか,支出項目,行為者,債権者の名称,購入品名,単価,債権
者の取引銀行口座の記載や債権者の取扱者の押印又はサインがあるものが
あり,また,余白に交際の相手方,交際費の支出事由等がメモ書きされて
いるものもあること,以上については,前記第2の4(3)イ(争いのない事
実等)のとおりである。そうすると,これらの記録は,本件前渡資金出納
簿の開示部分その他の本件公文書の記録と併せ読むことにより,知事等が,
いつ誰とどのような内容の交際を行ったかを具体的に明らかにするもので
あり,別表A項の前渡資金出納簿及び支出証拠書の「御祝生花」(11
1)を除くものは,知事等の交際に関する情報が記録された公文書(又は
その部分)というべきところ,知事等の交際事務は,県と関係者との間に
良好な協力,信頼関係を形成,維持し,県における行政の円滑な執行を図
ることを目的として,これら関係者を相手方として行う懇談,接待,慶弔
等の対外的な交渉事務であるから,本件条例9条8号所定の事務事業の種
類のうちの「渉外」の事務事業に該当するものと解される。
ウしたがって,別表A項の前渡資金出納簿及び支出証拠書の「御祝生花」
(111)を除くものを本件条例9条8号により開示しないとすることが
できるためには,まず,これに記録された知事等の交際事務に関する情報
を開示することが,本件条例9条8号所定の,開示により生ずる支障の態
様(アの①ないし⑤)のうち,被控訴人の主張する①(当該事務事業の目
的が損なわれるおそれがあるもの),③(関係当事者間の信頼関係が損な
われると認められるもの)又は④(当該事務事業若しくは将来の同種の事
務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生ずるおそれがあるもの)のい
ずれかに該当することを要するというべきである。
そして,知事等の交際事務は,県と関係者との間に良好な協力,信頼関
係を形成,維持し,県における行政の円滑な執行を図ることを目的として,
これら関係者を相手方として行う対外的な交渉事務であり,本件交際費が
上記の目的でもって支出されたことは前示のとおりであるところ,交際事
務の内容については,知事等が,県と相手方との関係,その相手方の地位
等諸般の事情を考慮した上で,その裁量に基づいて決定することができる
事項であるから,実施機関が本件公文書の開示,非開示の決定をするに当
たっては,県と相手方との関係,その相手方の地位,交際費の支出の趣旨,
及び非公開の基準が存する場合には,それに対する信頼(支出当時におい
て非公開とされている場合には,相手方が非公開に寄せる信頼)等を考慮
し,本件公文書を公開することによって,知事等に認められた上記の裁量
権を侵すことがないように,①,③又は④の事由の有無を判断すべきであ
り,その判断が上記の考慮の上でされた場合には,その処分(決定)には
合理性があり,違法とすべきでないと解される。
(3)ア知事等の交際事務は,その目的,性質に照らして考えると,相手方が識
別され得るような文書の開示によって相手方の氏名等が明らかにされるこ
とになれば,交際の内容,程度の比較に基づき,交際の選から洩れたもの
はもとより,交際の相手方の中からも,交際の内容,程度の差異を県ない
し知事等の自己に対する評価に結びつけて,不満,不快,不信の念を抱く
者が現れることは容易に推認されるところであるから,交際の相手方との
信頼関係の目的が達成できなくなるおそれがある。また,交際費の支出の
要否,その額,内容等は,本来,知事等が相手方と県との関係等を考慮し,
その裁量によって,個々の事例ごとに決定すべきものである。仮に,交際
の相手方,内容等が開示されることとなった場合には,知事等は,関係者
らに前記のような不快,不信の念を与え,交際事務の目的そのものに反す
る結果を生じさせることをおそれて,交際費の支出を形式的,画一的にし,
相手方によって実質的な差を設けない運用を行わざるを得なくなることも
十分に考えられる。そうすると,知事等の交際事務の公正又は円滑な執行
に支障を生ずるおそれがあるというべきであるから,知事等の交際に関す
る情報で相手方が識別され得るものは,原則として,本件条例9条8号所
定の非開示情報に該当するというべきである。
イそこで,本件非開示文書等が知事等の相手方が識別され得るような文書
であるか否かについて検討する。
証拠(乙14,乙29,乙37,乙39,証人P2,証人P3)及び弁
論の全趣旨によれば,(ア)本件摘要欄非開示部分のうち別表A項の「前
渡資金出納簿・交際の相手方・個人名」欄が「識別」とされている支出に
係る部分には,当該交際費支出に係る交際の相手方である個人の氏名が記
録されているため,これを開示すれば交際の相手方が識別されること,
(イ)同欄が「識別可能」とされている支出に係る部分には,当該交際費
支出に係る交際の相手方である個人の役職等が記録されているため,これ
を開示すれば他の情報を参照することにより交際の相手方を識別し得るこ
と,(ウ)別表A項の「前渡資金出納簿・交際の相手方・法人名」欄が
「識別」とされている支出に係る部分には,当該交際費支出に係る交際の
相手方である法人等の名称が記録されているため,これを開示すれば交際
の相手方が識別されること,(エ)本件支出証拠書のうち,別表A項の
「支出証拠書・交際の相手方・個人名」欄が「識別」とされている支出に
係るものには,当該交際費支出に係る交際の相手方である個人の氏名が記
録されているため,これを開示すれば交際の相手方が識別されること,
(オ)同欄が「識別可能」とされている支出に係るものには,当該交際費
支出に係る交際の相手方である個人の役職等が記録されているため,これ
を開示すれば他の情報を参照することにより交際の相手方を識別し得るこ
と,(カ)別表A項の「支出証拠書・交際の相手方・法人名」欄が「識
別」とされている支出に係るものには,当該交際費支出に係る交際の相手
方である法人等の名称が記録されているため,これを開示すれば交際の相
手方が識別されること,以上の事実を認めることができる。
(4)ア知事等の交際に関する情報で交際の相手方が識別され得るものであって
も,相手方の氏名等が外部に公表,披露されることがもともと予定されて
いるもの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状
態でされる交際に関するものなど,相手方の氏名等を公表することによっ
て交際の相手方との信頼関係あるいは友好関係を損ない,ひいては交際事
務の目的が損なわれたり,知事等の交際事務の公正又は円滑な執行に支障
が生じたりするおそれがあるとは認められないようなものは,例外として
同号所定の非開示情報に該当しないと解するのが相当である。
イそこで,別表A項の前渡資金出納簿及び支出証拠書の「御祝生花」(1
11)を除くものについて,支出項目ごとに本件9条8号所定の非開示情
報が記録されているかどうかを検討する。
(ア)「供物生花」及び「御供物」について
証拠(乙39,乙41,証人P3)によれば,「供物生花」(20
0)に係る支出については,故人である県政関係者の七回忌の法事に際
して知事が遺族に生花を贈ったものであるが,七回忌の法事は親族等の
限られた者のみで故人を偲ぶのが通常であり,また,「御供物」(14
3)に係る支出については,故人である県政関係者の2回目の盆の時期
に副知事が遺族方を訪問して遺族に御供物を贈ったものであるが,盆の
行事は通常親族等の限られた者のみが関係するものであって,いずれも
親族等の限られた者のみが参加したものであり,生花や供物を贈ったこ
とは,交際の相手方及びその内容が不特定の者に知られ得る状態でされ
たものではなく,生花又は御供物を贈った相手方の氏名等が外部に公表,
披露されることがもともと予定されているものではないことが認められ
る。
控訴人は,上記の七回忌の法事及び盆の行事については,印刷による
法事の案内状が遺族から県庁の秘書課に届いたと考えられ,それなりに
広範囲にわたって案内状が出されたものと考えられると主張するが,案
内状が遺族から県庁の秘書課に届いたことを認めるに足りる的確な証拠
はなく,また,仮に案内状が出されていても,どの程度の範囲に出され
たか明らかでないのであり,案内状が出されたのであれば,かえってこ
れを受けとった限られた者が参加することを予定したものと考えられる。
また,控訴人は,上記の盆の行事について,副知事が遺族方を訪問する
に際し,家族だけでやるから来ていただきたくないという話はなかった
から,副知事以外の関係者も広く遺族方の訪問をすることが可能であっ
たと主張するが,遺族からそのような発言がなかったからといって,上
記の盆の行事の性格にかんがみ,不特定の者が参加することが可能であ
ったといえるものではない。そうすると,控訴人の主張は採用すること
ができない。
そうすると,別表A項の前渡資金出納簿及び支出証拠書のうち「供物
生花」(200)及び「御供物」(143)の支出に係る部分は,本件
条例9条8号所定の非開示情報に該当するというべきである。
(イ)「接待経費」及び「懇談経費」について
a証拠(乙39,証人P3)によれば,「接待経費」及び「懇談経
費」(28,53,63,90,106,180,217,253,
303,327,337,390,392,485,494)に分類
される支出に係る情報は,次のとおりである。
①28(懇談経費)
県政関係者である元公務員と私的な利用が主である飲食店でした
内輪の懇談に係るものである。
②53(接待経費)
国家公務員が主催する内輪のゴルフコンペの際にゴルフ場内のレ
ストランないしパーティー会場で開催された懇談に係るものである。
③63(懇談経費)
経済界関係者と私的な利用が主である飲食店で行われた内輪の懇
談に係るものである。
④90(懇談経費)
県内のマスコミ関係者と私的な利用が主である飲食店で行われた
内輪の懇談に係るものである。
⑤106(接待経費)
国家公務員が主催する内輪のゴルフコンペの際にゴルフ場内のレ
ストランないしパーティー会場で開催された懇談に係るものである。
⑥180(接待経費)
県の特別職公務員が主催する内輪のゴルフコンペの際にゴルフ場
内のレストランないしパーティー会場で開催された懇談に係るもの
である。
⑦217(懇談経費)
県の現職の公務員と私的な利用が主である飲食店でした内輪の懇
談に係るものである。
⑧253(接待経費)
国家公務員が主催する内輪のゴルフコンペの際にゴルフ場内のレ
ストランないしパーティー会場で開催された懇談に係るものである。
⑨303(接待経費)
県の特別職公務員が主催する内輪のゴルフコンペの際にゴルフ場
内のレストランないしパーティー会場で開催された懇談に係るもの
である。
⑩327(懇談経費)
国家公務員と私的な利用が主である飲食店でした内輪の懇談に係
るものである。
⑪337(懇談経費)
県の元公務員と私的な利用が主である飲食店でした内輪の懇談に
係るものである。
⑫390(懇談経費)
県内のマスコミ関係者と私的な利用が主である飲食店でした内輪
の懇談に係るものである。
⑬392(懇談経費)
県の現職の公務員と私的な利用が主である飲食店でした内輪の懇
談に係るものである。
⑭485(接待経費)
県に来た国会議員等とのその宿泊先であるホテル内の飲食店でし
た内輪の懇談に係るものである。
⑮494(接待経費)
県に来た国会議員等とのその宿泊先であるホテル内の飲食店でし
た内輪の懇談に係るものである。
b上記aによれば,「接待経費」及び「懇談経費」に分類される支出
は,いずれも,知事等の内輪の懇談に係るものであって,他の地方公
共団体の長等との間で公式に開催する定例の会合,県政に対して功労
のあった者等を知事が公に表彰するに際して行う祝宴等公式に開催さ
れたものではないから,その性質上,支出の要否や金額等が県と相手
方とのかかわり等をしんしゃくして個別に決定されるものであり,支
出金額等,交際の内容が不特定の者に知られ得る状態でされたもので
はなく,懇談の相手方の氏名等が外部に公表,披露されることはもと
もと予定されているものではないことが認められる。
控訴人は,上記の知事等の懇談は,いずれも内密の協議を目的とす
る懇談ではなく,一般人の目に触れるような場所において,親睦的な
内容の話をしているにすぎないから,これに関する交際費の支出は,
前渡資金出納簿等の先例を踏まえて,社会通念上の儀礼の範囲内にお
ける金額としてされたものであり,本件条例9条8号所定の非開示情
報に該当しないと主張する。確かに,上記の各懇談は,知事等が県と
関係者との間に良好な協力,信頼関係を形成,維持し,県における行
政の円滑な執行を図ることを目的として,これら関係者を相手方に交
際事務として行われたものであるから,内密の協議を目的としたもの
ではなく,懇談の場所も不特定の者が出入り可能な飲食店等で行われ
たものであるから,その場に偶然居合わせた不特定の者に当該懇談の
場に知事等が出席していることが知られ得るものといえる。しかし,
そうであるからといって,当該各懇談は,内輪の懇談に係るものであ
って,その支出金額等,交際の内容自体が不特定の者に知られ得る状
態でされたものではないから,懇談の相手方の氏名等が外部に公表,
披露されることはもともと予定されているものとはいえないというべ
きである。
そうすると,別表A項のうちの前渡資金出納簿及び支出証拠書のう
ち「接待経費」及び「懇談経費」(28,53,63,90,106,
180,217,253,303,327,337,390,392,
485,494)の支出に係る部分は,本件条例9条8号所定の非開
示情報に該当するというべきである。
(5)以上によれば,別表A項のうちの前渡資金出納簿及び支出証拠書のうち
「御祝生花」(111)を除く「供物生花」,「御供物」,「接待経費」及
び「懇談経費」(28,53,63,90,106,143,180,20
0,217,253,303,327,337,390,392,485,
494)の支出は,本件条例9条8号所定の非開示情報に該当する。
3本件条例9条2号該当性の有無について
(1)本件非開示文書等のうち当審で審理の対象となる部分につき,上記2で本
件条例9条8号所定の非開示情報に該当すると認定された部分を除き,被控
訴人が,事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサインが記載されてい
るとして本件条例9条2号に該当すると主張するものは,別表B項及びC項
の「支出証拠書・9条該当号」欄の「2号」に○印を付した支出に係るもの
である。
(2)本件条例9条2号は,個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,
又は識別され得るものにつき,一定種類の情報につき非開示とすることがで
きないものとして例外を設けたほかは,これをすべて開示しないことができ
るものとして,個人のプライバシーの保護を図ったものと解される。
控訴人は,特定の個人が識別され,又は識別され得るもののすべてが本件
条例9条2号によって非開示となるものではなく,同号に当たるというため
には,①私生活上の事実又は事実らしく受け取られるおそれのある事柄であ
ること,②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合,公開
を欲しないであろうと認められる事柄であること,一般の人々には未だ知ら
れていない事柄であり,公開によって当該私人が実際に不快,不安の念を覚
えるであろうことを必要とする旨主張するが,本件9条2号の文言からみて
も,また,本件条例1条及び3条の規定の趣旨に照らしても,本件条例上,
控訴人の主張するような事実の存在が非開示の要件とされているものとは到
底認め得ないところであり,前記のとおり,本件の公文書開示請求権が本件
条例により創設された権利であることを考慮すると,本件条例の規定する範
囲を越えて,控訴人主張のようにこれを殊更厳格に解すべきであるとする理
由はないといわなければならない。
(3)証拠(乙40,証人P4)によれば,支出項目を「生花」とする別表B項
の支出証拠書のうち,11,42,61,84,92,110,115,1
22,144,207,251,260,339,360,375,388,
445,452及び512に係る文書,支出項目を「贈呈品」,「その他」,
「贈答品」,「その他贈呈品」とする別表C項の支出証拠書のうち,62,
118,202,553及び554に係る文書には,事業者の支出証拠書発
行取扱者の個人印又はサインが記載されていることが認められる。
特定個人を示す個人印又はサインの記載により特定の個人が識別され得る
のは明らかであり,しかも,これらの氏名等の表示されている文書が特定の
事業者の発行した支出証拠書であることを合わせ考慮すれば,特定の事業者
に勤務する特定の個人であることが明らかになる。また,上記の捺印又はサ
インの記載は支出証拠書の発行取扱者を示すものとしてなされているのであ
るから,これにより,そこに表示されている個人が支出証拠書を発行した当
該事業者に勤務している職員であること(雇用関係の存在)はもとより,当
該個人が当該事業者において支出証拠書発行事務を担当しているという担当
職務の具体的内容まで明らかになる。そうすると,特定個人を示す個人印又
はサインの記載は,取扱者である個人(事業者に勤務する職員個人)が当該
支出証拠書を発行した事業者に勤務し,支出証拠書発行の事務を担当してい
るという個人の職業に関する情報に該当するものと認められる。
したがって,上記の文書にある事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又
はサインが記載された部分は,本件条例9条2号所定の非開示情報に該当す
るというべきである。
控訴人は,支出証拠書は公的な支出についての証拠となるものであるから,
必要に応じて公表されることが予定されていると主張する。しかし,公的な
支出についての証拠となるものであるからといって,必要に応じて公表され
ることが予定されているということはできない。また,控訴人は,支出証拠
書の個人印又はサインは,当該支出証拠書を発行した事業者の担当者が誰で
あるか,事務連絡上の便宜や取扱責任者を広く取引の相手方に知らせること
を予定して記載されたものであり,特別秘密扱いにする必要がないものであ
ると主張する。確かに,支出証拠書の個人印又はサインの記載は支出証拠書
の発行取扱者を示すものとしてなされているのであるから,当該支出証拠書
を発行した事業者の担当者が誰であるか,事務連絡上の便宜や取扱責任者を
取引の相手方である顧客に知らせることを予定して記載されたものといえる
が,これが個人の職業に関する情報に該当することは上記のとおりであり,
このような個人のプライバシーに関する情報については,支出証拠書に記載
したことにより,多数の顧客に広く知れ渡ることを容認し,当該顧客を介し
てこれが更に広く知られ得る状態に置いたものということはできない。
(4)以上によれば,支出項目を「生花」とする別表B項の支出証拠書のうち,
11,42,61,84,92,110,115,122,144,207,
251,260,339,360,375,388,445,452及び5
12に係る文書,支出項目を「贈呈品」,「その他」,「贈答品」,「その
他贈呈品」とする別表C項の支出証拠書のうち,62,118,202,5
53及び554に記載された事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサ
インは,本件条例9条2号所定の非開示情報に該当する。
4本件条例9条3号該当性の有無について
(1)本件非開示文書等のうち当審で審理の対象となる部分につき,上記2で本
件条例9条8号所定の非開示情報に該当すると認定された部分及び上記3で
本件条例9条2号所定の非開示情報に該当すると認定された部分を除き,被
控訴人が,事業者の口座関係情報が記載されているとして本件条例9条3号
に該当すると主張するものは,別表A項ないしC項の「支出証拠書・9条該
当号」欄の「3号」に○印を付した支出に係るもののうち,「御祝生花」
(111),「生花」(98,99,100,154,216,244,2
98,309,321,323,326,361,442,443,444,
481,514,519,520,551),「贈呈品」(102,147,
307),「贈答品」(179)である。
(2)本件条例9条3号は,事業活動を行う法人等又は個人の事業活動上の正当
な利益を保護する観点から定められたものと解されるが,その内容は,開示
しないことができる公文書の範囲を,これに記載された情報の種類(当該法
人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報)によって限
定し,次いで,開示により生ずる不利益の態様(当該法人等又は当該事業を
営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれるも
のと認められるもの)によっても限定した上,以上に該当する場合でも一定
種類の情報は非開示とすることができないものとして,更に限定を加えたも
のである。
(3)証拠(乙40,証人P4)によれば,前記のとおり別表A項ないしC項の
支出証拠書のうち,支出項目を「御祝生花」とする111,「生花」とする
98,99,100,154,216,244,298,309,321,
323,326,361,442,443,444,481,514,51
9,520,551,「贈呈品」とする102,147,307,「贈答品
とする179に係る請求書等の文書には,事業者の預金口座名(取引銀行,
口座番号等)が記載されており,このうち,支出項目を「生花」とする98,
99,100,154,216,321,361,442,443,444,
514,519,551,「贈呈品」とする102,147,307,「贈
答品」とする179に係る文書に記載された事業者の預金口座名(取引銀行,
口座番号等)は,被控訴人の職員が支払手続をするため事業者から聞き取り,
手書きしたものであるが,それ以外に係るものは事業者が顧客に対し一般的
に交付している請求書等に印刷により記載されているものであることが認め
られる。
(4)本件条例9条3号に該当するというためには,当該情報を開示することに
よって当該事業者の競争上又は事業運営上の地位その他社会的地位が損なわ
れると認められることを要するところ,元来は事業者が内部限りにおいて管
理して開示すべき相手方を限定する利益を有する情報であっても,事業者が
そのような管理をしていないと認められる場合には,これが開示されること
により正当な利益等が損なわれると認められることにはならないものという
べきである。
事業者の預金口座名(取引銀行,口座番号等)の記載で,被控訴人の職員
が支払手続をするため事業者から聞き取り,手書きした以外のものは,生花,
贈呈品ないし贈答品代金の請求書に当該販売業者である債権者が記載したも
のであり,代金の振込送金先を指定する趣旨のものであると認められる。そ
して,一般的な販売業者の業務態様をみれば,不特定多数の者が新規にその
顧客となり得るのが通例であり,代金の請求書に口座番号等を記載して顧客
に交付している販売業者にあっては,口座番号等を内部限りにおいて管理す
ることよりも,決済の便宜に資することを優先させているものと考えられ,
請求書に記載して顧客に交付することにより,口座番号等が多数の顧客に広
く知れ渡ることを容認し,当該顧客を介してこれが更に広く知られ得る状態
に置いているものということができる。このような情報の管理の実態にかん
がみれば,顧客が県であるからこそ債権者が特別に口座番号等を開示したな
ど特段の事情がない限り,預金口座名(取引銀行,口座番号等)は,これを
開示しても債権者の正当な利益等が損なわれると認められるものには当たら
ないというべきである。そして,本件において上記の特段の事情があること
を認めるに足りる証拠はない。
また,事業者の預金口座名(取引銀行,口座番号等)の記載で,被控訴人
の職員が支払手続をするため事業者から聞き取り,手書きしたものについて
も,証拠(乙40,証人P4)によれば,これを聞き取った際に,事業者が
取引上必要な限度で取引先に示すだけであって,それ以外は第三者による悪
用を防止するため,営業に関する情報ないし経理に関する内部管理情報とし
て秘密にしているもので,顧客が県であるからこそ債権者が特別に口座番号
等を開示するものであるから,扱いを慎重にすることを求められたなどの事
情もなく,容易に聞き取りすることができたことが認められ,そうであれば,
事業者は顧客から聴かれた場合には決済の便宜のため一般的に預金口座名
(取引銀行,口座番号等)を知らせていたものと推認できる。このような情
報の管理の実態にかんがみれば,被控訴人の職員が支払手続をするため事業
者から聞き取って手書きした取預金口座名(取引銀行,口座番号等)も,こ
れを開示しても債権者の正当な利益等が損なわれると認められるものには当
たらないというべきである。そして,本件において上記の特段の事情がある
ことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,上記の文書にある預金口座名(取引銀行,口座番号等)が記
載された部分は,本件条例9条3号所定の非開示情報に該当しないというべ
きである。
(5)以上によれば,別表A項ないしC項の支出証拠書のうち,支出項目を「御
祝生花」とする111,「生花」とする98,99,100,154,21
6,244,298,309,321,323,326,361,442,
443,444,481,514,519,520,551,「贈呈品」と
する102,147,307,「贈答品」とする179に係る請求書等の文
書に記載された事業者の預金口座名(取引銀行,口座番号等)は,本件条例
9条3号所定の非開示情報に該当しないから,本件決定中,これに係る情報
を開示しないとした部分は違法である。
5一部開示について
控訴人は,別表B項の支出証拠書のうち,11,42,61,84,92,
110,115,122,144,207,251,260,339,360,
375,388,445,452及び,512並びに別表C項の支出証拠書の
うち,62,118,202,553,554に事業者の支出証拠書発行取扱
者の個人印又はサインが記載されているため,本件条例9条2号に該当すると
しても,その部分はなくても公開を受けようとする趣旨は損なわれないから,
本件条例10条に基づき,非公開情報に係る部分を除いて一部開示をすべきで
あると主張する。
本件条例10条は,1個の公文書について本件条例9条各号のいずれかの事
由(以下「非公開事由」という。)に該当する情報が記録されている部分をそ
の余の部分から容易に,かつ,公文書の公開の請求の趣旨を損なわない程度に
分離できるときは,非公開事由に該当する情報が記録されている部分を除いた
その余の部分を公開することを実施機関に義務付けるものであって,同条所定
の要件に該当する限り,実施機関は同条所定の公文書の部分公開をしなければ
ならず,本件条例5条各号に掲げる者(以下「住民等」という。)は,実施機
関に対して,本件条例10条所定の部分公開を請求することができるのである。
しかしながら,同条は,その文理に照らすと,1個の公文書に複数の情報が記
録されている場合において,それらの情報のうちに非公開事由に該当するもの
があるときは,当該部分を除いたその余の部分についてのみ,これを公開する
ことを実施機関に義務付けているにすぎない。すなわち,同条は,非公開事由
に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,そ
の余の部分にはもはや非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみ
なして,これを公開することまでをも実施機関に義務付けているものと解する
ことはできないのである。したがって,実施機関においてこれを細分化するこ
となく一体として非公開決定をしたときに,住民等は,実施機関に対し,同条
を根拠として,公開することに問題のある箇所のみを除外してその余の部分を
公開するよう請求する権利はなく,裁判所もまた,当該非公開決定の取消訴訟
において,実施機関がこのような態様の部分公開をすべきであることを理由と
して当該非公開決定の一部を取り消すことはできない(最高裁平成13年3月
27日判決・民集55巻2号530頁)。
これを本件について見るに,別表A項ないしC項の当該支出証拠書の一部は,
事業者の請求書及び領収書並びに領収書を徴せない場合に担当職員が作成する
支払証明書で,これには知事等の交際に係る費用支出に関する1個の情報が記
載されているところ,事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサイン,事
業者の口座関係情報という非公開事由に該当する情報が記録されている部分を
その余の部分から分離するには,個々の文書ごとに開示の請求の趣旨が損なわ
れない程度に塗りつぶし等をすることを要し,多大な労力を要して困難を伴う
ことが認められ,この開示が迅速にされることが求められていることも考慮す
ると,当該各文書はそれぞれが各支出の証憑としての効果を発揮すべき1個の
公文書であり,事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサイン,事業者の
口座関係情報記載部分のみをそれ以外の部分とを容易に,かつ,公開の請求の
趣旨を損なわない程度に分離できるものと認めることはできないものである。
そうすると,控訴人の上記の主張は採用できない。
なお,本件事件を差し戻した本件上告審判決は,控訴人が第1次控訴審判決
中の敗訴部分についてした上告受理の申立ての理由中,本件条例10条に基づ
き交際の相手方を識別し得る記載を除いて一部開示すべきであるとして同条の
解釈適用の誤りをいう点を排除し,この点については上告の理由とならないも
のとして調査されず,判断されなかった(民事訴訟法318条,320条)。
そして,民事訴訟法は上告の制度のほか上告受理の制度を設けて上告の理由を
法令の解釈に関する重要な事項に限定し最高裁判所の負担を軽減したのである
が,この結果,最高裁判所においては法令の解釈に関する重要な事項に該当し
ないとして排除されて審理判断の対象とならなかった理由が,その余の受理さ
れた理由に対する審理判断の結果,事件が下級審裁判所に差し戻されたため,
再度差戻しを受けた裁判所において主張でき,審理判断を要するものとするの
は,その余に受理される理由がなく上告が却下された場合やその余の受理され
た理由について判断されて事件が上告棄却や破棄自判により終了した場合と比
較すると,上告制度上合理性があるといえないものである。そうすると,上記
の本件条例10条に基づき交際の相手方を識別し得る記載を除いて一部開示す
べきであるとの控訴人の第1次控訴審における主張は,差戻審である第2次控
訴審である当審において判断されるべきものではなく,また,控訴人自身も上
記の主張を第2次控訴審である当審においてしていないと認められる。もっと
も,仮に,その主張をしているとしても,これが認められないことは,上記の
事業者の支出証拠書発行取扱者の個人印又はサイン,事業者の口座関係情報記
載部分を除いて一部開示すべきであるとは認められないとしたのと同様である。
6以上によれば,本件決定中,別表A項の番号111の支出に係る前渡資金出
納簿の摘要欄のうち支出項目及び行為者が記載された部分以外の部分を非開示
とした部分,別表B項の番号2,98ないし100,154,161,193,
216,224,244,264,291,298,309,321,323,
326,336,361,364,372,389,429,442ないし4
44,481,490,514,519,520,551,552の支出証拠
書を非開示とした部分,別表C項の番号85,102,123,147,17
9,187,230,299,307,391,550の支出証拠書を非開示
とした部分は違法として取り消すべきであり,控訴人の請求はこの限度で理由
があり認容されるべきであるが,別表A項ないしC項のその余の各前渡資金出
納簿のうち支出項目及び行為者が記載された部分以外の部分及び各支出証拠書
を非開示とした部分は適法であるから,控訴人の請求は理由がなく棄却される
べきである。
よって,これと結論を異にする第1審判決を変更することとし,主文のとお
り判決する。
東京高等裁判所第16民事部
裁判長裁判官鬼頭季郎
裁判官福岡右武
裁判官納谷肇

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