弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取消す。
     被控訴人の事情変更による仮処分取消の申立並びに当審で追加した主位
的請求の訴をいずれも却下する。
     訴訟費用は第一、二審を通じて全部被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求はいずれもこれを棄却する。訴
訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人
は「本件控訴を棄却する」との判決を求め、当審で訴を追加し、主位的請求として
「控訴人と訴外亡Aとの間の水戸地方裁判所昭和三一年(ヨ)第一二六号不動産仮
処分申立事件の仮処分決定に基づき、原判決添付の物件目録記載の土地(以下本件
土地という)についてなされた仮処分の執行を取消す。」との判決ならびに仮執行
の宣言を求め、なお従来の事情変更による仮処分の取消は予備的に申立てると述べ
た。
 当事者双方の事実上及び法律上の主張、証拠の提出、援用、認否は、左記に付加
するほかは原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。
 被控訴人は、当審で追加した主位的請求の原因として、次のとおり述べた。
 一、 昭和三一年一二月一日控訴人と訴外亡A間の水戸地方裁判所昭和三一年
(ヨ)第一二六号不動産仮処分申立事件の仮処分決定に基づき、本件土地(ただし
当時はa番のb、宅地九六坪一合)および同番のd、宅地六一坪三勺に対し、処分
禁止の仮処分が執行された。
 二、 右仮処分決定の対象は、原判決添付図面の赤線で囲まれた部分の土地七三
坪七合七勺(以下本件係争地という)であるが、右係争地は、戦災復興都市計画に
よる土地区画整理事業のため、昭和二八年一二月二五日茨城県知事から、当時A所
有のa番のbの宅地一九〇坪六合に対する仮換地として指定(換地予定地の指定)
された土地であり、従つて、従前の土地の地番によつてこの係争地の同一性を表示
するほかなかつたので、右仮処分決定においては、仮処分による処分禁止の対象地
を示すために、係争地の従前の土地に当る前記二筆の土地についてAの処分を禁止
する旨主文に記載し、これによつて、本件係争地について処分が禁止されたことを
明らかにし、その執行(処分禁止の登記)がなされたものである。
 三、 茨城県知事は昭和三五年八月一日付で、上記昭和二八年一二月二五日の仮
換地指定を変更し、上記a番のbの九六坪一合を分筆した本件三筆の土地について
は、本件係争地の所在場所とは全く異なる土地に新たな仮換地を指定した(効力発
生の日は同月五日)。従つて、本件仮処分の対象である係争地と本件土地との仮換
地指定による対応関係はなくなつた。よつて本件仮処分の執行は本件土地の部分に
関する限りでは、実質的には効力が及んでないというべきである。
 四、 被控訴人はAから昭和三四年三月三日本件土地を買受けてその所有権を取
得しその登記を経由したが、右仮処分の効力は実質的には被控訴人に及んでいない
というべきであり、被控訴人はその所有権を以て、控訴人に対抗しうるものであ
る。
 五、 よつて被控訴人は本件土地の所有権に基づき、本件土地に対する本件仮処
分の執行の排除を求める。
 控訴代理人は、被控訴人の右訴の変更には異議はないと述べた。
 被控訴代理人は甲第二一号証の一ないし五を提出し、当審証人Bの証言を援用
し、乙第五ないし第二〇号証、第二二号証の各同一原本の存在およびその成立なら
びに第二一号証の成立をそれぞれ認めると述べ、控訴代理人は乙第五ないし第二二
号証を提出し、当審証人C、同Dの各証言を援用し、甲第二一号証の一ないし五の
各成立は知らないと述べた。
         理    由
 次の諸事実は当事者間に争いがない。
 控訴人が訴外Aを相手方として提起した水戸地方裁判所昭和三一年(ヨ)第一二
六号不動産仮処分申立事件において、同裁判所は水戸市ca番のbの宅地九六坪一
合(後日これが分割されて本件三筆の土地となつた)及び同番のdの宅地六一坪三
勺について、売買、贈与その他一切の処分を禁止する旨の仮処分決定をなし、その
旨の仮処分登記がなされ、同一当事者間の同裁判所昭和三四年(モ)第五七号不動
産仮処分異議事件において、右仮処分を認可する判決がなされ、右判決は確定し
た。その後昭和三四年三月三日A法定代理人Cと被控訴人との間に本件土地を売買
によつて譲渡する意思表示がなされ(ただし右意思表示がAの債務を免脱するため
の仮装のものであるかいなかについては争いがある)、同日その旨の登記が経由さ
れた。次いで、A及びCと控訴人を当事者とする水戸地方裁判所昭和三一年(ワ)
第一八四号合資会社解散請求事件において、右当事者間に昭和三六年六月二〇日裁
判上の和解が成立した。その後右当事者間に成立した和解に基づき本件土地につき
Aから控訴人への所有権移転登記がなされ、それとともに前記被控訴人のための所
有権移転登記が抹消され(右抹消は、成立に争いのない乙第一ないし第三号証によ
れば昭和三六年一二月五日付でなされたことが認められる)、これに伴つて、同三
七年九月一二日本件仮処分の登記が抹消された。本件仮処分命令がその執行を終了
しているものであることは、後段判示のとおりであるから、被控訴人がその主張の
ように、本件土地に対しその所有権を取得したとしても、右仮処分命令の執行が存
続していることを前提としてその執行の排除を求めることは許されないから、被控
訴人のこの点についての訴は不適法として許されないものといわなければならな
い。仮処分命令は、本来、仮処分債権者の請求を保全するためになされるものであ
るから、上記判示のように仮処分債権者である控訴人と債務者であるAとの間で、
本件土地について和解をなし、その旨の本登記手続をも了し、しかも、本件仮処分
命令の登記手続が抹消せられた以上、本件仮処分命令はその執行を了して、その効
力を失つたといわなければならない。
 <要旨>かりに、百歩をゆずつて、本件のような場合に、被控訴人が本件仮処分命
令の効力を、その手続内で争えるとしても、事情変更を理由とする仮処分の
取消は、仮処分異議(民事訴訟法第七五六条、第七四五条)による取消と異なつ
て、その効力は既往に遡らないものである。しかして、被控訴人の主張は、本件仮
処分命令が当初から、少くとも被控訴人が本件不動産につき所有権取得の登記をな
す以前から、効力を消滅させなければ、目的を達せず無意味なものであるから、被
控訴人の本件仮処分命令を、本件の判決によつて将来に向つて取消を求めること
は、主張自体理由がないといわざるを得ない。従つて、被控訴人は後記のような救
済手段によればかく別、本件事情変更を理由とする仮処分取消の申立は、いずれに
しても、その利益を欠くものといわなければならない。
 被控訴人の主張するような事実が存するときは、被控訴人の権利は保護されなけ
ればならないが、その方法は、左記のような方法による以外、争う道はないといわ
なければならない。すなわち、被控訴人が主張するように、本件仮処分の目的であ
る本件係争地は、戦災復興都市計画による土地区画整理事業の施行のために仮換地
(換地予定地)として指定された土地であるため、その同一性を表示する方法とし
て、右係争地に対応する従前の土地である上記a番のbの宅地九六坪一合及びa番
のdの宅地六一坪三勺を仮処分命令の主文に掲げられ、かつ仮処分の登記手続がな
されたものであるが、その後昭和三五年八月一日に本件土地につき前記当初の仮換
地指定が変更され、全く異なつた土地に新たな仮換地指定の処分がなされたもので
あるとすれば、その結果、本件仮処分命令は本件土地に関するかぎり実質的にはそ
の効力を失うに至り、結果的には、本件土地に対しては当初に遡つて仮処分命令の
効力は、実質上及ばなかつたことになつたわけである。従つて、上記Aから控訴人
に対してなされた、和解を原因とする本件土地の所有権移転登記は、本件仮処分の
本案の権利を実現するためになされたものでなく、これとは全く異なる権利の実現
のために、不当に本件仮処分を流用してなされたこととなり、それがために昭和三
四年三月三日Aから本件土地を買受け、その所有権移転登記を経由した被控訴人の
権利は不当に侵害される結果になることは明らかである。
 しかしながら、そうかといつて、すでになされた控訴人の本件土地の取得登記、
本件仮処分命令及び被控訴人の本件土地に対する取得登記の抹消登記手続は当然無
効となるものではなく、むしろ、現在の登記手続の上では、一応有効になされたも
のと認めざるをえない(最高裁昭和三五年七月一四日判決民集一四巻一、七五五
頁、法務省民事甲第二、一六四号民事局長通達参照)。しかし、そのために被控訴
人の本件土地に対する権利が当然に消滅するわけでないのは当然であるから、右仮
処分手続の中においてではなく、別な訴訟手続で、控訴人を相手方として、控訴人
に対し右被控訴人の取得登記の抹消回復及び前記控訴人の取得登記の抹消を求め、
勝訴判決を得て、自己の従前の登記を回復し、控訴人のための取得登記の抹消をは
かる方法を講ずべきである。
 以上要するに、被控訴人の各本訴はそれぞれ訴の利益を欠くものとして、その余
の点の判断を待つまでもなく不適法として排斥を免れない。
 以上のとおりであるから、被控訴人の事情変更を理由とする本件仮処分の取消の
申立を認容した原判決は失当で、本件控訴は理由があるから、民事訴訟法第三八六
条を適用して原判決を取消し、右申立並びに被控訴人が当審で追加した主位的請求
の訴をいずれも却下することとし、訴訟費用の負担につき同法第九六条、第八九条
を適用し、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 村松俊夫 判事 小川泉 判事 杉山孝)

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