弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人Aに対する部分はこれを破棄する。
     本件を横浜地方裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人菅原道彦の控訴趣意について。
 第一点
 被告人Aに対する昭和二五年七月一〇日附追起訴状記載第三準強盗の公訴事実中
窃盗の罪のみを認めるためには訴因変更の手続を要するものでない且つそれがため
審判の請求を受けた事件について判決をせず又は<要旨>審判の請求を受けない事件
について判決をしたという違法はないと解するのが相当である。蓋し準強盗の罪
訴因は該訴因中の被告人の窃盗の罪の成立(既遂でなければならぬ場合と
未遂でも足る場合あるにしても)を前提とするものであるから裁判所は先ず必ず該
窃盗罪の成否の判断をしなければならねから準強盗の訴因中には常にその前提要件
たる窃盗の罪の訴因を含むものと解する外ないからである。そして本件起訴状にお
いても現に窃盗に関する事実を掲記しているのである。従つて若し窃盗の罪の成立
は認められるが準強盗成立のために必要なその余の要件を認めることができない場
合には訴因変更手続を経ないで窃盗の罪の成立のみを認めても何等所論のような違
法の廉はない。論旨は理由がない。
 (裁判長判事 吉田常次郎 判事 石井文治 判事 鈴木勇)

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