弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人A1株式会社代理人岩田宙造、同大室亮一の上告理由第一点について。
 書替手形の特質は、旧手形を現実に回収して発行する等特別の事情のない限り、
所論のごとく単に旧手形債務の支払を延長する点にあるものと解するを相当とする。
従つて、本件手形が、仮りに上告人と控訴人A2との関係において書替手形である
ばかりでなく、それと同時に控訴人A2と被上告人との関係においても書替手形で
あるとしても、特別の事情の認められない本件においては、手形債務について支払
猶予の人的抗弁を生ぜしめるに過ぎないものであつて、新旧手形の振出人たる上告
人が手形金支払の債務を免責され、又は、本件手形の所持人たる被上告人が所論の
ごとき危険防止のため適当な手段を講ずる責を負うベき法理がないこというまでも
ない。されば、所論(二)及び(六)の抗弁を排斥した原判決は正当であつて、所
論のごとき手形法の趣旨に違反し又は信義誠実の原則を適用しない違法は認められ
ない。
 同第二点について。
 手形の振出行為の要素に錯誤があるというのは、手形の振出行為の主要な内容自
体に錯誤の存する場合を指すものであつて、その振出行為の縁由に錯誤のある場合
をいうものではないと解するを相当とする。されば、上告人が本件手形の振出に当
り本件手形を他に裏書譲渡せず且本件手形と引換に旧手形が返却されるものと誤信
したとしても、それらは手形振出の縁由に関する錯誤であつて、その要素の錯誤と
いえないこと多言を要しない。従つて、右抗弁を排斥した原判決は、結局正当であ
つて、所論は、採用できない。
 同第三点について。
 被上告人が所論のごとく控訴人A2の提供した百万円を受領しなかつたことは原
判決の認定しなかつたところであり、従つて、所論は、その前提において採用でき
ない。しかのみならず、仮りに、被上告人と控訴人A2間に所論のごとき人的関係
に基く抗弁事由があつたとしても、本件手形の振出人として無因債務を負担する上
告人が、控訴人A2のかかる抗弁事由を主張し得る法理の存しないこというまでも
ないから、原判決には、所論の違法を認めることはできない。
 上告人A1株式会社代理人小久江美代吉の上告理由第一点について。
 所論は、手形債務者は所持人が抗弁事実の存在を知り又は予知していればこれに
対し抗弁事実を対抗し得るとの見解の下に、原判決に示した「本件一切の証拠を調
べても、被上告人が本件手形取得当時譲渡禁止の約束のあつたことを知り且つ裏書
譲渡を受けるならばA1を害することを知つていたと認めることはできない。」旨
の認定を非難するものである。それ故適法な上告理由と認めることはできない。
 また手形法一七条但書又は一九条二項但書は、人的関係に基く抗弁を対抗するに
は、悪意すなわち抗弁事実の存在を知るだけで足りるとは規定しておらず、手形債
務者を害することを知るを要する旨規定しているから、所論の見解を是認すること
はできない。
 同第二点について。
 論旨の採用できないことは、岩田、大室両代理人の上告理由第二点について説明
したとおりである。なお、所論引用の判例は、すべて、本件手形事件には適切でな
い。
 同第三点について。
 所論は、独自の見解を以て、原判決がなした「被上告人は詐欺の事実につき悪意
であつたことの立証は何もない。」との認定を非難するに帰し、上告適法の理由と
認め難い。
 上告人A2株式会社代理人Dの上告論旨は、単なる法令違背事実誤認の主張であ
つて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年
五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「
法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    入   江   俊   郎

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