弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由第一点について。
 論旨は、要するに「被上告人は、継祖母Dの死亡により、その遺産を相続した」
旨の原審の判断は法律の適用を誤つたものであると主張し、その理由として、(1)
Dと同人の継子Eの子である被上告人等との間には、はじめから準血族関係(継親
子関係)を生じない、(2)かりに生じたとしても、右準血族関係は、大正一五年
二月二五日、Dが夫Fと共にG家を去つてH家に入り、被上告人等と家を異にした
時に消滅したものである、(3)かりに、その時に消滅しなかつたとしても、その
后、昭和六年二月二〇日Dの夫Fが死亡した時に消滅したものであるというのであ
る。
 よつて先ず右(1)について按ずるに、継父母と継子との間に継親子関係が生じ
た后、継子に子が生まれ、その子が継子と家を同じくする継父母の家に入つた場合
は、右継父母と継子の子との間には準血族関係が生ずると解すべきである(大審院
大正六年(ク)第三四八号、同年一二月二六日決定参照)。そして原審挙示の証拠
によれば、被上告人は、Dとその継子Eとの間に継親子関係を生じた后に右Eの子
として生まれ、かつその当時Eと家を同じくするDの家に入つたことが明白である
から、これにより、Dと被上告人との間に当然準血族関係が生じたものというべき
であつて、(1)の所論は採用できない。
 次に(2)について。「家を同じくすること」は、なるほど、継親子に基く準血
族関係を成立させる要件であるが、しかし、なんらその存続のための要件ではない
と解するを相当とする。したがつて、Dと被上告人との間に生じた準血族関係は、
単にその后、両者が家を異にするに至つたというだけでは、未だ当然消滅したとい
うことはできない。論旨引用の判例は、準血族関係成立の要件に関するもので、な
んらその存続の要件に関するものでないから、いずれも本件に適切でなく、(2)
の所論も採用し難い。
 (3)について。本件においては、Dは、その夫Fが死亡した后にG家を去つた
ものではなく、DとFとが相携えてG家を去つた后にFが死亡したのであるから、
旧民法七二九条二項所定の場合に該当しないのであり、かかる場合Dの夫Fが死亡
しても、これによりDと被上告人との準血族関係は消滅しないと解するのが相当で
あつて、(3)の所論も採用することを得ない。
 以上、要するに、原審が、Dと、同人の継子亡Eの子である被上告人との間に準
血族関係の存在を認め、Dの死亡により被上告人がその遺産相続をしたと判断した
のは、相当である。(なお、原審は、被上告人の外、Eのその他の子も亦、被上告
人と共にDの遺産を相続した旨判示しているが、この点は原判決の主文に関係はな
いから、本件においてはその当否を判断する必要はない)。それ故本論旨は理由な
きものである。
 同第二、第三点について。
 所論は、いずれも論旨第一点の正当なることを前提として原審の認定、判断を非
難するものであるが、しかし右前提自体失当であることは、すでに説明したとおり
であるのみならず、原審挙示の証拠資料によれば、原審のなした所論認定、判示は
十分首肯できるから、論旨は採用に由なきものである。
 同第四点について。
 しかし、原審の認定によれば、所論建物の敷地は被上告人の所有に属することが
明白である。それ故、たとえ所論の如く、右建物は、これを解崩し、もはや現存し
ないものがあるとしても、現にその登記が存在する以上、被上告人は、右敷地の所
有権に基いて、その抹消登記を請求できるものと解するのが相当である。(大審院
昭和四年(オ)一〇五二号、同年一二月六日言渡判決参照)。そして本件記録によ
れば、被上告人は右敷地の所有権に基いても亦、所論登記の抹消を請求しているこ
とが認められるから、これを認容した原判決には所論のような違法はなく、論旨は
理由がない。
 よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
 裁判官井上登は退官につき本件合議に関与しない。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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