弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を却下する。
     抗告費用は抗告人等の負担とする。
         理    由
 最高裁判所が抗告に関して裁判権をもつのは、訴訟法において特に最高裁判所に
抗告を申立てることを許した場合に限られる。そして民事事件については、民訴四
一九条ノ二に定められている抗告のみが右の場合に当ることは、当裁判所の判例と
するところである(昭和二二年(ク)第一号同年一二月八日決定参照)。従つて、
最高裁判所に対する抗告申立には同四一三条は適用がなく、その抗告理由は同四一
九条ノ二によつて、原決定において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するか
しないかについてした判断を不当とするものでなければならない。
 ところが、本件抗告理由(但し、本決定末尾添附の特別抗告理由書第三点記載の
部分を除く。)はこれを要するに、原審が本件調停調書を以て(イ)抗告人等は各
転借にかかる土地を転貸人たる旭川市に明渡すべきこと、並に(ロ)右明渡義務の
履行期は、旭川市が反対給付として明渡と同時に替地を提供する場合は昭和二六年
六月三〇日、その提供をしない場合は同年九月三〇日とすること、を定めた有効な
債務名義と解し、前記各履行期到来前、替地提供の有無を調査しないでこれに執行
文を付与しても何等違法でないと判断した(この解釈並に判断は原決定説示のとお
りの理由により正当である。)のに対し、右は執行文付与に当つて許さるべき形式
的審査の範囲をこえて前記調書に実質的審査を加え、且替地提供が民訴五一八条に
いわゆる条件にほかならぬこと及び旭川市の明渡請求権は既に消滅していることを
夫々看過した違法がある旨主張するに帰着する。さればその論旨は、憲法二二条、
二五条違反を云為するけれども、その実質において単なる訴訟法違反の主張にすぎ
ないものと認むべく、特別抗告適法の理由に当らない。(昭和二二年(ク)第一号、
同年一二月八日決定参照)
 次に、抗告人等は、仮に右主張が特別抗告適法の理由にあたらないとしても、無
効の債務名義に執行文を付与して抗告人等二百数十名の生存権、居住権を危殆にお
とし入れることを是認する原決定は違憲を免れない旨主張する(前記特別抗告理由
書第三点参照)けれども、本件調停調書を有効な債務名義と解した原審の解釈が正
当であることは前説示のとおりであるから、抗告人等の右違憲の主張はその前提を
欠くものであつて、これまた特別抗告適法の理由とするに足りない。(有効な債務
名義に執行文を付与することが憲法二五条一項に違反するものでないことは、昭和
二三年(オ)第七六号、同二五年四月一二日大法廷判決の趣旨に照し明白である。)
 よつて、本件抗告を不適法として却下し、抗告費用は抗告人等の負担とすべきも
のとし、主文のとおり決定する。
  昭和二八年一二月二八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎

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