弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
被告人を懲役1年8月に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
理       由
(罪となるべき事実)
 被告人は,かねてより元妻のAに復縁を迫っていたところ,同女がこれを拒否し
て,他の男性と交際していることを知って立腹し,
第1 平成14年9月14日午前2時ころ,兵庫県三田市B町C番D号E号の同女
方前通路において,同女方台所窓ガラスの面格子3本を引き抜いたり折り曲げたり
などし,次いで,同A方において,灰皿やウイスキーのビンなどを投げ,椅子を蹴
り倒すなどして,寝室出入口ガラス戸のガラスを割り,もって,他人の器物を損壊
(損害額合計2万2200円)した
第2 同月28日午後4時30分ころ,前記A方前通路において,同女方台所窓ガ
ラスを叩き割り,クレセント錠を外して,その窓から同女方に侵入し,もって,他
人の器物を損壊(損害額8025円)するとともに,正当な理由がないのに他人の
住居に侵入した上,同女方台所から洋包丁を取り出して,浴室にいた同女(当時2
9歳)に対し,前記洋包丁(刃体の長さ約17センチメートル,平成14年押第1
63号の1)を突きつけるなどして,「殺してやる。一緒に死んでくれ。」と申し
向け,さらに,同女を寝室のベッドに押し倒して馬乗りになる暴行を加えながら,
洋包丁を同女に突きつけ,同女の生命・身体に危害を加えるかのような気勢を示し
て脅迫し,もって,凶器を示して暴行を加え脅迫した
ものである。
(証拠の標目)
(省略)
(弁護人の主張に対する判断)
 弁護人は,判示第1の事実について,被告人には面格子を損壊する故意も寝室出
入口ガラス戸のガラスを損壊する故意もなかった旨主張する。
 しかしながら,関係各証拠,殊にFの警察官調書(甲16)によれば,被告人
は,被害者方玄関ドアが施錠されていたことから,台所窓ガラスの外から「A開け
ろ。」と大声で怒鳴りながら,窓ガラスに取り付けられている面格子を引き抜いた
り折り曲げたりしたことが認められるのであって,面格子が簡単に抜けたり折れ曲
がったりするものとは思われないことや3本もの面格子が抜かれたり折られたりし
ていることからすれば,被告人のいうようにちょっとゆすっただけでこれが壊れた
とは考えられないから,被告人に面格子損壊の故意のあったことは明かである。
 また,関係各証拠によれば,被告人は,被害者に対する腹立ちのあまり,被害者
方台所から寝室に向けて,灰皿やウイスキーのビンなどを投げたり,椅子を蹴り倒
したりなどして,寝室出入口ガラス戸のガラスを割ったり,タンス等に傷を付けた
りしたことが認められるのであって,被告人には,被害者方の器物を損壊する概括
的な故意があったことが明かである。
 弁護人の上記主張は失当である。
(法令の適用)
罰条
 判示第1の行為    包括して刑法261条
 判示第2の行為のうち
器物損壊の点    刑法261条
住居侵入の点    刑法130条前段
示凶器暴行脅迫の点 包括して暴力行為等処罰に関する法律1条(刑法208
条,222条1項)
科刑上一罪の処理    刑法54条1項前段,後段,10条(判示第2は1罪と
して犯情の最も重い暴力行為等処罰に関する法律違反罪の刑で処断)
刑種の選択       いずれも懲役刑
併合罪の処理      刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い判示
第2の罪の刑に法定の加重)
宣告刑         懲役1年8月
未決勾留日数の算入   刑法21条(20日)
刑の執行猶予      刑法25条1項(3年間)
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,元妻が居住する住居に押し掛けて,判示第1の犯行では,台
所の窓ガラスの面格子を取り外し,ガラス戸のガラスを割って,器物を損壊し,判
示第2の犯行では,台所の窓ガラスを割り施錠を外して住居内に侵入した上,洋包
丁を持ち出して同女にこれを示して暴行脅迫を加え,器物を損壊するとともに住居
に侵入した上,示凶器暴行脅迫に及んだという事案である。
 被告人は,元妻である被害者が被告人の度重なる浮気や暴力に愛想を尽かしてい
るにもかかわらず,被害者に対する未練から,被害者が他の男性と交際しているこ
とに腹を立て本件各犯行に及んだものであって,その動機は自己中心的であり,そ
こに酌量の余地は乏しいこと,被告人は,判示第1の犯行では,午前2時ころの深
夜,大声で怒鳴りながら,被害者方の面格子を取り外し,被害者が仕方なく室内に
入れるや,灰皿やウイスキーのビン等を投げたり,椅子を蹴り倒すなどして,ガラ
ス戸のガラスを割り,判示第2の犯行では,被害者方台所の窓ガラスを割るなどし
て住居に侵入した上,洋包丁を示しながら,「殺してやる。」などと申し向けて,
暴行脅迫を加えたものであって,その犯行態様は執拗かつ悪質であること,被害者
は,最も安全な場所
である住居内においてこのような被害を被ったものであって,被害者が受けた恐
怖・不安等の精神的苦痛は小さくなく,被害感情には厳しいものがあること,被告
人には,本件を含めて,安易に刃物を持ち出す傾向が認められ,その行動傾向には
重大な結果を招きかねない危険なものがあることなどを併せ考えると,被告人の刑
事責任は軽くないといわざるを得ない。
 また,被告人には,平成10年4月に本件と同様な動機原因による傷害,暴行罪
により罰金刑に処せられた前科があることも,量刑上看過するわけにはいかない。
 しかしながら,本件各器物損壊による損害額は合計3万円余と高額ではないこ
と,被告人は,今後被害者には二度と近づかないと誓うなど,反省の姿勢を見せて
いること,被告人にはこれまで禁錮以上の刑に処せられた前科がないこと,被告人
が本件で2か月余りの間身柄拘束を受けていたことなどの,被告人のために酌むべ
き事情もある。
(検察官の科刑意見・懲役2年)
 よって,主文のとおり判決する。
平成14年12月27日
神戸地方裁判所第12刑事係甲
裁 判 官    森   岡   安   廣

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