弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人清原雅彦の上告理由第一点について。
 賃貸借契約に基づく賃料債務の支払について、債権者たる賃貸人が当該賃貸借契
約の存在を否定するなどして、賃料債務の弁済を受領しない意思が明確であると認
められるときは、債務者たる賃借人は言語上の提供をしなくても債務不履行の責を
免かれるものと解すべきではあるが(当庁昭和二九年(オ)第五二二号・同三二年
六月五日大法廷判決・民集一一巻六号九一五頁)、このことは、賃借人において言
語上の提供をすることが可能なことを前提としているものであつて、経済状態不良
のため弁済の準備ができない状態にある賃借人についてまでも債務不履行の責を免
かれるとするものではない。すなわち、弁済の準備ができない経済状態にあるため
言語上の提供もできない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確と認めら
れるときでも、弁済の提供をしないことによつて債務不履行の責を免かれないもの
と解すべきである。けだし、弁済に関して債務者のなすべき準備の程度と債権者の
なすべき協力の程度とは、信義則に従つて相関的に決せられるべきものであるとこ
ろ、債権者が弁済を受領しない意思が明確であると認められるときには、債務者に
おいて言語上の提供をすることを必要としないのは、債権者により現実になされた
協力の程度に応じて、信義則上、債務者のなすべき弁済の準備の程度の軽減を計つ
ているものであつて、逆に、債務者が経済状態の不良のため弁済の準備ができない
状態にあるときは、そもそも債権者に協力を要求すべきものではないから、現実に
なされた債権者の協力の程度とはかかわりなく、信義則上このような債務者に前記
のような弁済の準備の程度についての軽減を計るべきいわれはないのである。
 原審の確定するところによれば、被上告人は、昭和三五年一〇月三一日、上告会
社に対し、本件家屋につき、賃料月額三万円、毎月末かぎり翌月分を支払う、賃料
の支払を二回分以上怠つたときは催告を要せず賃貸借契約を解除することができる
旨の特約つきで本件家屋を賃貸したが、その後、被上告人は、昭和三六年一〇月三
〇日をもつて右賃貸借契約の期間が満了すると主張して、上告会社の提供した同年
一〇月分の賃料の受領を拒絶し、翌月分以降の賃料についても上告会社は数回にわ
たりこれを提供したが、被上告人は、いずれも前同様の理由でその受領を拒絶し、
その受領拒絶の意思が明確であるため、同年一〇月分以降の賃料は、上告会社にお
いて供託してきたものであるところ、上告会社は、営業不振のため債務超過に陥つ
て倒産し、昭和三九年一一月三〇日、その株主総会で解散の決議をし、同年一二月
七日解散登記をして清算に入つたものである。しかるところ、上告会社は、右清算
の過程において取引上の会社債務や税金債務等の支払のため、本件家屋の賃料を支
払う経済的余力を失い、そのためなんらの弁済の準備もできず、昭和四〇年六月こ
ろまで遅滞しながらもかろうじて継続してきた弁済供託も同年七月分以降は中止す
るのやむなきに至り、同月分以降昭和四一年七月分までの賃料は、右のごとき経済
上の事情から被上告人に対して弁済のための言語上の提供もされていないというの
であるから、右事実関係のもとにおいて原審が、上告会社は昭和四〇年七月分以降
同四一年七月分までの賃料債務について遅滞の責を免かれないものとし、これを理
由とし前記特約に基づき被上告人のした本件契約解除の意思表示の効果を肯認した
判断は正当である。所論引用の大法廷判決は、債務者において言語上の提供をする
ことが可能な場合であることを前提とするものであつて本件に適切でなく、原判決
には所論のような違法はない。それ故、論旨は理由がない。
 同第二点について。
 原判決は、所論のように上告会社において本件家屋の賃料を支払う経済的余力を
失つた旨認定しているが、右認定は、上告会社自身に資力がないのみならず、他よ
りの援助を受けるなどしても、なお賃料を支払う経済的余力がない旨を認定した趣
旨であると解されるのであつて、所論は原判決を正解しないことに基づくものであ
り、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 所論の点に関する原審の認定は、挙示の証拠関係に照らして正当としてこれを肯
認することができ、その判断の過程に所論のような違法はない。それ故、論旨は理
由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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