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平成30年9月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成28年(ワ)第38565号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成30年6月13日
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり5
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求10
1被告FC2は,別紙被告ら装置目録記載1ないし3の装置を生産し,又は使用
してはならない。
2被告HPSは,別紙被告ら装置目録記載1ないし3の装置を生産し,又は使用
してはならない。
3被告FC2は,別紙被告らプログラム目録記載1ないし3のプログラムを生産15
し,譲渡し,貸し渡し,電気通信回線を通じた提供をし(以下,譲渡,貸渡し及び電
気通信回線を通じた提供を「譲渡等」という。),又は譲渡等の申出をしてはならない。
4被告HPSは,別紙被告らプログラム目録記載1ないし3のプログラムを生産
し,譲渡等をし,又は譲渡等の申出をしてはならない。
5被告FC2は,別紙被告らプログラム目録記載1ないし3のプログラムを抹消20
せよ。
6被告HPSは,別紙被告らプログラム目録記載1ないし3のプログラムを抹消
せよ。
7被告FC2は,原告に対し,被告HPSと連帯して,1億円及びこれに対す
る平成29年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。25
8被告HPSは,原告に対し,1億円及びこれに対する平成29年1月26日
から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,1億円及びこれに対する平成
29年3月3日から支払済みまでの年5分の割合による金員の限度で被告FC2と
連帯して)を支払え。
第2事案の概要
1本件は,いずれも名称を「表示装置,コメント表示方法,及びプログラム」と5
する特許第4734471号の特許権(以下「本件特許権1」といい,この特許を「本
件特許1」という。また,本件特許1の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本
件明細書1」という。)及び特許第4695583号の特許権(以下「本件特許権2」
といい,この特許を「本件特許2」,本件特許2の願書に添付した明細書及び図面を併
せて「本件明細書2」という。また,本件特許権1と併せて「本件各特許権」,本件特10
許1と併せて「本件各特許」という。)を有する原告が,被告FC2において提供して
いる別紙「被告らサービスの概要」記載1ないし3のサービス(以下「被告らサービ
ス1」などといい,併せて「被告ら各サービス」という。)に用いられている,動画
を表示する情報処理端末に配信されるコメント表示用プログラムである別紙被告ら
プログラム目録記載1ないし3(以下「被告らプログラム1」などといい,併せて「被15
告ら各プログラム」という。)は本件特許1の請求項9及び10の各発明並びに本件
特許2の請求項9ないし11の各発明の技術的範囲に属し,被告ら各プログラムのイ
ンストールされた情報処理端末(以下,被告ら各プログラムに対応して「被告ら装置
1」などといい,併せて「被告ら各装置」という。)は本件特許1の請求項1,2,
5及び6の各発明並びに本件特許2の請求項1ないし3の各発明の技術的範囲に属20
し,被告らによる被告ら各装置の生産及び使用並びに被告ら各プログラムの生産,譲
渡等及び譲渡等の申出は本件各特許権を侵害する(いずれの行為も直接侵害を構成し,
そのうち被告ら各プログラムに係る行為は,本件特許1の請求項1,2,5及び6の
各発明並びに本件特許2の請求項1ないし3の各発明に関して,特許法101条1号
又は2号の間接侵害を構成する。)旨を主張して,被告らに対し,①特許法100条25
1項に基づき,被告ら各装置の生産及び使用並びに被告ら各プログラムの生産,譲渡
等及び譲渡等の申出の差止めを求めるとともに,②同条2項に基づき,被告ら各プロ
グラムの抹消を求め,③民法709条及び719条に基づき,本件各特許権侵害の共
同不法行為に基づく損害賠償請求の一部請求として,1億円及びこれに対する不法行
為後の日である各訴状送達の日の翌日(被告FC2につき平成29年3月3日,被告
HPSにつき平成29年1月26日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合によ5
る遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認められる事実。なお,証拠番号は特記しない限り枝番を含む。)
⑴当事者
原告は,コンピュータを利用したネットワークシステムの企画,開発,製造,販売10
及び賃貸等を業とする会社である。
被告FC2は,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)ネバダ州の法律に基づいて
設立された外国法人であり,インターネット上でのブログや動画配信サイトの運営等
を主な業務としている。
被告HPSは,インターネットでのサーバの設置及び管理,インターネットを利用15
した各種情報提供サービス等を業とする会社である。
⑵本件各特許権
原告は,本件各特許権の特許権者であり,それらの出願日等は次のとおりである。
ア本件特許権1
出願日平成22年11月30日20
分割の表示特願2006-333851の分割
原出願日平成18年12月11日
登録日平成23年4月28日
特許番号特許第4734471号
発明の名称表示装置,コメント表示方法,及びプログラム25
イ本件特許権2
出願日平成18年12月11日
登録日平成23年3月4日
特許番号特許第4695583号
発明の名称表示装置,コメント表示方法,及びプログラム
⑶本件各特許に係る発明の特許請求の範囲5
本件特許1の特許請求の範囲請求項1,2,5,6,9及び10に係る発明(以下,
それぞれの発明を「本件発明1-1」などといい,これらを総称して「本件発明1」
という。)の特許請求の範囲は,別紙の本件特許1に係る特許公報(甲1の2)の該当
欄記載のとおりであり,本件特許2の特許請求の範囲請求項1ないし3及び9ないし
11に係る発明(以下,それぞれの発明を「本件発明2-1」などといい,これらを10
総称して「本件発明2」,本件発明1と併せて「本件各発明」という。)の特許請求の
範囲は,別紙の本件特許2に係る特許公報(甲2の2)の該当欄記載のとおりである。
⑷本件各発明の構成要件の分説
ア本件発明1について
本件発明1-1は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に15
従って,「構成要件1-1A」などという。)。
1-1A動画を再生するとともに,前記動画上にコメントを表示する表示装置
であって,
1-1B前記コメントと,当該コメントが付与された時点における,動画の最
初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付20
与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と,
1-1C前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して
表示する動画再生部と,
1-1D前記再生される動画の動画再生時間に基づいて,前記コメント情報記
憶部に記憶されたコメント情報のうち,前記動画の動画再生時間に対応25
するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部
から読み出し,当該読み出されたコメントを,前記コメントを表示する
領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と,を有し,
1-1E前記第2の表示欄のうち,一部の領域が前記第1の表示欄の少なくと
も一部と重なっており,他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり,
1-1F前記コメント表示部は,前記読み出したコメントの少なくとも一部を,5
前記第2の表示欄のうち,前記第1の表示欄の外側であって前記第2の
表示欄の内側に表示する
1-1Gことを特徴とする表示装置。
本件発明1-2は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に
従って,「構成要件1-2H」などという。)。10
1-2H前記コメント表示部は,前記コメントを移動表示させる
1-2Iことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
本件発明1-5は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に
従って,「構成要件1-5J」などという。)。
1-5J前記コメント表示部は,前記コメントの少なくとも一部を,前記第215
の表示欄のうち,前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の
内側に表示する際,前記第1の表示欄と前記第2の表示欄とにまたがる
ように表示させる
1-5Kことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載
の表示装置。20
本件発明1-6は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に
従って,「構成要件1-6L」などという。)。
1-6L前記コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと
表示位置が重なるか否かを判定する判定部と,
1-6M前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に,各コメ25
ントが重ならない位置に表示させる表示位置制御部と,
1-6Nを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1
項に記載の表示装置。
本件発明1-9は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に
従って,「構成要件1-9A」などという。)。
1-9A動画を再生するとともに,前記動画上にコメントを表示する表示装置5
のコンピュータを,
1-9B前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して
表示する動画再生手段,
1-9Cコメントと,当該コメントが付与された時点における,動画の最初を
基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時10
間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部に記憶された
情報を参照し,
1-9D前記再生される動画の動画再生時間に基づいて,前記コメント情報記
憶部に記憶されたコメント情報のうち,前記動画の動画再生時間に対応
するコメント付与時間に対応するコメントをコメント情報記憶部から15
読み出し,
1-9E当該読み出されたコメントの一部を,前記コメントを表示する領域で
あって一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なってお
り他の領域が前記第1の表示欄の外側にある第2の表示欄のうち,前記
第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示するコメ20
ント表示手段,
1-9Fとして機能させるプログラム
本件発明1-10は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号
に従って,「構成要件1-10G」などという。)。
1-10G前記コメント表示手段は,前記コメントを移動表示させる25
1-10Hことを特徴とする請求項9記載のプログラム
イ本件発明2について
本件発明2-1は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に
従って,「構成要件2-1A」などという。)。
2-1A複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置
へ配信するコメント配信サーバと,前記コメント配信サーバに接続され5
動画を再生するとともに,前記動画上にコメントを表示する表示装置と
を有するコメント表示システムにおける表示装置であって,
2-1Bコメントと,前記コメントが付与された時点における,前記動画の最
初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時
間として前記コメントに対応づけてコメント情報として記憶するコメ10
ント情報記憶部と,
2-1C前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信す
る毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,
前記コメント情報記憶部に記憶する受信部と,
2-1D前記再生される動画の動画再生時間に基づいて,前記コメント情報記15
憶部に記憶されたコメント情報のうち,前記動画の動画再生時間に対応
するコメント付与時間が対応づけられたコメントを前記コメント情報
記憶部から読み出し,読み出したコメントを動画上に表示するコメント
表示部と,
2-1E前記コメント表示部によって表示されるコメントのうち,第1のコメ20
ントと第2のコメントとのうちいずれか一方または両方が移動表示さ
れるコメントであり,前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表
示位置が,当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2
のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と,
2-1F前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に,前記第25
1のコメントと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させ
る表示位置制御部と,
2-1Gを有することを特徴する表示装置。
本件発明2-2は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に
従って,「構成要件2-2H」などという。)。
2-2H前記表示位置制御部は,前記動画の表示領域のうち,コメントを表示5
する基準となる位置を表す基準位置に従って第2のコメントが表示さ
れた後に前記第1のコメントを表示する際に,前記判定部が前記コメン
トが重なると判定した場合に,前記第1のコメントの基準位置を前記第
2のコメントの基準位置とは異なる位置に変更して表示する
2-2Iことを特徴とする請求項1記載の表示装置。10
本件発明2-3は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に
従って,「構成要件2-3J」などという。)。
2-3J前記第1のコメントと前記第2のコメントとの両方が所定の方向に
移動表示するコメントであり,
2-3K前記コメント表示部は,前記コメントが前記表示領域内に現れてから15
表示領域外に移動して消えるまでの時間であるコメント表示時間と前
記コメントの表示が開始される文字から表示が終了する文字までの前
記所定の方向における文字列の幅とに基づいて決定される移動速度で
前記コメントを移動させつつ,前記画面上に表示を行い,
2-3L前記判定部は,各コメントを前記移動速度で移動させて表示させた場20
合,前記第2のコメントが移動し終わるまでに前記第1のコメントが追
いつく場合に,前記第1のコメントと前記第2のコメントとの表示位置
が重なるものとして判定する
2-3Mことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
本件発明2-9は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号に25
従って,「構成要件2-9A」などという。)。
2-9A複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置
へ配信するコメント配信サーバと,前記コメント配信サーバに接続され
動画を再生するとともに,前記動画上にコメントを表示する表示装置と
を有するコメント表示システムにおける表示装置であるコンピュータ
に,5
2-9B前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信す
る毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,
コメントと,前記コメントが付与された時点における,前記動画の最初
を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時間
として前記コメントに対応づけてコメント情報として記憶するコメン10
ト情報記憶部に記憶する受信手段,
2-9C前記再生される動画の動画再生時間に基づいて,前記コメント情報記
憶部に記憶されたコメント情報のうち,前記動画の動画再生時間に対応
するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメント情報から
読み出し,読み出したコメントを動画上に表示するコメント表示手段,15
2-9D前記表示されるコメントのうち,第1のコメントと第2のコメントと
のうちいずれか一方または両方が移動表示されるコメントであり,前記
第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が,当該第1のコメ
ントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と
重なるか否かを判定する判定手段,20
2-9E前記コメントの表示位置が重なると判定した場合に,前記第1のコメ
ントと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させる表示位
置制御手段,
2-9Fとして機能させるプログラム。
本件発明2-10は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号25
に従って,「構成要件2-10G」などという。)。
2-10G前記表示位置制御手段は,前記動画の表示領域のうち,コメントを
表示する基準となる位置を表す基準位置に従って第2のコメントが
表示された後に前記第1のコメントを表示する際に,前記判定手段が
前記コメントが重なると判定した場合に,前記第1のコメントの基準
位置を前記第2のコメントの基準位置とは異なる位置に変更して表5
示する
2-10Hことを特徴とする請求項9記載のプログラム。
本件発明2-11は,次のとおり,構成要件に分説される(以下,頭書の記号
に従って,「構成要件2-11I」などという。)。
2-11I前記第1のコメントと前記第2のコメントとの両方が所定の方向10
に移動表示するコメントであり,
2-11J前記コメント表示手段は,前記コメントが前記表示領域内に現れて
から表示領域外に移動して消えるまでの時間であるコメント表示時
間と前記コメントの表示が開始される文字から表示が終了する文字
までの前記所定の方向における文字列の幅とに基づいて決定される15
移動速度で前記コメントを移動させつつ,前記画面上に表示を行い,
2-11K前記判定手段は,各コメントを前記移動速度で移動させて表示させ
た場合,前記第2のコメントが移動し終わるまでに前記第1のコメン
トが追いつく場合に,前記第1のコメントと前記第2のコメントとの
表示位置が重なるものとして判定する20
2-11Lことを特徴とする請求項9または10記載のプログラム。
⑸被告FC2の行為
被告FC2は,被告ら各サービスを,平成19年11月ないし平成23年6月から
現在に至るまで,ウェブサイトでインターネットを介して日本のユーザに提供してい
る。25
なお,被告らサービスの内容については争いがあり,原告は,別紙被告らサービス
説明書(原告)のとおりである旨主張し,被告らは,別紙被告らサービス説明書(被
告ら)のとおりである旨主張する。
⑹本件各請求の準拠法
特許権に基づく差止め及び廃棄請求の準拠法は,当該特許権が登録された国の法律
であると解すべきであるから(最高裁平成12年(受)第580号同14年9月265
日第一小法廷判決・民集56巻7号1551頁),日本国特許である本件各特許権に
基づく差止め及び廃棄請求の準拠法は日本法である。
また,特許権侵害を理由とする損害賠償請求は,特許権特有の問題ではなく,財産
権の侵害に対する民事上の救済の一環にほかならないから,法律関係の性質は不法行
為であり(前掲最高裁平成14年9月26日第一小法廷判決),法の適用に関する通10
則法17条により,「加害行為の結果が発生した地の法」によることとなる。本件各特
許権侵害を理由とする損害賠償請求は,被告らが日本国特許である本件各特許権を侵
害したことを理由とするものであり,権利侵害という結果は日本において発生したと
いうことができるから,その準拠法は日本法である(なお,被告FC2は,本件の準
拠法は米国特許法である旨をるる主張するが,独自の見解であって採用することはで15
きない。)。
3争点
⑴被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件各発明の技術的範囲に
属するか(争点1)
ア被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件発明1の技術的範囲に20
属するか(争点1-1)
被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,「第1の表示欄」及び「第2の表示
欄」を充足するか(争点1-1⑴)
被告ら各プログラムは,「動画再生手段」(構成要件1-9B)を充足するか(争
点1-1⑵)25
イ被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件発明2の技術的範囲に
属するか(争点1-2)
被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,「前記コメント配信サーバが前記端
末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコ
メント情報を受信」(構成要件2-1C,2-9B)を充足するか(争点1-2⑴)
被告ら各装置は,「判定部」(構成要件2-1E)及び「表示位置制御部」(構成5
要件2-1F)を充足するか(争点1-2⑵)
⑵被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,本件発明2と均等なものとして,そ
の技術的範囲に属するか(争点2)
⑶本件各特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点
3)10
ア本件発明1は新規性又は進歩性を欠くものであるか(争点3-1)
イ本件発明2は進歩性を欠くものであるか(争点3-2)
⑷被告FC2の行為は不法行為を構成するか(争点4)
⑸被告HPSの行為は不法行為を構成するか(争点5)
⑹損害の発生の有無及びその額(争点6)15
第3争点に対する当事者の主張
1争点1(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件各発明の技術
的範囲に属するか)について
⑴争点1-1(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件発明1の
技術的範囲に属するか)について20
ア争点1-1⑴(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,「第1の表示欄」及び
「第2の表示欄」を充足するか)について
【原告の主張】
本件発明1は,動画とともにコメントを表示する場合における表示装置等に関
する発明であって,複数のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減25
させることを目的とし,例えば,オーバーレイ表示されたコメント等が,動画の画面
の外側でトリミングするようにして,コメントそのものが動画に含まれているもので
はなく,動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり,
コメントの読みにくさを低減させることができるものである。ここで,本件発明1は,
「前記第2の表示欄のうち,一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重な
っており,他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり,」(構成要件1-1E),「前記5
コメント表示部は,前記読み出したコメントの少なくとも一部を,前記第2の表示欄
のうち,前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」(構
成要件1-1F)ことを規定しているところ,上記の本件発明1の課題ないし目的,
効果等に照らせば,ここでの「第1の表示欄」(動画表示領域)と「第2の表示欄」(コ
メント表示領域)とは,コメントと動画の画像上の表示を基準に画定すべきであり,10
コンテンツを再生する際に現実に動画やコメントが表示される領域を意味する。
被告ら各サービスにおいては,現実に動画が表示される部分(動画表示領域)とコ
メント表示領域とは異なる領域が設定されている。すなわち,被告ら各サービスにお
いては,プレイヤ枠全体にわたりコメント表示領域が設定されるのに対し,動画表示
領域(現実に動画が表示される領域)は,動画のアスペクト比によって可変的に設定15
されている。これを別紙「被告ら各装置を機能させるプログラム等の説明」でみると,
被告らサービス1においては,「VideoDisplayオブジェクトC」が動画
が表示される領域であり,「CommentDisplayオブジェクトD」がコメ
ントが表示される領域であるから,動画を表示する領域とコメントを表示する領域と
は,ソースコード上,概念として別個のオブジェクトとして定義されており,画面上20
別個となるように設定されている。また,被告らサービス2及び3においては,動画
は<iframe>要素又は<video>要素の一部分に表示されるところ,<i
frame>要素とコメントを表示する領域である<canvas>要素とは空間
的に重なり合っているから,動画が表示される領域とコメントが表示される領域とは
一致せず,画面上別個の領域になるように設定されている。25
したがって,被告ら各サービスにおいては,動画を表示する領域とコメントを表示
する領域とが別個に設定されていることが明らかであるから,被告ら各装置は,本件
発明1の「第1の表示欄」(構成要件1-1C,1-1E,1-1F),「第2の表示欄」
(構成要件1-1D,1-1E,1-1F)を充足する。
被告らは,本件発明1の「第1の表示欄」とは,動画を構成する画像データを
表示するために確保された領域という意味であり,現実に動画が表示されている領域5
という意味ではないと主張するが,「第1の表示欄」は画面上の表示により画定され
るべきであるから,「動画を構成する画像データを表示するために確保された領域」
か否かによって「第1の表示欄」か否かを決定することはできない。
被告ら各装置は,本件発明1-1において主張したのと同様に,本件発明1-
2,1-5及び1-6の技術的範囲に属する。また,本件発明1-9及び1-10は,10
発明の対象が「プログラム」であるが,発明の対象を「表示装置」とする本件発明1
-1及び1-2と対応するものであるから,被告ら各プログラムは,本件発明1-1
及び1-2で主張したのと同様に,本件発明1-9及び1-10の技術的範囲に属す
る。
【被告らの主張】15
本件発明1の特徴は,単に動画を表示する領域外にコメントを表示するもので
はなく,動画を表示する領域である「第1の表示欄」とコメントを表示する領域であ
る「第2の表示欄」を区別してあらかじめ設定するとともに,「第2の表示欄」の一部
のみが「第1の表示欄」に重なることを前提としつつ,コメントを,「第1の表示欄」
の外側にあって「第2の表示欄」の内側に表示するという構成を採用したことにある。20
被告ら各装置(なお,被告ら各プログラムはユーザが使用するコンピュータにイン
ストールされるものではないが,その前提を留保して「被告ら各装置」との用語を用
いる。)は,動画を表示する欄とコメントを表示する欄とを区別していない。すなわ
ち,別紙「被告ら各装置を機能させるプログラム等の説明」でみると,被告らサービ
ス1においては,プログラム等のソース上,動画を表示する領域に相当する「Sta25
geオブジェクトA」とコメントを表示する領域に相当する「CommentDis
playオブジェクトD」とは空間的に完全に重なり合っている。また,被告らサー
ビス2及び3においては,プログラム等のソース上,動画を表示する領域に相当する
<iframe>要素又は<video>要素とコメントを表示する領域に相当す
る<canvas>要素とは別に設定されているものの,空間的に完全に重なり合っ
ている。被告ら各装置においては,動画を表示する領域とコメントを表示する領域は5
空間的に一致するものとして設定されており,動画自体のアスペクト比と動画表示領
域のアスペクト比の相違から結果として動画が表示されない部分が生じるにすぎな
い。したがって,被告ら各装置は,「第1の表示欄」及び「第2の表示欄」を充足せず,
本件発明1-1の技術的範囲に属しない。
原告は,「第1の表示欄」(動画表示領域)と「第2の表示欄」(コメント表示領10
域)とは,コンテンツを再生する際に現実に動画やコメントが表示される領域を意味
し,被告ら各サービスにおいては,プレイヤ枠全体にわたりコメント表示領域が設定
されるのに対し,動画表示領域(現実に動画が表示される領域)は,動画のアスペク
ト比によって可変的に設定されている旨を主張する。
しかしながら,「第1の表示欄」とは,動画を構成する画像データを表示するために15
確保された領域という意味であり,現実に動画が表示されている領域という意味では
なく,動画のアスペクト比に起因して可変的に設定されるものではない。また,動画
のアスペクト比というソフトウエア以外の要因により本件発明1の効果が実現され
るとしても,構成要件の充足性には影響しないのであり,逆に,どのようなアスペク
ト比の動画を表示させたとしても,動画表示領域とコメント表示領域とは一致しては20
ならないはずである。
本件発明1-1において主張したのと同様に,被告ら各装置は,「第1の表示
欄」及び「第2の表示欄」(構成要件1-5J)を充足せず,そうである以上,「第2
の表示欄」を構成要素とする「コメント表示部」(構成要件1-1D,1-2H,1-
5J,1-6L)も充足しないから,本件発明1-2,1-5及び1-6の技術的範25
囲に属しない。
また,本件発明1-9及び1-10は,発明の対象が「プログラム」であるが,発
明の対象を「表示装置」とする本件発明1-1及び1-2と対応するものであるから,
被告ら各プログラムは,本件発明1-1及び1-2で主張したのと同様に,本件発明
1-9及び1-10の技術的範囲に属しない。
イ争点1-1⑵(被告ら各プログラムは,「動画再生手段」(構成要件1-9B)5
を充足するか)について
【原告の主張】
被告ら各プログラムが,「HTML5対応のウェブブラウザ」や「ADOBEFL
ASHPLAYER」等の機能を用いるとしても,そのような機能を利用して動画
を再生するよう指示するのは,被告ら各プログラムなのであるから,「動画再生手段」10
(構成要件1-9B)を備えていることは明らかである。したがって,被告ら各プロ
グラムは,構成要件1-9Bを充足するから,本件発明1-9及び1-10の技術的
範囲に属する(仮に,被告ら各プログラムが文言上「動画再生手段」を備えないとし
ても,均等侵害が成立する。)。
【被告らの主張】15
被告ら各装置を「動画再生手段」(構成要件1-9B)として機能させるのは,<v
ideo>要素による動画再生機能を有するHTML5対応のウェブブラウザ又は
別途ウェブブラウザのプラグインとしてインストールされたADOBEFLAS
HPLAYERであって,これらのプログラムは被告ら各プログラムに含まれない。
よって,被告ら各プログラムは本件発明1-9及び1-10の技術的範囲に属しない。20
⑵争点1-2(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件発明2の
技術的範囲に属するか)について
ア争点1-2⑴(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,「前記コメント配信
サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバか
ら送信されるコメント情報を受信」(構成要件2-1C,2-9B)を充足するか)に25
ついて
【原告の主張】
構成要件2-1Cは,「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント
情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,
前記コメント情報記憶部に記憶する受信部」と規定しているところ,上記規定は,そ
の文言から明らかなとおり,コメント配信サーバが端末装置からコメント情報を受信5
するごとに,コメント情報がコメント配信サーバから送信されることを規定している
のであり,端末装置がコメント情報を受信するタイミングを規定したものではない。
そして,コメント付き動画配信サービスにおいては,同一の動画について各ユーザが
別々のタイミングで再生を開始することが通常であるところ,端末装置がコメント情
報を受信するタイミングを適宜に設計可能であることは当然であって,例えば,ユー10
ザが要求するタイミング(例えばウェブページにアクセスするタイミング)で端末装
置がコメント情報を受信するという構成も含まれる。したがって,被告ら各装置にお
いてコメントファイルがダウンロードされるのがウェブページを読み込む際である
としても,被告ら各装置がそれまでに記憶されていたコメント情報を格納したコメン
トファイルを受信する以上は,被告ら各装置は構成要件2-1Cを充足する。したが15
って,被告ら各装置は,本件発明2-1の技術的範囲に属する。
被告らの主張は,構成要件2-1Cを,コメント配信サーバが端末装置からコ
メント情報を受信する毎に,端末装置がコメント情報を受信することを規定するもの
と解しているものであるが,明らかに構成要件2-1Cの文言に反しており,失当で
ある。また,被告らが本件発明2の効果として主張する「リアルタイム性の確保」は,20
本件発明2の効果ではなく,一実施例の効果にすぎない。
本件発明2-2は本件発明2-1を,本件発明2-3は本件発明2-1及び2
-2を引用している発明であるから,本件発明2-1で主張したのと同様に,被告ら
各装置は本件発明2-2及び2-3の技術的範囲に属する。また,本件発明2-9な
いし2-11は,発明の対象が「プログラム」であるが,発明の対象を「表示装置」25
とする本件発明2-1ないし2-3と対応するものであるから,被告ら各プログラム
は,本件発明2-1ないし2-3で主張したのと同様に,本件発明2-9ないし2-
11の技術的範囲に属する。
【被告らの主張】
本件発明2の構成要件2-1Cは,「前記コメント配信サーバが前記端末装置
からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント5
情報を受信し,前記コメント情報記憶部に記憶する受信部」というものであるところ,
その技術的意義は,表示装置が,コメント配信サーバが端末装置からコメント情報を
取得するごとに(当該取得をトリガーとして)当該サーバから配信されるコメント情
報を受信し,コメント情報記憶部に記憶する受信部を有するところにある。
すなわち,本件発明2は,①コメント同士が重なり合うことから生じるコメントの10
読みにくさを低減する,②ユーザごとにコメント表示位置を割り当てることから生じ
る面白みの低減を防止する,③リアルタイム性を確保するという課題を解決するため,
①コメント同士の重なり合いを避ける,②第1のコメントの表示位置と第2のコメン
トの表示位置とが重なるか否かを判定する「判定部」を設け,重なると判定した場合
に,第1のコメントと第2のコメントが重ならない位置に表示させる「表示位置制御15
部」を設けて,ユーザごとにコメント表示位置を割り当てることを回避し,③表示装
置が,コメント配信サーバが端末装置からコメント情報を取得するごとに(当該取得
をトリガーとして)当該サーバから配信されるコメント情報を受信することにより,
動画の再生タイミングが一致していないユーザ同士であっても,コメントのやりとり
をリアルタイムで行い,コミュニケーションを図ることを可能にし,リアルタイム性20
を確保することとしたものである。
被告ら各サービスは,端末装置に動画データを送信する際に,その時点のコメント
情報を送信するものであるから,端末装置はコメント配信サーバが端末装置からコメ
ント情報を取得するごとに(当該取得をトリガーとして)当該サーバから配信される
コメント情報を受信するものではないため,リアルタイムでコメントによりチャット25
を行うことができないものであり,したがって,「前記コメント配信サーバが前記端
末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコ
メント情報を受信し,前記コメント情報記憶部に記憶する受信部」(構成要件2-1
C)を充足せず,本件発明2-1の技術的範囲に属しない。
原告は,構成要件2-1Cは,コメント配信サーバが端末装置からコメント情
報を受信するごとに,コメント情報がコメント配信サーバから送信されることを規定5
している旨を主張するが,「コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を
受信する毎に」という文章は,受信部を有する表示装置を修飾するものであり,その
趣旨は,コメント配信サーバによる配信のタイミングのみならず,表示装置における
コメント情報の受信のタイミングを説明するものであるから,原告の主張は失当であ
る。10
本件発明2-2は本件発明2-1を,本件発明2-3は本件発明2-1及び2
-2を引用している発明であるから,本件発明2-1で主張したのと同様に,被告ら
各装置は本件発明2-2及び2-3の技術的範囲に属しない。また,本件発明2-9
ないし2-11は,発明の対象が「プログラム」であるが,発明の対象を「表示装置」
とする本件発明2-1ないし2-3と対応するものであるから,被告ら各プログラム15
は,本件発明2-1ないし2-3で主張したのと同様に,本件発明2-9ないし2-
11の技術的範囲に属しない。
イ争点1-2⑵(被告ら各装置は,「判定部」(構成要件2-1E)及び「表示位
置制御部」(構成要件2-1F)を充足するか)について
【原告の主張】20
被告らは,被告ら各装置及び被告ら各プログラムが構成要件2-1E及び2-1F
を充足することを自白していたところ,被告らの主張は自白の撤回に当たり,しかも,
時期に後れた攻撃防御方法に該当するから許されない。さらに,被告らの主張は,要
するに本件発明2の技術的範囲を一実施例に限定して解釈すべきとするものと等し
いものであり,何ら根拠のない主張である。25
【被告らの主張】
被告ら各装置は,スクロール表示されないコメントとスクロール表示されるコ
メントとの間では重なり回避処理を実行しないので,両者は動画上で空間的に重なり
得る。また,被告ら装置1及び2において実行される第1のコメントと第2のコメン
トが重なるか否かを判定する手順において,本件明細書2に記載された「判定部」の
具体的構成のうち,図12のステップS302及びステップ304ないし306に相5
当するステップは存在しない。また,被告ら装置3において実行される第1のコメン
トと第2のコメントが重なるか否かを判定する手順において,図12のステップS3
02ないし306に相当するステップは存在しない。
したがって,被告ら各装置は,「判定部」(構成要件2-1E)及び「表示位置制御
部」(構成要件2-1F)を充足しない。10
本件発明2-2は本件発明2-1を,本件発明2-3は本件発明2-1及び2
-2を引用している発明であるから,本件発明2-1で主張したのと同様に,被告ら
各装置は本件発明2-2及び2-3の技術的範囲に属しない。また,本件発明2-9
ないし2-11は,発明の対象が「プログラム」であるが,発明の対象を「表示装置」
とする本件発明2-1ないし2-3と対応するものであるから,被告ら各プログラム15
は,本件発明2-1ないし2-3で主張したのと同様に,本件発明2-9ないし2-
11の技術的範囲に属しない。
2争点2(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,本件発明2と均等なものと
して,その技術的範囲に属するか)について
【原告の主張】20
仮に,被告ら各装置が構成要件2-1Cを文言上満たさないとしても,以下のとお
り,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは本件発明2と均等なものとしてその技術
的範囲に属するというべきである。
⑴第1要件(非本質的部分)について
構成要件2-1Cのうち,「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント25
情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,
前記コメント情報記憶部に記憶する受信部」との構成が被告ら各装置の構成と異なる
部分であるとしても,当該部分は本件発明2の本質的部分ではない。
すなわち,本件発明2は,動画とともにコメントを表示する表示装置等において,
「動画上に多数のコメントが書き込まれたとすると,コメント同士が重なり合ってし
まい,コメントを読みにくくなってしまう。また,ユーザ毎にコメントを表示する位5
置を割り当ててしまうと,重なることを解消することができるが,同じ画面上にコメ
ントを書き込めるユーザの数が限られてしまうため,大人数でコメントを交換する面
白みが低減してしまう。」という従来技術の問題点を踏まえ,「複数のコメントが書き
込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示装置」等を提供す
ることを課題としている。そして,本件発明2は,かかる課題を解決するために,特10
に,「コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと重なるか否かを
判定し,コメントが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置にコメ
ントを表示させる」という技術的特徴によって,上記課題を解決しているのである。
したがって,本件発明2の本質的部分とは,「コメント表示部によって表示される
コメントが他のコメントと重なるか否かを判定し,コメントが重なると判定した場合15
に,コメント同士が重ならない位置にコメントを表示させる」という構成部分であっ
て,構成要件2-1Cにおける「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメン
ト情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信
し,前記コメント情報記憶部に記憶する受信部」という構成は,本件発明2の本質的
部分ではないから,第1要件を充足する。20
被告らは,リアルタイム性を確保する点に従来技術に見られない特有の技術的思想
を構成する特徴的部分があり,これが本質的部分であると主張するが,リアルタイム
性を確保することは本件発明2の課題ではなく,本質的部分ではない。
⑵第2要件(置換可能性)について
本件発明2は,「複数のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減25
させることができる表示装置」等を提供することを課題ないし目的とし,「コメント
表示部によって表示されるコメントが他のコメントと重なるか否かを判定し,コメン
トが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置にコメントを表示させ
る」ことにより,「複数のコメントが表示される場合において,コメント同士が動画上
で重なってしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防止することがで
きる。」という作用効果を奏する。5
被告ら各装置は,コメントの重なり判定を行い,コメントが重なると判定した場合
にコメント同士が重ならない位置に表示するという構成を採用しているから,被告ら
各装置は,かかる構成によって本件発明2の目的を達することができ,同一の作用効
果を奏する。また,被告ら各サービスにおいて,少なくともユーザがコンテンツの表
示されるウェブページに再アクセスすることによって,リアルタイムにアップデート10
されたコメントを受信し表示させることができるのであるから,いずれにせよ本件発
明2と実質的に同一の作用効果を奏する。
したがって,第2要件を充足する。
⑶第3要件(置換容易性)について
コメント付き動画配信サービスにおいては,同一の動画について各ユーザが別々の15
タイミングで再生を開始することが通常であるところ,端末がコメント情報を受信す
るタイミングについては,適宜に設計可能な事項にすぎないから,第3要件も充足す
る。
⑷第5要件(特段の事情)について
被告らは,出願審査段階において,原告が構成要件2-1Cを追加したことを理由20
に,構成要件2-1Cを有しない表示装置を補正により特許請求の範囲から明確に除
外したと主張するが,ある特定の構成要件を追加する補正を行ったからといって,直
ちに当該構成要件を有しない装置を意識的に除外したことになるわけではない。
【被告の主張】
⑴第1要件(非本質的部分)について25
本件発明2は,①コメント同士が重なり合うことから生じるコメントの読みにくさ
を低減する,②ユーザごとにコメント表示位置を割り当てることから生じる面白みの
低減を防止する,③リアルタイム性を確保するという課題を解決するため,①コメン
ト同士の重なり合いを避ける,②第1のコメントの表示位置と第2のコメントの表示
位置とが重なるか否かを判定する「判定部」を設け,重なると判定した場合に,第1
のコメントと第2のコメントが重ならない位置に表示させる「表示位置制御部」を設5
けて,ユーザごとにコメント表示位置を割り当てることを回避し,③表示位置が,コ
メント配信サーバが端末装置からコメント情報を取得するごとに(当該取得をトリガ
ーとして)当該サーバから配信されるコメント情報を受信することにより,動画の再
生タイミングが一致していないユーザ同士であっても,コメントのやりとりをリアル
タイムで行い,コミュニケーションを図ることを可能にし,リアルタイム性を確保す10
ることとしたものであり,これらの点に,従来技術に見られない特有の技術的思想を
構成する特徴的部分がある。
しかるに,被告ら各装置は,コメント配信サーバが端末装置からコメント情報を取
得するごとに(当該取得をトリガーとして)当該サーバから配信されるコメント情報
を受信し,コメント情報記憶部に記憶する受信部を有する構成を備えておらず,この15
構成が本件発明2の特徴的部分であり,本質的部分であるから,第1要件を充足しな
い。
⑵第2要件(置換可能性)について
被告ら各サービスは,コメント配信サーバが端末装置からコメント情報を取得する
ごとに(当該取得をトリガーとして)当該サーバから配信されるコメント情報を受信20
するものではないため,リアルタイムでコメントによりチャットを行うことができな
いものであり,本件発明2の目的を達することができず,同一の作用効果も奏しない
ので,第2要件を充足しない。
⑶第5要件(特段の事情)について
原告は,出願審査段階の補正により,「コメント配信サーバが端末装置からコメン25
ト情報を取得するごとに(当該取得をトリガーとして)当該サーバから配信されるコ
メント情報を受信し,コメント情報記憶部に記憶する受信部を有する」との構成を追
加したものであるから,上記構成を有しない装置を特許請求の範囲から意識的に除外
したものである。よって,上記構成を有しない被告ら各装置は,第5要件を充足しな
い。
3争点3(本件各特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる5
か)について
⑴争点3-1(本件発明1は新規性又は進歩性を欠くものであるか)について
【被告らの主張】
ア本件発明1-1,1-2,1-5,1-9及び1-10について
主位的主張(新規性を欠くこと)10
本件特許1の原出願日前である平成15年4月11日に公開された特開2003
-111054号公報(乙2)には,「乙2発明A」と「乙2発明B」の2つの発明が
記載されている。
乙2発明Aは,本件発明1-1の構成要件1-1Aないし1-1G,本件発明1-
2の構成要件1-2H及び1-2I,本件発明1-5の構成要件1-5J及び1-515
Kに該当する構成を開示しており,乙2発明Bは,本件発明1-9の構成要件1-9
Aないし1-9F,本件発明1-10の構成要件1-10G及び1-10Hに該当す
る構成を開示しているから,本件発明1-1,1-2,1-5,1-9及び1-10
は新規性を欠く。
後記の原告の主張に係る相違点1-1及び相違点1-2はいずれも存在しない。20
予備的主張(進歩性を欠くこと)
乙2には,「乙2発明A改」及び「乙2発明B改」の2つの発明が記載されている。
本件発明1-1及び1-5と乙2発明A改とは,指定時点の到来を契機として当該
指定時点に対応する文字列オブジェクトを取得する手順として,本件発明1-1及び
1-5がコメント情報記憶部に記憶されているコメントを取得するのに対し,乙2発25
明A改は記憶手段に記憶されているアクセス情報を用いて外部から取得する点が相
違するところ,この相違点は設計事項にすぎない。また,本件発明1-9と乙2発明
B改とは,指定時点の到来を契機として当該指定時点に対応する文字列オブジェクト
を取得させる手順として,本件発明1-9がコメント情報記憶部に記憶されているコ
メントを取得させるのに対し,乙2発明B改は記憶手段に記憶されているアクセス情
報を用いて外部から取得させる点が相違するところ,この相違点は設計事項にすぎな5
い。
本件発明1-2と乙2発明A改とは,動画上に重畳表示させる文字列オブジェクト
の表示態様として,本件発明1-2では移動表示であるのに対し,乙2発明A改では
特に限定されていない点で相違するところ,この相違点については,周知技術(乙2
7及び28)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができた。ま10
た,本件発明1-10と乙2発明B改とは,動画上に重畳表示させる文字列オブジェ
クトの表示態様として,本件発明1-10では移動表示であるのに対し,乙2発明B
改では特に限定されていない点で相違するところ,この相違点については,周知技術
(乙28)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができた。
そうすると,本件発明1-1,1-2,1-5,1-9,1-10は,乙2発明A15
改又は乙2発明B改に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか
ら,進歩性を欠く。
イ本件発明1-6について(進歩性を欠くこと)
主位的主張
本件発明1-6と乙2発明Aとは,本件発明1-6が,「判定部」(構成要件1-620
L)及び「表示位置制御部」(構成要件1-6M)を有するのに対し,乙2発明Aはこ
れを有しない点で相違する(以下,この相違点を「相違点1-6」という。)。この相
違点については,公知技術(乙3)又は周知技術(乙4及び5)を組み合わせること
により,当業者が容易に想到することができた。そうすると,本件発明1-6は,乙
2発明Aに基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,進歩性を25
欠く。
予備的主張
本件発明1-6と乙2発明A改とは,本件発明1-6が「判定部」(構成要件1-6
L)及び「表示位置制御部」(構成要件1-6N)を有するのに対し,乙2発明A改は
これらを有しない点で相違するところ,この相違点については,公知技術(乙3)を
組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができた。そうすると,本件5
発明1-6は,乙2発明A改に基づいて当業者が容易に発明することができたもので
あるから,進歩性を欠く。
ウ小活
したがって,本件発明1は新規性又は進歩性を欠くから,本件特許1は特許無効審
判により無効とされるべきものである。10
【原告の主張】
ア本件発明1-1,1-2,1-5,1-9及び1-10について
主位的主張(新規性を欠くこと)について
被告らが主張する乙2発明A及び乙2発明Bには,乙2に記載されていない事項が
含まれている。すなわち,乙2には,①動画の再生時刻に対応する相対時刻に対応す15
るテキストを表示メモリから読み出すこと及び②テキストをデータエリアにスクロ
ール表示させることが開示されておらず,乙2発明Aの構成要件1C及び乙2発明B
の構成要件9Dに,実際に乙2に開示されていない事項が含まれている。
そして,本件発明1-1と乙2に記載された発明(以下「乙2発明」という。)とは,
少なくとも,本件発明1-1は,「コメントと,当該コメントが付与された時点におけ20
る,動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与
時間とを含むコメント情報」(構成要件1-1B)のうち,「前記動画の動画再生時間
に対応するコメント付与時間に対応するコメント」(構成要件1-1D)を,動画上に
表示するのに対し,乙2発明は,動画の再生開始時間を基準とした「相対時刻」に到
達したときに特定のURLにアクセスし,当該URLのホームページ等であるデータ25
コンテンツを動画上に表示するものであって,本件発明1-1の上記構成を備えてい
ない点が相違するので(以下,この相違点を「相違点1-1」という。),本件発明1
-1は新規性を欠くものとはいえない。これと同様に,本件発明1-1の構成要件を
全て具備する本件発明1-2,1-5も新規性を欠くものとはいえない。
また,本件発明1-2と乙2発明とは,上記相違点に加え,読み出したコメントの
少なくとも一部を,コメントの表示欄のうち,動画の表示欄の外側であってコメント5
の表示欄の内側に表示する,コメント表示部による「コメント」の表示態様について,
本件発明1-2は,「前記コメント」を「移動表示させる」(構成要件1-2H)に対
し,乙2発明は,特定のURLのホームページ等であるデータコンテンツを動画上に
表示するものであって,本件発明1-2の上記構成を備えていない点が相違するので
(以下,この相違点を「相違点1-2」という。),本件発明1-2は新規性を欠くも10
のとはいえない。
さらに,本件発明1-9及び1-10は,発明の対象が「プログラム」であって,
発明の対象を「表示装置」とする本件発明1-1及び1-2と対応するものであるか
ら,同様に新規性を欠くものとはいえない。
予備的主張(進歩性を欠くこと)について15
本件発明1-1及び1-5と乙2発明との相違点は,被告らが主張する相違点では
なく,相違点1-1である。そして,被告らはこの相違点について何らの主張も行っ
ていないから,この相違点について当業者が容易に想到することができたとはいえな
い。
本件発明1-2と乙2発明との相違点は,被告らが主張する相違点ではなく,相違20
点1-2である。被告らが主張する周知技術(乙27及び28)には,この相違点に
係る構成は開示されていないから,上記周知技術を組み合わせることにより当業者が
容易に想到することができたとはいえない。
さらに,本件発明1-9及び1-10は,発明の対象が「プログラム」であって,
発明の対象を「表示装置」とする本件特許発明1-1及び1-2と対応するものであ25
るから,同様に進歩性を欠くものとはいえない。
イ本件発明1-6(進歩性を欠くこと)について
主位的主張について
本件発明1-6は,本件発明1-1の構成要件を全て具備するから,相違点1-1
が存在するところ,被告らはこの相違点について何らの主張も行っていないから,こ
の相違点について当業者が容易に想到することができたとはいえない。また,本件発5
明1-6と乙2発明とは相違点1-6が存在するところ,公知技術(乙3)及び周知
技術(乙4及び5)は,相違点1-6に係る構成に相当せず,また,乙2発明に適用
する動機付けもないから,この相違点について当業者が容易に想到することができた
とはいえない。したがって,本件発明1-6は,乙2発明に基づいて当業者が容易に
発明することができたものとはいえない。10
予備的主張について
本件発明1-6と乙2発明との相違点は,被告らが主張する相違点ではなく,相違
点1-1である。そして,被告らはこの相違点について何らの主張も行っていないか
ら,この相違点について当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ小活15
したがって,本件発明1は新規性又は進歩性を欠くとはいえないから,本件特許1
は特許無効審判により無効とされるべきものとはいえない。
⑵争点3-2(本件発明2は進歩性を欠くものであるか)について
【被告らの主張】
ア本件発明2-1について20
本件特許2の出願日前である平成16年1月15日に公開された特開2004-
15750号公報(乙11)には,「乙11発明A」と「乙11発明B」の2つの発明
が記載されている。
本件発明2-1は,乙11発明Aと,本件発明2-1が,「判定部」(構成要件2-
1E)と「表示位置制御部」(構成要件2-1F)を有しているのに対し,乙11発明25
Aは,当該判定部及び表示位置制御部を有しない点において相違するところ,これら
の相違点については,公知技術(乙3)又は周知技術(乙4及び5)を組み合わせる
ことにより,当業者が容易に想到することができた。そうすると,本件発明2-1は,
乙11発明Aに基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,進歩
性を欠く。
イ本件発明2-2について5
本件発明2-2は,本件発明2-1に構成要件2-2Hを付加したものにすぎない
ところ,構成要件2-2Hは一般常識又は技術常識であるか,技術的な解決手段を提
示するものではないから,本件発明2-1が進歩性を欠く以上,本件発明2-2も進
歩性を欠く。
ウ本件発明2-3について10
本件発明2-3は,本件発明2-1及び2-2に対し,構成要件2-3J,2-3
K及び2-3Lによる技術的限定を加えたものであるところ,乙11発明Aに公知技
術(乙6)又は周知技術(乙6ないし10)のいずれかを組み合わせることにより,
当業者が容易に想到することができた。また,本件発明2-3と乙11発明Aとは,
本件発明2-3が「移動表示するコメント」(構成要件2-3J),「コメント表示部」15
(構成要件2-3K),「判定部」(構成要件2-1E後段及び2-3L),「表示位置制
御部」(構成要件2-1F)を有するのに対し,乙11発明Aがこれらに相当する機能
を有しない点で相違するところ,これらの相違点については,公知技術(乙6,8,
36,37,41,42,丙6,7)又は周知技術(乙27及び28)を組み合わせ
ることにより,当業者が容易に想到することができた。そうすると,本件発明2-320
は,乙11発明Aに基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
また,本件発明2-3は,本件発明2-1及び2-2に対して設計事項又は自明の
技術事項といえる工夫を施したものにすぎない。
したがって,本件発明2-3は,進歩性を欠く。
エ本件発明2-9について25
本件発明2-9は,乙11発明Bと,本件発明2-9が,「判定手段」(構成要件2
-9D)及び「表示位置制御手段」(構成要件2-9E)を有するのに対し,乙11発
明Bが当該判定手段及び表示位置制御手段を有しない点において相違するところ,こ
れらの相違点については,公知技術(乙3)又は周知技術(乙4及び5)を組み合わ
せることにより,当業者が容易に想到することができた。そうすると,本件発明2-
9は,乙11発明Bに基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,5
進歩性を欠く。
オ本件発明2-10について
本件発明2-10は,本件発明2-9に構成要件2-10Gを付加したものにすぎ
ないところ,構成要件2-10Gは一般常識又は技術常識であるか,技術的な解決手
段を提示するものではないから,本件発明2-9が進歩性を欠く以上,本件発明2-10
10も進歩性を欠く。
カ本件発明2-11について
本件発明2-11は,本件発明2-9又は2-10に対し,構成2-11I,2-
11J,2-11Kを付加したものであるとともに,本件発明2-3の対象の「表示
装置」を「プログラム」に置換しただけのものであり,その技術的特徴は同一である15
から,本件発明2-3が進歩性を欠く以上,本件発明2-11も進歩性を欠く。
キ小活
したがって,本件発明2は進歩性を欠くから,本件特許2は特許無効審判により無
効とされるべきものである。
【原告の主張】20
ア本件発明2-1について
被告らが主張する乙11発明A及び乙11発明Bには,乙11に記載されていない
事項が含まれている。すなわち,乙11には,読み出したメッセージを動画上にスク
ロール表示する構成が開示されておらず,乙11発明Aの構成要件1D及び乙11発
明Bの構成要件9Cには,実際に乙2に開示されていない事項が含まれている。25
そして,本件発明2-1と乙11に記載された発明(以下「乙11発明」という。)
とは,少なくとも,「判定部」(構成要件2-1E)及び「表示位置制御部」(構成要件
2-1F)を有するのに対し,乙11発明は,複数のコミュニケーション情報を表示
する場合に,上記「判定部」及び「表示位置制御部」を備えていない点が相違する(以
下「相違点2-1」という。)。しかるところ,被告らが主張する公知技術(乙3)及
び周知技術(乙4及び5)は,相違点2-1に係る構成を有せず,乙11発明に適用5
する動機付けもないから,この相違点について当業者が容易に想到することができた
とはいえない。したがって,本件発明2-1は,乙11発明に基づいて当業者が容易
に発明することができたものとはいえない。
イ本件発明2-2について
本件発明2-2と乙11発明とは,上記相違点2-1で相違するほか,本件発明210
-2が,「前記動画の表示領域のうち,コメントを表示する基準となる位置を表す基
準位置に従って第2のコメントが表示された後に前記第1のコメントを表示する際
に,前記判定部が前記コメントが重なると判定した場合に,前記第1のコメントの基
準位置を前記第2のコメントの基準位置とは異なる位置に変更して表示する」(構成
要件2-2H)のに対し,乙11発明は,コミュニケーション情報を表示する際に上15
記表示を行わない点が相違するところ(以下「相違点2-2」という。),この相違点
に係る構成は一般常識又は技術常識でないから,当業者が容易に想到することができ
たとはいえない。したがって,本件発明2-2は,乙11発明に基づいて当業者が容
易に発明することができたものとはいえない。
ウ本件発明2-3について20
本件発明2-2と乙11発明とは,上記相違点2-1で相違するほか,本件発明2
-3が,「前記第1のコメントと前記第2のコメントとの両方が所定の方向に移動表
示するコメントであ」って(構成要件2-3J),「前記コメントが前記表示領域内に
現れてから表示領域外に移動して消えるまでの時間であるコメント表示時間と前記
コメントの表示が開始される文字から表示が終了する文字までの前記所定の方向に25
おける文字列の幅とに基づいて決定される移動速度で前記コメントを移動させつつ,
前記画面上に表示を行」い(構成要件2-3K),前記第1のコメントと前記第2のコ
メントとを「前記移動速度で移動させて表示させた場合,前記第2のコメントが移動
し終わるまでに前記第1のコメントが追いつく場合に,前記第1のコメントと前記第
2のコメントとの表示位置が重なるものとして判定する」(構成要件2-3L)のに
対し,乙11発明はこれらの構成を備えない点が相違するところ(以下「相違点2-5
3」という。),被告らが主張する公知技術(乙6)又は周知技術(乙6ないし10)
は,相違点2-3に係る構成を有せず,乙11発明に適用する動機付けもないから,
この相違点について当業者が容易に想到することができたとはいえない。また,相違
点2-3は,設計事項とも自明の技術事項ともいえない。
さらに,乙11発明に被告らが主張する公知技術(乙6,8,36,37,41,10
42,丙6,7)及び周知技術(乙27,28)を組み合わせる動機付けはなく,相
違点2-3について当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって,本件発明2-3は,乙11発明に基づいて当業者が容易に発明するこ
とができたものとはいえない。
エ本件発明2-9ないし2-11について15
本件発明2-9と本件発明2-1とは,発明の対象が「プログラム」とするのと「表
示装置」とするのとが異なるが,両者は対応するものであるから,本件発明2-9は,
本件発明2-1で主張したのと同様に乙11発明に基づいて当業者が容易に発明す
ることができたものとはいえない。また,本件発明2-10は本件発明2-2と,本
件発明2-11は本件発明2-3と対応するものであるから,本件発明2-2及び220
-3で主張したのと同様に乙11発明に基づいて当業者が容易に発明することがで
きたものとはいえない。
4争点4(被告FC2の行為は不法行為を構成するか)について
【原告の主張】
⑴直接侵害行為25
被告FC2は,被告ら各サービスを,それぞれ平成19年11月,平成23年1月
及び平成23年6月から現在まで,インターネットを介して日本のユーザに提供して
いる。被告ら各サービスの提供に際し,ユーザが閲覧を希望する動画を選択すると,
自動的にユーザのコンピュータに被告ら各プログラムが配信され,必然的にユーザの
コンピュータの一時保管領域に被告ら各プログラムが複製・保存されて実行可能な状
態になった(インストールされた状態になった)コンピュータ(被告ら各装置)が生5
産される。また,被告FC2がユーザに対し被告ら各サービスを提供する際には,必
然的に被告ら各装置が使用される。よって,被告FC2は,業として,被告ら各装置
を生産し及び使用している。
また,被告FC2は,被告ら各サービスの提供に際し,被告ら各プログラムを日本
国内のユーザに対し,業として,譲渡等及びその申出をしている。10
さらに,被告FC2は,被告HPSをして又は被告HPSと共同で,業として,被
告ら各プログラムを生産している。
⑵間接侵害行為
被告ら各装置は,被告ら各プログラムがインストールされることにより生産される
ところ,被告ら各プログラムは,被告ら各装置の生産にのみ用いられる他に経済的・15
商業的・実用的な用途が想定されないから,被告ら各プログラムは,被告ら各装置の
生産にのみ用いられる物にあたる。被告FC2は,業として,ユーザに対し,被告ら
各プログラムを譲渡等及びその申出をし,また,被告ら各プログラムを生産している
から,被告FC2のこれらの行為は,本件各特許権の間接侵害行為(特許法101条
1号)に該当する。20
また,仮に,被告ら各プログラムが被告ら各装置を生産するためのいわゆる専用品
にあたらないとしても,被告ら各プログラムが被告ら各装置の生産に用いられること
及び被告ら各装置に係る発明による課題の解決に不可欠であることは明らかである。
そして,被告FC2は,遅くとも本件訴状の送達日以降,被告ら各装置に係る発明が
特許発明であること及び被告らプログラムが当該特許発明の実施に用いられること25
について悪意である。したがって,被告FC2のこれらの行為は,本件各特許権の間
接侵害行為(特許法101条2号)に該当する。
【被告FC2の主張】
被告ら各プログラムは,ユーザが使用するコンピュータにインストールされるもの
ではなく,ブラウザを介して上記コンピュータに動画ファイル及びコメントファイル
が送信され,ユーザのメモリ又は一時保管領域に一時的に記録されるだけであるから,5
被告ら各装置を生産及び使用しているとはいえない。また,被告らサービスに係る情
報は,米国内のサーバから自動的に配信されるものであり,当該提供行為は米国内で
完結しているから,日本国の特許法の効力は及ばない。
さらに,被告ら各装置の生産が存在しないのであるから,間接侵害も成立しない。
【被告HPSの主張】10
被告ら各プログラムは,ユーザが使用するコンピュータにインストールされるもの
ではなく,ウェブブラウザ等のアプリケーションソフトを動作させる命令として一時
的に読み込まれるものにすぎない。「swfファイル」は,ユーザが使用するパソコンに
ウェブブラウザとともにインストールされている「AdobeFlashPlayer」に所定の動
作をさせるために,原則として,同ソフトを動作させる都度読み込まれるものである。15
よって,「swfファイル」は,ユーザが使用するコンピュータにインストールされるも
のではなく,被告ら各装置を構成するものではない。したがって,被告FC2が被告
ら各装置を生産及び使用している事実はなく,被告HPSが被告ら各装置の生産及び
使用している事実もない。
また,被告ら各プログラムは,ユーザが使用するコンピュータにインストールされ20
るものではなく,被告ら各装置の生産に用いられるものではない。
5争点5(被告HPSの行為が不法行為を構成するか)について
【原告の主張】
⑴被告FC2と被告HPSの関係
被告HPSは,被告FC2が提供するサービスの企画から開発,管理に至るまで全25
面的なサポートを行っており,いわば被告FC2の一部門として機能しているから,
被告HPSと被告FC2は被告ら各サービスの一体の運営主体として評価されるべ
きである。
⑵直接侵害行為
被告HPSは,単独又は被告FC2と共同で,業として,被告ら各プログラムを生
産している。また,被告HPSは,被告FC2に対し,業として,被告ら各プログラ5
ムを譲渡等及びその申出を行っているほか,単独又は被告FC2との共同で,業とし
て,被告ら各プログラムをユーザへ譲渡等及びその申出をしている。さらに,被告H
PSは,単独又は被告FC2との共同で,業として,被告ら各装置の生産及び使用を
している。
⑶間接侵害行為10
争点4で主張したのと同様に,被告ら各プログラムをユーザに対し譲渡等及びその
申出をする行為は,本件各特許権の間接侵害行為(特許法101条1号及び2号)に
該当する
【被告FC2の主張】
被告HPSは,被告FC2の一外注業者にすぎず,現在は被告ら各サービスに関す15
る業務を行っていない。
【被告HPSの主張】
⑴被告HPSと被告FC2の関係について
被告HPSは,現在,被告FC2提供するサービスの企画,開発及び管理業務は行
っていない。また,被告HPSは,被告FC2とは別の会社であり,同社の一部門と20
して機能していたこともない。
⑵直接侵害行為について
被告HPSは,被告FC2の一部門として機能している会社ではなく,被告ら各プ
ログラムのユーザへの譲渡等及びその申出を行った事実はない。
⑶間接侵害行為について25
否認ないし争う。
6争点6(損害の発生の有無及びその額)について
【原告の主張】
⑴ア特許法102条2項に基づく損害
原告は,本件各特許権の各登録日(平成23年3月4日及び同年4月28日)から
現在に至るまで,被告らによる特許権侵害行為によって損害を受けている。被告らが5
当該特許権侵害行為により受けている利益は,被告らが被告ら各サービス全ての提供
を行うに至った平成23年6月以降の利益だけをみても,年間1億3500万円(年
間売上額15億円×利益率30%×被告ら各装置及び被告らプログラムの寄与割合
30%),現在までの総額で7億円を下らない。
イ特許法102条3項に基づく損害10
本件各発明の実施に対し原告が受けるべき金銭の額は,被告ら各サービスの運営事
業による年間売上額15億円に3パーセントを乗じた額を下らないから,年額450
0万円,現在までの総額で2億4000万円を下らない。
⑵弁護士等費用
本件訴訟における弁護士費用及び弁理士費用相当額は,上記⑴の金額の1割に相当15
する金額を下らない。
⑶小括
原告は,被告らに対し,上記⑴及び⑵の損害の一部請求として,本件特許権1の侵
害を理由とする損害賠償請求権に基づき,被告らサービス1について1665万円,
被告らサービス2について1665万円,被告らサービス3について1670万円,20
本件特許権2の侵害を理由とする損害賠償請求権に基づき,被告らサービス1につい
て1665万円,被告らサービス2について1665万円,被告らサービス3につい
ては1670万円,合計1億円及び遅延損害金の連帯支払を求める。
【被告らの主張】
否認ないし争う。25
第4当裁判所の判断
1本件発明1の意義について
⑴本件明細書1の発明の詳細な説明の記載
本件明細書1の発明の詳細な説明は,別紙特許公報(甲1の2)の該当欄記載のと
おりであるが,概要,以下のとおりである。
ア技術分野5
「【0001】
本発明は,動画とともにコメントを表示する場合における表示装置,コメント表示
方法,及びプログラムに関する。」
イ背景技術
「【0002】10
従来から,例えば,放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが発言したコ
メントをその動画と併せて表示するシステムがある。
例えば,地域ごとに放送時間が異なるテレビ番組等に関する掲示板において,テレ
ビ番組の1シーンに対する書き込みを,放送開始からの正味時間に対応させて記憶し
ておき,掲示板を閲覧する時間が異なっていても,以前に書き込まれた内容がテレビ15
番組のシーンに合わせて表示させるシステムがある(例えば,特許文献1参照)。この
システムによれば,ユーザは放送時間のタイムラグを感じることがなく,テレビ番組
を見ながら,コメントを閲覧して楽しむことができる。」
ウ発明が解決しようとする課題
「【0004】20
しかしながら,上述した従来技術におけるシステムを利用すると,以下のことが考
えられる。すなわち,動画上に多数のコメントが書き込まれたとすると,コメント同
士が重なり合ってしまい,コメントを読みにくくなってしまう。また,ユーザ毎にコ
メントを表示する位置を割り当ててしまうと,重なることを解消することができるが,
同じ画面上にコメントを書き込めるユーザの数が限られてしまうため,大人数でコメ25
ントを交換する面白みが低減してしまう。
【0005】
本発明は,このような事情に鑑みてなされたもので,その目的は,複数のコメント
が書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示装置,コメ
ント表示方法,及びプログラムを提供することにある。」
エ課題を解決するための手段5
「【0006】
上述した課題を解決するために,本発明は,動画を再生するとともに,前記動画上
にコメントを表示する表示装置であって,前記コメントと,当該コメントが付与され
た時点における,動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間である
コメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と,前記動画10
を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と,前
記再生される動画の動画再生時間に基づいて,前記コメント情報記憶部に記憶された
コメント情報のうち,前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応す
るコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し,当該読み出されたコメントを,
前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と,を有15
し,前記第2の表示欄のうち,一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重
なっており,他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり,前記コメント表示部は,前
記読み出したコメントの少なくとも一部を,前記第2の表示欄のうち,前記第1の表
示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示することを特徴とする。
【0007】20
…また,本発明は,上述の表示装置において,前記コメント表示部が前記コメント
を表示する前記第2の表示欄は,前記第1の表示欄よりも大きいサイズであることを
特徴とする。」
オ発明の効果
「【0012】25
以上説明したように,この発明によれば,動画を第1の表示欄に再生させ,コメン
ト情報のうち,動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコ
メントをコメント情報から読み出し,第1の表示欄と一部が重なり他の部分が重なら
ない表示領域である第2の表示欄における,前記第1の表示欄の外側であって前記第
2の表示欄の内側に,読み出したコメントの少なくとも一部を表示するようにした。
これにより,例えば,オーバーレイ表示されたコメント等が,動画の画面の外側でト5
リミングするようにして,コメントそのものが動画に含まれているものではなく,動
画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり,コメント
の読みにくさを低減させることができる。」
カ発明を実施するための形態
「【0019】10
この表示装置34に表示される情報について,更に説明する。図5は,表示装置3
4に表示される情報の一例を示す図である。…表示欄104には,第1の表示部によ
って表示される動画が表示される。表示欄105には,第2の表示部によって表示さ
れるコメントが表示される領域であり,ここでは,表示欄104によって表示される
動画上にコメントが表示される。また,ここでは,表示欄105は,表示欄104よ15
りも大きいサイズに設定されており,オーバーレイ表示されたコメント等が,動画の
画面の外側でトリミングするようになっており,コメントそのものが動画に含まれて
いるものではなく,動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握
可能となっている。」(図5は別紙「本件明細書1の図面」記載のとおりである。)
⑵本件発明1の意義20
以上の本件明細書1の発明の詳細な説明の記載並びに本件特許1の特許請求の範
囲請求項1,2,5,6,9及び10の記載によれば,本件発明1は,動画とともに
コメントを表示する場合における表示装置,コメント表示方法及びプログラムに関す
るものであり,複数のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させ
ることができる表示装置,コメント表示方法,及びプログラムを提供することを目的25
とするものであって,動画を表示する領域である第1の表示欄とコメントを表示する
領域であり第1の表示欄よりも大きいサイズの第2の表示欄をあらかじめ設定し,第
1の表示欄と一部が重なり他の部分が重ならない表示領域である第2の表示欄にお
ける,第1の表示欄の外側であって第2の表示欄の内側に,読み出したコメントの少
なくとも一部を表示するようにすることにより,コメントそのものが動画に含まれて
いるものではなく,ユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり,5
コメントの読みにくさを低減させることができるようにする発明である,と認められ
る。
2本件発明2の意義について
⑴本件明細書2の発明の詳細な説明の記載
本件明細書2の発明の詳細な説明は,別紙特許公報(甲2の2)の該当欄記載のと10
おりであるが,概要,以下のとおりである。
ア技術分野
「【0001】
本発明は,動画とともにコメントを表示する場合における,コメント同士が重なら
ないように表示させる表示装置,コメント表示方法,及びプログラムに関する。」15
イ背景技術
「【0002】
従来から,例えば,放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが発言したコ
メントをその動画と併せて表示するシステムがある。
例えば,地域ごとに放送時間が異なるテレビ番組等に関する掲示板において,テレ20
ビ番組の1シーンに対する書き込みを,放送開始からの正味時間に対応させて記憶し
ておき,掲示板を閲覧する時間が異なっていても,以前に書き込まれた内容がテレビ
番組のシーンに合わせて表示させるシステムがある(例えば,特許文献1参照)。この
システムによれば,ユーザは放送時間のタイムラグを感じることがなく,テレビ番組
を見ながら,コメントを閲覧して楽しむことができる。」25
ウ発明が解決しようとする課題
「【0003】
しかしながら,上述した従来技術におけるシステムを利用すると,以下のことが考
えられる。すなわち,動画上に多数のコメントが書き込まれたとすると,コメント同
士が重なり合ってしまい,コメントを読みにくくなってしまう。また,ユーザ毎にコ
メントを表示する位置を割り当ててしまうと,重なることを解消することができるが,5
同じ画面上にコメントを書き込めるユーザの数が限られてしまうため,大人数でコメ
ントを交換する面白みが低減してしまう。
【0004】
本発明は,このような事情に鑑みてなされたもので,その目的は,複数のコメント
が書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示装置,コメ10
ント表示方法,及びプログラムを提供することにある。」
エ課題を解決するための手段
「【0005】
上述した課題を解決するために,本発明は,複数の端末装置から送信されるコメン
ト情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバと,前記コメント配信サ15
ーバに接続され動画を再生するとともに,前記動画上にコメントを表示する表示装置
とを有するコメント表示システムにおける表示装置であって,コメントと,前記コメ
ントが付与された時点における,前記動画の最初を基準として動画の経過時間を表す
動画再生時間をコメント付与時間として前記コメントに対応づけてコメント情報と
して記憶するコメント情報記憶部と,前記コメント配信サーバが前記端末装置からコ20
メント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を
受信し,前記コメント情報記憶部に記憶する受信部と,前記再生される動画の動画再
生時間に基づいて,前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち,前記
動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメ
ント情報から読み出し,読み出したコメントを動画上に表示するコメント表示部と,25
前記コメント表示部によって表示されるコメントのうち,第1のコメントと第2のコ
メントとのうちいずれか一方または両方が移動表示されるコメントであり,前記第1
のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が,当該第1のコメントよりも先に前
記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部
と,前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に,前記第1のコメン
トと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御部と,を有5
することを特徴する。」
オ発明の効果
「【0014】
以上説明したように,この発明によれば,コメント情報のうち,動画の動画再生時
間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメント情報から読み10
出し,読み出したコメント内容を動画上に表示を行い,コメント表示部によって表示
されるコメントが他のコメントと重なるか否かを判定し,コメントが重なると判定し
た場合に,コメント同士が重ならない位置にコメントを表示させるようにした。これ
により,複数のコメントが表示される場合において,コメント同士が動画上で重なっ
てしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防止することができる。」15
「【0017】
…また,本発明によれば,コメント配信サーバから受信したコメント情報から,動
画再生時間に対応するコメント付与時間が設定されたコメントを読み出して表示が
行われる場合に,受信したコメント情報がコメント表示部によって表示される場合に
重なるか否かの判定を行うようにしたので,動画の再生中に新たに受信コメントを受20
信し,当該動画に対するコメントとして追加されても,コメントが随時増えていくが,
コメントの表示タイミングでその都度重複判定を行い,表示位置を制御することがで
きる。」
カ発明を実施するための最良の形態
「【0031】25
次に,コメント配信サーバ2,端末装置3の動作について,順次説明する。
まず,コメント配信サーバ2の動作について,図7のフローチャートを用いて説明
する。
コメント配信サーバ2の通信部24は,コメント情報の配信要求を端末装置3から
受信したか否かを検出する(ステップS101)。コメント情報の配信要求を受信し
た場合には,通信部24は,コメント情報配信部22にコメント情報の配信指示をす5
る。ここでは,配信要求に含まれる,コメント情報のスレッドIDがコメント情報配
信部22に出力される。コメント情報配信部22は,通信部24から出力されたスレ
ッドIDに対応するコメント情報のコメント情報記憶部21から読み出し(ステップ
S102),読み出したコメント情報を配信要求をした端末装置3に配信する(ステ
ップS103)。ここでは,スレッドIDに対応付けされている各コメント情報を一10
括して送信する。
【0032】
一方,コメント情報の配信要求ではなく,端末装置3から送信されたコメントデー
タを受信した場合(ステップS104),通信部24は,コメントデータをコメント情
報更新管理部23に出力する。コメント情報更新管理部23は,コメント情報記憶部15
21を参照し,通信部24から出力されたコメントデータに含まれる動画ID及びス
レッドIDに基づいてコメント情報を特定し,特定したコメント情報に対し,受信し
たコメントデータを追加保存する(ステップS105)。追加保存されると,コメント
情報配信部22は,当該動画IDの動画を再生している端末装置3であって,当該動
画IDの動画とともに当該スレッドIDのコメントを閲覧している端末装置3を特20
定し,その特定した端末装置3のそれぞれに,追加保存したコメントデータを配信す
る(ステップS106)。他方,コメント情報の配信要求ではなく,端末装置3から送
信されたコメントデータの受信もしていない場合は,ステップS101に移行する。
ここで,同じ動画IDの動画を再生しており,且つ当該スレッドIDのスレッドのコ
メントを閲覧している端末装置3を特定する方法としては,例えば,コメント配信サ25
ーバ2にアクセスしてきた端末装置3とセッションを確立しておき,このセッション
が有効な端末装置3を動画閲覧中として特定することが可能である。」(図7は別紙
「本件明細書2の図面」記載1のとおりである。)
「【0039】
以上,1つの端末装置3のみの動作に着目して説明したが,実際には,同じ動画で
あって,同じスレッドを閲覧しているユーザ間において,以下のようにしてコメント5
のやりとりをすることができる。ここでは,図10を用いて,説明をする。
例えば,あるユーザEによって,動画が再生され,動画再生時間が12秒の時点で
「どこの卵を使っているの?」というコメントが発言として追加入力されると(符号
a),その追加入力されたコメントのコメント情報がコメント配信サーバ2を介して,
同じ動画であって同じスレッドを閲覧している端末装置3に配信される。10
【0040】
その配信後に,別のユーザCによって,同じ動画が再生されると(符号b),ユーザ
Cの端末装置3に,追加されたコメントを含めてコメント情報が配信される。そして,
動画再生時間が12秒の時点で,「どこの卵を使っているの?」というユーザEから
のコメントが表示される。そして,このコメントを閲覧したユーザCが,その回答と15
して,ユーザCの動画再生時間が15秒の時点(ユーザEの動画再生時間では,例え
ば100秒の時点)で「○○県産らしいよ。」というコメントを入力してコメント配信
サーバ2に送信すると(符号c),その送信されたコメントがユーザEの端末装置3
に配信される。このとき,例えば,動画再生時間が100秒の時点において,ユーザ
Eのコメント一覧のリストに,ユーザCのコメントの一部が実時間に従った順で表示20
される(符号d)。例えば,最新のコメントとして,コメント一覧の一番下(あるいは
一番上)に表示される。そして,このコメント一覧を見たユーザEによって,コメン
トの一部がクリックされると,再生中の動画が,動画再生時間15秒の時点に戻って
再生されるとともに,ユーザEの端末装置3の画面上に「○○県産らしいよ。」のコメ
ントが表示される(符号e)。これによって,ユーザEは,あたかも自分のコメントに25
返信があったかのようにして楽しむことができる。そして,このようなコメントのや
りとりを繰り返すことによって,異なるタイミングで動画を閲覧しているユーザ同士
であっても,コメントを介してコミュニケーションを図ることが可能となる。
このように,実時間でのコメント入力順にコメントを管理し,コメント一覧として
表示するようにしたので,動画の再生タイミングが一致していないユーザ同士であっ
ても,コメントのやりとりをリアルタイムで行うことができ,コミュニケーションを5
図ることが可能となる。」(図10は別紙「本件明細書2の図面」記載2のとおりであ
る。)
⑵本件特許2の出願経過
証拠(乙24ないし26)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許2の出願経過とし
て,以下の事実が認められる。すなわち,特許庁審査官は,平成22年11月24日10
を起案日とする拒絶理由通知書(乙24)において,出願当初の特許請求の範囲請求
項1ないし6及び8ないし12に係る各発明について,特許法29条2項の規定によ
り特許を受けることができない旨を通知した。これに対し,原告は,平成23年1月
31日付け手続補正書(乙25)において明細書を補正し,請求項1に「前記コメン
ト配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サ15
ーバから送信されるコメント情報を受信し,前記コメント情報記憶部に記憶する受信
部と,」との構成を,請求項9に「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメン
ト情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信
し,」との構成を付加して変更した。そして,原告は,上記補正をするに当たり,特許
庁審査官に対して意見書(乙26)を提出したところ,同意見書には,「引用文献2,20
3には,…について記載されておりますが,本願発明のように,『複数の端末装置から
送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバ』(構
成要件1)と,『…コメント配信サーバが端末装置からコメント情報を受信する毎に
当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信してコメント情報記憶
部に記憶』する(構成要件2)構成を有するものではありません。この構成の相違に25
より,引用文献2,3は,本願発明のように,ユーザの端末装置から送信されたコメ
ントを受信して表示するというものではありません。すなわち,引用文献2,3は,
テレビ番組の字幕情報のように,表示すべき文字情報が予め決まっているものである
のに対し,本願発明は,ユーザの端末装置から送信されるコメントを受信して表示す
るものであり,コメントを受信する毎に,表示するコメントがダイナミックに変動す
る点において相違します。例えば,ユーザは動画の再生が開始されてから任意の場面5
でコメントを付与することができますので…。このように,コメントが付与される動
画再生時間,コメント数,コメントの文字列の先頭から末尾までの長さ等が,ダイナ
ミックに変動しますので,本願発明では,ユーザから付与されたコメントを動画上に
表示する時点でリアルタイムに処理する点が,引用文献2,3に比べて相違します。」
との記載がある。その結果,特許庁審査官は上記補正がされた後の出願に対して特許10
査定をした。
⑶本件発明2の意義
ア以上の本件明細書2の発明の詳細な説明の記載,本件特許2の特許請求の範囲
請求項1,2,3,9,10及び11の記載並びに本件特許2の出願経過によれば,
本件発明2は,動画とともにコメントを表示する場合における,コメント同士が重な15
らないように表示させる表示装置,コメント表示方法及びプログラムに関するもので
あり,複数のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることが
できる表示装置,コメント表示方法及びプログラムを提供することを目的とするもの
であって,コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと重なるか否
かを判定し,コメントが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置に20
コメントを表示させるようにし,複数のコメントが表示される場合において,コメン
ト同士が動画上で重なってしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防
止することができるようにする発明である,と認められる。
さらに,上記記載等のうち,特に,特許請求の範囲請求項1及び9の「前記コメン
ト配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サ25
ーバから送信されるコメント情報を受信」(構成要件2-1C,2-9B)との記載,
本件明細書2の「動画の再生中に新たに受信コメントを受信し,当該動画に対するコ
メントとして追加されても,コメントが随時増えていく」(段落【0017】),「動画
の再生タイミングが一致していないユーザ同士であっても,コメントのやりとりをリ
アルタイムで行うことができ,コミュニケーションを図ることが可能となる。」(段落
【0040】)との記載,及び,本件特許2の出願経過に係る意見書(乙26)の「本5
願発明は,ユーザの端末装置から送信されるコメントを受信して表示するものであり,
コメントを受信する毎に,表示するコメントがダイナミックに変動する点において相
違します。」との記載等を総合すると,本件発明2は,上記の発明の意義に加え,動画
の再生中に他の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該動
画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイム10
な双方向のコミュニケーションを可能にし,大人数でコメントを交換する面白みを増
加させる発明である,と認められる。
イこれに対し,原告は,リアルタイム性の確保は,「実時間でのコメント入力順に
コメントを管理し,コメント一覧として表示するようにした」(段落【0040】)と
いう実施例における効果にすぎず,本件発明2の効果ではない旨を主張する。しかし15
ながら,動画の再生中に他の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信
して当該動画上に表示するか否かは,コメントの受信のタイミングによるのであり,
「実時間でのコメント入力順にコメントを管理し,コメント一覧として表示するよう
にした」ことは,コメントをリアルタイムに受信することが前提とされているのであ
るから,その前提を捨象して上記実施例における効果にすぎないということはできな20
い。むしろ,動画の再生中に新たにコメントを受信することによりコメントを変動さ
せることは,従来技術との相違であるとして構成要件2-1C及び2-9Bにおいて
追加されたものであることからすると,リアルタイム性の確保も本件発明2の作用効
果であると認めるのが相当である。
3争点1(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件各発明の技術25
的範囲に属するか)について
⑴争点1-1⑴(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件発明1
の技術的範囲に属するか-被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,「第1の表示欄」
及び「第2の表示欄」を充足するか)について
ア「第1の表示欄」及び「第2の表示欄」の意義について
本件発明1-1の「第1の表示欄」(構成要件1-1C,1-1E,1-1F)及び5
「第2の表示欄」(構成要件1-1D,1-1E,1-1F)の意義について検討す
るに,本件発明1は,コメントについて動画に含まれているものではなく,ユーザに
よって書き込まれたものであることを把握することができるようにするとともに,コ
メントの読みにくさを低減させるために,一部重なり合うものとして設定される,コ
メント表示領域である「第2の表示欄」及び動画表示領域である「第1の表示欄」に10
ついて,あらかじめ,「第2の表示欄」を「第1の表示欄」よりも大きいサイズのもの
と設定して,コメントの少なくとも一部を「第2の表示欄」の内側ではあるものの「第
1の表示欄」の外側に表示するというものである。そうすると,上記の作用効果を実
現するためには,コメントは,動画の大小やアスペクト比に関わらず,「第1の表示
欄」の外側に表示され得る必要があるから,「第1の表示欄」は動画を表示するため15
に確保された領域(動画表示可能領域),「第2の表示欄」はコメントを表示するため
に確保された領域(コメント表示可能領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表示
欄」よりも大きいサイズのものであり,そうであれば,「第1の表示欄」及び「第2の
表示欄」のいずれも固定された領域であるものと解するのが相当である。
これに対し,原告は,「第1の表示欄」と「第2の表示欄」とは,コメントと動画の20
画像上の表示を基準に画定すべきであり,コンテンツを再生する際に現実に動画やコ
メントが表示される領域を意味し,「第1の表示欄」は,動画のアスペクト比によっ
て可変の領域であると主張する。
しかしながら,「第1の表示欄」が動画のアスペクト比によって可変であるとする
ならば,動画のアスペクト比によっては,「第2の表示欄」を「第1の表示欄」よりも25
大きいサイズのものとし,コメントの少なくとも一部を「第1の表示欄」の外側であ
って「第2の表示欄」の内側に表示することを実現し得ない場合を生ずることになる
のであって,本件発明1の作用効果を奏しないこととなる。また,本件明細書1には,
「第1の表示欄」が可変であるとの記載も示唆もない。よって,原告の上記主張は採
用することができない。
イ被告ら各装置の構成について5
証拠(甲3ないし5,丙1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認め
られる。すなわち,被告ら装置1においては,動画及びコメントを表示することを可
能とする領域として「StageオブジェクトA」があり,これと同一のサイズでコ
メントを表示する「CommentDisplayオブジェクトD」が存在し,「S
tageオブジェクトA」の領域内で動画のアスペクト比を維持したまま動画が最大10
サイズになるように位置及びサイズが調整された「VideoDisplayオブジ
ェクトC」が存在すること,動画及びコメントを表示することを可能とする領域であ
る「StageオブジェクトA」はアスペクト比が640×392に固定されている
こと,その結果,アスペクト比が640×392の動画を再生した場合,動画表示画
面とコメント表示画面のサイズが同一となり,コメントは動画表示画面の外側には表15
示され得ないこと,アスペクト比が16×9の動画を再生した場合,動画の位置及び
サイズが調整されて動画表示画面の上端と下端に映像が表示されない部分が生じ,コ
メントが動画表示画面の外側に表示され得ること,アスペクト比が4×3の動画を再
生した場合,動画の位置及びサイズが調整されて動画表示画面の左端と右端に映像が
表示されない部分が生じ,コメントが動画表示画面の外側に表示され得ることが認め20
られる。また,被告ら装置2及び3においては,動画を表示する領域である<ifl
ame>要素又は<video>要素とコメントを表示する領域である<canv
as>要素は,別に存在しているが同一サイズであること,両者のアスペクト比は被
告ら装置2でアスペクト比がほぼ16×9,被告ら装置3でアスペクト比が16×9
であるため,アスペクト比が16×9の動画を再生した場合,動画表示画面とコメン25
ト表示画面が同一となり,コメントは動画表示画面の外側には表示され得ないこと,
アスペクト比が4×3の動画を再生した場合,動画の位置及びサイズが調整されて動
画表示画面の左端と右端に映像が表示されない部分が生じ,コメントが動画表示画面
の外側に表示され得ることが認められる(甲3ないし5の画像のうち,動画表示画面
の左端及び右端に映像が表示されない部分が存在し,その部分にコメントが表示され
ている画像も,同様に動画のアスペクト比によるものである。)。5
ウ検討
以上のとおり,「第1の表示欄」は動画を表示するために確保された領域(動画表
示可能領域),「第2の表示欄」はコメントを表示するために確保された領域(コメン
ト表示可能領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表示欄」よりも大きいサイズで
いずれも固定された領域であると解されるところ,被告ら各装置においては,動画表10
示可能領域(被告ら装置1における「StageオブジェクトA」,被告ら装置2及
び3における<iflame>要素又は<video>要素)とコメント表示可能領
域(被告ら装置1における「CommentDisplayオブジェクトD」,被告
ら装置2及び3における<canvas>要素)は同一のサイズであるから,被告ら
各装置は,「第1の表示欄」及び「第2の表示欄」に相当する構成を有するとは認め15
られない。したがって,被告ら各装置は,本件発明1-1の「第1の表示欄」(構成要
件1-1C,1-1E,1-1F)及び「第2の表示欄」(構成要件1-1D,1-1
E,1-1F)を充足するとは認められず,本件発明1-1の技術的範囲に属すると
は認められない。
そして,被告ら各装置は,同様に,本件発明1-5の「第1の表示欄」及び「第220
の表示欄」(構成要件1-5J)を充足せず,そうである以上,「第2の表示欄」を構
成要素とする「コメント表示部」(構成要件1-1D,1-2H,1-5J,1-6L)
も充足しないから,本件発明1-2,1-5及び1-6の技術的範囲に属するとは認
められない。
また,本件発明1-9及び1-10は,発明の対象が「プログラム」であるが,発25
明の対象を「表示装置」とする本件発明1-1及び1-2と対応するものである。し
たがって,被告ら各プログラムは,本件発明1-1及び1-2と同様に,「第1の表
示欄」(構成要件1-9B,1-9E)及び「第2の表示欄」(構成要件1-9E)を
充足せず,本件発明1-9を引用している本件発明1-10の構成要件1-10Hも
充足しないから,本件発明1-9及び1-10の技術的範囲に属するとは認められな
い。5
以上のとおりであるから,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件
発明1の技術的範囲に属するとは認められない。
⑵争点1-2⑴(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件発明2
の技術的範囲に属するか-被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,「前記コメント
配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サー10
バから送信されるコメント情報を受信」(構成要件2-1C,2-9B)を充足する
か)について
ア構成要件2-1Cは,「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント
情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,
前記コメント情報記録部に記憶する受信部と,」というものであるところ,コメント15
配信サーバは「複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ
配信する」ものであり,端末装置は「コメント配信サーバに接続され動画を再生する
とともに,前記動画上にコメントを表示する」ものであるから(構成要件2-1A),
構成要件2-1Cにおいて,コメント配信サーバがコメント情報を送信し,これを受
信するのは端末装置であると解される。そして,コメント配信サーバがコメント情報20
を送信するタイミングは,「コメント情報を受信する毎」であるから,構成要件2-
1Cは,コメント配信サーバが他の端末装置からコメント情報を受信すると,その都
度当該コメント情報を端末装置に送信し,当該端末装置もその都度これを受信するこ
とを規定したものと解される。
これに対し,原告は,構成要件2-1Cは,コメント配信サーバが端末装置からコ25
メント情報を受信するごとに,コメント情報がコメント配信サーバから送信されるこ
とを規定しているにすぎず,端末装置がコメント情報を受信するタイミングを規定し
たものではなく,端末装置がコメント情報を受信するタイミングは適宜に設計可能で
ある旨を主張する。
しかしながら,コメント配信サーバがコメント情報を送信する先は端末装置であり,
コメント配信サーバがコメント情報を送信するタイミングが他の端末装置からコメ5
ント情報を受信するごとであれば,コメント配信サーバと端末装置との間に情報伝達
を制御するような構成を示唆する記載も本件明細書2中に見当たらない以上,「コメ
ント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受
信」すると定められている文言は,端末装置がこれを受信するタイミングもそれと同
一であると解釈することが自然かつ合理的であり,これが適宜に設計可能であるとい10
うことはできない。
イ被告ら各サービスにおいて,コメント配信サーバが端末装置からコメント情報
を受信するごとにコメント情報を送信して被告ら各装置がこれを受信することを認
めるに足りる証拠はない。かえって,別紙被告らサービス説明書(被告)によれば,
被告ら各サービスは,被告ら各装置に動画データを送信する際に,その時点のコメン15
ト情報を送信するものであり,コメント配信サーバが端末装置からコメント情報を取
得するごとにコメント情報を送信し,被告ら各装置がこれを受信するものではないか
ら,被告ら各装置について,「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント
情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信」
(構成要件2-1C)する構成を充足することを認めるに足りる証拠はなく,本件発20
明2-1の技術的範囲に属するとは認められない。
そして,本件発明2-2は本件発明2-1を,本件発明2-3は本件発明2-1及
び2-2を引用している発明であるから,本件発明2-1で説示したのと同様に,被
告ら各装置は本件発明2-2及び2-3の技術的範囲に属するとは認められない。
また,本件発明2-9ないし2-11は,発明の対象が「プログラム」であるが,25
発明の対象を「表示装置」とする本件発明2-1ないし2-3と対応するものである。
したがって,被告ら各プログラムは,本件発明2-1ないし2-3と同様に,「前記
コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント
配信サーバから送信されるコメント情報を受信」(構成要件2-9B)する構成を充
足せず,本件発明2-9を引用している本件発明2-10の構成要件2-10H,本
件発明2-9及び本件発明2-10を引用している本件発明2-11の構成要件25
-11Lも充足しないから,本件発明2-9ないし2-11の技術的範囲に属すると
は認められない。
以上のとおりであるから,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件
発明2の技術的範囲に属するとは認められない。
4争点2(被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,本件発明2と均等なものと10
して,その技術的範囲に属するか)
⑴均等の要件について
特許請求の範囲に記載された構成に,相手方が製造等をする製品又は用いる方法
(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても,①同部分が特
許発明の本質的部分ではなく(第1要件),②同部分を対象製品等におけるものと置15
き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであ
って(第2要件),③上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等
の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件),④対象製品等
が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が当該出願時に容易に
推考できたものではなく(第4要件),かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続20
において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情も
ないとき(第5要件)は,同対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等
なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解される(最高裁平成6年(オ)
第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁,最高裁
平成28年(受)第1242号同29年3月24日第二小法廷判決・民集71巻3号25
359頁参照)。
⑵第1要件(非本質的部分)について
ア特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかっ
た技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基
づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,特許発明にお
ける本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に5
見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。そして,
上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,
特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明に係る特許請
求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部
分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成27年10
(ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決・判時2306号87頁参照。)。
イこれを本件についてみると,前記2⑶で説示したとおり,本件発明2は,複数
のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示
装置,コメント表示方法及びプログラムを提供することを目的とするものであって,
コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと重なるか否かを判定15
し,コメントが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置にコメント
を表示させるようにし,複数のコメントが表示される場合において,コメント同士が
動画上で重なってしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防止するこ
とができるようにするとともに,動画の再生中に他の端末装置から入力されたコメン
トをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変20
動させることにより,リアルタイムな双方向のコミュニケーションを可能にし,大人
数でコメントを交換する面白みを増加させる発明である。上記の「動画の再生中に他
の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,
そのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイムな双方向のコミ
ュニケーションを可能にする」という作用効果は,コメント配信サーバが端末装置か25
らコメント情報を受信してそれを送信するタイミングがリアルタイムに行われるこ
と,すなわち,構成要件2-1Cに規定されているように「前記コメント配信サーバ
が前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信
されるコメント情報を受信」との構成によって実現されているのであり,本件特許2
の出願経過においても,上記構成は,表示すべき文字情報があらかじめ決定されてい
る従来技術との比較において,「ユーザの端末装置から送信されるコメントを受信し5
て表示するものであり,コメントを受信する毎に,表示するコメントがダイナミック
に変動する点」が相違すると説明されている。そうすると,構成要件2-1Cは,動
画の再生中に他の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該
動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイ
ムな双方向のコミュニケーションを可能にする」という作用効果を奏する構成を具体10
的な構成として特定したものであり,この構成が従来技術にみられない特有の技術的
思想を構成する特徴的部分であり,本件発明2における本質的部分であるというべき
である。
ウ他方,前記のとおり,被告ら各装置は構成要件2-1Cを充足せず,被告ら各
プログラムは構成要件2-9Bを充足しないから,被告ら各装置及び被告ら各プログ15
ラムが本件発明2の本質的部分を備えているということはできず,本件発明2と被告
ら各装置及び被告ら各プログラムは本質的部分において相違すると認められる。
したがって,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,均等の第1要件(非本質的
部分)を充足しない。
⑶第5要件(特段の事情)について20
前記2⑵において認定したとおり,本件特許2の出願経過として,①特許庁審査官
は,平成22年11月24日を起案日とする拒絶理由通知書(乙24)において,出
願当初の特許請求の範囲請求項1ないし6及び8ないし12に係る各発明について,
特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨を通知し,②原告は,
平成23年1月31日付け手続補正書(乙25)において明細書を補正し,請求項125
に「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コ
メント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,前記コメント情報記憶部に
記憶する受信部と,」との構成を,請求項9に「前記コメント配信サーバが前記端末装
置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメン
ト情報を受信し,」との構成を付加して変更し,③特許庁審査官はこれに対して特許
査定をしたものである。5
上記の出願経過からすれば,原告は,拒絶理由を回避するために構成要件2-1C
及び構成要件2-9Bを備えた発明に限定して特許を受けたものといえるから,上記
構成要件の全部又は一部を備えない発明について,本件発明2の技術的範囲に属しな
いことを承認したか,少なくとも外形的にそのように解される行動をとったものと理
解することができる。10
したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第5
要件を充足しない。
⑷小括
以上によれば,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,少なくとも均等の第1要
件(非本質的部分)及び第5要件(特段の事情)を充足しないから,本件発明2と均15
等なものとして,その技術的範囲に属するものとは認められない。
5結論
以上のとおり,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件各発明の技
術的範囲に属さず,かつ,本件発明2と均等なものとしてその技術的範囲に属すると
いうこともできない。20
したがって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由
がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
山田真紀
裁判官5
伊藤清隆
裁判官10
棚橋知子
(別紙)
当事者目録
原告株式会社ドワンゴ
同訴訟代理人弁護士塩月秀平5
同宮川美津子
同根本浩
同髙梨義幸
同野呂悠登
同濱田慧10
同訴訟代理人弁理士綾聡平
同補佐人弁理士佐藤睦
同澤井光一
被告FC2,INC.15
(以下「被告FC2」という。)
同訴訟代理人弁護士髙橋淳
同壇俊光
同訴訟代理人弁理士中山俊彦
同補佐人弁理士陣野裕20
被告株式会社ホームページシステム
(以下「被告HPS」という。)
同訴訟代理人弁護士濱田佳志
同西村諭規庸25
(別紙)
被告ら装置目録
1別紙被告らプログラム目録記載1のプログラムがインストールされた情報処理
端末5
2別紙被告らプログラム目録記載2のプログラムがインストールされた情報処理
端末
3別紙被告らプログラム目録記載3のプログラムがインストールされた情報処理
端末
(別紙)
被告らプログラム目録
1下記ウェブサイトで提供されているインターネット上のコメント付き動画共有5
サービスにおいて,動画を表示する情報処理端末に配信されるコメント表示用プロ
グラム

アドレスhttp://以下略
タイトルFC2動画10
以上
2下記ウェブサイトで提供されているインターネット上のコメント付き動画共有
サービスにおいて,動画を表示する情報処理端末に配信されるコメント表示用プロ
グラム15

アドレスhttp://以下略
タイトルFC2SayMove!
以上
3下記ウェブサイトで提供されているインターネット上のコメント付き動画共有
サービスにおいて,動画を表示する情報処理端末に配信されるコメント表示用プロ
グラム

アドレスhttp://以下略25
タイトルFC2ひまわり動画
以上
(別紙)
被告らサービスの概要
1被告らサービス1
被告らサービス1とは,インターネット上において,下記ウェブサイト(以下「本5
件ウェブサイト1」という。)で提供されているコメント付動画共有サービスをい
う。

アドレスhttp://以下略
タイトルFC2動画10
以上
2被告らサービス2
被告らサービス2とは,インターネット上において,下記ウェブサイト(以下「本
件ウェブサイト2」という。)で提供されているコメント付動画共有サービスをい15
う。

アドレスhttp://以下略
タイトルFC2SayMove!
以上20
3被告らサービス3
被告らサービス3とは,インターネット上において,下記ウェブサイト(以下「本
件ウェブサイト3」という。)で提供されているコメント付動画共有サービスをい
う。25

アドレスhttp://以下略
タイトルFC2ひまわり動画
以上
(別紙)
本件特許1の特許公報添付略
(別紙)
本件特許2の特許公報添付略
(別紙)
被告らサービス説明書(原告)
1被告らサービス1の動作説明
⑴本件ウェブサイト1には,複数の動画のサムネイル及びリンクが表示されている5
ほか,ユーザは,「動画カテゴリ」や検索機能等を用いて,多数の動画の中から所望
の動画を見付けることができる(甲3,画像1)。
ここでは,被告らサービス1の一例として,被告らサービス1において配信され
ているコンテンツのうち,下記のアドレスを有するウェブページ(以下「本件検証
ページ1」という。)で提供される動画コンテンツ(以下「本件検証動画1」とい10
う。)を例として被告らサービス1の動作説明を行う。

アドレスhttp://以下略
動画タイトルsample01
以上15
⑵被告らサービス1は,以下のように動作する(甲3)。
ア本件ウェブサイト1において本件検証動画1のタイトルを用いて検索を行うと,
本件検証ページ1が表示される(甲3,画像2及び4)。本件検証ページ1が表示
される際に,本件検証動画1及び付随するコメント(以下「本件検証コメント1」
という。)を再生するための所定のプログラムファイルが,ユーザのコンピュータ20
にダウンロードされる(甲3,画像2ないし5)。
イ本件検証ページ1においては,ユーザのコンピュータ上で本件検証動画1が再
生されるとともに,本件検証動画1上に本件検証コメント1が画面右から左方向
へ移動しながら表示される(甲3,画像6ないし14)。
ウ本件検証ページ1においては,本件検証動画1は特定の領域(以下「本件動画表25
示欄1」という。)に表示され,本件検証動画1が表示される領域と表示されない
領域とが区別されている(甲3,画像6ないし14)。
エ本件検証コメント1は,いずれもあらかじめ決められた再生時間(当該動画の
最初からの経過時間)に表示が開始される(甲3,画像15及び16)。
オ本件検証コメント1は,本件動画表示欄1の内側及び外側に渡って移動しなが
ら表示される(甲3,画像6ないし14)。本件検証コメント1が表示される領域5
(以下「本件コメント表示欄1」という。)は,本件動画表示欄1とその一部の領
域が重なっており,本件コメント表示欄1のその他の領域が本件動画表示欄1の
外側に存在する(甲3,画像6)。また,本件検証コメント1は,移動表示される
際に,本件動画表示欄1及び本件コメント表示欄1にまたがって表示される(甲
3,画像6ないし14)。10
カ被告らサービス1においては,本件検証コメント1のうち,他のコメントと位
置が重ならないコメントは,縦方向の所定の位置に表示される(甲3,画像6ない
し14)。
他方,本件検証コメント1のうち,先に表示されるコメントの位置と後に表示
される他のコメントの位置が重なる場合には,これらのコメントの縦方向の位置15
が異なるように表示される(甲3,画像6ないし14)。
キ被告らサービス1においては,本件検証コメント1が本件コメント表示欄1に
表示される時間は約4秒である(甲3,画像6ないし14)。したがって,コメン
トの文字列の幅に関わらず,一定の表示時間で表示されるから,コメントの文字
列の幅が大きいほど,移動速度が速く表示される(甲3,画像6ないし14)。後20
から表示されたコメントが先に表示されたコメントに追いつく場合には,これら
のコメントは,縦方向の位置が異なるように表示される一方,追いつかない場合
には,縦方向の位置は同じになるように表示される(甲3,画像6ないし14)。
2被告らサービス2の動作説明25
⑴本件ウェブサイト2には,複数の動画のサムネイル及びリンクが表示されてい
るほか,ユーザは,「動画カテゴリ」や「ランキング」,検索機能等を用いて,多数
の動画の中から所望の動画を見付けることができる(甲4,画像1)。
ここでは,被告らサービス2の一例として,被告らサービス2において配信され
ているコンテンツのうち,下記のアドレスを有するウェブページ(以下「本件検証
ページ2」という。)で提供される動画コンテンツ(以下「本件検証動画2」とい5
う。)を例として被告らサービス2の動作説明を行う。

アドレスhttp://以下略
動画タイトルsample01
以上10
⑵被告らサービス2は,以下のように動作する(甲4)。
ア本件ウェブサイト2において本件検証動画2のタイトルを用いて検索を行うと,
本件検証ページ2が表示される(甲4,画像2及び4)。本件検証ページ2が表示さ
れる際に,本件検証動画2及び付随するコメント(以下「本件検証コメント2」と
いう。)を再生するための所定のプログラムファイルが,ユーザのコンピュータに15
ダウンロードされる(甲4,画像2ないし5)。
イ本件検証ページ2においては,ユーザのコンピュータ上で本件検証動画2が再生
されるとともに,本件検証動画2上に本件検証コメント2が画面右から左方向へ移
動しながら表示される(甲4,画像6ないし14)。
ウ本件検証ページ2においては,本件検証動画2は特定の領域(以下「本件動画表20
示欄2」という。)に表示され,本件検証動画2が表示される領域と表示されない領
域とが区別されている(甲4,画像6ないし14)。
エ本件検証コメント2は,いずれもあらかじめ決められた再生時間(当該動画の最
初からの経過時間)に表示が開始される(甲4,画像15)。
オ本件検証コメント2は,本件動画表示欄2の内側及び外側に渡って移動しながら25
表示される(甲4,画像6ないし14)。本件検証コメント2が表示される領域(以
下「本件コメント表示欄2」という。)は,本件動画表示欄2とその一部の領域が
重なっており,本件コメント表示欄2のその他の領域が本件動画表示欄2の外側に
存在する(甲4,画像6)。また,本件検証コメント2は,移動表示される際に,
本件動画表示欄2及び本件コメント表示欄2にまたがって表示される(甲4,画像
6ないし14)。5
カ被告らサービス2においては,本件検証コメント2のうち,他のコメントと位置
が重ならないコメントは,縦方向の所定の位置に表示される(甲4,画像6ないし
14)。
他方,本件検証コメント2のうち,先に表示されるコメントの位置と後に表示
される他のコメントの位置が重なる場合には,これらのコメントの縦方向の位置が10
異なるように表示される(甲4,画像6ないし14)。
キ被告らサービス2においては,本件検証コメント2が本件コメント表示欄2に
表示される時間は約4秒である(甲4,画像6ないし14)。したがって,コメン
トの文字列の幅に関わらず,一定の表示時間で表示されるから,コメントの文字
列の幅が大きいほど,移動速度が速く表示される(甲4,画像6ないし14)。後15
から表示されたコメントが先に表示されたコメントに追いつく場合には,これら
のコメントは,縦方向の位置が異なるように表示される一方,追いつかない場合
には,縦方向の位置は同じになるように表示される(甲4,画像6ないし14)。
3被告らサービス3の動作説明20
⑴本件ウェブサイト3には,複数の動画のサムネイル及びリンクが表示されてい
るほか,ユーザは,「ランキング」,「タグ一覧」,検索機能等を用いて,多数の動画
の中から所望の動画を見付けることができる(甲5,画像1)。
ここでは,被告らサービス3の一例として,被告らサービス3において配信さ
れているコンテンツのうち,下記のアドレスを有するウェブページ(以下「本件検25
証ページ3」という。)で提供される動画コンテンツ(以下「本件検証動画3」と
いう。)を例として被告らサービス3の動作説明を行う。

アドレスhttp://以下略
動画タイトルsample01
以上5
⑵被告らサービス3は,以下のように動作する(甲5)。
ア本件ウェブサイト3において本件検証動画3のタイトルを用いて検索を行うと,
本件検証ページ3が表示される(甲5,画像2及び4)。本件検証ページ3が表示さ
れる際に,本件検証動画3及び付随するコメント(以下「本件検証コメント3」と
いう。)を再生するための所定のプログラムファイルが,ユーザのコンピュータに10
ダウンロードされる(甲5,画像2ないし5)。
イ本件検証ページ3においては,ユーザのコンピュータ上で本件検証動画3が再生
されるとともに,本件検証動画3上に本件検証コメント3が画面右から左方向へ移
動しながら表示される(甲5,画像6ないし13)。
ウ本件検証ページ3においては,本件検証動画3は特定の領域(以下「本件動画表15
示欄3」という。)に表示され,本件検証動画3が表示される領域と表示されない領
域とが区別されている(甲5,画像6ないし13)。
エ本件検証コメント3は,いずれもあらかじめ決められた再生時間(当該動画の最
初からの経過時間)に表示が開始される(甲5,画像14)。
オ本件検証コメント3は,本件動画表示欄3の内側及び外側に渡って移動しながら20
表示される(甲5,画像6ないし13)。本件検証コメント3が表示される領域(以
下「本件コメント表示欄3」という。)は,本件動画表示欄3とその一部の領域が
重なっており,本件コメント表示欄3のその他の領域が本件動画表示欄3の外側に
存在する(甲5,画像6)。また,本件検証コメント3は,移動表示される際に,
本件動画表示欄3及び本件コメント表示欄3にまたがって表示される(甲5,画像25
6ないし13)。
カ被告らサービス3においては,本件検証コメント3のうち,他のコメントと位
置が重ならないコメントは,縦方向の所定の位置に表示される(甲5,画像6な
いし13)。
他方,本件検証コメント3のうち,先に表示されるコメントの位置と後に表示5
される他のコメントの位置が重なる場合には,これらのコメントの縦方向の位置
が異なるように表示される(甲5,画像6ないし13)。
キ被告らサービス3においては,本件検証コメント3が本件コメント表示欄3に
表示される時間は約4秒である(甲5,画像6ないし13)。したがって,コメ
ントの文字列の幅に関わらず,一定の表示時間で表示されるから,コメントの文10
字列の幅が大きいほど,移動速度が速く表示される(甲5,画像6ないし1
3)。後から表示されたコメントが先に表示されたコメントに追いつく場合に
は,これらのコメントは,縦方向の位置が異なるように表示される一方,追いつ
かない場合には,縦方向の位置は同じになるように表示される(甲5,画像6な
いし13)。15
(別紙)
被告らサービス説明書(被告ら)
1被告らサービス1の動作説明5
⑴本件ウェブサイト1には,複数の動画のサムネイル及びリンクが表示されてい
るほか,ユーザは,「動画カテゴリ」や検索機能を用いて,多数の動画の中から所
望の動画を見付けることができる。
ここでは,被告らサービス1の一例として,被告らサービス1において配信さ
れているコンテンツのうち,下記のアドレスを有するウェブページ(以下「本件10
検証ページ1」という。)で提供される動画コンテンツ(同一の動画についてアス
ペクト比を3種類に変化させたもの。以下,それぞれ,「サンプル動画1」,「サン
プル動画2」及び「サンプル動画3」といい,併せて「本件検証動画1」という。)
を例として被告らサービス1の動作説明を行う。
記15
アドレス:
http://以下略
http://以下略
http://以下略
動画タイトル:
sample640x392
sample16x9
sample4x3
⑵被告らサービス1は,以下のように動作する。
ア本件ウェブサイト1において本件検証動画1のタイトルを用いて検索を行うと,
検索結果の一覧ページが表示され,ユーザがクリックすることにより本件検証ペー
ジ1が表示される。
本件検証動画1及び付随するコメント(以下「本件検証コメント1」という。)
は,HTML5対応のブラウザがデフォルトで搭載するプレイヤ又は別途ブラウザに5
インストールされたADOBEFLASHPLAYERにより再生される。
本件ウェブサイト1からユーザのコンピュータにはJSファイル又はswfファイ
ルがダウンロードされる。
JSファイル又はswfファイルには,動画及びコメントに関する情報の取得をリ
クエストするようにブラウザに要求する命令が,格納されている。10
イ本件検証ページ1においては,ユーザのコンピュータ上で本件検証動画1が再生
されるとともに,本件検証動画1上に本件検証コメント1が右から左方向へ移動し
ながら表示される。
ウ本件検証ページ1においては,サンプル動画1は動画表示画面全体に表示される
(丙1の2頁及び3頁:画像2及び3)。そして,サンプル動画2及びサンプル動画15
3においても,表示される領域と表示されない領域とは区別されていない。これら
が区別されているようにユーザに見える理由は,サンプル動画2及びサンプル動画
3と動画表示画面のアスペクト比が一致していないため,映像が表示されない領域
が生じるためである(丙1の13頁~23頁:画像13~23及び丙1の24頁~
34頁:画像24~34)。20
エ本件検証コメント1は,いずれも予め決められた再生時間(当該動画の最初から
の経過時間)に表示が開始される。
オ本件検証コメント1は,動画表示画面の右側及び左側に渡って移動しながら表示
される(丙1の5頁~10頁:画像5~10)。
カ被告らサービス1においては,本件検証コメント1のうち,他のコメントと位置25
が重ならないコメントは,縦方向の所定の位置に表示される。
他方,本件検証コメント1のうち,先に表示されるコメントの位置と後に表示さ
れる他のコメントの位置が重なる場合には,これらのコメントの縦方向の位置が異
なるように表示される。
キ被告らサービス1においては,本件検証コメント1が本件コメント表示欄1に表
示される時間は約4秒である。したがって,コメントの文字列の幅に関わらず,一5
定の表示時間で表示されるから,コメントの文字列の幅が大きいほど,移動速度が
速く表示される。
後から表示されたコメント(以下,「後コメント」という。)が先に表示されたコメ
ント(以下,「先コメント」という。)の表示開始から4秒以上後に表示開始される
場合には,縦方向の位置は同じになるように表示される。10
これに対し,後コメントが先コメントの表示開始から4秒未満に表示開始される
と判定されるときには,後コメントが先コメントに追いつくか否かの判定を行い,
追いつくと判定される場合には,これらのコメントは,縦方向の位置が異なるよう
に表示される一方,追いつくと判定されない場合には,縦方向の位置は同じになる
ように表示される。15
2被告らサービス2の動作説明
⑴本件ウェブサイト2には,複数の動画のサムネイル及びリンクが表示されている
ほか,ユーザは,「動画カテゴリ」や「ランキング」,検索機能を用いて,他のサイ
トにおける多数の動画の中から所望の動画を見付けることができる。20
ここでは,被告らサービス2の一例として,被告らサービス2において配信され
ているコンテンツのうち,下記のアドレスを有するウェブページ(以下「本件検証
ページ2」という。)で提供される動画コンテンツ(以下,「本件検証動画2」とい
う。)を例として被告らサービス2の動作説明を行う。
記25
アドレス:
http://以下略
http://以下略
動画タイトル:
sample16x9
sample4x35
⑵被告らサービス2は,以下のように動作する。
ア本件ウェブサイト2において本件検証動画2のタイトルを用いて検索を行うと,
検索結果の一覧ページが表示され,ユーザがクリックすることにより本件検証ペー
ジ2が表示される。10
本件検証動画2及び付随するコメント(以下「本件検証コメント2」という。)
は,HTML5対応のブラウザがデフォルトで搭載するプレイヤ又は別途ブラウザに
インストールされたADOBEFLASHPLAYERにより再生される。
本件ウェブサイト1からユーザのコンピュータにはJSファイル又はswfファイ
ルがダウンロードされる。JSファイル又はswfファイルには,動画及びコメント15
に関する情報の取得をリクエストするようにブラウザに要求する命令が格納され
ている。
イ本件検証ページ2においては,ユーザのコンピュータ上で本件検証動画2が再生
されるとともに,本件検証動画2上に本件検証コメント2が右から左方向へ移動し
ながら表示される。20
ウ本件検証ページ2においては,サンプル動画2は動画表示画面全体に表示される
(丙2の1頁及び2頁:画像1及び2)。そして,サンプル動画3においても,それ
が表示される領域と表示されない領域とは区別されていない。これらが区別されて
いるようにユーザに見える理由は,サンプル動画3と動画表示画面のアスペクト比
が一致していないため,映像が表示されない領域が生じるためである(丙2の1125
頁~20頁:画像11~20)。
エ本件検証コメント2は,いずれも予め決められた再生時間(当該動画の最初から
の経過時間)に表示が開始される。
オ本件検証コメント2は,動画表示画面の右側及び左側に渡って移動しながら表示
される(丙2の3頁~8頁:画像3~8)。
カ被告らサービス2においては,本件検証コメント2のうち,他のコメントと位置5
が重ならないコメントは,縦方向の所定の位置に表示される。
他方,本件検証コメント2のうち,先に表示されるコメントの位置と後に表示さ
れる他のコメントの位置が重なる場合には,これらのコメントの縦方向の位置が異
なるように表示される。
キ被告らサービス2においては,本件検証コメント2が本件コメント表示欄2に表10
示される時間は約5秒である。したがって,コメントの文字列の幅に関わらず,一
定の表示時間で表示されるから,コメントの文字列の幅が大きいほど,移動速度が
速く表示される。後から表示されたコメント(以下,「後コメント」という。)が先
に表示されたコメント(以下,「先コメント」という。)の表示開始から5秒以上後
に表示開始される場合には,縦方向の位置は同じになるように表示される。15
これに対し,後コメントが先コメントの表示開始から5秒未満に表示開始される
と判定されるときには,後コメントが先コメントに追いつくか否かの判定を行い,
追いつくと判定される場合には,これらのコメントは,縦方向の位置が異なるよう
に表示される一方,追いつくと判定されない場合には,縦方向の位置は同じになる
ように表示される。20
3被告らサービス3の動作説明
⑴本件ウェブサイト3には,複数の動画のサムネイル及びリンクが表示されている
ほか,ユーザは,「ランキング」,「タグ一覧」,検索機能を用いて,他のサイトにお
ける多数の動画の中から所望の動画を見付けることができる。25
ここでは,被告らサービス3の一例として,被告らサービス3において配信され
ているコンテンツのうち,下記のアドレスを有するウェブページ(以下「本件検証
ページ3」という。)で提供される動画コンテンツ(以下「本件検証動画3」とい
う。)を例として被告らサービス3の動作説明を行う。

アドレス:5
http://以下略
http://以下略
動画タイトル:
sample16x9
sample4x310
⑵被告らサービス3は,以下のように動作する。
ア本件ウェブサイト3において本件検証動画3のタイトルを用いて検索を行うと,
本件検証ページ3が表示される。
本件検証動画2及び付随するコメント(以下「本件検証コメント2」という。)15
は,HTML5対応のブラウザがデフォルトで搭載するプレイヤ又は別途ブラウザに
インストールされたADOBEFLASHPLAYERにより再生される。
本件ウェブサイト1からユーザのコンピュータにはJSファイル又はswfファイ
ルがダウンロードされる。
JSファイル又はswfファイルには,動画及びコメントに関する情報の取得をリ20
クエストするようにブラウザに要求する命令が格納されている。
イ本件検証ページ3においては,ユーザのコンピュータ上で本件検証動画3が再生
されるとともに,本件検証動画3上に本件検証コメント3が右から左方向へ移動し
ながら表示される。
ウ本件検証ページ3においては,サンプル動画2は動画表示画面全体に表示される25
(丙3の1及び2頁:画像1及び2)。そして,サンプル動画3においても,それが
表示される領域と表示されない領域とは区別されていない。これらが区別されてい
るようにユーザに見える理由は,サンプル動画3と動画表示画面のアスペクト比が
一致しないからである(丙3の12頁~22頁:画像12~22)。
エ本件検証コメント3は,いずれも予め決められた再生時間(当該動画の最初から
の経過時間)に表示が開始される。5
オ本件検証コメント3は,動画表示画面の右側及び左側に渡って移動しながら表示
される(丙3の4頁~9頁:画像4~9)。
カ被告らサービス3においては,本件検証コメント3のうち,他のコメントと位置
が重ならないコメントは,縦方向の所定の位置に表示される。
他方,本件検証コメント3のうち,先に表示されるコメントの位置と後に表示さ10
れる他のコメントの位置が重なる場合には,これらのコメントの縦方向の位置が異
なるように表示される。
キ被告らサービス3においては,本件検証コメント3が本件領域3に表示される時
間は約5秒である。したがって,コメントの文字列の幅に関わらず,一定の表示時
間で表示されるから,コメントの文字列の幅が大きいほど,移動速度が速く表示さ15
れる。後から表示されたコメントが先に表示されたコメント(以下,「先コメント」
という。)の表示開始から5秒以上後に表示開始される場合には,縦方向の位置は
同じになるように表示される。
これに対し,後コメントが先コメントの表示開始から5秒未満に表示開始され
ると判定されるときには,後コメントが先コメントに追いつくか否かの判定を行20
い,追いつくと判定される場合には,これらのコメントは,縦方向の位置が異な
るように表示される一方,追いつくと判定されない場合には,縦方向の位置は同
じになるように表示される。
(別紙)
被告ら各装置を機能させるプログラム等の説明
本件明細書1の図面
本件明細書2の図面
添付略5
平成30年10月2日付け更正決定あり

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

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