弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 中労委昭和六一年(不再)第一八号、三七号事件について、中央労働委員会が
した昭和六三年三月二日付け命令を取り消す。
3 訴訟費用は、第一、二審を通じて、控訴人と被控訴人の間で生じた分は被控訴
人の負担とし、控訴人と被控訴人補助参加人らとの間で生じた分は同補助参加人ら
の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
主文第一項同旨
第二 当事者の主張及び証拠
原判決「事実」第二、第三及び当審証拠目録のとおりである。ただし、次のとおり
訂正する。
1 原判決三四頁四行目の「(二)」の次に「(1)」を加える。
2 同三四頁末行目の末尾に、次を加える。
「右仮処分命令を契機とした金員支払もまさに中間収入又はこれに準じたものに該
当する。」
3 同三五頁七行目の次に、次を加える。
「(2) 本件命令が維持した初審命令甲の主文第一項及び初審命令乙の主文第三
項は、控訴人に対し、一時金の支給が非組合員より遅延した期間について、一時金
相当額に対する年五分の割合による遅延損害金を補助参加人分会組合員に支払うよ
う命じているが、右各命令部分は違法である。すなわち、右は、不当労働行為の事
実上の救済を行う救済命令制度の枠を超えて、民事上の損害賠償によって補助参加
人らに対する私法上の救済を行うものである。また、損害賠償の各起算日を右のよ
うに定めるには、控訴人の不当労働行為がなければ、右両日に控訴人と補助参加人
らとの間で交渉が妥結して協定が締結されていたはずであるという事情を明確にす
るべきであるが、右各命令は、右の判断をしていない。」
4 同三六頁九行目の冒頭に「(一)」、三七頁一〇行目の「一九」の次に「条」
を加える。
5 同三九頁五行目の次に、次を加える。
「(二) 本件命令が維持した初審命令甲の主文第四項記載の陳謝文中、「当社団
が行った次の行為…(1)…貴組合員に対して不利益を与えるとともに貴組合に対
する支配介入を図ったこと。」、初審命令乙の主文第四項記載の陳謝文中、「当社
団が行った次の行為…(3)…貴組合員に対して不利益を与えるとともに貴組合に
対する支配介入を図ったこと。」の部分は、控訴人に対し、控訴人が、組合員に対
して不利益を与えるとともに、組合に対する支配介入を図ったことの自認表明を強
制するものである。これは、控訴人に対し、本件一時金の交渉が正当であるとの自
らの確信、思想を否定し、労働委員会の思想、見解を受け入れることを強制するも
のであるから、国家による特定思想の強制として、憲法一九条に違反する。」
6 同四二頁五行目の次に、次を加える。
「また、本件命令が、一時金相当額に対する年五分の割合による遅延損害金の支払
を命じたのは、一時金相当額のみでは原状回復措置として不十分であったためであ
る。私法上の損害賠償を命じた趣旨ではない。このような命令を発することは労働
委員会の裁量権の範囲内である。」
7 同四四頁末行目の次に、次を加える。
「また、「不利益取扱い」、「支配介入」といった言葉は、事実関係を抽象的に表
現したにすぎないから、それをしたことを表明するように命じたからといって、控
訴人に特定の思想を強制することにはならない。更に本件命令中の陳謝文を全体と
して見れば、「支配介入を図った不当労働行為であると認定されました。」との表
明を命じているにすぎず、控訴人に特定の思想、見解の自認を強制しているもので
はない。」
       理   由
一 原判決「理由」を引用する。ただし、次のとおり訂正する。
1 原判決一二〇頁五~八行目の「この場合…とになる。」を次のとおり改める。
「そもそも仮処分命令に基づく支払は、本案判決が出るまでの暫定的な仮払に過ぎ
ず、支払を命ずる本案判決の確定その他の理由により、右仮払が確定的な債務の弁
済となったというような特別の事情のない限り、中間収入又はこれに準じたものに
該当すると解することはできない。」
2 同一二一頁一行目の「なお」から四行目の末尾までを削除する。
3 同一二三頁五行目の次に、次を加える。
「また、控訴人は、本件命令が維持した初審命令甲の主文第一項及び初審命令乙の
主文第三項が、一時金の支給が非組合員より遅延した期間について、一時金相当額
に対する年五分の割合による遅延損害金を補助参加人分会組合員に支払うよう命じ
た部分は違法であるとし、右は、不当労働行為の事実上の救済を行う救済命令制度
の枠を超えて、民事上の損害賠償によって補助参加人らに対する私法上の救済を行
うものである。更に、損害賠償の起算日を右のように定めるには、控訴人の不当労
働行為がなければ、右両日に控訴人と補助参加人らとの間で交渉が妥結して協定が
締結されていたはずであるという事情を明確にするべきであるが、右各命令は右の
判断をしていない旨主張する。
 しかし、右年五分の割合の金員の法律的性質は、支払が遅延したことに対する民
事上の損害賠償ではなく、不当労働行為と認定された一時金支給を遅延させる行為
の組合活動一般に対する侵害的効果を除去するため、右支給遅延がなかったと同じ
事実上の状態を回復させるという趣旨を有しており(最高裁判所昭和六三年行ツ第
一〇二号平成二年三月六日第三小法廷判決参照)、原状回復の一態様とみるべきも
のである。したがって、右原状回復のための措置として被控訴人が発した右命令を
違法ということはできない。また、年五分の起算日を本件命令のように定めること
は、労働委員会の裁量権の範囲内の事柄である。」
4 同一二七頁二行目の冒頭に「1」を加える。
5 同一二九頁八行目の次に、次を加える。
「2 控訴人は、本件命令が維持した初審命令甲の主文第四項記載の陳謝文中、
「当社団が行った次の行為…(1)…貴組合員に対して不利益を与えるとともに貴
組合に対する支配介入を図ったこと。」、初審命令乙の主文第四項記載の陳謝文
中、「当社団が行った次の行為…(3)…貴組合員に対して不利益を与えるととも
に貴組合に対する支配介入を図ったこと。」の部分は、控訴人に対し、控訴人が、
組合員に対して不利益を与えるとともに、組合に対する支配介入を図ったことの自
認表明を強制するものであり、控訴人の、本件一時金の交渉が正当であるとの確
信、思想を否定し、労働委員会の思想、見解を受け入れることを強制する趣旨であ
るから、国家による特定思想の強制として、憲法一九条に違反する旨主張する。
 しかし、右各陳謝文の右控訴人の主張に関する部分は、同陳謝文の前文と対比し
て全体としてみると、労働委員会によって、組合員に対して不利益を与えるととも
に組合に対する支配介入を図ったものとして不当労働行為と認定された控訴人の行
為を陳謝する旨表明することを命じている趣旨であるとみるべきであり、控訴人が
内心において、不当労働行為であると自認することを強制する趣旨ではない。した
がって、右陳謝文が控訴人の思想、良心の自由を侵害するとする控訴人の主張は、
理由がない(なお、右命令は労働委員会の裁量権の範囲を逸脱するものではな
い。)。」
二 以上の理由により、原判決は相当であるから、民訴法三八四条により本件控訴
を棄却する。
訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法九五条、八九条適用。
(裁判官 武藤春光 吉原耕平 池田亮一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛