弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
被上告人は、上告人の申立てを受けた大阪地方裁判所執行官に対し、別紙記載一の
貸金庫内に存在する動産を別紙記載二の方法により引き渡せ。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。    
         理    由
 上告代理人中小路大の上告理由について
一 本件は、上告人において、被上告人が貸金庫契約に基づきDから「現金、株券
など有価証券、貴金属」(以下「本件動産」という。)を預かり保管中であると主
張し、Dに対する仮執行宣言付支払命令に基づく強制執行として、Dの被上告人に
対する所有権又は貸金庫契約に基づく本件動産の引渡請求権を差し押さえた上、被
上告人に対し、民事執行法(以下「法」という。)一六三条一項、一五七条に基づ
き、本件動産を上告人の申立てを受けた大阪地方裁判所執行官に引き渡すよう求め
ている取立訴訟である。
 原審の適法に確定した事実関係の概要及び記録によって認められる本件訴訟の経
過は、次のとおりである。
1 上告人は、Dに対し、第一審判決別紙請求債権目録に記載の請負代金債権等に
ついて仮執行宣言付支払命令を得ている。
2 被上告人E支店の貸金庫室内には、鍵のかかる保護函(キャビネット。以下、
これを「貸金庫」という。)が設置されている。Dは、被上告人との間で、別紙記
載一の貸金庫(以下「本件貸金庫」という。)について貸金庫契約を締結し、これ
を利用している。ただし、上告人と被上告人は、いずれも本件貸金庫に何が格納さ
れているかを知らない。
3 上告人は、平成六年六月一八日、大阪地方裁判所に対し、右仮執行宣言付支払
命令に基づく強制執行として、本件動産の引渡請求権の差押えを申し立てた。大阪
地方裁判所は、同年七月二〇日、本件動産の引渡請求権についての差押命令を発付
し、右差押命令は、同月二二日に被上告人に、同月二九日にDにそれぞれ送達され、
Dに送達された日から一週間が経過した。
4 そこで、上告人は、同年九月二八日、被上告人に対し、法一六三条一項、一五
七条に基づき、本件動産を上告人の申立てを受けた大阪地方裁判所執行官に引き渡
すよう求める本件取立訴訟を提起した。
5 Dと被上告人との間の貸金庫契約によれば、本件貸金庫の利用方法は次のとお
りである。
(一) 貸金庫には鍵穴が二つあり、一方には被上告人が保管専用するマスターキ
ーを用いる。もう一方の鍵穴に用いる鍵には正副二個があり、正鍵は利用者が保管
し、副鍵は、利用者が封印した上、被上告人が保管する。
(二) 貸金庫を利用しようとするときは、利用者は、被上告人店舗に備付けの「
貸金庫利用票」に所定の事項を記載し、記名の上、届出の印章により押印して、被
上告人に提出する。被上告人は、「貸金庫利用票」の記名及びこれに押なつされた
印影が届出の氏名及び印鑑と相違ないことを確認した上、貸金庫室に利用者を入室
させる。
(三) 貸金庫の開扉は、被上告人がマスターキーを一方の鍵穴に差し込み、利用
者が自己保管の鍵を他の鍵穴に差し込むことによって行う。マスターキーは、貸金
庫を二重に施錠するためのものであり、利用者保管の鍵と併せて使用しないと貸金
庫を開扉することができない。利用者は、貸金庫から物品を格納した専用容器(収
納箱)を取り出し、貸金庫室内の所定の場所に運んで内容物の出し入れをする。被
上告人は、内容物の出し入れには立ち会わない。
(四) 貸金庫の閉扉は利用者保管の鍵のみによって行い、被上告人はこれに関与
しない。
(五) 法令の定めるところにより貸金庫の開扉を求められたとき、又は店舗の火
災、格納品の異変等、緊急を要するときは、被上告人は、副鍵を使用して貸金庫を
開扉し、臨機の処置をすることができる。
二 原審は、次のとおり判示して、上告人の本件請求をいずれも棄却すべきものと
した。
1 貸金庫契約の法律上の性質は当該貸金庫の場所(空間)の賃貸借であるが、被
上告人は、貸金庫を自己の管理に係る貸金庫室内に設置することにより、貸金庫の
ほか、その内容物についても、利用者と重畳的に包括的な占有を有している。
2 したがって、利用者の債権者が被上告人に貸金庫の内容物の提出を求めたのに
対し、被上告人がこれを拒否したときは、債権者は、利用者の被上告人に対する動
産引渡請求権の差押えを申し立て、更には、その取立訴訟を提起することができる
ものと解される。
3 ところで、Dの被上告人に対する本件動産の引渡請求権は、それが所有権又は
貸金庫契約のいずれに基づくものであっても、Dの被上告人に対する実体法上の権
利に基づく個別的な物の引渡請求権であるから、本件取立訴訟において上告人の請
求を認容するためには、少なくとも、具体的な個々の本件動産が本件貸金庫内に現
実に存在していることが主張立証されなければならない。
4 しかし、本件においては、本件貸金庫内に本件動産が存在するかどうか自体が
不明であって、その存在の立証がない。したがって、Dの被上告人に対する本件動
産の引渡請求権を肯定することはできない。
三 しかしながら、原審の判断のうち、本件動産が本件貸金庫内に存在するかどう
かが不明であることをもってDの被上告人に対する本件動産の引渡請求権を否定し
た部分は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
1 銀行と利用者との間の貸金庫取引は、銀行の付随業務である保護預り(銀行法
一〇条二項一〇号)の一形態であって、銀行が、貸金庫室内に備え付けられた貸金
庫ないし貸金庫内の空間を利用者に貸与し、有価証券、貴金属等の物品を格納する
ために利用させるものである。そして、前記一2、5の事実によれば、本件のよう
な貸金庫取引においては、貸金庫は銀行の管理する施設内に設置され、銀行がその
保管専用するマスターキーによる施錠を解かなければ、利用者は貸金庫を開扉する
ことができず、また、銀行は、所定の手続を履践しない利用者に対して、貸金庫室
への立入りや貸金庫の開扉を拒むことができるものと解され、利用者としては、銀
行の協力なくして貸金庫に格納された内容物を取り出すことができない。これらの
点にかんがみると、銀行は、貸金庫の内容物に事実上の支配を及ぼしており、その
「所持」(民法一八〇条)を有することが明らかである。また、銀行は、業務とし
て貸金庫取引を行うものであり、貸金庫の安全保持を通じてその内容物を安全に保
管する責任を負っているから、「自己ノ為メニスル意思」(同条)を持って貸金庫
の内容物を所持していることも肯定することができる。したがって、銀行は、貸金
庫の内容物について、利用者と共同して民法上の占有を有するものというべきであ
る。
 もっとも、銀行は、貸金庫契約上、緊急を要する場合等を除き、貸金庫の開扉に
際してマスターキーによる施錠を解いた後は、貸金庫の開閉や内容物の出し入れに
は関与せず、したがって、利用者が何を貸金庫に格納し又は取り出したかを知らず、
貸金庫に実際に物品が格納されているか否かも知り得る立場にはない。このような
貸金庫取引の特質から考えると、貸金庫の内容物に対する銀行の前記占有は、貸金
庫に格納された有価証券、貴金属等の各物品について個別的に成立するものではな
く、貸金庫の内容物全体につき一個の包括的な占有として成立するものと解するの
が相当である。
2 そして、利用者は、貸金庫契約に基づいて、銀行に対し、貸金庫室への立入り
及び貸金庫の開扉に協力すべきことを請求することができ、銀行がこれに応じて利
用者が貸金庫を開扉できる状態にすることにより、銀行は内容物に対する事実上の
支配を失い、それが全面的に利用者に移転する。そうすると、銀行に対し、貸金庫
契約の定めるところにより、利用者が内容物を取り出すことのできる状態にするよ
う請求する利用者の権利は、内容物の引渡しを求める権利にほかならない。また、
1に述べたところからすれば、この引渡請求権は、貸金庫の内容物全体を一括して
引き渡すことを請求する権利という性質を有するものというべきである。
3 以上によれば、【要旨第一】貸金庫の内容物については、法一四三条に基づい
て利用者の銀行に対する貸金庫契約上の内容物引渡請求権を差し押さえる方法によ
り、強制執行をすることができるものと解される。
4 ところで、貸金庫の内容物引渡請求権が差し押さえられると、法一六三条によ
り、債権者の申立てを受けた執行官において、貸金庫の内容物の引渡しを受け、こ
れを売却し、その売得金を執行裁判所に提出することになる。もっとも、貸金庫の
内容物についての貸金庫契約上の引渡請求権は、前記のとおり、貸金庫の内容物全
体を対象とする一括引渡請求権であるため、これが差し押さえられると、差押禁止
物や換価価値のない物を含めて貸金庫内に在る動産全体の引渡請求権に差押えの効
力が及ぶ。この場合には、執行官をして、貸金庫の内容物全体の一括引渡しを受け
させた上、売却可能性を有する動産の選別をさせるのが相当であり、このように解
することは、引渡請求権の対象である動産の受領及び売却について執行官を執行補
助機関として関与させた法一六三条の趣旨にもかなうものである。なお、債権者に
おいて特定の種類の動産に限定して引渡請求権の差押命令を申し立てた場合、その
趣旨は、執行裁判所に対して売得金の配当を求める動産の範囲を限定するものと解
するのが相当である。そして、差押命令においてこのような限定が付された場合に
は、執行官が売却可能な動産を選別するに当たってこの制限に服すべきものである
が、このことにより、既に説示した貸金庫の内容物全体についての一括引渡請求権
という性質が変わるものではない。
 そうすると、貸金庫契約に基づく引渡請求権の差押えにおいては、貸金庫を特定
することによって引渡請求権を特定することができる。さらに、【要旨第二】差押
命令に基づく動産の引渡しが任意にされない場合の取立訴訟においても、差押債権
者は、貸金庫を特定し、それについて貸金庫契約が締結されていることを立証すれ
ば足り、貸金庫内の個々の動産を特定してその存在を立証する必要はないものとい
うべきである。
5 これを本件について見るに、前記一2の事実によれば、Dは、被上告人との間
で本件貸金庫について貸金庫契約を締結しているから、被上告人に対し、別紙記載
二の方法により本件貸金庫の内容物全体を引き渡すよう求める一括引渡請求権を有
していることが明らかである。したがって、上告人は、Dに対する仮執行宣言付支
払命令に基づく強制執行として、右引渡請求権を差し押さえることができ、引渡請
求権の特定にも欠けるところがない。そして、上告人は、Dに対して右引渡請求権
の差押命令が送達された日から一週間を経過したことにより、本件貸金庫の内容物
を執行官に引き渡すよう求める権利を取得したものである(法一六三条一項)。な
お、本件の差押命令においては、対象動産が「現金、株券など有価証券、貴金属」
(本件動産)に限定されているから、執行官が売却可能な動産を選別するに当たっ
てこの制限に服すべきことは、前記のとおりである。
 右に説示したところによれば、上告人の本件請求のうち、Dと被上告人との間の
貸金庫契約に基づき、別紙記載一の貸金庫(本件貸金庫)内に存在する動産を別紙
記載二の方法により執行官に引き渡すよう求める請求は、理由がある。
四 以上と異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法
は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は右の趣旨をいうものと
して理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に説示したとおり、上告
人の貸金庫契約に基づく本件請求は理由があるから、第一審判決を取り消した上、
右請求を認容することとする。
 よって、裁判官北川弘治の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり判決する。
 裁判官北川弘治の補足意見は、次のとおりである。
 私は、法廷意見の法律構成について若干説明を付加するほか、銀行に対する貸金
庫契約上の引渡請求権が差し押さえられた後における銀行及び執行官の実務上の対
応等について、補足して意見を述べておくこととしたい。
一 銀行に対する貸金庫契約上の引渡請求権の性質について
 1 上告人は、差押えの対象として所有権に基づく引渡請求権と貸金庫契約に基
づく引渡請求権とを選択的に主張しているところ、法廷意見は、後者の貸金庫契約
に基づく内容物引渡請求権を差し押さえる方法により強制執行をすることができる
と判断したものである。この契約上の引渡請求権は、以下に述べるとおり、(1)
 銀行に対し、利用者自らが貸金庫契約所定の利用方法に従って内容物を取り出し
得る状態にするよう求める権利であること、(2) 貸金庫の内容物全体を一括し
て引き渡すように求める一個の権利であること、の二点において貸金庫取引の特質
を反映したものである。
2 貸金庫契約上、利用者は、銀行に対し、貸金庫室への立入り及び貸金庫の開扉
に協力すべきことを求めることができ、貸金庫を開扉した後、貸金庫室内の所定の
場所で自ら内容物の出し入れをするものとされている。そして、銀行は、貸金庫に
格納されている内容物に対して事実上の支配を及ぼしているが、利用者の請求に応
じて、利用者が貸金庫を開扉できる状態にすることにより、内容物に対する支配を
失い、利用者のみが内容物を支配する状態になる。そうすると、貸金庫契約所定の
利用方法により利用者が内容物を取り出し得るようにする銀行の一連の行為は、そ
の実質において、内容物に対する銀行の支配を全面的に利用者に移転するものであ
り、これをもって法的には「内容物の引渡し」と評価することができる。したがっ
て、例えば、銀行が正当な理由がないのに貸金庫の開扉に協力しないため内容物を
取り出すことができない場合には、利用者は、銀行に対し、貸金庫の開扉への協力
等の作為を求めることができるにとどまらず、端的に、右の約定の利用方法による
「内容物の引渡し」を請求することができる。
 このように、利用者の銀行に対する貸金庫契約上の内容物引渡請求権は、利用者
自らが貸金庫を開扉して内容物を取り出すという約定の利用方法による引渡しを求
める権利であって、利用者は、それ以上に、銀行に対して貸金庫から内容物を取り
出して交付すべきことを請求し得るものではない。なお、この趣旨を明らかにする
ために、差押命令申立書及び差押命令の差し押さえるべき債権(被差押債権)の表
示並びに取立訴訟の判決の主文においては、右引渡しの方法を明らかにしておくこ
とが相当である。
3 また、銀行は、貸金庫契約及びその取引の実態において、マスターキーによる
施錠を解くほかは貸金庫の開閉等に直接関与しておらず、その内容物を知り得る立
場にはない(いわゆる貸金庫取引の秘匿性)。それにもかかわらず、銀行が特定の
内容物の引渡義務を負うとなると、銀行としては、貸金庫を開扉して、動産の存否
の確認、選別をする必要が生じ、貸金庫契約上の義務を超える責任を負担すること
になりかねない。したがって、利用者は、銀行に対し、貸金庫契約上、貸金庫に格
納されている個々の内容物について引渡請求権を有するものではなく、特定の内容
物を対象として引渡しを請求することはできないものと解される。右のような貸金
庫契約及びその取引の実態からすれば、利用者の銀行に対する引渡請求権は、貸金
庫の内容物全体についての一括引渡請求権と見るのが相当である。
 したがって、債権者としては、本来、差し押さえるべき債権を特定するについて
は、引渡請求権の差押命令を申し立てる段階においてはもとより、取立訴訟を提起
する段階においても、内容物の種類、数量等を表示する必要はなく、貸金庫を特定
すれば足りる。貸金庫には、実印、遺言書等、動産執行の対象とならない差押禁止
物や換価価値のない物が格納されていることが少なくないであろうが、このような
差押禁止物等の選別は、動産の引渡しを受けるべき執行官(法一六三条一項)にお
いて行うこととなる。この点に関し、引渡請求権の対象が差押禁止動産(法一三一
条)に当たるときは、そもそも当該動産の引渡請求権を差し押さえることができな
いと解されているが、貸金庫の内容物引渡請求権が内容物全体についての一括引渡
請求権という性質を有するものであることに加えて、動産引渡請求権の差押えが動
産自体を換価するための準備手続という実質を有することを考慮すると、執行官が
動産の引渡しを受ける段階で動産執行の規制を及ぼすことも許されるというべきで
ある。
 また、本件のように、債権者が「現金、株券など有価証券、貴金属」というよう
に対象動産を特定表示して引渡請求権の差押命令を申し立て、同命令が発付された
場合であっても、差押えの対象となるのは、飽くまで貸金庫の内容物全体について
の一括引渡請求権である。この「現金、株券など有価証券、貴金属」という特定は、
債権者が自主的に売得金の配当を求める対象を限定したものであり、差押命令に付
された同旨の限定は、法一六三条に基づき動産引渡請求権の執行を補助する執行官
に向けられたものである。したがって、債権者は、自ら特定表示した個々の内容物
の存在を立証する必要はなく、銀行も、これらの存否を確認する義務を負担するも
のではない。
二 引渡請求権の差押えがされた後の銀行及び執行官の対応について
 1 銀行(第三債務者)は、差押命令の送達を受けると、利用者(債務者)に対
して貸金庫の内容物を引き渡すことが禁止される(法一四五条一項)。差押命令に
おいて「現金、株券など有価証券、貴金属」というように対象動産が特定表示され
ている場合であっても、同様に、差押えの効力は貸金庫の内容物全体についての引
渡請求権に及んでいるから、銀行が独自の判断でそれ以外の動産を利用者が取り出
し得る状態にすることはできない。
2 差押債権者は、利用者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過した
ときは、銀行に対し、貸金庫の内容物を任意に差押債権者の申立てを受けた執行官
に引き渡すよう請求することができる(法一六三条一項)。銀行は、貸金庫室を開
けて執行官が貸金庫室内に立ち入ることを受忍するとともに、貸金庫の副鍵(利用
者が封印したままの状態のもの)を交付し、マスターキーによる施錠を解いて、執
行官が右貸金庫内に在る動産を取り出すことができる状態にすることをもって、内
容物の引渡義務を履行したことになる。貸金庫からの内容物の取り出し自体は、執
行官が行うのであり、銀行は、これに関与する必要はない。執行官は、調書を作成
する等の方法により、引渡しを受けた動産の種類、数量等を明確にすべきである。
3 銀行が任意に引渡しをしない場合において、これを強制するには、銀行に対す
る取立訴訟(法一五七条)を提起して、貸金庫の内容物を執行官に引き渡すよう命
ずる債務名義を得なければならない。右債務名義を得た差押債権者は、法一六九条
による動産の引渡しの強制執行を申し立て、銀行に対して右引渡義務の履行を強制
することができる。動産の引渡しの強制執行の申立てを受けた執行官は、必要な場
合には、技術者を同行して貸金庫室等を開錠する(法一六九条二項、一二三条二項)。
右執行官は、動産の引渡しを受けるべき執行官が貸金庫の内容物を取り出すことが
できる状態にする。動産の引渡しの強制執行を行う執行官と動産の引渡しを受ける
べき執行官とは、理論上は区別されるものであるが、両者を兼ねることができ、実
際上は同一人であることが多いであろう。
4 そして、銀行から任意に又は法一六九条による強制執行に基づき、貸金庫の内
容物一切の引渡しを受けた執行官は、前記のとおり、貸金庫室内において売却可能
な動産を選別して受領し(差押命令において対象動産が限定されているときは、当
該動産のみを選別して受領する。)、これ以外の動産を貸金庫内に返戻することに
より、当該動産については引渡請求権の差押えによる拘束を解かれる。その後、動
産を受領した執行官は、動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金が
執行裁判所に提出されることになる(法一六三条二項)。
5 ところで、銀行は、従来、動産の差押え(法一二四条)、あるいは、引渡請求
権の差押えに基づく動産の引渡請求(法一六三条一項)に任意に協力しないことが
多かった。その根拠として、通常、銀行は利用者に対していわゆる善管注意義務を
負っているから、その同意なくして強制執行に協力した場合には、利用者に対する
債務不履行になるという説明がされる。しかし、引渡請求権が差し押さえられた場
合に任意に貸金庫を開扉する行為が債務不履行にならないことはもとより、そもそ
も、任意に動産執行に応じて貸金庫の内容物を提出したとしても、社会的に許容さ
れる行為として違法性を欠き、利用者に対する債務不履行となる余地はないものと
いうべきである。本件貸金庫規定の一二条には、「法令の定めるところにより貸金
庫の開庫を求められたとき」には銀行が副鍵を使用して貸金庫を開扉するとの約定
があるが、これには、国税徴収法や刑事訴訟法による場合のみならず、動産執行を
含む民事執行法に基づく強制執行も含まれるものと解するのが相当である。
 貸金庫の内容物については、その引渡請求権を差し押さえる方法により強制執行
のできることは法廷意見のとおりであるが、本来は、動産執行(法一二四条)の方
法によるべきものであろう。銀行が貸金庫の内容物について占有を有するといって
も、それは利用者のために内容物を安全に保管する手段であって、占有自体に銀行
独自の利益があるわけではない。したがって、銀行としては、動産執行に際しては、
その占有を放棄し、利用者に内容物を引き渡すのと同じ方法(約定の利用方法)で
これを執行官に提出すればよいのである。本件のように内容物の引渡請求権に対す
る強制執行の方法による場合には、関係者にとって時間と費用が掛かるのみならず、
銀行実務の上でも、一括引渡請求権の差押えに伴う種々の困難な問題が生ずるもの
と推察される。現在は、銀行が任意の提出に応じないために、この動産執行の方法
によることが妨げられているが、右のとおり、この銀行の対応は、法律上の根拠を
欠くものであって、是正されるべきものであろう。
三 他の種類の貸金庫について
 本件に関連し、他の種類の貸金庫における同種の問題について付言をしておくこ
ととしたい。貸金庫には、その開閉手順の違い、銀行の関与の程度等によって幾つ
かの種類がある。主要なものとしては、(1) 本件のようないわゆる従来型貸金
庫のほか、(2) マスターキーを使用せず、利用者が、その都度銀行から貸金庫
室利用カードの交付を受け、右カードを使用して貸金庫室を開けた上、正鍵のみを
使用して貸金庫を開扉するもの、(3) 利用者が、あらかじめ銀行に暗証番号を
届け出て、貸金庫カードと正鍵の交付を受け、貸金庫室に入室して貸金庫を開扉す
るもの、があるとされている。このうち、(2)の種類の貸金庫については、もと
より法廷意見が従来型貸金庫について述べたことが妥当するであろう。また、(3)
のいわゆる全自動型貸金庫についても、銀行の関与の程度は減るものの、貸金庫が
銀行の管理する施設内に存在している以上、なお銀行の事実上の支配が及んでいる
として、銀行の所持、さらには、民法上の占有を肯定して差し支えないものと考え
られる。銀行の引渡しの方法は、個々の貸金庫契約の内容に応じて定まる。
(裁判長裁判官 北川弘治 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄)
(別紙)
一 貸金庫の表示
 被上告人E支店の貸金庫室内に存するDとの貸金庫契約に係る貸金庫
二 引渡方法の表示
 右貸金庫室に執行官を入室させた上、貸金庫契約の定めるところにより、執行官
が貸金庫内に在る動産を取り出すことができる状態にする方法

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