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裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
この判決に対する上告についての附加期間を九〇日と定める。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
 控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し金九億四七五〇円及び
これに対する昭和五二年七月五日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を
求め、なお、右金員の支払いを求める部分以外の訴えを、当審において取り下げ
た。
 被控訴人は、主文第一、二項同旨の判決を求めた。
第二 当事者の主張
 当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正、変更するほかは原判決事実摘示の
とおりであるから、ここにこれを引用する。
一 原判決二枚目裏一〇行目ないし三枚目表一行目を次のとおり変更する。
1 控訴人は、昭和五五年九月一〇日存続期間の満了によつて消滅した次の特許権
(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件特許発明」という。)の特許
権者であつた。
二 同七枚目表二行目の「被告の使用している」を「後記の合併による解散前被控
訴人であつた旭ダウ株式会社(以下「解散会社」という。)の使用していた」と、
同七枚目表末行から同裏一行目及び同裏八行目から同九行目の各「被告の使用して
いる」を「解散会社の使用していた」と、同裏一行目から同二行目の「訴外旭化成
工業株式会社」、同裏二行目から同三行目の「同訴外会社」及び同裏九行目の「右
旭化成工業株式会社」をいずれも「被控訴人」と、同八枚目表二行目、同七行目、
同一〇行目から同一一行目、同裏三行目及び同九行目の各「被告」を「解散会社」
と、同八枚目表四行目の「している。」を「していた。」と、同裏四行目から同五
行目の「義務がある。」を「義務があるところ、昭和五八年七月八日、被控訴人は
解散会社を合併したので、被控訴人において右不当利得返還義務を承継した。」と
それぞれ訂正し、同八枚目裏九行目の「したがつて」の次に「、被控訴人におい
て」と付加し、同九枚目表四行目の「本件特許権」から同八行目の「廃棄並びに」
までを削除する。
三 同一四枚目表三行目、同一九枚目表三行目、同二一枚目裏一行目から同二行
目、同一〇行目から一一行目、同二三枚目裏九行目、同二四枚目表一行目から二行
目、同三行目、同九行目及び同裏三行目の各「被告の使用している」を「解散会社
の使用していた」と、同一四枚目表六行目の「被告」を「解散会社」と、同二四枚
目表四行目から同五行目の「訴外旭化成工業株式会社」を「被控訴人」とそれぞれ
訂正する。
四 同二九枚目裏七行目の「被告方法において使用されている」並びに同三一枚目
裏一〇行目から同一一行目、同三二枚目表六行目から七行目、同三三枚目裏一〇行
目、同三四枚目表一行目、同一〇行目から一一行目及び同裏三行目から同四行目の
各「被告の使用している」をいずれも「解散会社の使用していた」と、同三二枚目
表一行目の「被告」を「解散会社」とそれぞれ訂正する。
五 控訴人の補足した主張
 特定のポリブタジエンをとらえてこれを分析する場合、分析法を特定しないと結
果が異なるという理由が成立するためには次の前提が必要である。
(イ) 分析法が異なれば結果は必ず異なり、その異なり方は分析法によつて一定
の相違が現れ、これを矯正する手段がない。
(ロ) 特定の分析法を使用する限り結果は必ず同じである。したがつて、客観的
数値はともかく前後の同定は可能である。
 しかし、本件訴訟においては第一に分析法の相違で必ず一定の差が出るというこ
とは立証されていない。
 被控訴人は、いわゆる吸光係数決定法と文献値吸光係数借用法の二つに赤外法を
大別することができるという。しかし借用法については、巻尺、三角法等で距離を
測る正統な方法に対して、人が歩数でおよその距離を測ることや、目測で測ること
もあるからそれも測定法の一つに入るというのと同じことであり、確かにそれは存
在するけれども、正確な分析法として二つに大別されるうちの一つというような種
類のものではない。そしてしかもこの場合、被控訴人の主張は特定人の歩幅によら
ず、ある人の歩幅とそれと別の人の歩数だけを掛合わせて一〇〇歩は一〇〇メート
ルというがごときのもので、到底正当な意味での測定法とはいえないのである。
 さらにNMRはすでに本件特許出願当時存在したのであり、又これをポリマーの
分析に用いたことも知られている。そのためたとえNMRを使つて分析した報告が
文献になかつたとしても、これを単独又は赤外法と併用して用いることが可能であ
ることは当時すでにわかつていたことである。いずれにしてもこのビニル含量の問
題は現在における事実確認の問題であり、いかなる手段を用いようと最も正確な手
段により確認することが正しい態度であつて、これを排斥するのは根本的に誤つて
いる。
 解散会社の使用していたポリブタジエンを分析するについては事実確認の問題と
して信頼できる方法を用いればよいのであり、それは本件特許出願当時の分析法に
限られるものではない。このことは他の技術的な問題でも事実が問題になり、ある
物資の状態、組成その他が問題になつた場合、分析や学識経験者の鑑定を得る場合
にその学識経験者は最新の知識を駆使してその事実を確定するのと同じであり、か
ような事実の確定は過去の時における分析法に限定される理由は見当らないのであ
る。
 被控訴人は同一の吸光係数を用いることをもつて同一の方法としている。これは
全く科学常識に反する見解である。そして被控訴人は【A】、【B】、【C】、
【D】及び【E】によつて報告された分析は異なつた分析方法であるとしている。
これらは、本件特許出願前のポリブタジエンの分析に関する主要な文献発表であ
る。しかしこれらは基本的に同一の標準的赤外方法である。操作上の及び計算上の
技法においていくらかの異なつた点はあるけれども、すべてこれらは最初に吸光係
数を決定するために使用される分光器を最初に検定し、そして分析を行つたという
点においてすべて基本的に同一なのであり、操作技法においていくらか異なつた点
があつてももし誤差を適当に補正するならば原則的には結果は同一になるはずなの
である。
 これに対して例えば【E】の文献に報告されている分析方法、すなわち標準的赤
外方法と、被控訴人のいわゆる「モレロ法」(すなわち、【E】の文献に報告され
ている吸光係数を借用することによる分析)とは全く異なつたものである。
 控訴人はこれら借用法をもつて科学的な分析方法とは考えていないものである。
 特定の波長における吸光係数はその特定の分光器においてのみ当てはまるもので
ある。現在【E】の手法を行うことはできても、【E】が二〇年以前に行つたと全
く同一の条件の下に分析を行うことはできない。特に同一の分光器を用いることは
できない。
六 被控訴人の補足した主張
(一) 本件特許の出願当時の明細書(乙第七号証)によれば、出願人は、シス約
八〇%、トランス八%、及びビニル五%の高シス1・4ポリブタジエンを用いた場
合、GRーS(スチレン、ブタジエン共重合体)を用いた場合に比較してポリスチ
レンの耐衝撃性の改良効果が高いことを実験的に見出し、この事実を唯一の実験的
基礎として明細書を作り上げたものである(したがつて(シス二五~九五%、トラ
ンス〇・五~七〇%、一~一〇ビニルという記載は(単なるスペキユレーシヨンで
ある)。
 元来ゴムの存在下においてスチレンを重合し、耐衝撃性の改良されたポリスチレ
ンを製造することは公知であり(乙第一号証)、かかるゴムとしてポリブタジエン
を使用し得ることも公知であつた(乙第一号証)が、シス成分を二三%以上含むポ
リブタジエンは、リチウム系触媒によるポリブタジエンや(例えば一九五九年八月
六日公表の乙第一〇号証添付A)、チーグラー触媒によるポリブタジエン(例えば
一九五七年四月一七日公表の乙第二八号証)が発表される迄は何人も入手不能であ
り、当然、この種のポリブタジエンを用いてその耐衝撃性改良効果を確認する者は
存在しなかつた。しかし、いつたん、かかるポリブタジエンが発表されると、これ
を用いての耐衝撃改良効果を試してみることはポリスチレン業界の当業者一般が当
然行うことであつた。
 本件特許の先願であるシエルの出願(乙第三一号証の一)、及びデイストレエン
の出願(乙第三二号証の一)はその例である。
 本件特許は、甲第三号証にみられるように、乙第七号証の明細書につき、あるい
は実施例四を追加し、あるいはクレームを減縮(シスを九〇%以下と限定しかつビ
ニルも一〇%以下と限定)するなどの補正を加えて、これら先願の網をくぐり抜け
て成立したものである。したがつて、一〇%以下というビニル含量の限定は「臨界
的」(出願人の意見書中の用語、乙第一七号証)な意義を有する重要な限定であ
る。
 ところが、控訴人は、事実の問題としてこの限定がいかなる分析法によつて見出
した数値であるかについて何ら主張していない。本件特許に対応する英国特許第一
〇〇二九〇一号明細書(乙第八号証)によれば「標準的な赤外法によつて決定する
ことができる」というのであるが、更に具体的にどのような手順で分析して得た数
値であるかについては、主張がないのである。
 これは、奇怪なことといわなければならない。最初の明細書に具体的に記載され
た唯一のポリブタジエンが「シス約八〇%、トランス八%、及びビニル五%」であ
ると判定した根拠、並びに後に追加された実施例四のフアイヤーストン製のジエン
35NFが「七・八%のビニル含有量と三五・九%のシス含有量とを有する」と判
定した根拠がない筈はないのであつて、事実の問題として、そのような判定がどの
ようにしてなされたかは当然主張し得る筋合であるからである。にもかかわらず、
その主張がないということは、事実が明らかになると、クレームの数値は分析法に
無関係の、客観的に正しい数値を意味するという控訴人の主張と矛盾することにな
ることを示しているといわざるを得ない。
(二) ポリブタジエンの分析法の如何によつてその分析値が相違することは、本
件特許出願時の技術常識であり、【D】、【A】、【C】、【B】、【E】と次々
と新しい分析法が研究された経過自体がこの事実を示している。
 控訴人は、【E】の吸光係数を使用する分析法は本件特許出願当時の標準的な方
法とはいえないとし本件特許出願当時ポリブタジエンの微細構造の分析については
吸光係数決定法が標準的方法であつたと主張する。
 しかし、吸光係数の文献値を使用する分析法が一般の分析法であつた事実は、新
しい構造のポリブタジエンの代表的発明の全てがその発明のポリブタジエンの同定
のための吸光係数を明細書中に記載している事実から明らかである(乙第一〇号証
添付A、乙第二八号証、乙第二九号証)。吸光係数決定が普通であつたのであれ
ば、そしてそれがどのようにやつても同一の分析値を与えることが常識であつたの
であれば、発明者は単に数値を示すだけで足りたのであるが、発明者はポリブタジ
エンの技術分野にそのような常識は存在せず、文献値の吸光係数を使用するのが一
般であると認識していたからこそ、吸光係数を記載したのである。
第三 証拠関係(省略)
       理   由
一 控訴人が、昭和五五年九月一〇日存続期間の満了によつて消滅した本件特許権
の特許権者であつたこと、本件特許の願書に添附した明細書の特許請求の範囲の欄
の記載が控訴人主張のとおりであること、解散会社の製造・販売していた耐衝撃性
ポリスチレンの製造方法が、使用するポリブタジエンのシス及びビニルの各含有量
の点を除き、原判決添付別紙目録記載のとおりであることは、当事者間に争いがな
い。
二 右当事者間に争いのない明細書の特許請求の範囲の欄の記載によれば、本件特
許発明は、そのモノビニル芳香族重合体組成物の製造に用いる1、4ポリブタジエ
ンのビニル含有量が一〇%以下であることを要件の一つとするものであると認めら
れる。
三 控訴人は、右特許請求の範囲の欄に記載されている一〇%以下のビニル含有量
という場合の一〇%とは、一〇分の一という割合を示す概念であつて、他に何らの
基準、尺度も必要としない数値、すなわち客観的事実を意味し、1、4ポリブタジ
エンの特定のビニル定量分析法と関係づけて限定した数値ではなく、いかなる定量
分析法であつても、それが客観的に正確な結果をもたらすものでありさえすれば、
当該定量分析法は本件特許出願当時に用いられていたかどうかを問わず、ビニル含
有量の確認を行うために用いることができる旨主張する。
 一〇%とは、原告が主張するように、一〇分の一という割合を示す概念であるこ
とはいうまでもない。しかし、一〇分の一という量を計る客観的な基準、つまり何
人がこれを計つてもその結果が同一になるというような計測の基準及びその基準に
従つて計測する方法が一定していなければ、一〇分の一という割合を計るにして
も、果してそれが客観的に一〇分の一の割合になつているかどうかということは保
証されず、原告が主張するように、ある定量分析法が客観的に正確な結果をもたら
すものであるかどうかも確知され得ない。これを長さに例をとつていえば、一メー
トルという長さを確定するためには、メートル原器あるいは特定の光の波長という
客観的に確定した一定の基準を用いて始めてこれを計り得るのであり、尺、メート
ル、フイート等長さの単位はいずれもでよいが、ある長さを計るにはそれを計り得
る客観的な基準がなければならず、そのような基準なしに長さを計るというような
ことはおよそ無意味である。
 控訴人は、NMR法(核磁気共鳴スペクトル法)によればポリブタジエンのビニ
ル含有量を客観的に正確な値をもつて計り得ることを前提として、NMRはすでに
本件特許出願当時存在しており、これをポリマーの分析に用いることも知られてい
たところ、解散会社が製造・販売していた耐衝撃性ポリスチレンの製造に用いるポ
リブタジエンのビニル含有量はNMRで計つても一〇%以下である旨主張する。
 成立について争いのない甲第五三号証(【D】の宣誓供述書)には、NMRは本
件特許出願(昭和三五年)前に知られており、これをポリブタジエンのビニル含有
量を決定するのに用いられ得ることは当業者に自明であつた旨が記載されているこ
とが認められる。しかし、成立について争いのない甲第二九号証の一ないし四、第
三〇号証の一、二によれば本件特許出願前にNMRを用いて特定の有機化合物の微
細構造の分析を行なうことは知られていたものと認められるがポリブタジエンのビ
ニル含有量を測定するのにNMRが使用されていたことを認めるに足る立証は前掲
甲第五三号証を含めても未だなされていない。原審証人【F】の証言によれば、N
MRによりポリブタジエンのシス、トランス、ビニルの微細構造が分析できるよう
になつたのは、本件特許出願後である昭和三七年(一九六二年)頃のことであると
認められる。そして、NMR法が現在においては比較的正確な分析値を出し得るも
のであると言えるにしても、その方法によつて測定した量が客観的にも正確なもの
であると必らずしも言えないことは、おのおのNMR法で計つたと各自が主張す
る、解散会社で使用していたポリブタジエンのビニル含有量が八・七%ないし九・
四%(成立について争いのない甲第七、第一一、第一七号証)、一一・一%(成立
について争いのない乙第一六号証)となつていることからも明らかであるというこ
とができる。
 以上のとおり本件特許出願前NMR法はポリブタジエン中のビニル含有量を測定
する方法としては行なわれておらず、証拠によれば、当時行なわれていた測定方法
はいわゆる赤外法であつた。すなわち、成立について争いのない甲第二三ないし第
二七号証、乙第二〇号証、証人【F】の証言によりその成立を認め得る乙第二一号
証の一、原審証人【F】、同【G】の各証言を綜合すると、次のような事実を認め
ることができる。いわゆる赤外法によるポリブタジエンの微細構造の決定は、まず
標準物質について赤外分光器を用いてシス、トランス及びビニル単位の特定の吸収
帯における吸光係数を決定し、次に試験試料のポリブタジエンについて右特定の吸
収帯における吸収の強さを測定し、前記吸光係数を用いてシス、トランス及びビニ
ル単位の含有量を算出するものであるところ、吸光係数を決定するのに既に
【D】、【A】、【C】、【B】、【E】等が用いた方法が発表されていたが、前
三者の用いた方法は標準物質として低分子オレフインを用いたものであり、又
【B】が用いた方法は、標準物質としてポリブタジエンを用いるものではあるが、
いずれもそれらの方法によつて決定された吸光係数は信頼性があまり高いものとは
みなされていなかつた。一九五九年に至つて【E】が発表した方法は、標準物質と
して純度の高い各構造のポリブタジエンを用いて吸光係数を算出したものであり、
その吸光係数は信用度が高いものと評価されるようになつた。しかしながら、
【E】の用いた方法によつて吸光係数を決定するにしても、標準物質として用いる
ポリブタジエンの不飽和度をいかなる方法で求めるかによつて分析結果は異なつて
くるのであつた。すなわち、不飽和度を塩化沃素を反応させて実験的に求めるにし
ても、その方法は不確定要素が多くその不飽和度は必らずしも正確なものではない
とされ、不飽和度を一〇〇%と設定して吸光係数を求めることも行なわれていた
が、この方法の不自然さを攻撃する考え方ももちろんあつた。いずれにしても不飽
和度の求め方の相違により分析結果も異なつてくるものであつた。そして、前記
【E】の論文が発表されてからは、【E】が決定した吸光係数そのものを借用して
ポリブタジエンのシス、トランス、ビニル成分含有量を決定する方法(いわゆる吸
光係数借用法)を推奨するような論文が本件特許出願後のことではあるが、多く現
われるようになつてきた。右のような事実が認められる。一方前掲証拠に、成立に
ついて争いのない甲第一三号証、第一四号証の一、二、第二二号証の一ないし三、
第三二号証の一ないし四、第四三号証の一、二、第四四号証の一、二、第四六号証
の一、二を綜合すると、吸光係数を借用して成分決定をすることは誤差が多く、実
験者が自分で吸光係数を求めないで他人の吸光係数を借用することは誤りであると
する考えも少なくなかつたこと、吸光係数は使用する機器の差や手法の相違により
差異が出て来るものであることを認めることができる。
 右のように認めることができる。
 ところで、本件特許の明細書の特許請求の範囲中における1、4ポリブタジエン
の中に含まれるビニル含有量の一〇%以下という一〇%がいかなる方法によつて計
量された一〇%であるかについては、特許請求の範囲においてはもちろん発明の詳
細な説明中にも、これを示唆するものは何も見当らない。右に見てきたようにビニ
ル含有量が一〇%であることを客観的に確定する方法は、本件特許発明の出願当時
見当らなかつたのであるから、いかなる測定方法に従つて測定した一〇%であると
いうことすら記載されていない本件特許発明においては一〇%という割合を決める
に由なく、その点において既にこれを実施することが不可能であつたものといわざ
るを得ず、本件特許権が権利として成立しているとの理由をもつて、本件特許権に
基づいて他人にその権利を侵害することの差止め及び侵害を理由とする損害賠償の
請求をすることはできないものといわなければならない。
 本件特許発明においては、出願人はすべからく成立について争いのない乙第二八
号証(ベルギー特許第五五一八五一号明細書)、第二九号証(英国特許第八七三〇
四六号明細書)におけるごとく、赤外法におけるポリブタジエンのシス、トランス
及びビニルの、自分で計つた吸光係数を記載して、ビニル成分の一〇%とはこれに
よる一〇%として一〇%の基準を明らかにすべきものであつた(なお、測定機器の
特定及び測定方法を記載することも必要であろう。)。
 控訴人は、本件特許出願前のポリブタジエンの分析に関する主要な文献を発表し
た【A】、【B】、【C】、【D】、【E】らの採つた方法は基本的に同一の標準
的赤外方法であり、操作上の及び計算上の技法においていくらかの異なつた点はあ
るけれども、もし誤差を適当に補正するならば原則的にそれらの結果は同一になる
はずであると主張するが、控訴人のこの主張は、疑いを容れないほどに真実の値を
測定することが既に知られていて、前記の人らの採つた方法による結果がそれに基
づいて修正され得るものであることを前提としたものであるところ、そのように客
観的真実な値を測定する方法が現在に至るもなお確定されていないこと前記のとお
りである以上控訴人のこの主張は採るを得ない。
四 右のとおりであつて、控訴人の被控訴人に対する請求は、解散会社が耐衝撃性
ポリスチレンの製造に使用していたポリブタジエンのビニル含有量が一〇%以下で
あつたかどうかを確定することを要せずして、理由がないことが明らかであり、控
訴人の請求を棄却した原判決は結局において正当であり、控訴人の控訴は理由がな
いからこれを棄却し、控訴費用は敗訴の当事者である控訴人の負担とし、上告につ
いての附加期間を九〇日と定めるのを適当と認めて主文のとおり判決する。
(裁判官 高林克巳 杉山伸顕 八田秀夫)

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