弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中控訴人(原告)敗訴の部分を取消す。
     被控訴人が昭和二十三年十二月二十八日群馬県指令農地第一三七二号を
もつてした、昭和二十二年十一月十二日附群馬県指令農地第四八一号による賃貨人
控訴人賃借人訴外A間の別紙目録記載の土地の賃貸借解約許可指令の取消の指令
中、田二反八畝十三歩に関する部分を取消す。
     第一審の訴訟費用中五分の四及び控訴審の訴訟費用前部は被控訴人の負
担とする。
         事    実
 控訴人は主文同旨の判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は、控訴人において、「本件農地が国に買収された日
は昭和二十二年十二月二十六日であつて、原審においてこれを昭和二十二年十月二
日と述べたのは誤りである。右買収当時控訴人は右農地につき、訴外Bとの間の使
用貸借契約に基く権利を有していたものである。」と述べ、被控訴人は、「国は本
件農地につき自作農創設特別措置法第十二条第一項により、本件農地買収時期とし
て公告された日である昭和二十二年十月二日に所有権を取得したのである。当時控
訴人が本件農地の使用貸借上の権利を有していたことを否認する。」と述べた外、
原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
 証拠として、控訴人は甲第一ないし第十三号証、第十四号証の一ないし三、第十
五号証、第十六号証の一、二、第十七ないし第十九号証を提出し、原審及び当審に
おける証人B、Cの各証言、当審における証人D、E、Fの各証言及び控訴人本人
尋問の結果を援用し、乙第四号証の成立を認め、その余の乙各号証の成立は知らな
いと述べ、被控訴人は乙第一号証の一、二、第二ないし第四号証、第五号証の一、
二を提出し、原審証人Gの証言、原審及び当審における証人Fの証言、当審証人A
の証言を援用し、甲第一号証第四号証第六ないし第十号証、第十二、十三号証、第
十四号証の一、二、三、第十五号証、第十六号証の一、二、第十七ないし第十九号
証の成立を認める、その余の甲各号証の成立は知らないと述べた
         理    由
 成立に爭のない甲第七号証によれば、控訴人は昭和二十二年十月二十日被控訴人
に対し別紙目録記載の農地の賃貸借更新拒絶の許可を求め、その理由として、控訴
人は右農地を昭和二十年七月訴外Aに対し、期間を昭和二十年七月植付のときより
三年(昭和二十二年度の稻の収穫が終る迄)、小作料一年につき米四斗九俵と定め
て賃貸したが、右は控訴人の夫Bが病気となり、長男が軍需工場に徴用せられ、手
不足となつたためであつたところ右許可申請の当時には控訴人は長男(三十三年)
及び同人妻(二十七年)とともに農業に従事するを得るに至り、一方賃借人たるA
は七十五年にして、同人の長男Hは群馬運輸会社の重役であつて、同人より本件農
地の返還を受くるも同人の生計に支障を来すことないから、右賃貸借の更新を拒絶
して、右農地の返還を求めようとするものである旨を記載した事実を認めることが
できる。
 そして被控訴人が控訴人の右許可申請に基き、昭和二十二年十一月十二日附群馬
県指令農地第四八一号をもつて右申請どおり農地賃貸借更新拒絶を許可した事実、
被控訴人は昭和二十三年十二月二十八日群馬県指令農地第一三七二号をもつて控訴
人に対し前記群馬県指令農地第四八一号による農地賃貸借更新拒絶の許可を取消
し、控訴人が右許可取消指令を昭和二十四年一月十九日受領した事実は当事者間事
なく、成立に争のない甲第十八号証によれば、被控訴人は、前記控訴人の農地賃貸
借更新拒絶許可申請書の内容につき事後実状調査したところ、事実と相違する点が
あるとして、右取消指令を発した事実を認めることができる。しかして被控訴人の
主張するところは前記農地賃貸借更新拒絶の許可なる行政行為は、真実でない事実
の認識に基いてなされたもので、被控訴人の意思決定に瑕疵があつたから、これを
取消したというにある。
 行政処分はさらに他の行政処分によつてこれを取消し得ることが原則だとされて
いる。しかしこれはどこまでもいちおうの原則であつて、例外として、法律上ゆる
される不服の申立によるのほかさらに行政処分によつ<要旨>て、さきになされた行
政処分の取消を為し得ない場合を認めなければならない。農地調整法第九条第三項
の農地の賃貸借の解除もしくは解約または更新拒絶についての都道府県知事
の許可のごとく、その行政処分が私法上の法律行為の効力発生の要件たる場合(同
第五項参照)は、かかる例外の一つであると解するを相当とする。
 効力の発生に必要な行政処分がなされたことによつていつたん効力を生じた私法
上の法律行為が、その後いつなんどき行政処分の取消によつて無効になるかも知れ
ないということであつては、法律関係の安定は、はなはだしく害せられ、私法秩序
は保ちがたいことになる。安定ということは、いうまでもないことながら、およそ
秩序というものの根本的基盤的要素なのである。当事者り自治ということを原則と
する私法関係に行政庁が干渉することをみとめ、私法上の法律行為の効力発生を行
政庁の許可にかからせるのは、けだし、公益的見地からの考慮を私法関係の変動に
反映させて、私法関係を適正にして公共の福祉に従うものたらしめようというにあ
ろう。かかる趣意からする行政処分がいつ取消されるかも知れたいというために、
私法秩序の根本的要素である法律関係の安定を害する結果を生ずるにまかせるなら
ば、それは角をためて牛を殺すの類である。だから、こういう場合には、行政処分
によつてさきの行政処分を取消すことはゆるされないとすべきである。
 これを本件についてみるに、被控訴人が控訴人と訴外Aとの間の本件農地賃貸借
の更新拒絶を許可した結果、控訴人はAに対し右賃貸借更新拒絶の意思表示を為
し、昭和二十二年十二月中にAを被告として本件農地の返還請求の訴を高崎簡易裁
判所に提起し、同庁昭和二十二年(ハ)第一六五号事件として繋属中であることは
当事者間に争のないところであるから、前に述べたとおり、その後一年余を経過し
た昭和二十三年十二月二十八日に被控訴人がした右許可の取消は前段説示するとお
り行政庁としてすることのできないところであつて、まさに違法な行政処分という
べきである。それ故、右行政処分は、これによつて取消された賃貸借更新拒絶の許
可に被控訴人主張のような暇疵があるかないかを審査するまでもなく、取消をまね
かれないのである。
 次に控訴人に本件行政処分の取消を求める法律上の利益があるか否かについて考
えるに、当審証人D、Eの各証言、同証言により真正に成立したと認める甲第十一
号証によれば、控訴人は自らの名において飯塚農事実行組合に加入し、昭和十九年
産米八俵、昭和二十年産小麦四俵大麦二俵を供出し、又肥料の配給も受けて居つた
事実を認めることができる。しかして、成立に争のない甲第一号証、第十六号証の
一、原審証人Bの証言により真正に成立したと認める甲第二、三号証、当審及び原
審における証人Bの証言を綜合すれば、本件農地(別紙目録記載の土地中田二反八
畝十三歩)はもと訴外Iの所有であつたが、Bは昭和十五年六月二十日これを買受
け、その買入資金を同人の娘の夫である訴外Jより借受けた関係から同人の名で所
有権移転登記を経由したが、Iより所有権の移転を受けたのはBであること、及び
Bは他に職業を有し農業に従うことはできないが同人の妻である控訴人はもと農家
に育つたものであつて、農地耕作の能力あるものであるところから、控訴人の農業
経営に供する目的で本件土地を買入れ、無償でこれを控訴人に貸与したものであつ
て、控訴人と所有者Bとの法律関係は使用貸借であることを認めることができる。
 自作農創設特別措置法による買収処分によつて、国が本件農地の所有権を取得し
たことは当事者間争がない。その時期について争があるのにこれを確定するに足り
る証拠はないが、結局昭和二十二年十二月二十六日以前であるかぎりにおいて争わ
ないということができる。しかして、前記認定の使用貸借が、右買収処分による所
有権移転前に、消滅したことの証拠のあらわれない本件においては、右所有権移転
当時控訴人は本件農地につき使用貸借上の権利を有していたと認めるのほかはな
い。ところで、自作農創設特別措置法第十二条第一項第二項によると、買収処分に
よつて国が農地の所有権を取得したときにその土地につき存在した使用貸借による
権利は消滅するけれども、同法第十二条の二第二項の場合を除き、その取得のとき
にその権利を有するもののために従前と同一の条件で設定されたものとみなされる
のであるから、控訴人は現に使用人であつて、本件行政処分の取消を求める法律上
の利益を有するものというべきである。
 よつて被控訴人のなした昭和二十三年十二月二十八日群馬県指令農地第一三七二
号別紙目録の土地の賃貸借更新拒絶許可指令取消指令中田二反八畝十三歩に関する
部分の取消を求める本件請求は正当としてこれを認容すべく、これに反する原判決
は不当であるから、これを取消し、民事訴訟法第八十九条第九十六条を適用して主
文のとおり判決する。
 (裁判長判事 斎藤直一 判事 藤江忠二郎 判事 猪俣幸一)

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