弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成16年(わ)第1064号,第1157号殺人,殺人未遂,現住建造物等放火
被告事件
判決
主文
被告人を死刑に処する。
押収してある骨すき包丁(丸型)1本(平成17年押第15号符号1)及
び骨すき包丁(角形)1本(平成17年押第15号符号2)を没収する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,かねてから隣家に住む伯母A及びその家族並びに隣人のBら近隣の者
から見下され,邪魔者扱いされているとして憤懣の情を募らせ,上記Aら近隣の者
を殺害し,その後自宅に放火することを考えていたところ,隣人のCとの言い争い
をきっかけにその実行を決意し,
第1平成16年8月2日午前3時ころ,兵庫県加古川市町番地所在のA方abc
2階において,同女の次男D(当時46歳)に対し,殺意をもって,所携の玄
能(平成17年押第15号符号3)で,同人の頭部を数回殴打した上,所携の
骨すき包丁(角形,刃体の長さ約14センチメートル(平成17年押第15)
号符号2)で頸部,顔面等を数回突き刺すなどし,よって,そのころ,同所に
おいて,同人を左側頸中央部刺創及び右側頸上部刺創による左総頸動脈・左内
頸静脈切損及び右内・外頸動脈切断により失血死させて殺害した
第2上記日時ころ,上記A方1階において,同女(当時80歳)に対し,殺意を
もって,所携の上記第1の玄能で,同女の頭部を数回殴打し,さらに,同日午
前3時40分過ぎころ,殺害したと思っていた同女が生存していたことから,
屋外に逃げる同女を追いかけ,同女方前路上において,殺意をもって,所携の
骨すき包丁(丸型,刃体の長さ約15センチメートル(平成17年押第15)
号符号1)で同女の頸部等を数回突き刺すなどし,よって,そのころ,同所に
おいて,同女を左側頸部切創及び右後頸下端部ないし右鎖骨部の貫通刺創によ
る左内頸静脈及び右椎骨動脈各切損により失血死させて殺害した
,,第3同日午後3時過ぎころ同市町番地の所在のB方母屋1階においてabde
同人(当時64歳)に対し,殺意をもって,所携の上記第2の骨すき包丁で,
同人の胸部及び両肩部等を数回突き刺すなどし,よって,そのころ,同所にお
いて,同人を左前胸上部刺創及び左鎖骨上窩刺創による肺動脈及び左鎖骨部大
血管各損傷により失血死させて殺害した
第4上記第3の日時,場所において,上記Bの妻E(当時64歳)に対し,殺意
をもって,所携の上記第2の骨すき包丁で,同女の頸部,肩部及び背部等を数
回突き刺すなどし,よって,そのころ,同所において,同女を左胸背上部刺創
による胸部大動脈,左肺静脈及び左心耳各切損により失血死させて殺害した
第5上記第3の日時ころ,上記所在のB方離れにおいて,同人の長男F(当時2
7歳)に対し,殺意をもって,所携の上記第2の骨すき包丁で,同人の顔面,
頸部,後頭部,背部及び上腕部等を数回突き刺すなどし,よって,そのころ,
同所において,同人を後頭部,左顔面,頸部,胸背部,右上腕等の多発刺創に
より失血死させて殺害した
第6上記第3の日時ころ,上記所在のB方母屋2階において,同人の長女G(当
時26歳)に対し,殺意をもって,所携の上記第2の骨すき包丁で,同女の頸
部,後頭部及び顔面等を数回突き刺すなどし,よって,そのころ,同所におい
て,同女を右側頸上部刺創,左後頸部複合刺創及び左右内頸静脈切損により失
血死させて殺害した
第7同日午前3時40分ころ,上記A方2階において,異変を聞きつけ同所に駆
けつけた同女の長男H(当時55歳)に対し,殺意をもって,所携の上記第2
の骨すき包丁で,同人の頸部及び背部等を数回突き刺すなどし,よって,その
ころ,同所において,同人を左後頸下部刺創及び右肩胛上部刺創による左総頸
動脈,左内頸静脈及び右腋窩動静脈各切損により失血死させて殺害した
第8上記第7の日時ころ,上記所在のA方2階において,上記Hと共に同所に駆
けつけた同人の妻I(当時50歳)に対し,殺意をもって,所携の上記第2の
,,,,骨すき包丁で同女の胸部背部頸部及び肩部等を数回突き刺すなどしたが
同女に約3か月間の治療を要する左側胸部刺創による左肺損傷等,背部刺創に
よる右肺損傷等,左頸部刺創による左外頸静脈損傷及び左肩刺創による左腕神
経叢損傷等の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった
第9同日午前3時45分ころ,兵庫県加古川市町番地の所在のJ方母屋abcf
1階の畳及び布団等並びにその母屋の付属建物内の床上等にガソリンや灯油等
を撒くなどした上,所携のライターで上記畳及び布団等に点火して放火し,よ
って,同女が現に住居に使用している木造瓦葺2階建家屋及び付属建物(床面
積合計159.5平方メートル)を全焼させてこれを焼損した
ものである。
(法令の適用)
罰条
判示第1ないし第7の各所為(行為時)いずれも(判示第2は包括して)平成16
年法律第156号による改正前の刑法19
9条(有期懲役刑の長期はその改正前の刑
法12条1項による)。
(裁判時)いずれも(判示第2は包括して)その改正
後の刑法199条(有期懲役刑の長期はそ
の改正後の刑法12条1項による)。
刑法6条,10条により,いずれも軽い行為時
法の刑による。
判示第8の所為(行為時)刑法203条,平成16年法律第156号
による改正前の刑法199条(有期懲役刑
の長期はその改正前の刑法12条1項によ
る)。
(裁判時)刑法203条,その改正後の刑法199条
(有期懲役刑の長期はその改正後の刑法1
2条1項による)。
刑法6条,10条により,軽い行為時法の刑に
よる。
判示第9の所為刑法108条(有期懲役刑の長期は,行為時に
おいては平成16年法律第156号による改正
前の刑法12条1項に,裁判時においてはその
改正後の刑法12条1項によることになるが,
刑法6条,10条により軽い行為時法の刑によ
る)。
刑種の選択
判示第1ないし第7の罪いずれも死刑を選択
判示第8,第9の罪いずれも有期懲役刑を選択
併合罪の処理刑法45条前段,46条1項本文,10条(犯
情の最も重い判示第2の罪について選択した死
刑で処断したので,他の刑は科さない)。
没収刑法19条1項2号,2項本文(押収してある
骨すき包丁(角形)1本(平成17年押第15
号符号2)は判示第1の殺人の用に,骨すき包
()()丁丸型1本平成17年押第15号符号1
は判示第2ないし第7の各殺人及び第8の殺人
未遂の用にそれぞれ供した物でいずれも被告人
以外の者に属しない)。
訴訟費用(不負担)刑事訴訟法181条1項ただし書
(弁護人の主張に対する判断)
第1はじめに
弁護人は,被告人は,本件犯行当時,持続性妄想性障害(パラノイア)の影
響により,心神喪失又は心神耗弱の状態にあった,仮にそうではなく,被告人
が情緒不安定性人格障害者であるとしても,幼児期のてんかん性発作に関連し
て生じたと思われる表出性言語障害が人格形成の偏りに大きな影響を及ぼした
こと,特定の隣人を対象とする被害念慮が認められることなどを考慮すれば,
,,。,被告人は本件犯行当時心神耗弱状態にあった旨主張している当裁判所は
被告人は,本件犯行当時,妄想性障害には罹患しておらず,前記表出性言語障
害等の点を考慮しても,完全責任能力を有していたものと認定した。そこで,
以下,その理由を説明する。
第2当裁判所の判断
1精神鑑定の結果について
(1)鑑定の骨子
鑑定人K作成の鑑定書及び第6回公判調書中の同人の供述部分(以下合わ
せて「K鑑定」という)によれば,被告人には,本件各犯行当時,特定の。
人物に対する迫害妄想があり,その精神症状は,DSM−Ⅳ−TRの診断シ
ステムにおける精神障害(精神病)レベル(第1軸)を満たし,人格障害レ
ベル(第2軸)の6項目中5項目を満たしていることから,被告人は妄想性
障害(被害型(パラノイア)に罹患しており,現在も同じ状態が続いてい)
るとされる。
(2)L鑑定の骨子
鑑定人L作成の鑑定書及び同人の証人尋問調書(以下合わせて「L鑑定」
。),,,というによれば被告人の人格には感情的不安定性と自己統制の欠如
社会的な面での抑制,否定的評価に対する過敏性等を特徴とする著しい偏り
,,(),がありこれらの人格的偏りは国際診断基準ICD10による分類中
特定の人格障害の共通する診断基準4項目全部を満たし,その下位分類であ
る情緒不安定性人格障害の診断基準の5項目(3項目以上が要件)中5項目
を満たし,かつ,不安性(回避性)人格障害の診断基準の5項目(3項目以
上が要件)中5項目を満たしているもので,被告人は情緒不安定性人格障害
と診断され,これに不安性(回避性)人格障害の特徴を併せ有し,さらに,
被告人には特定の隣人を対象とする被害念慮も認められ,本件犯行は,これ
らの人格障害と被害念慮が影響したものであるとされ,本件各犯行当時の精
神病罹患の有無については,統合失調症や躁うつ病などの精神病を疑わせる
ような兆候や妄想は見られないとして,妄想性障害の診断は否定している。
(3)このように,被告人の本件各犯行当時の精神疾患の有無について,K,
L両鑑定の結論が異なることから,先に,これら鑑定の前提となる事実関係
を証拠によって認定した上で,その具体的な争点を明らかにして,L鑑定主
文の判断を採用した理由について述べることとする。
2前提となる事実
両鑑定が前提とした事実関係については,関係証拠によれば,以下の事実が
認められる。
(1)関係者等
ア被告人は,昭和31年12月5日,父M(以下「M」という)と母J。
(以下「J」という)の間で出生し,その下に,弟N(以下「N」とい。
う(昭和35年2月10日生,妹O(以下「O」という(昭和37。))。)
年6月24日生)がいる。被告人は,幼少の頃から,短気で些細なことに
カッとなって興奮しやすい性格であり,小学校高学年ころ,精神科で診察
を受け,てんかん性性格と診断されたことはあったが,何らかの精神的な
病気との診断を受けたことはなかった。被告人は,喧嘩っ早い性格である
が,単なる喧嘩にとどまらず,小学校2年生か3年生くらいのころ,嫌が
らせを受けた相手を包丁を持って追いかけたことがあり,また,中学生の
ころ,何度も嫌がらせを受けていた同級生と喧嘩になり,持っていた刃物
で切り付けたことがあり,高校生のころには,因縁を付けられたり嫌がら
,,せを受けていた同級生に対し持っていた刃物で腹部を刺したことがあり
その他にも,頭に血が上ると刃物を持ち出して振り回したことが何度かあ
った。被告人は,これらの件で学校の先生等から注意や叱責を受けたが,
原因となった腹立ちが治まらず,反省や悔悟をすることはなかった。被告
人は,高校卒業後,就職するも,人間関係の問題等で長続きせず,職を転
々とした後,自宅でぶらぶらするといった生活をしていた。被告人は,母
Jにばかり苦労をかけている父Mに対して立腹し,同人に対し殴りかかる
素振りを見せたり,座ってテレビを見ていた同人をにらみ付け,同人の近
。,く目掛けて台所にあった包丁を投げ付けたりしたこともあった被告人は
昭和62年ころ,Mが家を出て姿をくらまし,弟や妹も独立したこともあ
って,昭和63年ころからはJと2人で暮らしていた。被告人は,Jの体
調等を気遣ったり,Oの結婚式に参加して写真撮影役を買って出たり,O
の娘やNの飼い犬を可愛がったりするなど,Jや,N,Oに対しては優し
かった。
イ被害者A(以下「A」という)は,Mの兄であり,P家の家督を継い。
だQと結婚し,本家方に居住していたところ,Mは,昭和26年ころ分家
して,本家の西隣に家を建てて,そこに住むようになった。被告人らが居
住している播州地方では,本家のことを母屋,分家のことを新宅と呼ぶ習
わしであった(そこで,以下「母屋「新宅」の言葉を用いることとす,」,
る。新宅の建物(被告人方)が建っている敷地は母屋の所有する敷地。)
であった。被告人方は,本件当時,隣近所の建物とも隣接しており,その
台所には,北向きに大きな窓があり,被告人方の北東にあるR方から台所
の様子がはっきりわかる状態であったし,被告人が自宅の西側に作ったプ
レハブ小屋も,その中は外部から容易に見える状況にあった。
ウ被害者H(以下「H」という)はAの長男,被害者D(以下「D」と。
いう)は次男,被害者I(以下「I」という)はHの妻である。。。
エ被害者B(以下「B」という)は,被告人との親族関係はないが,先。
祖の代から町に居住しており,被害者E(以下「E」という)はそab。
の妻,被害者F(以下「F」という)と被害者G(以下「G」という)。。
はBとEの間の長男と長女である。
オS(以下「S」という)とその夫であるT(以下「T」という)は,。。
被告人方の北側に居住し,R(以下「R」という)は,被告人方の北東。
側に居住する近隣者である。SとEは非常に親しく,互いの家を行き来す
る仲であり,道路で立ち話などをすることもあった。
カ被告人らの居住していたb地域は,地縁血縁も濃く,親子代々にわたる
,,人間関係も濃密で隣近所との結びつきが濃厚で互いの家の事情に精通し
些細な出来事も噂としてあっという間に伝播するような土地柄であった。
Jも,Mから,b地域は,他人の噂話が好きなところで,人が集まるとす
ぐに他人の家の些細な出来事を大袈裟に取り上げ,それが噂になって広が
ってしまうことから,井戸端会議などには加わらないよう言われていた。
()本件に至る経緯2
アAとJの関係等
Aは,JがMに嫁いできた昭和29年ころ以降,出自の違い等から,J
に対して,露骨な嫌みを言ったり,近隣住民に対しJの悪口を言いふらし
たり,嘘を言ってQとMの間柄を混乱させようとしたりするなど,嫌がら
せともいえる仕打ちを重ねていた。また,新宅の敷地は母屋の所有のまま
であったが,同地区での従来の財産分けの慣習からすると,分家するとき
,「」,,に新宅分けとして母屋から無償で譲渡して貰えるはずであったが
Aがこれに反対したことから,そのままにされた。このようなAとJの間
の確執については,被告人も幼いころから見聞きしていた様子で,Jは,
,「,。,中学生くらいであった被告人からお母ちゃんどないしたんやまた
母屋にいじめられたんか」と心配そうに言われたことがあった。。
イ被告人とAら母屋の親族との関係等
Aは,母屋の土地にこだわり,母屋の権威を盾に無理を言っては新宅の
Jら家族を困らせ,被告人が新宅で作業をしているときも,それを見張る
ような行動を取ったり,文句を言うなどし,被告人は,このようなAを幼
い頃から身勝手で陰険な人物だと思い,見下されていると感じていた。ま
た,Aの息子であるHやDとの間でも幼少時からトラブルがあり,暴力を
振るわれたりしたこともあって,見下されていると感じていた。実際に,
AやDらは,被告人ら一家を軽んじ,見下すような言動をすることがあっ
た。被告人は,Aら母屋の者に対して反感や憎しみを募らせ,いつしか殺
してやりたいと思うようになっていった。
被告人は,平成12年ころ,Dが飼っていた犬が大声で吠えたり,新宅
の敷地で糞をしたりすることから,何度かA方へ苦情を言いに行ったが適
当にあしらわれただけであった。そこで,被告人は,Aらの態度次第によ
っては,Aらを刺殺しようと思い,家から骨すき包丁を持って文句を言い
に行ったところ,Hから「そんなんやったら轡を付ければええねん」,。
などと馬鹿にしたように言われ,その場でAとHを刺殺しようと思い,H
の首に骨すき包丁を突き付けたが,実行に移すことはできず,自宅に帰っ
た。そして,被告人は,このころ,いつかAら母屋の者を殺すときに使お
うと,ガソリンの入った一斗缶を新宅の離れに置いていた。
被告人は,Aを見るたびに「あのくそ母屋が。許さへんぞ」などと,。
憎々しげに言っていた。
ウ被告人ら家族とBら近隣住民との関係等
Mが家出をした昭和62年以降,Jは,近隣住民らから,顔を合わせる
たびに「Mさんどこ行ったんよ。何で出て行ったんよ。いつ帰ってくる,
んよ」などと根ほり葉ほり聞かれ,特にBの妻であるEはしつこく詮索。
してきた。被告人も,Jに対し「また,あのガキら,寄って,話しとっ,
た。うちの悪口言っとら」などと,EやSらが道ばたに集まって噂話な。
どをしていることに怒りを表して,Eらに対し,石を投げたり,備中鍬を
振り上げ威嚇するなどの対応を採ることもあった。Jは,Eらの井戸端会
議の内容について直接聞いたわけではなかったが,井戸端会議の最中にJ
に気付いたEらは,ちらちらとJに視線を送り,まずい,という表情を浮
かべ,Jが軽く会釈したりしても,挨拶もそこそこにそそくさとその場か
,,ら去っていくということが多かったことからそのような態度を取るのは
被告人ら家族のことについて噂話をしていたからであると思っていた。N
とOも,被告人ら家族を見下すようなEらの態度を苦痛に感じ腹を立てて
,,,,いたし被告人は近所の目を気にし物音を立てないよう気を遣ったり
自己が外出している間に何かなかったかをJに尋ねたりしていた。
平成13年6月ころ,被告人がプレハブ小屋を建てる際,Jが工事の挨
拶のため,Sに洗剤を渡そうとしたが,Sは,これまでの被告人との軋轢
があったこともあり,その受け取りを拒んだ。
同年7月,Sが庭にいるとき,被告人がS方の敷地内に入ってきて,S
の胸ぐらを掴み,助けに入ったSの夫Tに対しても,その胸ぐらを掴んで
押しながら「家の中で話しとっても一緒じゃい。わしがおったら,いか,
んのかい」などと怒鳴った。Sらが被告人に謝ると,被告人は帰ってい。
った。
平成14年6月1日,Sが敷地の四隅に浄めの塩を置き,被告人のプレ
ハブ小屋に一番近い角に塩を置こうとしたとき,被告人がSに対し「こ,
らあ,何しよんどい」と怒鳴りつけた。また,同月ころ,Tが敷地内の。
畑で草抜きをしていたとき,突然被告人が飛び出してきて,Tに向かって
「おばはんのガキが」などと怒鳴りつけ,Tを押し倒して馬乗りになっ。
てきたことがあった。
エ平成13年ころから,Rの妻であるUが,被告人とJの夕食時に,頻繁
に敷地内の草取りや水撒きなどをするようになったが,被告人方北側の壁
とV方離れは隣接しており,Uは,その隣接する被告人方の食堂の窓のす
ぐ下あたりの敷地内で水撒きをしたりするため,その水が,被告人方の外
壁のトタン板にかかり,うるさい音を立てることがあった。被告人は,そ
の音に対し「トタンが腐ってしまうやないか。業沸く(腹が立って仕,「
方ない」の意」などと怒りを露わにしていた。また,Uらが両家の境。)。
界付近に近付いてくると,被告人方の内部の物音等が聞こえる状況にあっ
たため,被告人は,夕食時には,食事をしながら,食堂の窓の外の様子を
気にするようになり,トタンに水がかかったり,人影が見えたりすると,
UやRを怒鳴るなどし,ときには,食堂の窓からいきなりコーヒーカップ
やレンガを投げ付けたりすることもあった。Jは,これらの件についてU
に謝りに行った際,Uから「Wちゃん,何で,あないに,おばちゃんに,
怒るの」と,被告人がJに怒ることについて聞かれたが,このころ,J。
は被告人からしょっちゅう食事の味付け等について文句を言われ,叱られ
ていたことから,Jは,Uが,草取り等をするふりをしながら被告人ら家
。,,族の会話を盗み聞きしていると思った被告人もそのように感じており
Jらが食堂で普通の声で話をしている際にも,外に丸聞こえで何を言われ
るか分からないため,大きな声で喋らないよう注意していた。
平成16年6月ころ,被告人は,Rが灯油を撒いたことに対して怒鳴り
込みに行ったが,Rが事情を説明してすぐに謝罪したことから納得して,
そう怒らなかった。被告人は,トラブルがあっても,相手方が謝ったりす
ればそれ以上粗暴な行為に出ることはなかった。
オ平成14年ころのB一家とのトラブル
平成14年春ころ,B方で娘Gが洗車していたところ,その水が被告人
方の敷地に流れ込んでくることに対して,被告人がEに文句を言ったこと
があった。
平成14年6月か7月ころ,被告人が用事のため車で公道に出ようとし
たところ,息子Fが車を公道にはみ出して駐車させ,公道を塞ぐ状態にな
っていたため,被告人はB方に赴き,BやFに「車出られへんやないか,
い」などと言うと,Bは「今からどけるやんけ」などと鬱陶しそうな。,。
怒った口調で言ってきたため,被告人は,Bを突いて尻餅をつかせた。そ
のころ,Jは被告人を止めようと,被告人に車を出すよう促していたとこ
ろ,外に出てきていたFが,いきなり,Jに対し「くそ婆,黙っとれ」,。
と罵ってきた。これを聞いた被告人は「何どおい」と怒鳴りつけたが,,。
Fはこれに対し「警察呼んどうぞ。何や,やるんか」などと挑発し,,。
被告人もこれに言い返した。Fが車をどけてその場は収まったが,帰宅し
た被告人は,Jに対し「あのガキら業沸く。ひとこと「ごめんな。の,,
けらあ」言ったらことがすんどんやないか。まして,あのくそガキが,。
おかあにくそ婆いいやがって,くそ生意気が」と腹を立てており,この。
一件を根に持ち,Bら一家について悪感情を持つようになった。
そして,この一件があって間もなく,被告人がそれまでプレハブ小屋で
続けていたパン作りをやめると言い出し,Jがその理由を尋ねると,被告
人は「業沸いてしょうがないさかい,もうカタつけるんや」などと言,。
った。その直後ころ,被告人は,Aらの住む母屋の建物や,Hら一家,B
ら一家など,近隣住民の家に放火して殺害するため,ガソリンの入った一
斗缶を買い足した。しかし,これらの建物に放火すれば,Jら被告人の家
族に後始末の責任がかかることになると考えて断念したが,殺害すること
自体は諦めてはおらず,殺害を実行した後,被告人の古い住居がマスコミ
に取り上げられることが恥ずかしかったため,この自宅を燃やしてしまう
ことにした。前記ガソリンの入った一斗缶を見付けたJが被告人を問い詰
,,,,めると被告人はその旨答えJが必死に諭して止めさせようとするも
全く聞き入れる様子はなかった。このときは,Nが被告人を説得して収ま
ったが,被告人はその後も何かにつけて「あのガキが,ちょこざいな。,
許せへん。わしらを馬鹿にしとる」とB一家のことについて度々恨み言。
を口にしていた。
カ被告人は,その後,続けていたパン作りも止め,いつかAら母屋の者ら
とB一家をはじめ,被告人やJらを見下し馬鹿にして邪魔者扱いしてきた
近所の者らを一挙に殺してしまおうと思うようになり,自分の人生ももう
終わりだという気持ちになっていた。そして,被告人は,近隣住民らの行
動に対し,事あるごとに反感や恨み,憎しみを募らせ,殺害決行への踏ん
切りを付けようと,気に入らない周囲の者らに対して,自分から攻撃的な
態度に出るようになった。その間,被告人は,被告人の様子を心配した弟
Nから転居を勧められたが,Aらに屈することになると考えて,これに応
じなかった。
キ犯行前日の状況
平成16年8月1日,被告人らが夕食を食べている際,Rが水撒きをし
ていたため,被告人が食堂の窓を開けると,Rが「水撒きよるだけやん,
か」と言った。これに対し,被告人は,Rを怒鳴りつけ,台所に置いて。
あったパン切り包丁を外に投げつけた。
その日は加古川の花火大会があり,被告人とJは午後8時過ぎころから
自宅の2階で見ていたところ,Rの次男であるCの乗っていた自転車のラ
イトが被告人方の玄関を照らしたことから,被告人は「何じゃあ」と,。
Cを怒鳴りつけると,被告人に気付いたCは「何どい,出てこんかい,,
ボケ」などと怒鳴り返してきたため,被告人は激昂し,骨すき包丁を持。
。,,ってCを探しに行ったが見つからなかった被告人はCを刺し殺した上
Aら母屋の者やB一家らを一挙に殺そうと思い,骨すき包丁を玄関の下駄
箱あたりに隠しておいた。Cは被告人の気付かぬ間に帰宅していたため,
被告人は,まず恨みの深いAら母屋の連中とB一家の者らを襲った後にC
らを殺そうと考えた。そして,被告人は,母屋の2階から侵入するために
脚立を用意し,玄関土間の辺りにガソリン入りの一斗缶を置いた。その一
,,,,斗缶を見付けたJは被告人に対しこのことを問いただすと被告人は
「人殺したら,テレビに家が映るやろが。こんな汚い家映ったらなり悪い
やろ。それで家焼いとくんじゃ」と興奮した口調で答えた。Jはなんと。
,,「。。」か宥めようとするも被告人はわしは承知できへん業が沸くんじゃ
と言って聞かなかった。被告人は,その後も,落ち着きのない様子で,独
り言のように「今日は,いてもたる。今日こそ,いてもたる」と繰り,。
返しており,宥めるJに対しても「わしの身にもなってみい。もう辛抱,
できん」などと興奮して,宥めようがなかった。。
()犯行状況3
,,()ア被告人は平成16年8月2日午前3時ころ玄能と骨すき包丁角型
を持って,脚立を立てかけて母屋の建物の庇へ渡り,2階西側の部屋の無
施錠の窓からその部屋で寝ていたDを認めた。被告人が同部屋に侵入する
と,それに気付いたDが立ち上がってきたことから,被告人は,持ってい
た玄能で,命乞いするDの頭部を四,五回殴りつけ,倒れた同人を更に殴
り付け,持っていた骨すき包丁でDの胸から首を目掛けて何度も突き刺し
て同人を殺害した。その後,被告人は,Aを襲うため,1階へ移動し,立
っていたAの頭を玄能で何度も殴った。そのうちAが動かなくなったこと
から,被告人は,Aが死んだと思い,今度はB一家を襲うために,母屋を
。,()出ていったん自宅へ帰った被告人は使用した玄能と骨すき包丁角型
を自宅に置いたが,後の放火に備えて自宅にガソリンを少し撒いている間
にJによって隠され,玄能等が見つからなかったことから,車の中に置い
ていた骨すき包丁(丸型)を持って,B方へ向かった。
イ被告人は,B方にその縁側から侵入すると,目を覚ましたBの上半身目
掛けて骨すき包丁で数回突き刺して同人を殺害した。その後,被告人は奥
の部屋の方へ歩いて行き,起きてきたEの上半身目掛けて骨すき包丁で数
回突き刺して同女を殺害した。被告人は,Eを刺した後,Fが寝起きして
いた離れに行き,その南側の部屋で眠っていたFの背中を少し蹴って起こ
し,目を覚まして被告人の方を振り向こうとしたFに対し,骨すき包丁で
何度も突き刺して同人を殺害した。そして,被告人は,Gも殺そうと,離
,,れから移動して再びB方の2階に上がり自室のドアを押さえるGに対し
ドアに体当たりして室内に押し入り,Gを骨すき包丁で刺殺した。
ウB一家を殺害し終えた被告人は自宅に戻り,妹Oに対し,母屋の人間と
B一家を殺害したことを告げ,自分の家に火を付けること,Jのことを頼
む旨伝えた。その後,母屋の建物の2階から「D,D」と喚く女性の声が
聞こえたので母屋と縁のある者ならば殺害しようと思い骨すき包丁丸,,(
型)を持って再度母屋の2階に行った。すると,そこにHが立っていたこ
とから,被告人は,持っていた骨すき包丁をHの胸から上を目掛けて突き
刺して同人を殺害した。その後,被告人は,Hの妻であるIを見付け,同
女も殺害しようと思い,同女の胸から上を目掛けて,骨すき包丁で数回突
。,,,き刺したしかしIはこれまで被告人を馬鹿にしたことはなかったし
刺されて弱っており,放っておいても死ぬと思い,また,既に8人を襲っ
て疲れており,それ以上Iを刺す気力も無くしていたことから,それ以上
の攻撃には及ばなかった。
エその後,被告人は,母屋の階段を下りて1階に行くと,殺したと思って
いたはずのAがそこに立っていたことから,逃げるAを追いかけ,門扉の
,。ところで追いつき骨すき包丁でAの首辺りを突き刺して同女を殺害した
オその後,自宅に戻った被告人は,自宅や,プレハブ小屋にガソリンを撒
いてライターで火を付けた。被告人は,プレハブ小屋の火が一気に燃えた
ので慌てて外へ出た後,何か身の置き所のない妙な気分になり「もうえ,
え,もうええ。殺人なんかもうええわ」と呟き,V一家を襲うことは止。
めることにした。
()犯行後の状況4
被告人は,本件犯行後,自動車でNの自宅兼事務所まで行き,Nに対し,本
件犯行を告白し,謝った。N方を立ち去った被告人は,加古川バイパスを走っ
た後,壁へ自車を衝突させ,ライターで助手席のシートに火を付けたが,車内
に積んでいたガソリンに引火して一気に火がついてしまったことに驚き,車外
に出たところ,警察官に保護された。
3検討
(1)K,L両鑑定において,両鑑定人は精神科医として十分な経験を有し,身
体検査及び心理検査等の所見,面接の結果等や前提となる事実についても両
鑑定に大きな相違点はないところ,両鑑定が,前記のとおり,被告人の精神
疾患についての鑑定結果に差異を生じた原因を探ると,それぞれが依拠する
国際診断基準に違いがあったこともさることながら,本件犯行の動機の中核
をなしている,被告人が抱いていた認識,すなわち,特定の親族や近隣者か
らの様々な嫌がらせを受けてきたという被害者意識について,これを持続性
妄想性障害にいうところの「妄想」であるとみるのか(K鑑定,それとも,)
精神病に見られる妄想とは区別されるところの,心理的反応としての「被害
念慮(あるいは妄想様観念ともいうべきもの」であるとみるのか(L鑑定))
という点に帰着すると解される。
ちなみに,持続性妄想性障害にいう「妄想」とは,現実での出来事に関連
することが妄想内容に取り込まれているが,現実では明らかにあり得ない内
容を訂正不能な形で確信することをいうとされ,他方「被害念慮」とは,,
現実での出来事に関連する点では「妄想」と同様であるが,仮に現実に存在
しないことを認識していたとしても,現実の状況から大きくは逸脱しておら
ず,通常人であってもそのような認識を生じかねないような内容のものを意
味するとされる。
したがって,本件で両鑑定の採否を決めるにあたっては,被告人が抱いて
いた観念,認識内容が,前記認定の事実関係から考えて明らかにあり得ない
ものか,それとも前記認定の事実関係から考えて通常人であればそのように
考えることも了解可能な程度にとどまる内容といえるかが中心的な問題点と
いうことになる。以下,この点について詳説する。
(2)被告人の認識内容とその評価
ア被告人の人格的特徴等について
被告人の前記認識内容を正しく理解するためには,その認識主体である
被告人の性格についての理解が不可欠といえるところ,鑑定結果等によれ
ば,被告人の人格,行動の特徴として,以下の事実が認められる。
第1に,中学生のころから本件に至るまでに持続してみられた,自分を
,,侮辱したり自分に向かってくると考えた強者と思われる相手に対しては
怒りから興奮して,突発的に刃物を持ち出して反撃行動に出るといった被
告人の行動傾向に最もよく現れているところではあるが,被告人は,感情
が不安定で,激しやすいこと,感情的な耐性に乏しいこと,短絡的に,見
境のない暴力に走るといった,衝動的で強い攻撃性,爆発性を有している
こと,社会の価値観や基準が内面化されておらず,自分の行動に対する社
会的な判断力が不足しており,他から侵害されているから自分が攻撃する
ことは正当であると信じて疑わないといった正義感があること,暴力親和
的で,反撃として暴力を肯定する考えを持っており,このような攻撃行動
,に関する社会的な抑止はほとんど働かない状態にあるといったことなどを
被告人の特徴的な性格として認めることができる。
第2に,そのような粗暴な行為に出た後も,反省することなく,むしろ
相手方に対する怒り等を長く根に持っていること等からは,頑固で融通が
利かず,自分の意見や信念に固執し,こだわりや思い込みが強い傾向も看
取できる。
第3に,被告人は,自尊心は強いが,元々小心で傷つきやすく,自信が
持てない,気の弱い子であったが,父Mの,母Jに対する暴力や家庭を顧
みない身勝手な行動,母屋と新宅の間の対立といった養育環境の不遇さの
中で育ち,被告人自身が勉強をしないことから学業成績が極めて悪く,中
学生のころから粗暴な態度が目立ち,周囲からは乱暴者と見なされ,同級
生の多くが被告人とは距離を置くようになって,身内や一部の者を除いて
他者との適切な人間関係を結ぶことができず,高校卒業後も職を転々とす
るが,いずれも長続きせず,やがて地元に戻り,就職することなく母と共
に自宅で暮らすようになった。このような生育歴や生活歴からも窺われる
とおり,被告人は,強い劣等感と無力感を有するようになっており,他者
に対しては警戒的,猜疑的で,対人関係を敵対的に捉える傾向を有してい
たこと,感情的なストレスへの耐性の乏しさと,情報の取り入れ,統合が
,,,苦手なため出来事の複雑な関係を見ようとはせず状況を誤解しやすく
独断的となり,前記の固執する性格も相まって,感情的なストレスの下で
は,物事を被害的に捉えやすく,かつ,そのような観念を持ち続ける傾向
性も有していたことが認められる。なお,このような対人関係からくる感
情的ストレスに対しては,被告人が成長するにつれ,引きこもりや空想等
でそれを抑圧したり,職を変え,接触を避けて回避するといった防衛規制
でもって,ある程度は解消することもできるようになっていた。
イ被告人の認識内容とその評価
まず,前記認定事実によれば,被告人が近隣者らから被害を受けていた
との事実の有無に関しては,被告人ら一家は,被告人が幼少の頃から,母
屋の権威を盾にするAら母屋の人間から見下され,理不尽な仕打ちを受け
続けており,子供のころからの被告人の粗暴な行動もあって,被害者ら近
隣住民から疎んじられ,新宅の当主でもあるMが家出し,残りの家族はそ
の家に留まって生活を続けているということもあり,被告人やその家族の
ことが近隣住民の井戸端会議の格好の話題となるような状況もあり,被告
人が,隣接するV家の住人から被告人ら家族の会話を盗み聞きされている
と感じるような出来事も実際にあったことが認められる。このような状況
に照らすと,被告人が,母屋の人間から常に見下され,近隣住民らから疎
外され,うわさ話の対象になっており,これらの者から監視されたり,何
をされるか分からない,何らかの嫌がらせを受けることもあるのではとい
った認識ないし被害者意識を抱くことは,被告人の立場に置かれたとき,
通常人でもあり得ることであり,被告人のそのような認識をもって現実の
状況から大きく逸脱した通常あり得ない妄想であると断ずることはできな
い。その認識内容にかなりの誤解や思い過ごしが含まれていたとしても,
,うわさ話があればその全てを被告人らに対する悪口と考えてしまうことは
対人関係を単純に敵対的・被害的に捉えてしまう被告人の性格からも十分
理解可能である。また,監視されていると思い,自分らの動静を知られま
いとして,身内からもみても異常さを感じるほど過敏な,警戒と監視のた
めの行動をとっていたことについても,前述の感情的ストレス耐性が低い
ことから,そのストレスをできるだけ避けようとする防衛本能によるもの
として十分理解できるものであるし,近隣者に対する過剰な攻撃行為がみ
られた点についても,近隣者らが少しでも被告人の権利を侵害すると,侮
辱ととらえ,被害を受けたとして,激しく攻撃的な反応行為に出てしまっ
たものであり,前述の被告人の有する正義感や攻撃的な性格からも了解で
きるものであり,犯行前にみられた,これら被告人の異常にもみえる行動
についても,妄想といえるような被害者意識があったことを窺わせるよう
な事情には当たらない。
この点,K鑑定は,被告人がAら母屋の人間やB一家ら近隣住民らに憎
しみを抱いた点は措くとしても,そのような被害者意識があるからといっ
て,短時間の間に7名も殺害し,1名に対しても瀕死の重傷を負わせると
いう行為に及んだこととは不釣り合いであり,人を殺害するという多大な
エネルギーのいる行為を一定時間継続していることも,通常了解できず,
精神病態下にあった可能性を指摘して,いわば,本件犯行動機には妄想を
前提にしないと理解できないものがあると判断したものである。
しかし,前述したとおり,被告人の,衝動的,爆発的な攻撃性といった
性格や,刃物を持ち出して反撃する行動傾向からすると,近隣者らから受
けた蓄積したストレスに耐えきれなくなれば,今まで以上の激しい反撃行
為,刃物を用いた殺傷行為に及ぶことも十分考えられる。直接のきっかけ
は近隣者の一人からの侮辱であるが,このことから多数の近隣者の殺害行
為に発展した理由や,K鑑定のいう殺害という多大なエネルギーを維持で
きた理由については,被告人は,前述のとおり,人格的な未熟さと偏りを
持っていたところ,職を転々とした後に自宅に戻って母と暮らし始めた以
後は,Aら母屋の人間やB一家ら近隣住民らとの接点が増え,対人関係の
ストレスを回避することができず,長年にわたり,恨みや憎しみ,好奇の
目に対する不快感を蓄積することになり,被告人やJを侮辱した母屋の人
間及びB一家に対する殺意を固定化させた平成14年以降も,これらの者
の殺害を決意しながら,その行為の重大性から実行の機会が得られないま
ま,更なる恨みや憎しみを蓄積させていき,抑圧や回避もままならぬ状況
でそのストレスは被告人の防衛の閾値を超えて高まり続けていたときに,
本件のきっかけとなったCの殺害をまず決意して,包丁を持って追い掛け
たが,その姿を見失って殺害できず,その怒りが収まらない困難な状況に
直面して,被告人の防衛規制は容易に破綻してしまって,前々から反撃と
して殺害を考えていた,迫害者の象徴であるAら母屋の人間と,駐車場を
巡るトラブルでいわば被告人のトラウマともなっていたB一家から順に殺
害を決行するという情動行為に至ったもので,被告人のこのような心理的
な機序は十分了解可能であるし,著しく高まった感情的ストレスを発散さ
せるエネルギー放出行為かつ被告人の正義,公平感に則った,迷いのない
行動でもあり,被告人の体力からみてもその心的エネルギーを維持し得た
ことは十分理解可能といえるものである。
また,K鑑定やこれに依拠する弁護人は,被告人の近隣住民らに対する
憎しみは,殺害後もなお残存しており,訂正不能である点も指摘するが,
被告人が長年にわたり蓄積してきた近隣住民らに対する憎しみは,被告人
にとって相当大きなものであったといえ,被告人はむしろ自分が被害者で
あるという認識を有している上,被告人の性格,とりわけ,頑固で,根に
持ちやすく,自分の意見や信念に固執する傾向を考慮すれば,訂正不能で
ある点も妄想性障害の影響によるものとはいえず,被告人の本件犯行に至
る経緯と被告人の性格によるものと考えられる。
したがって,このような被告人が形成してきた人格及びAら母屋の人間
や近隣住民らとの間の長年にわたる確執を考慮すると,本件犯行当時,被
告人が,Aら母屋の人間及びB一家など近隣住民らから見下され,理不尽
な扱いを受けていると感じ,これらの者に対する殺意を抱いたことは,被
告人の立場に置かれた通常人であってもそのような考えを抱くことはあり
得,必ずしも現実と程遠い考えであると断ずることはできず,被告人が妄
想を抱いていたとはいえない。
ウ小括
以上検討したところによれば,被告人の前記認識は,持続性妄想性障害
にいう「妄想」であるとはいえないのであるから,K鑑定が,被告人の前
記認識は了解不能であり,持続性妄想性障害にいう「妄想」である旨判断
している点は,前提事実の評価を誤ったものであり,これを前提に,被告
人につき妄想性障害であると鑑別したK鑑定を採用することはできない。
他方,被告人の母屋の人間や近隣住民らに対する被害的認識を「妄想」
,,であるとは評価せず被害念慮あるいは妄想様観念であるとするL鑑定は
前提事実を適切に評価した合理的な判断であり,当裁判所はこの鑑定結果
を採用した。
したがって,信用できるL鑑定によれば,被告人は,本件犯行当時,妄
想性障害に罹患してはおらず,情緒不安定性人格障害に不安性(回避性)
人格障害の特徴を併せ有していたに過ぎないと認められる。
(3)L鑑定の参考意見について
L鑑定においては,被告人の養育環境は劣悪であった上,幼児期より,て
んかん発作に関連すると思われる表出性言語障害が認められ,これが対人関
係や社会化の過程に様々な困難をもたらすと同時に,被告人の人格形成に大
きな影響を及ぼし,加えて隣人らに対する強固な被害念慮が本件犯行を促す
上で重要な役割を果たしたのであって,これらの点を総合すれば,被告人に
限定責任能力を認めても不当ではないとの意見が述べられている。また,L
鑑定人の証言によれば,被告人の有する表出性言語障害は,その前提と推測
,,されるてんかんという生物学的なものと関係しているということでそれが
病的,疾病価の高いものがあり,本件犯行を促す重要な一因としての被害念
慮も事情に入れると,限定責任能力という判断をする余地もあることを示唆
したとされる。
そこで検討するに,まず,論拠の一つとして,被告人の養育環境の劣悪さ
を指摘するが,父Mに利己的暴力的な性格の偏りや家庭を顧みない身勝手な
行動があり,母屋親族との確執により母Jらが伯母Aらから嫌がらせやいじ
めを受けていたことなど,確かに良好とは言い難く,被告人の人格形成に影
響したことは否定できない。しかし,父Mは,大手の会社に勤務して人並み
以上の稼ぎの中からある程度の生活費を入れており,母Jは,優しく誠実な
人柄で,昼夜働いて生活費を補う傍ら,被告人ら子どもに愛情を注いできて
おり,曲がりなりにも両親が揃い,子ども3人を高校に行かせるだけの経済
力もあったもので,養育環境が著しく劣悪であるとまではいえず,同じ環境
でも被告人の弟や妹は立派に成長しているのであり,通常人の規範意識,価
値観が養えないほどの劣悪なものであったとして,被告人に対して責任能力
を軽減させる事情の一つとして過大評価することには疑問がある。
次に,被告人の持っていた表出性言語障害については,たしかに,L鑑定
,,の指摘するとおり被告人は生後半年くらいから3歳くらいになるまでの間
,,ひきつけを起こすことが度々あり2歳ころまでほとんど話さず発語が遅れ
中学生ころから軽度の吃音があり,被告人自身,自分の話し方を気にしてい
るところもあって,このようなてんかん発作に関連すると思われる表出性言
。語障害が被告人の人格形成に何らかの影響を及ぼした可能性は否定できない
しかしながら,被告人は,発語は遅れていたものの,先天的な聴覚障害者と
異なり,耳から入った他人の話については理解できていた様子である上,被
告人のひきつけも,3歳になるころには収まり,それ以降ははっきりと言葉
も喋るようになり,知的能力にも特段問題はなく,他者とのコミュニケーシ
ョンに大きな問題があった事実は見受けられない。L鑑定人は,被告人の表
出性言語障害は,てんかん発作と関連した後天型(脳障害,頭部外傷等によ
る)と見ることができる,脳器質的な問題が関与している可能性を思わせる
ものである旨をいうが,被告人の現在の身体所見には,有意な器質的異常は
,,認められていないしてんかんという身体的病変ないし病気があると疑って
被告人の犯行には,病的で,疾病価値の高いものが関わっているものとして
も,それを責任能力の判断における他の精神障害の疾病と同列に論じること
はできない。また,被告人の場合,表出性言語障害のためコミュニケーショ
ン能力が非常に障害されて,社会に出るときその弱点を全部押さえ込んだた
め,非常に偏った人格が形成されたので,例外的に,生物学的に影響があっ
た,病的と評価しうるという説明があるが,この点は,前述のとおり,被告
人は対人関係は不得手ではあったが,コミュニケーション能力が非常に障害
されたというほどの事実は認められないものである。かえって,被告人は,
感情表現が器用ではなく,すぐに行動に出る一面はあるものの,弟ら家族と
は通常の関係を保ち,親しい友達や信頼できる教師も数人おり,義務教育を
経て高校も卒業するなど,生活環境や人間関係も劣悪とまではいえないし,
成人してからは,職にも就いて特に目立つトラブルを起こすことなく働き,
トラブルや不本意な出来事があっても,退職など当該環境から自ら身を引く
ことで対処しており,被告人は,自己の人格的偏りを認識し,その成長過程
において,回避的な形とはいえ,衝動性,粗暴性など自己の人格的偏りが行
動に表われることを抑制する術を自分なりに身につけ,実行する能力も有し
ていたことが認められる。
第3に,被害念慮についても,確かに強固なものではあったが,L鑑定人
も証言するとおり,その被害念慮に直接基づいて犯行がなされたわけではな
く,これが決定的な引き金となったわけではないとの評価であることからす
ると,その被害念慮が被告人の事理弁識判断を著しく困難ならしめたもので
,,,はないことはもちろん被告人の有する感情ストレス耐性の低さや攻撃性
歪んだ正義感等の性格が制御困難な情動行為を招いただけであり,その被害
念慮が被告人の行動制御能力を著しく低下させたものでもないことが認めら
れる。
したがって,L鑑定の前記参考意見は理由がなく,これを採用することは
しない。
第3結論
以上検討したところによれば,本件各犯行は被告人の形成してきた人格障害
,,の影響のほか被害者らに対する憎悪や被害念慮等を原因とするものであって
てんかんと関連すると思われる表出性言語障害等の影響についても,責任能力
の著しい低下を招くものとはいえないから,被告人には,本件各犯行当時,完
全責任能力が認められる。
(量刑の理由)
本件は,被告人が,判示の経緯で,近隣に居住する親族や隣人らを一挙に殺害し
た上自宅に放火することを企て,深夜,その各居宅内等において,順次8名の被害
者に対し,骨すき包丁で突き刺すなどして7名を殺害し,1名に重傷を負わせた殺
人,殺人未遂の犯行を行い,その後,母と同居していた自宅にガソリンを撒くなど
して放火してこれを全焼させた現住建造物等放火の犯行を敢行したという,犯罪史
上稀に見る凶悪,重大事案である。
本件殺人等の犯行の動機についてみると,犯行に至る経緯及び動機は前記認定の
とおりであるが,被告人は,幼少の頃から,被告人ら家族のことを見下す本家筋に
当たる母屋の人間に対して恨みや憎しみを募らせ,成人してからは,被告人ら家族
のことをうわさ話の対象にし,見下した態度を取る近隣住民に対しても恨みや憎し
みを長年にわたり募らせ,これらの者をいつか殺害しようと思っていたが実現でき
,,ずにいたところある近隣住民との諍いで怒りの感情が高まったことを契機として
まず同人を殺すことを決意したが,それが騒ぎとなって捕まったりすれば,かねて
から殺害しようと思っていた本件被害者らに対する殺害行為ができなくなることを
慮って先にその実行に移したものである。被告人は,暴力的行動に出やすい性向を
改めることなく,自分の浅慮さや思い込みから,被害者らに一方的に原因があると
怨恨を抱いて感情的ストレスをため込み,それを爆発させたものであって,非常に
身勝手で理不尽な考え方に基づくものであり,近親者との確執や,近隣者とのトラ
ブルに起因して,被告人が恨みや憎しみを抱く事情はあったにしろ,被告人の人格
的な偏りがトラブルを多発させ,転居による回避策を拒ませた面もあるし,もとよ
り被害者らに殺害を甘受せねばならないほどの落ち度がないことは当然であって,
このような動機及び経緯に酌むべき点はない。
殺人等の犯行の態様をみると,被告人は,本件の機会にこれらの者を全員確実に
殺害することを決意するや,前記認定のとおり,あらかじめ凶器として玄能や骨す
き包丁2本を準備した上で,深夜周囲の者が寝静まるのを待って,まず母屋にいた
伯母Aらを襲い,命乞いをする次男Dを骨すき包丁で突き刺すなどして殺害し,A
の頭部を玄能で殴打して頭蓋骨陥没骨折等の重傷を負わせ,気絶した同女を死亡し
たものと思い,いったん自宅に戻った。そして,被告人は,別の骨すき包丁を持っ
,,,,て近隣のBらを襲い次々と一家4名を骨すき包丁で突き刺して殺害しその後
被告人は,母屋の方で声が聞こえたことから,母屋の人間であれば殺さねばとの思
いから再度母屋に戻り,そこで,意識を取り戻したAの連絡で駆け付けた長男Hと
その妻I,さらには逃げるAに対し,骨すき包丁で突き刺し,H及びAを殺害し,
Iに瀕死の重傷を負わせた。被告人は,複数人を殺害する目的を達成するため,驚
くべき冷静さでもって合理的に犯行を遂行しており,被害者らの懇願や抵抗にいさ
さかも怯むことなく,鋭利な骨すき包丁で,いずれも頭部,頸部,胸部など身体の
枢要部を狙って,何度も執ように突き刺すなどし,7名もの被害者を次々と惨殺し
たのであり,これだけの重大犯罪を犯すことに対するためらいなどは微塵もなく,
強固な殺意に基づく,冷酷かつ残忍な犯行であると言わざるを得ず,犯情は極めて
悪質である。
殺人等の犯行の結果をみると,被害者らは,深夜,安心して寝ていたところを,
突然刃物等を持って侵入してきた被告人に襲われ,あるいは,異変に気付き,11
0番通報するなどして被害者方に駆け付けたところを,被告人に襲われ,執ように
攻撃を受け,7名もの尊い人命が奪われ,1名が九死に一生を得るような生命の危
険にさらされたのであって,結果は誠に重大である。被告人の凶行の犠牲になった
伯母Aの一族のうち,A(被害当時80歳)は,夫との間に次男一女をもうけ,夫
に先立たれた後も,農業の傍ら牛乳配達をするなどして生活し,娘と旅行するなど
して余生を過ごしてきたものであり,その長男H(被害当時55歳)は,工事関係
資材の製造販売会社に勤務し,妻Iとの間に3人の子供をもうけ,長男の行く末を
案じ,長女に初孫が生まれるのを楽しみにしていたものであり,Aの次男D(被害
当時46歳)は,機械製作工場に工務課長として勤務し,妻との間に3人の子供を
もうけ,就職や進学をしていた子供らの将来を楽しみにし,通勤の関係でA方に泊
まっていたものである。また,B一家のうち,B(被害当時64歳)は,定年後も
,(),,建設会社に勤務し妻E被害当時64歳との間に一男一女をもうけて生活し
長男F(被害当時27歳)は製薬会社に勤務する青年であり,長女G(被害当時2
6歳)は仕事の傍ら通関士の資格を取るため勉学していたものである。いずれの被
害者も,家族で支え合いながらこれまでの人生を精一杯生きてきたものであり,若
年で将来に夢や希望を抱いていた者もおり,今回このような目に遭う理由がないの
に,突然被告人の凶行によって生命を絶たれた無念さは察するに余りある。夫を殺
害された直後に自らも被害に遭ったその妻Iをはじめ,被害者らの遺族が,被告人
に対し極刑を望んでいるのは当然である。また,本件は,その重大性,異常性に加
え,その経緯の特異性から,近隣住民に深刻な不安と衝撃を与えたもので,その社
会的影響も甚大であるといえる。
現住建造物等放火の点についてみても,実母らが住み慣れた家でもあるのに犯行
後に自分の古い家の外観が報道されるのが恥であるという身勝手な理由で放火して
おり,ガソリンを用いたために家屋が大きく燃焼して全焼するに至ったが,深夜の
犯行で,隣家への延焼や隣人らの逃げ遅れの危険もあり,前記殺人の犯行とあいま
って,近隣住民にも大きな不安感を与えたものであり,これもまた犯情は悪質であ
る。
被告人は,これだけの凶悪重大犯罪を犯したにもかかわらず,本件犯行を全く反
省悔悟しておらず,それどころか,殺し損ねた人物がいたことに心残りがあり,被
告人が受けた数々の仕打ちからすれば,本件のような形で仕返しを受けるのも当然
と見ている節もあり,被害者らに責任を転嫁し,本件犯行を正当化する態度を示し
ている。
以上の諸事情を考慮すると,被告人の刑事責任は極めて重大であるというほかな
い。
他方,被告人にとって有利に考慮すべき事情についてみると,被告人の居住して
いた地域において,被告人家族が,伯母家族から長年にわたり嫌がらせやいじめを
受けていた事実があり,そのような環境のもとで,被告人の人格が形成され,被害
念慮を形成していったこと,加えて,被告人の父親の養育面を含め家庭を顧みない
態度等被告人の生育歴に不遇な面があること,幼少期のてんかんに影響すると思わ
れる表出性言語障害が被告人の偏った人格形成にある程度の影響を及ぼした可能性
は否定できないこと,本件犯行の事実については素直に認め,犯行後自殺を図って
いること,被告人に前科前歴はなく,長期間身柄拘束を受けていることなどが挙げ
られる。
そこで,検察官が求刑する死刑の当否についてみるに,死刑が人命を永遠に奪い
去る冷厳な極刑であり,真にやむを得ない場合にのみ適用すべき窮極の刑罰である
ことにかんがみても,既に指摘したような本件各犯行の罪質,動機,犯行態様こと
に殺害の手段方法の残虐性,非情性,そして何よりも7名もの尊い生命が奪われた
という結果の格別の重大性,遺族の被害感情の厳しさ,社会的影響,犯行後の情状
等からすると,被告人の罪責はあまりにも重大というべきであって,被告人に有利
な情状とした前記諸事情を最大限考慮に入れても,罪刑の均衡,特別予防,一般予
防等の見地からして,被告人に対しては,極刑をもって臨むしかないと判断する次
第である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑死刑,骨すき包丁2丁の没収)
(検察官藤井理出席)
平成21年6月12日
神戸地方裁判所第4刑事部
岡田信裁判長裁判官
森岡孝介裁判官
荒金慎哉裁判官

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛