弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人(附帯被上告人)敗訴の部分を破棄し、高松高等裁判所
に差戻す。
     本件附帯上告を棄却する。
     附帯上告費用は附帯上告人(被上告人)の負担とする。
         理    由
 本件上告理由及び附帯上告理由は、本判決末尾添付の別紙記載のとおりである。
 上告代理人清家栄の上告理由第三点について。
 原審の確認したところによると、本件金一三〇万円の債務は、被上告組合が昭和
二四年一一月二四日訴外Dに対し上告人その他の連帯保証のもとに貸付けた消費貸
借上の債務で、(1)元本の弁済は、昭和二五年七月三一日限り金一九万五〇〇〇
円、昭和二六年一月から同二七年七月までの間一月及び七月の各末日(計四回)限
り金一六万二五〇〇円宛、昭和二八年一月から同二九年一月までの間一月及び七月
の各末日(計三回)限り金一三万円宛、昭和二九年七月三一日限り金六万五〇〇〇
円を支払つてこれをなすこと(2)利息は年一割一分とし毎年一月及び七月の各末
日限り未払元本に対する分を支払うこと(3)債務不履行の場合は当然期限の利益
を失い、未払元利金にこれに対する完済まで日歩四銭の割合による遅延損害金を付
して一時に支払うこと、なる約定があり、また原判示金二〇万円の別口債務は、被
上告組合が昭和二五年一一月五日頃同訴外人に対し貸付けた消費貸借上の債務で(
1)元本の弁済は、昭和二六年一月以降前記金一三〇万円口と同一期日に同一割合
に分割して支払うこと(2)利息は年一割一分とし、昭和二六年一月三一日までの
分を同年同月同日、昭和二六年二月一日以降は毎年二月一日から翌年七月三一日ま
での分を同年同月同日、八月一日から翌年一月三一日までの分を同年同月同日限り
それぞれ支払うこと(3)債務不履行の場合の特約は前記金一三〇万円口と同様、
の約定があつたものであつて、両債務とも抵当付であつたが抵当物件たる船舶は当
初の契約において抵当権実行の方法以外任意処分を為し得る特約に基き任意処分さ
れ、なお、債務者訴外Dは右両債務の利息の各一部(前者は金四万三六一二円五〇
銭、後者は一万五九九九円五〇銭)を支払つたのみで昭和二六年以来行方不明とな
つたというのである。
 ところで、原判示のF丸は、以上両債務の担保として提供されたものと認定され
てある以上、その処分代金を右二口の債務のいずれに充当するかにつき、債権者債
務者の間に明示黙示の合意ないし指定の意思表示のあつたことの認定されていない
本件においては、民法四八九条所定のいわゆる法定充当の方法に従い充当を行うべ
きものであるところ、原審確定の前記事実に徴すれば右二口の債務がいずれも既に
弁済期にあることはこれを窺うに足りるけれども、そのいずれが債務者である訴外
Eにとつて弁済の利益が多いか若し利益相同じきときはそのいずれの債務が先に弁
済期到来したものであるかは必ずしも明確ではないのである。
 然るに、原審が何等首肯するに足りる理由を示すことなく、前記F丸処分代金を
先ず金二〇万円口の残利息金並びに元本に充当し、次いでこれを本件金一三〇万円
口に充当したのは、審理不尽または理由不備の違法があるものといわなければなら
ない。
 されば、他の論点につき判断するまでもなく、原判決中上告人(附帯被上告人)
敗訴の部分は破棄を免れない。
 被上告代理人二宮栄春の附帯上告理由について。
 原審は、上告人(附帯被上告人)の「F丸は本件金一三〇万円の債務の担保であ
つたものであるから、その任意処分代金四一万円はすべて右債務に充当さるべきで
ある」との抗弁を一部認容し、右代金の一部を本件債務に充当したにすぎず、当事
者の申立てない事項につき判決したものではないから、原判決には所論の違法はな
い。
 よつて、上告につき民訴第四〇七条第一項、附帯上告につき同第三九六条、三八
四条一項、九五条、八九条を適用し、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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