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令和3年1月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
令和元年(ワ)第24336号商標権移転登録手続請求事件
口頭弁論終結日令和2年12月4日
判決
原告株式会社ラブラーク
同訴訟代理人弁護士今井俊裕
被告10
主文
1被告は,原告に対し,別紙商標権目録記載の商標権につき,平成2
7年4月1日売買を原因とする商標権の移転の登録手続をせよ。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由15
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,原告は被告から別紙商標権目録記載の商標権
(以下「本件商標権」という。)を買ったと主張して,売買契約に基づき,本20
件商標権の移転の登録手続を求める事案である。
1前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証
拠は文末に括弧で付記した。なお,書証は特記しない限り枝番を全て含む。以
下同じ。)
⑴当事者等25
原告は,自動車部分品等の製造販売等を目的とする株式会社である。
株式会社カルマ(以下「カルマ」という。)は,自動車部品等の販売等を
目的とする株式会社であり,被告は,カルマの代表取締役である。
(本項につき,争いがない)
⑵事実経過
ア被告は,平成8年6月19日,本件商標権に係る商標(以下「本件商標」5
という。)について商標登録出願をし,平成9年12月12日,本件商
標権について設定の登録がされた。本件商標権について,平成19年8
月14日及び平成29年12月12日,存続期間の更新登録がされた。
(甲17)
イカルマは,本件商標を付した自動車部品等を販売する事業(以下「コラ10
ゾン事業」という。)を行っていた。
原告は,カルマに対し継続的に自動車用品等の商品を販売していたが,
カルマの原告に対する売買代金の支払に2000万円以上の滞納が生じ
た。
原告及びカルマは,平成27年春頃までの間に,原告が,以降,①カル15
マに対し上記売買代金の支払を請求しないこと,②カルマからコラゾン
事業を引き継いで行うこと,③被告及びカルマの従業員2人を雇用する
ことなどを内容とする合意(以下「本件合意」という。)をした。
原告は,同年4月からコラゾン事業を行うようになり,その後,被告及
び上記従業員2人を雇用した。20
(本項につき,争いがない事実のほか,甲3~5,22~27,弁論の
全趣旨)
ウ被告は,平成29年2月,原告を退職した。(甲31)
被告は,本件商標権の存続期間の更新登録の申請をし,同年12月12
日,同存続期間を更新した旨の登録がされた。(甲17)25
カルマは,現在,事業活動を行っていない。(争いがない)
2争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は,被告が原告に対し本件商標権を譲渡したかである。
(原告の主張)
被告は,平成27年春頃までの間に,カルマが原告にコラゾン事業を譲渡す
る本件合意をしたことに伴い,原告に対し本件商標権を譲渡した。5
その後,原告及び被告は本件商標権の移転の登録の申請をその存続期間の更
新登録の申請時にすることとしたところ,原告は最近までこそのことを失念し
ていた。
(被告の主張)
否認する。10
カルマは,財務強化目的でコラゾン事業を原告との共同運営としただけであ
り,原告にコラゾン事業を譲渡したものではないし,被告は原告に本件商標権
を譲渡していない。
被告が原告を退職してから本件商標権の存続期間の満了までの間,原告から
被告に本件商標権に関する連絡は何もなく,被告は原告が本件商標権に興味が15
ないものと理解した。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前提事実,証拠(甲34。ただし,後記認定に反する部分を除く。)及び弁
論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。20
⑴被告は,平成8年6月19日,本件商標について商標登録出願をし,平成
9年12月12日,本件商標権について設定の登録がされた。
カルマは,日本国内において,本件商標を付した自動車部品等を販売する
コラゾン事業を行うようになり,その後,海外においても同事業を展開する
ようになった。(甲16)25
被告は,平成17年7月28日,本件商標について標章の国際登録に関す
るマドリッド協定の千九百八十九年六月二十七日にマドリッドで採択された
議定書に基づく国際登録出願をし,保護の効果が及ぶ領域としてオーストラ
リア連邦,中華人民共和国,欧州共同体,シンガポール共和国及びアメリカ
合衆国を指定して国際登録(以下「本件国際登録」という。)を受けた。
(甲9)5
本件商標権について,平成19年8月14日,存続期間の更新登録がされ
た。
⑵原告及びカルマは,自動車用品等の売買取引を継続的に行っていたが,カ
ルマの原告に対する売買代金の支払に滞納が生じたことなどから,平成27
年春頃までに,原告がカルマに対して売買代金を請求しないこと,原告がカ10
ルマのコラゾン事業を引き継ぎ,被告,カルマの従業員であったA及び被告
の子であるBを雇用することなどを内容とする本件合意をするに至った。な
お,原告は,当時,カルマに対して貸付金債権も有していた。
原告及びカルマは,同年3月から同年4月にかけて,原告の代表取締役と,
カルマの代表取締役であり原告の副社長となった被告の連名,又は,カルマ15
の代表取締役である被告の名義で,各取引先に対し,同年3月31日をもっ
て「カルマの所有するコラゾン事業部を原告に移行することになった」,
「カルマは,九州地区におけるスバル専門ショップ,コラゾン商品取扱特約
店として活動していく」旨記載した書面を配布し,取引に係る支払は原告の
コラゾン事業部に対してするよう連絡した。(甲3~5)20
原告は,同年4月からコラゾン事業を行うようになり,被告等を雇用した
ほか,複写機,パーソナルコンピューター,電話機等に係るカルマのリース
契約上の地位を承継した。また,コラゾン事業に係る取引先からの支払は,
原則として,原告の銀行預金口座にされるようになった。(甲28~30)
⑶被告は,平成27年6月10日,従前委任していた弁理士から,本件国際25
登録の存続期間が同年7月28日に満了し,本件国際登録に基づく商標権を
維持するために更新登録の申請が必要であるとして,同申請に係る手数料の
見積書を添付した電子メールを受信した。(甲7,8)
被告は,同年6月24日,原告に対し,上記弁理士からのメールを転送し,
「商標更新と同時に名義変更料金を御社でも一度ご確認お願いします。アメ
リカと日本は既に更新していましたので,名義だけの変更になります。」旨5
記載した。(甲8)
⑷原告は,平成27年6月26日,上記⑶の弁理士とは別の弁理士から,本
件国際登録の存続期間の更新の申請に加え名義人の変更の記録の請求に係る
手数料の見積りを得て,同弁理士にこれらを委任し,同弁理士は,同年7月
23日までに,本件国際登録の存続期間の更新の申請及び名義人を原告にす10
る変更の申請を行った。その後,本件国際登録は存続期間が更新され,また,
被告自身が商標の譲渡人として申請書類に署名するなどして,同年9月には,
本件国際登録の名義人が被告から原告に変更された。(甲7,9,12~1
4)
⑸原告の勘定元帳によれば,平成27年12月31日付けで,原告のカルマ15
に対する貸付金債権と,カルマの原告に対する営業権に係る代金債権が相殺
処理された。(甲19)
⑹被告は,平成29年2月,原告を退職した。
被告は,本件商標権の存続期間の更新登録の申請をし,同年12月12日,
同存続期間の更新登録がされた。20
被告は,原告に対し,平成30年9月に,「SPIRITRACING
事業部」を名乗り,被告と連絡を取り合っているなどとして,本件商標の使
用について確認と対応を求める旨の電子メールを送信し,同年10月には,
本件商標の使用を止めるよう求める旨の電子メールを送信した。(甲32,
35~38)25
2争点(被告が原告に対し本件商標権を譲渡したか。)について
⑴原告代表者は,原告とカルマ及び被告は,カルマが原告にコラゾン事業を
譲渡すること,この事業譲渡の対象には被告の有する本件商標権及び本件国
際登録に基づく商標権を含むこと,原告のカルマに対する貸付金債権とカル
マ及び被告の原告に対する上記各商標権を含むコラゾン事業の譲渡代金債権
を相殺すること,原告はカルマに対して有する売買代金債権の請求をしない5
こと等を内容とする本件合意をし,その後,本件国際登録に基づく商標権
(本件合意から遠くない時期に存続期間が満了する状況にあった。)につい
ては,その更新と併せて本件合意に基づき被告に名義を移転したが,本件商
標権については,本件合意時にはまだ一定の存続期間があったため,その存
続期間が満了するときに存続期間の更新登録の申請と併せて名義の移転の登10
録の申請をすることを被告との間で合意したところ,原告代表者は最近まで
そのことを失念していた等と陳述する(甲34)。
また,原告の役員であるCは,被告は,平成29年2月に原告を退職する
前に,C対し,本件商標権は存続期間が満了するときに原告に対する移転の
登録の申請を行うことになっており,原告代表者に了解を得ている旨話した15
等と陳述する(甲31)。
⑵原告は,本件合意に基づき,平成27年4月からコラゾン事業を引き継い
で行うようになり,被告を含むカルマの従業員との間の雇用契約やカルマの
リース契約上の地位を承継して,コラゾン事業に係る取引先への支払は原則
として原告の口座からされるようになるなどしたこと,被告から本件国際登20
録に基づく商標権の移転を受けたこと,原告とカルマの間の債権債務関係が
整理されていること等(前記1⑵,⑷,⑸)に照らせば,本件合意の内容は
コラゾン事業の譲渡であったと認められる。そして,コラゾン事業を行うに
当たって極めて重要である「CORAZONコラゾン」という商標につい
て,本件国際登録に基づく商標権は原告に移転されたにもかかわらず,本件25
商標権のみを原告に移転せず被告に留保するというのは極めて不自然であり,
本件商標権もコラゾン事業と共に原告に譲渡されたと考えるのが合理的であ
る。
そして,現に,商標権の更新の申請や名義の変更に関係して,被告は,本
件合意後の平成27年6月に,弁理士から送信を受けた本件国際登録の存続
期間が満了することが記載された電子メールや更新登録の申請に係る手数料5
の見積書を原告に転送するに当たり,原告に対し,「商標更新と同時に名義
変更料金を御社でも一度ご確認お願いします。アメリカと日本は既に更新し
ていましたので,名義だけの変更になります。」と記載したメールを送信し
た(前記1⑶)。これは,被告自身が,本件国際登録の更新だけでなく,本
件国際登録及び本件商標権について名義変更が必要なこと,日本の本件商標10
権については,直ちに更新する必要はないため名義変更だけが必要となるこ
とを述べるものであって,被告も,同時点において,日本の本件商標権につ
いても原告に譲渡して名義変更が必要であると認識していたものと認められ
る。そして,本件国際登録については,更新時期が近かったために更新手続
と同時期に名義変更の手続をすることとし,現に被告も申請書類に譲渡人と15
して署名して,原告に名義の変更がされた一方(同⑷),原告と被告が,本
件商標権については,存続期間がまだ残っていたため,その移転の登録の申
請を存続期間の満了時に存続期間の更新登録の申請と併せて行うことにする
に至ったというのは,自然な事実経過として理解できる合理的なものである。
なお,被告は,原告を退職してから本件商標権の存続期間満了までの間,20
原告から被告に本件商標権に関する連絡がなかったことから,原告が本件商
標権に興味がないものと理解したと主張している(前記第2の2(被告の主
張))。原告代表者の陳述(前記⑴)に係る合意によれば,本件商標権の存
続期間満了の際に原告にその名義の変更手続がされることになるところ,被
告の上記主張は,被告も本件商標権の存続期間満了までの間に同合意に基づ25
いて本件商標権について原告から何らかの連絡があると考えていたことと矛
盾するものではない。
以上から,原告とカルマ及び被告が,平成27年春頃までに,カルマが原
告に対しコラゾン事業を譲渡すること,同事業譲渡の対象に被告の有する本
件商標権等を含むことを内容とする本件合意をして,また,その後,本件商
標権の存続期間が満了するときに名義の移転をすることを合意した旨の原告5
代表者の上記陳述等は信用できる。
⑶したがって,原告と被告は,被告が原告に対し本件商標権を譲渡し,また,
その名義をその存続期間の更新時(平成29年12月12日)に原告に移転
することを合意していたものと認められるから,原告は,本件商標権の名義
を原告に移転するよう請求することができる。10
第4結論
以上によれば,原告の請求は理由があるから認容すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官柴田義明
裁判官佐伯良子
裁判官棚井啓
別紙
商標権目録
登録番号第4091974号
出願日平成8年6月19日
登録日平成9年12月12日5
商標CORAZONコラゾン
商品及び役務の区分第12類
指定商品自動車並びにその部品及び附属品
以上

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