弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
一 当事者双方の申立
1 控訴人
 「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し昭和五八年八月四日付でした労働
者災害補償保険法による障害補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。訴訟費用
は、第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
2 被控訴人
 主文同旨の判決を求めた。
二 当事者双方の主張
次のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これ
を引用する。
1 原判決二枚目裏五行目の「十津川村」の前に「吉野郡」を、同三枚目表三行目
の「そこで、」の次に「控訴人は、」をそれぞれ加え、同九行目の「、一五条」を
削る。
2 同裏六行目の「昭和五九年五月一日」を「昭和五九年五月一日付で」と、同八
行目の「右請求」から九行目末尾までを「昭和六一年三月四日付で再審査請求を棄
却する旨の裁決がされ、同月二八日ころ控訴人に対し右裁決書謄本が送達され
た。」とそれぞれ改める。
3 同五枚目裏六行目の「四〇〇ヘルツ」を「四〇〇〇ヘルツ」と、同六枚目表九
行目、同八枚目表一一行目及び同九枚目裏一〇行目の各「認定基準」をいずれも
「認定に関する労働省の運用基準」と改め、同六枚目表一〇行目の「昭和六一年三
月一八日」の次に「参照」を加え、同七枚目表六行目の「③」を「(Ⅰ)」と、同
一〇行目の「④」を「(Ⅱ)」と、同裏六行目の「⑤」を「(Ⅲ)」とそれぞれ改
める。
4 同八枚目裏二行目の「結果」の次に「及びこれに基づく評価」を、同四行目の
「耳鼻科はなく、」の次に「オージオメータも設置されていなかったため、同病院
では、」をそれぞれ加え、同八行目から九行目にかけての「にもかかわらず、」を
句点と、同一〇行目から一一行目にかけての「聴力検査を実施し」を「オージオメ
ータによる聴力検査が実施され」とそれぞれ改め、同九枚目表九行目の「前記」の
次に「(二)(3)の留意事項に掲記」を、同裏七行目の「高齢」の次に「(右各
検査当時六六歳)」を、同九行目の「大きいこと」の次に「、控訴人が従事してき
た業務が屋外での立木の伐採であって、職場における騒音の程度は屋内の閉鎖的な
作業現場とはおのずから異なっていると思慮されること」をそれぞれ加える。
5 同一〇枚目表一〇行目の「、障害」から同裏九行目の「補償給付を受ける権
利』は、」までを削り、同一一枚目表五行目の「補償給付を受ける権利』は、そ
の」を「補償給付を受ける権利』の消滅につき法が右のとおり定めた趣旨は、右権
利の」と、同裏七行目から八行目にかけての「ないことからすると」を「ないこと
等事柄の性質からすると、」と、同一二枚目表三行目から四行目にかけて、同八行
目の各「治った」をいずれも「なおった」とそれぞれ改める。
6 同二八枚目表四行目及び五行目の各「奈良県」の次にいずれも「吉野郡」を、
同七行目の「岐阜県」の次に「郡上郡」をそれぞれ加える。
三 証拠(省略)
       理   由
一 請求原因3ないし5の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、請求原因2の判断に先立ち、まず控訴人のした法一二条の八に基づく
障害補償給付の請求が、被控訴人主張のように除斥期間経過後ないし消滅時効完成
後にされたものか否かについて検討する。
1 法四二条は、障害補償給付を受ける権利は五年を経過したときは「時効」によ
って消滅するものと規定し、また、法三五条二項は、保険給付に関する請求に基づ
く決定がされた場合においてもなお消滅時効が進行することを当然の前提としたう
えで、その決定を不服としてする審査請求及び再審査請求を「時効の中断」に関し
て裁判上の請求とみなす旨規定している。また、法は、昭和二二年法律第五〇号に
よる制定以来数次の改正を経ており、その間、法四二条そのものも改正の対象とな
っているが、その給付を受ける権利の消滅原因を終始「時効」であると明示してい
るのであって、これらからすると、法四二条により権利が消滅するのは除斥期間に
よるのではなく、時効によるというのが立法の経緯と法文の文理に沿う解釈である
ということができる。
 ところで、障害補償給付を受ける権利は労働基準監督署長による支給決定処分に
基づいて初めて金銭債権として行使できるものであるから、右支給決定処分前にお
いては、法一二条の八及び労働基準法七七条により保険給付を受けるべき者といえ
どもその支払請求をすることができず、したがって、給付されるべき金銭債権の時
効ないしその中断ということもあり得ない。そうすると、法四二条所定の「権利」
は、被控訴人主張のとおり、法一二条の八により労働基準監督署長に支給決定処分
を求める請求手続をする権利にすぎないというべきであって、この権利自体につい
て法三五条二項の時効中断の余地を考え難いことも、被控訴人主張のとおりである
が、さりとてこのことから法四二条が除斥期間を定めたものということもできな
い。
2 ところで、以上のとおり、法四二条が法一二条の八第二項により支給決定処分
を求める請求手続の権利行使期間を制限した規定であると解するとしても、このこ
とから、この期間の起算点を右権利の発生時点であるとする必然性があるわけでは
なく、右の起算点は、民法一六六条一項の一般原則に則り、「権利ヲ行使スルコト
ヲ得ル時」、すなわち、その権利の行使につき法律上の障害がなく、かつ、権利の
性質上その権利行使が現実に期待できる時と解するのが相当である(最高裁昭和四
〇年(行ツ)第一〇〇号同四五年七月一五日大法廷判決・民集二四巻七号七七一頁
参照)。
 この点について、控訴人は、民法七二四条を類推すべきであると主張するが、損
害及び加害者を覚知しなければ損害賠償請求権を行使できない民法の不法行為によ
る損害賠償請求権の消滅時効の起算点と業務起因性の疑をもつことのみにより法一
二条の八第二項の請求をなし得る本件の場合とを同一視することは到底できないと
いうべきであるから、民法七二四条を本件に類推することには十分な根拠はなく、
殊に右の起算点を一般人の認識可能性を離れ当該労働者の不知により決することは
相当ではなく、右主張を採用することはできない。
3 そこで、控訴人の難聴による業務起因性の認識の可能性及び消滅時効の成否に
ついて検討するに、その認定判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決二二
枚目表二行目冒頭から同二六枚目裏七行目末尾までに説示のとおりであるから、こ
れを引用する。
(一) 原判決二二枚目表六行目の「甲第一三号証」を「甲第一〇号証、乙第一三
号証、弁論の全趣旨により成立を認める乙第一七、一八号証(ただし、官署作成部
分の成立は当事者間に争いがない。)、」と改める。
(二) 同二四枚目表九行目の「原告は、」の次に「昭和五三年ころ」を加え、同
裏一〇行目「振動病で」から同二五枚目表三行目末尾までを次のとおり改める。
 「振動病のほか耳鳴りも訴えて徳島健生病院で受診したものであって、控訴人
は、遅くとも騒音職場離脱時の昭和四九年一一月ころには右聴力障害が控訴人の従
事した立木伐採作業の業務に起因するものであることを認識することができたもの
というべきである。」
(三) 同二六枚目表一行目の「認識」の次に「の可能性」を加える。
三 よって、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由
がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九
五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 野田宏 瀬戸正義 園部秀穂)

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