弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人宮崎巌雄の上告理由について。
 原審の確定したところによれば、本件土地はもと訴外Dの所有名義に登記されて
いたが、右登記は上告人Aと右訴外人との通謀虚偽表示による無効のものであつて、
本件土地は同上告人の所有に属していたのであり、同上告人の破産管財人は同訴外
人に対しこのことを理由として真正な名義回復のため本件土地所有権移転登記手続
請求訴訟を提起し、同訴訟は名古屋地方裁判所岡崎支部昭和四二年(ワ)第二二〇
六号事件として係属し、昭和四三年四月一七日口頭弁論終結のうえ、同月二六日右
請求認容の判決がなされ、同判決はその頃確定したものであるところ、被上告人は、
これらの事情を知らずに善意で、同訴外人に対する不動産強制競売事件において、
前記訴訟の口頭弁論終結後である昭和四三年六月二七日、本件土地を競落し、同年
七月二二日その旨の所有権取得登記を経由したというのである。
 以上の事実関係のもとにおいては、上告人Aは、本件土地につきD名義でなされ
た前記所有権取得登記が、通謀虚偽表示によるもので無効であることを、善意の第
三者である被上告人に対抗することはできないものであるから、被上告人は本件土
地の所有権を取得するに至つたものであるというべきである。このことは上告人A
と訴外Dとの間の前記確定判決の存在によつて左右されない。そして、被上告人は
同訴外人の上告人Aに対する本件土地所有権移転登記義務を承継するものではない
から、同上告人が、右確定判決につき、同訴外人の承継人として被上告人に対する
承継執行文の付与を受けて執行することは許されないといわなければならない。
 ところが、原審の確定したところによれば、上告人Aは右確定判決につき被上告
人に対する承継執行文の付与を受けて、これに基づき、本件土地の所有名義を自己
に回復するための所有権移転登記を経由したというのである。
同上告人の右行為は違法であつて、右登記の無効であることは前説示に照らし明ら
かである。結論において右と同趣旨に帰する原審の判断は正当であつて、原判決に
所論の違法はなく、論旨は理由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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