弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人中坊忠治の上告理由第一点について。
 賃料を金銭をもつて支払うべき旨を合意したのみで、その数額の具体的確定を後
日に譲つたとしても、当事者間に賃貸借関係の成立することはありうるところであ
る。原審は、上告人(被控訴人)と被上告人B1、同B2の被相続人(控訴人)D
とが昭和二四年五月二九日従来の賃貸借の目的物の範囲を変更し、その一部たる二
階二室を賃貸人(承継人)たる上告人に返還し残部のみを引き続き賃借人たるDに
おいて使用収益し同人はその賃料を金銭をもつて支払うことを合意したが、その数
額を具体的に確定する合意がまだなされなかつた等との事実を認定しているのであ
つて、原審の認定した事実関係の下では、右当事者間に賃貸借たる債権関係が成立
したものということができ、この点に関する原判決の判断は相当であり、論旨は理
由がない。
 同第二点について。
 論旨前段は、原審の地代家賃統制令六条の解釈を非難するが、昭和二四年五月二
九日当時施行の同令四条二項は、建物の一部についての賃料の数額については停止
統制額の存しないことを明らかにし、同令六条一項後段は昭和二元年一〇月一日以
後に建物の一部を賃貸の目的物とすることとなつた場合はすべて都道府県知事の認
可を受けて統制額を設定すべきことを規定しているので、当時建物の一部を賃貸し
た者は、従前全部を賃貸していたと否と、また、全部につき停止統制額のあつたと
否とを問わず、知事の認可を受ける義務の存したことには変りがなく、この点に関
する原審の判断は相当であつて所論の違法はない。
 論旨後段は、本件のように家屋のうち八畳と三畳の二間は上告人が使用し、残存
部分はDが賃借する旨の契約が成立したことが当事者間に争のない場合には、経験
則上、そのこと自体から当事者間に客観的合理的な家賃を支払う合意があるのであ
り、かような家賃とは特別の事情のない限り従前の家賃を両当事者の使用畳数によ
つて按分した金額であるとみるべき旨主張するが、本件のような地代家賃統制令の
適用さるべき賃料の数額については、所論のように、単に使用畳数のみを基準とし
て自動的に新賃料が定まるべきものであるとの経験則があるとはいい難く、原判決
の賃料額決定基準に関する説示は同令六条に基く通牒の趣旨に照らし相当であつて、
所論は当らない。
 同第三点について。
 係争家屋の部分の賃料数額に関する合意が当事者間に何時成立したかの点につい
ては、上告人が本件訴訟においてこれを具体的に明示的に主張した事跡は記録上明
瞭とはいい難いけれども、上告人は「右賃料を月金三九〇円としたい、乙れに異議
があれば一〇日内に申出られたい」旨の記載ある甲三号証(記録二四丁内容証明郵
便)を提出しているから、少くとも右提出の際右の旨の合意が成立した事実を主張
したものと認めるのを相当とすべく、Dはこれに対し直ちに応じ難い旨回答したこ
とを推認するに足る記載のある乙二号証(記録一一二丁葉書)を提出し、そして、
原審は右の点について審理の結果「上告人が賃料額を一方的に甲三号証の内容証明
郵便をもつて決定請求したが同被上告人はこれに応ぜず、その後も合意成立に至ら
ないまま催告をなすに至つた」旨認定しているのであるから、原審も上告人が前記
のように主張したものと認めこれにつき審理判断をしたものと認められる。原判決
には所論の違法ありというをえない。
 同第四点について。
 およそ債権関係の成立には必ずしもその当初においてその給付が具体的に確定す
るを要するものでなく、単に確定しうべきに止まる場合においてもその成立ありと
解するを妨げないのではあるが、記録によると、本件において、上告人は、賃料の
数額については後日当事者合意の上これを確定する趣旨であつた旨主張するだけで、
右合意不成立の場合でも債務者は統制額の範囲内であればこれに応ずる約旨であつ
たか、具体的履行期を何時とする約旨であつたか等の点につき主張するところがな
いから、原審が右合意の不成立及び適正な賃料の数額であるべき認可処分のまだな
されていないこと等を認定判断したのみで、進んで賃料相当額等につき認定判示せ
ず上告人の催告を不適法と判断しても所論の違法はなく、論旨は理由がない。
 よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛