弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人株式会社Aを罰金2000万円に,被告人B株式会社を罰金
400万円に,被告人C株式会社を罰金300万円に,被告人Dを
懲役1年6月に処する。
被告人Dに対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の全部の
執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社A(以下「被告会社A」という。)は,岐阜県各務原市a町b丁
目c番地d(平成28年2月29日以前は東京都港区e丁目f番g号h)に本店を
置き,健康食品の製造販売等を目的とする株式会社,被告人B株式会社(以下「被
告会社B」という。)は,岐阜県各務原市i町j丁目k番地lに本店を置き,健康
食品の販売等を目的とする株式会社,被告人C株式会社(以下「被告会社C」とい
う。)は,岐阜県各務原市m町n丁目o番地pに本店を置き,広告代理店業等を目
的とする株式会社であり,被告人Dは,上記各被告会社の実質的経営者としてそれ
らの業務全般を統括していた。被告人Dは,
第1被告会社Aの業務に関し,その法人税を免れようと企て,架空の販売促進費
を計上するとともに架空の仕入高を計上するなどの方法により,所得を秘匿し
た上,
1平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度における実際
所得金額が2億4187万8469円であったにもかかわらず,平成24年5
月29日,東京都港区q丁目r番s号所在の所轄t税務署において,同税務署
長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により,所
得金額が4568万9974円で,これに対する法人税額が1273万830
0円である旨の虚偽の法人税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,
もって不正の行為により,同事業年度における正規の法人税額7159万50
00円と前記申告税額との差額5885万6700円を免れ,
2平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度における実際
所得金額が8134万9599円であったにもかかわらず,平成25年5月2
8日,前記t税務署において,同税務署長に対し,財務省令で定める電子情報
処理組織を使用して行う方法により,所得金額が5189万1302円で,こ
れに対する法人税額が1238万9800円である旨の虚偽の法人税確定申告
をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同事業年度
における正規の法人税額1990万1600円と前記申告税額との差額751
万1800円を免れ,
第2被告会社Bの業務に関し,その法人税を免れようと企て,売上高の一部を除
外するなどの方法により,所得を秘匿した上,
1平成22年11月1日から平成23年10月31日までの事業年度における
実際所得金額が5733万1185円であったにもかかわらず,平成23年1
2月21日,岐阜市u町v丁目w番地x所在の所轄y税務署において,同税務
署長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により,
所得金額が1664万3285円で,これに対する法人税額が403万100
0円である旨の虚偽の法人税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,
もって不正の行為により,同事業年度における正規の法人税額1623万74
00円と前記申告税額との差額1220万6400円を免れ,
2平成23年11月1日から平成24年10月31日までの事業年度における
実際所得金額が1129万6279円であったにもかかわらず,平成24年1
2月27日,前記y税務署において,同税務署長に対し,財務省令で定める電
子情報処理組織を使用して行う方法により,欠損金額が125万0703円で,
所得税額293円の還付を受けることとなる旨の虚偽の法人税確定申告をし,
そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同事業年度におけ
る正規の法人税額242万8500円と前記還付所得税額との合計242万8
700円(100円未満の端数切捨て)を免れ,
第3被告会社Cの業務に関し,その法人税を免れようと企て,売上高の一部を除
外するなどの方法により,所得を秘匿した上,平成24年2月1日から平成2
5年1月31日までの事業年度における実際所得金額が3701万5411円
であったにもかかわらず,平成25年3月28日,前記y税務署において,同
税務署長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法によ
り,所得金額が0円で,所得税額194円の還付を受けることとなる旨の虚偽
の法人税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為に
より,同事業年度における正規の法人税額1014万4300円と前記還付所
得税額との合計1014万4400円(100円未満の端数切捨て)を免れた。
(法令の適用)
1被告会社Aについて
被告会社Aの判示第1の1及び2の各所為はそれぞれ法人税法163条1項,平
成26年法律第10号附則164条により同法による改正前の法人税法159条1
項に該当するところ,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,刑法48条2項
により各罪所定の罰金の多額を合計した金額の範囲内で被告会社Aを罰金2000
万円に処する。
2被告会社Bについて
被告会社Bの判示第2の1及び2の各所為はそれぞれ法人税法163条1項,平
成26年法律第10号附則164条により同法による改正前の法人税法159条1
項に該当するところ,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,刑法48条2項
により各罪所定の罰金の多額を合計した金額の範囲内で被告会社Bを罰金400万
円に処する。
3被告会社Cについて
被告会社Cの判示第3の所為は法人税法163条1項,平成26年法律第10号
附則164条により同法による改正前の法人税法159条1項に該当するので,所
定金額の範囲内で被告会社Cを罰金300万円に処する。
4被告人Dについて
被告人Dの判示各所為はそれぞれ平成26年法律第10号附則164条により同
法による改正前の法人税法159条1項に該当するところ,各所定刑中いずれも懲
役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,刑法47条本文,10
条により犯情の最も重い判示第1の1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で
被告人Dを懲役1年6月に処する。情状により刑法25条1項を適用してこの裁判
が確定した日から3年間その刑の全部の執行を猶予する。
(量刑の理由)
1本件は,被告人Dが,自らが実質的に経営する3社について,所得を秘匿し
て法人税を免れた事案である。ほ脱額は,被告会社Aについて合計6636万円余,
被告会社Bについて合計1463万円余,被告会社Cについて1014万円余の合
計9113万円余に上り,ほ脱率も高率であって,結果は重大である。犯行動機に
も酌むべき点は見当たらない。犯行態様は,多額の販売促進費を計上したり,決算
修正と称して不自然な金額を計上したりするなど,巧妙とまではいえないが,3社
の決算期が異なることを利用し,所得を秘匿しようとした点で悪質であることは確
かである。
ところで,被告人Dは,所得の具体的な操作はE税理士が行っており,販売促進
費の計上についてもE税理士の承認を得ていた旨述べ,弁護人は,これらの事実か
ら,本件が被告人DとE税理士の共同正犯と評価されるべき事案であると主張する。
しかし,不正な方法によらなければ納税額を過少にすることなど不可能であるのに,
E税理士にそれを依頼したのは,被告人Dである。そして,本件の利益が被告人ら,
特に被告人Dに帰属したことは,明らかである。上記事情は,被告人Dの責任を何
ら軽減するものではない。
以上によれば,被告人らの刑事責任は重いというべきである。
2各被告会社は,代表者の下,それぞれ修正申告を行い,加算税を含めて,納
付に尽力している。
被告人Dは,各犯行を認めた上で,反省の言葉を述べている(E税理士の関与に
ついても,責任を転嫁するつもりはないと述べている。)。また,同人に前科はな
い。自宅を売却し,各被告会社の納税に協力することを誓っている。
これらの事情も参酌し,被告人らを主文の刑に処してその責任を明確にした上,
被告人Dについては,その執行を猶予することが相当と判断した。
(求刑被告会社Aにつき罰金2000万円,被告会社Bにつき罰金400万円,
被告会社Cにつき罰金300万円,被告人Dにつき懲役1年6月)
平成29年9月11日
名古屋地方裁判所刑事第4部
裁判官小野寺健太

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