弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は末尾に添附した弁護人木戸実作成名義の控訴趣意書と題する書
面のとおりで、これに対し当裁判所は次のとおり判断する。
 第一点 原判決によればクロロホルム百瓩及び亜砒酸百瓩についても輸出したも
のと認定し、その証拠の標目中に(1)昭和二十五年十一月十八日附大蔵事務官の
差押目録(クロロホルム)(2)同年十一月二十日附同上(亜砒酸)を掲げている
ことは所論のとおりである。
 しかし原判決挙示の証拠によれば右クロロホルム亜砒酸もその他の貨物とともに
中華民国に輸出する目的で東京都中央区所在a岩壁からA株式会社所有B丸に積み
込み中華民国へ向け出航して同国太沽港に到達し、同地で他の貨物はこれを陸揚げ
したが右物件は陸揚げする必要がなくなつたのでこれを持ち<要旨第一>帰つたもの
であることを認めるに十分である。しからば貨物を輸出する目的で我国領土外に仕
向けられた船に積載した以上たとえこれを外国に陸揚げせず、そのまゝ
我国へ持ち帰つたとしても輸出したものと認めるべきであるから、原判決の証拠に
所論持ち帰つた貨物を大蔵事務官が差押えた目録を挙げても何等理由にくい違いを
生ずるものではない。論旨は理由がない。
 第二点 原判決によれば本件密輸出入については被告人及び原審相被告人C、同
D等三名が共<要旨第二>同正犯であることを認定し、被告人だけから金二十二万九
千十一円を追徴したことは所論のとおりである。しかし関税法第八十三
条第一項には「犯罪に係る貨物にして犯人の所有又は占有に係るものは之を没収す
る」旨規定され、同条第三項はこれをうけて「没収すべき物の全部又は一部を没収
すること能はざるときはその没収すること能はざる物の原価に相当する金額を犯人
より追徴する」旨定められているから、共同正犯の場合であつてもその物の所有者
が判明しておればその所有者である犯人から沒収し又は追徴すればよいので共同正
犯の全員からそれを没収し又は追徴しなければならないものではない。しかして原
判決が挙示した証拠(被告人の原審公判廷における供述)によれば、本件貨物は被
告人が自己の金で買いうけた物又はこれと交換したものであることが明らかである
から原審は本件貨物を被告人の所有にかゝるものと認めたので、他の共犯者からは
追徴せず被告人だけから追徴したものであると認めるのが相当である。従つて、原
判決には何等所論のような矛盾した判断はしてなく理由にくい違いは存しない。論
旨は理由がないものである。
 (裁判長判事 吉田常次郎 判事 石井文治 判事 鈴木勇)

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