弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人箕田正一の上告理由および上告代理人市井栄作の上告理由について。
 民法七九五条本文は、配偶者のある者は、その配偶者とともにするのでなければ、
養子縁組をすることができない旨を規定しているが、本来養子縁組は個人間の法律
行為であつて、右の規定に基づき夫婦が共同して縁組をする場合にも、夫婦各自に
ついて各々別個の縁組行為があり、各当事者ごとにそれぞれ相手方との間に親子関
係が成立するものと解すべきである。しかるに、右の規定が夫婦共同の縁組を要求
しているのは、縁組により他人との間に新たな身分関係を創設することは夫婦相互
の利害に影響を及ぼすものであるから、縁組にあたり夫婦の意思の一致を要求する
ことが相当であるばかりでなく、夫婦の共同生活ないし夫婦を含む家庭の平和を維
持し、さらには、養子となるべき者の福祉をはかるためにも、夫婦の双方について
ひとしく相手方との間に親子関係を成立させることが適当であるとの配慮に基づく
ものであると解される。したがつて、夫婦につき縁組の成立、効力は通常一体とし
て定められるべきであり、夫婦が共同して縁組をするものとして届出がなされたに
もかかわらず、その一方に縁組をする意思がなかつた場合には、夫婦共同の縁組を
要求する右のような法の趣旨に反する事態を生ずるおそれがあるのであるから、こ
のような縁組は、その夫婦が養親側である場合と養子側である場合とを問わず、原
則として、縁組の意思のある他方の配偶者についても無効であるとしなければなら
ない。しかしながら、夫婦共同縁組の趣旨が右のようなものであることに鑑みれば、
夫婦の一方の意思に基づかない縁組の届出がなされた場合でも、その他方と相手方
との間に単独でも親子関係を成立させる意思があり、かつ、そのような単独の親子
関係を成立させることが、一方の配偶者の意思に反しその利益を害するものでなく、
養親の家庭の平和を乱さず、養子の福祉をも害するおそれがないなど、前記規定の
趣旨にもとるものでないと認められる特段の事情が存する場合には、夫婦の各縁組
の効力を共通に定める必要性は失われるというべきであつて、縁組の意思を欠く当
事者の縁組のみを無効とし、縁組の意思を有する他方の配偶者と相手方との間の縁
組は有効に成立したものと認めることが妨げないものと解するのが相当である。
 これを本件についてみるに、原審の認定するところによれば、昭和二六年九月一
四日、上告人およびその夫Dと被上告人との養子縁組の届出が、上告人には全く無
断でなされたこと、上告人は、DがEを妾として近所に住まわせるようになつたこ
とが原因となつて、昭和一六年八月頃から、養子F(ただし、戸籍上はDのみの養
子。)を連れてDと別居し、以後離婚届をするには至らなかつたものの、昭和三六
年六月一四日にDが死亡するまで、ついに夫婦の共同生活を回復することなく、本
件縁組届出の当時、Dと上告人との婚姻共同生活の実体は少なくとも一〇年間は失
われていて、事実上の離婚状態が形成されていたものであること、他方、Dは、上
告人が別居したのち間もなく、Eを自宅に住まわせて事実上の夫婦として同居生活
をしていたところ、F以外には子がなかつたため、老後のことをも考え、Eの希望
を容れて、近隣に住むG、同H夫婦の代諾により、その二女の被上告人(昭和二〇
年生)を養子とする本件縁組をしたものであり、その際、Eは被上告人をDと自分
との養子としたものと考え、縁組を世話した者にもGにも上告人との縁組という考
えは毛頭なく、そのような趣旨で縁組の披露も行なわれたのであるが、Dとしては、
事実上の妻Eとの家庭において被上告人を養子とするには、法律上ほかに方法がな
いため、上告人との共同縁組の形式をとつたものであること、被上告人は、上告人
と生活をともにしたことはなく、縁組以後もつぱらDおよび事実上の養母のEの二
人に養育され、Dが死亡するまで一〇年間親子として生活をともにしてきたこと、
上告人は、昭和三一年頃、自己が戸籍上被上告人の養母となつていることを知り、
Dにその理由をただしたが、同人がいずれうまく始末するというので、それ以上敢
えて追求しなかつたものであつて、上告人としては、被上告人が自己の養子とされ
ることは承諾せずその是正を求めたものの、Dの養子とされることは一貫して黙認
していたこと、以上の事実が認められる。そして、右の認定判断は、原判決(その
引用する第一審判決を含む。)挙示の証拠関係に照らして、肯認することができる。
 以上の事実関係のもとにおいては、被上告人の代諾権者であるG、同Hにおいて
も、Dにおいても、上告人との縁組の成否いかんにかかわらず、Dと被上告人との
間に縁組を成立させる意思を有し、現実にもその間に親子関係の実体が形成された
ものであり、Dと被上告人との間に単独に親子関係が成立することは、上告人の意
思に反せず、Dもしくは上告人の家庭の平和を乱しまたは被上告人の福祉に反する
ものでもなかつたと解されるのであつて、Dについてのみ縁組を有効とすることを
妨げない前示特段の事情が存在するものと認めるのが相当である。したがつて、本
件養子縁組がDと被上告人との間においては有効であると認めた原審の判断は、正
当として是認することができる。
 論旨は、違憲をいう部分もあるが、実質は、原審の右事実認定および縁組の効果
に関する法律解釈を非難するに帰するものであるところ、原審の認定判断に所論の
違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一

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