弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人松浦松次郎の上告理由第一点および第五点二について。
 原判決挙示の証拠によれば、本件根抵当権は、被上告人が上告人に対して有しま
たは有すべき債権のみならず、原判決の判示する他の債権者の債権を将来被上告人
において譲り受けることを予想し、かつ、これらの債権をも担保するために設定さ
れた旨の原判決の事実判断は、当審も正当として肯認することができる。
 原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠
の取捨・選択、事実の認定を非難するに帰し、採用しがたい。
 同第二点について。
 原判決が、その挙示の証拠により、適法に確定したところによると、上告人は、
被上告人との間において、原判示の債権者の代表者として、同人を根抵当権者とす
る根抵当権設定契約を結んだが、これは、当時被上告人が上告人に対して有する債
権の担保のためのみでなく、将来被上告人が譲り受くべきことのある原判示の他の
債権者の上告人に対する債権の担保のためでもあるというのであるから、被上告人
と上告人との関係においては、これらの債権はすべて被上告人の債権になるものと
して本件根抵当権が設定されたものであることは、原判決の判文上、明らかである。
 したがつて、このような根抵当権設定契約の有効であることは、論旨第四点およ
び第五点一に判示するとおりであり、結局、論旨は、原判決を正解しないでこれを
非難するか、または、独自の見解に立つて、これを非難するに帰し、採るをえない。
 同第三点について。
 原判決および一件記録によれば、所論の根抵当権が実行されたという事実は、口
頭弁論において主張されていないことが認められるから、この主張のあることを前
提とする論旨は、失当として排斥を免れない。
 同第四点および第五点一について。
 本件根抵当権は被上告人が上告人に対して有しまたは有すべき債権のみならず、
原判示の他の債権者の上告人に対する債権を被上告人において譲り受けることを予
想し、かつ、これらの債権をも担保するために設定されたものであることは、論旨
第一点および第五点二について判示したとおりである。
 そして、被上告人が上告人に対して有しまたは有すべき債権とは、上告人、被上
告人間の織物ならびに織物加工品の商取引および手形取引契約にもとづいて生ずる
ものを意味し、被上告人が譲受けを予想してした原判示の他の債権者の債権とは、
織物の取引を営む上告人と他の債権者との取引から生じたものを意味することは、
原判決の判文から、十分これを了承することができる。
 このように、被上告人と上告人間の織物ならびに織物加工品の商取引および手形
取引契約にもとづいて生ずる債権ならびに上告人の織物の取引に関し生じかつ被上
告人においてその譲受けが予想される債権を担保することを目的としてされた根抵
当権設定契約は、その対象となる債権の範囲は上告人と被上告人との間において認
識することができるものであるから、その限度では、有効と解するのが相当である。
 結局、原判決には、所論のような違法はなく、所論は、採用しがたい。
 同第六点について。
 原判決挙示の証拠によれば、原判決の認定した事実を肯認しえないわけではない。
 原判決には、所論のような違法があるとはいいがたく、所論は、結局、原審の適
法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、または、原審で主張・認定の
ない事実を前提として、これを非難するに帰し、採用しがたい。
 よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条に従い、裁判官全員の一致で、主文
のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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