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平成11年(行ケ)第223号 特許取消決定取消請求事件(平成12年6月27
日口頭弁論終結)
判    決
   原      告      ヤマハ発動機株式会社
   代表者代表取締役     【A】
  訴訟代理人弁理士      【B】
   同             【C】
   被     告     特許庁長官【D】
  指定代理人     【E】
   同             【F】
   同             【G】
   同             【H】
   主    文
 特許庁が平成9年異議第75657号事件について平成11年6月2日に
した決定を取り消す。
    訴訟費用は被告の負担とする。
事    実
第1請求
  主文同旨
第2前提となる事実(争いのない事実)
1特許庁における手続の経緯
 (1) 原告は、名称を「自動車用クロスフロー型エンジンの排気装置」(後記訂
正審決による訂正前の名称「自動車用エンジンの排気装置」)とする特許第261
7114号発明(昭和63年5月31日特許出願、平成9年3月11日設定登録、
以下「本件発明」といい、本件発明に係る特許を「本件特許」という。)の特許権
者である。
 日産自動車株式会社は、平成9年12月3日、本件特許につき特許異議の申立て
をし、同申立ては平成9年異議第75657号事件として特許庁に係属したとこ
ろ、特許庁は、平成11年6月2日、「特許第2617114号の特許を取り消
す。」との決定(以下「本件決定」という。別紙1決定書の理由写し参照)をし、
その謄本は、同月21日、原告に送達された。
  (2) 原告は、平成12年2月4日、特許出願の願書に添付された明細書(以下
「本件明細書」という。)の発明の名称、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の
記載を特許請求の範囲の減縮等を目的として訂正する訂正審判の請求をしたとこ
ろ、特許庁は、同請求を訂正2000ー39019号事件として審理した上、平成
12年3月28日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。別
紙2審決書写し参照)をし、その謄本は、同年4月19日、原告に送達された。
 2 本件明細書の特許請求の範囲の記載
  (1) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲の記載
 車体前部のエンジン室内に直列型エンジンをクランク軸の軸線が車幅方向に延在
するように配設した自動車用エンジンにおいて、前記クランク軸の軸心を前輪の車
軸の軸心より高い位置に配設するとともに、シリンダを側面視においてシリンダヘ
ッドが前記車軸の上方に位置付けられるように後方へ傾斜さてシリンダ背面とダッ
シュパネルとの間に側面視略三角形状の空間を形成し、この空間に前記シリンダに
接続された排気マニホルドを配設すると共に、この排気マニホルドに触媒装置が設
けられた排気管を接続してなる自動車用エンジンの排気装置。
  (2) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲の記載(「」内が訂正された
箇所である。)
 車体前部のエンジン室内に直列型エンジンをクランク軸の軸線が車幅方向に延在
するように配設した自動車用「クロスフロー型」エンジンにおいて、前記クランク
軸の軸心を前輪の車軸の軸心より高い位置に配設するとともに、シリンダを側面視
においてシリンダヘッドが前記車軸の上方に位置付けられるように後方へ傾斜さ
「せ」てシリンダ背面とダッシュパネルとの間に側面視略三角形状の空間を形成
し、この空間に前記シリンダに接続された排気マニホルドを配設すると共に、この
「排気マニホルドはシリンダヘッドから下方へ向かって延出され、」排気マニホル
ドに触媒装置が設けられた排気管を接続してなる自動車用「クロスフロー型」エン
ジンの排気装置。
 3 本件決定の理由の要旨
 本件決定は、本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲に記載のとおりと認定し
た上で、本件発明は、本件決定に引用された刊行物(トヨタカムリ(EーSV10
系)新型車解説書、昭和57年3月)に記載されたものと同一であると判断し、特
許法29条1項3号に該当するとして、本件特許を取り消した。
第3 当事者の主張の要点
 1 原告
 本件訂正審決による訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは
明らかであり、本件特許を取り消した本件決定の取消しを目的とする本件訴訟の係
属中に本件特許について特許請求の範囲の減縮を目的とする本件訂正審決が確定し
た。
 そこで、本件決定が本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲に記載のとおりと
認定したことは誤りに帰し、この瑕疵は違法であるから、本件決定は取り消さなけ
ればならない。
 2 被告
 原告主張のとおり、本件特許について特許請求の範囲の訂正を認める本件訂正審
決が確定したことは認める。 
         理    由 
1 本件訂正審決の確定により本件特許について特許請求の範囲が前記のとおり訂
正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって本件特許について特許請
求の範囲が減縮されたことは明らかである。
 そうすると、本件決定が本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲に記載のとお
りと認定したことは、結果的に誤りがあることになり、この誤りは本件決定の結論
に影響を及ぼすものとして違法であることが明らかであるから、本件決定は取消し
を免れない。
2 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。
 東京高等裁判所第18民事部
    裁判長裁判官 永  井  紀  昭
    裁判官 塩  月  秀  平
    裁判官 橋  本  英  史

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