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平成20年12月11日判決言渡
平成19年(行ケ)第10214号審決取消請求事件(特許)
口頭弁論終結日平成20年10月2日
判決
原告株式会社HDT
同訴訟代理人弁護士稲元富保
同訴訟代理人弁理士平田忠雄
岩永勇二
遠藤和光
被告株式会社ネットインデックス
同訴訟代理人弁護士山内貴博
上田一郎
同訴訟代理人弁理士樋口正樹
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2006−80205号事件について平成19年5月10日にした
審決中「特許第3048964号の請求項1に係る発明についての特許を無効と,
する」との部分を取り消す。。
第2事案の概要
本件は,原告が「電話送受信ユニット及び移動体通信端末」とする名称の発明,
について特許権を有しているところ,その請求項1に係る発明についての特許を無
効とする旨の審決を受けたことから,その請求人である被告に対し,審決中の同無
効とする部分の取消しを求めた事案である。
争点は,後出の本件特許のうち請求項1に係る発明が,特開平9−149109
号公報(甲2)に記載された発明(以下,審決を引用する場合を含め「甲2発明」
という,特開平9−139972号公報(甲3)に記載された技術(以下,審決。)
を引用する場合を含め「甲3技術」という,国際公開第94/21058号(1。)
)(,「」。)994に記載された技術以下審決を引用する場合を含め甲4技術という
()。及び周知慣用技術との関係で進歩性特許法29条2項を有するかどうかである
1特許庁における手続の経緯
原告が特許権を有する発明の名称を「電話送受信ユニット及び移動体通信端末」
とする特許第3048964号は,平成9年6月24日に特許出願され,平成12
(。「」。)。年3月24日に設定登録された請求項の数6以下本件特許という甲8
これに対し,平成18年10月13日に被告から本件特許を無効にすることを求
める特許無効の審判請求がされ原告は平成18年12月29日に訂正以下本,,(「
件訂正」という)請求をした(甲10。。)
特許庁は,同請求を無効2006−80205号事件として審理した上,平成1
9年5月10日「訂正を認める。特許第3048964号の請求項1に係る発明,
についての特許を無効とする。特許第3048964号の請求項2ないし6に係る
発明についての審判請求は,成り立たない」との審決をし,その謄本は,同月1。
6日,原告に送達された。
2特許請求の範囲
本件訂正による訂正後の請求項1に係る発明(以下,審決を引用する場合を含め
「本件発明」という)の内容は,次のとおりである(なお,下線部が本件訂正部。
分である。。)
「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に
変換する機能と,マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出
,,力する送信信号に変換する機能と操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と
表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と,
前記電子回路を含み,前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端
末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと,
前記カートリッジに設けられ,前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を
入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し,
1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にすることを特
徴とする電話送受信ユニット」。
3審決の理由
審決のうち,本件発明を無効とすべきであるとした部分の理由の要旨は,次のと
おりであり,本件発明は,甲2発明,甲3及び甲4に記載された発明並びに周知慣
用技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,特許法29条
,。2項の規定により特許を受けることができないから無効とするというものである
(1)審決が認定する本件発明と甲2発明との一致点及び相違点1∼4
ア一致点
「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に
変換する機能と,マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出
力する送信信号を変換する機能と,操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と
を有する電子回路と,
前記電子回路を含み,前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた移動体通信端末に設
けられたスロットに収納されるような形状に形成されたカートリッジと,
前記カートリッジに設けられ,前記移動体通信端末との間で前記操作信号を入力するととも
に,前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し,
移動体通信端末を含む複数の通信端末に装着されて,前記複数の通信端末によって無線通信
を可能にする無線送受信ユニット(28頁4∼15行)。」
イ相違点1
「,,,電子回路が本件発明では表示部に表示する表示信号を生成する機能を有するのに対し
甲2発明では,このような機能を有するかどうか不明な点(28頁17∼19行)。」
ウ相違点2
「カートリッジが,本件発明では,前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の
移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されるのに
対し,甲2発明では,カートリッジ(基本部)が前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備
えた移動体通信端末(周辺部)に設けられたスロット(筒状の基本部把持部)に収納されるよ
うな形状に形成されるものの『複数の移動体通信端末』かどうか不明であるとともに,スロ,
ットに『全体が収納される』構成になっていない点(28頁21∼27行)。」
エ相違点3
「入出力部が,本件発明では,前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記
通話用音声信号を入出力する信号線を含むのに対し,甲2発明では,前記操作信号を入力する
とともに,前記通話用音声信号を入出力するための信号線を含むものの,その余の構成につい
ては不明である点(28頁29∼33行)。」
オ相違点4
「無線送受信ユニットが,本件発明では,1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通
信端末によって通話を可能にするのに対し,甲2発明では,一つの無線送受信ユニットが,複
数の通信端末のうち,移動体通信端末(周辺部)に装着されたとき,当該移動体通信端末で通
話を可能にする一方,他の通信端末であるパソコンに装着されたとき,当該パソコンで音声信
,。」号の受信を含む無線通信機能を使用可能にするものの通話を可能とするかどうか不明な点
(29頁2∼8行)
(2)相違点の検討
ア相違点1について
「携帯電話等に係る上記周知慣用技術を考慮すれば,甲2発明の電子回路は,実質的に表示
部に表示する表示信号を生成する機能を有すると解釈することが自然であるから,相違点1に
係る相違は実質的な相違ではない(29頁29∼32行)。」
イ相違点2について
「相違点2の全体としてみても,甲2発明に,前記甲4技術,甲3技術を適用し,本件発明
のように,カートリッジが『前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通
信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成される』よう構成す
ることは,当業者が容易になし得ることである(30頁30∼34行)。」
ウ相違点3について
「複数の信号線によって構成される甲2発明の入出力部における入出力の仕様は,必ずしも
PCMCIA規格に限定されず,また,PCMCIAの規格では,甲第5号証のように時分割
で同時に入出力されるような使われ方があるとしても,前記甲第4号証に開示されるとおり,
PCMCIAの規格は適宜改造されるものであると共に,一般に通信分野において,複数の信
号を同時に送信する際,共通信号線を時分割で使用するか,信号毎に独立の信号線を割り当て
,,,て送信するかは当業者が適宜選択する設計事項にすぎないのだから甲2発明の入出力部を
前記操作信号と前記表示信号を入出力し,前記通話用音声信号を入出力するよう構成する際,
甲2発明の入出力部が,本件発明のように『前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号,
線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む』よう構成することは,当業者が容易
になし得ることである(32頁30行∼33頁2行)。」
エ相違点4について
周知慣用技術を踏まえ甲2発明に甲4技術B判決注:審決は甲4技術Bとして一「,(,,「
つの電話送受信ユニット〔モジュラーユニット〕が,スピーカ及びマイクを備えた複数の移動
体通信端末のスロットに交代して装着されることにより,装着された各々の移動体通信端末に
おいて通話を可能にする電話送受信ユニット〔モジュラーユニット〕の技術」と認定した)。
を適用し,甲2発明のパソコンを,電話送受信ユニットが装着されて通話が可能にされる移動
体通信端末として構成し,本件発明のように『1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体
通信端末によって通話を可能にする』よう構成することは当業者が容易になし得ることであ
る(33頁21∼25行)。」
オ「上記相違点1∼4についての判断に加え,本件発明が奏する効果は,甲2発明,及び
甲第4号証,甲第3号証に記載された発明及び上記周知慣用技術から容易に予測できる範囲内
のものであり,格別のものではない(33頁26∼28行)。」
第3原告主張の審決取消事由の概要
審決には,以下のとおり,①甲2発明の認定を誤った結果相違点4の認定を誤っ
た(取消事由1,②甲4技術Bの認定を誤った(取消事由2,③相違点4に関す))
(。。),る容易想到性の判断を誤った取消事由3相違点1に関する判断の誤りを含む
④相違点2に関する容易想到性の判断を誤った(取消事由4。相違点2に関する甲
2発明の認定の誤りを含む,違法があるから,審決は取消しを免れない。。)
1取消事由1(甲2発明及び相違点4の認定誤り)
(1)甲2発明の認定の誤り
審決が,甲2発明として,
「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用
音声信号に変換する機能と,マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号
を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と,操作部からの操作信号に
基づいて所定の処理を行う機能とを有する電子回路と,
前記電子回路を含み,前記スピーカ及び前記マイクを周辺部に備えた周辺部に設
けられた筒状の基本部保持部に収納されるような形状に形成された基本部と,
前記基本部に設けられ,前記周辺部との間で前記操作信号を入力し,前記通話用
音声信号を入出力する信号線を含むコネクタとを有する無線通信機能ユニットであ
って,
前記無線通信ユニットは,一つの無線通信ユニットが,前記周辺部(移動体通信
端末)及びパソコンに共通に使用され,前記周辺部(移動体通信端末)に装着され
たとき,移動体通信端末によって通話を可能にする一方,前記パソコンに装着され
たとき,パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にする無線通信
機能ユニット(16頁6∼20行)と認定したことは誤っている。。」
ア甲2には,次のとおり記載されている(以下の下線は,原告が付記したもの
である。。)
「【】「,,(ア)0013前述の各部の機能を概略するとRFモージュル50は
無線周波数の処理用モジュールであり,変復調モデム52は,送信のためにチャン
ネルコーデック54からの信号を変調し,また受信のためにRFモジュール50か
,,,らの信号を復調するための変調復調器でありチャンネルコーデック54は送信
受信データの組立て,分解を行い,ADPCMコーデック56は適応型差分パルス
符号変調(データ圧縮,伸張)を行い,PCMCIAI/F58は,周辺部14ま
たは後述するパソコン等のPCMCIAI/Fと接続するためのインターフェース
である」。
(イ)「0014】ROM/RAM60,EEP−ROM62は,基本部12を【
制御するプログラムを格納し,作業中のワーキング領域となるメモリであり,マイ
クロコントローラ64は,ROMに格納されたプログラムに従って基本部12およ
,,び周辺部14内の各機能部品を制御するものであり音声/データセレクタ66は
PCMCIAI/F58からの音声またはデータを選択的にチャンネルコーデック
54またはADPCMコーデック56に転送し,またはそれらからの音声またはデ
ータをPCMCIAI/F58に転送するものである」。
(ウ)「0021】例えば,パソコン70からのデータの送信では,パソコンか【
らのデータは,基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレク
タ66に転送され,音声/データセレクタ66からチャンネルコーデック54に転
送され,チャンネルコーデック54によって送信データに組み立てられ変復調モデ
ム52によって変調され,RFモジュール50を介してアンテナ24によって無線
によって送信される」。
(エ)「0022】一方,他の電子機器からのデータの受信では,アンテナ24【
で受信した音声信号は,RFモジュール50で処理され,その後変復調モデム52
,,によって復調されチャンネルコーデック54によって受信データとして分解され
音声/データセレクタ66に転送され,次に,基本部12のPCMCIAI/F5
8を介してパソコン70に入力される」。
イ上記記載によれば,甲2に記載の「音声/データセレクタ66」は,基本部
12が周辺部14に装着されて通話を行うときにはADPCMコーデック56側に
切り替わり,基本部12がパソコン70などの周辺部14以外の他の電子機器に装
着されてデータを転送するときにはチャンネルコーデック54側に切り替わって,
ADPCMコーデック56を切り離し,パソコン70などがADPCMコーデック
56を使用できないようにするものである。
ウしたがって,基本部12をパソコン70に装着したときには,通話用音声信
号の変換機能を有する基本部12のADPCMコーデック56(通話のために必須
のもの)は,音声/データセレクタ66によって回路から切り離され,パソコン7
0が基本部12のADPCMコーデック56(通話のために必須のもの)を使用し
て通話を行うことは不可能になる。
エしたがって,甲2発明としては「前記無線通信ユニットは・・・前記パソ,,
コンに装着されたとき・・・パソコンによって通話を可能としない」と認定され,。
なければならないのであって,審決の甲2発明の認定は誤っている。
(2)相違点4の認定の誤り
審決が,本件発明と甲2発明との相違点4として「無線送受信ユニットが,本,
件発明では,1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話
を可能にするのに対し,甲2発明では,一つの無線送受信ユニットが,複数の通信
端末のうち,移動体通信端末(周辺部)に装着されたとき,当該移動体通信端末で
通話を可能にする一方,他の通信端末であるパソコンに装着されたとき,当該パソ
コンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にするものの,通話を可能と
するかどうか不明な点(29頁2∼8行)と認定したことは誤っている。。」
アまず,上記(1)の甲2発明の認定の誤りのとおり,甲2発明は「・・・前記,
無線通信ユニットは,一つの無線通信ユニットが,前記周辺部(移動体通信端末)
,(),及びパソコンに共通に使用され前記周辺部移動体通信端末に装着されたとき
移動体通信端末によって通話を可能にする一方,前記パソコンに装着されたとき,
パソコンによって通話を可能としない」のであるから「パソコンに装着されたと,
,」,「,き・・・通話を可能とするかどうか不明ではなくパソコンに装着されたとき
パソコンによって通話を可能としない」点が相違点として認定されなければならな
い(相違点の誤認。)
イまた,審決による甲2発明の認定においても,甲2発明の無線通信機能ユニ
ットが本件発明の「1つの回線を契約するだけで・・・複数の移動体通信端末によ
って通話を可能とする」ことは認定されていないのであるから,この点も相違点と
して認定されなければならない(相違点の看過。)
ウしたがって,本件発明と甲2発明との相違点4としては「本件発明が1つ,
の回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にするのに
対し,甲2発明では,一つの無線送受信ユニットが,複数の通信端末のうち,移動
体通信端末(周辺部)に装着されたとき,当該移動体通信端末によって通話を可能
にする一方,他の通信端末であるパソコンに装着されたとき,当該パソコンによっ
て通話を可能とせず,1つの回線を契約するだけでは複数の通信端末によって通話
を可能としない点」とされなければならない。
,,,よって審決の相違点4に関する認定は甲2発明と本件発明との相違点を誤認
看過したものであって,誤っている。
(3)以上のとおり,審決は,甲2発明の認定を誤っている結果,相違点4の認
定を誤っているだけでなく,審決による甲2発明の認定によっても相違点4の認定
を誤っているのであるから,相違点4の認定の誤りが結論に影響を与えること明白
であって,違法である。
2取消事由2(甲4技術Bの認定誤り)
,「(),(1)審決は甲4には一つの電話送受信ユニットモジュラーユニットが
スピーカ及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交代して装着され
ることにより,装着された各々の移動体通信端末において通話を可能にする電話送
受信ユニットモジュラーユニットの技術甲4技術Bが開示されている2()()」(
3頁16∼21行)と認定するが,この認定は誤っている。
以下のア∼エのとおり,甲4におけるモジュラーユニットは「パーソナルコン,
ピュータ(パソコン,PC)に設けられたスロットに全体が収納されるような形状
に形成されるモジュラーユニット(無線送受信ユニット(以下「甲4技術A」と)」
いう)であって「電話送受信ユニット」ではなく,もともと通話が可能な端末に。,
装着されたときに,当該端末が「通信」できるようにするものにすぎない。
ア甲4に記載の発明は,異なる通信規格に対応するモジュラーユニットを提供
するものである。
すなわち甲4にはItwouldbeanadvantagetherefortoprovideastandard,,「
PCMCIAcardmountedradiotransceiverwhichisreadilyreplaceableinorderto
enableelectronicequipmenttocommunicatewithvariousnetworksandin
」accordancewithvariousradiostandardsmerelybyinterchangingsuchacard.
(3頁25∼30行(訳:それ故,簡単に交換できる標準PCMCIAカードを)
搭載した無線トランシーバを提供することにより,そのような標準PCMCIAカ
ードを単に交換するだけで電子機器を色々なネットワークにより,かつ,色々な無
線規格に基づいて通信できるようにすることは有益である)と記載されている。。
この記載からすれば,甲4に記載の発明は,それ自体完結した機能を有する電子
機器が,異なる通信規格でも通信できるようにするものであって,モジュラーユニ
ットがそれを装着することで電子機器に新たな機能(電話として使用可能な機能)
を付与しようとするものではないと認められる。
イこのように,甲4に記載された発明におけるモジュラーユニットが,電子機
器に対して新たな機能を付与するものでないことは,次の点からも明らかである。
,。(ア)モジュラーユニットはモデムと無線トランシーバのみを含むものである
すなわち,甲4には「StillreferringtoFIG.3andasshownbydottedlines,
extendingthereacross,themodule31housesatelecommunicationscard29
includingaradiotransceiver36,whichmayincludeamodemsection37.(1」
1頁26∼29行(訳:引き続きFIG.3を参照すると,そこを横切って伸びる点)
線によって示されるように,モジュール31はモデム部37を含んでもよい無線ト
ランシーバ36を含む遠隔通信カード29を収容する)と記載されている。。
この記載から,モジュール31は,モデムと無線トランシーバだけを有し(甲2
の図4で示されるADPCMコーデック56に相当する通話のために必須の機能を
有しない,これは,第1,第4の機能に相当する部分である。。)
(イ)以下の点からも,ノートブック300,携帯電話309及びペン型コンピ
ュータ313は自ら電話機能を有するものであることが分かる。甲4に記載されて
いるモジュラーユニット(モジュール)は,ノートブック300,携帯電話309
が電話機能を使用して通話を行うときに「通信を可能にする」だけであって,ノ,
ートブック300,携帯電話309に「電話として使用可能な」機能を付与する,
言い換えれば「携帯電話309,ノートブック300によって通話を可能とする」
ものではないことは明らかである。これらのノートブック300,携帯電話309
は,モジュラーユニットがなくとも,もともと通話が可能であり,実際の通話を行
うときの「通信手段」としてモジュラーユニットを使用しているにすぎないのであ
る。
a甲4には「Severaltechnologiesmay,infact,resideonasinglecard,
withinthemodularunits31and131.Forexample,aMobitexandAMPS
communicationformatsmaybeutilized.Withtheunit31hereinshownplugged
intoanotebook300,datacommunicationoverMobitexmaybethereinprovided.
TelephonecallsmaylikewisebecompletedthroughtheAMPSsystemorother
format,whereinaheadset302isshownlinkedtothenotebook300.(19頁6」
∼14行(訳:事実上,いくつかの技術がモジュラーユニット31及び131内)
の単一カード上に常駐可能である。例えば,Mobitex及びAMPS通信フォーマット
。,,が使用可能であるユニット31を図のようにノートブック300の中に装着し
データ通信を行う。そこでは,Mobitexが提供される。電話もAMPSシステムや他
のフォーマットを通して同様に通話することができ,そこではノートブック300
に接続されたヘッドセット302が示されている)と記載されている。。
この記載からすると,モジュラーユニット31に含まれるのは「通信フォーマッ
ト」であるから,上記「電話もAMPSシステムや他のフォーマットを通して同様に
通話することができるとはノートブック300に含まれるAMPSシステム電」,(
話)を使用して通話するという意味である。
そうすると,ノートブック300自体が電話機能(電話として通話可能な機能)
を有する一方,モジュラーユニット31は,単にノートブック300に含まれるA
MPSシステムから与えられる信号を送信信号にして送信するという無線通信機能
しか有していない構成であることは明らかである。
b甲4には「StillreferringtoFIG.14,asecondutilizationofthe,
module31maybewithinacellulartelephone309.Thephone309incorporatesa
chassis309Aofconventionaldesign,orwhichincorporatesaspecialdisplay
(notshown).Themodule31isinsertedintoslot311andconnectedwitha
softwaregenerateddisplaythatcorrespondstotechnologyandthestandards
thatareactivated.Inthatregardatouchscreenmaythendisplaythe
availablephonefeaturesthatcanthenbedialed.Antenna312isshowntoup
standfromchassis310inaccordancewiththeaspectsoftheinvention
」()(,discussedabove.19頁32行∼20頁8行訳:さらに図14を参照すると
モジュール31の二番目の利用態様は携帯電話309の内部にあることだろう。こ
の電話309は,通常設計の,又は専用表示装置(図示せず)を備えたシャーシ3
09Aを含む。モジュール31は,スロット311の中に挿入され,有効な技術並
びに規格に対応したソフトウエア生成表示につながれる。その点に関し,タッチス
クリーンは,次にダイアルすることのできる有効な電話機能を表示するようにして
もよい。上述の本発明の形態に従い,アンテナ312はシャーシ310から直立し
て示されている)と記載されている。。
この記載からすると,携帯電話309はまさに「携帯電話」であって,携帯電話
309自体が電話として通話可能な機能を有し,一方,モジュール31は携帯電話
309が本来持つ機能である電話として使用されるときに通信をする無線通信機能
(「,〔〕〔〕①データ受信時アンテナから受信されるデータ用音声信号を変調復調
する機能〔以下「第1の機能」という,②〔データ用〕音声信号を変調して送信。〕
信号に変換する機能〔以下「第4の機能」という)しか有していない構成である。〕
ことが明らかである。
c甲4には「StillreferringtoFIG.14thereisshownapenbased,
computer313orsimilarstructurewhichservestoprovidepeninputwhile
generatingadisplaysimilartoacellularphonewhenactivated.Duetothe
factthatthesystemforacellularphoneisalreadyinthecomputerbyvirtue
ofthemodule31securedwithinslot314,theusercanusetheoptionof
telephoniccommunicationbysimplyconnectingaheadset316throughaninfra
redconnection318oraheadset320connectedbyaconventionalcable322.The
computercanthenbesimultaneouslyusedfordatacommunication,faxes,and
otherformsofinformationalexchangeswhicharedeemednecessary.(20頁9」
∼21行(訳:さらに図14を参照すると,ペン型コンピュータ313あるいは)
活性化されたときに携帯電話と同様の表示を発生しつつペン入力を提供する同様の
構造物が示されている。スロット314の内部に獲得された(securedwithin)モ
ジュール31の力で(byvirtueof)コンピュータの中に携帯電話のシステムが既
に在るという事実により,使用者は,赤外線接続318を介したヘッドセット31
6,又は,通常のケーブル322によって接続されたヘッドセット320を,単に
接続することにより,電話通信の選択を使うことができる。このコンピュータは,
同時にデータ通信,ファックス,及び必要とされるその他の形式の情報交換に使用
することができる)との記載がある。。
この記載からも,ペン型コンピュータ313の中に携帯電話のシステムが「既に
在る」のであるから,モジュール31はペン型コンピュータ313の中の携帯電話
システムが使用されるときに無線通信を行う機能(上記の第1,第4の機能)しか
有していない構成であることは明らかである。なお,ペン型コンピュータ313に
ついては「通話」そのものが行われることについては記載がない。
ウそして,上記のとおり,甲4のノートブック300,携帯電話309は,そ
,,,れぞれが電話機能を内包しているのであるから回線契約はノートブック300
携帯電話309について行われていることになる。携帯電話309は「携帯電話,
である」以上,回線契約をしていないということはあり得ない。
エそうすると,甲4技術Bに対応するものとしては「それぞれが回線契約を,
した通話が可能な複数の通信端末のスロットに交代して装着されることにより,当
()」該通信端末において通信を可能とするモジュラーユニット無線送受信ユニット
が記載されていると認定されなければならない。
したがって,審決が,甲4技術Bの認定において「装着された各々の移動体通,
信端末において通話を可能にする」と認定したことは誤っている。
(2)審決は,甲4技術Bの認定において「電話送受信ユニット(モジュラーユ,
ニットという認定を行っているが甲4に関してモジュラーユニットが電)」,,「」「
話送受信ユニット」であるという認定判断はされていない。
本件において「電話送受信ユニット」という用語は本件発明においてのみ使用さ
,,「」れている用語であるから仮に甲4技術Bの認定における電話送受信ユニット
なるものが,本件発明の「電話送受信ユニット」と同じ意味であるとすると,モジ
ュラーユニットが本件発明の「受信信号を音声として出力する通話用音声信号に変
換する機能などを有する電子回路」に相当する部分など「受信された信号(復調,
された信号)をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能」
(以下「第2の機能」という)と「データ送信時,マイクに入力される音声を通。
話用音声信号に変換する機能(以下「第3の機能」という)を有しているという」。
認定判断が必要であるが,審決はそのような認定判断を行っていない。
したがって,審決の甲4技術Bに関する認定は,この点においても誤っている。
(3)以下のとおり,審決が,甲4技術Bを認定するために用いている認定も誤
っている。
ア審決は「モジュラーユニット31は,タッチシート型携帯電話309に装,
着されることにより,移動体通信端末として通話が可能にされることが明らかであ
る(22頁3∼5行)と認定する。。」
しかしながら,上記のとおり,携帯電話309が「携帯電話」である以上,携帯
電話309は電話としてもともと通話可能であって,モジュラーユニット31によ
って通話が可能にされるものではなく,モジュラーユニット31を使用して通信が
可能になるだけである。
イ審決は「アンプス等を搭載したモジュラーユニット31が,ヘッドセット,
302を備えたノートブック300に装着されることにより,電話による通話が可
能とされることが明らかである(22頁10∼12行)と認定する。」
しかしながら,上記のとおり,甲4の該当箇所の記載は,ノートブック300に
含まれるAMPSシステム(電話)を使用して通話するという意味であって,ノー
トブック300は,モジュラーユニット31によって通話が可能にされるものでは
なく,モジュラーユニット31を使用して通信が可能になるだけである。
ウ審決は「前記ノートブック300は,周知のノートブック型コンピュータ,
のことであることが自明である(22頁20,21行)と認定する。。」
しかしながら,甲4の「Personalcomputershavebecomesmallerandmore
efficientintheirprogressionthroughdesktop,laptop,notebook,andpalmtop
versions.(1頁13∼15行(訳:パーソナルコンピュータは,デスクトップ,)
ラップトップ,ノートブック,及びパームトップの順の進行で,より小さく,より
効率的になってきた」の記載及び「ReferringfirsttoFIG.1,・・・suchasa。)
laptopornotebookcomputer11(7頁27∼29行(訳:最初に図1を参照する)
と・・・ラップトップやノートブックコンピュータ11のような」との記載と,,)
図14の記載から,ノートブック300は「ノートブック」であって,ノートブッ
クコンピュータ11(図1)と異なるものであることは明らかである。
したがってまた,審決が,ノートブック300について「そして,上記ノート,
ブック型コンピュータを使って電話による通話を行うには,スピーカとマイクが必
要であることは当然のことであるから,上記ノートブック型コンピュータに備えら
れたヘッドセットのスピーカとマイクが通話に使用されると解釈することが自然で
ある(22頁30∼33行)と認定していることも誤っている。。」
エ審決は「そして,上記ノートブック型コンピュータと同様に,ペン方式コ,
ンピュータにおいても,そこに備えられたヘッドセットのマイクとスピーカを使っ
て通話が可能とされると解釈することが自然である(23頁1∼4行)と認定す。」
る。
しかしながら,甲4には,ノートブック300については「通話することができ
る」と記載されているが,ペン型コンピュータ313については「電話通信の選択
を使うことができる」と記載され「通話」とは異なる「電話通信」なる用語が用,
いられている。
このことからすれば,むしろ,ペン型コンピュータ313と携帯電話309及び
,。ノートブック300とは異なると認める方が自然であり審決の認定は誤っている
オ審決は「持ち運んで使用可能であることが示唆されるから,図14に記載,
された携帯電話,ノートブック型コンピュータ,及びペン方式コンピュータは,何
れも移動体通信端末であるということができる(23頁13∼15行)と認定す」
る。
しかしながら,持ち運んで使用可能であれば,何でも「移動体通信端末」になる
ものではない。極論すれば,いわゆるデスクトップ型パソコンであっても,パソコ
ン本体は持ち運んで使用可能であって,これを移動体通信端末であるというような
ことは一般的にあり得ない持ち運んで使用可能であることは当該機器が移。「」,「
動体通信端末」であることを認定する一つの要素にすぎないのであって,そのこと
のみから当該機器が「移動体通信端末」であることになるものではない。したがっ
て「ペン方式コンピュータ313」について「持ち運んで使用可能である」こと,,
のみをもって移動体通信端末であると認定することは誤っている。
なお,ノートブック300はノートブック型コンピュータでないことは,上記ウ
のとおりである。
3取消事由3(相違点4についての容易想到性の判断の誤り)
(1)審決が,相違点4について「甲2発明に甲4技術Bを適用し,甲2発明の,
パソコンを,電話送受信ユニットが装着されて通話が可能にされる移動体通信端末
として構成し,本件発明のように『1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体
通信端末によって通話を可能にする』よう構成することは当業者が容易になし得る
ことである(33頁21∼25行)と認定したことは誤っている。。」
(2)前述したように,甲2発明及び甲4技術Bについての審決の認定が誤って
いる以上,甲2発明と甲4に記載された発明とを組み合わせても,本件発明におけ
「」る1つの回線を契約するだけで複数の移動体通信端末によって通話を可能にする
構成が得られないことは明らかである。
(3)しかも,以下のア∼エのとおり,審決が認定する甲2発明,相違点4及び
甲4技術Bを前提としても,上記のように「1つの回線を契約するだけで前記複数
の移動体通信端末によって通話を可能にする」構成は得られない。
ア本件発明における「1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末
によって通話を可能にする」ことの技術的意義について
本件発明における電話送受信ユニットは,特許請求の範囲の記載上,それ自体電
話に必要な「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力す
る通話用音声信号に変換する機能及びマイクに入力される音声が変換された通話用
音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能」を有することで移
動体通信端末を電話にするもので,しかも,当該電話送受信ユニットについて回線
を契約するだけで,複数の移動体通信端末を電話として使用できるようにするとす
るものである。
このことは,本件訂正後の請求項1の「1つの回線を契約するだけで前記複数の
移動体通信端末によって通話を可能にする」ことの技術的意義が特許請求の範囲の
記載上一義的に明白とはいえないとして本件明細書を参酌すると0001発,「【】【
明の属する技術分野】本発明は,複数の回線を契約することなしに,時,場所,場
合に応じた快適な移動体通信を実現する電話送受信ユニット・・・に関する,。」
「【】,,,,0006・・・本発明の目的は複数の回線を契約することなしに時場所
場合に応じた快適な移動体通信を実現する電話送受信ユニット・・・を提供するこ
。」,,「」とにあると記載されていることまた図1∼3で説明される第1実施形態
においては,電話送受信ユニット24が装着されるPHS端末にはアンテナ22,
スピーカ58,マイク60,操作ボタン18,液晶表示部20が設けられ,図4で
説明される「第2実施形態」においては,電話送受信ユニット24が装着されるモ
バイルコンピュータ78にはアンテナ22,スピーカ58,マイク60,複数のキ
ー86,液晶表示部20が設けられ,図5で説明される「第3実施形態」において
は,電話送受信ユニット24が装着されるPDA88にはアンテナ22,スピーカ
58,マイク60,タッチパネル90が設けられ,その他の実施形態についても,
同様に,アンテナ,スピーカ,マイク,複数のキー,液晶表示部が設けられること
が記載されている。
これらの明細書等の記載からしても,電話機能を有しない複数の移動体通信端末
に本件発明に係る「電話送受信ユニット」が装着されることで,当該移動体通信端
末が電話として使用することが可能になることは明らかである。
そうすると「1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって,
通話を可能にする」における「通話を可能にする」とは,元々電話として使用でき
ない移動体通信端末を電話として使用できるようにするという技術的意義を有する
とともに,さらに,電話送受信ユニットについて一つの回線を契約すれば,複数の
移動体通信端末を電話として使用できるようになるという技術的意義を有している
のである。
イ甲4技術Bにおける「通話を可能とする」ことの技術的意義について
(ア)審決は,甲4技術Bにつき「一つの電話送受信ユニット(モジュラーユニ,
ット)が,スピーカ及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交代し
て装着されることにより,装着された各々の移動体通信端末において通話を可能に
する電話送受信ユニット(モジュラーユニット」と認定する。)
(イ)甲4に記載の発明は,もともと電子機器が異なる通信規格に対応できるよ
うにすることを目的とするものであって,モジュラーユニットは,異なる端末に装
着されることで当該端末に新たな機能を付与するものではない。甲4の発明は,カ
ートリッジを交換することで,もともと所要の機能を有している端末が,異なる通
信規格で通信できるようにするものである。
そして,この甲4技術Bにおける「通話を可能とする」とは「移動体通信端末,
において通話を可能にする」という認定であって,本件発明のように「移動体通信
」。「」端末によって通話を可能にすると認定されていない移動体通信端末において
通話を可能にするとは使用するときに通話できるというだけの意味であり,そのと
きにモジュラーユニットが担っている機能は単に通信を行うというにとどまり,電
話機能自体は移動体通信端末側が備えている。
,「」そうするとモジュラーユニットが移動体通信端末において通話を可能にする
,「」とは電話として使用可能な移動体通信端末が電話として使用されるときに通信
。,できるようにするという技術的意義を有しているにすぎないものであるもとより
甲4技術Bの正しい認定(取消事由2で主張)によればこの技術的意義は明らかで
ある。
つまり,甲4において,モジュラーユニットは「通話を可能とする」ものであ,
っても,モジュラーユニットが装着されるノートブック300や携帯電話309を
「電話」にするものではない。ノートブック300,携帯電話309は,もともと
電話機能を有するのであって,モジュラーユニットが装着されることで「電話」に
なるのではない。
(ウ)しかも,前述したように,ノートブック300,携帯電話309は,それ
ぞれが電話機能を内包しているのであるから,回線契約はノートブック300,携
帯電話309についてそれぞれ行われていることになる。このことは,携帯電話3
09が携帯電話である以上回線契約をしていないということはあり得ないことから
も明らかである。
(エ)なお,審決は「ここで『通話』は通信業者と回線を契約することによっ,,
てそのサービスを受けることが可能になることが周知慣用であるから,甲4技術B
で,複数の移動体通信端末に対し交代して共用される電話送受信ユニット(モジュ
ラーユニット)は,1つの回線を契約した上で交代して使用されるものに他ならな
い(33頁10∼14行)と認定判断するが,この認定判断は,携帯電話309。」
についてみれば明らかなように,甲4の記載に反している。しかも「通話」は通,
信業者と回線を契約することによってそのサービスを受けることが可能になること
が周知慣用であるとしても,モデムと無線トランシーバしか有しない(前記第1,
第4の機能しか有しない)モジュラーユニットについて回線契約が行われること。
はない。
ウ甲2発明の無線通信機能ユニットのパソコン70における技術的意義につい

審決の認定によれば,無線通信機能ユニットは「パソコンに装着されたとき,,
パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にする(16頁19,」
20行)ものである。
この認定からすれば,甲2発明における無線通信機能ユニットは,パソコン70
に対しては,電話として使用可能とするものではなく,データ送受信を行うための
通信ができるようにするという技術的意義を有しているものである。甲2発明の正
しい認定(取消事由1で主張)によれば,この技術的意義は明らかである。
エ上記の甲4技術Bにおけるモジュラーユニットの技術的意義と甲2発明にお
ける無線通信機能ユニットの技術的意義は,甲2のパソコン70についてみれば同
じものであり,いずれも,パソコンが「通信できるようにする」ことに止まるもの
である。
甲4技術Bを甲2発明に適用した場合には,パソコン70が基本部12の第1,
第4の機能を使用してデータ通信を行う構成,すなわち,もともと甲4を適用する
までもなく,甲2に記載されているパソコンが基本部の第1,第4の機能を使用し
てデータ通信を行う構成が得られるだけであって,本件発明における「1つの回線
を契約するだけで複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」構成が得られ
るものではない。
(4)さらに,甲4技術Bを甲2発明に適用しても,本件発明における「1つの
回線を契約するだけで複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」構成が得
られるものではないことは,次の点からも裏付けられる。
アまず,甲2の記載上,無線通信機能ユニットと認定される基本部12は,周
辺部14(移動体通信端末)に装着されたときと,パソコン70に装着されたとき
とで,その構成が異なっている。
(ア)甲2には,基本部12の構成に関して次の記載が認められる。
「【】,。0012次に携帯電話器ユニットの電子回路を図4を参照して説明する
図4に示すように,基本部12は,RFモジュール50,変復調モデム52,チャ
ンネルコーデック・・・54,ADPCM・・・コーデック56,PCMCIAI
/F(インターフェース)58,ROM/RAM60,EEP−ROM62,マイ
クロコントローラ64,音声/データセレクタ66を有している」。
「0014】ROM/RAM60,EEP−ROM62は,基本部12を制御【
するプログラムを格納し,作業中のワーキング領域となるメモリであり,マイクロ
コントローラ64は,ROMに格納されたプログラムに従って基本部12および周
辺部14内の各機能部品を制御するもの・・・」
「0007】図1に示すように,本発明の携帯電話器ユニットは,3つの分離【
可能な部分,即ち,基本部12,周辺部14,バッテリパック16から成る・・。
・」
「0010】バッテリパック16は内部にバッテリ(図示せず)を配置するよ【
うになっており・・・」
図1には,バッテリパック16の部分にROM/RAM60が配置されているこ
とが記載されている。
(イ)以上によれば,甲2に記載されている「基本部12」は,図4に示される
ように,電気回路的には,マイクロコントローラ64が実行するプログラムを格納
した「ROM/RAM60」を,図1に示されるように,物理的には分離して,バ
ッテリパック16側に配置したものである。
そうすると,甲2発明において「基本部12(無線通信機能ユニット)は,移,」
動体通信端末としての周辺部14に装着されたときと,パソコン70に装着された
ときとでは,その構成を異にし,パソコン70に装着されたときには,コントロー
ラ64が実行するプログラムを格納した「ROM/RAM60」と,それ以外の部
分とが物理的に分離されたものとなる。その結果,パソコン70でデータの送受信
を行うとき,基本部12のデータ通信に必要な各部の制御はパソコン70側によっ
て行われていると認められる(この構成は,甲4に記載されている携帯電話309
やノートブック300がモジュラーユニット31を制御する構成と同じである。。)
(ウ)なお,甲2の図1のバッテリパック16に含まれる符号「60」の記載を
誤記であると認定することはできない。甲2に係る特許出願は出願後に補正がされ
,「」,ているにもかかわらず図1の上記符号60については何ら補正されておらず
出願人は誤記であると認めていないし,記載の内容からも客観的に誤記であると認
められない。
イまた,無線通信機能ユニットと認定される基本部12は,本件発明における
「表示部に表示する表示信号を生成する機能」を有していないと認めるのが相当で
ある。
(ア)この点,審決は「相違点1について」の判断において「甲2発明の電,(),
子回路は,実質的に表示部に表示する表示信号を生成する機能を有すると解釈する
ことが自然である(29頁29∼31行)と認定する。」
しかしながら,甲2には,基本部12が表示部に表示する表示信号を生成する機
能を有していると「記載されていない」ことは明白であるから「自然である」と,
いうのであれば,甲2発明の電子回路は,表示部に表示する表示信号を生成する機
能を有していない,と認定判断することがむしろ自然である。
しかも,甲2には「0017】携帯電話器として用いる場合を概略すると,キ,【
()。ースイッチプッシュボタン42を用いて無線通話を行う相手の電話番号を押す
このとき,LCD40は電話番号を表示する。キースイッチ42で入力された電話
番号データは基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレクタ
66に転送され」と記載されている。
つまり,キースイッチ42で入力された電話番号は,そのままLCD40に表示
されると記載され「基本部12に転送され,基本部12によってLCD40に表,
示される」とは記載されていない。そうすると,表示部としてのLCD40に対す
る表示信号を生成する機能は,移動体通信端末と認定された周辺部14にあること
になる。
(イ)しかも,審決のいう周知慣用技術によっても,表示部としてのLCD40
に対する表示信号を生成する機能は,移動体通信端末と認定された周辺部14にあ
ることになる。
つまり,審決は,一つの特許公報の記載をもって「アンテナから受信した信号を
表示することが周知慣用」であるとしているが,一つの特許公報で周知慣用技術で
あるとはいえないことはさておき,審決がいうように,携帯電話等において「アン
テナから受信した信号を表示することが周知慣用」であるとしても,それは,携帯
電話という移動体通信端末においてアンテナから受信した信号を表示することが周
知慣用であるということである。
そうすると,甲2発明について,審決は「周辺部14」を「移動体通信端末」と
認定しているのであるから,上記周知慣用技術によれば「周辺部14にアンテナ,
から受信した信号を表示する機能がある」と認定されることになる。移動体通信端
末と認定しない「基本部12」に「アンテナから受信した信号を表示する機能があ
る」と認定することは,上記周知慣用技術の認定と矛盾することになる。
したがってまた,審決が,上記周知慣用技術を前提とし,甲2の【0008】の
記載を引用して「基本部の中の電子回路は,表示部に表示する表示信号を生成する
機能を有する示唆があると言うべきである(29頁26∼28行)と判断してい」
ることは,周知慣用技術と矛盾することである。
ウこのように,甲2発明における無線通信機能ユニットは,パソコン70に装
,(),着されたときには周辺部移動体通信端末に装着されるときと構成を異にして
データ通信を行うための送受信に係る部分はパソコン70側に制御がゆだねられ,
しかも,表示部に表示する表示信号を生成する機能すら有していないものである。
その上,既に述べたとおり,甲4に記載された発明は,それぞれ回線契約される
複数の通信端末が異なる通信規格で通信できるようにするもので,複数の通信端末
について一つの回線契約をするという技術的思想がなく,また,甲2発明もパソコ
ンが通信できるようにするもので,そこには,本件発明のように複数の移動体通信
端末について一つの回線契約で通話できるようにするという技術的思想は何ら存し
ない。
言い換えれば,甲4に記載の発明は,複数の通信端末がモジュラーユニットを交
換することで異なる通信規格で通信できるようにするものであるのに対し,本件発
明は,電話送受信ユニットを交換することで複数の移動体通信端末が通話できるよ
うにするものであって,技術的思想的には反対の技術的思想である。このような,
本件発明と反対の技術的思想に基づく甲4技術Bを甲2発明に適用しても,本件発
明を構成できないことは明らかである。
エしたがって,甲4技術Bを甲2発明に適用しても,構成上も,技術的思想的
にも,本件発明における「1つの回線を契約するだけで複数の移動体通信端末によ
って通話を可能にする」構成に想到することはできない。
オよって,甲4技術Bを甲2発明に適用して,本件発明における「1つの回線
を契約するだけで複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」ことは当業者
が容易になし得ると認定する審決は誤っている。
4取消事由4(相違点2についての認定及び判断の誤り並びに容易想到性の判
断の誤り)
(1)相違点2の認定の誤り
審決は,相違点2につき「甲2発明では・・・複数の移動体通信端末』かど,,『
うか不明である(28頁23∼27行)と認定する。」
また,審決は,甲2発明として「前記無線通信ユニットは,一つの無線通信ユ,
ニットが,前記周辺部(移動体通信端末)及びパソコンに共通に使用され,前記周
辺部(移動体通信端末)に装着されたとき,移動体通信端末によって通話を可能に
する一方,前記パソコンに装着されたとき,パソコンで音声信号の受信を含む無線
通信機能を使用可能にする無線通信機能ユニット(16頁16∼20行)と認定。」
する。
ここで,甲2のパソコン70は,甲2の図5からすれば,明らかに,いわゆるデ
スクトップパソコンの形態が図示されているのであってパソコン70をもって移,「
動体通信端末」と認定することは甲2の記載に反している。なお,持ち運び可能で
あるから移動体通信端末になるものではない。
したがって,甲2発明では「複数の移動体通信端末ではない」ことが明らかであ
って,審決が,相違点2として「甲2発明では・・・複数の移動体通信端末』,,『
かどうか不明である」と認定したことは誤っている。
(2)相違点2の判断の誤り
ア審決は,相違点2について「甲2発明に,前記甲4技術及び甲3技術を適,
用し,本件発明のように,カートリッジが『前記スピーカ及び前記マイクを端末本
体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納される
ような形状に形成される』よう構成することは,当業者が容易になし得ることであ
る(30頁30∼34行)と判断するが,この判断も誤っている。」
イカートリッジが「前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移
動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成さ
れる」ということは,移動体通信端末の各々に設けられたスロットもまたカートリ
ッジ全体を収納するに適した形状に形成されていなければならないことになる。
ところが,甲2には「0008】基本部12は,パソコン等のメモリカードの,【
一般的な規格・・・の形状と一致するメモリカード(ICカード)形状の下部20
と,後述する周辺部の基本部保持部に載置するのに適した形状の上部22・・・か
ら成り・・・「0009】周辺部14は・・・本体部分30と一体となって筒」,【,
状の基本部保持部32を形成している・・・「0011・・・勿論,筒の内。」,【】
部形状は,基本部12の下部を受け入れてガタなく保持する形状に形成されてい
る」と記載されている。。
これらの記載からすれば,甲2の「スロット」としての「筒状の基本部保持部」
は「カートリッジ」としての基本部12の一部を保持するに適した形状に形成され
ているのであって,基本部12全体を保持するに適した形状に形成されているもの
ではない。
また,甲2に記載の「カートリッジ」としての基本部12を「スロット」とし,
ての「筒状の基本部保持部」に全体が収納される形状に形成すると,携帯電話器ユ
ニット全体の形状が変化することになる。
そうすると,甲2発明において,甲4及び甲3技術を適用し,わざわざ基本部1
2全体を保持するに適した形状に形成されているものではない「スロット」として
の「筒状の基本部保持部」に,基本部12全体が収納されるような形状に形成する
必要性は存しない(組み合わせる動機付けがない。。)
ウさらに,甲3に記載されている発明について,審決は「無線送受信機能を,
有するユニット・・・(17頁21行)と認定しているが,甲3には携帯無線電」
話装置全体を収納することが記載されているだけで「ユニット」なるものを収納,
することが記載されているわけではない。
そして,この甲3に記載された携帯電話無線装置に対応する甲2の構成は,基本
部12を周辺部14に装着した携帯電話器ユニットそのものである。
そうすると,甲3を甲2発明に適用すると,周辺部14を含む携帯電話器ユニッ
トを移動体通信端末ではないパソコン70に収納できるようにする構成が得られる
だけである。
エしたがって,本件発明のように,カートリッジが「前記スピーカ及び前記マ
イクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体
が収納されるような形状に形成される」よう構成することは,当業者が容易になし
得ることではない。
5その他(阻害事由の存在)
(1)審決は「甲2発明に甲4技術Bを適用することに特段の阻害要因は見当た,
らない(33頁20,21行)と認定する。」
しかし,甲2及び4は,本件発明と同じ課題・効果(①TPOに応じた複数の移
動体通信端末で,複数の回線を契約する必要がなくなり,回線使用料を支払うユー
ザの負担を軽減する。②複数の移動体通信端末に第1の変換機能と第2の変換機能
を有する電子回路を形成する必要がなくなり,複数の移動体通信端末のコストダウ
ンを図ることができる)を記載又は示唆していないので,甲2と甲4を組み合わ。
せたとしても,本件発明と同じ構成・効果は得られない。
一方,仮に,甲2発明が,本件発明と同じ課題・効果を有している,又は示唆し
ていると仮定しても,甲4に記載のモジュラーユニットは電話回線契約できないも
のであり,ノートブック300等の各通信端末が回線契約をしなければならないも
のであるから,甲4に記載の発明は,当該課題・効果を実現できるものではない。
したがって,甲2発明に甲4技術Bを組み合わせることにつき阻害事由がある。
また,甲2発明は,パソコン70に接続したときは,ADPCM56を使用しな
いものであるのであるから,この事実自体が本件発明の想到を妨げる阻害事由とな
っている。
(2)甲2発明は「音声/データセレクタ66」を備える構成であるため,本件
発明のように「前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用
音声信号を入出力する信号線(前記」信号線とは記載していない点に注意」とす「)
る必然性は全くなく,むしろ当該構成を採用することを阻害している。
第4被告の反論の概要
1取消事由1(甲2発明及び相違点4の認定誤り)に対して
(1)甲2発明の認定の誤りとの主張について
ア原告は,審決における甲2発明の認定のうち「前記パソコンに装着された,
とき,パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にする無線通信機
能ユニット」との部分は誤りであり,当該認定部分は「前記パソコンに装着され。,
たとき,パソコンによって通話を可能にしない無線通信機能ユニット」と認定さ。
れるべきである,と主張する。
また,原告は,パソコンに基本部を装着した場合における「スピーカから音声と
して出力する通話用音声信号に変換する機能」を使用することや「マイクに入力,
される音声を通話用音声信号に変換する機能」を使用することが甲2に明示的に記
載されていないことを根拠として,上記認定部分が誤りである,と主張するようで
ある。
イしかし,審決においては「スピーカから音声として出力する通話用音声信,
号に変換する機能」や「マイクに入力される音声を通話用音声信号に変換する機,
能」の使用の有無にかかわりなく,単に,甲2発明は「パソコンで音声信号の受信
を含む無線通信機能を使用可能にする無線通信機能ユニット」であると認定してい
るにすぎないのであるから,そもそも原告が挙げたような「通話用音声信号に変換
する機能」の使用の有無を根拠として,審決における甲2発明の認定が誤りである
と主張すること自体,的外れである。
ウ一方,甲2発明においては,基本部12をパソコンに装着したときに,パソ
コンにおいて無線通信機能が使用可能になることが明らかである(0020】及【
び【0021。また,アンテナ24で受信した音声信号に対して,RFモジュー】)
ル50における処理,変復調モデム52による復調,チャンネルコーデック54に
よる受信データとしての分解,及び音声/データセレクタ66への転送という各処
(【】),,理がされていること0022からするとパソコンでのデータ受信において
音声信号が受信されることも明らかである。
エしたがって,審決が,甲2発明について「パソコンに装着されたとき,パソ
コンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にする無線通信機能ユニッ
ト」と認定したことに誤りはない。
(2)相違点4の認定の誤りとの主張について
原告は,審決における相違点4の認定の誤りとして,①「パソコンに装着された
とき・・・通話を可能とするかどうか不明」と認定した点は誤りであり「パソコ,,
ンに装着されたとき,パソコンによって通話を可能にしない」と認定されるべきで
あること(相違点の誤認,②相違点4として「1つの回線を契約するだけで・・),
・複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」点も認定されるべきであるこ
と(相違点の看過,を主張する。)
アしかし,上記①の主張(相違点の誤認)は,結局のところ,審決における甲
2発明の認定の誤りの主張と表裏一体の関係をなす主張である。そうすると,上記
(1)のとおり,審決における甲2発明の認定に何ら誤りがない以上,上記①の主張
についても理由はない。
イまた,審決は,相違点4として,本件発明では「1つの回線を契約するだけ
で前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」のに対し,甲2発明では
「複数の通信端末のうち,移動体通信端末(周辺部)に装着されたとき,当該移動
体通信端末で通話を可能にする一方,他の通信端末であるパソコンに装着されたと
き,当該パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にする(29」
頁2∼7行)という相違があると認定しているのであるから,原告が主張する「1
つの回線を契約するだけで・・・複数の移動体通信端末によって通話を可能にす
る」点が,審決中で相違点判断の対象とされていることは明らかである。
したがって,審決には,原告が主張するような相違点の看過はないから,上記②
の主張も失当である。
(3)以上のとおり,甲2発明及び相違点4の認定に関する原告の主張はいずれ
も認められず,審決における甲2発明及び相違点4の認定に何ら誤りはない。
2取消事由2(甲4技術Bの認定誤り)に対して
(1)原告は「一つの電話送受信ユニット(モジュラーユニット)が,スピーカ,
及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交代して装着されることに
より,装着された各々の移動体通信端末において通話を可能にする電話送受信ユニ
ット(モジュラーユニット」の技術(甲4技術B)が甲4に開示されているとの)
認定は誤りである,と主張する。
ア原告は,甲4に記載の発明は異なる通信規格に対応するモジュラーユニット
を提供するものであると主張し,その根拠として,甲4の「Itwouldbean
advantagetherefortoprovideastandardPCMCIAcardmountedradio
transceiverwhichisreadilyreplaceableinordertoenableelectronic
equipmenttocommunicatewithvariousnetworksandinaccordancewithvarious
radiostandardsmerelybyinterchangingsuchacard.(3頁25∼30行)と」
の記載を挙げる。
しかし,上記記載部分は,単に「カードを交換することによって,電子機器が色
々なネットワークと色々な無線規格に従って通信することができる」ということを
述べているにすぎない。したがって,この記載部分から,原告が主張するように,
「それ自体完結した機能を有する電子機器が,異なる通信規格でも通信できるよう
にする」ということや「モジュラーユニットがそれを装着することで電子機器に,
新たな機能(電話として使用可能な機能)を付与しようとするものではない」とい
うことは,読み取ることはできない。
イまた,原告は,原告による甲4解釈の根拠として「モジュラーユニットは,
モデムと無線トランシーバのみを含むものである」と主張し,これを裏付ける甲。
4の記載として「StillreferringtoFIG.3andasshownbydottedlines,
extendingthereacross,themodule31housesatelecommunicationscard29
includingaradiotransceiver36,whichmayincludeamodemsection37.(11」
頁26∼29行)を挙げる。
しかし,上記記載部分は,モジュール31が,無線通信に必要な部材である無線
トランシーバ36やモデム37を含む遠隔通信カード29を収容していることを単
に述べているにすぎず,この記載部分から,モジュール31がモデムと無線トラン
シーバのみを有するものと限定的に解することはできない。
ウまた,原告は「モジュール31はモデムと無線トランシーバ(これは,甲,
2の図4で示される基本部12の『RFモジュール50』と『変復調モデム52』
に相当する部分であって,上記の第1,第4の機能に相当する部分である)だけ。
を有している」と主張する。
しかし,甲2発明のRFモジュール50及び変復調モデム52並びに甲4に記載
された発明のモデム及びトランシーバが,それぞれ「データ用」に限定され,原告
の主張するように「音声信号」の変復調と送受信には使用できない,と解すべき根
拠は一切ないから,原告の上記主張は誤りである。
エさらに,原告は,原告甲4解釈の根拠として「ノートブック300,携帯,
電話309及びペン型コンピュータ313は自ら電話機能を有するものであること
が分かる」と主張する。。
(ア)甲4の「Severaltechnologiesmay,infact,resideonasinglecard
withinthemodularunits31and131.Forexample,aMobitexandAMPS
communicationformatsmaybeutilized.Withtheunit31hereinshownplugged
intoanotebook300,datacommunicationoverMobitexmaybethereinprovided.
TelephonecallsmaylikewisebecompletedthroughtheAMPSsystemorother
format,whereinaheadset302isshownlinkedtothenotebook300.(第19頁」
6∼14行)との記載から,原告は,甲4に記載されるモジュラーユニット31に
含まれるのは「通信フォーマット」であるから「電話もAMPSシステムや他のフ
ォーマットを通して同様に通話することができ」るとは,ノートブック300に含
(),。まれているAMPSシステム電話を使用して通話する意味であると主張する
しかし,上記記載によれば,Mobitex及びAMPS通信フォーマットがモジュラー
ユニット31及び131内の単一カード上にあること「ユニット31を,図のよ,
うにノートブック300の中に装着し,データ通信を行う。そこでは,Mobitexが
提供される」こと及び「電話も,AMPSシステムや他のフォーマットを通して同様
に通話することができ」ることが明らかなのであるから,甲4技術としては,ユニ
ット31がノートブック300の中に装着されることにより,ユニット31に搭載
されたMobitexやAMPSなどの通信フォーマットによってデータ通信が可能とな
り,電話の場合もこれと同様に,ユニット31に搭載されたAMPSや他の通信フォ
ーマットによって通話が実現可能となる,と解釈するのが正しい解釈である。この
点に関しては,審決においても「ノートブック300に装着されたモジュラーユ,
ニット31内に,モビテックス(Mobitex)の通信フォーマットを搭載すればデー
タ通信できるようになる一方,アンプス(AMPS)等の通信フォーマットを搭載すれ
ば電話ができるようになる(22頁6∼9行)と認定されているとおりである。」
(イ)また,甲4の「StillreferringtoFIG.14,asecondutilizationofthe
module31maybewithinacellulartelephone309.Thephone309incorporates
achassis309Aofconventionaldesign,orwhichincorporatesaspecialdisplay
(notshown).Themodule31isinsertedintoslot311andconnectedwitha
softwaregenerateddisplaythatcorrespondstotechnologyandthestandards
thatareactivated.Inthatregardatouchscreenmaythendisplaythe
availablephonefeaturesthatcanthenbedialed.Antenna312isshownto
upstandfromchassis310inaccordancewiththeaspectsoftheinvention
discussedabove.(19頁32行∼20頁8行)との記載から,原告は,携帯電」
話309は文字通りの「携帯電話」であると主張する。
しかし「携帯電話」という文言を使用しているから甲4に記載される携帯電話,
309自体が電話として通話可能な機能を有するとの主張は,余りに形式的かつ技
術常識を無視した主張である。上記記載のうち「モジュール31は,スロット3,
11の中に挿入され,有効な技術並びに規格に対応したソフトウエア生成表示につ
ながれる。その点に関し,タッチスクリーンは,次にダイアルすることのできる有
効な電話機能を表示するようにしてもよい」の記載からは,モジュラーユニット。
31が携帯電話309のスロット311に挿入されて初めて通話が可能になること
が明らかであるから,モジュール31が装着された状態で初めて「携帯電話」とし
,「」,て使用可能になる機器を甲4においては携帯電話309と称していることは
当業者であれば容易に分かることであり,モジュール31が挿入されていない状態
の携帯電話309が自ら通話機能を有するものであるということはできない。
(ウ)さらに,甲4の「StillreferringtoFIG.14thereisshownapenbased
computer313orsimilarstructurewhichservestoprovidepeninputwhile
generatingadisplaysimilartoacellularphonewhenactivated.Duetothe
factthatthesystemforacellularphoneisalreadyinthecomputerbyvirtue
ofthemodule31securedwithinslot314,theusercanusetheoptionof
telephoniccommunicationbysimplyconnectingaheadset316throughaninfra
redconnection318oraheadset320connectedbyaconventionalcable322.
Thecomputercanthenbesimultaneouslyusedfordatacommunication,faxes,
andotherformsofinformationalexchangeswhicharedeemednecessary.(20」
頁9∼21行)との記載から,原告は,モジュール31は,ペン型コンピュータ3
13の中の携帯電話システムが使用されるときに無線通信を行う機能しか有してい
ない,すなわち,ペン型コンピュータ313の中にはもともと携帯電話システムが
存在する,と主張する。
,,「()しかし甲4においてはスロット314の内部に獲得されたsecuredwithin
モジュール31の力で(byvirtueof)コンピュータの中に携帯電話のシステムが
既に在るという事実により」と記載されているのであるから,この部分は,モジュ
ール31がペン型コンピュータ313に装着されることで,当該ペン型コンピュー
タ313に携帯電話のシステムが構築され,電話通信を行うことができる,と解釈
するのが正しい解釈であって(なお“byvirtueof”は「∼のおかげで」と訳す,
のがより適切な訳であるから,モジュール31がコンピュータ内に存在してこそ電
話通信が実現できる,という関係については否定する余地がない,ペン型コンピ。)
ュータ313は自ら電話機能を有するものであるとの原告の主張は,採用されるべ
きではない。
(2)原告は「電話送受信ユニット」という用語は本件発明においてのみ使用さ,
れている用語であるから,甲4技術Bの認定において「電話送受信ユニット」が記
載されているといえるには,第2の機能と第3の機能についての認定判断を行わな
ければならない,と主張する。
しかし,本件発明においては,発明の対象を一般的な「電話送受信ユニット」と
,,「」した上でさらに本件発明の特徴たる構成要件を具備する電話送受信ユニット
に発明の範囲を限定しているのであるから「電話送受信ユニット」が記載されて,
いるか否かの認定に当たっては,技術常識に照らして電話の送受信を可能とするユ
ニットと解することができるか否かのみを考慮すればよく,第1∼第4の機能のよ
うな,さらなる構成要件を具備するか否かについて検討する必要はない。
(3)原告は「ノートブック300」はノートブック型コンピューターではない,
と主張する。しかし「ノートブック300」がノートブック型コンピューターで,
あることは,甲4の記載(1頁13∼15行,7頁27∼29行)から明らかであ
るし「ノートブック300」と「ノートブックコンピューター11」との外形が,
異なることが,甲4技術Bに関する認定に何ら影響を及ぼすものでないことも明ら
かであるから,原告の主張は失当である。
また,原告は「通話」と「電話通信」とは異なる用語であるとか,デスクトッ,
プ型パソコンであっても持ち運んで使用することも可能であるから,持ち運んで使
用可能であることが示唆されているからといって,何でも「移動体通信端末」にな
るものではない,などと述べ,甲4技術Bに関する審決の認定を誤りである,と主
張するが,いずれも牽強付会の説にすぎず,原告の主張を採用する余地はない。
3取消事由3(相違点4についての容易想到性の判断の誤り)に対して
原告は,審決が,相違点4に関して「甲2発明に甲4技術Bを適用し,甲2発,
明のパソコンを,電話送受信ユニットが装着されて通話が可能にされる移動体通信
端末として構成し,本件発明のように『1つの回線を契約するだけで前記複数の移
動体通信端末によって通話を可能にする』よう構成することは当業者が容易になし
得たことである(33頁21∼25行)と判断したことは誤りである,と主張す。」
る。
しかし,原告は,甲2発明及び甲4技術Bについての審決の認定が誤っているこ
,,とを再度主張するにとどまり甲2発明と甲4技術Bの組合せの困難性等について
何ら実質的な主張をしていない。そして,前記1及び2のとおり,審決における甲
2発明及び甲4技術Bの認定が誤りでないから,審決に,相違点4の容易想到性の
判断につき,誤りがあるとはいえない。
4取消事由4(相違点2についての認定及び判断の誤り並びに容易想到性の判
断の誤り)に対して
(1)相違点2の認定の誤りとの主張について
ア原告は,相違点2に関する審決の認定のうち,甲2発明では「複数の移動『
体通信端末』かどうか不明である(28頁26,27行)とする点につき,甲2」
のパソコン70は,図5からすればデスクトップパソコンの形態が図示されている
から,甲2発明では「複数の移動体通信端末ではない」ことが明らかであって,審
決が,相違点2として「甲2発明では・・・複数の移動体通信端末』かどうか,,『
不明である」と認定したことは誤りである,と主張する。
イしかし,甲2の図5をみても,パソコン70をデスクトップパソコンに限定
すべき根拠は全く見当たらないから,原告の主張は失当であって審決における相違
点2の認定に誤りはない。
また,そもそも,審決での相違点2の認定において,甲2に記載されるパソコン
70が「移動体通信端末」であることは基礎とされておらず,また,相違点2の認
定は,甲2に記載されるパソコン70が「移動体通信端末」であるか否かに何ら影
響されるものでない。したがって,この点からも原告の上記主張は失当である。
(2)相違点2の判断の誤りとの主張について
ア原告は,審決が,相違点2について「甲2発明に,前記甲4技術及び甲3,
技術を適用し,本件発明のように,カートリッジが『前記スピーカ及び前記マイク
を端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収
納されるような形状に形成される』よう構成することは,当業者が容易になし得る
ことである(30頁30∼34行)と判断したことについて誤りである,と主張。」
する。
,,「」,そして原告は甲2に記載されるスロットとしての筒状の基本部保持部は
「カートリッジ」としての基本部12の一部を保持するに適した形状に形成される
ものであって,基本部12全体を保持するに適した形状に形成されていないから,
甲2に記載されるカートリッジとしての基本部12をスロットとしての筒「」「」「
状の基本部保持部」に全体が収納される形状に形成すると,携帯電話器ユニット全
体の形状が変化することになることを挙げ「甲2発明において,甲4技術及び甲,
3技術を適用し,わざわざ基本部12全体を保持するに適した形状に形成されるも
のではない『スロット』としての『筒状の基本部保持部』に,基本部12全体が収
納されるような形状に形成する必要性は存在しない(組み合わせる動機付けがな
い」と主張する。。)。
イしかし,甲4には「パーソナルコンピュータ(パソコン,PC)に設けら,
れたスロットに全体が収納されるような形状に形成されるモジュラーユニット(無
線送受信ユニット」の技術(甲4技術A)が開示されており,かつ,甲4に記載)
の発明と甲2発明とは,パーソナルコンピュータや携帯通信装置などの複数の機器
と組み合わせて使用できるモジュラーユニットを提供する点で,その構成を共通に
するものである。
また,甲3には「無線送受信機能を有するユニットをパーソナルコンピュータ,
等の電子機器のスロットに装着する際,そのユニットが全体的に収容される状態に
することにより,パーソナルコンピュータ全体を外観的に優れたものにできるとと
もに,移動や向きの変更に際して取扱い易く,使い勝手が良いものとする技術」が
開示されている。
そして,甲3で公知となる前記「外観的に優れたものにできるとともに・・・,
かつ,使い勝手が良いもの」を得るため,また,一般的な課題といえる機器使用時
の利便性及び軽快な操作性を改善するために,甲2発明における,カートリッジと
しての基本部がスロットである周辺部の筒状の基本部保持部に部分的に収納される
という構成に代え,甲4技術Aや甲3技術を適用して,本件発明のようにカートリ
ッジを「スロットに全体が収納されるような形状に形成」することは,当業者が容
易に想到し得ることである。
ウなお,原告が主張するように甲2に記載されるスロットとしての「筒状の基
本部保持部」がカートリッジとしての基本部12の一部を保持するに適した形状に
形成されるものであったとしても,甲2には,たまたまそのような形状の基本部1
2と保持部とが記載されているにすぎず,基本部と保持部の相互の組合せ方を当該
,,形状とするべき技術的必然性については何ら述べられていないからそのこと自体
甲2における,カートリッジとしての基本部12の形状を「カートリッジをスロ,
ットに全体が収納されるような形状に」することを何ら妨げる理由とはならない。
甲3技術に記載されるような「全体的な収納」の積極的利点に触れた当業者であれ
ば,甲2に記載される基本部及び保持部の形状の双方を設計変更することは容易で
あり,この点についての技術的困難性はないというべきである。
エまた,原告は,甲3には携帯電話装置全体を収納することが記載されている
だけで「ユニット」なるものを収納することが記載されているわけではないこと,
を理由に,甲2発明に甲3技術を適用しても,本件発明の構成を導くことは,当業
者にとって容易になし得ることではない,と主張する。
しかし,甲3に記載される携帯無線電話装置を,装置として一体となる「ユニッ
ト」として認定することは,技術常識から誤りはなく,また,その携帯無線電話装
置が無線送信及び無線受信の機能を有することは明らかであることからすれば,携
帯無線電話装置であるユニットが無線送受信機能を有するものとして認定すること
にも誤りはない。
オ以上によれば,甲2に記載される,カートリッジとしての基本部12及びス
ロットとしての「筒状の基本部保持部」の形状の具体的な相互関係が「カートリ,
ッジをスロットに全体が収納されるような形状に形成する」ことの阻害要因になる
とは考えられないから,甲2発明に,甲4技術及び甲3技術を組み合わせるべき理
由がないとの原告の主張には何ら根拠がない。
5その他(阻害事由の存在)に対して
(1)原告は,甲2発明に甲4技術Bを組み合わせることに阻害要因があると主
張する。しかし,同主張は,甲2発明及び甲4技術Bについての誤った認定に基づ
くものであって,採用の余地はない。
(2)原告は,甲2発明は「音声/データセレクタ66」を備えるため,本件発,
明のように「前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音
声信号を入出力する信号線」とする必然性は全くなく,むしろ当該構成を採用する
ことを阻害している,と主張する。
しかし,甲2によれば「音声/データセレクタ66」は「PCMCIAI/F,,
58からの音声またはデータを選択的にチャンネルコーデック54またはADPC
Mコーデック56に転送し,またはそれらからの音声またはデータをPCMCIA
I/F58に転送するもの(0014)であって,移動体通信端末との間の信」【】
号の入出力に直接関係するものではないことからすれば「音声/データセレクタ,
」,「,66が存在すること自体は前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線
及び前記通話用音声信号を入出力する信号線」を採用することの阻害要因になり得
ない。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(甲2発明及び相違点4の認定誤り)について
(1)甲2発明の認定の誤りとの主張について
ア原告は,審決が,甲2発明につき「前記無線通信ユニットは,一つの無線,
通信ユニットが,前記周辺部(移動体通信端末)及びパソコンに共通に使用され,
前記周辺部(移動体通信端末)に装着されたとき,移動体通信端末によって通話を
可能にする一方,前記パソコンに装着されたとき,パソコンで音声信号の受信を含
む無線通信機能を使用可能にする無線通信機能ユニット(16頁16∼20行)」
と認定したことは誤りであり「前記無線通信機能ユニットは・・・前記パソコン,,
に装着されたとき・・・パソコンによって通話を可能としない」と認定されなけ,。
ればならない,と主張する。
イそこで,甲2発明について検討するに,甲2には次の記載がある。
「0004】したがって,本発明の目的は,本来の携帯電話器として使用できると共に,【
携帯電話器が有する無線通信機能に着目して,無線通信機能を有する部分を他の電子機器と組
み合わせて使用可能な携帯電話器ユニットを提供することにある」。
「0016】次に,図5を参照して,本発明の携帯電話器ユニット10の使用例を説明す【
る。図5(a)は,携帯電話器ユニット10を本来の携帯電話器(PHS)として使用する場
合を示す。この場合,基本部12はバッテリパック14が取り付けられた周辺部14に取り付
けられて用いられる」。
「【】,()0017携帯電話器として用いる場合を概略するとキースイッチプッシュボタン
42を用いて無線通話を行う相手の電話番号を押す。このとき,LCD40は電話番号を表示
する。キースイッチ42で入力された電話番号データは基本部12のPCMCIAI/F58
を介して音声/データセレクタ66に転送され,チャンネルコーデック54によって送信デー
タに組み立てられ変復調モデム52によって変調され,RFモジュール50を介してアンテナ
24によって無線によって送信される」。
「【】,,。0018電話回線が接続されると以後通常の携帯電話器と同様な動作が行われる
即ち,通話の送信では,マイク44から入力された音声は基本部12のPCMCIAI/F5
8を介して音声/データセレクタ66に転送され,音声/データセレクタ66からADPCM
56に転送され,そこで,音声は圧縮され,チャンネルコーデック54に転送され,チャンネ
ルコーデック54によって送信データに組み立てられ変復調モデム52によって変調され,R
Fモジュール50を介してアンテナ24によって無線によって送信される」。
「0019】一方,通話の受信では,アンテナ24で受信した音声信号は,RFモジュー【
ル50で処理され,その後変復調モデム52によって復調され,チャンネルコーデック54に
よって受信データとして分解され,ADPCM56によって伸張され,音声/データセレクタ
66に転送され,次に,基本部12のPCMCIAI/F58を介して周辺部14のスピーカ
38に転送され,音声として出力される」。
「0020】図5(b)は,携帯電話器ユニット10をパソコン70と共に使用する例を【
示す。例えば,パソコン70で作成したデータを他の電子機器(パソコンを含む)に無線送信
,()。することや他の電子機器パソコンを含むからのデータを無線受信することに使用できる
この場合,基本部12は周辺部14と分離され,パソコン70に設けられたPCMCIA規格
のコネクタに接続される。その後,携帯電話器の無線通信機能を用いて無線でデータを送受を
行う」。
「0021】例えば,パソコン70からのデータの送信では,パソコンからのデータは,【
基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレクタ66に転送され,音声/
データセレクタ66からチャンネルコーデック54に転送され,チャンネルコーデック54に
よって送信データに組み立てられ変復調モデム52によって変調され,RFモジュール50を
介してアンテナ24によって無線によって送信される」。
「0022】一方,他の電子機器からのデータの受信では,アンテナ24で受信した音声【
信号は,RFモジュール50で処理され,その後変復調モデム52によって復調され,チャン
ネルコーデック54によって受信データとして分解され,音声/データセレクタ66に転送さ
れ,次に,基本部12のPCMCIAI/F58を介してパソコン70に入力される」。
「0023】図5(c)は,パソコン以外に本発明の携帯電話器ユニットを適用できる例【
。,を示すためのものであるこのように本発明の携帯電話器ユニットを適用できるものとしては
,,,,,,,テレビステレオカラオケビデオカメラ産業機械設備医療機器等があり基本的には
それらの電子機器がPCMCIAI/F(インターフェース)を有し,PCMCIA規格のコ
ネクタを備えていることが必要である」。
ウ以上によれば【0004】の記載から,甲2発明は,携帯電話器が有する,
「無線通信機能を有する部分」を他の電子機器と組み合わせて使用可能とするもの
であり,また【0020】∼【0022】には,携帯電話器ユニット10の基本,
部12をパソコン70に設けられたPCMCIA規格のコネクタに接続して使用す
ることが記載されており,特に【0022】には「アンテナ24で受信した音声,
信号」が,RFモジュール50での処理,変復調モデム52による復調,チャンネ
ルコーデック54による受信データとしての分解等,各種信号処理されて,基本部
12のPCMCIAI/F58を介して「パソコン70」に入力されることが記載
されている。
,「」,したがって携帯電話器ユニットの基本部からなる無線通信機能ユニットは
,「」,パソコン70に装着され音声信号の受信とともに各種信号処理を行っており
これらの無線通信機能がパソコン70において使用可能にされているといえるか
ら「前記パソコンに装着されたとき,パソコンで音声信号の受信を含む無線通信,
機能を使用可能にする無線通信機能ユニット」ということができる。
エ原告は,甲2の【0018】∼【0022】の記載に基づいて,パソコン7
0に基本部を装着しての,①データ受信時,アンテナから受信される(データ用)
音声信号を変調(復調)する機能(第1の機能)を使用するものの,受信された信
号(復調された信号)をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換す
る機能(第2の機能)を使用していないこと,②データ送信時,マイクに入力され
る音声を通話用音声信号に変換する機能(第3の機能)を使用せず(データ用),
音声信号を変調して送信信号に変換する機能(第4の機能)を使用するだけである
として「甲2に記載されている基本部12は,パソコン70に装着されたとき,,
上記第2,第3の機能を使用していないのであるから,パソコン70によって通話
が可能になることはない」とし,また「基本部12をパソコン70に装着したと。,
きには,通話用音声信号の変換機能を有する基本部12のADPCMコーデック5
6(通話のために必須のもの)は,音声/データセレクタ66によって回路から切
り離され,パソコン70が基本部12のADPCMコーデック56(通話のために
必須のもの)を使用して通話を行うことは不可能になる」と主張する。。
しかしながら,甲2の【0020】∼【0022】の記載は,パソコン70に基
本部12を接続し,携帯電話器の無線通信機能を用いて無線でデータの送受を行う
場合を開示するものであって,パソコンのデータ送受信の際にADPCMコーデッ
ク56を使用しないことは記載されているが,基本部12を他の電子機器へ装着し
たときには必ずADPCMコーデック56を使用しない回路構成となって,データ
の送受信のみを行うとは記載されておらず,また,常にそのような回路構成を採用
する技術的必然性も存在しないから,上記回路構成は,単に,無線でデータの送受
を行う場合に採用される回路構成を述べたにすぎないと解するのが相当である。
そして,甲2には,パソコン70に基本部12を接続し,携帯電話器の無線通信
機能を用いて通話を行う場合については特に言及されてはいないものの,基本部1
2内にはADPCMコーデック56が存在している以上,このADPCMコーデッ
ク56を用いる回路構成を採用して,通話を行うことが不可能であるとする理由も
ないから,単に,データの送受信を行う場合に,受信された信号をスピーカから音
声として出力する通話用音声信号に変換する機能及びマイクに入力される音声を通
話用音声信号に変換する機能を使用していないことを根拠に,甲2に記載されてい
る基本部12は,パソコン70に装着されたとき「パソコン70によって通話が,
可能になることはない」と断定することはできず,甲2発明を「前記パソコンに。
装着されたとき,パソコンによって通話を可能としない無線通信機能ユニット」。
と認定することはできない。
したがって,原告の「基本部12をパソコン70に装着したときには・・・パ,
ソコン70が基本部12のADPCMコーデック56(通話のために必須のもの)
を使用して通話を行うことは不可能になる」との主張は採用することができない。
(2)相違点4の認定の誤りとの主張について
ア原告は,審決が,本件発明と甲2発明との相違点4として「無線送受信ユ,
ニットが,本件発明では,1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末
,,,によって通話を可能にするのに対し甲2発明では一つの無線送受信ユニットが
複数の通信端末のうち,移動体通信端末(周辺部)に装着されたとき,当該移動体
,,通信端末で通話を可能にする一方他の通信端末であるパソコンに装着されたとき
当該パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能にするものの,通話
を可能とするかどうか不明な点」と認定したことは誤っている,と主張する。。
しかし,まず,上記(1)のとおり,甲2には,基本部12を他の電子機器へ装着
したときに,その無線通信機能を用いて通話を行うことも,行わないことも明示的
に記載されていないから,本件発明との相違点4として,甲2発明を「他の通信端
末であるパソコンに装着されたとき,当該パソコンによって通話を可能とせず」と
認定することはできず,審決が,甲2発明につき「他の通信端末であるパソコン,
に装着されたとき,当該パソコンで音声信号の受信を含む無線通信機能を使用可能
にするものの,通話を可能とするかどうか不明」と認定したことが,誤りであると
いうことはできない。
イまた,審決においては,相違点4に関し「無線送受信ユニットが,本件発,
明では,1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可
能にするのに対し」と記載し,本件発明の構成として「1つの回線を契約するだけ
で前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」ことを認定し,他方,甲
2発明については「一つの無線送受信ユニットが,複数の通信端末のうち,移動体
通信端末(周辺部)に装着されたとき,当該移動体通信端末で通話を可能にする一
方,他の通信端末であるパソコンに装着されたとき,当該パソコンで音声信号の受
信を含む無線通信機能を使用可能にするものの,通話を可能とするかどうか不明」
と認定し,その後の相違点4についての判断において,本件発明の上記構成の容易
想到性を実質的に検討しているのであるから,原告の主張する「1つの回線を契約
するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」ことが相違点の
判断対象となっていることは明らかである。
したがって,審決に原告の主張するような相違点の誤認・看過はない。
(3)よって,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(甲4技術Bの認定の誤り)について
,「(),(1)原告は甲4には一つの電話送受信ユニットモジュラーユニットが
スピーカ及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交代して装着され
ることにより,装着された各々の移動体通信端末において通話を可能にする電話送
受信ユニット(モジュラーユニット」の技術(甲4技術B)が開示されていると)
の審決の認定は誤りであり,甲4におけるモジュラーユニットは「電話送受信ユ,
ニットではなくもともと通話が可能な端末に装着されたときに当該端末が通」,,「
信」できるようにするものにすぎない,と主張する。
(2)甲4技術について検討するに,甲4には次の記載がある。
ア「Itwouldbedesirable,however,topackageradiotransceiversand/ormodemsina
modularmannersothatatelecommunicationsterminal,suchasaportabletelephoneora
portablepersonalcomputer,couldbeadaptedforcommunicationwithdifferentsystemsby
simplyreplacingthemodularunitwithonewhichwasespeciallyconfiguredforthe
telecommunicationsnetworkwithwhichcommunicationwasdesired.(2頁32行∼3頁5」
行(訳:しかし,無線トランシーバ及び/或いはモデムをモジューラ形式で収容することが)
,,,望ましくそうすれば携帯電話或いは携帯パーソナルコンピュータのような遠隔通信端末が
通信が希望される遠隔通信ネットワークに特別に工夫されたものにモジューラユニットを単に
交換するだけで,異なったシステムと通信するように適応され得る)。
イ「ItwouldbeanadvantagetherefortoprovideastandardPCMCIAcardmountedradio
transceiverwhichisreadilyreplaceableinordertoenableelectronicequipmentto
communicatewithvariousnetworksandinaccordancewithvariousradiostandardsmerely
byinterchangingsuchacard.(3頁25∼30行(訳:それ故,簡単に交換できる標準P」)
CMCIAカードを搭載した無線トランシーバを提供することにより,そのような標準PCM
CIAカードを単に交換するだけで電子機器を色々なネットワークと,かつ,色々な無線規格
に基づいて通信できるようにすることは有益である)。
ウ「Thepresentinventionrelatestomodularradiocommunicationsequipment.More
particularly,oneaspectofthepresentinventionincludesprovidingcardmountedradio
telephoneand/ormodemequipmentconfiguredforwirelesstelecommunication(which
includesvoiceand/ordata)inaccordancewithapreselectedstandardand/orformat.
Suchmodularunitsmaybereplaceablysecuredwithinotheritemsofelectronicequipment
forestablishingtherefromatelecommunicationslinkwithawirelessnetwork.Inone
embodiment,suchequipmentincludesportablecellularradiosubscriberterminals.
Inotheraspect,theinventionincludesamodularhousingformountingaradio
transceiveradaptedfortelecommunicationsinaccordancewithapreselectedstandard.An
arrayofcontactsarearrangedalongafirstendofthehousingandadaptedfor
engagementwithamatingarrayofcontactsinanitemofelectronicequipment,suchasa
computerorportablecommunicationsdevice.(4頁1∼20行(訳:本発明は,モジュラ」)
ー無線通信装置に関する。より詳細には,本発明の1つの形態は,予め選択された規格及び/
又はフォーマットに従う無線通信(音声及び/又はデータを含む)のために構成されたカード
型無線電話及び/又はモデム装置を提供することである。かかるモジュラーユニットは,それ
による無線ネットワークとの通信リンクを確立するため,他種の電子装置の中に交換可能に保
護収容される。一実施例では,そのような装置は,携帯セルラ無線電話加入者端末を含む。
本発明の他の形態は,選択された規格に従った通信に適応される無線送受信機を搭載するた
めのモジュラー筐体を含む。接触子列が当該筐体の第一の端部に沿って配置され,その接続子
列がコンピュータや携帯通信装置などのひとつの電子装置中の対応接触子列に係合可能となっ
ている)。
エ「ItiswellestablishedtoallowthePC11andtelephone12tocommunicatewith
variouswirelesstelecommunicationnetworks.Eachofthetelecommunicationnetworks
may,however,includedifferenttelecommunicationstandardsand/orrequiremodemsof
differenttypesasrepresenteddiagrammaticallyinblocks13-16.Thevarious
telecommunicationstandardsmayinclude,forexample,AMPS,D-AMPS,JDC,TACS,GSM,
NMT-450,NMT-900,DECT,MobitexandfutureSpreadSpectrumstandards,aswellasmany
more.(7頁30行∼8頁5行(訳:PC11及び電話12を色々な無線遠隔通信ネットワ」)
ークと通信させることは良く確立されている。しかし,遠隔通信ネットワークのそれぞれは異
なった遠隔通信規格を含み,かつ/或いはブロック13−16で図示された異なった型のモデ
ムを必要とする色々な無線遠隔通信規格は例えばAMPS,D-AMPS,JDC,TACS,GSM,NMT-450,。,,
NMT-900,DECT,Mobitex,及びもっと多くの将来の拡張スペクトル規格を含む)。
オ「StillreferringtoFIG.3andasshownbydottedlinesextendingthereacross,the
module31housesatelecommunicationscard29includingaradiotransceiver36,whichmay
includeamodemsection37.(11頁26∼29行(訳:引き続き図3を参照すると,そこ」)
を横切って伸びる点線によって示されるように,モジュール31はモデム部37を含んでもよ
い無線トランシーバ36を含む遠隔通信カード29を収容する)。
カ「ReferringnowtoFIG.14thereisshownadiagrammaticalillustrationofthe
versatilityandmultipleusespossiblewiththemodularunits31and131ofthepresent
invention.Asstatedabove,eithermodule31or131maybeusedinsuchapplications,
althoughonlymodule31isrepresentedinthisparticulardrawing.Asrepresentedherein,
thereareatleasttwowirelessfunctionsprovidedbythemodularunits31and131.
Severaltechnologiesmay,infact,resideonasinglecardwithinthemodularunits31
and131.Forexample,aMobitexandAMPScommunicationformatsmaybeutilized.Withthe
unit31hereinshownpluggedintoanotebook300,datacommunicationoverMobitexmaybe
thereinprovided.TelephonecallsmaylikewisebecompletedthroughtheAMPSsystemor
otherformat,whereinaheadset302isshownlinkedtothenotebook300.Aninfraredlink
304isillustrated,althoughotherconnectionswouldbepossible.Likewise,module
mountingslot306isshownwithinhousing308ofnotebook300.Acommunicationantenna
310isshownonthetop312ofthenotebook300.Thenotebook300maybeofaconventional
designwhichhasbeenmodifiedfortheslot306andotherconnectionandsystemaspects
describedabove.Morespecifically,theslot306isconstructedforreceiptof,and
matingengagementwith,connector33ofthemodule31.Itmaybeseenthatthemodule31
inthisparticularembodimentisconstructedforbothpowerandantennacouplingfromthe
areaaroundconnector33,asdescribedinFIG.4above.18頁33行∼19頁27行訳」()(
:ここで図14を参照すると,本発明によるモジュラーユニット31及び131と電子装置に
より構成されるシステムの多様で複合的な用途が図示されている。前述したとおり,モジュー
ル31と131の両方がこのような応用に使用可能であるが,この図においてはモジュール3
1のみが描写されている。本明細書で説明しているように,少なくとも二つの無線機能がモジ
ュラーユニット31及び131によって提供される。事実上,いくつかの技術がモジュラーユ
ニット31及び131内の単一カード上に常駐可能である。例えば,Mobitex及びAMPS通信フ
。,,ォーマットが使用可能であるユニット31を図のようにノートブック300の中に装着し
データ通信を行う。そこでは,Mobitexが提供される。電話もAMPSシステムや他のフォーマッ
トを通して同様に通話することができ,そこではノートブック300に接続されたヘッドセッ
ト302が示されている。赤外線接続304が示されているが,その他の接続手段も可能であ
る。同様に,モジュール装着スロット306は,ノートブック300の筐体308内部に図示
されている。通信アンテナ310はノートブック300の頂部312の上に図示されている。
ノートブック300は,スロット306及びその他の接続並びに上述したシステムの形態につ
いて改良された通常のデザインでよい。より具体的には,スロット306はモジュール31の
コネクタ33を受容し,対応接合するように構成されている。この特定の実施例におけるモジ
ュール31は,前記図4で説明されたように,コネクタ33の周りの領域から電源とアンテナ
の両方の結合のために構成されることがわかる)。
キ「StillreferringtoFIG.14,asecondutilizationofthemodule31maybewithina
cellulartelephone309.Thephone309incorporatesachassis309Aofconventionaldesign,
orwhichincorporatesaspecialdisplay(notshown).Themodule31isinsertedintoslot
311andconnectedwithasoftwaregenerateddisplaythatcorrespondstotechnologyand
thestandardsthatareactivated.Inthatregardatouchscreenmaythendisplaythe
availablephonefeaturesthatcanthenbedialed.Antenna312isshowntoupstandfrom
chassis310inaccordancewiththeaspectsoftheinventiondiscussedabove.(19頁3」
2行∼20頁8行(訳:さらに図14を参照すると,モジュール31の二番目の利用態様は)
携帯電話309の内部にあることだろう。この電話309は,通常設計の,又は専用表示装置
(図示せず)を備えたシャーシ309Aを含む。モジュール31は,スロット311の中に挿
,。,入され有効な技術並びに規格に対応したソフトウエア生成表示につながれるその点に関し
タッチスクリーンは,次にダイアルすることのできる有効な電話機能を表示するようにしても
よい。上述の本発明の形態に従い,アンテナ312はシャーシ310から直立して示されてい
る)。
ク「StillreferringtoFIG.14thereisshownapenbasedcomputer313orsimilar
structurewhichservestoprovidepeninputwhilegeneratingadisplaysimilartoa
cellularphonewhenactivated.Duetothefactthatthesystemforacellularphoneis
alreadyinthecomputerbyvirtueofthemodule31securedwithinslot314,theusercan
usetheoptionoftelephoniccommunicationbysimplyconnectingaheadset316throughan
infraredconnection318oraheadset320connectedbyaconventionalcable322.The
computercanthenbesimultaneouslyusedfordatacommunication,faxes,andotherforms
ofinformationalexchangeswhicharedeemednecessary.(20頁9∼21行(訳:さらに)
図14を参照すると,ペン型コンピュータ313あるいは活性化されたときに携帯電話と同様
の表示を発生しつつペン入力を提供する同様の構造物が示されている。スロット314の内部
に獲得された(securedwithin)モジュール31の力で(byvirtueof)コンピュータの中に
携帯電話のシステムが既に在るという事実により,使用者は,赤外線接続318を介したヘッ
ドセット316,又は,通常のケーブル322によって接続されたヘッドセット320を,単
に接続することにより,電話通信の選択を使うことができる。このコンピュータは,同時にデ
,,。)ータ通信ファックス及び必要とされるその他の形式の情報交換に使用することができる
(3)ア上記(2)ア及びイによれば,甲4技術は,携帯電話あるいは携帯パーソナ
ルコンピュータのような遠隔通信端末が,遠隔通信ネットワークにより通信を行う
際に,モジュラーユニットを単に交換するだけで,色々なネットワークと,かつ,
色々な無線規格に基づいて,通信可能にするものである。また,上記(2)ウによれ
ば,そのモジュラーユニットは,あらかじめ選択された規格及び/又はフォーマッ
トに従う無線通信(音声及び/又はデータを含む)のために構成されたカード型無
線電話及び/又はモデム装置である。そして,上記(2)エによれば,色々な無線遠
隔通信規格は,例えば,AMPS,D-AMPS,JDC,TACS,GSM,NMT-450,NMT-900,
DECT,Mobitex及びもっと多くの将来の拡張スペクトル規格を含むとされるから,
甲4においては,遠隔通信端末が,モジュラーユニットを単に交換するだけで上記
各通信規格に対応することができるものと認められる。
ところで,弁論の全趣旨によれば,①「AMPS」とは,北米やラテンアメリカで利
,()用されているアナログ携帯電話方式であってFDMA周波数多重アナログ変調
の変調技術を利用するものであり,②「DECT」とは,欧州で標準化したデジタルコ
ードレス電話方式であって,音声符号化はADPCMを用いるとともに,GMSK
変調技術を利用するものであるところ(原告第4準備書面10頁参照,甲4にお)
いては,遠隔通信端末がモジュラーユニットを交換するだけで,AMPS(アナログ携
帯電話方式)にも,DECT(ADPCM音声符号化を用いるデジタルコードレス電話
方式)にも,対応することができるのであるから,遠隔通信端末から所定のインタ
ーフェイスを介して各モジュラーユニットに伝送される音声/データの形式が共通
のものであって,各通信方式へ対応するためのデータ変換に関する信号処理は,す
べて各モジュラーユニットにおいて実行されるものと考えられる。
したがって,甲4における各モジュラーユニットは,AMPS規格に対するすべて
の信号処理や,DECT規格に対するすべての信号処理(ADPCM音声符号化を含
む処理)を行う機能をそれぞれ備えるものであり,通話用音声信号と送受信信号を
相互に変換する変換機能を含めて,各通信システムが各モジュラーユニットに搭載
されていると解するのが,甲4の記載から自然の解釈である。
イそして,上記(2)カによれば「少なくとも二つの無線機能がモジュラーユニ,
ット31及び131によって提供される。事実上,いくつかの技術がモジュラーユ
ニット31及び131内の単一カード上に常駐可能である」と記載され,この幾。
つかの技術の例として「Mobitex及びAMPS通信フォーマット」が使用可能とされ,
ているから,この「Mobitex及びAMPS通信フォーマット」は,モジュラーユニッ
ト31及び131内の単一カードに搭載されているものと認められる。また,ユニ
ット31をノートブック300の中に装着し,ユニット31内のMobitexが提供さ
れて,データ通信を行うことが記載されており,さらに,このデータ通信の記載に
基づけば「電話もAMPSシステムや他のフォーマットを通して同様に通話すること,
ができ」るとの記載は,ノートブック300に接続されたヘッドセット302等を
利用して電話をする場合には,同様に,ユニット31内の「AMPSシステムや他の
フォーマット」が提供され,このAMPSシステムや他のフォーマットにより通話を
することが可能となることを意味しているものと解される。
ウまた,上記(2)キには「モジュール31は,携帯電話309のスロット31,
1の中に挿入され,有効な技術並びに規格に対応したソフトウエア生成表示につな
がれる」ことが記載され,また「タッチスクリーンは,次にダイアルすることの,
できる有効な電話機能を表示するようにしてもよい」ことが開示されているから,
携帯電話309は,AMPS通信フォーマット等が搭載されたモジュール31を装着
,,。することにより実質的に携帯電話として機能するようになるものと認められる
,「()エさらに上記(2)クのスロット314の内部に獲得されたsecuredwithin
モジュール31の力で(byvirtueof)コンピュータの中に携帯電話のシステムが
既に在るという事実」との記載は,モジュール31がペン型コンピュータ313の
スロット314に装着されることで,ペン型コンピュータ313に携帯電話のシス
テムが構築されることであると解釈されるから,上記(2)クの記載は,モジュール
31が装着されていれば,ペン型コンピュータ313内に携帯電話のシステムが既
に構築されていることになり,それゆえ,使用者は,赤外線接続318を介したヘ
ッドセット316又は通常のケーブル322によって接続されたヘッドセット32
0を,単に接続することにより,電話通信を行うことができることが開示されてい
るものと解される。
オそして,上記(2)アのとおり,甲4技術は「携帯電話或いは携帯パーソナル,
コンピュータのような遠隔通信端末」を対象としたものであるから,ノートブック
300やペン型コンピュータ313は,携帯パーソナルコンピュータのような遠隔
通信端末であって「移動体通信端末」であると認められ,また,モジュラーユニ,
ット31,131は,その中にAMPS通信フォーマット等を搭載しており,上記ア
∼エにおいて検討したとおり,電話の送受信を可能とするユニット,すなわち,電
話送受信ユニットであるといえる。
,,「(),したがって甲4には一つの電話送受信ユニットモジュラーユニットが
スピーカ及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交代して装着され
ることにより,装着された各々の移動体通信端末において通話を可能にする電話送
受信ユニット(モジュラーユニット」の技術(甲4技術B)が開示されている。)
(4)原告は,甲4における前記(2)イの記載(それ故,簡単に交換できる標準「
PCMCIAカードを搭載した無線トランシーバを提供することにより,そのよう
な標準PCMCIAカードを単に交換するだけで電子機器を色々なネットワークに
,,。」)よりかつ色々な無線規格に基づいて通信できるようにすることは有益である
によれば,甲4に記載の発明は,それ自体完結した機能を有する電子機器が,異な
る通信規格でも通信できるようにするものであって,モジュラーユニットがそれを
装着することで電子機器に新たな機能(電話として使用可能な機能)を付与しよう
とするものではない,と主張する。しかし,前記(2)イの記載には,モジュラーユ
ニットを交換することで,異なる無線規格に基づいて通信できるようにすることは
記載されているものの,その際の電子機器の構成は明示されていないから,当該記
,。,,載から原告の主張内容を直ちに導くことはできないまた上記(3)アのとおり
モジュラーユニットを交換するだけでAMPS規格にもDECT規格にも対応できること
は,モジュラーユニットがそれを装着することで電子機器に新たな機能(電話とし
て使用可能な機能)を付与していると解することができ,甲4のその他の記載から
みても,原告の主張は採用することができない。
また,原告は,甲4における前記(2)オの記載から,モジュール31は,モデム
,,,,と無線トランシーバだけを有しこれは第1第4の機能に相当する部分である
と主張する。しかし,前記(2)オには,モジュール31がモデム部37や無線トラ
ンシーバ36を含むことが記載されているものの,遠隔通信又は通話に必要な各要
素が,それぞれいずれに配置されているか具体的に記載されておらず,また,甲4
において「モデム部」が具体的に何を意味するか明確ではない。そして,前記(2)
オ記載のモジュール31が備えるモデム部37や無線トランシーバ36の機能がデ
ータ用に限定されると解すべき理由はないから,モデム部37や無線トランシーバ
36によって,本件発明の「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから出
力する音声信号に変換する機能(第2の機能)と「マイクに入力される音声信号」,
を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能(第3の機能)の少なくと」
も一部に相当する機能が実現されるものといえ,モジュール31は,データ用信号
の変調・変換に係る第1,第4の機能に相当する部分だけを有するとの原告の主張
は,採用できない。
さらに,原告は,甲4における前記(2)カの記載から「モジュラーユニット31,
に含まれるのは『通信フォーマット』であるから,上記『電話もAMPSシステムや
他のフォーマットを通して同様に通話することができ』るとは,ノートブック30
0に含まれるAMPSシステム(電話)を使用して通話するという意味である。そう
すると,ノートブック300自体が電話機能(電話として通話可能な機能)を有す
る一方,モジュラーユニット31は,単にノートブック300に含まれるAMPSシ
ステムから与えられる信号を送信信号にして送信するという無線通信機能(第1,
第4の機能)しか有していない構成であることは明らかである」と主張する。し。
かし,上記(2)カの記載によれば「AMPSシステムや他のフォーマット」と並列的,
に記載されており「AMPS通信フォーマット」を形成するのが「AMPSシステム」で,
あると解され,上記(3)ア及びイのとおり,AMPS通信フォーマット及びAMPSシス
テムは,モジュラーユニット31内のカードに搭載されていると解するのが自然で
あるから,ノートブック300がAMPSシステムを含むことを前提とする原告の主
張は理由がない。
さらにまた,原告は,甲4における前記(2)キの記載に基づき,携帯電話309
はまさに「携帯電話」であって,携帯電話309自体が電話として通話可能な機能
を有している,と主張する。しかし,前記(2)キの記載は,モジュール31が挿入
されて結果として携帯電話として機能する機器を「携帯電話309」と表現して,
いるものと認められ,原告の上記主張は採用することができない。
さらにまた,原告は,甲4における前記(2)クの記載に基づいて,ペン型コンピ
ュータ313の中に携帯電話のシステムが「既に在る」のであるから,モジュール
31はペン型コンピュータ313の中の携帯電話システムが使用されるときに無線
通信を行う機能(第1,第4の機能)しか有していない構成であることは明らかで
ある,と主張する。しかし,上記(3)エのとおり,前記(2)クの記載によれば,モジ
ュール31がペン型コンピュータ313のスロット314に装着されることで,当
該ペン型コンピュータ313に携帯電話のシステムが構築されることが開示されて
いると解されるものであって,この点についても,原告の主張を採用することはで
きない。
したがって,甲4のノートブック300,携帯電話309は,それぞれが電話機
能を内包しているとの原告の主張の前提が誤りであるから「回線契約はノートブ,
ック300,携帯電話309について行われている」とする原告の主張は採用する
ことができない。
(5)原告は,本件において「電話送受信ユニット」という用語は本件発明にお
いてのみ使用されている用語であるから,甲4技術Bの認定における「電話送受信
ユニット」が記載されているといえるためには,モジュラーユニットが第2の機能
と第3の機能を有しているという認定判断が必要であるが,審決はそのような認定
判断を行っていない,などと主張する。しかしながら「電話送受信ユニット」が,
記載されているか否かの認定に当たっては,電話の送受信を可能とするユニットと
解することができるか否かを考慮すればよく,上記のとおり,その点について審決
は認定しているものであって,原告の上記主張は採用することができない。
(6)さらに,原告は,審決が「前記ノートブック300は,周知のノートブッ
ク型コンピュータのことであることが自明である(22頁20,21行)と認定。」
したことなど,審決が甲4技術Bを認定するために用いている認定も誤っている,
と主張する。しかし,甲4の「Personalcomputershavebecomesmallerandmore
efficientintheirprogressionthroughdesktop,laptop,notebook,andpalmtop
」()(,,versions.1頁13∼15行訳:パーソナルコンピュータはデスクトップ
ラップトップ,ノートブック及びパームトップの順の進行で,より小さく,より効
率的になってきた)及び「ReferringfirsttoFIG.1,・・・suchasalaptopor。
netebookcomuter11(7頁27∼29行(訳:最初に図1を参照すると・・・」),
ラップトップやノートブックコンピュータのような)との記載によれば「ノート,
ブック300」がノートブック型コンピュータであることが認められ,前記認定の
とおりその他の点も含めて,審決が甲4技術Bを認定するために用いている認定に
誤りがあるとの原告の主張は採用することができない。
さらにまた,原告は「通話」と「電話通信」とは異なる用語である,デスクト,
ップ型パソコンであっても持ち運んで使用することが可能であるから,持ち運んで
使用可能であることが示唆されているからといって「移動体通信端末」になるもの
ではないなどと述べ,審決の甲4技術Bに関する認定の誤りを主張するが,このよ
うな原告の主張が採用できないことは明らかである。
(7)以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができず,審決の甲4
技術Bの認定に誤りはなく,取消事由2は理由がない。
3取消事由3(相違点4についての容易想到性の判断の誤り)について
,,(1)原告は甲2発明及び甲4技術Bについての審決の認定が誤っている以上
甲2発明と甲4に記載された発明とを組み合わせても,本件発明における「1つの
回線を契約するだけで複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」構成は得
られない,と主張する。
しかしながら,上記1及び2のとおり,甲2発明及び甲4技術Bについての審決
,。の認定に誤りがあるとはいえないから原告の上記主張は採用することができない
(2)また原告は審決の甲2発明相違点4甲4技術Bを前提としても1,,,,,「
つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にする」
構成は得られない,と主張する。そして,甲4に記載の発明は,もともと電子機器
が異なる通信規格に対応できるようにすることを目的とするものであり,モジュラ
ーユニットは異なる端末に装着されることで当該端末に新たな機能を付与するもの
ではない,ノートブック300,携帯電話309は,もともと電話機能を有するも
のであって,モジュラーユニットが装着されることで「電話」になるものではない
ことなどを述べる。
(3)しかしながら,前記2(3)のとおり,甲4には,ノートブック300に接続
されたヘッドセット302等を利用して電話をする場合には,ユニット31内の
「AMPSシステムや他のフォーマット」が提供され,このAMPSシステムや他のフォ
ーマットにより通話をすることが可能となることが記載されていると認められるか
ら,モジュラーユニットには,それが装着されることで「電話」になるための通信
システムが搭載されており,甲4には「一つの電話送受信ユニット(モジュラー,
ユニット)が,スピーカ及びマイクを備えた複数の移動体通信端末のスロットに交
代して装着されることにより,装着された各々の移動体通信端末において通話を可
能にする電話送受信ユニット(モジュラーユニット」の技術(甲4技術B)が開)
示されている。
したがって,原告が前提とする甲4技術の認識に誤りがあり,原告の主張は採用
することができない。
(4)そして,甲4記載のモジュラーユニットは,装着された各々の移動体通信
端末において通話を可能にするものであるから,審決が「甲4技術Bで,複数の移
()動体通信端末に対し交代して共用される電話送受信ユニットモジュラーユニット
は,1つの回線を契約した上で交代して使用されるものに他ならない(33頁1。」
1∼14行)と認定判断したことに誤りはない。
(5)原告は,甲2の図1において,バッテリパック16の部分にROM/RA
Mを示す符号「60」が記載されていることを根拠に,甲2に記載されている「基
本部12」は,マイクロコントローラ64が実行するプログラムを格納した「RO
M/RAM60」を,図1に示されるように,物理的には分離してバッテリパック
16側に配置したものであると解釈し,甲2発明において「基本部12(無線通」
信機能ユニット)は,移動体通信端末としての周辺部14に装着されたときと,パ
ソコン70に装着されたときとでは,その構成を異にし,パソコン70に装着され
たときには,コントローラ64が実行するプログラムを格納した「ROM/RAM
60」と,それ以外の部分とが物理的に分離されたものとなること,その結果,パ
ソコン70でデータの送受信を行うとき,基本部12のデータ通信に必要な各部の
制御はパソコン70側によって行われていると認められる,と主張する。
しかしながら,甲2によれば「0004・・・本発明の目的は,本来の携帯,【】
電話器として使用できると共に,携帯電話器が有する無線通信機能に着目して,無
線通信機能を有する部分を他の電子機器と組み合わせて使用可能な携帯電話器ユニ
ットを提供することにある」から,甲2発明は,携帯電話器の「無線通信機能を有
する部分」を,他の電子機器と組み合わせることが可能な,一つのまとまりとして
取り扱うことを想定しているものと認められる。また「0007・・・本発明,【】
,,,,,の携帯電話器ユニットは3つの分離可能な部分即ち基本部12周辺部14
バッテリパック16から成る・・・「0012・・・基本部12は,RFモ。」,【】
ジュール50,変復調モデム52,チャンネルコーデック(TDMA方式:Time
DivisionMultipleAccess方式)54,ADPCM(AdaptiveDifferentialPulse
CodeModulation)コーデック56,PCMCIAI/F(インターフェース)5
8,ROM/RAM60,EEP−ROM62,マイクロコントローラ64,音声
/データセレクタ66を有している「0014】ROM/RAM60,EEP。」,【
−ROM62は,基本部12を制御するプログラムを格納し,作業中のワーキング
領域となるメモリであり,マイクロコントローラ64は,ROMに格納されたプロ
グラムに従って基本部12および周辺部14内の各機能部品を制御するものであ
り,音声/データセレクタ66は,PCMCIAI/F58からの音声またはデー
タを選択的にチャンネルコーデック54またはADPCMコーデック56に転送
し,またはそれらからの音声またはデータをPCMCIAI/F58に転送するも
のである」と記載されている。そして,図4によれば,基本部12内に「ROM。
/RAM60」が配置され,マイクロコントローラ64とROM/RAM60とを
結ぶ線が図示されている。以上によれば,マイクロコントローラ64とROM/R
AM60とは,基本部12内で,信号線を介してプログラムやデータの授受を行っ
ていることが認められる。
また無線通信機能を有する部分として一体のものとして取り扱われる基,「」,「
本部12」が,移動体通信端末としての周辺部14に装着されたときと,パソコン
70に装着されたときとで,その構成を異にし,パソコンに装着されたときには,
基本部12から「ROM/RAM60」が分離されたものになるとの原告の主張に
ついても,甲2には,ROM/RAM60が欠如した基本部12をパソコン70が
制御する旨の説明は記載されておらず,原告の解釈は,甲2発明の目的や甲2に開
示された技術的事項と矛盾するものである。
そして,甲2の図1の符号「60」のほかに「ROM/RAM60」をバッテ,
リパック16側に配置することを示唆する記載は存在せず,甲2の図4とその説明
,「」,,に基づけばROM/RAM60は基本部12内に存在するものであるから
,「」。甲2全体の記載からみて図1の符号60は明らかな誤記であると判断される
したがって「ROM/RAM60」に関する原告の上記主張は採用できず,ま,
た,甲2に上記誤記が存在するとしても,このことにより,相違点4の容易想到性
を否定する根拠とはならない。
(6)なお,原告は「無線通信機能ユニットと認定される基本部12は,本件発,
明における『表示部に表示する表示信号を生成する機能』を有していないと認める
のが相当である」と相違点1についての容易想到性を否定する。。
この点は,相違点4の容易想到性の判断に直接関連するものではないが,付言す
るに,原告は,まず,キースイッチ42で入力された電話番号は,そのままLCD
40に表示されると記載されていることから,表示部としてのLCD40に対する
表示信号を生成する機能は,移動体通信端末と認定された周辺部14にあることに
なる,と主張する。しかしながら,相違点1につき,審決は「アンテナから受信,
した信号を表示することが周知慣用である(29頁19,20行)として,アン」
テナから受信した信号の表示について検討しているものであって,キースイッチに
よる入力について述べるものではない。
また,原告は「携帯電話等において『アンテナから受信した信号を表示するこ,
とが周知慣用』であるとしても,それは携帯電話という移動体通信端末においてア
ンテナから受信した信号を表示することが周知慣用であるということである」と。
して「甲2発明について,審決は『周辺部14』を『移動体通信端末』と認定し,
ているのであるから,上記周知慣用技術によれば『周辺部14にアンテナから受,
信した信号を表示する機能がある』と認定されることになる。移動体通信端末と認
定しない『基本部12』に『アンテナから受信した信号を表示する機能がある』と
認定することは,上記周知慣用技術の認定と矛盾することになる」と主張する。。
,,「,,しかしながら審決は周知慣用技術において移動体通信端末の内部回路が
移動体通信端末(携帯電話等)のアンテナから受信した文字情報を表示部に表示で
きるよう,その表示信号を生成する機能を含むことは自明であるところ,甲第2号
証の段落0008の『基本部12の内部には,画像,文章等のデータと音声を処理
する処理部と』と記載されるように,前記基本部は,文章を処理する処理部を含,
むのであるから,甲第2号証の基本部の中の電子回路は,表示部に表示する表示信
号を生成する機能を有する示唆があると言うべきである(29頁21∼28行)。」
と,基本部12における具体的処理に基づいて判断しており,しかも,甲2の図4
及びその説明をみると,携帯電話器ユニット10のうち,アンテナから信号を受信
する機能は基本部12側にあることが認められるから,周知慣用技術を甲2に記載
の実施例に則して解釈し,甲2に記載の技術を認定することに何ら矛盾を生じるも
のではない。
そして,アンテナから受信した表示信号に着目すれば,アンテナから表示手段に
至る経路上に存在する甲2発明の「電子回路」が,実質的に表示部に表示する表示
信号を生成する機能を有すると解釈することが自然であって,このことと,甲2の
「0017】携帯電話器として用いる場合を概略すると,キースイッチ(プッシ【
ュボタン)42を用いて無線通話を行う相手の電話番号を押す。このとき,LCD
40は電話番号を表示する・・・」との記載とが矛盾するものともいえず,審決。
の認定判断に誤りはない。
(7)したがって,審決が,相違点4につき「甲2発明に甲4技術Bを適用し,,
甲2発明のパソコンを,電話送受信ユニットが装着されて通話が可能にされる移動
体通信端末として構成し,本件発明のように『1つの回線を契約するだけで前記複
数の移動体通信端末によって通話を可能にする』よう構成することは当業者が容易
になし得ることである」とした判断に誤りはない。。
よって,原告主張の取消事由3は理由がない。
4取消事由4(相違点2についての認定及び判断の誤り並びに容易想到性の判
断の誤り)について
(1)「相違点2の認定の誤り」をいう点について
ア原告は,甲2のパソコン70は,甲2の図5からすれば,明らかに,いわゆ
るデスクトップパソコンの形態が図示されているのであって,パソコン70をもっ
て「移動体通信端末」と認定することは甲2の記載に反しているから,甲2発明で
は「複数の移動体通信端末ではない」ことが明らかであって,審決が,相違点2と
して「甲2発明では・・・複数の移動体通信端末』かどうか不明である(28,,『」
頁23∼27号)と認定したことは誤っている,と主張する。
イしかしながら,甲2には,図5のパソコン70がデスクトップパソコンであ
るとの説明は記載されておらず,また,図5を参照すると,パソコン70のみなら
ず,テレビ,ステレオ,ビデオカメラ等を示す図5(c)の装置も同様に直方体形
状に記載されているから,図5の(b(c)は概念図であると認められ,この図),
5(b)を根拠に「明らかに,いわゆるデスクトップパソコンの形態が図示され,
ている」と認定することはできないから,原告の主張は採用することができない。
,,「」また審決は甲2の携帯電話器ユニット10の周辺部14を移動体通信端末
に相当すると認定しているものであり,相違点2の認定において,甲2に記載され
るパソコン70が「移動体通信端末」であることは直接的には基礎としていないか
ら,パソコン70の形態に関する原告の指摘は,審決の相違点2の認定に影響を与
えるものではない。
(2)「相違点2の判断の誤り」をいう点について
ア原告は,甲2発明において,甲4及び甲3技術を適用し,わざわざ基本部1
2全体を保持するに適した形状に形成されているものではない「スロット」として
の「筒状の基本部保持部」に,基本部12全体が収納されるような形状に形成する
必要性は存しない(組み合わせる動機付けがない,と主張する。。)
イそこで,甲2発明において「基本部12」と「筒状の基本部保持部」の形,
,「」状について検討すると甲2に記載されるスロットとしての筒状の基本部保持部
が,カートリッジとしての「基本部12」の一部を保持するに適した形状に形成さ
れるものであったとしても,甲2には,基本部と保持部の構造を甲2の図1及び2
に記載されたような形状とするべき技術的必然性については何ら記載されておら
ず,甲2の図1及び2には,その一例としての形状の基本部12と保持部とが記載
されているにすぎないものと認められる。また,甲2には,基本部と保持部の構造
について,設計変更することを妨げる記載もない。
ウ一方,甲4の図14を参照すると,携帯電話309,ノートブック300及
びペン型コンピュータ313という様々な形態の移動体通信端末のそれぞれに,モ
ジュラーユニットを収納することが開示されており,特に,携帯電話309につい
てみると,携帯電話309にユニットとほぼ同形状のスロットが形成されているこ
とが見受けられるから,携帯電話309にユニットを装着するときも,ペン型コン
ピュータ313と同様に,ユニット全体が収納されるように装着されることが示唆
されているということができる。
そして,甲3に記載されるような,無線送受信機能を有する装置を,電子機器の
スロットに装着する際,その匣体が全体的に収容される状態にすることによる外観
デザインの向上,携帯時の利便性の向上等の利点に触れた当業者であれば,甲4に
開示されたスロットにユニット全体が収納されるように装着される構造を参照し
て,甲2に記載される基本部及び保持部の形状の双方を設計変更することは容易で
あり,この点についての技術的困難性は何ら存在しない。
エそして,甲2には,保持部を基本部12全体が収納されるような形状とする
ことを妨げる技術的要因となる記載もないから,甲2発明における,カートリッジ
としての基本部がスロットとしての筒状の基本部保持部に部分的に収納されるとい
う構成に代えて,甲4及び甲3技術を適用し,本件発明のようにカートリッジ(基
本部)がスロット(保持部)に「全体が収納されるような形状」とすることは,当
業者が容易に想到し得ることであり,甲2発明に甲4及び甲3技術を組み合わせる
べき理由がないとの原告の主張は,採用することができない。
オ原告は,甲3には携帯無線電話装置全体を収納することが記載されているだ
けで「ユニット」なるものを収納することが記載されているわけではなく,この,
甲3に記載された携帯電話無線装置に対応する甲2の構成は,基本部12を周辺部
14に装着した携帯電話器ユニットそのものであるから,甲3を甲2発明に適用す
ると,周辺部14を含む携帯電話器ユニットを移動体通信端末ではないパソコン7
0に収納できるようにする構成が得られるだけであって,本件発明のように,カー
トリッジが「前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端
末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成される」よう
構成することは,当業者が容易になし得ることではない,と主張する。
しかしながら,甲3に記載される携帯無線電話装置は,電話通信のための無線送
受信機能を有するものであり,かつ,カード挿入部に全体的に収容される状態をも
って装着可能とされる外形寸法をとる匣体を備えているものであるから,無線送受
信機能を有する一つのまとまった装置であり,一体のものとして取り扱うことが可
能な構成単位であるから,当該装置を「ユニット」として認定することは,技術常
識を考慮すれば誤りということはできない。
したがって,甲3の携帯無線電話装置を「無線送受信機能を有するユニット」と
して認定することができ,甲3には「無線送受信機能を有するユニットをパーソ,『
ナルコンピュータ等の電子機器のスロットに装着する際,そのユニットが全体的に
収容される状態にすることにより,パーソナルコンピュータ全体を外観的に優れた
ものにできるとともに,移動や向きの変更に際して取扱い易く,使い勝手が良いも
のとする』技術」が開示されているとする審決の認定(17頁21∼25行)に誤
りはない。
(3)そうすると,相違点2の全体としてみても,甲2発明に,甲4及び甲3技
術を適用し,本件発明のように,カートリッジが「前記スピーカ及び前記マイクを
端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納
されるような形状に形成される」ように構成することは,当業者が容易になし得る
ことである。
したがって,原告主張の取消事由4は理由がない。
5その他(阻害事由の存在)について
(1)原告は,①甲2及び甲4は,本件発明と同じ課題・効果を記載又は示唆し
ていないので,甲2と甲4を組み合わせたとしても,本件発明と同じ構成・効果は
得られない,②仮に,甲2発明が本件発明と同じ課題・効果を有している,又は示
唆していると仮定しても,甲4に記載のモジュラーユニットは電話回線契約のでき
ないものであり,ノートブック300等の各通信端末が回線契約をしなければなら
ないものであるから,甲4に記載の発明は,当該課題・効果を実現できるものでは
ない,などと主張する。
しかしながら,原告の上記主張は,前述のとおりの,甲2発明,甲4技術につい
ての採用できない認定を前提とするなどのものであるから,理由がない。
(2)また,原告は,甲2発明は「音声/データセレクタ66」を備える構成で
あるため,本件発明のように「前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,
及び前記通話用音声信号を入出力する信号線」とする必然性は全くなく,むしろ当
該構成を採用することを阻害している,と主張する。
,,「【】,しかしながら甲2によれば0014・・・音声/データセレクタ66は
PCMCIAI/F58からの音声またはデータを選択的にチャンネルコーデック
54またはADPCMコーデック56に転送し,またはそれらからの音声またはデ
ータをPCMCIAI/F58に転送するもの・・・」であり,基本部12内にお
いて,音声とチャンネルコーデック54に送られるデータの信号を分配転送する機
能を備えているものにすぎず,移動体通信端末に相当する周辺部14と基本部12
との間の信号の入出力に直接関係するものではないから「音声/データセレクタ,
66」が存在することが「前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及,
び前記通話用音声信号を入出力する信号線」を採用することの阻害要因になり得な
い。
そして,甲2によれば「0011】図2,図3に示すように,周辺部14の本,【
体部30と基本部保持部32で形成された筒の内部にはPCMCIA規格のコネク
タ46が設けられている。このコネクタ46は前述の基本部12のコネクタ20a
と接続されるものであり,複数のピン46aを有するレセプタクルとして構成され
ている・・・「0017・・・キースイッチ42で入力された電話番号デー。」,【】
タは基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレクタ66に転
送され・・・「0018・・・通話の送信では,マイク44から入力された音」,【】
声は基本部12のPCMCIAI/F58を介して音声/データセレクタ66に転
送され・・・「0019】一方,通話の受信では,アンテナ24で受信した音」,【
声信号は・・・基本部12のPCMCIAI/F58を介して周辺部14のスピ,
ーカ38に転送され・・・」及び「0021・・・パソコン70からのデータ,【】
の送信では,パソコンからのデータは,基本部12のPCMCIAI/F58を介
して音声/データセレクタ66に転送され・・・」と記載され,また,図2及び,
3のコネクタ46の図示を参照すると,図4で描かれた基本部12と周辺部14を
,,,結ぶ線は複数の信号線を一括して記載したものであって甲2発明の入出力部を
「前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入
出力する信号線を含む」ように構成することは,当業者が容易になし得ることとい
え,原告の上記主張も採用することができない。
6以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
よって,原告の請求は理由がないから,棄却されるべきである。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
塚原朋一
裁判官
本多知成
裁判官
田中孝一

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