弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,被控訴人が,平成15年分から平成17年分までの各所得税につい
て,被控訴人の出資先であるいわゆる任意組合等から生じた利益又は損失の額
を所得税基本通達36・37共-20(以下「本件通達」という。)に定める
純額方式(任意組合の利益金額や損失金額のみを各組合員に配分する方法。た
だし,平成17年分のA組合(以下「本件A組合」という。)の損益について
は総額方式(損益計算書,貸借対照表の各項目の全てを各組合員に配分する方
法))により納付すべき税額等を計算して確定申告書を提出したところ,戸塚
税務署長から,全てにつき総額方式により納付すべき税額等を計算すべきであ
るとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから,これ
らの処分(ただし,平成15年分及び平成17年分の所得税については,再更
正処分及び変更決定処分により所得金額及び納付すべき税額並びに過少申告加
算税の額を減額された後のものであり,平成16年分の所得税については,更
正処分の翌年へ繰り越す株式等に係る譲渡損失の金額7億9434万7532
円を下回る部分のみである。)が違法であるとして,その取消しを求めた事案
である。
原審は,被控訴人の請求を全て認容したので,控訴人がこれを不服として控
訴した。
2前提事実,税額等に関する当事者の主張,争点,争点に関する当事者の主張
の要旨は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2の1ない
し4に記載のとおりであるから,これを引用する。
(当審における控訴人の主張)
(1)個々の組合員に属する組合損益(任意組合等の事業活動から生じる損益)
の計算方法については,総額方式が原則であり,中間方式(損益計算書の項
目だけ各組合員に配分する方法)や純額方式は,例外的な計算方法にすぎな
いものであって,総額方式による計算が煩雑,困難であるなどの合理的な理
由がないにもかかわらず,便宜的な方式を利用することは,これを許容した
法の趣旨に反するものである。原判決は,所得税法の合理的な解釈に従った
本件通達の内容を誤解したものであり,ひいては所得税法36条,37条の
解釈・適用を誤った違法がある。
すなわち,民法上の組合は個々の組合員の共同事業体であり,組合が行っ
た事業活動は,各組合員自身がその分配割合に応じて行った事業活動として
観念される。そのため,組合が行った事業活動の全てをその分配割合に応じ
て各組合員に帰属させて税額計算を行うことが,民法上の組合の権利関係か
らみて適切であり,組合損益の計算方法としては総額方式こそが正当な計算
方法である。これに対して,中間方式及び純額方式は総額方式が要求する厳
密な組合損益の取り込み計算を簡便にし,もって納税者の申告の便宜を図る
ための例外的な計算方法にすぎない。本件通達は,申告納税制度の円滑な維
持という観点から,総額方式による計算が煩雑,困難であるなど,原則的な
計算方式を強いることができない場合に,やむなく例外的な手法の選択を許
すという解釈上当然の前提が介在しており,上記のような合理的な理由がな
いにもかかわらず,これを中間方式又は純額方式という計算の便宜を図るた
めの方式を利用することは,本件通達が中間方式及び純額方式という計算方
法を許容した趣旨に反するものであって許されない。
被控訴人は,総額方式による申告納税が可能であったにもかかわらず,純
額方式による計算を行っており,このような場合に純額方式の適用ができな
いことは明らかであって,総額方式に従って組合損益の計算を行った本件各
更正処分はいずれも適法というべきである。
(2)仮に原判決の理解を前提にしても,中間方式又は純額方式を採用した納税
者が,その後,特段の事情もないのに異なる方式を採用したときは,継続し
て計算をしている場合とはいえず,遡って例外的な方式である中間方式又は
純額方式の適用が否定されるべきであるから,本件A組合の平成17年分に
つき被控訴人自らが総額方式に従って組合損益の計算を行った本件において
は,それ以前に純額方式に従って損益計算した組合損益についても継続適用
の要件を満たすか否かを見直す必要がある。本件では,被控訴人は,本件通
達が中間方式又は純額方式を採用する場合に要求される継続適用の要件も満
たしていないと解されるから,純額方式によって組合損益の計算を行うこと
は許されないというべきである。
(3)また,租税特別措置法(以下「措置法」という。)37条の10が規定す
る損益通算の制限は,純額方式によって組合員の損益を計算する場合にも適
用される。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,本件処分行政庁の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分
のうち被控訴人が取消しを求めている部分については,いずれもこれを取り消
すべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の理由
説示(「事実及び理由」第3)のとおりであるから,これを引用する。
(当審における控訴人の主張に対する判断)
(1)控訴人は,個々の組合員に属する組合損益の計算方法については,総額方
式が原則であり,中間方式や純額方式は,例外的な計算方法にすぎないもの
であって,総額方式による計算が煩雑,困難であるなどの合理的な理由がな
いにもかかわらず,便宜的な方式を利用することは,これを許容した法の趣
旨に反するものであるところ,被控訴人は,総額方式による申告納税が可能
であったにもかかわらず,純額方式による計算を行っており,このような場
合に純額方式の適用ができないことは明らかであって,総額方式に従って組
合損益の計算を行った本件各更正処分はいずれも適法というべきであると主
張する。
しかしながら,本件通達は,継続して中間方式や純額方式により計算して
いる場合には,「その計算を認めるものとする」と定めており,継続適用を
要件としているほかは特段の要件を定めていないものであって,本件通達に
定めていない要件を,通達の改正をしないまま解釈により付加することは,
租税法律主義の趣旨に抵触する。この解釈と異なる控訴人の主張は理由がな
い。
(2)控訴人は,中間方式又は純額方式を採用した納税者が,その後,特段の事
情もないのに異なる方式を採用したときは,継続して計算をしている場合と
はいえず,遡って例外的な方式である中間方式又は純額方式の適用が否定さ
れるべきであるから,本件A組合の平成17年分につき被控訴人自らが総額
方式に従って組合損益の計算を行った本件においては,それ以前に純額方式
に従って損益計算した組合損益についても継続適用の要件を満たすか否かを
見直す必要があり,本件では,被控訴人は,本件通達が中間方式又は純額方
式を採用する場合に要求される継続適用の要件も満たしていないから,純額
方式によって組合損益の計算を行うことは許されないと主張する。
しかしながら,本件A組合は平成12年分から平成16年分までの5年間
純額方式により計算しているものであり(弁論の全趣旨),平成17年分に
つき継続適用が要件とされていない総額方式に変更したとしても,これによ
ってその前の年度の継続適用の要件が遡って否定されるという解釈には合理
的根拠がなく,控訴人の上記主張は理由がない。
(3)控訴人は,措置法37条の10が規定する損益通算の制限は,純額方式に
よって組合員の損益を計算する場合にも適用されると主張する。
しかしながら,原判決の説示したとおり,本件通達が,複数の所得に区分
されるものを単なる利益の額又は損失の額として算出しながら,なお従来の
所得区分を維持して損益通算の制限が適用されるとする趣旨であると解する
ことはできないから,控訴人の上記主張も理由がない。
2よって,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由
がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第10民事部
裁判長裁判官園尾隆司
裁判官今泉秀和
裁判官櫻井佐英

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