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平成18年3月9日名古屋高等裁判所
平成17年(行コ)第61号公文書部分開示決定処分取消請求控訴事件〔原審・
津地方裁判所平成16年(行ウ)第33号の3〕
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人の請求を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,被控訴人が控訴人に対し「①A地区の広域農道整備事業で平成1,
5年9月から,平成16年3月にかけて,A県民局管内の業者が請け負った工
事に関するすべての文書,②同上業者に対する評定点変更に関するすべての文
」(),書について三重県情報公開条例本件条例に基づく開示請求をしたところ
控訴人において同年9月16日付けで公文書部分開示決定(本件決定)をした
が,同年6月28日起案にかかる「工事成績評定による工事成績の書面による
回答について(伺い(本件文書)添付の「総括検査監聴き取り」に記載さ)」
れた同月11日,同月24日,同月28日の各「役職」及び「評定者」欄を非
開示とした部分は,本件決定の通知書の記載に不備(理由の記載がない)が。
あり,また,同条例に規定された非公開情報に該当せず違法であるとして,被
控訴人がその取消を求めたところ,控訴人が「役職」が「氏名」と実質的に,
一体であること,退職者は「公務員」に該当せず,個人情報として非公開情報
であることなどを主張して争った事案である。
原審は,本件決定の通知書の「開示しない部分」欄の記載(役職」を明記「
していない)は,本件条例12条及び15条に違反し,また,本件の非開示。
部分に係る情報(当該各評定者の役職及び氏名についての情報)は,同条例7
条2号の「個人に関する情報」に該当せず,本件決定は違法であり,取消事由
があるとして,被控訴人の本件請求を認容したため,控訴人がこれを不服とし
て控訴した。
2前提となる事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,次項において原判
決を訂正し,4項において控訴人の当審での主張を補充するほか,原判決「事
実及び理由」の「第2事案の概要」1,3のとおりであるから,これを引用
する。
3原判決の訂正
()原判決2頁22行目の「13」を「13,14」に,同4頁15行目の1
「評価点変更」を「評定点変更」にそれぞれ改める。
()原判決3頁5行目の次に以下のとおり加える。2
「実施機関の責務)(
3条実施機関は,県民の公文書の開示を請求する権利が十分に尊重され
るようにこの条例を解釈し,運用するものとする。この場合において,
実施機関は,個人のプライバシーに関する情報がみだりに公にされるこ
とがないよう最大限の配慮をしなければならない」。
()原判決5頁3行目の次に以下のとおり加える。3
「()控訴人は,平成17年11月17日付けで「公文書部分開示決定5,
通知書の「開示をしない部分」欄及び「上記部分を開示しない理由」欄
の訂正について(通知」と題する書面をもって「開示しない部分」),
欄を「個人の役職,個人の氏名,個人の印影」に「上記部分を開示し,
ない理由」欄を「三重県情報公開条例第7条第2号に該当対象公文書
『③工事成績評定による工事成績の書面による回答について(起案日:
』には,個人の役職,個人の氏名,印影が記載されており,こ16.6.28)
れらは開示することで特定の個人が認識され得る情報である」に訂正。
,,,(「」してそのころ被控訴人に対しその旨を通知以下本件訂正通知
という)した」。。
()原判決5頁4行目の「3争点」を「2争点」に改める。4
()原判決6頁20行目の「行政効力」を「行政行為の効力」に改める。5
4当審での控訴人の新たな主張
本件決定の通知書の「開示しない部分」欄に「個人の役職」を明記していな
いことについて,控訴人は,同通知書の「開示をしない部分」欄に「個人の役
職」の記載漏れがあることにかんがみ,被控訴人に対し,平成17年11月1
。,,7日付けで本件訂正通知を行ったこれによって上記記載漏れによる瑕疵は
治癒されたものとみなされる。
第3当裁判所の判断
,。,1当裁判所も被控訴人の本件請求は理由があるものと判断するその理由は
次項において原判決を訂正し,3項において当審での控訴人の新たな主張に対
,「」「」する判断を付加するほか原判決事実及び理由の第3当裁判所の判断
のとおりであるから,これを引用する。
2原判決の訂正
()原判決11頁3行目の「また」の次に以下のとおり加える。1,
「一般に,法令が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に,どの
程度の記載をすべきかは,処分の性質と理由付記を命じた各法令の趣旨・
目的に照らしてこれを決定すべきである(最高裁昭和38年5月31日第
二小法廷判決・民集17巻4号617頁,最高裁昭和60年1月22日第
三小法廷判決・民集39巻1号1頁,最高裁平成4年12月10日第一小
法廷判決・判例時報1453号116頁参照。本件条例15条は,実施)
機関が開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しないときは,同条例
12条各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない旨を規
定しており,同条例が上記のように公文書の非開示決定通知書にその理由
を付記すべきものとしているのは,同条例に基づく公文書の開示請求制度
が,県民と県との協働により,公正で民主的な県政の推進に資することを
目的とするものであって,実施機関においては,公文書の開示を請求する
県民の権利を十分に尊重すべきものとされていること(本件条例1条,3
条)にかんがみ,非開示理由の有無について実施機関の判断の慎重と公平
妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,非開示の理由を開示請求者
に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たもの
というべきである。ところで」,
()原判決13頁7行目の「本件条例7条2号は」の次に以下のとおり加2,
える。
「本件条例3条後段を受けて,個人に関するプライバシー等の人権保護を最
大限に図ろうとする趣旨の規定であるが,個人のプライバシーの概念自体
が法的に必ずしも成熟していないことやその範囲も個人によって異なり,
類型化することなどが困難であることにかんがみ,保護されるべき個人情
報の判断基準を明確にし,その情報の属性として,誰の情報であるか,そ
の特定の個人が選別できる情報か否かをもって判断し,当該特定個人の人
権を保護する必要があると考えられた結果」,
()原判決13頁10行目の「公益性が強い」を「そもそも公務員等の職務3
の性格上公益性が強い」に改める。
()原判決13頁17行目の「当該各評定者が」から20行目の「というこ4
とができる」までを次のとおりに改める。。
「通知要領5条2項に基づき,工事成績評定者に対して意見を求めるために
実施したもので,当該各評定者の在職時の職務である工事成績評定に関し
て行われたものである。そして,当該各評定者は,既に三重県職員を退職
していることからすれば,これに応ずべき法的義務ないしは職務上の義務
を負うものではないが,これに応じた場合には,当該各評定者は,その在
職時に職務として行った工事成績評定に関して,当時経験し,また,知り
得た事情等に基づいて意見を述べたものということができる」。
()原判決13頁24行目の「退職後相当期間内に」を削除し,26行目の5
「当該情報は」を「退職した当該公務員が述べる意見は」に改める。,,
()原判決14頁1行目の「変わりはない」の次に「そして,退職した当6。
該公務員が上記意見を求められ,これに応じた旨の情報も,同様に公益性を
有するものといえる」を加える。。
()原判決14頁12行目の「本件条例が」から18行目までを次のとおり7
に改める。
「本件条例1条において「この条例は,県民の知る権利を尊重し,公文書,
の開示を請求する権利につき定めること等により,三重県(以下「県」と
いう)の保有する情報の一層の公開を図り,もって県の諸活動を県民に。
説明する責務が全うされるようにするとともに,県民による参加の下,県
民と県との協働により,公正で民主的な県政の推進に資することを目的と
する」と規定している一方,本件条例3条において「実施機関は,個。,
人のプライバシーに関する情報がみだりに公にされることがないよう最大
限の配慮をしなければならない」と規定し,これらの各規定を受けて,。
本件条例7条2号において,個人識別情報をもって,個人のプライバシー
を尊重するための非開示情報とした前記趣旨に照らしても,上記解釈が本
件条例7条2号に反するものとまではいえず(ただし,本件条例7条2号
の「公務員等」に「元公務員」を当然に含むと解するものではなく,あく
まで当該情報が「当該公務員等の職務に関する情報」と同視できるもの,
である場合に限られるとするものである,控訴人の上記主張は採用で。)
きない。
なお,控訴人は,上記解釈は,最高裁平成15年12月18日第一小法
。,,,廷判決に反すると主張するしかし同判決は広島県が主要事業の説明
要望等を行うために開催した会(B幹事会)に,中央省庁にかつて在職し
た者が,その経歴を有するという立場から出席したことに関する情報につ
いてのものであって,上記幹事会は,広島県において,高速交通網,生活
関連施設等の基盤整備事業等を具体化する上で,国からの事業認定,地域
指定,公共事業等の重点実施,予算措置等が必要であるため,国に対する
説明及び国からの情報収集が重要であることから,同県にゆかりのある各
省庁の幹部等を構成員として組織されたBの幹事等が一堂に集まる会であ
り,その会への出席に関する情報が「個人に関する情報」として非公開情
報に該当するか否かを判断したものであって当該公務員が在職時の具,,(
体的な)職務である工事成績評定に関して,総括検査監による聴き取りに
応じた本件とはその事例を異にするものであって,控訴人の上記主張は採
用できない」。
()原判決14頁24行目から25行目にかけての「これに応ずる責務があ8
るといえるから」を「これに応ずるべき法的義務ないしは職務上の義務まで
はないとしても,元公務員として工事成績評定の職務に携わった社会的責務
があり」に改める。
3当審での控訴人の新たな主張に対する判断
控訴人は,被控訴人に対し,本件訂正通知を行ったことによって「個人の,
役職」の記載漏れの瑕疵が治癒されたと主張する。
しかしながら,非開示決定を書面により通知し,しかも,その理由を付記し
なければならない旨の各規定(本件条例12条,15条)は,実施機関の判断
の慎重,合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の内容及びその
理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出ていることにかん
がみれば,後日(上記訂正通知は,本件訴訟提起後である,非開示とする。)
部分を追加し,その理由を付加したとしても,それにより遡って本件処分の内
容が特定され,理由付記の不備が治癒されたものと解することはできず,控訴
人の上記主張は採用できない。
第4結論
,,,以上のとおり被控訴人の本件請求は理由がありこれを認容すべきところ
これと結論を同じくする原判決は相当であるから,本件控訴は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官田中由子
裁判官佐藤真弘
裁判官山崎秀尚

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