弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
     当審における未決勾留日数中、被告人Aに対しては一二〇〇日を、同B
に対しては一五〇〇日を各本刑に算入する。
         理    由
  一 弁護人庄司宏、同新美隆、同高橋耕、同鈴木淳二、同内田雅敏の上告趣意
第一篇(被告人C、同DことE、同Aの関係)について
  同第一の一のうち、爆発物取締罰則の憲法七三条六号、九八条一項違反をいう
点は、同罰則が日本国憲法施行後の今日においてもなお法律としての効力を保有し
ているものであることは当裁判所の判例とするところであるから(昭和二三年(れ)
第一一四〇号同二四年四月六日大法廷判決・刑集三巻四号四五六頁、昭和三二年(
あ)第三〇九号同三四年七月三日第二小法廷判決・刑集一三巻七号一〇七五頁、昭
和四六年(あ)第二一七九号同四七年三月九日第一小法廷判決・刑集二六巻二号一
五一頁、昭和四九年(あ)第二一九三号同五〇年四月一八日第二小法廷判決・刑集
二九巻四号一四八頁、昭和五二年(あ)第一四三五号同五三年六月二〇日第三小法
廷判決・刑集三二巻四号六七〇頁参照)、所論は理由がなく、同罰則の「治安ヲ妨
ケ」の概念が不明確であるとして憲法三一条違反をいう点は、右概念が不明確なも
のとはいえないから(前掲昭和四七年三月九日第一小法廷判決、前掲昭和五〇年四
月一八日第二小法廷判決、前掲昭和五三年六月二〇日第三小法廷判決参照)、所論
は前提を欠き、その余の違憲(一一条、一二条、一三条、一九条、二一条、三一条
等違反)をいう点は、同罰則一条、四条所定の行為に対し所定のような法定刑を定
めることは、立法政策の問題であつて、憲法適否の問題ではないから(最高裁昭和
二三年(れ)第一〇三三号同二三年一二月一五日大法廷判決、刑集二巻一三号一七
八三頁、前掲昭和四七年三月九日第一小法廷判決、前掲昭和五〇年四月一八日第二
小法廷判決、前掲昭和五三年六月二〇日第三小法廷判決参照)、所論は理由がない
(なお、右所論中には、同罰則中の一条、四条以外の規定の違憲をいう部分もある
が、これらの規定は本件に適用されていないから、適法な上告理由に当たらない。)
 同第一の二は、憲法一三条、三一条、三六条違反をいうが、刑罰としての死刑が
憲法三六条にいう残虐な刑罰に該当しないことは当裁判所の判例とするところであ
つて(昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・刑集二巻三号
一九一頁、昭和二六年(れ)第二五一八号同三〇年四月六日大法廷判決・刑集九巻
四号六六三頁参照)、所論の理由がないことは、右判例及びその趣旨に徴し明らか
である。
 同第二は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第三の一のうち、判例違
反をいう点は、所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単な
る法令違反の主張であり、同第三の二ないし四は、事実誤認、単なる法令違反の主
張であり、同第四は、量刑不当の主張であつて、いずれも適法な上告理由に当たら
ない。
二 被告人Cの上告趣意について
   所論は、すべて事実誤認の主張であつて、適法な上告理由に当たらない。
三 被告人DことEの上告趣意について
 所論のうち、死刑の憲法三六条違反をいう点の理由がないことは、すでに説示し
たとおりであり、供述調書の任意性を争い憲法三六条、三八条違反をいう点は、記
録によれば、所論供述調書の任意性を肯定した原判断は相当であるから、前提を欠
き、憲法三七条二項違反をいう点は、記録によれば、一、二審裁判所の証人採否に
関する措置は裁判所に与えられた自由裁量の範囲を逸脱していないことが明らかで
あるから、前提を欠き、その余は、憲法三一条違反をいう点を含め、その実質は単
なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも適法な上告理由に当たらない。
四 前記弁護人五名の上告趣意第二篇(被告人Bの関係)について
 所論のいち、判例違反をいう点は、引用の各判例はいずれも事案を異にし本件に
適切でなく、その余は、すべて単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつ
て、いずれも適法な上告理由に当たらない。
  五 被告人Bの上告趣意について
 所論のうち、量刑に関して違憲をいう点は、原判決は、同被告人の法廷での態度、
言動等から、その反省の有無等を推認し、これを量刑事情として評価、考慮したも
のであり、また、原判決は、未決勾留日数の算入につき、本件第一審の審理が長引
いたのは、同被告人らの出廷拒否や裁判長の訴訟指揮権、法廷警察権の行使に従わ
ないことによる審理遅延や、同被告人らと同調した弁護人らの言動、辞任等が大き
く起因していることを考慮したものであつて、同被告人の思想信条及び訴訟活動を
とらえて報復的な量刑をしたものでないことが判文上明らかであるから、前提を欠
き、その余は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、その実質はすべて事実誤認、
単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、いずれも適法な上告理由に当たらない。
 六 また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない
(原判決が維持した第一審判決の被告人C及び同DことEに対する各死刑並びに被
告人Aに対する無期懲役の科刑は、本件各犯罪の情状に照らし、当裁判所もこれを
是認せざるをえない。)。
 よつて、刑訴法四一四条、三九六条、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見
で、主文のとおり判決する。
検察官古賀宏之、同栗田啓二 公判出席
  昭和六二年三月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    安   岡   満   彦
            裁判官    長   島       敦
            裁判官    坂   上   壽   夫

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