弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決のうち被控訴人C及び被控訴人Eに関する部分を取り消す。
2被控訴人Cは,控訴人に対し,28万5645円及びこれに対する平成
15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3被控訴人Eは,控訴人に対し,7万6388円及びこれに対する平成1
5年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4原判決のうちその余の被控訴人らに関する部分を次のとおり変更する。
(1)被控訴人Aは,控訴人に対し,32万4413円及びこれに対する
平成15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払
え。
(2)被控訴人Bは,控訴人に対し,31万6539円及びこれに対する
平成15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払
え。
(3)被控訴人Dは,控訴人に対し,30万1542円及びこれに対する
平成15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払
え。
(4)被控訴人Fは,控訴人に対し,4万5386円及びこれに対する平
成15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(5)被控訴人Gは,控訴人に対し,7万5534円及びこれに対する平
成15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(6)被控訴人Hは,控訴人に対し,7万7076円及びこれに対する平
成15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(7)控訴人の被控訴人A,同B,同D,同F,同G及び同Hに対するそ
の余の請求を棄却する。
5訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを30分し,その1を控訴人の負
担とし,その余を被控訴人らの負担とする。
6この判決は,第2項,第3項及び第4項の(1)から(6)までに限り,仮に
執行することができる。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人Aは,控訴人に対し,33万6990円及びこれに対する平成
15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3被控訴人Bは,控訴人に対し,32万1345円及びこれに対する平成
15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4主文第2項と同旨
5被控訴人Dは,控訴人に対し,31万0642円及びこれに対する平成
15年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
6主文第3項と同旨
7被控訴人Fは,控訴人に対し,4万9634円及びこれに対する平成1
5年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
8被控訴人Gは,控訴人に対し,9万8936円及びこれに対する平成1
5年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
9被控訴人Hは,控訴人に対し,8万3673円及びこれに対する平成1
5年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1本件は,液化石油ガス(以下「LPガス」という。)販売事業者である
控訴人が,一般消費者である各被控訴人の自宅建物にLPガス供給設備及
び消費設備並びに給湯器を設置し(ただし,給湯器を設置したのは被控訴
人A,同B,同C及び同Dのみである。),各被控訴人との間でLPガス
販売契約(供給契約)を締結するとともに,これを解約する場合には,各
被控訴人は控訴人に対してLPガス設備及び給湯器の所定の残存価格を支
払うとの合意(以下,LPガス設備に関する合意を「本件設備合意」と,
給湯器に関する合意を「本件給湯器合意」といい,また,両者併せて「本
件合意」という。)をしたところ,被控訴人らがLPガス供給契約を解約
したとして,被控訴人らに対し,選択的に本件合意は停止条件付売買契約
又は利害調整合意であると主張し,前者の主張においてはLPガス消費設
備及び給湯器の売買代金として,後者の主張においては控訴人が被ったL
Pガス消費設備及び給湯器の設備費用相当損害金として,それぞれ,契約
書面記載の計算式によるLPガス設備及び給湯器の残存価格(被控訴人A
につき33万6990円,同Bにつき32万1345円,同Cにつき28
万5645円,同Dにつき31万0642円,同Eにつき7万6388円,
同Fにつき4万9634円,同Gにつき9万8936円,同Hにつき8万
3673円)及びこれに対する商事法定利率である年6分の割合による遅
延損害金(その起算日は,いずれも本件訴状送達の日の翌日である平成1
5年11月2日である。)の支払を請求する事案である。
原審係属中,控訴人が,民事訴訟法第53条に基づき,株式会社Iに訴
訟の告知をし,株式会社Iは,民事訴訟法第43条に基づき,控訴人を補
助するため,本件訴訟に参加する旨の申出をした。
原判決は,控訴人の各請求をいずれも棄却した。これを不服とする控訴
人が控訴を提起した。
2法令の定め
(1)宅地建物取引業法
第5章業務
第1節通則
(重要事項の説明等)
第35条
第1項宅地建物取引業者は,宅地若しくは建物の売買,交換若し
くは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取
引業者が行う媒介に係る売買,交換若しくは貸借の各当事者
(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して,
その者が取得し,又は借りようとしている宅地又は建物に関
し,その売買,交換又は貸借の契約が成立するまでの間に,
取引主任者をして,少なくとも次に掲げる事項について,こ
れらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とす
るときは,図面)を交付して説明をさせなければならない。
第4号飲用水,電気及びガスの供給並びに排水のための施設の
整備の状況(これらの施設が整備されていない場合におい
ては,その整備の見通し及びその整備についての特別の負
担に関する事項)
(2)液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律
第1章総則
(目的)
第1条この法律は,一般消費者等に対する液化石油ガスの販売,液
化石油ガス器具等の製造及び販売等を規制することにより,液
化石油ガスによる災害を防止するとともに液化石油ガスの取引
を適正にし,もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
(定義)
第2条
第1項この法律において「液化石油ガス」とは,プロパン,ブタ
ンその他政令で定める炭化水素を主成分とするガスを液化し
たもの(その充てんされた容器内又はその容器に附属する気
化装置内において気化したものを含む。)をいう。
第2項この法律において「一般消費者等」とは,液化石油ガスを
燃料(自動車用のものを除く。以下この項において同じ。)
として生活の用に供する一般消費者及び液化石油ガスの消費
の態様が一般消費者が燃料として生活の用に供する場合に類
似している者であつて政令で定めるものをいう。
第3項この法律において「液化石油ガス販売事業」とは,液化石
油ガスを一般消費者等に販売する事業(ガス事業法(昭和2
9年法律第51号)第2条第10項のガス事業及び同法第2
3条又は第24条の届出をして行う事業を除く。)をいう。
第4項この法律において「供給設備」とは,液化石油ガス販売事
業の用に供する液化石油ガスの供給のための設備(船舶内の
ものを除く。)及びその附属設備であつて,経済産業省令で
定めるものをいう。
第5項この法律において「消費設備」とは,液化石油ガス販売事
業を行うことについて次条第1項の登録を受けた者が一般消
費者等に販売する液化石油ガスに係る消費のための設備(供
給設備に該当するもの及び船舶内のものを除く。)をいう。
第6項(省略)
第7項この法律において「液化石油ガス器具等」とは,主として
一般消費者等が液化石油ガスを消費する場合に用いられる機
械,器具又は材料(一般消費者等が消費する液化石油ガスの
供給に用いられるものを含む。)であつて,政令で定めるも
のをいう。
第8項(省略)
第2章液化石油ガス販売事業
(書面の交付)
第14条
第1項液化石油ガス販売事業者は,一般消費者等と液化石油ガス
の販売契約を締結したときは,遅滞なく,次の事項を記載し
た書面を当該一般消費者等に交付しなければならない。当該
交付した書面に記載した事項を変更したときは,当該変更し
た部分についても,同様とする。
第1号液化石油ガスの種類
第2号液化石油ガスの引渡しの方法
第3号供給設備及び消費設備の管理の方法
第4号第27条第1項第2号に規定する調査の方法及び同項第
3号に規定する周知の方法
第5号当該一般消費者等について第27条第1項各号に掲げる
業務を行う第29条第1項の認定を受けた者の氏名又は名

第6号前各号に掲げるもののほか,経済産業省令で定める事項
第2項経済産業大臣又は都道府県知事は,その登録を受けた液化
石油ガス販売事業者が前項の規定に違反した場合においては,
当該液化石油ガス販売事業者に対し,同項の規定による書面
を交付し,又は同項各号に掲げる事項を記載した書面を再交
付すべきことを命ずることができる。
(基準適合義務等)
第16条
第1項液化石油ガス販売事業者は,その液化石油ガス販売事業の
用に供する貯蔵施設を経済産業省令で定める技術上の基準
(経済産業省令で定める量以上の液化石油ガスを貯蔵する貯
蔵施設にあつては,第37条の経済産業省令で定める技術上
の基準。第3項において同じ。)に適合するように維持しな
ければならない。
第2項液化石油ガス販売事業者は,経済産業省令で定める基準に
従つて液化石油ガスの販売(販売に係る貯蔵を含む。次項,
第20条第1項,第21条第1項及び第87条第2項におい
て同じ。)をしなければならない。
第3項経済産業大臣又は都道府県知事は,その登録を受けた液化
石油ガス販売事業者の貯蔵施設又は販売の方法が第1項の経
済産業省令で定める技術上の基準又は前項の経済産業省令で
定める基準に適合していないと認めるときは,その技術上の
基準に適合するように貯蔵施設を修理し,改造し,若しくは
移転し,又はその基準に従つて液化石油ガスの販売をすべき
ことを命ずることができる。
(3)液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則
第1章総則
(供給設備)
第3条法第2条第4項の経済産業省令で定める供給設備は,貯蔵設
備,気化装置,調整器及びガスメーター並びにこれらに準ずる
設備(貯蔵設備とガスメーターの間に設けられるものに限
る。)並びにこれらを接続する管(以下「供給管」という。)
並びにこれらの設備に係る屋根,遮へい板及び障壁とする。
(書面の記載事項)
第13条法第14条第1項第6号の経済産業省令で定める事項は,
次の各号に掲げるものとする。
第1号一般消費者等が液化石油ガスを消費する場合の液化石油
ガス販売事業者及び保安機関の責任に関する事項
第2号液化石油ガスを消費する場合の一般消費者等の責任に関
する事項
第3号液化石油ガスの計量の方法
第4号第16条第13号ただし書の規定に基づき質量により販
売した液化石油ガスであって消費されないものの引取りの
方法
第5号液化石油ガスの価格の算定方法,算定の基礎となる項目
及び算定の基礎となる項目についての内容の説明
第6号供給設備及び消費設備の所有関係
第7号供給設備及び消費設備の設置,変更,修繕及び撤去に要
する費用の負担の方法
第8号液化石油ガス販売事業者の所有する消費設備を一般消費
者等が利用する場合において,当該一般消費者等が支払う
べき費用の額及び徴収方法(当該消費設備の所有権が液化
石油ガス販売事業者にある場合に限る。)
第9号消費設備に係る配管について,液化石油ガスの販売契約
解除時に液化石油ガス販売事業者から一般消費者等に所有
権を移転する場合の精算額の計算方法(当該配管の所有権
が液化石油ガス販売事業者にある場合に限る。)
第10号保安機関の名称,住所及び連絡方法
(販売の方法の基準)
第16条法第16条第2項の経済産業省令で定める販売の方法の基
準は,次の各号に掲げるものとする。
第1号充てん容器を供給管若しくは配管又は集合装置に接続す
るときは,外面に容器の使用上支障のある腐しょく,割れ,
すじ,しわ等がなく,かつ,液化石油ガスが漏えいしてい
ないものをもってすること。
第2号充てん容器を供給管若しくは配管又は集合装置に接続す
るときは,高圧ガス保安法第48条第1項第5号の期間
(同条第5項の許可に係る充てん容器にあっては,同項の
規定により条件として付された期間。以下「充てん期間」
という。)を6月以上経過していないものであり,かつ,
その旨を明示したものをもってすること。
第3号充てん容器は,供給管若しくは配管又は集合装置に接続
すること。ただし,次のいずれかに該当する場合は,この
限りでない。
イ屋外において移動して使用される消費設備により液化石
油ガスを消費する一般消費者等に販売する場合
ロ調整器が接続された内容積が8リットル以下の容器に充
てんされた液化石油ガスを販売する場合
ハ内容積が25リットル以下の容器であって,カップリン
グ付容器用弁を有するものに充てんされた液化石油ガスを
販売する場合
第4号充てん容器及び残ガス容器(以下「充てん容器等」とい
う。)を交換するとき(当該充てん容器等に係る消費設備
の数が一である場合に限る。)は,液化石油ガスの供給が
中断することにより使用中の燃焼器から液化石油ガスが漏
えいすることのないよう末端ガス栓を閉止する等の措置を
講じてすること。ただし,一般消費者等への液化石油ガス
の供給を中断することなく充てん容器等の交換を行うこと
ができる設備を設けている場合は,この限りでない。
第5号充てん容器等であって供給管若しくは配管又は集合装置
に接続されていないものは,充てん容器及び残ガス容器に
それぞれ区分して貯蔵施設に置くこと。
第6号~第10号(省略)
第11号液化石油ガス販売事業者の所有する消費設備を一般消
費者等が利用する場合は,液化石油ガスの供給開始時まで
に,当該消費設備が液化石油ガス販売事業者の所有する設
備であることを当該一般消費者等に確認すること。(当該
消費設備の所有権が液化石油ガス販売事業者にある場合に
限る。)
第12号~第15号(省略)
第15号の2新たに一般消費者等に対し液化石油ガスを供給す
る場合において,当該一般消費者等に液化石油ガスを供給
する他の液化石油ガス販売事業者の所有する供給設備が既
に設置されているときは,一般消費者等から当該液化石油
ガス販売事業者に対して液化石油ガス販売契約の解除の申
し出があってから相当期間が経過するまでは,当該供給設
備を撤去しないこと。ただし,当該供給設備を撤去するこ
とについて当該液化石油ガス販売事業者の同意を得ている
ときは,この限りでない。
第16号一般消費者等から液化石油ガス販売契約の解除の申し
出があった場合において,当該一般消費者等から要求があ
った場合には,液化石油ガス販売事業者はその所有する供
給設備を遅滞なく撤去すること。ただし,撤去が著しく困
難である場合その他正当な事由があると認められる場合は,
この限りでない。
第17号一般消費者等から液化石油ガス販売契約の解除の申し
出があった場合において,消費設備に係る配管であって液
化石油ガス販売事業者が所有するものについては,当該一
般消費者等が別段の意思表示をする場合その他やむを得な
い事情がある場合を除き,適正な対価で一般消費者等に所
有権を移転すること。(当該配管の所有権が液化石油ガス
販売事業者にある場合に限る。)
第18号(以下省略)
(4)減価償却資産の耐用年数等に関する省令〔昭和40年3月31日号
外大蔵省令第15号〕
(一般の減価償却資産の耐用年数)
第1条
第1項所得税法(昭和40年法律第33号)第2条第1項第19
号(定義)又は法人税法(昭和40年法律第34号)第2条
第23号(定義)に規定する減価償却資産(以下「減価償却
資産」という。)のうち鉱業権(租鉱権及び採石権その他土
石を採掘し又は採取する権利を含む。以下同じ。)及び坑道
以外のものの耐用年数は,次の各号に掲げる資産の区分に応
じ当該各号に定める表に定めるところによる。
第1号所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第6条第1
号,第2号及び第4号から第7号まで(減価償却資産の範
囲)又は法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第1
3条第1号,第2号及び第4号から第7号まで(減価償却
資産の範囲)に掲げる資産(坑道を除く。)
別表第1(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用
年数表)
(同項第2号以下,第2条及び第3条は省略)
(償却率)
第4条
第1項減価償却資産の耐用年数に応じた償却率は,所得税法施行
令第120条第1項第1号イ(1)(減価償却資産の償却の方
法)又は法人税法施行令第48条第1項第1号イ(1)(減価
償却資産の償却の方法)に規定する定額法(以下この条にお
いて「定額法」という。)及び所得税法施行令第120条第
1項第1号イ(2)又は法人税法施行令第48条第1項第1号
イ(2)に規定する定率法(以下この条において「定率法」と
いう。)の区分に応じそれぞれ別表第9(減価償却資産の償
却率表)に定めるところによる。
第2項法人の事業年度が1年に満たない場合においては,前項の
規定にかかわらず,減価償却資産の定額法の償却率は,同項
に規定する減価償却資産の定額法の償却率に当該事業年度の
月数を乗じこれを12分したものにより,減価償却資産の定
率法の償却率は,当該減価償却資産の耐用年数を12倍しこ
れを当該事業年度の月数で除して得た耐用年数に対応する別
表第9の減価償却資産の定率法の償却率による。
第3項前項の月数は,暦に従って計算し,1月に満たない端数を
生じたときは,これを1月とする。
(残存価額)
第5条
第1項減価償却資産の残存価額は,別表第10(減価償却資産の
残存割合表)の「種類」及び「細目」欄の区分に応じ,同表
に定める残存割合を当該減価償却資産の取得価額に乗じて計
算した金額とする。
第2項(省略)
別表第1機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表〔第1条〕
種類建物附属設備(略)
別表第9減価償却資産の償却率表〔第4条〕(略)
別表第10減価償却資産の残存割合表〔第5条〕(略)
3前提事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,次のとおり改め
るほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第2事案の概要」の3から
7まで(原判決4頁25行目から31頁19行目まで)に記載のとおりで
あるから,これを引用する。
(1)原判決6頁25行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「(ウ)液化石油ガス設備施工年月日は平成年月日です。この
翌日を法定償却期間の起算日とし,半年未満の期間については償
却年数に算入いたしません。」
(2)原判決6頁26行目の「(ウ)」を「(エ)」に,同7頁3行目の
「(エ)」を「(オ)」にそれぞれ改める。
第3当裁判所の判断
1各被控訴人が土地及び建物を買い受けた際に説明を受けた重要事項の内
容,各被控訴人の自宅におけるLPガスの供給設備及び消費設備,給湯器
の設置状況,LPガスの供給設備及び消費設備並びに給湯器に関する書面
の交付等に関する事実関係は,次のとおり改めるほかは,原判決第3の1
(31頁21行目から44頁10行目まで)に記載のとおりであるから,
これを引用する。
(1)原判決31頁22行目から24行目までを次のとおり改める。
「前提事実に証拠(甲1~25,28,32~34,36,乙1~9,
12~14,15の1,2,16,17の1,2,18の1,2,19
の1~3,20の1,2,22,23,35から42までの各1,2,
丙1~3)及び弁論の全趣旨を併せて考えれば,次の事実を認めること
ができる。」
(2)原判決32頁4行目から33頁16行目までを次のとおり改める。
「(2)被控訴人A
ア売買契約の締結及び重要事項の説明
(ア)被控訴人Aは,自分の両親とともに,平成13年10月
13日,株式会社Iから土地及び建物(完成建物。以下「本
件物件1」という。)を買い受けるため,仲介人であるJ株
式会社の事務所を訪れ,同事務所において,J株式会社の社
員(宅地建物取引主任者)から,宅地建物取引業法第35条
第1項の規定に基づき,本件物件1に関する重要事項につい
て,重要事項説明書(乙13)の交付を受けてその説明を受
けた。
(イ)同項第4号は,飲用水,電気及びガスの供給並びに排水
のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていな
い場合においては,その整備の見通し及びその整備について
の特別の負担に関する事項)についても説明をしなければな
らない旨定めており,上記重要事項説明書にもこれを受けて
「4.飲用水・電気及びガスの供給並びに排水施設の整備状
況」の欄があり,建物引渡時までに利用できるものとして,
「飲用水」の項目につき「1.公営」に,「電気」の項目に
つき「1.N電力」に丸印が付されており,これと並んで
「ガス」の項目については「2.プロパン」に丸印が付され
ていた。水道,電気及びガスについては上記のとおり既に施
設が整備されており,都市ガスの整備の見通しも立っていな
かったため,都市ガスの整備についての特別の負担に関する
事項については「無」と記載されていた。
(ウ)被控訴人A及びKは,上記のとおり重要事項の説明を受
けた後,土地及び建物の売買契約書に署名押印をし,株式会
社Iから自宅とする土地及び建物を買い受けた。後記のLP
ガス供給設備の設置費用は2万7340円であり,LPガス
消費設備の設置費用は8万4880円であり,並びに給湯器
の代金及び設置費用は27万5600円であって,これらの
合計金額は38万7820円に及ぶのに,被控訴人Aらが株
式会社Iからこれらの設置費用等を請求され,これを支払っ
た事実等,被控訴人Aらが株式会社Iに支払った売買代金の
中に,後記のLPガス供給設備の設置費用2万7340円,
LPガス消費設備の設置費用8万4880円並びに給湯器の
代金及び設置費用27万5600円,以上合計38万782
0円が含まれていたことを客観的に示す証拠はなく,乙第3
5号証の2を採用することはできない。かえって,当審にお
いて提出された「土地付建物売買契約書」と題する書面(甲
第32号証,丙第1号証。この売買契約書は原審において被
控訴人Aから証拠として提出されていなかった。)には,特
約条項として,「LPガスについては,売買代金にガス供給
消費設備は含まれていない為,当社指定ガス供給業者との無
償貸与契約書を締結していただきます。」と明記されている。
その他,被控訴人Aが上記の設置費用等を控訴人又は株式会
社Iに対して支払ったことを認めるに足りる証拠はない。
イ被控訴人A宅のLPガス設備及び給湯器
(ア)控訴人は,後記のとおり平成13年12月21日にLP
ガスの販売契約(供給契約)を締結するに先立ち,株式会社
Iから依頼を受けて,本件物件1にLPガス供給設備(LP
ガス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及びLP
ガス消費設備(ガス配管等)並びに給湯器(原判決別紙給湯
器明細記載1のもの)を取り付けた。この工事に要した費用
(LPガス供給設備につき2万7340円,LPガス消費設
備につき8万4880円,給湯器につき27万5600円)
は,無償配管慣行に従い,控訴人が負担した。
(イ)上記(ア)のLPガスの供給設備とは,LPガス容器とガ
スメーターとの間に設けられている圧力調整器,メーター,
検圧プラグ等の設備及びLPガス容器と圧力調整器とを接続
するガス被覆管等をいい(液化石油ガスの保安の確保及び取
引の適正化に関する法律第2条第4項は「「供給設備」とは,
液化石油ガス販売事業の用に供する液化石油ガスの供給のた
めの設備(船舶内のものを除く。)及びその附属設備であっ
て,経済産業省令で定めるものをいう。」と規定しており,
これを受け,液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に
関する法律施行規則第3条は,「法第2条第4項の経済産業
省令で定める供給設備は,貯蔵設備,気化装置,調整器及び
ガスメーター並びにこれらに準ずる設備(貯蔵設備とガスメ
ーターの間に設けられるものに限る。)並びにこれらを接続
する管(以下「供給管」という。)並びにこれらの設備に係
る屋根,遮へい板及び障壁とする。」と規定している。),
いずれも建物の外部に設置されており,圧力調整器及びメー
ターは建物の外壁に支持金具で固定されている。LPガスの
消費設備は,ガスメーターから出た管から先をいい,フレキ
管,ガス被覆管,片ネジソケット,フレキコック,CD管等
から成り,フレキ管は防護のためさや管に入れられて地中に
埋設されており,地上に出てくると建物の基礎のコンクリー
トを貫通して建物の床下内に入り,台所のガスレンジのガス
栓につながるガスレンジラインと建物の外部に設置されてい
る給湯器のガス栓につながる給湯器ラインとに分岐して敷設
されており,建物の基礎等に支持金具で固定されている。ま
た,給湯器は,建物の外壁に支持金具で固定され,さや管に
入ったフレキ管がそのガス栓に接続されている。
ウLPガス設備及び給湯器に関する書面の交付等
(ア)被控訴人Aは,平成13年12月17日,株式会社Iに
自宅とする土地及び建物の売買代金を支払い,同社から,本
件物件1の引渡しを受けた。
(イ)控訴人の社員は,同月21日,被控訴人A宅(本件物件
1)を訪れ,被控訴人Aの妻及び被控訴人Aの両親(被控訴
人Aの両親は,前記のとおり,同年10月13日に同被控訴
人が重要事項説明書により重要事項の説明を受けていた際,
同被控訴人ともにその説明を聞いていた。)と面談し,同被
控訴人の妻が本件契約書(甲2)及び本件覚書(甲3)に同
被控訴人名義で署名押印し,控訴人との間でLPガスの販売
契約(供給契約)を締結した。控訴人の社員は,本件契約書
の液化石油ガス設備施工年月日の空欄に「平成13年8月2
0日」と記入した。本件契約書(甲2)及び本件覚書(甲
3)は2通作成され,控訴人の社員は,各1通を被控訴人A
の妻に交付した。交付された本件契約書(甲2)及び本件覚
書(甲3)はそのまま被控訴人Aの占有下に置かれていた。
本件契約書及び本件覚書の主な記載事項は,前記引用に係る
原判決の認定事実(原判決前記第2の3の(3)及び同(4))の
とおりである。交付された本件契約書及び本件覚書には,そ
の表題部に「液化石油ガス設備貸借契約書(売買予約と貸与
契約書)」などと記載されているのを始め,各文書の記載内
容自体から,被控訴人Aの自宅に設置されたLPガス供給設
備(LPガス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)
及びLPガス消費設備(ガス配管等)並びに給湯器(原判決
別紙給湯器明細記載1のもの)については控訴人の所有とさ
れ,控訴人が被控訴人Aに対してこれらを貸与するものであ
ること,被控訴人AがLPガスの販売契約(供給契約)を中
途解約する場合には,被控訴人Aが所定の残存価格を売買代
金としてLPガスの供給設備及び消費設備並びに給湯器を買
い取らなければならないこととされていることが明らかであ
るが,被控訴人Aが控訴人や株式会社I,J株式会社に上記
の各点について問い合わせをしたり,抗議をしたりして是正
を求めたことを認めるに足りる証拠はない。
エその後,被控訴人Aは,上記LPガス供給契約に基づき,控
訴人からLPガスの供給を受けていたが,平成15年2月26
日,控訴人に対して同供給契約を解約する旨の意思表示をし
た。」
(3)原判決33頁17行目から34頁23行目までを次のとおり改める。
「(3)被控訴人B
ア売買契約の締結及び重要事項の説明
(ア)被控訴人Bは,平成13年7月23日,株式会社Iから
土地及び建物(完成建物。以下「本件物件2」という。)を
買い受けるため,仲介人である株式会社Lの事務所を訪れ,
同事務所において,株式会社Lの社員(宅地建物取引主任
者)から,宅地建物取引業法第35条第1項の規定に基づき,
重要事項説明書(甲33,丙2。この重要事項説明書は原審
において被控訴人Bから証拠として提出されておらず,当審
において控訴人及び控訴人補助参加人から提出されたもので
ある。)の交付を受けて本件物件2に関する重要事項につい
て説明を受けた。
(イ)宅地建物取引業法第35条第1項第4号を受けて,上記
重要事項説明書には「7.飲用水・電気・ガスの供給施設及
び排水施設の整備状況」の欄があり,直ちに利用可能な施設
として,「飲用水」の項目のうち「公営」に丸印が付され,
「電気」の項目には「東京(電力㈱)」と記載され,これと
並んで「ガス」の項目のうち「プロパンガス」の「個別」に
丸印が付されている。また,上記箇所の公営水道の特別負担
金の項目に「有」と記載され,備考欄には「宅地外施設負担
金¥315000(税込み)が別途必要になります。」と記
載されている。そして,重要事項説明書の特記事項欄に,
「LPガスについては,売買代金にガス供給消費設備は含ま
れていない為,当社指定ガス供給業者との無償貸与契約書を
締結して頂きます。」と明記されている。
(ウ)被控訴人Bは,上記のとおり重要事項の説明を受けた後,
土地及び建物の売買契約書(乙14)に署名押印をし,株式
会社Iから自宅とする土地及び建物を買い受けた。後記のL
Pガス供給設備の設置費用2万7340円及びLPガス消費
設備の設置費用7万6360円並びに給湯器の代金及び設置
費用27万5600円は合計37万9300円に及ぶのに,
上記売買契約書にはこれらの設置費用等が自宅とする土地及
び建物の売買代金に含まれていることを示す記載はなく,被
控訴人Bが株式会社Iからこれらの設置費用等を請求されて
これを支払ったことを示す文書等も提出されておらず,被控
訴人Bが株式会社Iに支払った売買代金の中に,後記のLP
ガス供給設備の設置費用2万7340円及びLPガス消費設
備の設置費用7万6360円並びに給湯器の代金及び設置費
用27万5600円,以上合計37万9300円が含まれて
いたことを客観的に示す証拠はなく,乙第36号証の2を採
用することはできない。かえって,当審において提出された
重要事項説明書(甲33,丙2)には,特記事項として前記
のとおり,「LPガスについては,売買代金にガス供給消費
設備は含まれていない為,当社指定ガス供給業者との無償貸
与契約書を締結して頂きます。」と明記されている。その他,
被控訴人Bが上記の設置費用等を控訴人又は株式会社Iに対
して支払ったことを認めるに足りる証拠はない。
イ被控訴人B宅のLPガス設備及び給湯器
(ア)控訴人は,後記のとおり平成13年9月28日にLPガ
スの販売契約(供給契約)を締結するに先立ち,株式会社I
から依頼を受けて,本件物件2にLPガス供給設備(LPガ
ス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及びLPガ
ス消費設備(ガス配管等)を設置したほか,給湯器(原判決
別紙給湯器明細記載1のもの)を取り付けた。この工事に要
した費用(LPガス供給設備につき2万7340円及びLP
ガス消費設備につき7万6360円,給湯器につき27万5
600円,以上合計37万9300円)は,無償配管慣行に
従い,控訴人が負担した。
(イ)上記(ア)のLPガスの供給設備及び消費設備の構成及び
設置状況並びに給湯器の設置状況は,被控訴人Aの自宅の場
合とおおむね同様である。さや管に入れられたフレキ管が被
控訴人Bの自宅建物の基礎のコンクリートを貫通しており,
当該部分はセメントを塗り込んで固められており,フレキ管
を取り外すには当該部分を損壊する必要がある。浴室の床下
を通るフレキ管を除去するには,浴室のユニットバスを撤去
して浴室の基礎を取り外す必要がある。
ウLPガス設備及び給湯器に関する書面の交付等
(ア)被控訴人Bは,平成13年9月20日,株式会社Iに自
宅とする土地及び建物の売買代金を支払い,同社から,本件
物件2の引渡しを受けた。
(イ)控訴人の社員は,同月28日,被控訴人B宅(本件物件
2)を訪れ,同被控訴人との間でLPガスの販売契約(供給
契約)を締結した。控訴人の社員は,本件契約書(甲6)の
液化石油ガス設備施工年月日の空欄に「平成13年8月8
日」と記入し,本件契約書及び本件覚書(甲7)各2通に同
被控訴人の署名押印を得て,これらのうち各1通を同被控訴
人に交付した。交付された本件契約書及び本件覚書はそのま
ま被控訴人Bの占有下に置かれていた。本件契約書及び本件
覚書の主な記載事項は,前記引用に係る原判決の認定事実
(原判決前記第2の3の(3)及び同(4))のとおりである。交
付された本件契約書及び本件覚書には,その表題部に「液化
石油ガス設備貸借契約書(売買予約と貸与契約書)」などと
記載されているのを始め,各文書の記載内容自体から,被控
訴人Bの自宅に設置されたLPガス供給設備(LPガス容器,
圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及びLPガス消費設
備(ガス配管等)並びに給湯器(原判決別紙給湯器明細記載
1のもの)については控訴人の所有とされ,控訴人が被控訴
人Bに対してこれらを無償で貸与するものであること,被控
訴人BがLPガスの販売契約(供給契約)を中途解約する場
合には,被控訴人Bが所定の残存価格を売買代金としてLP
ガスの供給設備及び消費設備並びに給湯器を買い取らなけれ
ばならないこととされていることが明らかであるが,被控訴
人Bが控訴人や株式会社I,株式会社Lに上記の各点につい
て問い合わせをしたり,抗議をしたりして是正を求めたこと
を認めるに足りる証拠はない。
エその後,被控訴人Bは,上記LPガス供給契約に基づき,控
訴人からLPガスの供給を受けていたが,平成15年2月27
日,控訴人に対して同供給契約を解約する旨の意思表示をし
た。」
(4)原判決34頁24行目から36頁7行目までを次のとおり改める。
「(4)被控訴人C
ア売買契約の締結及び重要事項の説明
(ア)被控訴人Cは,平成14年10月15日,当時の自宅に
おいて,株式会社Iの社員(宅地建物取引主任者)から,宅
地建物取引業法第35条第1項の規定に基づき,購入しよう
としている土地及び建物(未完成建物。以下「本件物件3」
という。)に関する重要事項について,売買契約書(乙15
の1)及び重要事項説明書(乙15の2)を渡されてその説
明を受けた。
(イ)上記重要事項説明書には,宅地建物取引業法第35条第
1項第4号を受けて「飲用水・電気・ガスの供給施設及び排
水施設の整備状況」の欄があり,直ちに利用可能な施設とし
て,「飲用水」の項目に「公営水道」と,「電気」の項目に
「N電力」と記載されており,これと並んで「ガス」の項目
に「プロパンガス」と記載されていた。公営水道については
「施設整備の特別負担」の項目に「有」と記載され,これを
受けて「備考」欄に「宅地外施設接続分担金367,500
円申し受けます。」,「敷地内引込については建物引渡し時
迄に完了する予定です。」と記載されていた。
(ウ)被控訴人Cは,上記のとおり重要事項の説明を受けた後,
土地及び建物の売買契約書に署名押印をし,株式会社Iから
自宅とする土地及び建物を買い受けた。後記のLPガス供給
設備の設置費用2万8940円及びLPガス消費設備の設置
費用5万1900円並びに給湯器の代金及び設置費用23万
9200円は合計32万0040円に及ぶのに,上記売買契
約書にはこれらの設置費用等が自宅とする土地及び建物の売
買代金に含まれていることを示す記載はなく,被控訴人Cが
株式会社Iからこれらの設置費用等を請求されてこれを支払
ったことを示す文書等も提出されておらず,被控訴人Cが株
式会社Iに支払った売買代金の中に,後記のLPガス供給設
備の設置費用2万8940円及びLPガス消費設備の設置費
用5万1900円並びに給湯器の代金及び設置費用23万9
200円,以上合計32万0040円が含まれていたことを
客観的に示す証拠はなく,乙第37号証の2を採用すること
はできない。その他,被控訴人Cが上記の設置費用等を控訴
人又は株式会社Iに対して支払ったことを認めるに足りる証
拠はない。
イ被控訴人C宅のLPガス設備及び給湯器
(ア)控訴人は,後記のとおり平成14年12月27日にLP
ガスの販売契約(供給契約)を締結するに先立ち,株式会社
Iから依頼を受けて,本件物件3にLPガス供給設備(LP
ガス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及びLP
ガス消費設備(ガス配管等)を設置したほか,給湯器(原判
決別紙給湯器明細記載2のもの)を取り付けた。この工事に
要した費用(LPガス供給設備の設置費用2万8940円及
びLPガス消費設備の設置費用5万1900円並びに給湯器
の代金及び設置費用23万9200円,以上合計32万00
40円)は,無償配管慣行に従い,控訴人が負担した。
(イ)上記(ア)のLPガスの供給設備及び消費設備の構成及び
設置状況並びに給湯器の設置状況は,被控訴人Aの自宅の場
合とおおむね同様である。地中に埋設された管は,浴室の外
側で給湯器ラインとガスレンジラインの2方向に分岐し,ガ
スレンジラインは建物の中に入り込んでいる。浴室の床下を
通るフレキ管を除去するには,浴室の基礎を取り外す必要が
ある。
ウLPガス設備及び給湯器に関する書面の交付等
(ア)被控訴人Cは,平成14年12月19日,株式会社Iに
自宅とする土地及び建物の売買代金を支払い,同社から,本
件物件3の引渡しを受けた。
(イ)控訴人の社員は,同月27日,被控訴人C宅(本件物件
3)を訪れ,被控訴人Cの妻と面談し,同被控訴人の妻が本
件契約書(甲10)及び本件覚書(甲11)に同被控訴人名
義で署名押印し,控訴人との間でLPガスの販売契約(供給
契約)を締結した。控訴人の社員は,本件契約書の液化石油
ガス設備施工年月日の空欄に「平成14年11月14日」と
記入した。本件契約書(甲10)及び本件覚書(甲11)は
2通作成され,控訴人の社員は,各1通を被控訴人Cの妻に
交付した。交付された本件契約書(甲2)及び本件覚書(甲
3)はそのまま被控訴人Cの占有下に置かれていた。本件契
約書及び本件覚書の主な記載事項は,前記引用に係る原判決
の認定事実(原判決前記第2の3の(3)及び同(4))のとおり
である。交付された本件契約書及び本件覚書には,その表題
部に「液化石油ガス設備貸借契約書(売買予約と貸与契約
書)」などと記載されているのを始め,各文書の記載内容自
体から,被控訴人Cの自宅に設置されたLPガス供給設備
(LPガス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及
びLPガス消費設備(ガス配管等)並びに給湯器(原判決別
紙給湯器明細記載2のもの)については控訴人の所有とされ,
控訴人が被控訴人Cに対してこれらを貸与するものであるこ
と,被控訴人CがLPガスの販売契約(供給契約)を中途解
約する場合には,被控訴人Cが所定の残存価格を売買代金と
してLPガスの供給設備及び消費設備並びに給湯器を買い取
らなければならないこととされていることが明らかであるが,
被控訴人Cが控訴人や株式会社Iに上記の各点について問い
合わせをしたり,抗議をしたりして是正を求めたことを認め
るに足りる証拠はない。
エその後,被控訴人Cは,上記LPガス供給契約に基づき,控
訴人からLPガスの供給を受けていたが,平成15年7月11
日,控訴人に対して同供給契約を解約する旨の意思表示をし
た。」
(5)原判決36頁8行目から37頁12行目までを次のとおり改める。
「(5)被控訴人D
ア売買契約の締結及び重要事項の説明
(ア)被控訴人Dの代理人である同被控訴人の妻は,平成13
年9月25日,株式会社IのO支店に赴き,株式会社Iの社
員(宅地建物取引主任者)から,宅地建物取引業法第35条
第1項の規定に基づき,購入しようとしている土地及び建物
(以下「本件物件4」という。)に関する重要事項について
重要事項説明書(甲34,丙3。この重要事項説明書は原審
において被控訴人Dから証拠として提出されておらず,当審
において控訴人及び控訴人補助参加人から提出されたもので
ある。)の交付を受けて説明を受けた。
(イ)宅地建物取引業法第35条第1項第4号を受けて,上記
重要事項説明書には「飲用水(丙3の原文の当該小見出しの
箇所には「引用水」と記載されているが,誤記と認める。)
・電気・ガスの供給施設及び排水施設の整備状況」の欄があ
り,直ちに利用可能な施設として,「飲用水」の項目に「公
営水道」と,「電気」の項目に「N電力」と記載され,これ
と並んで「ガス」の項目に「プロパン」,「敷地内配管有
り」と記載されている。また,備考欄には「宅地外施設分担
金として315,000円申し受けます。(消費税込み)」
と記載されている。そして,重要事項説明書の「その他特記
事項」欄に,「LPガスについては,売買代金にガス供給消
費設備は含まれていない為,当社指定ガス会社との無償貸与
契約を締結していただきます。」と明記されている。
(ウ)被控訴人Dの代理人である同被控訴人の妻は,上記のと
おり重要事項の説明を受けた後,土地及び建物の売買契約書
(乙16)に署名押印をし,株式会社Iから自宅とする土地
及び建物を買い受けた。後記のLPガス供給設備の設置費用
2万7340円及びLPガス消費設備の設置費用6万796
0円並びに給湯器の代金及び設置費用27万5600円は合
計37万0900円に及ぶのに,上記売買契約書にはこれら
の設置費用等が自宅とする土地及び建物の売買代金に含まれ
ていることを示す記載はなく,被控訴人Dが株式会社Iから
これらの設置費用等を請求されてこれを支払ったことを示す
文書等も提出されておらず,被控訴人Dが株式会社Iに支払
った売買代金の中に,後記のLPガス供給設備の設置費用2
万7340円及びLPガス消費設備の設置費用6万7960
円並びに給湯器の代金及び設置費用27万5600円,以上
合計37万0900円が含まれていたことを客観的に示す証
拠はなく,乙第38号証の2を採用することはできない。か
えって,当審において提出された重要事項説明書(甲34,
丙3)には,特記事項として前記のとおり,「LPガスにつ
いては,売買代金にガス供給消費設備は含まれていない為,
当社指定ガス会社との無償貸与契約を締結していただきま
す。」と明記されている。その他,被控訴人Dが上記の設置
費用等を控訴人又は株式会社Iに対して支払ったことを認め
るに足りる証拠はない。
イ被控訴人D宅のLPガス設備及び給湯器
(ア)控訴人は,後記のとおり平成13年11月5日にLPガ
スの販売契約(供給契約)を締結するに先立ち,株式会社I
から依頼を受けて,本件物件4にLPガス供給設備(LPガ
ス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及びLPガ
ス消費設備(ガス配管等)を設置したほか,給湯器(原判決
別紙給湯器明細記載1のもの)を取り付けた。この工事に要
した費用(LPガス供給設備につき2万7340円及びLP
ガス消費設備につき6万7960円,給湯器につき27万5
600円,以上合計37万0900円)は,無償配管慣行に
従い,控訴人が負担した。
(イ)上記(ア)のLPガスの供給設備及び消費設備の構成及び
設置状況並びに給湯器の設置状況は,被控訴人Aの自宅の場
合とおおむね同様である。さや管に入れられたフレキ管が被
控訴人Bの自宅建物の基礎のコンクリートを貫通しており,
当該部分はセメントを塗り込んで固められており,フレキ管
を取り外すには当該部分を損壊する必要がある。
ウLPガス設備及び給湯器に関する書面の交付等
(ア)被控訴人Dは,平成13年10月31日,株式会社Iに
自宅とする土地及び建物の売買代金を支払い,同社から,本
件物件4の引渡しを受けた。
(イ)控訴人の社員は,平成13年11月5日,被控訴人D宅
(本件物件4)を訪れ,同被控訴人との間でLPガスの販売
契約(供給契約)を締結した。控訴人の社員は,本件契約書
(甲14)の液化石油ガス設備施工年月日の空欄に「平成1
3年8月8日」と記入し,本件契約書及び本件覚書(甲1
5)各2通に同被控訴人の署名押印を得て,これらのうち各
1通を同被控訴人に交付した。交付された本件契約書及び本
件覚書はそのまま被控訴人Dの占有下に置かれていた。本件
契約書及び本件覚書の主な記載事項は,前記引用に係る原判
決の認定事実(原判決前記第2の3の(3)及び同(4))のとお
りである。交付された本件契約書及び本件覚書には,その表
題部に「液化石油ガス設備貸借契約書(売買予約と貸与契約
書)」などと記載されているのを始め,各文書の記載内容自
体から,被控訴人Dの自宅に設置されたLPガス供給設備
(LPガス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及
びLPガス消費設備(ガス配管等)並びに給湯器(原判決別
紙給湯器明細記載1のもの)については控訴人の所有とされ,
控訴人が被控訴人Dに対してこれらを無償で貸与するもので
あること,被控訴人DがLPガスの販売契約(供給契約)を
中途解約する場合には,被控訴人Dが所定の残存価格を売買
代金としてLPガスの供給設備及び消費設備並びに給湯器を
買い取らなければならないこととされていることが明らかで
あるが,被控訴人Dが控訴人や株式会社Iに上記の各点につ
いて問い合わせをしたり,抗議をしたりして是正を求めたこ
とを認めるに足りる証拠はない。
エその後,被控訴人Dは,上記LPガス供給契約に基づき,控
訴人からLPガスの供給を受けていたが,平成15年5月27
日,控訴人に対して同供給契約を解約する旨の意思表示をし
た。」
(6)原判決37頁13行目から38頁20行目までを次のとおり改める。
「(6)被控訴人E
ア売買契約の締結及び重要事項の説明
(ア)被控訴人Eは,平成13年1月5日,株式会社Iから土
地及び建物(完成建物。以下「本件物件5」という。)を買
い受けるため,仲介人である株式会社LのP店を訪れ,同店
舗において,株式会社Lの社員(宅地建物取引主任者)から,
宅地建物取引業法第35条第1項の規定に基づき,本件物件
5に関する重要事項について売買契約書(乙17の1)及び
重要事項説明書(乙17の2)を渡されてその説明を受けた。
(イ)上記重要事項説明書には,宅地建物取引業法第35条第
1項第4号を受けて「7.飲用水・電気・ガスの供給施設及
び排水施設の整備状況」の欄があり,直ちに利用可能な施設
として,「飲用水」の項目のうち「公営」に丸印が付けられ,
「電気」の項目に「東京(電力㈱)」と記載されており,こ
れと並んで「ガス」の項目のうち「プロパンガス」に丸印が
付けられていた。飲用水(公営水道)については「整備予定
・特別負担金」の項目のうち「有」に丸印が付けられ,これ
を受けて「備考」欄に「宅地外施設接続金367,500円
(税込)別途」と記載されていた。
(ウ)被控訴人Eは,上記のとおり重要事項の説明を受けた後,
土地及び建物の売買契約書(乙17の1)に署名押印をし,
株式会社Iから自宅とする土地及び建物を買い受けた。後記
のLPガス供給設備の設置費用2万7340円及びLPガス
消費設備の設置費用8万2660円について,上記売買契約
書にはこれらの設置費用が自宅とする土地及び建物の売買代
金に含まれていることを示す記載はなく,被控訴人Eが株式
会社Iからこれらの設置費用等を請求されてこれを支払った
ことを示す文書等も提出されておらず,被控訴人Eが株式会
社Iに支払った売買代金の中に,後記のLPガス供給設備の
設置費用2万7340円及びLPガス消費設備の設置費用8
万2660円,以上合計11万円が含まれていたことを客観
的に示す証拠はなく,乙第39号証の2を採用することはで
きない。その他,被控訴人Eが上記の設置費用を控訴人又は
株式会社Iに対して支払ったことを認めるに足りる証拠はな
い。
イ被控訴人E宅におけるLPガス供給設備及びLPガス消費設
備の設置状況
(ア)控訴人は,後記のとおり平成13年2月26日にLPガ
スの販売契約(供給契約)を締結するに先立ち,株式会社I
から依頼を受けて,本件物件5にLPガス供給設備(LPガ
ス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及びLPガ
ス消費設備(ガス配管等)を設置した。この工事に要した費
用(LPガス供給設備につき2万7340円及びLPガス消
費設備につき8万2660円,以上合計11万円)は,無償
配管慣行に従い,控訴人が負担した。なお,被控訴人E宅に
は控訴人以外の者によって既に給湯器が取り付けられていた。
(イ)上記(ア)のLPガスの供給設備及び消費設備の構成及び
設置状況は,被控訴人Aの自宅の場合とおおむね同様である。
さや管に入れられたフレキ管が被控訴人Eの自宅建物の基礎
のコンクリートを貫通しており,当該部分はセメントを塗り
込んで固められており,フレキ管を取り外すには当該部分を
損壊する必要がある。浴室の床下を通るフレキ管を除去する
には,浴室のユニットバスを撤去して浴室の基礎を取り外す
必要がある。
ウLPガス設備及び給湯器に関する書面の交付等
(ア)被控訴人Eは,平成13年2月26日,株式会社Iに自
宅とする土地及び建物の売買代金を支払い,同社から,本件
物件5の引渡しを受けた。
(イ)控訴人の社員は,同日,被控訴人E宅(本件物件5)を
訪れ,同被控訴人との間でLPガスの販売契約(供給契約)
を締結した。控訴人の社員は,本件契約書(甲18)の液化
石油ガス設備施工年月日の空欄に「平成12年12月1日」
と記入し,本件契約書各2通に同被控訴人の署名押印を得て,
うち1通を同被控訴人に交付した。交付された本件契約書は
そのまま被控訴人Eの占有下に置かれていた。本件契約書の
主な記載事項は,前記引用に係る原判決の認定事実(原判決
前記第2の3の(3))のとおりである。交付された本件契約
書には,その表題部に「液化石油ガス設備貸借契約書(売買
予約と貸与契約書)」と記載されているのを始め,その記載
内容自体から,被控訴人Eの自宅に設置されたLPガス供給
設備(LPガス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管
等)及びLPガス消費設備(ガス配管等)については控訴人
の所有とされ,控訴人が被控訴人Eに対してこれらを無償で
貸与するものであること,被控訴人EがLPガスの販売契約
(供給契約)を中途解約する場合には,被控訴人Eが所定の
残存価格を売買代金としてLPガスの供給設備及び消費設備
を買い取らなければならないこととされていることが明らか
であるが,被控訴人Eが控訴人や株式会社I,株式会社Lに
上記の各点について問い合わせをしたり,抗議をしたりして
是正を求めたことを認めるに足りる証拠はない。
エその後,被控訴人Eは,上記LPガス供給契約に基づき,控
訴人からLPガスの供給を受けていたが,平成15年2月28
日,控訴人に対して同供給契約を解約する旨の意思表示をし
た。」
(7)原判決38頁21行目から40頁6行目までを次のとおり改める。
「(7)被控訴人F
ア売買契約の締結及び重要事項の説明
(ア)被控訴人F及び同被控訴人の妻は,平成9年11月27
日,株式会社Iから土地及び建物(完成建物。以下「本件物
件6」という。)を買い受けるため,株式会社Iの事務所を
訪れ,同事務所において,株式会社Iの社員(宅地建物取引
主任者)から,宅地建物取引業法第35条第1項の規定に基
づき,本件物件6に関する重要事項について売買契約書(乙
18の1)及び重要事項説明書(乙18の2)を渡されてそ
の説明を受けた。
(イ)上記重要事項説明書には,宅地建物取引業法第35条第
1項第4号を受けて「飲用水・電気・ガスの供給施設及び排
水施設の整備状況」の欄があり,直ちに利用可能な施設とし
て,「飲用水」の項目のうち「公営」に丸印が付けられ,
「電気」の項目に「N電力」と記載されており,これと並ん
で「ガス」の項目のうち「プロパン」に丸印が付けられてい
た。飲用水(公営)については「施設の整備の特別負担の有
無」の項目のうち「有」に丸印が付けられ,これを受けて
「備考」欄に「宅地外施設接続金別途315,000円(消
費税込み)」と記載されていた。
(ウ)被控訴人F及び同被控訴人の妻は,上記のとおり重要事
項の説明を受けた後,土地及び建物の売買契約書(乙18の
1)に署名押印をし,株式会社Iから自宅とする土地及び建
物を買い受けた。後記のLPガス供給設備の設置費用2万7
340円及びLPガス消費設備の設置費用6万7500円に
ついて,上記売買契約書にはこれらの設置費用が自宅とする
土地及び建物の売買代金に含まれていることを示す記載はな
く,被控訴人Fが株式会社Iからこれらの設置費用等を請求
されてこれを支払ったことを示す文書等も提出されておらず,
被控訴人Fが株式会社Iに支払った売買代金の中に,後記の
LPガス供給設備の設置費用2万7340円及びLPガス消
費設備の設置費用6万7500円,以上合計9万4840円
が含まれていたことを客観的に示す証拠はなく,乙第40号
証の2を採用することはできない。その他,被控訴人Fが上
記の設置費用を控訴人又は株式会社Iに対して支払ったこと
を認めるに足りる証拠はない。
イ被控訴人F宅におけるLPガス供給設備及びLPガス消費設
備の設置状況
(ア)控訴人は,後記のとおり平成10年1月末ないし同年2
月中旬にLPガスの販売契約(供給契約)を締結するに先立
ち,株式会社Iから依頼を受けて,本件物件6にLPガス供
給設備(LPガス容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管
等)及びLPガス消費設備(ガス配管等)を設置した。この
工事に要した費用(LPガス供給設備につき2万7340円
及びLPガス消費設備につき6万7500円,以上合計9万
4840円)は,無償配管慣行に従い,控訴人が負担した。
なお,被控訴人F宅には控訴人以外の者によって既に給湯器
が取り付けられていた。
(イ)上記(ア)のLPガスの供給設備及び消費設備の構成及び
設置状況は,被控訴人Aの自宅の場合とおおむね同様である。
鋼管が被控訴人Fの自宅建物の台所の外壁を貫通しており,
当該部分はコーキング材でふさがれており,鋼管を取り外す
には当該部分を損壊する必要がある。ガスレンジ下の収納ボ
ックスの点検口を貫通した鋼管は接着剤で固着されている。
ウLPガス設備及び給湯器に関する書面の交付等
(ア)被控訴人F及び同被控訴人の妻は,平成10年1月30
日,株式会社Iに自宅とする土地及び建物の売買代金を支払
い,同社から,本件物件6の引渡しを受けた。
(イ)控訴人の社員は,同年1月末ないし同年2月中旬,被控
訴人F宅(本件物件6)を訪れ,同被控訴人との間でLPガ
スの販売契約(供給契約)を締結した。控訴人の社員は,本
件契約書(甲20)の液化石油ガス設備施工年月日の空欄に
「平成10年1月31日」と記入し,本件契約書2通に同被
控訴人の署名押印を得て,うち1通を同被控訴人に交付した。
交付された本件契約書はそのまま被控訴人Fの占有下に置か
れていた。本件契約書の主な記載事項は,前記引用に係る原
判決の認定事実(原判決前記第2の3の(3))のとおりであ
る。交付された本件契約書には,その表題部に「液化石油ガ
ス設備貸借契約書(売買予約と貸与契約書)」と記載されて
いるのを始め,その記載内容自体から,被控訴人Fの自宅に
設置されたLPガス供給設備(LPガス容器,圧力調整器,
ガスメーター,供給管等)及びLPガス消費設備(ガス配管
等)については控訴人の所有とされ,控訴人が被控訴人Fに
対してこれらを無償で貸与するものであること,被控訴人F
がLPガスの販売契約(供給契約)を中途解約する場合には,
被控訴人Fが所定の残存価格を売買代金としてLPガスの供
給設備及び消費設備を買い取らなければならないこととされ
ていることが明らかであるが,被控訴人F及び同被控訴人の
妻が控訴人や株式会社Iに上記の各点について問い合わせを
したり,抗議をしたりして是正を求めたことを認めるに足り
る証拠はない。
エその後,被控訴人Fは,上記LPガス供給契約に基づき,控
訴人からLPガスの供給を受けていたが,平成15年9月1日,
控訴人に対して同供給契約を解約する旨の意思表示をした。」
(8)原判決40頁7行目から41頁18行目までを次のとおり改める。
「(8)被控訴人G
ア売買契約の締結及び重要事項の説明
(ア)被控訴人Gは,平成6年11月23日,株式会社Mから
土地を買い受けて同土地上に建物(以下「本件物件7」とい
う。)を建築する工事請負契約を締結するため,株式会社M
の事務所を訪れ,同事務所において,株式会社Mの社員から
建設工事請負契約書(乙19の1)を渡され,これに署名捺
印した。被控訴人Gは,これに先立ち,株式会社Mから「工
事仕様書」と題する書面を受領していた。同書面の「建築概
要」の「給湯工事」欄には「給湯器16号タイプ・台所・浴
室・洗面化粧台(以上3ヶ所)」との記載があった。被控訴
人Gは,同月27日に株式会社Mの事務所において,宅地建
物取引業法第35条第1項の規定に基づき,上記土地に関す
る重要事項について,株式会社Mの社員(宅地建物取引主任
者)から重要事項説明書(乙19の3)を渡されてその説明
を受けた。
(イ)上記重要事項説明書には,宅地建物取引業法第35条第
1項第4号を受けて「4.飲用水・電気・ガスの供給施設及
び排水施設の設備状況」の欄があり,直ちに利用可能な施設
として,「飲用水」の項目のうち「公営」が丸印で囲まれ,
「電気」の項目に「東京(電力㈱)」と記載されており,こ
れと並んで「ガス」の項目のうち「プロパン」が丸印で囲ま
れていた。飲用水(公営)については「施設の整備の特別負
担の有無」の項目のうち「有」に丸印が付けられ,103,
000円」と記載されていた。
(ウ)被控訴人Gは,上記のとおり,建設工事請負契約書(乙
19の1)に署名押印をし,株式会社Mから自宅とする土地
及び建物を取得した。後記のLPガス供給設備につき2万7
340円及びLPガス消費設備につき12万3940円,以
上合計15万1280円について,上記建設工事請負契約書
にはこれらの設置費用が自宅とする土地及び建物の代金に含
まれていることを示す記載はなく,被控訴人Gが株式会社M
からこれらの設置費用等を請求されてこれを支払ったことを
示す文書等も提出されておらず,被控訴人Gが株式会社Mに
支払った代金の中に,後記のLPガス供給設備につき2万7
340円及びLPガス消費設備につき12万3940円,以
上合計15万1280円が含まれていたことを客観的に示す
証拠はなく,乙第41号証の2を採用することはできない。
その他,被控訴人Gが上記の設置費用を控訴人又は株式会社
Mに対して支払ったことを認めるに足りる証拠はない。
イ被控訴人G宅におけるLPガス供給設備及びLPガス消費設
備の設置状況
(ア)控訴人は,後記のとおり平成7年11月下旬にLPガス
の販売契約(供給契約)を締結するに先立ち,株式会社Mか
ら依頼を受けて,本件物件7にLPガス供給設備(LPガス
容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及びLPガス
消費設備(ガス配管等)を設置した。この工事に要した費用
(LPガス供給設備につき2万7340円及びLPガス消費
設備につき12万3940円,以上合計15万1280円)
は,無償配管慣行に従い,控訴人が負担した。なお,被控訴
人G宅には控訴人以外の者によって既に給湯器が取り付けら
れていた。
(イ)上記(ア)のLPガスの供給設備及び消費設備の構成及び
設置状況は,被控訴人Aの自宅の場合とおおむね同様である。
フレキ管はダイニングの床下で建物の中に入り込み,ダイニ
ングの床下から台所の床下に回り込んだ後,分岐継ぎ手でガ
スレンジラインと給湯器ラインの2方向に分岐している。ガ
スレンジラインは,システムキッチンの下で基礎木部と台所
の床板の隙間に入り込んでいる。
ウLPガス設備及び給湯器に関する書面の交付等
(ア)被控訴人Gは,平成7年11月10日,株式会社Mに請
負代金及び売買代金を支払い,同社から,本件物件7の引渡
しを受けた。
(イ)控訴人社員は,同月下旬ころ,被控訴人G宅(本件物件
7)を訪れ,同被控訴人との間でLPガスの供給契約を締結
し,被控訴人Gは,同月19日以降控訴人からLPガスの供
給を受けていた。
控訴人社員は,平成9年12年2日,被控訴人G宅を再び
訪れ,本件契約書(甲22)の液化石油ガス設備施工年月日
の空欄に「平成7年11月19日」と記入し,本件契約書に
同被控訴人の署名押印を得て,これを同被控訴人に交付した。
交付された本件契約書はそのまま被控訴人Gの占有下に置か
れていた。本件契約書の主な記載事項は,前記引用に係る原
判決の認定事実(原判決前記第2の3の(3))のとおりであ
る。交付された本件契約書には,その表題部に「液化石油ガ
ス設備貸借契約書(売買予約と貸与契約書)」と記載されて
いるのを始め,その記載内容自体から,被控訴人Gの自宅に
設置されたLPガス供給設備(LPガス容器,圧力調整器,
ガスメーター,供給管等)及びLPガス消費設備(ガス配管
等)については控訴人の所有とされ,控訴人が被控訴人Gに
対してこれらを無償で貸与するものであること,被控訴人G
がLPガスの販売契約(供給契約)を中途解約する場合には,
被控訴人Gが所定の残存価格を売買代金としてLPガスの供
給設備及び消費設備を買い取らなければならないこととされ
ていることが明らかであるが,被控訴人Gが控訴人や株式会
社Mに上記の各点について問い合わせをしたり,抗議をした
りして是正を求めたことを認めるに足りる証拠はない。
エその後,被控訴人Gは,上記LPガス供給契約に基づき,控
訴人からLPガスの供給を受けていたが,平成14年9月24
日,控訴人に対して同供給契約を解約する旨の意思表示をし
た。」
(9)原判決41頁19行目から42頁26行目までを次のとおり改める。
「(9)被控訴人H
ア売買契約の締結及び重要事項の説明
(ア)被控訴人Hは,平成9年5月24日,株式会社Iから土
地及び建物(完成建物。以下「本件物件8」という。)を買
い受けるため,同被控訴人の母親及び同被控訴人の妻ととも
に,株式会社Iの事務所を訪れ,同事務所において,株式会
社Iの社員(宅地建物取引主任者)から,宅地建物取引業法
第35条第1項の規定に基づき,本件物件8に関する重要事
項について売買契約書(乙20の1)及び重要事項説明書
(乙20の2)を渡されてその説明を受けた。
(イ)上記重要事項説明書には,宅地建物取引業法第35条第
1項第4号を受けて「飲用水・電気・ガスの供給施設及び排
水施設の整備状況」の欄があり,直ちに利用可能な施設とし
て,「飲用水」の項目のうち「公営」に丸印が付けられ,
「電気」の項目に「N電力」と記載されており,これと並ん
で「ガス」の項目のうち「プロパン」に丸印が付けられてい
た。飲用水(公営)については「施設の整備の特別負担の有
無」の項目のうち「有」に丸印が付けられ,これを受けて
「備考」欄に「宅地外施設接続金別途315,000円(消
費税込み)」と記載されていた。
(ウ)被控訴人Hは,上記のとおり重要事項の説明を受けた後,
土地及び建物の売買契約書(乙20の1)に署名押印をし,
株式会社Iから自宅とする土地及び建物を買い受けた。後記
のLPガス供給設備の設置費用2万7340円及びLPガス
消費設備の設置費用10万4820円について,上記売買契
約書にはこれらの設置費用が自宅とする土地及び建物の売買
代金に含まれていることを示す記載はなく,被控訴人Hが株
式会社Iからこれらの設置費用等を請求されてこれを支払っ
たことを示す文書等も提出されておらず,被控訴人Hが株式
会社Iに支払った売買代金の中に,後記のLPガス供給設備
の設置費用2万7340円及びLPガス消費設備の設置費用
10万4820円,以上合計13万2160円が含まれてい
たことを客観的に示す証拠はなく,乙第42号証の2を採用
することはできない。その他,被控訴人Hが上記の設置費用
を控訴人又は株式会社Iに対して支払ったことを認めるに足
りる証拠はない。
イ被控訴人H宅におけるLPガス供給設備及びLPガス消費設
備の設置状況
(ア)控訴人は,後記のとおり平成9年9月11日にLPガス
の販売契約(供給契約)を締結するに先立ち,株式会社Iか
ら依頼を受けて,本件物件8にLPガス供給設備(LPガス
容器,圧力調整器,ガスメーター,供給管等)及びLPガス
消費設備(ガス配管等)を設置した。この工事に要した費用
(LPガス供給設備につき2万7340円及びLPガス消費
設備につき10万4820円,以上合計13万2160円)
は,無償配管慣行に従い,控訴人が負担した。なお,被控訴
人H宅には控訴人以外の者によって既に給湯器が取り付けら
れていた。
(イ)上記(ア)のLPガスの供給設備及び消費設備の構成及び
設置状況は,被控訴人Aの自宅の場合とおおむね同様である。
鋼管が被控訴人Hの自宅建物の外壁を貫通しており,当該部
分はコーキング材でふさがれており,鋼管を取り外すには当
該部分を損壊する必要がある。
ウLPガス設備及び給湯器に関する書面の交付等
(ア)被控訴人Hは,平成9年9月5日,株式会社Iに自宅と
する土地及び建物の売買代金を支払い,同社から,本件物件
8の引渡しを受けた。
(イ)控訴人の社員は,同月11日,被控訴人H宅(本件物件
8)を訪れ,同被控訴人との間でLPガスの販売契約(供給
契約)を締結した。控訴人の社員は,本件契約書(甲24)
の液化石油ガス設備施工年月日の空欄に「平成9年9月11
日」と記入し,本件契約書2通に同被控訴人の署名押印を得
て,うち1通を同被控訴人に交付した。交付された本件契約
書はそのまま被控訴人Hの占有下に置かれていた。本件契約
書の主な記載事項は,前記引用に係る原判決の認定事実(原
判決前記第2の3の(3))のとおりである。交付された本件
契約書には,その表題部に「液化石油ガス設備貸借契約書
(売買予約と貸与契約書)」と記載されているのを始め,そ
の記載内容自体から,被控訴人Hの自宅に設置されたLPガ
ス供給設備(LPガス容器,圧力調整器,ガスメーター,供
給管等)及びLPガス消費設備(ガス配管等)については控
訴人の所有とされ,控訴人が被控訴人Hに対してこれらを無
償で貸与するものであること,被控訴人HがLPガスの販売
契約(供給契約)を中途解約する場合には,被控訴人Hが所
定の残存価格を売買代金としてLPガスの供給設備及び消費
設備を買い取らなければならないこととされていることが明
らかであるが,被控訴人Hが控訴人や株式会社Iに上記の各
点について問い合わせをしたり,抗議をしたりして是正を求
めたことを認めるに足りる証拠はない。
エその後,被控訴人Hは,上記LPガス供給契約に基づき,控
訴人からLPガスの供給を受けていたが,平成14年7月29
日,控訴人に対して同供給契約を解約する旨の意思表示をし
た。」
2上記認定事実に基づいて判断する。
(1)本件設備合意について
上記事実関係に液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する
法律第14条及び液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する
法律施行規則第13条の各規定の後記の趣旨を併せて考えれば,控訴人
は,住宅販売業者(株式会社I,株式会社M)から依頼を受けて,各被
控訴人の自宅となるべき本件物件1ないし8に控訴人が費用を負担して
LPガス供給設備及びLPガス消費設備を設置し,もって住宅販売業者
から本件物件1ないし8を取得した各被控訴人が上記各設備を使用する
ことができるようにしたものであり,上記各設備の利用関係及び控訴人
が負担した設置費用等に関し,上記各法令の各規定の後記の趣旨を受け,
上記各設備を企業会計上控訴人の有形固定資産のうち償却資産に相当す
るものと位置付け,これらの設置費用等を取得原価とし,耐用年数を1
5年間とし,減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵
省令第15号)の規定に従って耐用年数経過時点における残存価格を取
得原価の10%として,耐用年数の全期間にわたって定率法によって計
算した額を費用として配分することとし,LPガス販売契約(供給契約,
(以下「LPガス供給契約」という。))が存続する限りは各被控訴人
がそれぞれ無償で上記各設備を使用することができることとして各被控
訴人に上記各設備の設置費用等の負担を求めず(なお,控訴人はこの間
上記各設備につき減価償却を行い,償却費を損金経理することができる
ことになる。),上記の耐用年数の全期間が経過すれば各被控訴人の上
記各設備の設置費用等の負担分は消滅し,上記各設備については各被控
訴人が事実上設置費用等を負担することなくこれらを取得することとな
るが,上記の耐用年数の全期間が経過する前にLPガス供給契約が被控
訴人によって解除された場合には,未経過耐用年数については控訴人が
減価償却の処理をすることによって上記各設備の設置費用等を回収する
ことができなくなるため,解除の時点における上記各設備の残存価格相
当額を当該被控訴人に負担してもらうこととし,その負担額は,上記各
設備の当初の設置費用等を取得原価(基準価格)とし,経過年数に対応
して定率法によって各期の減価償却費を算定してこれらの累積額を取得
原価から控除した残存価格をもって算定することとしたものであり,以
上を踏まえて,各被控訴人との間で,控訴人が費用を負担して設置した
上記各設備につき各被控訴人が無償でこれらを使用することができるこ
ととし,上記の耐用年数の全期間が経過すれば各被控訴人の上記各物件
の設置費用等の負担分は消滅し,上記各設備については各被控訴人が確
定的にこれらを取得することとするが,上記の耐用年数の全期間が経過
する前にLPガス供給契約が被控訴人によって解除された場合には,上
記各設備を当該被控訴人に帰属する資産として現状のまま残置しつつ,
解除の時点における上記各設備の残存価格相当額を当該被控訴人が負担
することとすることを実質ないし骨子とする合意を締結すべく,各被控
訴人に対し本件契約書(甲2,6,10,14,18,20,22,2
4)をもって,それぞれ合意の締結を申し込み,各被控訴人が何ら異議
を述べることなく,本件契約書に署名押印して受領したことにより,控
訴人と各被控訴人との間においてそれぞれ上記の内容を実質ないし骨子
とする合意が締結されたものというべきである。液化石油ガスの保安の
確保及び取引の適正化に関する法律第14条,液化石油ガスの保安の確
保及び取引の適正化に関する法律施行規則第13条は,都市ガスの供給
施設が整備されていない地域では一般家庭にLPガスを供給すべき必要
性,公共性が大であるのに,住居にLPガスの供給設備及び消費設備を
設置する費用は一般消費者が負担するにしては決して少額ではなく,こ
れを一般消費者が負担しない限りLPガスを供給することができないと
いうのでは酷な場合があることにかんがみ,LPガスの供給設備につい
てはその物理的形状,独立性,機能,経済的意義,汎用性にかんがみL
Pガス販売事業者の有形固定資産であるとしてLPガス販売事業者が原
則としてその費用を負担することとし,他方,LPガスの消費設備につ
いては,住宅内に設置され,当該住宅の建物との一体性,定着性が強度
であることから一般消費者がその設置費用を負担して所有権を取得する
ことを原則としつつも,実情に応じて,LPガス販売事業者が一般消費
者からその設置費用を徴求せず,企業会計上LPガス販売事業者の有形
固定資産所有資産として減価償却することによりその負担を解消するこ
とを容認し,このような選択をすることを可能にするための仕組みが関
係法令の立案制定により考案されたものと解することができるのであり
(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則第
13条第6号~第9号,第16条第11号,第15号の2,第16号,
第17号参照),このような法制は少なくとも上述した限度において合
理性があるものと評することができる。そして,本件合意は,上記の法
制を前提に締結されるに至ったものと解するのが相当である。
もっとも,本件契約書には,表題部に売買予約という文言があるほか,
LPガス供給契約が中途で解約された場合には,各被控訴人が上記の算
定方式により算定される残存価格を売買代金としてLPガス供給設備及
びLPガス消費設備を買い取る旨記載されており,これによれば,控訴
人が原審以来選択的に主張していたように,上記各設備については,外
形上契約当事者によって停止条件付き売買契約という契約類型が選択さ
れたかのように見えるのである。しかしながら,上記認定事実によれば,
少なくとも,本件請求に係るLPガス消費設備については,LPガスの
消費設備が,フレキ管,ガス被覆管,片ネジソケット,フレキコック,
CD管等から成り,フレキ管は防護のためさや管に入れられて地中に埋
設され,地上に出てくると建物の基礎のコンクリートを貫通して建物の
床下内に入り,台所のガスレンジのガス栓につながるガスレンジライン
と建物の外部に設置されている給湯器のガス栓につながる給湯器ライン
とに分岐して敷設されており,建物の基礎等に支持金具で固定されてい
るのであって,LPガスの消費設備の上記の設置状況及びその設置費用
が約5万円ないし約12万円であったことを考えると,その撤去,復旧
は,物理的には不可能ではないとはいえ,これを行うことは社会経済上
相当程度不利益であるというべきであり,したがって,LPガスの消費
設備は各被控訴人の自宅に付合しているものといわざるを得ないから,
各被控訴人として,既にその所有権を取得しているということになる。
そうすると,本件契約書を取り交わすことによって仮に文字どおりLP
ガス供給契約の解除を停止条件とする売買契約が締結されたとすれば当
該停止条件付き売買契約は,上記付合が認定できる限度において,各被
控訴人が原審以来抗弁として主張しているように,原始的不能というこ
とになり,法律的には契約が成立していないかのようである(なお,各
被控訴人に既に所有権が帰属しているものを控訴人から買い受けるとい
う売買契約は,法律的に原始的不能であって,成立しないといわざるを
得ないから,この場合において,売買契約が成立することを前提とする
錯誤無効の問題が生ずることはあり得ないというべきである。)。しか
しながら,本件契約書における上記の各文言は,前記のとおりの企業会
計上の処理を受けて法技術的観点からそのように表現されたにすぎない
ものである。すなわち,控訴人は,企業会計上,LPガス供給設備及び
LPガス消費設備を控訴人の償却資産に相当するものと位置付け,これ
らの設置費用等を取得原価とし,耐用年数を15年間として控訴人がL
Pガス供給設備及びLPガス消費設備につき減価償却を行い,償却費を
損金経理することとし,上記各設備は,上記の耐用年数の全期間が経過
すれば,各被控訴人が事実上設置費用等を負担することなくこれらを取
得することになるが,上記の耐用年数の全期間が経過する前にLPガス
供給契約が被控訴人によって解除された場合には,未経過耐用年数につ
いては控訴人が減価償却の処理をすることによってLPガス供給設備及
びLPガス消費設備の設置費用等を回収することができなくなるため,
上記各設備を当該被控訴人に帰属する資産として現状のまま残置しつつ,
解除の時点におけるLPガス供給設備及びLPガス消費設備の残存価格
相当額を当該被控訴人に負担してもらう必要性があるところから,これ
を法形式上停止条件付き売買契約に相当するものと考えて,本件契約書
において前記のように表現したにすぎないものと考えられる。しかしな
がら,控訴人と各被控訴人とが締結した本件設備合意の実質は,前記の
とおり,控訴人が費用を負担して設置した上記各設備につき各被控訴人
が無償でこれらを使用することができることとし,前記の耐用年数の全
期間が経過すれば各被控訴人の上記各設備の設置費用等の負担分は消滅
し,上記各設備は各被控訴人が確定的にこれらを取得することになるが,
上記の耐用年数の全期間が経過する前にLPガス供給契約が被控訴人に
よって解除された場合には,上記各設備を当該被控訴人に帰属する資産
として現状のまま残置しつつ,解除の時点における上記各設備の残存価
格相当額を当該被控訴人が負担することとすることにあると見ることが
できるというべきである。換言すれば,本件契約書に係る本件設備合意
については,LPガス供給設備及びLPガス消費設備の設置費用の負担,
これらの設備の帰属及び利用関係や,所定の耐用年数の全期間が経過す
る前にLPガス供給契約が被控訴人によって解除された場合における控
訴人と各被控訴人との間の原状回復の内容(LPガス供給設備及びLP
ガス消費設備の設置費用の負担,これらの設備の帰属)を合理的に定め
る必要性があることが肯定され得るのであり,本件設備合意の実質が正
に上記の内容を定めるものであることに照らすと,上記LPガス消費設
備のように,上記のような合意が成立した時点で既に法的には所有権が
各被控訴人に帰属していると見られることから,その限度でLPガス消
費設備の所有権を各被控訴人に移転するという内容を中心課題とする契
約が原始的不能といわざるを得ない場合であっても,LPガス販売供給
業者である控訴人と消費者である各被控訴人との間で上記の減価償却計
算を基礎とする利益調整をする必要性とその合理性があることは明らか
であり,契約当事者間に上記のような利益調整の必要性及び合理性があ
り,したがって,その合意の実質的内容に合理性が認められるにもかか
わらず,これが,単に売買契約という法形式を採用していることから,
その契約の成立ないし効力を否定することは許されないといわざるを得
ない。そうすると,LPガスの上記各設備についての本件設備合意の実
質的内容が上記のようなものであるとすれば,本件設備合意は,上記各
設備が建物に付合するか否かにかかわらず,すなわち,合意の時点にお
いて,各設備の所有権が法的に各被控訴人に帰属しているか否かにかか
わらず,利益調整合意として有効に成立していると見るべきであり,停
止条件付き売買契約という法形式の外形にこだわることは適切ではなく,
その意味で,LPガスの消費設備及び供給設備についての合意に関して,
控訴人が,選択的にせよ,停止条件付き売買契約を主張しているのは,
適切ではないといわざるを得ない。したがって,本件設備合意について
は,契約当事者が用いた文言に拘泥することなく,LPガス供給設備及
びLPガス消費設備の設置費用の負担,これらの設備の帰属及び利用関
係や,所定の耐用年数の全期間が経過する前にLPガス供給契約が被控
訴人によって解除された場合における控訴人と各被控訴人との間の利益
を調整することをその実質とする合意がされたものと解するのが相当で
ある。
(2)本件給湯器合意について
本件給湯器合意の内容について見るに,前記引用に係る原判決の認定
事実によれば,被控訴人A,同B,同C及び同D(以下「被控訴人Aほ
か3名」という。)の各自宅には控訴人が費用を負担して給湯器(以下
「本件給湯器」という。)を設置しており,本件覚書には,LPガス供
給を控訴人に依頼する上記各被控訴人は,控訴人から本件給湯器の無償
貸与を受けること,所定の耐用年数(本件覚書の文言は利用月数)を1
0年として,耐用年数の全期間が経過する前にLPガス供給契約が解除
された場合には,上記各被控訴人において所定の計算式に基づく金額の
補償費を支払うこと等の記載があり,上記補償費の金額の所定の計算式
等に照らすと,上記補償費の金額は,減価償却計算に基づくその時点に
おける本件給湯器の残存価格ということができるところ,本件覚書の上
記内容に照らすと,本件覚書には,減価償却計算による残存価格という
ような上記各設備に係る本件設備合意に使用されている用語が使用され
てはいないものの,上記各被控訴人が控訴人とのLPガス供給契約を解
除する場合は,所定の計算式に基づく本件給湯器の残存価格を控訴人に
支払うことにより利益の調整を行うことが,本件給湯器合意の実質的内
容となっているということができる。ところで,本件覚書の上記記載に
よれば,本件給湯器は,合意の時点における本件給湯器の所有権につい
て,明文の記載はないものの,控訴人に帰属することを前提としている
というべきであること,また,本件給湯器の所定の耐用年数が経過した
ときは,その後LPガス供給契約の解除がされたとしても,上記補償費
を支払う必要がないこととされており,かつ,控訴人においてその時点
で撤去回収をすることも予定されていないことに照らしても,その時点
において,本件給湯器の所有権が控訴人から上記各被控訴人に移転する
ことが前提とされていると見ることができること等に照らすと,本件給
湯器合意の内容は,本件給湯器の耐用年数の経過前にLPガス供給契約
の解除がされた場合に上記各被控訴人が控訴人に対して,給湯器の残存
価格を補償費として支払うことにより利益の調整を行うことを合意内容
の一部としていることは前記のとおりであるけれども,それだけではな
く,本件給湯器の耐用年数の経過前にLPガス供給契約が解除された場
合には,上記各被控訴人において,本件給湯器の所有権を取得すること
を前提として,控訴人に対し,本件給湯器の残存価格を補償費として支
払うべきであるとの合意が含まれていると見ることができる。以上によ
れば,本件給湯器合意の内容には,本件覚書の記載内容はともかくとし
て,実質的には,上記のような利益調整に係る合意のみではなく,合意
成立の時点において控訴人に帰属していた本件給湯器の所有権について,
給湯器の耐用年数の経過前にLPガス供給契約が解除されることを停止
条件として上記各被控訴人に移転するという合意,すなわち,本件給湯
器についての停止条件付き売買契約が含まれていたものということがで
きる。そして,本件給湯器合意についても,上記各被控訴人において,
原審以来,本件給湯器が上記各被控訴人の自宅建物に付合しており,上
記各被控訴人が有償で自宅建物を取得したことによって本件給湯器も取
得したとして,このことを理由として原始的不能ないし錯誤無効の抗弁
を主張しているところ,前記引用に係る原判決の認定事実によれば,確
かに,各被控訴人宅の本件給湯器は,いずれも,建物の壁に支持金具で
固定されており,上記ガス配管に接続されているとはいい得るものの,
本来耐用年数の経過等により交換することが予定されているものであり,
本件においても,物理的に建物から給湯器を分離するのに建物の一部を
損壊しなければならないものではないことは明らかといわざるを得ない
から,本件給湯器は,物理的にも社会経済的にも,各被控訴人所有の建
物に付合しているものとはいい難い。また,上記各被控訴人が本件給湯
器の設置費用等を控訴人又は住宅販売業者に支払ったことを認めるに足
りる証拠がないことは,前記のとおりである。したがって,いずれにし
ても,各被控訴人の本件給湯器合意に対する上記原始的不能ないし錯誤
無効の抗弁は失当であり,採用することができない。
(3)ところで,控訴人は,各被控訴人に対し,本件請求に当たり,当初
のLPガス供給設備の設置費用は算定の基礎から除外した上,LPガス
消費設備及び給湯器の設置費用等を取得原価(基準価格)とし,経過年
数及び利用月数に対応してその金額を逓減させる算定方式に従って算定
した残存価格を請求しているところ,LPガス消費設備に係る本件設備
合意の実質的内容は上記のとおりであって,これが各被控訴人が本件設
備合意の原始的不能による不成立ないし錯誤無効の抗弁の理由として主
張しているように,各被控訴人所有の建物に付合しており,合意の時点
において,既にその所有権が各被控訴人に帰属していたとしても,利益
調整の合意として有効に存続していることは前記のとおりであり,その
意味で,LPガス消費設備に係る本件設備合意の内容に関する限度にお
いては,控訴人が,選択的にせよ,原審以来,停止条件付き売買契約を
主張しているのは,合意の実体から乖離するものであり,それ自体失当
といわざるを得ないから,その意味で,これに対する各被控訴人の上記
原始的不能ないし錯誤無効の抗弁も本件における真の争点とはなり得な
いが,これに対し,本件給湯器合意の実質的内容は,前記のとおり,停
止条件付き売買契約であることが認められるから,その意味で,これに
対する各被控訴人の上記原始的不能ないし錯誤無効の抗弁の成否は本件
における実質的争点として意味があるということができる。しかしなが
ら,本件給湯器が前記各被控訴人所有の建物に付合するものといい難い
こと,前記各被控訴人が本件給湯器の設置費用等を控訴人又は住宅販売
業者に支払ったことを認めるに足りる証拠がないことは前記のとおりで
あって,前記各被控訴人の上記抗弁を採用することができないことも前
記のとおりである。
(4)控訴人の各被控訴人に対する本件請求の原因に対する,各被控訴人
による控訴人の主張する本件合意の原始的不能を理由とする不成立ない
し錯誤無効の抗弁が失当であることは前記のとおりであるが,各被控訴
人は,仮定的に,控訴人の主張する合意が実質的内容において利益調整
のための合意であるとしても,各被控訴人において住宅販売業者に対し
て自宅の購入代金を支払うことによって控訴人が設置したLPガス消費
設備及び給湯器の設置費用等を弁済済みであることから,控訴人と各被
控訴人との間には不当利得関係が存在せず,その存在を前提とする控訴
人の主張する利益調整に関する合意は,原始的不能により成立していな
いか錯誤による無効である旨の主張をしている。しかしながら,前記認
定事実によれば,各被控訴人は,各自の自宅に設置されたLPガス供給
設備及びLPガス消費設備並びに給湯器について,その設置の費用を控
訴人が負担しているのであって各被控訴人が負担していないことを確認
しているのであるから,各被控訴人の上記の主張が抗弁たり得るには,
各被控訴人が住宅販売業者に対して自宅の購入代金を支払ったことによ
ってLPガス消費設備及び給湯器の設置費用等相当額を負担したという
だけでは足りず,住宅販売業者が控訴人に対してLPガス消費設備及び
給湯器の設置費用等を支払ったことにより弁済済みとなっており,その
ために控訴人と各被控訴人との間には各被控訴人のいうように不当利得
関係が存在しないということまで主張立証することを要するものという
べきである。確かに,乙第35号証から第42号証の各2には被控訴人
らの上記抗弁に一部沿い,各被控訴人が住宅販売業者に対して自宅の購
入代金を支払ったことによってLPガス消費設備及び給湯器の設置費用
等相当額を負担したという部分があるものの,LPガス供給設備及びL
Pガス消費設備の設置費用は一般の国民にとって決して少額ではなく,
さらに,給湯器の代金及び設置費用は相当多額であるにもかかわらず,
各被控訴人が自宅の土地建物を購入するために住宅販売業者と取り交わ
した契約書(甲32,乙14,15の1,16,17の1,18の1,
19の1,20の1,丙1)及び上記契約書作成の際に交付された重要
事項説明書(乙13,15の2,17の2,18の2,19の3,20
の2,丙2,3)には,各被控訴人が住宅販売業者からこれらの設置費
用等を請求され,これを支払った事実等,各被控訴人が住宅販売業者に
支払った売買代金の中に上記の設置費用等が含まれていたことを示す証
拠はなく(もっとも,乙19の2によれば,被控訴人Gが上記契約書を
作成する前に受領した「工事仕様書」と題する書面の「建築概要」の欄
の「給湯工事」の項目に「給湯器16号タイプ・台所・浴室・洗面化粧
台(以上3ヶ所)」と記載されていた事実が認められるが,前記のとお
り,被控訴人G宅には,控訴人がLPガス供給設備及びLPガス消費設
備を設置する前に控訴人以外の者によって既に給湯器が取り付けられて
いたのであって,この事実を併せて考えると,上記書面に給湯器のこと
だけが記載され,LPガス供給設備及びLPガス消費設備のことが特段
記載されていないことは,かえって,被控訴人Gが建築工事請負人(住
宅販売業者)に支払った売買代金の中にLPガス供給設備及びLPガス
消費設備の設置費用等が含まれていなかったことを裏付けるものという
ことができる。),かえって,当審において提出された被控訴人Aが自
宅の土地建物を購入する際に取り交わした「土地付建物売買契約書」と
題する書面(甲32,丙1。前記のとおり,この売買契約書は原審にお
いて被控訴人Aから証拠として提出されていなかった。)には,特約条
項として,「LPガスについては,売買代金にガス供給消費設備は含ま
れていない為,当社指定ガス供給業者との無償貸与契約書を締結してい
ただきます。」と明記されており,また,被控訴人Bが渡された重要事
項説明書(甲33,丙2。前記のとおり,この重要事項説明書は原審に
おいて被控訴人Bから証拠として提出されていなかった。)にも特記事
項欄に,「LPガスについては,売買代金にガス供給消費設備は含まれ
ていない為,当社指定ガス供給業者との無償貸与契約書を締結して頂き
ます。」と明記されており,さらに,被控訴人Dが渡された重要事項説
明書(甲34,丙3。前記のとおり,この重要事項説明書は原審におい
て被控訴人Dから証拠として提出されていなかった。)には,特記事項
として前記のとおり,「LPガスについては,売買代金にガス供給消費
設備は含まれていない為,当社指定ガス会社との無償貸与契約を締結し
ていただきます。」と明記されている。その他,本件全証拠によるも,
住宅販売業者が各被控訴人から受領した代金にLPガス消費設備及び給
湯器の設置費用等を含めていたことについても,また,住宅販売業者が
控訴人に対してLPガス消費設備及び給湯器の設置費用等を支払ったこ
とについても,いずれも認めることはできない。したがって,被控訴人
らの上記抗弁は失当であるといわざるを得ない。
なお,各被控訴人の上記主張内容に沿う上記乙号各証の意義は,各被
控訴人が各自の自宅の購入代金を支払ったことによってLPガス消費設
備及び給湯器の設置費用等も負担したと認識していたことを意味するも
のと解されるところ,前記の液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正
化に関する法律第14条及び液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正
化に関する法律施行規則第13条の趣旨,前記のような法制の下でLP
ガス供給設備及びLPガス消費設備並びに給湯器が設置され,LPガス
の供給が行われてきていることに加え,宅地建物取引業法第35条第1
項第4号の趣旨,LPガス供給設備及びLPガス消費設備並びに給湯器
の設置の物理的な形状,これらの機能,これらの購入及び設置費用の金
額等を併せて考慮すると,飲用水,電気及びガスの供給並びに排水のた
めの施設は全国の地域,地区を問わずに当然に整備されているというも
のではなく,住宅が建設された地域,地区によっては,当該住宅にこれ
らの施設を整備するために住宅主が特別の負担をしなければならないこ
とがあること,プロパンガスの供給を受けるためにもLPガス供給設備
及びLPガス消費設備の設置が必要であり,その設置に少なからぬ費用
がかかること,LPガス消費設備や給湯器の設置費用については,受益
者である住宅主が負担しなければならないことは,自己資金で住宅を購
入する年齢,社会的地位にある者であれば,通常は認識しているものと
いうことができる。そうすると,プロパンガスの供給を受けることとな
る住宅を購入する者は,住宅の売買代金又は請負代金にLPガス消費設
備及び給湯器の設置等に要する費用が含まれているかどうかを確認する
のが通例であり,これが含まれていない場合には,プロパンガスの販売
事業者に対して別途これを弁済しなければならないことも,一般的には,
当然認識し得る事項であるということができる。しかるに,本件におい
ては,各被控訴人が,LPガスの消費設備及び給湯器の設置費用等を控
訴人又は住宅販売業者等に対して支払ったことを直接裏付ける証拠はな
いのであり,かえって,被控訴人A,同B及び同Dについては,売買契
約書,重要事項説明書に「LPガスについては,売買代金にガス供給消
費設備は含まれていない為,当社指定ガス供給業者との無償貸与契約書
を締結していただきます。」などと記載されているのであるが,上記被
控訴人3名を含めて各被控訴人は,各自の自宅を購入したのとおおむね
同一の機会に,控訴人との間で本件契約書及び本件覚書を取り交わして
本件合意をしているのであって,このことによれば,各被控訴人も,プ
ロパンガスの供給を受けるためにはLPガス供給設備及びLPガス消費
設備の設置が必要であり,その設置に少なからぬ費用がかかること,そ
の費用のうち大半のものについては,受益者である住宅主が最終的には
負担しなければならないこと,各自の住宅の売買代金又は請負代金にL
Pガス供給設備及びLPガス消費設備並びに給湯器の設置等に要する費
用が含まれていないこと,したがって,各被控訴人は上記の費用をいま
だ支払っていないこと,それゆえに控訴人との間で本件合意をするもの
であることを認識しているものというべきであって,その意味で,乙第
35号証から第42号証の各2の内容は合理性を欠くものといわざるを
得ないものであって,採用することができない。
(5)独占禁止法違反の主張について
被控訴人らは,控訴人による本件訴訟の提起及びその主張内容が独占
禁止法第19条,第2条第9項,不公正な取引方法第15項に違反する
旨主張するが,前記のとおり,液化石油ガスの保安の確保及び取引の適
正化に関する法律第14条,液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正
化に関する法律施行規則第13条が,都市ガスの供給施設が整備されて
いない地域では一般家庭にLPガスを供給すべき必要性,公共性が大で
あるのに,住居にLPガスの供給設備及び消費設備を設置する費用は一
般消費者が負担するにしては決して少額ではなく,これを一般消費者が
負担しない限りLPガスを供給することができないというのでは酷な場
合があることにかんがみ,LPガスの消費設備についても,実情に応じ
て,液化石油ガス販売事業者が一般消費者からその設置費用を徴求せず,
液化石油ガス販売事業者の所有資産として減価償却することによりその
負担を解消することを容認し,このような選択をすることを可能にする
ための仕組みを考案したものであり,このような法制による一定のシス
テムが設けられることについては,その必要性もあり,また,合理性が
あることは前記のとおりである。したがって,本件合意における残存価
格の算定方法が不合理であって各被控訴人の負担すべき金額が不当に高
額であるなどの事情が存在するため,各被控訴人が控訴人との間のLP
ガス供給契約を解除することが強度に抑制されるものと認められ,公序
に反するものとして無効と判断され得る場合は別として(本件設備合意
が,LPガス供給契約が中途で解除された場合に被控訴人に負担させる
金額の算定の基礎にLPガス供給設備の設置費用まで含めている点につ
いては別途検討を要するが,前記のとおり,LPガス供給設備の設置費
用の金額がLPガスの消費設備の設置費用の金額に比べると相対的に少
額であること,本件設備合意の時点で各被控訴人にはLPガス供給設備
の設置費用の金額とLPガス消費設備の設置費用の金額とが明示されて
いることを考えると,本件設備合意における残存価格の算定方法が不合
理であって売買代金が不当に高額であるとまでいうことはできないし,
本件設備合意が,本件契約書の文言上上記のとおり被控訴人に負担させ
る金額の算定の基礎にLPガス供給設備の設置費用まで含めていること
により,各被控訴人に対して事実上LPガス供給契約の解除を強度に抑
制する機能を果たすものということもできない(なお,控訴人が本件請
求に当たりLPガス供給設備の設置費用を請求額の算定の基礎から除外
していることは前記のとおりである。)。),本件合意が,独占禁止法
第2条第9項第3号にいう「不当に競争者の顧客を自己と取引するよう
に誘引し,又は強制すること」その他の同項各号に該当するということ
はできないし,公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち,公正取
引委員会が指定するものという要件を満たすものということはできない
し,不公正な取引方法第15項に該当するということもできず,また,
本件訴訟の提起が同法に違反するということもできないというべきであ
る。被控訴人らの上記主張は採用することができない。
(6)特定商取引に関する法律第9条第1項に基づく解除の主張について
被控訴人Aほか3名は,各自の自宅に設置された給湯器について特定
商取引に関する法律第9条第1項の適用がある旨主張するが,同項は,
「販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において指定
商品(中略)若しくは指定権利若しくは指定役務につき売買契約若しく
は役務提供契約の申込みを受けた場合若しくは販売業者若しくは役務提
供事業者が営業所等において特定顧客から指定商品若しくは指定権利若
しくは指定役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた
場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者
が営業所等以外の場所において指定商品若しくは指定権利若しくは指定
役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合(営業所等に
おいて申込みを受け,営業所等以外の場所において売買契約又は役務提
供契約を締結した場合を除く。)若しくは販売業者若しくは役務提供事
業者が営業所等において特定顧客と指定商品若しくは指定権利若しくは
指定役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合における
その購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条及び次条におい
て「申込者等」という。)は,次に掲げる場合を除き,書面によりその
売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しく
は役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」とい
う。)を行うことができる。」と規定しているところ,前記認定事実に
証拠(甲32~34,丙1~3)及び弁論の全趣旨を併せて考えれば,
控訴人が被控訴人Aほか3名の各人の自宅にLPガス供給設備及び消費
設備並びに給湯器を設置した行為は,入居するための生活に必要な施設
であることから,上記各被控訴人との間でLPガス供給契約を締結する
とともに同契約に附随する本件合意をすることを目的としてその準備行
為として行われ,控訴人があらかじめ住宅販売業者との間で上記各自宅
に上記設備等を設置する旨の合意をした上で行われたものであり,他方,
上記各被控訴人は,住宅販売業者との間で,その指定するLPガス販売
事業者である控訴人との間でLPガス供給契約を締結する旨の特約をし
たものというべきであって,これらによれば,上記各被控訴人は,上記
の特約の下に各自の自宅を購入し,控訴人との間でLPガス供給契約及
び本件合意を締結することにより,これに先立って住宅販売業者が控訴
人との間で締結し,控訴人がその債務を履行していた給湯器の設置に関
する上記の契約について,同契約に基づく地位を承継したにすぎないも
のというべきであり,したがって,控訴人と上記各被控訴人との間の給
湯器の停止条件付き売買契約(本件給湯器合意)については,同条項が
本来予定している控訴人による上記各被控訴人に対する直接の訪問販売
という形態とはいい難いのみならず,上記各被控訴人は,上記各契約に
基づいて,控訴人から各給湯器の設置を受けて,これを一定期間使用し
ていたことは前記のとおりであり,既にその利益を相当程度享受してい
たのであって,契約締結後早期の段階における申込みの撤回を許容する
同条項の趣旨にそぐわない場合であるといい得るし,かつ,上記各被控
訴人が,LPガス供給契約を解約するに至ったのは,上記各給湯器の購
入及び設置に関する契約が同条項に該当するという理由に基づくもので
はなく,LPガス販売事業者を控訴人から他の業者に変えたいという動
機に基づくものであることも前記のとおりであるところ,以上のような
本件における事情に照らすと,控訴人と上記各被控訴人との間の上記各
給湯器の購入及び設置に関する契約が同条項に規定する契約に該当する
とまでいうことは困難である。これによれば,上記各被控訴人の上記主
張はその前提を欠くものというべきである。したがって,上記各被控訴
人の上記主張は,採用することができない。
3控訴人は,被控訴人らに対して本件合意に基づいて請求するに当たり,
当初のLPガス供給設備の設置費用は算定の基礎から除外し,LPガス消
費設備及び給湯器の設置費用等を取得原価(基準価格)とし,経過年数及
び利用月数に対応してその金額を逓減させる算定方式に従って算定した金
額(残存価格)を請求するものであるところ,前記認定事実によれば,本
件合意において,本件契約書のLPガス設備施工年月日欄に記載された年
月日の翌日を法定償却期間の起算日とし,かつ,半年未満の期間について
は償却年数に算入しないこととする旨合意されており,後者の点について
は半年以上1年未満の期間につき当該月数を1年に切り上げて経過年数に
加えるのが相当であると解される。また,本件合意における給湯器につい
ての利用月数も上記の起算日から算定するのが相当である。そこで,上記
の各点を踏まえて控訴人の被控訴人らに対する請求の基礎となる金額を算
定すると,次のとおりとなる。
(1)被控訴人Aについて(認容額の元本32万4413円)
本件合意所定の算定式における経過年数の起算日は平成13年8月2
1日であり,LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした日は平成
15年2月26日であるから,LPガス消費設備に関する経過年数は2
年となり,給湯器に関する利用月数は18か月となる。
(LPガス消費設備)
8万4880円-8万4880円×0.9×0.0666×2=7万
4705円(計算の過程で円未満の金額が生じた場合はこれを切り捨て
て計算する。以下同じ。)
(給湯器)
27万5600円×(120-18)÷120=23万4260円
(7万4705円+23万4260円)×1.05=32万4413円
(2)被控訴人Bについて(認容額の元本31万6539円)
本件合意所定の算定式における経過年数の起算日は平成13年8月9
日であり,LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした日は平成1
5年2月27日であるから,LPガス消費設備に関する経過年数は2年
となり,給湯器に関する利用月数は18か月となる。
(LPガス消費設備)
7万6360円-7万6360円×0.9×0.0666×2=6万
7206円
(給湯器)
27万5600円×(120-18)÷120=23万4260円
(6万7206円+23万4260円)×1.05=31万6539円
(3)被控訴人Cについて(認容額の元本28万5645円)
本件合意所定の算定式における経過年数の起算日は平成14年11月
15日であり,LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした日は平
成15年7月11日であるから,LPガス消費設備に関する経過年数は
1年となる。
被控訴人Cに対する請求については,控訴人と被控訴人Cとの間の本
件合意に基づく残存価格の算定に計数上誤りはなく,理由があるという
べきである。
(4)被控訴人Dについて(認容額の元本30万1542円)
本件合意所定の算定式における経過年数の起算日は平成13年8月9
日であり,LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした日は平成1
5年5月27日であるから,LPガス消費設備に関する経過年数は2年
となり,給湯器に関する利用月数は21か月となる。
(LPガス消費設備)
6万7960円-6万7960円×0.9×0.0666×2=5万
9813円
(給湯器)
27万5600円×(120-21)÷120=22万7370円
(5万9813円+22万7370円)×1.05=30万1542円
(5)被控訴人Eについて(認容額の元本7万6388円)
本件合意所定の算定式における経過年数の起算日は平成12年12月
2日であり,LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした日は平成
15年2月28日であるから,LPガス消費設備に関する経過年数は2
年となる。
被控訴人Eに対する請求については,控訴人と被控訴人Eとの間の本
件合意に基づく残存価格の算定に計数上誤りはなく,理由があるという
べきである。
(6)被控訴人Fについて(認容額の元本4万5386円)
本件合意所定の算定式における経過年数の起算日は平成10年2月1
日であり,LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした日は平成1
5年9月1日であるから,LPガス消費設備に関する経過年数は6年と
なる。
(LPガス消費設備)
6万7500円-6万7500円×0.9×0.0666×6=4万
3225円
4万3225円×1.05=4万5386円
(7)被控訴人Gについて(認容額の元本7万5534円)
本件合意所定の算定式における経過年数の起算日は平成7年11月2
0日であり,LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした日は平成
14年9月24日であるから,LPガス消費設備に関する経過年数は7
年となる。
(LPガス消費設備)
12万3940円-12万3940円×0.9×0.0666×7=
7万1938円
7万1938円×1.05=7万5534円
(8)被控訴人Hについて(認容額の元本7万7076円)
本件合意所定の算定式における経過年数の起算日は平成9年9月12
日であり,LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした日は平成1
4年7月29日であるから,LPガス消費設備に関する経過年数は5年
となる。
(LPガス消費設備)
10万4820円-10万4820円×0.9×0.0666×5=
7万3406円
7万3406円×1.05=7万7076円
4まとめ
以上によれば,控訴人の被控訴人C及び被控訴人Eに対する請求はすべ
て理由があり,控訴人のその余の被控訴人らに対する請求は上記の限度で
理由がある。
第4結論
よって,原判決のうち控訴人の被控訴人C及び被控訴人Eに対する請求
を棄却した部分は不当であるからこれらを取り消して控訴人の上記被控訴
人2名に対する請求をすべて認容し,その余の被控訴人らに対する請求を
棄却した部分については本件控訴は一部理由があるから原判決を一部変更
して前記の限度で控訴人の上記被控訴人2名以外の被控訴人らに対する請
求を認容することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第21民事部
裁判長裁判官浜野惺
裁判官高世三郎
裁判官長久保尚善は,転任のため署名押印することができない。
裁判長裁判官浜野惺

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弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
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我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
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◎事務所の名称は自由に選択可能
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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