弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
原決定を取消す。
本件訴の変更の申立を却下する。
抗告費用は相手方の負担とする。
○ 理由
一、本件抗告申立の趣旨および理由は別紙抗告状のとおりである。
二、本件の広島地方裁判所昭和四七年(行ウ)第一九号監査請求結果取消請求事件
記録によると、相手方らは、昭和四七年三月二四日広島市西部開発事業に伴う漁業
補償の支払について違法または不当な公金の支出があるとして、地方自治法第二四
二条に基き広島市長Aの不正行為是正措置の監査請求を求めたところ、同年五月二
三日同市監査委員Bら四名から違法または不当の公金支出ありとは認められないか
ら請求は理由がないとする旨の監査結果の通知があつたこと、そこで相手方は同年
六月二二日右監査委員四名を被告として監査請求結果の取消を求める旨の訴を提起
したが、その後昭和四八年四月二四日被告をAとし、かつ広島市に代位して同人に
対し損害賠償を求めることを内容とする訴の変更申立をしたこと、これに対して原
審は地方自治法第二四二条の二第六項、行政事件訴訟法第四三条、第二一条第一項
により変更を許可したことがそれぞれ認められる。
三、右事実によると、相手方は地方自治法第二四二条の二に基く住民訴訟として監
査結果の通知をうけた日から三〇日以内に同条の二第一項一ないし四号所定の訴を
提起しなければならないところ、誤つて変更前の訴を提起したものと考えられる。
そして本件は訴(請求)の変更に伴い被告を変更したものであるが、このような変
更が許されるかどうか検討する。
地方自治法第二四二条の二第六項によると、同条に規定する住民訴訟について行政
事件訴訟法(以下単に法という)第四三条が適用され、同条第一、二項の訴訟につ
いては法第二一条の準用があることは明らかである。しかし法第二一条が民事訴訟
法の建前とする当事者恒定主義の例外として、行政庁を被告とする処分又は裁決の
取消請求を同条所定の国又は公共団体を被告とする損害賠償その他の請求に変更す
ることを認めたのは、法が抗告訴訟の被告適格を本来実体法上の権利能力のない行
政庁と定めたことから生じる実際的不都合を解決することを目的としたものである
ことは明らかであるが、そのことは同時に右規定の背後には抗告訴訟の形式的被告
は行政庁であつても、その実質的効果の帰属主体は国又は公共団体であるとの理論
的基盤が存することを意味するものともいえる。
従つて、法二一条は右理論的基盤を逸脱して拡張解釈されるべきではなく、同条所
定の国または公共団体以外の私人等を被告とする訴に変更することは許されないと
ころといわねばならない。
もつとも、右のように厳格に解すると、地方自治法第二四二条の二の住民訴訟につ
いては、同条第一項二号の請求を同項の他の各号の請求に変更することは不能であ
り、また通常の国又は公共団体を相手とする民事的な損害賠償等の請求に変更する
ことが可能な場合は訴の利益等の関係で稀有と考えられるから、右の住民訴訟につ
いては法第二一条は空文に等しいものといえないことはない。そこで、地方自治法
第二四二条の二の住民訴訟に関する限り、その特殊な制度目的に照らし同条第一項
各号の請求相互間では法二一条所定の制限を拡張して被告適格を認めるべきである
との反対意見も考えられるが、仮にこの意見に従うとしても、法第二一条について
は法第一五条第三項のような出訴期間に対する手当の規定がないのであるから、前
記住民訴訟につき定められた短い出訴期間の下で有効に訴の変更(新訴の提起)を
なしうる場合は極めて制限され実際上所期の効果は望めないから、右反対意見は採
用に値しない。(現に本件においても新訴が出訴期間を経過していることは前記二
に説示したところから明らかである。)なお、地方自治法第二四二条の二第一項各
号の請求間において出訴期間中に被告を異にする他の請求に変更しようとする場合
には、まず以て法第一九条により関連請求として追加的併合を求めるべきであろ
う。
してみると、本件訴の変更における旧訴が地方自治法第二四二条の二にもとづく住
民訴訟であるかどうかについては問題があるが、それがいずれであるにせよ、本件
訴の変更は許すべきでないといわねばならぬ。
四、よつて相手方の訴変更許可申立を認容した原決定は不当として取消し、相手方
の本件訴の変更の申立を却下することとし、抗告費用は相手方の負担とすることと
して主文のとおり決定する。
(裁判官 胡田 勲 西内英二 藤本 清)
(別紙)
抗告の趣旨
一 原決定を取り消す。
二 相手方の訴えの変更申立てを却下する。
三 申立費用は、相手方の負担とする。
との判決を求める。
抗告の理由
行政事件訴訟法第二一条に定める訴えの変更を許すためには、その前提として住民
訴訟としての取消訴訟が裁判所に適法に係属していることを要する。
しかるに、原告の本訴は監査委員に対する訴であつて、かかる訴は地方自治法第二
四二条の二の認めないところであり、本来不適法として却下すべきであるにもかか
わらず、裁判所は、これを看過し、たまたま本件訴えの変更の申立てを受けるや、
檀に行政事件訴訟法第二一条を適用し訴えの変更を容認したことは違法といわねば
ならない。
しかのみならず、同条は、あくまでも取消訴訟の目的たる請求を、当該処分又は裁
決に係る事務の帰属する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求への変更す
なわち、国や公共団体を被告とする当事者訴訟又は通常訴訟に変更することを認め
る規定であつて、私人の当事者への変更までも含むものではない(南博方編注釈行
政事件訴訟法一九三頁参照)。
原決定は、法律の解釈を誤つたものであり違法であるから取り消されるべきもので
ある。
主文
昭和四七年(行ウ)第一九号監査請求結果取消請求事件の訴を、Aを被告とする損
害賠償請求の訴えに変更することを許可する。
事実および理由
申立人の申立とその原因は、別紙のとおりであるが、当裁判所は、地方自治法二四
二条の二、六項、行政事件訴訟法四三条により同法二一条一項を準用して、申立を
理由ありと認め、主文のとおり決定する。
(別紙)
準備書面
原告  C
被告  B
外三名
昭和四七年(行ウ)第一九号監査請求結果取消請求事件
一、請求原因の補正
西部開発事業に伴なう漁業補償金の支出が違法かつ不当に支出されているとして地
方自治法第二四二条の一に基づいて監査請求をしたが監査委員は「請求の理由がな
い・・・・・・・・・」との態度をとつたので同法第二四二条の二第一項二号前段
によつて住民訴訟をおこしたがこれを同法第二四二条の二の四号普通地方公共団体
に代位して行う「損害賠償の請求」として補正する。
二、被告の変更について
被告を監査委員から広島市長Aとしたが、これを市長の職にある個人Aと変更した
いのでよろしくお取扱い下さい。
昭和四八年四月二四日
原告  C

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