弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人鈴木直二郎の控訴趣意は記録中の同弁護人提出の控訴趣意書記載のとおり
であるから之を引用する。
 所論は要するに原判決が被告人に対し懲役六月の実刑を科しその刑の執行を猶予
し得べきにも拘らず執行猶予の言渡しをしなかつたのは刑の量定重きに過ぎ失当で
あるというのであるが、記録中の前科調書及び札幌地方検察庁検事沢井勉より裁判
官に宛てた裁判の執行状況に関する件回答と題する書面の記載によれば被告人は昭
和二十一年十一月二十九日札幌地方裁判所において窃盗、贓物牙保罪により懲役一
年(その後懲役九月七日に変更)罰金二百円の実刑に処せられ、昭和二十二年八月
二十五日該判決は確定したがその執行を受けること<要旨>なく昭和二十七年八月二
十四日時効完成により結局右刑の執行の免除を得たものであることが認められる、
に被告人が右刑の執行の免除を得たのは昭和二十七年八月二十五日(正確
にいうならば八月二十四日の満了と同時)であるから、被告人に対しては右昭和二
十七年八月二十五日から五年を経過した後でなければ刑の執行猶予を言渡し得ない
ことは刑法第二十五条の解釈上明かなところである、右に反する所論の見解には賛
同し難い、次いで原審の量刑の当否につき記録を精査し被告人の経歴、境遇、本件
犯行の動機、態様、前科関係その他諸般の情状を綜合して考察すると原審が本件に
つき被告人に対し懲役六月(未決勾留二十日算入)の実刑を科したのは蓋し相当で
あつて刑の執行を猶予すべきものとは認められない、論旨は理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条に則り本件控訴を棄却すべきものとし主文のと
おり判決する。
 (裁判長裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 蓮見重治 裁判官 細野幸雄)

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