弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岩田宙造、同伊達利知、同芦苅直己の上告理由第一点について。
 所論昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官マックアーサー元帥書簡による指
令が、日本国憲法外において法律的効力を有し、牴触する限りにおいて憲法その他
の国内法規の適用を排除するものであることは、所論のとおりである。しかし、前
記マ書簡は、具体的に人を指名してその解雇を命令したものとは認められない。ま
た、本件において、マ元帥またはその部下が、具体的に人を指名してその解雇を命
令したこと、および右指令履行のために指令該当者の具体的判断を同司令官の補助
機関としてすることを上告会社に一任したことは、本件事実審において認めないと
ころである。当時連合国の日本管理は、原則として間接管理の方式をとり、たとい
マ元帥の指令に関する事項であつても、本件のように解雇すべき指令該当者の具体
的指定は、事業者の責任における自主的判断によつてなさるべきであるが、その解
雇につき当事者間に争の存する場合には、日本の裁判所の裁判によつて決せらるべ
きものといわなければならない。すなわち、マ書簡には、単に抽象的に「共産党員
とその支持者」を排除すべき旨が示されているに過ぎないのであるから、指令該当
者として解雇された者が、共産党員又はその支持者でないことを理由として解雇の
効力を争う場合には、当然日本の裁判所の裁判によつてその争訟は決定さるべきも
のである(判例集六巻四号三九二頁参照)。上告会社が、マ書簡による指令の具体
的該当者の判断をマ元帥又はその部下の補助機関としてすることを一任されたとい
う所論前提は、本件事実審の認定に副わないものであり、また同指令の趣旨を誤解
したものといわざるを得ない。したがつて、この前提の下に述べられた論旨は、採
ることを得ない。
 同第二点について。
 所論は、原判決は、前示のごとく被上告人両名に対する本件解雇が、一面形式的
に指令該当者というも、それは上告会社の自主的判断の誤りに基く解雇であると認
定しながらも、他面被上告人両名の労働組合活動が実質的な主要根拠をなすものと
推認するに難くないと判示しておるが、かかる認定はその理由齟齬し実験則に反し
たものとして破棄さるべきものである、と主張する。しかし、原判決は、所論のい
うように客観的には錯誤があつたとしても、主観的にはその錯誤に気づかずマ指令
を実行する意思であつたこと、ならびにかかる主観的意思のみによつて解雇が行わ
れたことを認めず、原審の引用する第一審判決認定の諸般の事実に徴し、本件解雇
は不当労働行為の意思をもつてなされたものと推認すべきものとしたものであつて、
その認定は当審においても是認するができ、原判決には所論実験則違反の違法も認
められない。
 また本件解雇は、マ書簡に基く指令に関するものであるが、指令該当者として解
雇された者が、共産党員又はその支持者でないことを理由として解雇の効力を争う
場合には、当然日本の裁判所の裁判によつてその争訟は決定さるべきものであるこ
とは、すでに第一点において説明したとおりである。その訴訟手続における挙証責
任において本件は一般事件と異るべきであるという所論は、是認することができな
い。
 同第三点について。
 所論は、原判決が本件解雇に当つての事実認定は、上告会社の自主的判断の権能
に基くものであることを容認したことを前提としているが、すでに第一点において
判示したとおり、原判決は、前記指令履行のために指令該当者の具体的判断を同司
令官の補助機関としてすることの権限を、上告会社に一任したとは認定していない
のである。それ故、所論は原判示に副わない事実を前提とするものであつて採るこ
とを得ない。
 次に、所論は、原判決が本件解雇は被上告人両名の労働組合における正当な活動
を、その主要な根拠としてなされたものと推認したことについて何等の証拠がない、
と主張する。しかし、原判決は、その引用する第一審判決認定の諸般の事実に徴し
て右推認をしたものであり、当裁判所においてもこれを是認することができるから、
論旨は採用することを得ない。
 さらに、原判決は、被上告人らが共産主義者又はその支持者に該当するや否やに
ついて、上告人が自主的判断を誤つたに過ぎないものとのみは認められない旨を明
らかに判示し、本件解雇を不当労働行為と認定しているのであるから、所論のよう
に「判断の順序として、単に自主的判断が誤つたに過ぎぬ場合についても判定をな
すべきは、当然の事理である」ということはできない。それは、判示としては、本
件には全く不必要なものに属する。それ故、原判決には、この点についても所論の
違法はない。
 同第四点について。
 原判決は、前述のとおり、本件解雇は、被上告人らの労働組合における正当な活
動をその主要な根拠としてなさたたものと推認するに難くないから、不当労働行為
と認定したものである。そして、上告人がマ書簡による指令を実施するに当り、単
にその自主的判断(被上告人らが共産主義者またはその支持者に該当するや否やに
ついての)を誤つたに過ぎないものとのみは解し得ず、本件解雇を不当労働行為と
認定する妨げとなるものではない、と判示している。所論は、不当労働行為の故意
を推認するがためには、マ書簡による指示に藉口、便乗せんとした故意について説
示、認定をしなければならない旨を主張するが、不当労働行為の成立を認めるため
には、原判決の前記判示をもつて事足り、それ以上所論のような説示、認定を必要
とするものということはできない。それゆえ、原判決には所論の違法はない。
 よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
 裁判官岩松三郎は退官につき評議に関与しない。
            裁判官    真   野       毅

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛