弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1被告が,平成24年9月4日付けでした,原告の同年8月6日付異議の申出
を棄却するとの決定を取り消す。
2訴訟費用は,被告の負担とする。
第2事案の概要
1平成24年7月29日に行われた山口県知事選挙(以下「本件選挙」とい
う。)について,選挙人である原告が,被告に対し,宇部市開票区の投票開票
手続(以下「本件開票手続」という。)が公職選挙法(以下「法」という。)
の定める手続に違反するので同開票区の選挙が無効になるとして,同年8月6
日付けで異議の申出(以下「本件異議申出」という。)をしたが,被告は,同
年9月4日付けでこれを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)をし
た。
本件は,原告が,被告に対し,本件決定の取消しを求める事案である。
2前提となる事実(争いがないか後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる
事実)
(1)本件選挙は,平成24年7月29日に行われた。
(2)宇部市選挙管理委員会(以下「市選管」という。)は,本件選挙について,
宇部市開票区の選挙人であるA(市選管委員長であった。)を同開票区の開
票管理者(法61条)に選任した。
(3)本件選挙のB候補は,宇部市開票区の選挙人である原告を,その承諾を得
た上で,同開票区における開票立会人として届け出たので,原告は,同開票
区における開票立会人(法62条)となった。
(4)原告は,平成24年8月6日,被告に対し,本件開票手続が法の定める手
続に違反するとして,宇部市開票区の選挙を無効とする決定を求めて本件異
議申出をした(甲2の1)。
これに対し,被告は,平成24年9月4日,本件開票手続は法の定める手
続に違反しないとして,本件異議申出を棄却する本件決定をした(甲2の
2)。
原告は,同月6日,上記決定書を受領し,同年10月2日,当裁判所に対
し,本件訴訟を提起した。
3争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は,本件選挙の無効原因(法の定める開票手続に違反し,かつ,
これが選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあること)の存否である。
(原告の主張)
(1)無効原因1
開票立会人は,当該選挙の投票を点検しなければならない。ところが,開
票管理者Aは,本件開票手続において,立会人である原告が,総投票数5万
2969票のうち,1万0500票しか点検しておらず,4万2469票の
点検が未了であるにもかかわらず,投票の点検を終了させた。また,開票管
理者Aは,疑問票とされた票についても,開票立会人である原告の意見を聴
くことなく,その効力の決定をした。
したがって,本件開票手続は,法66条,67条に違反しているので,宇
部市開票区の選挙は無効である。
(2)無効原因2
開票管理者Aは,開票作業中は,候補者の事務所関係者を開票所に入れて
はならず,また,候補者の事務所に対し,候補者推薦の開票立会人の投票点
検作業の終了を求めることも許されない。ところが,開票管理者Aは,開票
作業中であるにもかかわらず,原告を推薦したB候補の事務所関係者を開票
所に入れて,原告の投票点検作業を阻害させたばかりか,B候補の事務所に
対し,投票点検作業の終了を求め,同事務所にこれを了承させた。
したがって,本件開票手続は,法74条,58条に違反しているので,宇
部市開票区の選挙は無効である。
(3)無効原因3
開票立会人は,投票の点検を終了すると,開票録に署名しなければならな
い(法70条)。ところが,開票立会人である原告は,開票録に署名してい
ない。
したがって,本件開票手続は,法70条に違反しているので,宇部市開票
区の選挙は無効である。
(4)選挙の結果に異動を及ぼすおそれ
投票の点検が杜撰で,法の規定に違反するのであれば,選挙の結果に異動
を及ぼすおそれがあるというべきである。
(被告の主張)
(1)無効原因1について
開票管理者は,開票手続を管理し,その結果に責任を負うものであり,開
票立会人が開票事務の円滑な執行を妨げる場合には,その責任において,必
要な措置をとり得る。
原告は,他の開票立会人ら及び開票管理者Aが投票の点検を終えたのに,
開票管理者Aの指導,指示に従わず,疑問を生じさせない票について,独自
の見解により,更に一枚ずつ点検しようとし,適正・迅速な開票手続を阻害
した。
そこで,開票管理者Aは,開票事務の円滑な執行のため,原告の点検完了
を待たずに開票手続を進めたものであり,法の規定に違反したものではない。
(2)無効原因2について
候補者の届出による開票立会人は,公益のためのみならず,候補者の利益
を代表する立場で,開票手続に関わるものである。したがって,原告が,適
正・迅速な開票作業を阻害したことは,原告を開票立会人として届け出たB
候補の利益にもならないこととなる。
そこで,開票事務を統括する開票管理者Aは,開票事務の円滑な執行のた
め,原告を推薦したB候補の事務所関係者に対し,原告の説得のため開票所
へ立ち入ることを認めるとともに,事情を説明して,原告の点検・立会が機
能していないことについて事実上の了解を得たのであり,法の規定に違反し
たものではない。
(3)無効原因3について
原告は,開票録に署名する義務があるにもかかわらず,署名しなかったも
のであるから,法に違反するものではない。
(4)選挙の結果に異動を及ぼすおそれについて
「選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある」とは,当該選挙の管理執行の
手続に関する規定違反がなかったならば,選挙の結果につきあるいは異なっ
た結果を生じたかもしれないと考えられる場合をいうのである。規定違反が
あったとしても,それが,選挙の自由公正に影響がない場合は,違反の有無
にかかわらず,同じ結果を得られるにすぎないから,選挙をやり直す必要は
ない。本件では,仮に選挙の規定に形式的に違反したものであるとしても,
そのようなおそれはない。
第3当裁判所の判断
1前記前提となる事実,証拠(甲4の1,2,甲5の1ないし4,甲6,乙1
ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,本件開票手続に関し,次の事実が認め
られる。
(1)本件選挙の開票事務は,各市町の選挙管理委員会が執行することとなり,
宇部市開票区においては,市選管(宇部市選挙管理委員会)がこれを執行す
ることとなった。
市選管は,法61条に基づき,本件選挙の選挙権を有する者の中から,市
選管委員長のAを開票管理者に選任した。開票管理者は,他の何人からの指
揮監督を受けずに独立した地位を有し,投票の点検(法66条2項),投票
の効力の決定(法67条),開票の結果の報告(法66条3項),開票録の
作成(法70条),開票所の取締(法74条)等の開票に関する事務を執行
し,開票事務従業者(開票立会人を含む)の指揮統括に当たるものである。
候補者は,開票区内の選挙人名簿に登録されている者の中から,開票立会
人となることについて,本人の承諾を得て定め,市町の選挙管理委員会に届
け出ることができるところ,原告は,B候補の届出により,宇部市開票区の
開票立会人となった。開票立会人は,候補者の利益の代表及び一般選挙人の
公益の代表の立場から,開票に関する事務の公正な執行を監視するとともに,
開票管理者を補助して,開票に関する事務に参画し,その公正な執行を確保
することを任務とするもので,具体的には開票手続の立会い(法66条),
開票管理者が行う投票の効力の決定に際しての意見の陳述(法67条)等を
行うものである。なお,宇部市開票区では,原告の外,他の候補者の届出に
よる者1名,市選管が選任した者1名(合計3名)が開票立会人となった。
(2)市選管担当者は,平成24年7月29日午後8時15分ころ,開票管理者
Aの指示に基づき,事前の説明として,開票立会人らに対し,開披,点検,
集計までの開票事務の流れ及びこれに基づく開票立会人の任務について説明
した。その中で,市選管担当者は,無効となる投票について説明した上で,
投票の効力は,立会人の意見を聴き,最終的には開票管理者Aが決定する旨
の説明をした。これに対し,原告は,「意見を聴くだけなら立ち会う意味が
ないので,多数決で決めればよい」旨発言して不満を示した。これに対し,
市選管担当者は,「投票の効力は,開票立会人の意見を聴き,開票管理者が
決定しなければならない」とする法67条の規定等を説明したが,原告は納
得しなかった。次に,市選管担当者は,計数機による票数の確認について,
100票単位で2つの機種を用いて1回ずつ合計2回行うこと及び事前に開
票所内で計数機のテストを行うことを説明した。最後に,市選管担当者は,
中間開票状況の発表時間(午後9時30分,同10時,同10時30分,同
11時)等を伝え,開票事務への協力を依頼する旨述べた。
(3)ア開票は,開票管理者Aの指揮のもと,同日午後9時10分ころ,開始さ
れ,開票事務従事者約200名が,18台の開披台において開披及び点検
を行い,候補者ごとに,有効であることに問題はないと判断した票(以下
「有効票」という。),有効又は無効の判定を要する票(以下「疑問票」
という。),白紙投票,点字投票及び候補者以外の氏名の記載等がある票
(これらを,以下「その他の票」という。)に分類した。
イ市選管は,票の計数機について,事前に全台の調整確認をしていたが,
開票手続開始後,開票管理者A及び開票立会人らの面前で,計数機の2つ
の機種について各1台のテストを行い,これらが正常に作動することを確
認した。
ウその後の開票事務手続は,6系列に分かれて,各系列ごとに,次のとお
り行われた。
有効票については,候補者ごとに他の候補者の票が混じっていないか,
疑問票等がないかを人を替えて2回点検,確認した上で,計算1係に回付
する。計算1係は,計数機で票を数え,100票ごとに輪ゴムで束ねて計
算2係に回付する。計算2係は,輪ゴムで束ねたままの票を計算1とは異
なる種類の計数機で数えて,100票に相違なければ付箋係に回付する。
付箋係は,候補者名を確認した上で,100票の束を5つ重ねた500票
の束に候補者氏名が記載された付箋を付して集計1係に回付する。集計1
係は,これを集計し,票数を記入した後,開票立会人らに同票を回付する。
開票立会人らは,それぞれ,500票の束で付箋が付けられた有効票を点
検し,点検後付箋に押印して,開票管理者Aに回付する。
疑問票及びその他の票は,効力1係及び効力2係が,有効又は無効の判
断及び無効票の事由別仕分けを行い,集計1係に回付する。集計1係は,
集計した投票数を記入した後,開票管理者Aに票を回付し,開票管理者A
は,開票立会人らの意見を聴いて,有効,無効を決定する。
開票管理者Aが点検,押印した有効票は,集計2係に回付され,集計2
係は集計票に記入する。作業終了後,開票管理者Aが上記手続に基づき開
票録を作成し,開票立会人らがこれを確認し,それぞれ署名する。また,
開票管理者A及び開票立会人らは効力決定済みの投票の梱包を封印する。
(4)原告は,計算係に票が回付され始めた同日午後9時25分ころ,市選管担
当者に対し,大きな声で,面前でのテストが行われていない残り10台の計
数機についても面前でテストをするよう求めた。これに対し,市選管担当者
は,開票管理者Aの指示に基づき,事前に確認していることを説明したが,
原告は,これに納得せず,不満を抱いた。
原告は,同日午後9時30分ころ,集計1係から,初めて点検用の500
票の束(原告を立会人として届け出た候補者であるB候補の票であった。)が
回付され,これを受け取ったが,「計数機は信用できないので自分で数え
る」旨述べて,上記束をばらして,票を1票ずつ数え始めた。そのため,原
告のところに票が滞留する状況となった。市選管担当者は,開票管理者Aの
指示に基づき,原告に対し,迅速な開票への協力を繰り返し求めたが,原告
は,「何時間かかろうが関係ない」旨述べ,上記点検作業を止めなかった。
そこで,市選管担当者は,原告の前に予備の計数機を置いて,上記500票
のうちの100票を計算し,数に相違ないことを示した。これに対しても,
原告は,協力要請に応ぜず,かえって,今度は,1票ずつ票の記載内容を確
認し,票を数え始めた。
(5)疑問票については,開票立会人席から離れた協議台において,開票管理者
A及び開票立会人らが集まり,効力係からの説明を聴いて,開票立会人らが
意見を述べ,開票管理者Aがその効力を決定することが予定されていた。し
かし,原告は,協議台に来ず,疑問票の効力決定について協力する姿勢を見
せなかった。そこで,開票管理者A及び原告以外の開票立会人らが,同日午
後10時30分ころ,原告のところに集まり,効力係が,15票の疑問票に
ついて,1票ずつ説明を行った。これに対し,原告は,「自分は見ない」旨
述べて,上記疑問票の確認をしようとせず,格別の意見も述べなかった。開
票管理者Aは,上記疑問票について,原告以外の開票立会人らの意見を聴い
て,投票の効力を決定した。
(6)市選管担当者は,開票管理者Aの指示に基づき,B候補の事務所に対し,
原告の上記状況について電話で説明した。開票管理者Aは,翌日午前0時2
5分ころ,迅速な開票に協力するよう原告を説得させるため,来所した同事
務所の関係者を開票所に入れた。同事務所の関係者は,原告が投票の点検を
行っている席まで赴き,原告に対し,迅速な開票に協力するよう説得しよう
としたが,原告は,大声で怒鳴ったりして,これに応じず,1票ずつ票の記
載内容を確認しながら票を数えることを続け,持っていた投票用紙を床に散
らしたりした。
(7)開票管理者Aは,同日午前0時30分ころ,原告の言動は開票事務の進行
を妨げ,平穏な進行を困難にさせるものと判断し,専門的知識を有する市選
管から意見を聴取した上,市選管担当者に対し,点検に要する通常の時間
(1時間)をみて,原告に午前1時30分までに投票の点検を終えるよう通
告することを指示し,市選管担当者は,そのころ,原告に対し,上記通告を
した。
他方,市選管担当者は,同日午前0時50分ころ,B候補の事務所から,
投票の点検作業の終了を了承する旨の文書をファックスにより受領した。
(8)開票管理者A及び原告以外の開票立会人らは,同日午前1時30分までに,
原告が点検した1万0500票の回付を受けて投票の点検を行い,残りの約
4万2000票の有効票についても,回付を受けて投票の点検を行った。な
お,開票管理者A及び原告以外の開票立会人が,投票の点検に要した時間は,
1時間程度であった。
開票管理者Aは,同日午前1時30分ころ,原告に対し,事前に通告して
いた時間となったこと,B候補の事務所からも投票の点検の終了を了承する
文書を受領したことを告げ,開票の点検の終了を宣言し,票を確定した。こ
の時点で,原告が点検した票は,投票総数5万2969票のうち,約1万0
500票であった。同様のペースで原告が点検した場合,終了まで更に16
時間を要すると予想された。
(9)市選管担当者は,その後,開票管理者Aの指示に基づき,原告に対し,開
票録への署名及び投票の梱包の封印を求めたが,原告はこれを拒否した。
なお,開票事務従事者(約200名)による開披,分類,点検,計数機に
よる集計に疑問を抱かせるような事情は何ら存しなかった。
2無効原因1について
(1)原告は,開票管理者Aが,開票立会人である原告の投票の点検が終わって
いないにもかかわらず,投票の点検を終了させ,また,疑問票とされた票に
ついて,開票立会人である原告の意見を聴くことなく,その効力の決定をし
たから,本件開票手続は,法66条,67条に違反しているので,宇部市開
票区の選挙は無効であると主張する。
(2)確かに,前記1のとおり,開票管理者Aは,開票立会人である原告が投票
の点検を続けていたものの,投票の点検を終了させ,また,疑問票とされた
票について,開票立会人である原告が格別の意見を述べていないものの,そ
の効力の決定をしている。
(3)しかし,前記1のとおり,原告は,市選管担当者が投票の効力は開票立会
人の意見を聴き最終的には開票管理者が決定する旨法67条の説明をしたの
に対し,「意見を聴くだけなら立ち会う意味がないので,多数決で決めれば
よい」旨発言して不満を示し,計算係に票が回付され始めると,市選管担当
者に対し,面前でテストが行われなかった10台の計数機についても面前で
テストをするよう求め,これが容れられなかったことに不満を抱き,初めて
点検用の500票の束を受け取ると,「計数機は信用できないので自分で数
える」旨述べて,500票の束をばらして,票を1票ずつ数え始めて,原告
のところに票が滞留する状況を作出し,市選管担当者が,開票管理者Aの指
示に基づき,原告に対し,繰り返し迅速な開票への協力を求め,原告の前に
予備の計数機を置いて,上記500票のうちの100票を計算し,数に相違
ないことを示すと,今度は,「市の職員が信用できないので,内容を確認す
る」旨述べて,1票ずつ票の記載内容を確認し始めたのである。また,原告
を投票立会人と届け出たB候補の事務所関係者が,原告に対し,迅速な開票
に協力するよう説得しようとすると,大声で怒鳴ったりしてこれに応じず,
投票用紙を床に散らしたりし,1票ずつ内容を確認しながら票を数えること
を止めなかったのである。そこで,開票管理者Aは,原告の言動は開票事務
の進行を妨げ,平穏な進行を困難にさせるものと判断し,専門的知識を有す
る市選管担当者から意見を聴取した上,点検に要する通常の時間(1時間)
をみて,市選管担当者を介して,原告に午前1時30分までに投票の点検を
終えるよう通告し,午前1時30分まで待ったが,原告は点検を終了させな
かったのである上,原告のような点検を続ければ,終了まで更に16時間を
要するものと予想されたのである。そこで,開票管理者Aは,開票の点検の
終了を宣言したのである。
疑問票については,開票立会人席から離れた協議台において,開票管理者
A及び開票立会人らが集まり,効力係からの説明を聴いて,開票立会人らが
意見を述べ,開票管理者Aがその効力を決定することが予定されていたが,
原告は協議台に来ず,疑問票の効力決定について協力する姿勢を見せなかっ
たので,開票管理者A及び原告以外の開票立会人らが,原告のところに集ま
って,効力係から15票の疑問票について1票ずつ説明を聴いたが,原告は,
「自分は見ない」旨述べて,上記疑問票の確認をしようとはせず,格別の意
見も述べなかったのである。そこで,開票管理者Aは,原告以外の開票立会
人の意見を聴取して,上記疑問票の投票の効力を決定したのである。
その上,開票事務従事者(約200名)による開披,分類,点検,計数機
による集計に疑問を抱かせるような事情は何ら存しなかったのであり,また,
開票立会人や開票管理者の点検は,1時間程度で終えられるようなものであ
ったのである。
(4)上記(3)の事実によれば,原告は,自己の考えが容れられないことに不満
を抱き,開票作業を遅らせるという嫌がらせ目的で,その必要がないにもか
かわらず,1票ずつ内容を確認しながら票を数えるという点検を行ったとい
うべきであり,これは,開票事務が適正かつ迅速に行われるべきことを要請
する法の趣旨に反するものということができる。また,疑問票については,
原告に対し,意見を述べる機会が与えられたが,原告が格別意見を述べなか
ったというにすぎず,手続違反が存したとは認められない。他方,原告に対
しては,点検に必要な時間は十分与えられていたものというべきであり,原
告を投票立会人と届け出たB候補の事務所も点検を終了させることを了承し
ていたのである。
そうすると,開票管理者Aは,開票に関する事務を執行し,開票事務従業
者(開票立会人を含む)の指揮統括に当たる権限を有していたのであるから,
上記事情の下では,投票立会人は少なくとも3名を要するものと解されるこ
と(法62条)を考慮しても,点検の終了を決めたことが法66条,67条
等に違反するということはできない。
(5)したがって,原告の上記(1)の主張は採用することができない。
3無効原因2について
(1)原告は,開票管理者は,開票作業中は,候補者の事務所関係者を開票所に
入れてはならず,また,候補者の事務所に対し,候補者推薦の開票立会人の
投票点検作業の終了を求めることも許されないのに,開票管理者Aは,開票
作業中であるにもかかわらず,原告を推薦したB候補の事務所関係者を開票
所に入れて,原告の投票点検作業を阻害させたばかりか,B候補の事務所に
対し,投票点検作業の終了を求め,同事務所にこれを了承させたから,本件
開票手続は,法74条,58条に違反しているので,宇部市開票区の選挙は
無効であると主張する。
(2)しかし,前記1,2のとおり,開票管理者Aは,開票に関する事務を執行
し,開票事務従業者(開票立会人を含む)の指揮統括に当たる権限を有して
いたところ,原告が,自己の考えが容れられないことに不満を抱き,開票作
業を遅らせるという嫌がらせ目的で,その必要がないにもかかわらず,1票
ずつ内容を確認しながら票を数えるという点検を行い,これが,開票事務が
適正かつ迅速に行われるべきとする法の趣旨に反するものであったから,原
告を投票立会人と届け出たB候補の事務所関係者に対し,迅速な開票に協力
するよう原告を説得してもらうため,開票所に入所し,説得作業に当たるこ
とを許したのである。そうすると,開票管理者Aの上記措置は,その権限に
基づいて行われた適法なものというべきであり,また,上記事務所関係者は,
開票の参観ができる選挙人(法69条)に当たるということもできる。
したがって,開票管理者Aの上記措置は,法74条,58条等に違反する
ということはできない。
(3)したがって,原告の上記(1)の主張は採用することができない。
4無効原因3について
(1)原告は,開票立会人である原告が開票録に署名していないから,法70条
に違反し,宇部市開票区に関する部分は無効である旨主張する。
(2)確かに,原告は,開票録に署名していない。
(3)しかし,上記1のとおり,原告は,開票立会人として,開票録に署名すべ
き責務を有する(法70条)ところ,正当な理由がないのにこれを拒否した
にすぎないのであるから,本件開票手続に違法があるということはできない。
(4)したがって,原告の上記(1)の主張は採用することができない。
5選挙の結果に異動を及ぼすおそれ
選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合とは,その違反がなかったなら
ば,選挙の結果につきあるいは異なった結果を生じたかもしれないと考えられ
る場合をいうものであるところ,宇部市開票区の投票総数5万2969票は,
宇部市開票区を除く本件選挙の当選人と次点者との得票の差である6万315
3票に満たないから,当選人に異動を生ずる程度の影響を有するものではない。
したがって,仮に原告主張の手続違反があったとしても,選挙の結果に異動を
及ぼすおそれは認められないというべきである。
6まとめ
以上によれば,本件選挙に原告が主張する無効原因が存するとは認められず,
選挙の結果に異動を及ぼすおそれも存しないので,本件選挙は有効である。
7よって,本件異議申出を棄却した本件決定は相当であり,原告の請求には理
由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
広島高等裁判所第4部
裁判長裁判官宇田川基
裁判官近下秀明
裁判官丹下将克

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