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平成27年4月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成26年(行ウ)第254号再審査請求事件
口頭弁論終結日平成27年2月16日
判決
松山市<以下略>
原告A
東京都千代田区<以下略>
被告国
同指定代理人長谷川武久
同下元寛之
同駒﨑利徳
同平川千鶴子
同古閑裕人
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が20130625行服特許2異議申立事件について平成25年8月
12日にした決定を取り消す。
第2事案の概要等
1前提事実(後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)原告は,平成19年7月4日にした特許出願(特願2007-175
805号)に基づく優先権を主張して,平成20年6月27日,発明の
名称を「多糖類由来化合物の生成方法並びに生成装置」とする特許出願
(特願2008-169216号。以下「本件特許出願」という。)をし
た(乙1)。
(2)特許庁審査官は,平成23年3月31日(起案日)付けで,本件特許
出願について拒絶をすべき旨の査定(以下「本件拒絶査定」という。甲
1)をし,本件拒絶査定の謄本は,同年4月26日,書留郵便(郵便事
業株式会社銀座支店受付平成23年4月26日同局引受番号第117-
24-63493-5号)として発送された(甲12)。同書留郵便につ
いての配達証明書(以下「本件配達証明書」という。甲10)には,受取人
の氏名が「A」であること,配達日が同年4月28日であることなどが記載
されている。
(3)原告は,本件拒絶査定を不服として,平成23年7月29日,拒絶査
定不服審判を請求(以下「本件審判請求」という。甲2)するとともに,
本件特許出願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書を補正するこ
とを内容とする手続補正書(以下「本件手続補正書」という。甲3)を
提出した。
(4)原告は,平成23年11月7日,本件審判請求につき,東北地方太平
洋沖地震の影響を理由として,審判請求書の提出期間の延長を定める特
許法(以下「法」という。)121条2項の適用を求める旨の上申書(乙
3)を提出した。
(5)特許庁は,平成23年12月12日,本件審判請求が法121条1項の定
める期間経過後にされた不適法な請求であり,その補正をすることができな
いものであるとして,同請求を却下する旨の審決(以下「本件審決」という。
甲6)をし,本件審決の謄本は,平成24年2月2日,原告に送達された(甲
11)。
なお,特許庁は,平成24年1月31日,原告に対し,上記(4)の上申
書による提出期間延長の申出について,特定非常災害の被害者の権利利
益の保全等を図るための特別措置に関する法律3条3項の規定に該当す
るものではないから,提出期間の延長を認めることはできないとする旨
の特許庁審判長名義の平成23年12月12日付け通知書(乙2)を発
送した。
(6)原告は,平成24年3月3日,知的財産高等裁判所に対し,本件審決
の取消しを求めて訴えを提起した(同裁判所平成24年(行ケ)第10
084号審決取消請求事件。以下「第10084号審決取消事件」とい
う。)。
(7)特許庁は,平成24年3月6日,原告に対し,本件審判請求が本件審
決において却下されたため,本件手続補正書に係る手続は客体がなく,
受理することができない旨の同年2月13日付け却下理由通知書(甲7)
を発送した。
原告は,これに対し,同年3月19日,弁明書(乙5)を提出した。
(8)知的財産高等裁判所は,平成24年6月14日,第10084号審決
取消事件について,原告の請求を棄却する旨の判決(以下「本件知財高
裁判決」という。)を言い渡した(甲19)。
これに対し,原告は,本件知財高裁判決につき最高裁判所に上告及び
上告受理の申立て(同裁判所平成24年(行ツ)第272号及び平成2
4年(行ヒ)第317号)をしたが,同裁判所は,平成24年11月1
3日,上告を棄却する旨及び上告受理の申立てを上告審として受理しな
い旨の決定をし(乙4),本件拒絶査定は確定した。
(9)特許庁長官は,原告に対し,平成24年12月26日付けで,法18
条の2第1項の規定により,本件手続補正書に係る手続を却下する旨の
処分(以下「本件手続却下処分」という。)をした(甲8)。
(10)原告は,特許庁長官に対し,平成25年3月12日付けで,本件拒絶
査定及び本件手続却下処分の各取消しを求め,行政不服審査法6条に基
づく異議申立て(以下「本件異議申立て」という。乙6)をした。
なお,本件異議申立てに係る異議申立書には,「平成24年3月29日
に出された拒絶査定は,これを取り消すとの決定を求める。」と記載され
ているが,同拒絶査定は,本件拒絶査定をいうものと解せられる。
(11)特許庁長官は,平成25年8月12日付けで,本件異議申立てのうち,
本件拒絶査定に係る異議申立てについてはこれを却下し,本件手続却下
処分に係る異議申立ては棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。
甲9)をした。
(12)原告は,平成25年12月1日,知的財産高等裁判所に対し,本件知
財高裁判決について再審の訴え(同裁判所平成25年(行ソ)第100
04号審決取消請求再審事件。以下「本件再審の訴え」という。)を提起
した。同裁判所は,平成26年5月9日,本件再審の訴えに係る申立て
事項のうち,本件決定の取消しを求める部分については,異議申立てに
対する行政庁の決定の取消しを求めるものであるから,裁決取消しの訴
え(行政事件訴訟法〔以下「行訴法」という。〕3条3項)に該当すると
して当庁に移送し(本件訴訟),その余の部分については,本件知財高裁
判決を取り消すとの裁判を求めているものと解した上,適法な再審事由
の主張がないことを理由として,訴えを却下する旨の決定(甲22)を
した。
2当事者の主張
(1)原告の主張
本件請求の理由は,別紙「原告の主張」の取消理由1ないし7に記載のと
おりである。
(2)被告の主張
ア本件決定のうち,本件拒絶査定に係る異議申立てを却下した部分は,手
続の経過(前記前提事実)に鑑みると,何ら違法はなく,正当である。
イ本件決定のうち,本件手続却下処分に係る異議申立てを棄却した部分も,
以下のとおり,何ら違法はない。
すなわち,行訴法10条2項の「審査請求を棄却した裁決」とは,「審査
請求,異議申立てその他の不服申立て……に対する行政庁の裁決,決定そ
の他の行為」をいうから(行訴法3条3項〔ただし,平成26年法律第6
9号による改正前の規定〕参照),本件決定がこれに該当することは明ら
かである。そして,法184条の2は,「この法律又はこの法律に基づく
命令の規定による処分(第195条の4に規定する処分を除く。)の取消
しの訴えは,当該処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又
は裁決を経た後でなければ,提起することができない。」と規定するもの
の,処分に対する審査請求についてのみを争い得るものとする裁決主義を
採用していない。
したがって,本件においては,本件手続却下処分取消しの訴えと本件決
定取消しの訴えの両方を提起することができ,行訴法10条2項に該当す
る場合であるといえるから,裁決(本件決定)取消しの訴えである本件訴
訟においては,裁決(本件決定)固有の瑕疵(手続的瑕疵)のみを主張し
得るのであって,原処分(本件手続却下処分)の違法事由(瑕疵)は主張
し得ない。
そして,裁決取消の訴えにおける裁決固有の瑕疵とは,①裁決主体の瑕
疵,②審理手続の瑕疵,及び③裁決の形式の瑕疵等をいうところ,本件決
定にこれらの瑕疵が存在しないことは,本件決定に係る決定書(甲9)の
記載から明らかであり,原告が主張する取消理由1ないし7のいずれの内
容も,本件裁決固有の瑕疵を主張するものではない。
ウ以上のとおり,本件決定に何ら固有の瑕疵はなく,本件決定は適法である
から,本件決定の取消しを求める原告の主張には理由がない。
第3当裁判所の判断
1本件決定のうち,本件拒絶査定に係る異議申立てを却下した部分について
拒絶査定に対する不服申立ては,専ら拒絶査定不服審判によるべきであって,
行政不服審査法による不服申立てをすることはできない(同法4条1項ただし
書,法195条の4)。
前記前提事実によれば,原告は,本件拒絶査定及び本件手続却下処分の各取
消しを求め,行政不服審査法6条に基づき本件異議申立てをしたことが認めら
れるところ,上記のとおり,拒絶査定については,同法による不服申立てをす
ることができないから,本件異議申立てのうち,本件拒絶査定の取消しを求め
る部分は,不適法であることが明らかである。
したがって,本件決定のうち本件拒絶査定に係る異議申立てを却下した部分
に違法があるとは認められない。
2本件決定のうち本件手続却下処分に係る異議申立てを棄却した部分について
(1)行訴法10条2項は,「処分の取消しの訴えとその処分についての審査請
求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決
の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることが
できない。」と規定するところ,「裁決」とは,「審査請求,異議申立てその他
の不服申立て……に対する行政庁の裁決,決定その他の行為」(同法3条3項
〔ただし,平成26年法律第69号による改正前の規定〕)をいうから,本件
では,本件決定のうち本件手続却下処分に係る異議申立てを棄却した部分が
「処分についての審査請求を棄却した裁決」に該当するといえる。
そして,本件手続却下処分についてその取消しを求める訴えを提起するこ
とができず,本件決定のうち本件手続却下処分についての審査請求を棄却し
た部分についてのみその取消しを求める訴えを提起し得ることを定める法令
の規定は見当たらないから,本件においては,本件手続却下処分の取消しの
訴えと本件決定のうち本件手続却下処分に係る異議申立てを棄却した部分の
取消しの訴えの両方を提起することができる。
処分の取消しの訴えとその処分についての裁決の取消しの訴えとを提起す
ることができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理
由として取消しを求めることができない(同法10条2項)ことは既に述べ
たとおりであるから,本件訴訟においては,裁決(本件決定のうち本件手続
却下処分に係る異議申立てを棄却した部分)に固有の瑕疵,つまり,①裁決
主体の瑕疵,②審理手続の瑕疵,③裁決の形式の瑕疵等のみを主張し得るこ
とができ,処分(本件手続却下処分)の違法事由(瑕疵)は主張し得ないも
のというべきである。
(2)上記(1)を前提として,原告の主張する取消理由1ないし7を検討するに,
これらは,いずれも裁決(本件決定のうち本件手続却下処分に係る異議申立
てを棄却した部分)に固有の瑕疵を主張するものではなく,また,提出され
た証拠からも裁決(本件決定のうち本件手続却下処分に係る異議申立てを棄
却した部分)に固有の瑕疵があるとは認められないから,本件決定のうち本
件手続却下処分に係る異議申立てを棄却した部分に違法があるとは認められ
ない。
3以上のとおり,本件決定に違法があるとは認められない。原告は,その他縷々
主張するが,いずれも本件決定を取り消すべき理由とは認められない。
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のと
おり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
嶋末和秀
裁判官
鈴木千帆
裁判官本井修平は,転補のため,署名押印できない。
裁判長裁判官
嶋末和秀

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