弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役10年に処する。
未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
押収してあるハンマー1本(平成13年押第289号の1)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 A及びBが,共謀の上,法定の除外事由がないのに,平成13年3月21日
午後11時ころ,東京都a区内のマンションの共用通路において,自動装てん式け
ん銃1丁を,これに適合する実包5個と共に携帯して,所持し,居室の玄関ドアノ
ブに向けて前記自動装てん式けん銃で弾丸5発を発射する各犯行を行うに際し,そ
の情を知りながら,同日午後10時40分ころから同日午後11時ころまでの間,
同都b区内の路上から同都a区内の路上に至るまで自己の運転する普通乗用自動車
に両名を乗車させて送り届け,もってAらの前記各犯行を容易ならしめてこれを幇
助し,
第2 C及びDと共謀の上,同年5月22日ころ,同都c区内の駐車場において,
E所有に係る普通乗用自動車1台(時価約50万円相当)を窃取し,
第3 同月28日午前11時45分ころ,同都d区内のマンション敷地内におい
て,F所有に係る普通乗用自動車1台(時価約350万円相当)を窃取し,
第4 C及びGと共謀の上,同月29日午前9時30分ころから同年6月1日午後
6時30分ころまでの間,同都e市内の立体駐車場1階において,H管理に係るハ
イウェイカード1枚外16点(時価合計約25万3000円相当)積載の普通乗用
自動車1台(時価約150万円相当)を窃取し,
第5 Cと共謀の上,同年6月16日ころ,同都f区内の駐車場において,I所有
に係る普通乗用自動車1台(時価約40万円相当)を窃取し,
第6 Dらと共謀の上,同年7月3日ころ,同都c区内の駐車場において,J所有
に係るピッキングツール一式外約803点(時価合計約260万円相当)積載の普
通貨物自動車1台(時価約46万円相当)を窃取し,
第7 同月8日ころ,同都g区内の路上において,K所有に係る普通乗用自動車1
台(時価約100万円相当)を窃取し,
第8 Lと共謀の上,普通乗用自動車を窃取しようと企て,同月15日午前1時2
0分ころ,埼玉県h市内の駐車場において,M管理に係る普通乗用自動車に乗り込
み,エンジンをかけようとしたが,バッテリー容量切れのためエンジンが始動しな
かったため,その目的を遂げず,
第9 Lと共謀の上,普通乗用自動車を窃取しようと企て,同日午前3時15分こ
ろ,同県i市内の月極有料駐車場において,M(当時34歳)管理に係る普通乗用
自動車に乗り込み,工具を用いてエンジンをかけようとしていたところ,Mに発見
され,M,N(当時33歳)及びO(当時68歳)から逮捕されそうになるや,逮
捕を免れるため,同駐車場付近路上において,Mの頭部を所携のハンマー(平成1
3年押第289号の1)で殴打し,さらに体を力一杯左右に揺すってM,N及びO
を振り回すなどの暴行を加えて路上に転倒させるなどし,その際,Mに全治約2週
間を要する頭部打撲・挫傷,左膝擦過傷の傷害を,Nに加療約2週間を要する左膝
部打撲擦過傷の傷害を,Oに加療約30日間を要する頭蓋骨骨折,右上下肢打撲の
傷害をそれぞれ負わせ
たものである。
(証拠の標目)
 省 略
(累犯前科)
 被告人は,平成7年7月17日浦和地方裁判所で覚せい剤取締法違反罪により懲
役2年に処せられ,平成9年6月26日その刑の執行を受け終わったものであっ
て,この事実は検察事務官作成の前科調書によって認める。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為のうち,けん銃の加重所持を幇助した点は刑法62条1
項,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項に,けん銃の発射
を幇助した点は刑法62条1項,銃砲刀剣類所持等取締法31条,3条の13に,
判示第2,第4ないし第6の各所為はいずれも刑法60条,235条に,判示第3
及び第7の各所為はいずれも同法235条に,判示第8の所為は同法60条,24
3条,235条に,判示第9の所為のうち,M,N及びOに対する各強盗致傷の点
はいずれも同法60条,240条前段にそれぞれ該当するが,判示第1のけん銃加
重所持幇助及びけん銃発射幇助は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるか
ら,同法54条1項前段,10条により1罪として重いけん銃発射幇助罪の刑で処
断することとし,判示第1及び第9の各強盗致傷の罪について各所定刑中いずれも
有期懲役刑を選択し,前記の前科があるので同法56条1項,57条により判示各
罪の刑についてそれぞれ再犯の加重(判示第1及び第9の各強盗致傷の罪の刑につ
いてはいずれも同法14条の制限に従う。)をし,判示第1の罪は従犯であるから
同法63条,68条3号により法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪
であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第9のOに
対する強盗致傷罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被
告人を懲役10年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中200日をその刑
に算入することとし,押収してあるハンマー1本(平成13年押第289号の1)
は,判示第9の犯罪行為の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法1
9条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用は,刑事訴訟法181
条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の事情)
 本件は,被告人が,本犯者らが共謀の上,マンションの共用通路でけん銃を適合
実包と共に携帯して所持した上,弾丸5発を発射するのを幇助した銃砲刀剣類所持
等取締法違反幇助(判示第1),単独あるいは共犯者と共謀の上行われた6件の自
動車窃盗と1件の同窃盗未遂(判示第2ないし第8),及び自動車を盗もうとした
際に,逮捕を免れる目的でその管理者らに暴行を加えて傷害を負わせた事後強盗致
傷(判示第9)の事案である。
 まず,判示第9の犯行についてみるに,被告人は,知人から車を盗むように持ち
かけられて報酬欲しさにこれを引き受け,知人があらかじめ狙いを付けていた高級
車を盗むため,携行した工具を用いてエンジンをかけようとしていたところ,その
自動車の管理者ら3名に発見され,つかみかかられるなどされたことから,逮捕を
免れる目的で,重さ約1キログラムのハンマーを振り回して被害者のうち1名の頭
部を殴打したほか,体を力一杯揺すって被害者らを転倒させるなど激しく抵抗した
結果,3名の被害者にそれぞれ加療約30日間,加療約2週間,全治約2週間の傷
害を負わせているのであって,粗暴で甚だ悪質な犯行というほかない。判示第1の
犯行は,組織の対立抗争の過程で手柄を立てようと考えた暴力団組員らが共謀の
上,自動装てん式けん銃1丁を適合実包5個と共に携帯して所持し,相手方組織の
幹部が出入りするマンション居室の玄関ドアめがけて弾丸5発を発射するのを幇助
したというものであるが,被告人は,暴力団組織には所属していなかったものの,
犯行直前に本犯者である暴力団幹部に依頼されて,同人らを車で犯行現場まで送り
届けるという重要な役割を担って犯行を容易にしているのであって,発射された弾
丸の数が少なくない上,現場付近には住宅等が密集しており,本件犯行が近隣住民
に与えた恐怖や不安は大きかったと思われることなども併せ考えると,その犯情は
悪質である。被告人が行っていた自動車盗の大半は暴力団がいわゆるしのぎとして
繰り返していた組織的な転売目的による犯行であって,高値で処分できる自動車を
共犯者があらかじめ探し出すなどした後,見張り役を置き,エンジンキーを使用せ
ずにエンジンをかける特殊な技術を用いるなどして盗み出すという職業的,常習的
な犯行である上,被害金額は合計すると1000万円以上と多額に上っており,被
告人は,そのうち,前記の技術を用いるなどしてエンジンを始動させて自動車を実
際に盗み出す役割を担当していたのであり,各犯行において不可欠で重要な役割を
果たしている。被告人には前記の累犯前科のほか,過去に3つの懲役前科があるこ
となどをも考慮すると,その刑事責任は相当に重いということができる。
 そうすると,被告人が,本件各犯行を概ね認め,被害者らに対して謝罪の手紙を
書くなど反省の念を示していること,判示第8の犯行は,エンジンが始動しなかっ
たため未遂に終わっていること,被告人の妻が出廷して,被告人を指導監督すると
述べていることなど,被告人のために斟酌すべき事情を十分に考慮しても,被告人
に対し主文程度の刑を科すことはやむを得ない。
 よって,主文のとおり判決する。
さいたま地方裁判所第二刑事部
(裁判長裁判官若原正樹,裁判官大渕真喜子,裁判官小笠原義泰)

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