弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人明石博隆の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を
引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反の主張であ
って,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論にかんがみ,第1審判決判示第3の犯罪事実について,職権で判断する。
 1
原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件の事実関係は
,次のとおりである。
 被告人は,金員に窮し,支払督促制度を悪用して叔父の財産を不正に差し押さえ
,強制執行することなどにより金員を得ようと考え,被告人が叔父に対して600
0万円を超える立替金債権を有する旨内容虚偽の支払督促を申し立てた上,裁判所
から債務者とされた叔父あてに発送される支払督促正本及び仮執行宣言付支払督促
正本について,共犯者が叔父を装って郵便配達員から受け取ることで適式に送達さ
れたように外形を整え,叔父に督促異議申立ての機会を与えることなく支払督促の
効力を確定させようと企てた。そこで,共犯者において,2回にわたり,あらかじ
め被告人から連絡を受けた日時ころに叔父方付近で待ち受け,支払督促正本等の送
達に赴いた郵便配達員に対して,自ら叔父の氏名を名乗り出て受送達者本人である
ように装い,郵便配達員の求めに応じて郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄
に叔父の氏名を記載して郵便配達員に提出し,共犯者を受送達者本人であると誤信
した郵便配達員から支払督促正本等を受け取った。なお,被告人は,当初から叔父
あての支払督促正本等を何らかの用途に利用するつもりはなく速やかに廃棄する意
図であり,現に共犯者から当日中に受け取った支払督促正本はすぐに廃棄している。
 2 以上の事実関係の下では,【要旨1】郵便送達報告書の受領者の押印又は署
名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は,同人名義の受領書を偽造
したものとして,有印私文書偽造罪を構成すると解するのが相当であるから,被告
人に対して有印私文書偽造,同行使罪の成立を認めた原判決は,正当として是認で
きる。
 他方,本件において,被告人は,前記のとおり,郵便配達員から正規の受送達者
を装って債務者あての支払督促正本等を受領することにより,送達が適式にされた
ものとして支払督促の効力を生じさせ,債務者から督促異議申立ての機会を奪った
まま支払督促の効力を確定させて,債務名義を取得して債務者の財産を差し押さえ
ようとしたものであって,受領した支払督促正本等はそのまま廃棄する意図であっ
た。【要旨2】このように,郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等につ
いて,廃棄するだけで外に何らかの用途に利用,処分する意思がなかった場合には
,支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできないというべきであ
り,このことは,郵便配達員からの受領行為を財産的利得を得るための手段の一つ
として行ったときであっても異ならないと解するのが相当である。そうすると,被
告人に不法領得の意思が認められるとして詐欺罪の成立を認めた原判決は,法令の
解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。
 しかしながら,本件事実中,有印私文書偽造,同行使罪の成立は認められる外,
第1審判決の認定判示したその余の各犯行の罪質,動機,態様,結果及びその量刑
などに照らすと,本件においては,上記法令の解釈適用の誤りを理由として原判決
を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 梶谷 玄 裁判官 滝井
繁男 裁判官 津野 修)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛