弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決並びに第一審判決を破棄する。
     被告人を、第一審判決の判示第一の(一)と判示第二の罪につき懲役三
月に、判示第一の(二)と(三)の罪につき懲役三月に処する。
     第一審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人倉田雅充の上告趣意について。
 論旨第一点は事実誤認、同第二点は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。
 しかし、職権で調査すると、原判決の維持した第一審判決は、判示第一の(一)
の犯罪事実として昭和二九年四月上旬頃から同年六月上旬頃までの間における判示
Aに対する児童福祉法三四条一項六号違反の事実を、判示第二の犯罪事実として昭
和二九年七月上旬頃における右Aに対する同法三四条一項七号違反の事実を、判示
第一の(二)の犯罪事実として昭和二九年八月二二日頃から同年一〇月三日頃まで
の間における判示Bに対する同法三四条一項六号違反の事実を、判示第一の(三)
の犯罪事実として昭和三〇年二月五日頃から同月中旬頃までにおける判示Cに対す
る同法三四条一項六号違反の事実をそれぞれ認定した上、以上四個の事実につき、
刑法四五条前段、四七条、一〇条を適用し、判示第一の(一)を犯情最も重しと認
めその罪の刑に併合罪加重をし、被告人を懲役六月に処したことが明らかである。
 しかるに、第一審第八回公判廷において適法に証拠調の施行せられた被告人に対
する前科照会回答書(記録三四四丁)および被告人に対する前科調書(記録三四五
丁)によれば、被告人は、昭和二九年七月一三日飯山簡易裁判所において道路交通
取締法違反罪により科料八〇〇円に処せられ、その裁判は同月三〇日確定した事実
が認められる。従つて、第一審判決の判示第一の(一)、判示第二の各犯罪事実と
右確定裁判のあつた罪とは刑法四五条後段の併合罪であり、同第一の(二)と(三)
の各犯罪事実は同法四五条前段の併合罪であることが明白であるから、右各併合罪
につきそれぞれ別個の刑を言い渡さなければならない。ところが、第一審判決は、
前記のように、右四個の犯罪事実全部を同法四五条前段の併合罪として一個の刑を
言い渡したものであるから、判決に影響を及ぼすべき違法があり、これを破棄しな
いで確定させることは著しく正義に反するものといわなければならない。
 よつて、刑訴四一一条一号により第一審判決並びにこれを維持した原判決を破棄
し、同四一三条但書により被告事件につき直ちに判決すべきものとする。
 第一審判決の確定した判示第一の各所為は、いずれも児童福祉法三四条一項六号
六〇条一項に、判示第二の所為は同法三四条一項七号、六〇条二項にそれぞれ該当
するところ、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、判示第一の(一)、同第二の各所
為と前示確定裁判を経た罪とは刑法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条に
則り、同法四七条但書一〇条の趣旨に従い重い判示第一の(一)の罪の刑に法定の
加重をした刑期範囲内において、被告人を判示第一の(一)と同第二につき懲役三
月に処し、また、判示第一の(二)と(三)の各所為は同法四五条前段の併合罪で
あるから、同法四七条本文一〇条により犯情重いと認める判示第一の(二)の罪の
刑に法定の加重をした刑期範囲内において、被告人を判示第一の(二)と(三)に
つき懲役三月に処すべく、第一審における訴訟費用は刑訴一八一条により全部被告
人をして負担せしむべきものとし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
検察官 安平政吉公判出席。
  昭和三二年七月三〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    高   橋       潔
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    垂   水   克   己

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