弁護士法人ITJ法律事務所

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平成20年(わ)第838号,第1247号
主文
被告人を懲役14年に処する。
未決勾留日数中300日をその刑に算入する。
神戸地方検察庁で保管中の携帯電話(FOMA,F902i,シルバ
ー色)に在中のマイクロSDカード1枚(同庁平成20年領第133
6号符号2−2)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,養女であったA(平成6年6月15日生)に対して長期間にわたり
虐待を加え同児童を極度に畏怖させていたものであるが,
第1(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の1関係)
同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年5月2日午後
8時41分ころから同日午後9時23分ころまでの間,神戸市a区b町居住c
(「」。)番地のd所在の県営B住宅e号室の当時の被告人方以下被告人方という
において,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りなが
ら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号1ないし
5のとおり,同児童に対し「胸寄せろ」などと申し向けて脅迫し,同児童を,。
して,これに応じなければ自己の自由,身体等にいかなる危害を加えられるか
もしれない旨さらに畏怖させ,よって,同児童をして,その両乳房,陰部を露
出させた姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラによ
り撮影させ,同携帯電話機に装着されたマイクロSDカード(神戸地方検察庁
平成20年領第1336号符号2−2)に画像データ5ファイルを保存して記
録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製
造した,
第2(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の2関係)
同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年5月11日午
前10時32分ころから同日午前10時37分ころまでの間,被告人方におい
て,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上
記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号6ないし11の
とおり,同児童に対し「服をまくり上げろ」などと申し向けて脅迫し,同児,。
童をして,前同様にさらに畏怖させ,よって,同児童をして,その乳房を露出
させた姿態,同児童の陰部に被告人の陰茎を挿入している姿態等をとらせ,こ
れを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮影し,上記マイクロSD
カードに画像データ6ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なき
ことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第3(平成20年8月8日付け起訴状記載の公訴事実関係)
同児童を強姦しようと企て,平成19年5月11日,被告人方において,同
児童(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,上記のとおり同児
童が極度に畏怖しているのに乗じて,着衣を脱ぐよう申し向けて脅迫し,その
反抗を抑圧した上,強いて同児童を姦淫した,
第4(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の3関係)
同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年6月11日こ
ろ,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上
記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し,電子メー
ルにより「何か挟んで撮れ」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,これ,。
に応じなければ自己の自由,身体等にいかなる危害を加えられるかもしれない
旨さらに畏怖させ,よって,同児童をして,同日午後零時46分ころから同日
午後5時35分ころまでの間,別表番号12ないし22のとおり,被告人方に
おいて,全裸で両乳房の間や陰部に物を挟んだ姿態等をとらせ,これを同児童
の携帯電話機内蔵のデジタルカメラで撮影させ,そのころ,その画像を被告人
の携帯電話機に送信させ,上記マイクロSDカードに上記画像データ11ファ
,,,イルを保存して記録しもって同児童に義務なきことを行わせるととともに
児童ポルノを製造した,
第5(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の4関係)
同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年7月19日こ
ろ,同児童(当時13歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上
記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し,電子メー
ルにより「キュウリをなめている写真を撮れ」などと申し向けて脅迫し,同,。
児童をして,前同様にさらに畏怖させ,よって,同児童をして,同日午前11
時13分ころから同日午前11時44分ころまでの間,別表番号23ないし2
5のとおり,被告人方において,露出した両乳房になすびを挟んだ姿態等をと
,,,らせこれを同児童の携帯電話機内蔵のデジタルカメラで撮影させそのころ
その画像データを被告人の携帯電話機に送信させ,上記マイクロSDカードに
上記画像データ3ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきこと
を行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第6(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の5関係)
同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年7月19日午
後8時32分ころから同日午後8時33分ころまでの間,被告人方において,
同児童(当時13歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記の
とおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号26ないし29のと
おり,同児童に対し「なめろ」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,前,。
同様にさらに畏怖させ,よって,同児童に被告人の陰茎をなめたり,咥えたり
する姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮
影し,上記マイクロSDカードに画像データ4ファイルを保存して記録し,も
って,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第7(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第2関係)
同児童を強姦しようと企て,平成19年7月19日午後8時30分ころから
同日午後8時50分ころまでの間,被告人方において,同児童(当時13歳)が
上記のとおり極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し「脱げ」などと,。
申し向けて脅迫し,その反抗を抑圧した上,強いて同児童を姦淫したものであ
る。
(証拠の標目)
省略
(事実認定の補足説明)
第1弁護人は,(1)被告人が,A(以下「被害者という)やその兄C,姉Dに。
対し,躾けの範囲内で手を出したことはあるが,その程度も「言いなりになら
なければ痛い目にあう」といった恐怖心を与えるような強度なものではなかっ
た,(2)判示第3の事実について,被告人が被害者と初めて性交した日は平成
19年6月15日よりも後であり,しかも,その際に被告人が被害者に対して
暴行や脅迫を加えたことはない,(3)判示第7の性交の際,被告人が被害者に
対して暴行や脅迫を加えたこともない,(4)判示第1,第2及び第4ないし第
6の各事実について,被告人が被害者を脅迫して判示各姿態をとらせたことは
なかった旨主張して,被告人に判示各罪はいずれも成立しないとし,被告人も
これに沿う供述をする。
しかしながら,当裁判所は,判示のとおりの各犯罪事実を認定したので,以
下,補足して説明する。
第2前提事実
関係各証拠によって比較的容易に認められる事実は,次のとおりである。
1被告人らの生活状況
(1)被害者は,平成6年6月15日,EとFとの間の二女として出生した。
EとFとの間には,被害者のほか,その兄のCと姉のDがいる。
被告人は,FがEと離婚した後である平成14年8月ころ,Fとの交際を
始め,平成15年春ころから,兵庫県加古川市内の同女のマンションで同女
及び被害者ら兄姉と同居するようになり,同年8月に上記の当時の被告人方
へ転居した後,同年10月にFと入籍し,被害者ら兄姉とも養子縁組をして
その養父となった。
その後,Fは,平成15年11月に被告人との間の長女を,平成17年1
0月には被告人との間の二女を出産した。
被告人は,高校中退後,職を転々とし,上記の加古川市内のFのマンショ
ンで同女らと同居していた当時は,医療機器の会社に勤めていたが,1年く
らいで退職し,その後,平成17年2月ころから定職に就かずアルバイトを
する程度であった。そして,平成18年12月ころから人材派遣の会社で働
き始め,平成19年4月中旬ころ,同社を辞め,同年5月28日から別の人
材派遣の会社で働いていた。
他方,Fは,平成17年2月に被告人が無職となったことから,保険外交
員の仕事を始め,平成18年8月ころまでその仕事を続け,平日の昼間は家
を不在にしていた。
(2)被告人は,Fと入籍する前は,被害者ら兄姉に対して暴力を振るうこと
はなかったが,入籍後は,被害者ら兄姉を叱る際に,同人らに対して手で顔
面を叩いたり,臀部を蹴ったり,金属バットで叩くことがあり,特にCに対
する暴行が一番強いものであった。
被害者ら兄姉は,養子縁組をする前から被告人に懐いていたが,中でも被
害者が最も被告人に懐いており,10歳を過ぎても被告人と入浴していた。
(3)被告人は,平成17年の初めころからFとの性交渉がなくなり,被告人
とFとの間の次女が生まれたころからは,口論が続くなど不和となった。
その後もFとの不和が続いたため,被告人は,Fとの生活が嫌になってい
たところ,平成19年8月,同女と喧嘩になったことをきっかけに,単身被
告人方を出てFや被害者ら兄姉と別居するようになり,離婚調停を経て平成
20年3月にFと調停離婚し,同年4月には被害者と離縁した。
2被害者の状況
(1)被害者は,小学5年生であった平成17年9月ころから,微熱,頭痛を
理由に不登校となり,同年11月11日,G小児科クリニックで診察を受
けたが,軽快せず不登校が続いたため,H医療センターでさらに診察を受
けたものの,発熱や頭痛の原因が分からず,同年12月19日から同月2
6日までの間,精査,加療のため同病院に入院し,不明熱との診断を受け
た。同病院の医師は,被害者の通学している学校に明確なストレスの要因
はなさそうであるとの判断をしている。被害者は,退院後も同病院に通院
したが,体調の改善はみられなかった。
(2)被害者は,小学6年生になった平成18年4月以降も不登校が続き,同
年5月から同年7月までの間は,I医療センターに入院して診察を受けた
が,異常は認められなかったため,同年10月13日から同年11月18
日までの間,J病院に入院し,自律神経失調症,偏頭痛と診断された。
被害者は,J病院への入院期間を通じ,37度前後の微熱が続いていたほ
か,時々頭痛を訴えていたが,各種検査や診察の結果,被害者の身体的な異
変は認められなかった。
(3)被害者は,J病院の入院中,担当した小児科のK医師に対し,被告人と
就寝したい,被告人を姉に取られるのが心配で眠れないなどと話したり,看
護師らに対しても,理想の男性は被告人であるとか,摘んできた花を被告人
,,にあげるなどとうれしそうに言っていたほか面会に来た被告人に対しても
楽しそうにゲームをしたり腕を組んで歩くなどしていたが,被告人との面会
後や被告人宅での外泊後に頭痛を訴えることもあった。他方で,被害者は,
同医師に対し,兄は気持ちが悪い,学校には男子がいるから行きたくない,
あるいは,兄,姉とも被告人から暴力を受けることが多いが,姉は母親が必
ず先に怒る,兄,姉ともに被告人に対して口答えをしたりあほなことをする
から暴力を受けるのも仕方がないなどとも言っていた。
このような被害者を診察したK医師は,被告人とFに対し「しつけ」を,
,,理由として被害者の兄姉に対して日常的に体罰が行われていることにつき
程度の問題ではなく,その方法を止めること,そして,被告人やFのみなら
ず,被害者に対しても,それぞれ被告人と被害者が一緒に入浴をしたり就寝
することを控えるよう指導したが,J病院を退院した後も,被告人と被害者
は一緒に入浴していた。
なお,被害者は,J病院を退院する直前の診察において,K医師から,被
告人も含めた男性から身体を触られたら嫌だと言いなさいと指導を受けた
際,そのようなことはないからと答えていた。
ところで,Dは,平成18年10月,Fから叱られて家出をして交番に行
ったことなどから,子ども家庭センターで一時保護された後,児童養護施設
に入所したが,その入所中の平成19年1月,医師がDを診断したところ,
同女の左腕に多数のリストカットが認められたものの,同年2月に自宅に戻
っている。しかし,Dは,同年3月15日に,虞犯による身柄付き通告で,
,,,再び子ども家庭センターに入所し同年4月7日自宅に戻っているものの
同月下旬ころ,通学する中学校の教師に被告人から強姦されたと訴えたこと
などから,子ども家庭センターで一時保護され,その後は,自宅に戻らず,
実父の下でしばらく暮らすようになった。Dの上記訴えで同女は警察で事情
聴取を受けたが,Fがその話を信用せず,被告人も強姦を否定し,Dの供述
も曖昧であったことなどから立件されなかった。
(4)被害者は,平成19年4月から私立の女子中学校へ通学したが,同年5
,。月2日同月11日及び同年6月11日など合計19日にわたって欠席した
なお,同年7月19日は,上記中学の自宅学習日であり,被害者は登校して
いない。
3別居後の状況
(1)被告人とFらが別居した後は,被害者と被告人との間の接触や連絡は途
絶えていたが,平成20年5月5日に,被告人がFや被害者らと共に遊園地
へ行き,その後,被告人と被害者との間で電子メールをやりとりするように
なった。
被告人は,遊園地へ行った際の被害者の体型からその妊娠を疑っていたと
,,ころ同月11日に電子メールで被害者からその妊娠を告げられるとともに
Fに対してどのように説明をしたらよいかと尋ねられ,同月12日には,F
に対して被害者の子の父は無理矢理性交させられた素性を知らない男性であ
ると説明した旨の連絡を被害者から電子メールで受けた。
同日,被害者は,被告人との子を出産した。
(2)Fは,同年6月5日,旅行で行ったLにおいて,被害者との結婚を祈願
,,する同年5月31日付けの被告人作成の絵馬を発見したことからEと共に
被害者に対し,出産した子の父は被告人か,無理矢理かなどと尋ねると,被
害者は涙を浮かべながらうなずき「ママが可哀想で言えなかった。言った,
ら家におられへんと思った」と言った。。
(3)その後,被害者は,自傷行為に及ぶようになり,平成21年4月23日
には,左前腕部外側に刃物様で傷つけたと思われる新旧約6本の傷が,左前
腕部内側には同様の2本の傷がそれぞれ認められた。
4携帯電話機について
(1)被告人は,平成19年4月に,NTTドコモのF902iというデジタ
(「」。),ルカメラを内蔵した携帯電話機以下旧電話機というを購入したが
同年6月2日,ドコモショップM店に旧電話機の故障を申し立て,同じ機種
の携帯電話機(以下「新電話機」という)との交換を受けた。。
上記受付及び修理の記録には,充電不良という故障内容の申立てを受け,
水濡れや落下の申告がなく,保証期間内であったため,本体を取り替えると
いう対応をとり,その後旧電話機の修理として内部の基盤を取り替えた旨記
載されている。
(2)F902iの日付時刻設定には自動と手動の二種類があり,販売時は,
購入客からの要望がない限り,電話機に内蔵された電波時計機能により時
報どおりに表示時刻が修正される「自動オン」状態で引き渡されている。
また,平成20年7月3日に差し押さえられた新電話機の日付時刻設定は
「自動オン」状態であった。
F902iに内蔵されたカメラで撮影した画像は,携帯電話機本体のほ
か,電話機に取り付けたマイクロSDカードにも保存することができる。
F902iの内蔵カメラで撮影した画像とともに記録された撮影日時は,
携帯電話機の操作によって変更することができるが,当該画像をマイクロ
SDカードに保存した日時(更新日時)は,携帯電話機の操作によっても
変更することができない。
(3)被害者は,平成19年4月から同年7月ころまでの間,NTTドコモの
N903iというデジタルカメラを内蔵した携帯電話機を使用していた。
N903iも,電波時計機能が作動していれば,時報どおりの表示時刻が
内蔵カメラにより撮影した画像の撮影日時として記録される。
(「」(4)新電話機に取り付けられていたマイクロSDカード以下本件カード
という)には,Fと被告人との間の子らや被害者を撮影した画像のほか,。
別表番号1ないし29の各画像が記録保存されている。
第3被害者の供述について
1供述の概要
被害者は,公判期日外の証人尋問において,次のとおり供述している。すな
わち,
「被告人は,宿題をしなかったり部屋が汚かったときなどに,私たち兄姉の
尻を5回から10回程度金属バットで叩き,紫っぽい跡が残ることがあった。
ほかにも被告人から腹を殴られたり蹴られたりしており,ママが止めてくれた
こともあったが,ママも被告人から怒られていたので,もう助けてくれないと
思っていた。学校で友人の話を聞いて被告人の暴力はやり過ぎだと思ったが,
やめてほしいと言うと被告人の暴力がもっとひどくなると思い「やめて」と,
は言えず,後で見つかると暴力を振るわれるのが怖くて,Eの元へ逃げること
もできなかった。私たち兄姉は,被告人の暴力の標的とならないように,互い
。。にあら探しをして被告人に告げ口をしていた兄や姉は敵みたいな感じだった
被告人にべたべたしたり,写真を撮るときに笑わないと,夜中に起こされて殴
られたりするので,嫌だったけど,ずっとにこにこしていたり,被告人にくっ
ついたりするようにしていた。自分に対する暴力は,Dが家出をして交番に行
った平成18年10月ころからなくなった。
被告人から胸を触られるのは気持ち悪かったが,殴られるのが怖くてママに
も言えないでいたところ,小学5年生の7月か8月ころに初めて被告人と性交
させられ,その後はほぼ毎日被告人と性交させられた。一度被告人との性交を
嫌がったことがあったが,被告人に顔を叩かれたので,その後はおとなしくし
ていた。J病院への入院中,家に帰りたいとは思わず,ずっと入院していたか
ったが,退院した後のことを考えて,家に帰りたいと言ったり,被告人が来る
とうれしそうにしていた。
小学6年生になると,被告人から学校へ行くなと言われ,学校を休んで被告
人と二人きりになったときに,5日に4日くらいの頻度で被告人と性交させら
れた。中学校に入るころから,被告人にバットで叩かれることはなくなったと
思うが,被告人を恐れる気持ちは変わらず,中学1年生の4月ころには学校へ
行っていたけれど,学校を休んだ日はいつも被告人と性交させられた。
平成19年5月11日は中学校の遠足の日だったが,被告人から行くなと言
われたので休んだ。この日は被告人と二人きりで自宅にいて,はっきり覚えて
いないが,被告人と性交させられたと思う。嫌だったが,被告人に暴力を振る
われると思っていたので,嫌だとは言えなかった。この日に,被告人から服を
まくり上げろなどと言われて,別表番号10の画像を撮られた。別表番号1は
「胸寄せろ,別表番号12は「何か挟んで撮れ,別表番号23は「きゅ。」。」
うりをなめてる写真を撮れ,別表番号27は「なめろ」と言われて撮影し。」。
たものであり,他にも,被告人の指示に従い,エッチなポーズをとった写真や
裸の写真を被告人に撮られたり,被告人が電子メールで指示してきたポーズの
写真を自分で撮って被告人の携帯電話機に電子メールで送信した。また,被告
人の陰茎をなめさせられた後は必ず被告人と性交をしており,別表番号27の
写真をとったときも,その後被告人と性交した。被告人と性交する際はほとん
ど被告人に着衣を脱がされていたが「服を脱げ」と言われて自分で服を脱ぐ,
こともあった。被告人と性交したり写真に撮られたのは,被告人の言うことを
聞かないとまた暴力を振るわれ,ぼこぼこにされると思っていたからである。
事件が発覚した後,被告人との性的関係のことは母親には全部話しておらず,
自分も話したくないし,忘れたいことである」。
以上のとおりである。
2供述の信用性
(1)ア被害者の上記供述(以下「被害者供述」という)は,被告人から姦。
淫されるまでの経緯につき,具体的,かつ詳細に供述しており,異性である
被告人との性的関係という思春期に入って間もないころの被害者が羞恥心を
抱きその公言をためらう事柄についても,質問に応じて,言葉少なめにでは
あるものの,具体的に述べている上,養父であった被告人との性的関係とい
う特異な経験を,自らの心情を織り交ぜて説明しており,その内容に格別不
自然・不合理な点は見当たらない。その上,被害者は,本件カードに記録さ
れていたいくつかの写真を見せられた際等には,当時のことを思い出したな
どと涙ぐんだり,涙を服でぬぐったりしながらも懸命に供述しようとするな
ど,その供述態度は,思い出すのが苦しいものの自らの体験したことをその
記憶に従って供述しようという真摯なものと認められ,自らが体験したから
こそ,そのような供述態度となったと見るのが自然である。
イ次に,Dは,上記第2の2(3)のとおり,施設に入所中,被告人とFに宛
てた手紙(Dの検察官調書抄本(甲6)の中で「(被告人が)すぐどなっ),
たり,なぐったり,金属バットでおしりや頭をなぐってきて,本当は,とて
もつらかったです「本当に,やられてる時は,死にそうなぐらいいたか。」
ったです。なんども,死にたいって思っていました。自分が悪くてなぐられ
た時,リストカットもしました。うでにもふとももにもしました。本当に家
にいるのがこわいです「いつもニコニコしとうのがしんどいって,なん。」
で気づいてくれへんの?「夜中におこされてボコボコにされた時も,学校」
とかでだれにも言わんかったんで「なんでいつもニコニコしとかなあか。」
んの?」との記載をしており,この記載は,上記第2の2(3)のとおり,平
成19年1月にDの左腕に多数のリストカットが認められたことと一致して
いる上,他の記載部分も含めて,Dが自分の受けた両親の言動や自分のこと
を両親に分かって欲しいとの思いから書かれた自然な気持ちの表出と見られ
ることなどから,この手紙に記載された被告人の言動やDの気持ちなどは真
実であると考えられ,そうすると,被告人がCやDらに相当にひどい暴行を
加え,同女らが怯えていたことや,いつもにこにこするよう強要されていた
ことが認められ,それらは被害者供述と概ね符合するものである。
ウさらに,証人K医師の公判供述等関係証拠によると,(ア)被害者がJ病
院で初めてK医師の診察を受けた際,診察の最後に被告人が被害者のことが
心配だということで,同女の頭をなぜた時,同女が全く反応せず無表情で,
なぜられるままに頭を揺らしていたのが不自然であったこと,(イ)入院中
のロールシャッハテスト検査では,緊張,不安を感じさせるものが耐えられ
ず,安全なところに逃避したいという願望が強くなっていると考えられ,身
体的不調を生み出していると思われるとの結果が,また,親子関係テストで
も,被告人やFに対する不信感,不満は認められなかったものの,被告人の
支配が少し強く,被告人に服従する面が強いとの結果がそれぞれ出ていたこ
と,(ウ)被害者は,入院中,普段はあまり感情を出さないのに,被告人が
見舞いに来ると,少し異常とも取れるくらい,べたべたと被告人に引っ付い
ていっているように見えたのに,被告人以外の男性に対しては過度に拒否的
であったこと,(エ)K医師は,児童は虐待を受けている場合にも,本能的
に自分を守るため,別の人格を出すくらい自分を抑えてしまい,いつもの自
分とは違う行動に出る,もしくは,かえって自分から虐待を受けている相手
にくっついていくという,一見して矛盾するような行動をとることがあるの
が分かっていたことから,被害者の上記の異常とも思われる言動もそのよう
なものではないかと感じていたこと,(オ)K医師は,被害者の退院の時点
でも,虐待があったとは確定できなかったものの,被害者は被告人から性的
虐待を受けている可能性が高いと考えていたことがそれぞれ認められ,この
K医師の見方は,上記の各テスト結果及び被害者のやや異常とも思われる入
院中の言動等にかんがみて,被害者と被告人との関係を正しく把握したもの
と考えられ,嫌でたまらなかった被告人を好きであるように振る舞うなどし
ていたとの被害者供述を合理的に説明するものであり,同供述と整合するも
のでもある。
これに対し,弁護人は,K医師が,被害者の退院する当時,虐待がないと
カルテに記載しているのに,2年以上経過した公判廷において,虐待の可能
性があったように言うのは信用できない旨主張するが,弁護人の指摘するカ
ルテの記載部分を見ても,K医師は,退院する時点では「まだ明らかな虐,
待がない」と記載しているにとどまり,同じ頁に「また虐待の事実がつか
めた時点で児相に通告を行う」旨記載をしているのであって,カルテの記載
からも,明確に虐待の事実は確認できなかったものの,虐待の疑いを持って
いたことが認められるのであるから,弁護人の上記主張は失当である。
,()エ加えて児童青年期の精神医学を専門とするN医師作成の鑑定書甲46
によれば,被害者は,外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患しており,その
現れとして,再体験(侵入)症状(事件のことを突然思い出して,涙が出る,
何もできなくなる。)が,頻度,強度とも比較的重篤である上,回避症状(そ
のことについて考えないように努力している,男には近づかない,スカート
をはけない),覚醒亢進症状(睡眠障害,感情の易変動性,いらいら感)が見
られ,健忘や現実感喪失といった解離性障害の存在を示唆する所見も確認さ
れるとともに,少なくとも年余にわたる反応性の抑うつ状態にある(抑うつ
気分,喜びの低下,自己評価の低さ,無価値観,自殺念慮など)と診断され
ていることが認められるところ,N医師は,公判廷において,被害者の上記
各症状の原因となる出来事としては,鑑定面接の範囲内では被告人による性
的虐待以外には考えられないと供述しており,この供述に疑問を入れる余地
は乏しいことからすると,上記鑑定内容及びN医師の上記公判供述は,嫌々
ながらも被告人との性交に応じていたがいつもにこにこするようにしていた
などという被害者供述を,精神医学的立場から合理的に説明するもので説得
力もあると考えられる。
このような諸事情に照らすと,被害者供述は,他の証拠と概ね符合してお
り,精神医学的にも裏付けのあるもので,その信用性は高いと評価できる。
(2)これに対し,弁護人は,ア被告人に対する畏怖や嫌悪を述べた被害者
供述は,(ア)J病院に入院中の被害者には被告人に対する好意的な言動が
多々みられたほか,被害者がそのストレスの原因であるはずの被告人と接触
した後に症状が悪化したという経過が認められないこと,(イ)本件カード
に保存された画像において被害者がいつも笑顔であったり,被告人に対する
嫌悪を感じさせる表情ではなかったこと,(ウ)被害者の状況に注意を払っ
ていたというFも,被害者の被告人に対する態度を不自然だと感じてはいな
かったと供述していることとそれぞれ整合しない上,イ被害者供述によっ
ても,被害者は,平成17年11月ころ以降に被告人から暴力を加えられた
ことはないのであるから,約1年半が経過した平成19年5月ころにも被告
,,人の暴力を畏怖していたという被害者の供述は不自然であることウ仮に
以前受けた暴力による被告人への恐怖心を被害者が抱き続けていたとして
も,金属バットを振り回すほどの空間のない被告人宅で行われ,Fも制止し
たことがなかった被告人の被害者に対する有形力の行使は,しつけの範疇を
超えるものでもなく,被告人の言いなりにならなければ痛い目にあうという
恐怖心を抱いていたかのような被害者供述には著しい誇張があること,エ
別居により被告人の支配が及ばなくなった後である平成20年5月以降に
も,被害者が,被告人との間で互いに愛情を確かめるような連絡を取り合っ
ていたという点も,被害者供述と相反する事情といえること,オ被告人と
別居した後はFにより養育されていた被害者が,被告人から強姦されたのか
というFの質問を否定して,合意に基づく性交であったという事実を述べる
ことはおよそ期待できず,被告人との性的関係がその意に反すると言ってし
まった被害者は,その後にこれと異なる説明をすることはできない状況に置
かれているのであり,被害者には事実と異なる供述をする動機があるといえ
ることなどを指摘して,被害者供述は信用できない旨主張する。
そこで,これらの点について検討すると,アの(ア)については,上記の
とおり,被虐待児が自分を守るため本能的に自己を抑え,自ら虐待者に近
づいていくという行動に出ることがあるというK医師の指摘や,継続的に
被害を受けている者が,加害者に逆らったり逃れると更なる被害を受ける
ため,加害者に愛情を示すことがあるというN医師の指摘に照らせば,上
記第2の2(3)のとおり,兄姉の被告人に対する言動から暴力を受けるのは
仕方がないと述べるなど,自らは被告人の暴力を回避するよう応対してい
たことが窺われる被害者が,被告人からの更なる暴力を避けるため,被告
人に対する好意を示していたとも考えられるのであるから,このような被
害者の言動が,被告人から暴力を受けたり性交を強要されたという被害者
供述と矛盾するものではなく,J病院への入院中には,退院後のことを考
えて被告人に対する好意を示す言動をとっていたという被害者供述は,こ
,,の点を合理的に説明したものといえるのであり上記第2の2(3)のとおり
J病院への入院期間中,被告人との面会や自宅での外泊の後には頭痛を訴
えることもあった被害者に,被告人との接触により全く変化がなかったと
もいえない。同様に,アの(イ)についても,本件カードに保存されていた
画像は,いずれも被告人が撮影したり,後に被告人の目に触れることが予
想されたものであるから,被告人から暴力を振るわれるのを恐れて写真を
撮影する際には笑顔を作っていたと供述する被害者の表情が笑顔であった
り特段嫌悪を感じさせないものであったことと,被告人に対して畏怖と嫌
悪を抱いていたとする被害者供述は矛盾せず,アの(ウ)についても,被害
者のほかにも4人の子を養育しており,被害者の妊娠にすら気付かなかっ
たFが,被告人との間の子を出産した後も被害者が隠し続けた被告人と被
害者との間の性的関係や被害者の異変に気付かなかったとしてもあながち
不自然ではなく,この点について被害者供述との間にその信用性を揺るが
すほどの不整合があるとはいえない。
また,イについては,上記第3の1のとおり,被害者は,平成18年1
0月以降,自分に対する暴力はなくなった旨供述しているところ,たとえ,
被害者に対する被告人による暴力がしばらくの間途絶えていたとしても,
被告人と同居している生活状況は変わらず,また被告人のDらに対する生
活指導や暴力にも目立った変化はなかったことからすると,小学3年生の
ころから日常的に繰り返されていた被告人の被害者やその兄姉に対する暴
力によって,女児である被害者に植え付けられた恐怖心を払拭することは
困難であったと推察される。
さらに,ウについては,被告人方のリビングには比較的広い空間があり
(甲14写真17,被害者らの臀部に跡が残る程度の力を込めて金属バッ)
トで叩く余地は十分ある上,時には逆上して被害者の姉を激しく殴ったこ
ともあるFが被害者ら兄姉に対する被告人の暴力を制止していなかったと
しても,それ故に被告人の被害者ら兄姉に対する暴力はそれほど強度では
なかったということもできないのであり,この点に関する被害者供述に著
しい誇張があるとはいえない。
エについても,被告人の被害者に対するそれまでの暴力を考えると,以
前と同様に被告人を恐れてその機嫌をとるように話を合わせていたという
被害者の説明もあながち不合理とはいい難く,被告人との別居後半年以上
にわたって被害者が被告人との連絡を断っていたことや,その後連絡を取
り合うようになった当初のやりとりも,出産間近となった被害者がそれを
Fにも隠しており他に頼る者もいなかったため被告人に対してFへの説明
や対応を相談するしかなかったことをも併せ考えると,その後に被告人と
被害者との間で交わされた一見親密ともとれるやりとりが,被害者の被告
人に対する好意に基づくものではなく,単に被告人の言葉に合わせていた
に過ぎない可能性が高いといえるのであり,このような被告人と被害者と
の間のやりとりの状況は,被告人を怖がるとともに嫌悪していたという被
害者供述と相反するものとまではいえない。
そして,オは,被害者がその保護者であるFの意向に反する行動をとる
ことは難しく,この点に十分配慮して被害者の虚偽供述の可能性を検討す
べきであることは弁護人指摘のとおりであるが,本件の発覚により捜査機
関や公的機関に庇護を求めることができる状態となり,Fの庇護を失うこ
とによる被害者の不利益が相対的に低下した後にも,被害者が以前と同じ
内容の供述をしているばかりか,上記第3の2(1)エのとおり,PTSD等
に罹患し,自らの身体を繰り返し傷つけるという深刻な状況に置かれた被
害者が,その症状に苦しみながらも意図的に虚偽の供述をしているとは到
底考えられないのであり,被害者が虚偽供述をしている可能性も極めて低
いといえる。
したがって,弁護人の主張する上記の事情は,いずれも被害者供述の信用
性を揺るがすものではなく,その他るる主張する点を考慮しても,その結論
は動かない。
第4被告人の供述について
1供述の概要
被告人は,公判期日外の被告人質問において,次のとおり,供述する。すな
わち,
「私は,被害者ら兄姉にとって良い父親となるため,生活態度や習慣の指導を
してきたのであり,同居当時は毎日入浴していなかった被害者らを入浴させる
ため被害者を誘って一緒に入浴したこともある。また,被害者ら兄姉が嘘をつ
いたり,人の物を取ったときなどには,話をしても分からない場合に,平手で
頬を叩いたり,金属バットでお尻を叩いたりすることもあったが,同女らにあ
ざができるほどの強い力で叩いたことはない。
被害者は,小学5年生であった平成17年9月ころに,Fの離婚や再婚を男
の子からからかわれ,以後学校に行かなくなった。このような被害者に対する
Fの対応は登校しろという一点張りであったため,被害者から悩みを聞いてい
た私は,仮病を使って入院することで学校を休めると助言し,その後,被害者
が頭痛や微熱を訴えるようになった。
被害者は,中学へ進学する二,三か月前から,寝る前に私に対してキスを求
めたり,愛しているといった内容の電子メールを送信するなど,性的な事柄に
興味を抱いていることを窺わせる言動がみられるようになり,平成19年6月
11日には,被害者が自分の裸などを撮影した画像を私の携帯電話機に送信し
てきた。そして,私と被害者の誕生日を過ぎた同年6月下旬ころの夜に,被害
者が私を起こしてセックスとはどんなものかなどと尋ね,話の流れで私からセ
ックスをするかと言って,初めて被害者と性交した。被害者とは合計4回くら
いにわたって性的関係を持ったが,その際に,被害者に対して暴力を振るった
り脅したことは一度もなかった。
別表番号6ないし11,26ないし29の各画像は私が撮影したものである
が,この際に,被害者に対して着衣を脱いだりみだらな姿勢をとるよう指示し
たことはなく,別表1ないし5の各画像は私が撮影したものではない。別表番
号12ないし25の各画像は,被害者が自分の携帯電話機で撮影して私の携帯
電話機に送信してきたものであるが,この際に,どのような写真を撮影して送
信するよう指示したこともない」。
以上のとおりである。
2被告人の供述の信用性
そこで,被告人の上記供述の信用性について検討すると,被害者の方から被
告人を性交に誘ってきた,あるいは被害者が性的写真を送付してきたといった
上記供述の骨格部分は,それが真実であれば,上記第3の2(1)エのとおり,
現在,被害者がPTSDに罹患し,長期間にわたる反応性の抑うつ状態に陥っ
ているはずがないのであり,同女の精神状況は被告人の上記供述と全く符合し
ないのである。
そして,小学生であった被害者が身体の不調を装うために微熱等を訴えてい
たとする点も,上記第2の2(2)のとおり,J病院への入院期間を通じて37
度前後の微熱が続いていたり,頻繁に頭痛を訴えていた当時の被害者の心身の
状況と整合しない。
さらに,妻の子であるばかりか,自らも養子縁組をした子である被害者との
性交という非日常的な出来事であり,また,被告人の供述によれば,平成19
年の短い期間に4回しかなかった事であるにもかかわらず,その日時はもとよ
り,当時の状況やその経緯についても極めて曖昧な供述に終始する被告人の上
記供述は,極めて不自然といわざるを得ない。
したがって,被告人の上記供述は信用できない。
第5虐待の有無及び被告人による脅迫等について
1以上の検討により信用できると認められる被害者供述等関係証拠によれば,
次のとおりの事実が認められる。すなわち,
(1)被害者は,小学3年生のころから被告人に金属バットで臀部を叩かれる
などの暴力を受けたり,兄姉も同様に暴行を受けたりしているのを見ていた
ことなどにより被告人を極度に畏怖しており,被告人の日常的な暴力が止ん
だ後である平成19年当時も,被告人の虐待により依然として被告人をひど
く畏怖していた。
(2)このような被害者の畏怖に乗じて被害者と性交するようになった被告人
は,別表番号10の画像を撮影した際に,被告人の指示に従わなければ暴力
を加えられると畏怖していた被害者に対し「服をまくり上げろ」などと,。
指示し,指示どおりの姿態をとった被害者を撮影した上記画像を本件カード
に保存したほか,上記のとおり着衣を脱ぐよう指示した上で,被告人に対し
て抵抗できない状態であった被害者を姦淫した。
また被告人は別表番号27の画像を撮影した同年7月19日にも服,,,「
を脱げ」などと被害者を脅迫し,被告人に対して抵抗できない状態であっ。
た被害者を姦淫した。
(3)被告人は,被害者に対し「胸寄せろ「なめろ」などと指示し,こ,。」,。
れに応じなければ被告人から暴力を加えられると畏怖した被害者にそのよ
うな姿態をとらせた上で撮影した別表番号1及び27の各画像を,本件カ
ードに保存した。
,,,,「。」,また被告人は被害者に対し電子メールにより何か挟んで撮れ
「きゅうりをなめている写真を撮れ」などと指示し,これに応じなければ。
被告人から暴力を加えられると畏怖した被害者にそのような姿態をとらせ
た上で被害者が撮影した別表番号12及び23の各画像を被告人の使用す
る携帯電話機に送信させ,本件カードに保存した。
2そして,思春期に入って間もない被害者が,自らの意思で身体を露出したり
みだらな姿態をとった画像を撮影し本件カードに記録保存するとは考え難く,
被害者も,本件カードに記録保存された別表番号1ないし29の各画像はいず
れも被告人の指示どおりの姿態をとって撮影したと供述していることからする
と,別表番号2ないし9,11,13ないし22,24ないし26,28及び
29の各画像についても,被告人が,被害者に対し,上記認定のとおりの被告
人の被害者に対する指示及び脅迫と同様の指示及び脅迫をして,その指示どお
りの姿態を被害者にとらせた上で撮影されたものと認められる。
3なお,弁護人は,別表番号1ないし5の各画像について,これらの画像に被
害者の右手が写っていないことを根拠として,その撮影者はいずれも被害者で
あると主張し,被告人も,被害者が被告人の携帯電話機を勝手に持ち出して撮
影したかのような供述をしている。
なるほど,上記各画像の撮影に用いられた携帯電話機(F902i)は二
つ折りの本体を折り畳んだ状態でも横長の画像を撮影することができる構造で
あるから,被害者が折り畳んだ携帯電話機を右手に持ち,画像を撮影するボタ
ンを押して上記各画像を撮影した可能性は否定できず,上記各画像がいずれも
横長のものであることにも照らすと,被害者が上記携帯電話機を操作して上記
各画像を撮影したものと推認される。
しかしながら,上記各画像を撮影したのは,当時被告人が使用していた携
帯電話機であったことや,いずれの画像もその撮影後1分から20分後には本
件カードに記録保存されていることからすると,これらの画像を本件カードに
保存したと供述する被告人が,これらの画像を撮影した当時,その撮影場所に
いたことは明らかであり,被害者が勝手に上記各画像を撮影したかのような被
告人の供述は信用できない。そして,被告人の指示及び脅迫により上記各画像
に記録されたとおりの姿態をとったとする被害者供述をも併せ考えると,上記
第5の2で認定したとおり,上記各画像についても,被告人の指示及び脅迫に
より,被害者にその指示どおりの姿態をとらせた上で撮影されたものと認めら
れる。
なお,上記認定においても,被告人は,各画像に記録されたとおりの姿態
を被害者にとらせ,携帯電話機の撮影ボタンを押すという被害者の行為を利用
して撮影した上記各画像を本件カードに記録保存したことに変わりはなく,被
告人の児童ポルノ製造罪が成立することは明らかである。
第6判示第1ないし第3の各犯行日について
1上記第2の4(2)で認定した事実のほか,被告人が捜査段階において本件カ
ードに保存された各画像の日付を変更したことはない旨供述していることから
すると,別表記載の各画像が撮影された日時は,各画像の撮影日時として記録
,,された日時であると認められるのでありこれに被害者供述を併せ検討すると
判示第1及び第2の各犯行日時は,この際に撮影された別表番号1ないし11
の各画像の撮影日時である平成19年5月2日及び同月11日であり,別表番
号11の画像が撮影された同日に,被告人が判示第3の犯行に及んだものと認
められる。
2これに対し,弁護人は,(1)平成19年3月ころから少なくとも同年6月
末日ころまでの間,旧電話機や新電話機の時計表示機能にいずれも不具合があ
り,別表番号1ないし11の各画像に記録された撮影日時は正確な撮影日時で
はなく,(2)実際にも,被告人は,平成19年5月11日には退職のための
残務処理で岐阜へ行ったり就職活動をしており,昼間は自宅にはいなかったの
であるから,上記各画像の撮影時刻には在宅していない旨主張し,被告人もこ
れに沿う供述をする。
しかしながら,(1)については,上記第2の4(1)のとおりの旧電話機の不具
合の申告に関する記録や,故障受付の際には申告された故障を全て記録するこ
とになっており,日付表示が狂うという不具合は聞いたことがないという携帯
電話販売店店員(O)の公判供述によれば,被告人は,同年6月2日に同店員
に対して旧電話機の故障を申し出た際,日付表示が狂うという不具合を申告し
ていなかったものと認められるのであるから,この当時既に日付表示が狂って
おり,上記故障申出の際にこれを申告したとする被告人の供述は,この事実と
整合しない。
そして,被告人は,上記のとおり故障申出の際に不具合として申告したばか
りか,新電話機と交換した後も同じ不具合が生じたために問い合わせをしたと
供述する一方で,その不具合の内容につき,表示される日付や時刻が一定程度
遅れるという記憶であり,進んだことはなかったと思うなどといささか都合の
よい抽象的な説明に終始し,問題となる不具合がどのようなものであったのか
を具体的に説明してはいないのであり,このような被告人の上記供述を信用す
ることはできない。
,,,また(2)の点に関する被告人の供述もその内容が具体的とはいえない上
これを裏付ける客観的な根拠も示されてはいないのであるから,別表番号1な
いし11の各画像の撮影日時に関する前記認定を揺るがす事情とはいえない。
3したがって,判示第1ないし第3の各犯行日を上記のとおり認定できる。
第7まとめ
以上の検討によれば,本件では,被告人が,別表番号1ないし29の各撮影
日に,以前から虐待を受けて被告人を極度に畏怖していた被害者を脅して各画
像にあるとおりの姿態をとらせて,これを撮影した画像ファイルをそれぞれ本
件カードに保存するとともに,別表番号10の画像を撮影した平成19年5月
11日及び別表番号27の画像を撮影した同年7月19日に,いずれも着衣を
脱ぐよう申し向けるなどして被害者を畏怖させ,その反抗を抑圧して強姦した
との事実が認定できる。
(法令の適用)
省略
(量刑の理由)
本件は,被告人が,当時12歳から13歳であった被告人の養女を二度にわたっ
て姦淫したという強姦2件(判示第3及び第7)と,同女を脅して胸部や陰部を露
出させたりしてひわいな姿態をとらせ,その姿態を撮影した画像データを記憶媒体
に保存して児童ポルノを製造したという児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰
及び児童の保護等に関する法律違反並びに強要各5件(判示第1,第2及び第4な
いし第6)からなる事案である。
被告人は,日常的に暴力を振るわれたり,兄姉が虐待されているのを見たりして
いたことにより,被告人を極度に畏怖してその指示に服従せざるを得ない状態であ
った被害者に対し,同女が小学校5年生になったころから日常的に性交渉を強いた
末に本件各犯行に及んだのであって,自らの性欲の赴くままに敢行された本件各犯
行の自己中心的な動機に酌量の余地は全くない。
また,本件各犯行の態様についてみると,被告人は,父親として被害者を保護・
監督すべき立場にありながら,これを省みず,被害者の恐怖心やその保護者という
絶対的に優位な地位を利用し,成長途上にある被害者の身体を欲望のはけ口として
利用するかのようにして同女を強姦するとともに,同女に指示して胸部や陰部を露
出させたりしてみだらな姿態をとらせ,それらを撮影するなどして児童ポルノを製
造していたのであって,いずれも被害者の人格を全く無視した卑劣かつ身勝手な犯
行であり,犯情は極めて悪質である。
被害者は,本件各被害当時,思春期に入って間もない年頃であったところ,あろ
うことか保護者であるはずの養父から強姦されるという記憶からぬぐい去り難い過
酷な体験を負わされ,同居する実母にすら相談できずに小さな心を痛めていたので
あって,本件各犯行により生じた精神的,肉体的苦痛は計り知れず,今なお,希死
念慮があり何度もリストカットをしたりして精神的に極めて不安定な状態が続いて
いるなど被害者に与えた悪影響も相当深刻である。また,被害者のひわいな姿態ば
かりか,強姦の様子をも撮影し,経年による劣化のない電磁的記録として保存して
いた児童ポルノの犯行結果も軽視できず,このような卑劣極まりない被害を受けた
被害者の処罰感情が厳しいのは当然のことであるし,被害者と同居していながら同
,,女が性的虐待を受けていることに気付いてやれなかった母親がその後悔とともに
「被告人を極刑にしてほしい」と厳罰を望んでいるのも十分に理解できるところ。
である。
,,,これに対し被告人は被害者に対する慰藉の措置を何ら講じていないばかりか
被害者が性交渉を誘ってきたのであり,合意の上での性交であったなどと被害者を
侮蔑するかのような不合理な弁解をして自己保身に終始しており,このような被告
人に真摯な反省は全くみられない。
以上に加え,以前にも16歳の少女に対してみだらな性行為に及んだという条例
違反の前科を有する被告人の小児性愛的な性的偏向も否定できず,これらの事情に
照らすと,被告人の刑事責任は極めて重大である。
そうすると,養子である被害者と性交渉をもったこと自体は反省していると供述
していることや,被告人の母親が公判廷において社会復帰後の被告人の監督を誓約
していること,被告人は,上記前科も含めて懲役前科3犯を有するものの,最終前
科の刑執行終了から既に10年近くが経過していることなど,被告人のために酌む
べき事情を十分考慮しても,被告人に対しては,主文の刑をもって臨むのが相当で
あると考えた。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑・懲役18年,マイクロSDカードの没収)
平成21年12月10日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官東尾龍一
裁判官佐藤建
裁判官村井美喜子

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